JP4817078B2 - シリコンウェーハ - Google Patents

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Description

この発明はシリコンウェーハ、詳しくは半導体の集積回路素子用のエピタキシャルシリコンウェーハとして好適なシリコンウェーハに関する。
シリコン半導体の集積回路素子(デバイス)の高集積化は、急速に進んでおり、デバイスが形成されるシリコンウェーハの品質に対する要求は、ますます厳しくなっている。すなわち、高集積化に伴い集積回路は微細となる。そのため、デバイスが形成されるいわゆるデバイス活性領域では、転位などの結晶欠陥および金属系不純物が厳しく制限される。これらは、リーク電流の増大およびキャリアのライフタイム低下の原因となるためである。
近年、電源コントロールなどの用途として、パワー半導体デバイスが用いられている。パワー半導体デバイス用の基板としては、チョクラルスキー(CZ)法により育成されたシリコン単結晶インゴットをスライスし、得られたシリコンウェーハの表面に、結晶欠陥をほぼ完全に含まないシリコンエピタキシャル層を成長させたエピタキシャルシリコンウェーハが主に利用されている。そのシリコンウェーハには、一般的に高濃度にドーパントがドープされている。
パワー半導体デバイスは、さらなる低消費電力化に向け、抵抗率が低いシリコンウェーハの提供が求められている。n型シリコンウェーハの場合では、n型のドーパントである砒素(As)を高濃度にドープすることで、0.002Ωcmのシリコンウェーハを作製する。また、p型のシリコンウェーハの場合では、p型のドーパントであるボロン(B)を高濃度にドープし、p型のエピタキシャルシリコンウェーハの基板とする。
しかしながら、特に0.003Ωcm以下の抵抗率のシリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を成長させると、シリコンウェーハの格子定数とシリコンエピタキシャル層の格子定数との差を起因とし、エピタキシャルシリコンウェーハ内にミスフィット転位が発生する。ミスフィット転位はエピタキシャル成長中にシリコンエピタキシャル層の表面に移動することから、半導体デバイスを作製する活性領域に転位が存在する。このように、シリコンエピタキシャル層に結晶欠陥としての転位が存在すると、デバイスの動作不良の原因となり、良品歩留まりが低下する。
上述した問題を解消する従来技術として、例えば特許文献1のように、ボロン(B)をドープしたシリコンウェーハにゲルマニウム(Ge)をドープする方法が知られている。開示された技術によれば、ボロンおよびゲルマニウムを[Ge]=8[B]の関係式を満足するようにドープすることで、ボロンが0.002%以上(0.015Ωcm以下)ドープされたシリコンウェーハの格子定数と、シリコンエピタキシャル層の格子定数との差を解消し、ミスフィット転位の発生を低減することができるとしている。上記式中、[B]はボロン濃度、[Ge]はゲルマニウム濃度である。
米国特許第4769689号
しかしながら、シリコン単結晶の育成方法としてCZ法を採用した場合、ボロンの偏析係数とゲルマニウムの偏析係数とが異なることから、育成するシリコン結晶のすべての結晶領域(結晶長)が、常に、特許文献1の[Ge]=8[B]の関係を満足させることは不可能である。また、シリコンウェーハの抵抗率を低くするため、ボロンを高濃度にドープした場合に必要なゲルマニウムのドープ量は膨大となる。例えば、ボロン濃度が3.6×1019atoms/cm(抵抗率0.003Ωcm)の場合には、シリコン融液の重量が35kgとすると、必要となるゲルマニウム量は1.5kgとなる。ゲルマニウムが非常に高価であることから、シリコンウェーハの製造コストが高騰する。
さらに、発明者の検討によれば、高濃度にボロンを添加するとともに、高濃度にゲルマニウムをドープした場合、シリコン単結晶育成時にシリコン単結晶が有転位化する確率が高まり、シリコン単結晶インゴットの製造時の結晶歩留まりを低下させることが判明した。
この発明は、ミスフィット転位の発生を効果的に抑制することができるシリコンウェーハを提供することを、その目的としている。
また、この発明は、抵抗率が0.003Ωcm以下のミスフィット転位が発生しやすいシリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を成長させるに際して、ミスフィット転位の発生を効果的に抑制することができるシリコンウェーハを提供することを、その目的としている。
