JP3671518B2 - 荷電粒子分散液の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散性の良好な荷電粒子含有分散液の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
荷電粒子を含有する樹脂水性分散液は水性塗料などの用途に広く用いられている。また該分散液をキャスト製膜または基材にコーティングしてなるシート、フィルム、成型品は光学材料、物質遮断性材料、ハードコート材などとして広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
荷電粒子を含有する樹脂水性分散液はコーティング液として広く用いられているが、塗布後に緩やかな乾燥条件で乾燥して膜を得るためには固形分濃度をできるだけ高くすることが望まれている。工業的生産において、インラインでオーブンの乾燥能力は固形分濃度に依存し、設備費を低く押さえるためには固形分濃度を高くすることが望まれる。また、コーティング液を濾過せずにコーティングした場合には、意図しない固形物が基材に塗布される恐れがある。これを回避するために通常コーティング時にはフィルターで濾過した液が塗布される。濾過性不良の液を濾過するためには、フィルターの交換を頻繁に行わねばならず、非常に煩雑で時間もかかり、工業的生産においては重要な問題である。また、ロールコーティング方式を用いた際の過剰の液をかきとる目的で用いられるドクターブレード部分やブレードコーターのブレード部などで液が不安定化し、ゲル物が形成され、コーティング面を損ねるなどの問題(以下ブレード適性という)もある。本発明は、荷電粒子を含有する樹脂水性分散液において、液中の固形の異物が少なく濾過適性、ブレード適性に優れた分散液の製造法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は樹脂の水溶液または樹脂の水分散液に、溶剤および荷電粒子を溶剤、荷電粒子の順序で或いは荷電粒子、溶剤の順序で加える荷電粒子分散液の製造法であって、該溶剤が炭素数1から8個のアルコールであることを特徴とする荷電粒子分散液の製造法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる樹脂は特に限定されるものではないが、本発明の液を形成した際に、少なくとも一部溶解しているか、均一に分散しているものが好ましく用いられる。
樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその類縁体、ビニルアルコール分率が41モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、セルロース等の多糖類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、エチレン−アクリル酸共重合体およびその塩などのアクリル系樹脂;ジエチレントリアミン−アジピン酸重縮合体などポリアミノアミド系樹脂、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピリジンおよびその塩、ポリエチレンイミンおよびその塩、ポリアリルアミンおよびその塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルスルホン酸およびその塩、ポリビニルチオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の水素結合性基やイオン性基を分子中に有する樹脂があげられる。
ここで「水素結合性基」とは、炭素以外の原子(ヘテロ原子)に直接結合した水素を少なくとも1個有する基をいう。この水素結合性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等があげられる。
「イオン性基」とは、水中において水分子の水和が可能な程度に局在化した「正または負」の少なくとも一方の電荷を有する基をいう。このようなイオン性基としては、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
また、水性エマルジョンを形成するポリ塩化ビニリデン系エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系エマルジョン、ポリウレタン系エマルジョン、ポリエステル系エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョンなども好適に使用可能である。
樹脂のさらに好ましいものとしては、ポリビニルアルコール、多糖類などがあげられる。
【0006】
上記ポリビニルアルコールとは、ビニルアルコールのモノマー単位を主成分として有するポリマーである。かかるポリビニルアルコールとしては、例えば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解ないしエステル交換(けん化)して得られるポリマー(正確にはビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体となったもの)や、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等をけん化して得られるポリマーが挙げられる(ポリビニルアルコールの詳細については、例えば、ポバール会編、「PVAの世界」、1992年、(株)高分子刊行会;長野ら、「ポバール」、1981年、(株)高分子刊行会を参照することができる)。