請求項1に記載の発明は、チョクラルスキー法により育成され、ボロン濃度が3.6〜5.6×10 19 atoms/cm 及び、ゲルマニウム濃度が0.50〜2.25×10 20 atoms/cm であり、 抵抗率が0.003Ωcm以下で、前記ボロン濃度と前記ゲルマニウム濃度とが、−0.8×10−3≦4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]≦1.5×10−3の関係式を満たし、前記ゲルマニウム濃度が前記ボロン濃度の1.4〜4.0倍となるようにボロン及びゲルマニウムが添加されたシリコンウェーハである。
ただし、[B]はボロン濃度、[Ge]はゲルマニウム濃度、濃度単位はatoms/cmとする。
請求項1に記載のシリコンウェーハによれば、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を育成するあたり、−0.8×10−3≦4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]≦1.5×10−3の関係式を満たす範囲で、シリコン融液にボロンとゲルマニウムとを添加する。この式中、[B]はボロン濃度、[Ge]はゲルマニウム濃度、濃度単位はatoms/cmである。
上記式を満足するほどの多量のボロンとゲルマニウムとをシリコン融液に添加すると、シリコンウェーハの抵抗率が大きく低下する。このように抵抗率が低いシリコンウェーハでは、通常、シリコンウェーハの格子定数と、そのウェーハ表面にエピタキシャル成長されるシリコンエピタキシャル層の格子定数との差が大きく、ミスフィット転位が発生しやすい。
しかしながら、大量なボロンの添加によるシリコンの格子定数の短小化を、ゲルマニウムを添加することで抑制している。ゲルマニウムは、シリコンの格子定数を長大化する作用を有している。そのため、シリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を成長する際、シリコンエピタキシャル層の格子定数とシリコンウェーハの格子定数との差が小さくなる。その結果、ミスフィット転位の発生を効果的に抑制することができる。これにより、ミスフィット転位の発生が抑制されたデバイス特性の優れたエピタキシャルシリコンウェーハの作製が可能となる。
高濃度にボロンを添加したシリコンウェーハの表面にシリコンエピタキシャル膜を成膜した場合に発生するミスフィット転位は、シリコンウェーハ側の格子定数とシリコンエピタキシャル膜中の格子定数との差に起因すると考えられる。ボロン濃度の変化による格子定数変化(ΔaSi−B、単位はオングストローム)は、下記の式(Vegard則)で計算される。
ΔaSi−B=aSi×(r−rSi)/rSi×[B]/[Si]........(1a)
式中、aSiはいかなる元素も添加されていないシリコン単結晶の格子定数である。また、rSiはシリコン(Si)原子の半径、rBはボロン(B)原子の半径、[B]はボロン濃度、[Si]はシリコン濃度を示している。シリコン原子の半径は1.17オングストローム、ボロン原子の半径は0.88オングストロームである。高純度シリコン結晶の格子定数(aSi)は5.43オングストロームである。また、シリコン単結晶のSi原子密度は5.0×1022atoms/cmである。これにより(1a)式は、
ΔaSi−B=−2.69×10−23×[B]........(1b)
となる。この式から明らかなように、高濃度にボロンを添加したシリコンウェーハの場合、ボロンを添加しないものに比べて格子定数が小さくなる。
一方、ゲルマニウムをドープした場合の格子定数変化(ΔaSi−Ge、単位はオングストローム)も(1a)式と同様に(Vegard則)を用いて計算される。
ΔaSi−Ge=aSi×(rGe−rSi)/rSi×[Ge]/[Si]........(2a)
ここで、rGeはゲルマニウムの原子の半径で1.22オングストローム、[Ge]はゲルマニウムの濃度である。したがって、(2a)式は、
ΔaSi−Ge=4.64×10−24[Ge]........(2b)
と表せる。よって、ゲルマニウムを添加することでゲルマニウムを添加しない場合に比べて格子定数が大きくなる。
以上のことから、ボロンとゲルマニウムを同時添加した場合の格子定数変化(ΔaSi−Ge−B=(ΔaSi−Ge−B、単位はオングストローム)は(1b)式と(2b)式との和で求められる。
ΔaSi−Ge−B=ΔaSi−Ge+ΔaSi−B=4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]........(3)