ポリビニルアルコールにおける「けん化」の程度は、モル百分率で70%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、通常、100以上10000以下であり、200以上6000以下が好ましく、300以上3000以下がより好ましい。
【0007】
またポリビニルアルコールの誘導体も使用でき、水酸基以外の官能基として例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基、シリル基、シロキサン基、アルキル基、アリル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、等を一部有しているものである。
【0008】
上記多糖類およびその誘導体には、種々の単糖類の縮重合によって生体系で合成される生体高分子、およびそれらを化学修飾してなるものも包含される。このような多糖類およびその誘導体の具体例としては、例えば、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0009】
本発明に用いることができる荷電粒子は、液中で界面電位を生ずるものであれば、有機化合物でも無機化合物でもよい。
無機化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、亜鉛以上の2B族、珪素以上の4A族から選ばれた少なくとも1種または2種以上の元素を有する無機化合物などであり、例えば、下記一般式
1-x Al3+ (OH- 2 (An-x/n ・mH2
(式中、MはMg2+、Ca2+及びZn2+よりなる群から選ばれた2価金属イオンを示し、An-はn価のアニオン、例えば炭酸イオン、塩酸塩等のハロゲンイオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、アルミン酸イオン、ケイ酸イオン、ポリケイ酸イオン、過塩素酸イオン、ホウ酸イオン、Fe(CN)4 3- 、Fe(CN)4 4- 等の遷移金属錯塩等の無機イオン、酢酸、安息香酸、ギ酸、テレフタル酸、アルキルスルホン酸等の有機イオン等を示し、xは条件:0<x<0.5を、mは条件:0<m<2、nは、1〜4の整数を満足する。)
で示されるハイドロタルサイト類化合物や、特開平5−179052号公報記載の下記一般式で示されるリチウムアルミニウム複合水酸化物
Li+ (Al3+2 (OH- 6
の炭酸塩、塩酸塩等のハロゲン塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、アルミン酸塩、ケイ酸塩、ポリケイ酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、Fe(CN)4 3- 、Fe(CN)4 4- 等の遷移金属錯塩等の無機塩、酢酸、安息香酸、ギ酸、テレフタル酸、アルキルスルホン酸等の有機塩等(これらの塩は結晶水を有していてもよい)や、商品名LMA(富士化学工業(株))、フジレインLS(富士化学工業(株))等の無機化合物等、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、粘土系鉱物等が、更にはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、珪素、チタンなどの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、アルミノ珪酸塩、グラファイトなどが挙げられる。
有機化合物としてはアクリル樹脂ラテックス、スチレン系樹脂ラテックス等が挙げられる。
これら荷電粒子は単独で用いても2種以上併用してもよい。また、本発明の荷電粒子分散液を薄膜化して用いる場合には、これらの無機化合物の中、層状構造を有するもの(以下、「無機層状化合物」という)が好ましい。
【0010】
かかる無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している無機化合物をいう。換言すれば、層状化合物とは、層状構造を有する化合物ないし物質であり、層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0011】
かかる無機層状化合物の具体例としては上述の荷電粒子の例の中から、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物等を挙げることができる。ここに、「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)および/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX2 (Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
また分散性を向上させるには、溶媒に膨潤・へき開する性質を有する無機層状化合物が好ましく用いられる。
【0012】