ゲルマニウムをボロンと同時にドープすることで、エピタキシャル基板であるシリコンウェーハ内での格子変化が抑制され、シリコンエピタキシャル層の格子定数とシリコンウェーハの格子定数との差が少なくなる。よって、ミスフィット転位の発生が抑制されたと考えられる。
4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]が−0.8×10−3未満あるいは4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]が1.5×10−3を超える場合には、ミスフィット転位が発生する。
シリコン単結晶インゴットの初期酸素濃度は、酸素濃度不足によるシリコンウェーハの強度の低下抑制と、十分なIG効果を得るのに必要な酸素析出量を確保するため、1.0×1018atoms/cm(ASTM−’79)以上とした方が好ましい。
また、発明者の詳細な検討によれば、ゲルマニウムを添加しない場合、シリコンウェーハ中のボロン濃度が3.6×1019atoms/cmであれば、シリコンエピタキシャル層の厚さが2μm以上でミスフィット転位の発生が顕著となる。
これに対して、ボロン濃度が1.1×1019atoms/cmの場合、シリコンエピタキシャル層の厚さが15μm以上でミスフィット転位が発生する。すなわち、3.6×1019atoms/cm以下のボロン濃度を有するシリコンウェーハであっても、シリコンエピタキシャル層を厚く成長させた場合には、本発明の効果を期待することができる。
上記シリコンウェーハによれば、ボロン濃度を3.6〜5.6×1019atoms/cm、抵抗率を0.003Ωcm以下としている。ここまでボロン濃度を高めたシリコン単結晶インゴットでは、ミスフィット転位が発生しやすい。
しかしながら、上述したように高濃度なボロンの添加によるシリコンの格子定数の短小化を、同時に添加されたゲルマニウムが抑制する。その結果、ミスフィット転位の発生を抑制することができる。
ボロン濃度が3.6〜5.6×1019atoms/cm以上、抵抗率が0.003Ωcm以下の低抵抗率のシリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル層を形成する場合、他の比較的抵抗率の高いシリコンウェーハを使用する場合に比べて、特にミスフィット転位が発生しやすくなる。これにより、本発明で規定する所定量のゲルマニウムの添加が有効となる。
また、このシリコンウェーハによれば、ミスフィット転位の発生を低減するために必要なゲルマニウム濃度を、ボロン濃度の1.4〜4.0倍としている。これにより、ゲルマニウム濃度がボロン濃度の8倍となる従来法に比較して、ゲルマニウムの使用量を低減することができる。
ゲルマニウムは高価である。よって、シリコンウェーハの製造コストを低減させることができる。
しかも、ボロンとゲルマニウムとを高濃度にドープすると、シリコン単結晶育成時、シリコン単結晶が有転位化する確率が高まる。しかしながら、ゲルマニウムの添加量が従来に比較して少ないので、有転位化する確率も抑えることができる。その結果、シリコン単結晶インゴットの製造時の結晶歩留まりを高めることができる。
ゲルマニウム濃度のボロン濃度に対する倍率は1.4〜4.0倍である。4.0倍を超えると、シリコン単結晶育成時にシリコン単結晶が有転位化する確率が高まり、シリコン単結晶インゴットの製造時の結晶歩留まりが低下する。
請求項に記載の発明は、炭素が、1×1016atoms/cm以上の濃度でドープされた請求項1に記載のシリコンウェーハである。
このシリコンウェーハでは、シリコン融液中にボロン、ゲルマニウムだけではなく、炭素を1×1016atoms/cm以上の濃度で添加する。このように炭素をドープすると、熱応力に対する耐性が増大し、その後、シリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層をエピタキシャル成長する場合、塑性変形量が小さくなる。したがって、ボロンとゲルマニウムだけをドープしたシリコンウェーハに比べて、ミスフィット転位の発生がより抑制される。また、炭素をドープすれば、エピタキシャル成長後の酸素析出核形成量も増大する。これにより、炭素をドープしない場合に比べて多量のBMDが発生し、シリコンウェーハのIG効果を増大することができる。その結果、デバイス作製時の歩留まりを高めることができる。
ミスフィット転位の発生は、上述したシリコンウェーハの格子定数とシリコンエピタキシャル層の格子定数とのミスマッチだけではなく、シリコンエピタキシャル層をエピタキシャル成長中の熱応力の作用によるシリコンウェーハの塑性変形量も関係していると考えられる。これを踏まえて、ゲルマニウムに加えて炭素をドープしたシリコンウェーハでは、ボロンおよびゲルマニウムをドープしたシリコンウェーハと比較し、ミスフィット転位の発生が抑制される。その理由は定かではないものの、炭素をドープしたことで熱応力に対する耐性が増大し、エピタキシャル成長中の塑性変形量が小さくなることなどが考えられる。