無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、以下の「膨潤・へき開性」試験により評価することができる。該無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において約5以上が好ましく、約20以上であることがより好ましい。一方、該無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において約5以上が好ましく、約20以上であることがより好ましい。これらの試験で用いる溶媒としては、無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。無機層状化合物が天然の膨潤性粘土鉱物である場合、該溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0013】
<膨潤性試験>
100mLメスシリンダーに溶媒100mLを入れ、これに無機層状化合物2gをゆっくり加える。静置後、23℃、24hr後の無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から前者(無機層状化合物分散層)の体積を読む。この数値が大きい程、膨潤性が高い。
【0014】
<へき開性試験>
無機層状化合物30gを溶媒1500mLにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工(株)製、デスパー MH−L、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(23℃)、分散液100mLをとりメスシリンダーに入れ60分静置後、上澄みとの界面から、無機層状化合物分散層の体積を読む。
【0015】
溶媒に膨潤・へき開する無機層状化合物としては、溶媒に膨潤・へき開性を有する粘土鉱物が特に好ましく用いられる。
かかる粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
【0016】
これらの粘土系鉱物としては、より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。また、粘土系鉱物に関しては、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店 などの文献を参照することができる。
【0017】
本発明の分散液より形成したコーティング膜において荷電粒子と樹脂との組成比(体積比)は特に限定されないが、例えば、コーティング膜の組成としては下記のものが挙げられる。
荷電粒子が無機層状化合物の場合、気体遮断性、成膜性、成形性等から、無機層状化合物/樹脂の体積比(仕込みの際の比率)が通常、5/95〜90/10の範囲であり、5/95〜50/50の範囲が好ましく、10/90〜30/70の範囲がさらに好ましい。
また、この体積比が5/95〜30/70の範囲は、膜ないし成形物としての柔軟性の点で好ましい。
製膜または積層体としたときの折り曲げによる物性低下の抑制の点からは、体積比が7/93以上であることが更に好ましい。一方、樹脂組成物からなる層の柔軟性ないし基材からの剥離性の抑制の点からは、体積比が17/83以下であることが好ましい。すなわち、体積比が7/93〜17/83の範囲は、折り曲げによる物性低下を抑制でき、特に好ましい。このような体積比は、これらの成分の仕込みの際の重量比の分子(無機層状化合物の重量)および分母(樹脂の重量)の値を、それぞれの密度で割り算して求めることができる。樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)の密度は、一般に、結晶化度によって若干異なる場合があるが、上記体積比の計算においては、例えば、ポリビニルアルコールの結晶化度を50%と仮定して計算することができる。
【0018】
本発明の分散液の全固形分濃度としては特に限定されないが、水溶性樹脂を用いる場合には、一般的には約1〜20重量%の範囲である。また分散液中の荷電粒子の濃度は特に限定されず、樹脂を用いずに分散が不十分となる濃度が上限として考えられるが、一般的には約0.1〜10重量%の範囲である。
もちろん全固形分濃度を低下させれば分散は容易になるが、分散液をコーティングしたときに膨大な乾燥能力を要し望ましくなく、この点からは、全固形分濃度はできるだけ高いこと、すなわち、樹脂、荷電粒子ともできるだけ高濃度であることが好ましい。また、分散液中の樹脂、荷電粒子、溶剤の組成比は特に限定されないが、荷電粒子/樹脂の重量比は一般的には1/99〜99/1の範囲であり、(樹脂+荷電粒子)/溶剤の重量比は一般的には1/10〜10/1の範囲である。
【0019】
本発明の液が不均一にならない範囲で、樹脂の濃度の限定はないが例えば、ポリ塩化ビニリデンやポリ酢酸ビニルなど水性エマルジョンの場合には、70重量%以下の濃度が好ましく用いられる。
また、ポリビニルアルコールのような水溶性樹脂の場合、濃度の上昇による粘度増加が著しく、重合度1700、ケン化度99.6モル%のもので一例を示せば、20重量%以下が好ましく用いられる。
【0020】
荷電粒子として、例えば、膨潤・へき開性を有する粘土鉱物を例にとれば、分散液中の粘土鉱物の濃度は、1〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましく、1〜3重量%以下が特に好ましい。