また、シリコン単結晶中に炭素をドープすれば、エピタキシャル成長後の酸素析出核形成量が増大し、炭素をドープしない場合よりも多くの熱処理誘起欠陥(BMD:Bulk Micro Defect)が観察される。
酸素析出物は、デバイス作製時に発生する重金属原子をシリコンウェーハ内に捕獲するIG(Intrinsic Gettering)に有効である。そのため、BMD密度が高いシリコンウェーハはそのIG効果が大きく、デバイス作製時の歩留まり改善に有効である。
請求項1に記載のシリコンウェーハによれば、ボロンとゲルマニウムとを−0.8×10−3≦4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]≦1.5×10−3の関係式を満たす範囲でシリコンウェーハにドープしたので、高濃度にボロンが添加されたシリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を成長する場合に生じるミスフィット転位を低減することができる。
特に、このシリコンウェーハによれば、ボロン濃度が3.6〜5.6×1019atoms/cm以上、シリコンウェーハの抵抗率が0.003Ωcm以下の、ゲッタリング能力に優れた高品質なエピタキシャルシリコンウェーハを提供することができる。
また、このシリコンウェーハによれば、ミスフィット転位を低減するために必要なゲルマニウム濃度をボロン濃度の1.4〜4.0倍としたので、ゲルマニウムの使用量を低減させることができる。その結果、シリコンウェーハ(シリコンエピタキシャルウェーハ)の製造コストを安価にすることできる。しかも、有転位化の確率を抑えることができる。よって、シリコン単結晶インゴットの製造時の結晶歩留まりを高めることができる。
さらに、請求項2に記載のシリコンウェーハでは、シリコン融液中にボロン、ゲルマニウムだけではなく、炭素を1×1016atoms/cm以上の濃度で添加したので、ボロンとゲルマニウムとがドープされたシリコンウェーハに比べて、ミスフィット転位の発生を抑制することができる。また、炭素をドープすれば、エピタキシャル成長後の酸素析出核形成量も増大する。これにより、炭素をドープしない場合に比べて多量のBMDが発生し、シリコンウェーハのIG効果を増大することができる。その結果、デバイス作製時の歩留まりを高めることができる。
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。ただし、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
CZ法によりシリコン単結晶インゴットを育成する際、(1)シリコン融液にボロンおよびゲルマニウムを所定量ずつドープし、直径150mmのシリコン単結晶を育成した。また、(2)シリコン融液にボロン、ゲルマニウムおよび炭素をそれぞれ所定量ずつドープし、直径150mmのシリコン単結晶インゴットを育成した。ボロン、ゲルマニウムおよび炭素の濃度の測定は、2次イオン質量分析装置(SIMS)を使用した。
(1),(2)により作製された各シリコン単結晶インゴットからシリコンウェーハをスライスし、各スライスドウェーハに対して常法に則り、面取り、ラップ、酸エッチング、鏡面研磨の各工程を施してシリコンウェーハを作製した。
次に、(1),(2)のシリコンウェーハをエピタキシャル成長装置内にそれぞれ挿入し、1150℃で水素ベーク後、これらをエピタキシャル成長装置内で、1075℃の条件下で、SiHClガスを供給し、各シリコンウェーハの表面に6μmまたは15μmの厚さのシリコンエピタキシャル層を成長させ、(1),(2)のシリコンウェーハを基板としたエピタキシャルシリコンウェーハをそれぞれ製造した。
その後、各エピタキシャルシリコンウェーハのエピタキシャル層の表面をX線トポグラフィーにより検査し、ミスフィット転位の発生状況を観察した。
次に、これらのエピタキシャルシリコンウェーハに800℃で4時間の熱処理を施し、その後、さらに1000℃で16時間の熱処理を施し、ウェーハを劈開してライトエッチング液(HF+HNO+CrO+Cu(NO+H2O+CH−COOH)により3分間の選択エッチングを行い、光学顕微鏡により1cm当たりのエッチングピットをカウントすることで、シリコンウェーハ内に形成された熱処理誘起欠陥の密度を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0004817078