典型的な例として、溶媒として水、樹脂として重合度1700、ケン化度99.6モル%のポリビニルアルコール、荷電粒子としてモンモリロナイトを例に取れば、ポリビニルアルコール/モンモリロナイト=2/1重量比としたときに全固形分濃度は3〜15重量%が好ましく、4〜10重量%がより好ましく、5〜10重量%が特に好ましい。
【0021】
本発明で用いる溶剤は、単体では室温付近で液体で、基材に塗布、乾燥した際に蒸散が容易である、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ペンタノール、オクタノール等の炭素数1〜8個のアルコールが挙げられる。溶剤は沸点が80℃から140℃であるものが好ましい。これら溶剤の具体例としては、1−ブタノール、2−プロパノール、ペンタノール等が挙げられる。また溶剤は2種以上用いてもよい。溶剤の添加量は、樹脂、荷電粒子、水からなる液に溶剤を添加した場合に、液の表面張力が約10dyne/cm以上低下することが好ましい。表面張力は、デュヌーイ式、ウィルヘルミー式等が用いられる。本発明では自動表面張力計(CBVP−A3型、協和界面化学社製)を用いた。
【0022】
本発明における荷電粒子分散液は、濾過適性に優れるものであるが、ここで濾過適正とは通常用いられている濾過設備を用いてどれだけ濾過用のフィルターが詰まることなく多くの液を濾過することが可能かということであるから、その評価においては通常の濾過設備を用いて評価することができる。しかし実際には少量の液での評価が簡便で行ないやすい。例えば、液をポンプによってフィルターに圧をかけて送り込み、濾過されてきた液を循環させると、経時で総濾過量が増加していくためにフィルターでの目詰まりによって圧損の上昇、流量の低下が起こる。これらを一定の循環条件で観察することで液の濾過適性を評価することができる。 また、さらに少量の液で評価するには、圧縮空気によって加圧して液をフィルターに通じ、フィルターの目詰まりによって液が流れなくなるまで濾過を行ない総濾過量を測定するという方法も可能である。
【0023】
本発明の荷電粒子分散液の有するもう一つの効果は、ブレード適性に優れていることである。リバースグラビア法や2本リバース法などの設備を用いて実際にコーティングを行う場合にはブレード適性に優れた液が必要となる。これはブレードを必要とするコーティング方式の場合、ロールとブレードの間で高い剪断がかかりゲルが発生してフィルム上に縦筋が入ることがあるからである。ブレード適性にすぐれた液とは液を浸して回転しているロールにブレードを長時間当ててもゲルが発生しないか、あるいは発生しても少量であるような液のことである。
【0024】
本発明においては、複数種類の樹脂、溶剤、荷電粒子を用いることができる。また、それぞれの原料を複数回に分割して加えて使用することもできる。
【0025】
本発明の分散液を製造する装置としては特に限定されるものではないが、できるだけ固形分濃度が高くかつ分散良好な液を得るためには、温度制御装置と分散翼を取り付けた釜を用いることが好ましい。分散翼の形状に特に限定はないが、特に周速度を高くする目的から円盤状でその周上にのこぎり状の形態を有するものが好ましく用いられる。例えば、浅田鉄工(株)製 デスパなどがあげられる。 釜についても特に限定はなく、温度制御用に温水やスチームなどの熱媒を通じることのできるジャケットを外壁に備えたものなどが好ましい。また、泡のかみこみや分散の均一化をはかる観点から、釜内部にバッフルなどが好ましく用いられ、同様の理由から、分散翼の位置は釜の中心ではなく少しずらす(偏芯)ほうが好ましく用いられる。分散性、ゲル化防止の点で、荷電粒子を分散させる分散温度は40〜90℃が好ましい。また、撹拌の周速度が速いほど低温での分散が可能となるが、一般に周速度は5m/秒以上であればよく、好ましくは10m/秒以上、特に20m/秒以上が好ましい。
【0026】
(分散評価方法)
本発明の分散液の製造方法において、分散性評価の指標としては、▲1▼荷電粒子が水単独に分散されたときと樹脂水性液に分散されたときのそれぞれの液を平滑な基材(例えばガラス板など)に薄くキャスト製膜などしてその外観比較で判定する方法(分散不良であれば、凝集物が目視判定できる)、▲2▼荷電粒子が水単独に分散されたときと樹脂水性液に分散されたときのそれぞれの液の濁度比較による方法、▲3▼溶媒単独に分散されたときの荷電粒子の溶媒中平均粒径(R0)を基準に、樹脂水性液に分散されたときの荷電粒子の水性液中平均粒径(R)がR0の値にどれだけ近いかどうかによって判断する方法、などがあげられる。
【0027】
(平均粒径を求める方法)
液中の粒子の平均粒径を求める方法は、回折/散乱法による方法、動的光散乱法による方法、電気抵抗変化による方法、液中顕微鏡撮影後画像処理による方法などが可能である。
動的光散乱法では樹脂と粒子が共存している場合、見かけ液粘度が純溶媒と変わってしまうために評価しにくく、電気抵抗変化による方法は液の電解質濃度などに制限があり、液中顕微鏡撮影後画像処理による方法は分解能の問題があり、それぞれ使いづらい。回折/散乱法による方法は、樹脂水性液に実質上散乱が少なく(透明ということ)、粒子由来の散乱が支配的である場合には、樹脂の有無に関わらず粒子の粒度分布のみの情報が得られるため、比較的好ましく用いられる。
【0028】
(回折/散乱法による粒度分布・平均粒径測定)
回折/散乱法による粒度分布・平均粒径測定は分散液に光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンをミー散乱理論などを用いてパターンに最も矛盾のない粒度分布を計算することによりなされる。 市販の装置としては、コールター社製 レーザー回折・光散乱法 粒度測定装置LS230、LS200、LS100、島津製作所製 レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2000、SALD2000A、SALD3000、堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LA910、LA700、LA500、日機装製 マイクロトラックSPA、マイクロトラックFRA、などがあげられる。
本発明の液は希釈なしで測定することが好ましい。散乱が強すぎて光透過性の低い液の場合は、光路長を短くとることで液を希釈なしで測定できる(例えば堀場製作所製LA910の場合にはバッチ式セル、ペーストセルなどで著しく光路長を短縮できる)。但し、液溶媒組成と同組成の溶媒で希釈した場合には分散性が変化しない場合も多く、その場合は希釈液を測定することで分散性を評価してもよい。 またこの測定方法では、粒子間距離が光源の波長以下であれば粒子を分離して識別できなくなってくるため、ある程度の距離(例えばサブミクロン以下)を隔てて(間に樹脂などを介在して)近接している複数の粒子は一つの粒子と認識する。このため、粒子同士の凝集による分散不良だけでなく、樹脂を介在することで生じる分散不良についても本方法で評価することができる。
【0029】
(アスペクト比測定方法)
アスペクト比(Z)とは、Z=L/aの関係から求められる比である。ここに、Lは、分散液中、上記した回折/散乱法による粒径測定法により求めた無機層状化合物の粒径(体積基準のメジアン径)であり、aは、無機層状化合物の単位厚みである。この「単位厚みa」は、後述する粉末X線回析法等によって、無機層状化合物単独の測定に基づいて決められる値である。より具体的には、横軸に2θ、縦軸にX線回折ピークの強度を取った図1のグラフに模式的に示すように、観測される回折ピークのうち最も低角側のピークに対応する角度θから、Braggの式(nλ=2Dsinθ、n=1,2,3・・・)に基づいて求められる間隔を、「単位厚みa」とする(粉末X線回析法の詳細については、例えば、塩川二朗監修「機器分析の手引き(a)」69頁(1985年)化学同人社発行を参照することができる)。 分散液から溶媒を取り除いてなる樹脂組成物を粉末X線回析した際には、通常、該樹脂組成物における無機層状化合物の面間隔dを求めることが可能である。 より具体的には、横軸に2θ、縦軸にX線回折ピークの強度を取った図2のグラフに模式的に示すように、上記した「単位厚みa」に対応する回折ピーク位置より、低角(間隔が大きい)側に観測される回折ピークのうち、最も低角側のピークに対応する間隔を「面間隔d」(a<d)とする。図3のグラフに模式的に示すように、上記「面間隔d」に対応するピークがハロー(ないしバックグラウンド)と重なって検出することが困難な場合においては、2θdより低角側のベースラインを除いた部分の面積を、「面間隔d」に対応するピークとしている。ここに、「θd」は、「(単位長さa)+(樹脂1本鎖の幅)」に相当する回折角である(この面間隔dの決定法の詳細については、例えば、岩生周一ら編、「粘土の事典」、35頁以下および271頁以下、1985年、(株)朝倉書店を参照することができる)。 このように樹脂組成物の粉末X線回析において観測される回折ピーク(面間隔dに対応)の「積分強度」は、基準となる回折ピーク(「面間隔d」に対応)の積分強度に対する相対比で2以上(更には10以上)であることが好ましい。 通常は、上記した面間隔dと「単位厚みa」との差、すなわちk=(d−a)の値(「長さ」に換算した場合)は、樹脂組成物を構成する樹脂1本鎖の幅に等しいかこれより大である(k=(d−a)≧樹脂1本鎖の幅)。このような「樹脂1本鎖の幅」は、シミュレーション計算等により求めることが可能であるが(例えば、「高分子化学序論」、103〜110頁、1981年、化学同人を参照)、ポリビニルアルコールの場合には4〜5オングストロームである(水分子では2〜3オングストローム)。 上記したアスペクト比Z=L/aは、必ずしも、樹脂組成物中の無機層状化合物の「真のアスペクト比」と等しいとは限らないが、下記の理由により、このアスペクト比Zをもって「真のアスペクト比」を近似することには妥当性がある。 すなわち、樹脂組成物中の無機層状化合物の「真のアスペクト比」は直接測定がきわめて困難である。一方、樹脂組成物の粉末X線回析法により求められる面間隔dと、無機層状化合物単独の粉末X線回析測定により求められる「単位厚みa」との間にa<dなる関係があり、且つ(d−a)の値が該組成物中の樹脂1本鎖の幅以上である場合には、樹脂組成物中において、無機層状化合物の層間に樹脂が挿入されていることとなる。したがって、樹脂組成物中の無機層状化合物の厚みを上記「単位厚みa」で近似すること、すなわち樹脂組成物中の「真のアスペクト比」を、上記した無機層状化合物の分散液中での「アスペクト比Z」で近似することには、充分な妥当性がある。