比較例1はゲルマニウムをドープしていない。そのため、シリコンウェーハの格子定数変化(ΔaSi−Ge−B)が−0.8×10−3atoms/cm未満で、ミスフィット転位が発生している。
ゲルマニウムがドープされた試験例1,2ではΔaSi−Ge−Bが−0.8×10−3atoms/cm以上、1.5×10−3atoms/cm以下で、ミスフィット転位の発生が抑制されている。
ゲルマニウムがドープされた比較例2では、ゲルマニウムのドープ量が試験例1,2と比較して高濃度にドープされている。そのため、ΔaSi−Ge−Bが1.5×10−3atoms/cmを超え、シリコンウェーハの一部にミスフィット転位が観察された。
ミスフィット転位の発生状況の一例として、比較例1のX線トポグラフィー像を図1(a)に示す。高密度のミスフィット転位がシリコンウェーハの全面で観察されている。また、ボロンとゲルマニウムとが添加された試験例1のX線トポグラフィー像を図1(b)に示す。ミスフィット転位の発生は、比較例1に比べて大幅に抑制されていることがわかる。
エピタキシャル層の膜厚を15μmと厚く成長させた試験例3,4および比較例3のうち、ΔaSi−Ge−Bが−0.73×10−3atoms/cmの試験例3では、ミスフィット転位がウェーハ外周部に観察された。ただし、特に問題となるレベルではない。
試験例4では、ミスフィット転位はまったく観察されなかった。
比較例3では、ΔaSi−Ge−Bが1.58×10−3atoms/cmであり、比較例2と比べてエピタキシャル層の膜厚が厚いため、より多くのミスフィット転位がウェーハ全面で観察された。
炭素をドープした試験例5は、炭素濃度が1×1016atoms/cm未満である。そのため、ミスフィット転位の発生レベル、またはBMD密度も試験例3と比べて大差なかった。
炭素濃度が1×1016atoms/cm以上となった試験例6では、試験例3に比べてミスフィット転位の発生が抑制され、BMD密度も高密度に観察された。
次に、CZ法によるシリコン単結晶インゴットの育成時において、高濃度ボロンと高濃度ゲルマニウムとを同時に添加したときの、結晶歩留まりの影響を調査した。すなわち、ボロン、ゲルマニウムの濃度比率を変更し、各濃度比率を有する直径150mmのシリコン単結晶インゴットを複数本(n数=各4本)育成し、シリコン単結晶の有転位化発生状況を調査した。その結果を表2に示す。表中、○印は、単結晶全長で無転位シリコン単結晶が育成された場合を示し、×印は、単結晶育成過程でシリコン単結晶に転位が発生した場合を示す。
Figure 0004817078
表2から明らかなように、添加されたゲルマニウム濃度がボロン濃度の5倍を超える比較例4〜6では、何れも無転位化率は50%以下であり、無転位シリコン単結晶の収率が低くなることが分かる。
一方、添加したゲルマニウム濃度がボロン濃度の5倍以下である試験例7〜10では、著しく無転位シリコン単結晶の収率が向上した。
このように、添加するボロン濃度とゲルマニウム濃度を−0.8×10−3≦4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]≦1.5×10−3の範囲内でドープしたことで、エピタキシャル膜成長時のミスフィット転位発生を防止することができる。
特に、添加するゲルマニウム濃度がボロン濃度の5倍以下となるようにドープすれば、シリコン単結晶育成時の有転位化発生も効果的に抑制することができる。
(a)表1中の比較例1のX線トポグラフィー像である。(b)表1中の試験例1のX線トポグラフィー像である。

Claims (2)

  1. チョクラルスキー法により育成され、ボロン濃度が3.6〜5.6×10 19 atoms/cm 及び、ゲルマニウム濃度が0.50〜2.25×10 20 atoms/cm であり、 抵抗率が0.003Ωcm以下で、
    前記ボロン濃度と前記ゲルマニウム濃度とが、
    −0.8×10−3≦4.64×10−24×[Ge]−2.69×10−23×[B]≦1.5×10−3
    の関係式を満たし、前記ゲルマニウム濃度が前記ボロン濃度の1.4〜4.0倍となるようにボロン及びゲルマニウムが添加されたシリコンウェーハ。
    ただし、[B]はボロン濃度、[Ge]はゲルマニウム濃度、濃度単位はatoms/cmとする。
  2. 炭素が、1×1016atoms/cm以上の濃度でドープされた請求項1に記載のシリコンウェーハ。
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