上述したように、樹脂組成物中での真の粒径測定はきわめて困難であるが、樹脂中での無機層状化合物の粒径は、分散液中(樹脂/無機層状化合物/溶媒)の無機層状化合物の粒径とかなり近いと考えることができる。但し、回折/散乱法で求められる分散液中での粒径Lは、無機層状化合物の長径Lmaxを越える可能性はかなり低いと考えられるため、真のアスペクト比(Lmax/a)が、本発明で用いる「アスペクト比Z」を下回る(Lmax/a<Z)可能性は、理論的にはかなり低い。 上述した2つの点から、本発明で用いるアスペクト比の定義Zは、充分な妥当性を有するものと考えられる。本明細書において、「アスペクト比」または「粒径」とは、上記で定義した「アスペクト比Z」、または「回折/散乱法で求めた粒径L」を意味する。
【0030】
本発明の分散液はそれ自身をキャスト製膜法などにより成型品とすることができる。さらに、基材と組み合わせて積層体としても好適に用いられる。積層体の製造方法としては、特に限定はない。例えば、分散液を乾燥しフィルム化(キャスト製膜などの方法)したものを後から基材に貼合する方法、基材に分散液をコーティングする方法などが通常用いられ、特に後者が好ましく用いられる。
【0031】
コーティング方法としては、ダイレクトグラビア法やリバースグラビア法及びマイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、及びドクターナイフ法やダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法などの方法が挙げられる。
【0032】
分散液から形成される層の膜厚は、積層体を使用する目的により選択すればよく特に制限はないが、通常、乾燥厚みで30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。1μm以下では分散液から形成される層の透明性が著しく高いという長所も合わせもつため、透明性の必要な用途にはさらに好ましい。下限については特に制限はないが、ガスバリア性などの効果を得るためには1nm以上、さらには10nm以上、特に100nm以上であることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられる基材は、特に限定されず、フィルム状、シート状、ボトル状、トレイ状など特に形態に制限はない。その材質としては、樹脂、紙、アルミ箔、木材、布、不織布等の公知ないし一般的なものを目的・用途に応じて使用することができる。
特にフィルム状である場合、無延伸である以外に、1軸、2軸に延伸されていてもよい。もちろん公知の下塗りやコロナ処理などがされていてもよく、これら表面処理は発明の効果を損ねない範囲でフィルム状のみならずそれ以外の形態の基材についてなされていてもよい。
【0034】
基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン一6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミド等のアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等のスチレンないしアクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等の疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)等のハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体等の水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、液晶樹脂等のエンジニアリングプラスチック系樹脂等が挙げられる。
【0035】
本発明の分散液を製膜あるいは積層化して得られる積層体は、種々の用途に用いられる。例えば、荷電粒子に無機層状化合物を用いた場合、その複屈折を利用した位相差フィルムや層状構造による低分子拡散遅延効果を利用した気体・低分子拡散遮断性フィルム・成型品、などに用いることができる。気体遮断性フィルムとして食品・医薬品の包装用途に用いる場合、このフィルムに対して印刷や他のフィルムを更に積層することによって成型品として用いることができる。
【0036】
気体・低分子遮断性フィルム・成型品として本発明を用いる場合には、以下に記載のアスペクト比の大きい無機層状化合物を荷電粒子として用いることが好適である。
【0037】
かかる無機層状化合物は、ガスバリア性の発現、コスト等から、「アスペクト比」が50以上5000以下のものがよく用いられる。ガスバリア性の点からは、このアスペクト比は100以上が好まし、200以上がより好ましく、500以上であることが特に好ましい。
アスペクト比が5000を越える無機層状化合物を得ることは技術的に難しく、またコストも高価なものとなる。製造容易性の点からは、このアスペクト比は2000以下が入手し易く、1500以下がより入手し易い。
ガスバリア性および製造容易性のバランスの点からは、このアスペクト比は200〜3000の範囲であることが好ましい。
【0038】
無機層状化合物の粒径は、製膜性ないし成形性の点で、前述の方法により測定された粒径が5μm以下であることが好ましい。透明性の点からは、この粒径は3μm以下であることが更に好ましい。透明性が重視される用途(例えば、食品の包装用途)に用いる場合には、この粒径は2μm以下であることが、特に好ましい。
【0039】
本発明の積層体は、無機層状化合物を用いた分散液をコーティングしてなる場合に、酸素遮断性を有するが、23℃、50%RH下での酸素透過度は通常、5cc/m2 ・day・atm以下であり、1cc/m2 ・day・atm以下であることが好ましく、0.1cc/m2 ・day・atm以下であることがより好ましく、さらに0.05cc/m2 ・day・atm以下であることがより好ましく、特に0.02cc/m2 ・day・atm以下であることがより好ましい。
上記積層体は酸素遮断性に優れているのみならず、その他の気体分子、例えば、ヘリウム、窒素、炭酸ガス、水、リモネン、メントールなど低分子の香気成分などの遮断性にも著しく優れている。
【0040】
本発明の積層体は、基材が透明材料である場合は透明性を有することが好ましい。この透明性は、波長500nmの全光線透過率で、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。このような透明性は、例えば、市販の分光光度計(日立製作所製、自記分光光度計330型)で好適に測定することが可能である。また、曇度(HAZE)については25%以下が好ましく、さらには20%以下、特に15%以下が好ましく、市販のヘーズメーター(スガ試験機製等)が測定に用いられる。
【0041】
本発明の分散液には本発明の目的・効果を損じない範囲で必要に応じて、消泡剤、着色剤、防腐剤、架橋剤、酸化防止剤、界面活性剤など種々の添加剤をを用いることができる。
【0042】
本発明において耐候性向上等の点で用いられる架橋剤は特に限定されないが、該架橋剤の好適な例としては、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、メラミン系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、イソシアネート系カップリング剤、銅化合物、ジルコニア化合物等が挙げられる。耐水性向上の点からは、ジルコニア化合物が特に好ましく用いられる。 ジルコニア化合物の具体例としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム;硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等の鉱酸のジルコニウム塩;蟻酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、カプリル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム等の有機酸のジルコニウム塩;炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、蓚酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム錯塩;等があげられる。 架橋剤の添加量は特に限定されないが、架橋剤の架橋生成基のモル数(CN)と樹脂の水素結合性基のモル数(HN)との比(K=CN/HN)が、0.001以上10以下の範囲になるように用いることが好ましい。このモル数の比Kは、0.01以上1以下の範囲であることが更に好ましい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、濾過適性、ブレード適性などに優れた荷電粒子を含有する樹脂水性分散液を得ることができ、工業的生産において極めて有利である。
また、例えば、本発明の分散液を基材フィルム上にコーティングすることにより酸素遮断性、透明性に優れたフィルムを得ることができる。このフィルムは積層して酸素遮断性の要求される食品、医薬品などの包装用途等の種々の用途に供される。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[フィルム透明性]
分光光度計(日立製作所製、自記分光光度計330型)にて波長500nmでの全光線透過率を測定した。曇度(HAZE)についてはヘーズメーター(スガ試験機製)を用い測定した。
【0045】
[酸素透過度]
酸素透過度測定装置(OX−TRAN 10/50A, MOCON社製)、温度23℃、Dry条件で測定した。
【0046】
〔濾過適性評価実験方法〕
濾過適性の評価には以下に示す方法を用いた。加圧濾過が可能なタンク付ホルダー(KST−142;アドバンテック東洋(株)製、タンク容量1.5L)のアウトレットホースノズルに、ポリエステル不織布(T−NO.380T;NBC工業(株)製、オープニング32μm)をフィルターとして挟んだディスクフィルターホルダー(PP−25;アドバンテック東洋(株)製)を接続した装置系を用いる。評価する液を1.5Lタンクに入れ、圧縮空気によって2.0kgf/cm 2 に加圧して濾過を行なう。フィルターが詰まり液が流れず滴下している状態になるまでに濾過された液の量を計り、その量が多いほど濾過適性に優れていると判定した。1.5L全て濾過されたときは、その液はこの装置で測定不能なほど濾過適性に優れているということになる。
【0047】
〔ブレード適性評価実験〕
ブレード適性の評価には以下に示す方法を用いた。マイクログラビアコーターにグラビアメッシュのないR0ロールを設置し、評価する液に浸して120rpmで回転させ、そのロールにプラスチックブレードE1000S((株)イーエルジャパン製、素材厚1mm、刃先厚0.22mm)を幅300mmで圧力3.0kgf/cm2 以上で当てて1時間そのまま回転させる。1時間後ブレードとロールの間に剪断によりゲルが発生しているため、これを掻きとって乾燥させたゲルの重量を測定した。ゲルの量が少ないほどブレード適性に優れている液である。
【0048】
(実施例1)
荷電粒子として高純度モンモリロナイト(商品名クニピアG;クニミネ工業( 株) 製)を、樹脂としてポリビニルアルコール(PVA117H;( 株) クラレ製,ケン化度; 99.6モル%,重合度1700)を、溶剤に1−ブタノールを用いた。水を1410gはかり、分散釜(商品名デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に入れ、低速撹拌下、ポリビニルアルコール50gを加えた後、撹拌速度を上げ(1500rpm、周速度4.10m/秒)、昇温開始し95℃に達したらその温度で1時間撹拌を行なって完全に溶解させた。撹拌したまま60℃に温度を下げた後、1−ブタノール15gを滴下して加えて最終的な溶剤分率が重量にして1%となるようにし、その後高純度モンモリロナイト25gを加えた。高純度モンモリロナイトが液中にほぼ沈んだことを確認後、高速撹拌(3100rpm、周速度8.47m/秒)を90分間行い、分散終了後、濾過適性評価などを行った。結果は第1表、第2表に示すとおり濾過適性、ブレード適性に優れたものであった。
【0049】
(実施例2〜5)
荷電粒子、樹脂、溶剤、分散条件、配合順序などを第1表に示したものとした以外は、実施例1と同様にして分散試験を行った。結果は第1表、第2表に示すとおり優れたものであった。
【0050】
(比較例1〜2)
荷電粒子、樹脂、溶剤、分散条件、配合順序などを第1表に示したものとした以外は、実施例1と同様にして分散試験を行った。結果は第1表、第2表に示すとおり劣ったものであった。
【0051】
(実施例6)
実施例2の分散液を厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(内面コロナ処理品 商品名FOK;二村三昌( 株) 製)を基材として、マイクログラビアコーターを用いライン速度6m/分、乾燥温度100℃で膜厚0.6μm となるように塗布・乾燥し積層体を得た。積層体の酸素透過度は0.05cc/m2 ・day・atmと優れたものであった。またこうして得た積層体に無延伸ポリプロピレンフィルム(内面コロナ処理品 商品名パイレンP−1153;東洋紡績( 株) 製)を市販の接着剤を用いてドライラミネートしたところ、全光線透過率が92%、HAZEが10%の透明性良好な積層体が得られた。
【0052】
【表1】
Figure 0003671518
KG:高純度モンモリロナイト(商品名クニピアG;クニミネ工業(株) 製)
117H:ポリビニルアルコール(PVA117H;( 株)クラレ製,ケン 化度;99.6モル%, 重合度1700)
EtOH:エタノール
IPA :2−プロパノール
BuOH:1−ブタノール
配合順序A: 樹脂 → 溶剤 → 荷電粒子の順で水に添加
配合順序B: 樹脂 → 荷電粒子→溶剤の順で水に添加
配合順序C: 樹脂 → 荷電粒子の順で水に添加
【0053】
【表2】
Figure 0003671518
目視評価:ブレード適性評価実験にてロール、ブレードに発生したゲルの量、ロールに発生したスジを目視で評価。
○:ゲル少なく、コーティングに問題無し。
×:ゲル多く、フィルムのコーティング面にスジ、ゲル発生の恐れ有り。
ゲル重量測定:ブレード適性評価実験にて、ブレードのゲルをかきとり、乾燥して重量測定。
【0054】
【表3】
Figure 0003671518

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、無機層状化合物のX線回折ピークと、該化合物の「単位厚みa」との関係を模式的に示すグラフである。
【図2】図2は、無機層状化合物を含む樹脂組成物のX線回折ピークと、該組成物の「面間隔d」との関係を模式的に示すグラフである。
【図3】図3は、「面間隔d」に対応するピークがハロー(ないしバックグラウンド)と重なって検出することが困難な場合における樹脂組成物のX線回折ピークと、該組成物の「面間隔d」との関係を模式的に示すグラフである。この図においては、2θdより低角側のベースラインを除いた部分の面積を、「面間隔d」に対応するピークとしている。

Claims (3)

  1. 樹脂の水溶液または樹脂の水分散液に、溶剤および荷電粒子を溶剤、荷電粒子の順序で或いは荷電粒子、溶剤の順序で加える荷電粒子分散液の製造法であって、該溶剤が炭素数1から8個のアルコールであることを特徴とする荷電粒子分散液の製造法
  2. 樹脂がポリビニルアルコールである請求項1記載の荷電粒子分散液の製造法
  3. 荷電粒子が、アスペクト比が50以上5000以下の無機層状化合物である請求項1または2記載の荷電粒子分散液の製造法
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