JP4814454B2 - フォトクロミック材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトクロミック材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック材料は、光の作用などにより化学結合状態の異なる2つの異性体を可逆的に生成する分子または分子集合体を含むフォトクロミック反応特性を有する材料であって、異性体によって吸収スペクトルあるいは屈折率が変化するものである。
このようなフォトクロミック材料は、典型的には、可視域に吸収を有さない無色の構造体に紫外線を照射すると、可視域の特定領域に吸収を有する着色構造体に変化し、この着色構造体に可視光を照射することによって無色の構造体に戻るという特性を示すものであり、このような特性を利用した製品の研究開発が行われている。
【0003】
現在、フォトクロミック材料としては、スピロピラン化合物、アゾベンゼン化合物、フルギド化合物、ジアリールエテン化合物などよりなる材料が知られているが、これらのうち、ジアリールエテン化合物は、フォトクロミック反応の繰り返し耐久性に優れていると共に、着色構造体の熱安定性が高いものであることから、実用上、記録表示媒体などの構成部材に有用なものとして注目されている。
【0004】
フォトクロミック材料を構成するジアリールエテン化合物は、無色の構造体である開環体が紫外線を吸収することにより、特有の光閉環反応を生じて可視域に吸収を有する閉環体となり、吸収波長領域に応じた特有の色を呈する着色構造体となるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フォトクロミック反応の繰り返し耐久性に優れ、可視光により光退色しにくく、しかも、加熱処理による優れた退色性を有するジアリールエテン化合物よりなるフォトクロミック材料の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のフォトクロミック材料の製造方法は、イソプロピル基を有するチオフェンボロン酸および2,5−ジブチル−1−ヨード−4−フェニルエチニルベンゼンをカップリング反応することによって得られる化合物と、ペルフルオロシクロペンテンとをカップリング反応することにより、下記式(1)で表されるイソプロピル基および共役鎖置換フェニル基を有するジアリールエテン化合物を得ることを特徴とする。
【0007】
【化2】
【0008】
〔式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に共役鎖置換フェニル基を示し、また、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基を示す。〕
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のフォトクロミック材料の好ましい具体例は、下記一般式(i)で表される2個のイソプロピル基を有するジアリールエテン化合物よりなるものである。
【0014】
【化3】
【0015】
〔式中、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、Buはブチル基を示す。〕
【0016】
この一般式(i)で表されるジアリールエテン化合物は、反応式(1)に示すように、無色の構造体である開環体と、青色を呈する着色構造体である閉環体とに可逆的に変化する。
具体的には、開環体に対して200〜400nmの波長領域の紫外線が照射されることにより、各々イソプロピル基が結合している2つの炭素原子が結合して環化し、これによって閉環体に変化して呈色し、一方、この閉環体に対して450〜750nmの波長領域の可視光が、例えば5時間以上の長時間照射されることにより、6員環に係るイソプロピル基の各々が結合している2つの炭素原子間の結合が切断して開環し、これによって開環体に変化して退色する。
【0017】
【化4】
【0018】
〔式中、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、Buはブチル基を示す。〕
【0019】
そして、着色構造体である閉環体は、可視光が遮光された暗所において、50℃以下では高い構造安定性を有するものであるが、100℃以上に加熱することによって、比較的短時間、例えば30分間以内に開環体に変化し、その結果、退色する。
具体的には、閉環体を、例えば150℃で10秒間加熱処理することによって開環体に変化させることができる。
【0020】
以上のような開環体と閉環体との可逆的な変化、すなわち、ジアリールエテン化合物に係る呈色および退色は、繰り返し行うことができる。
【0021】
このようなフォトクロミック材料を構成するジアリールエテン化合物は、以下のようにして合成することができる。
下記反応式(2)で示すように、例えばp−ジクロロベンゼンを出発物質として合成される2,5−ジブチル−1−ヨード−4−フェニルエチニルベンゼンと、2−メチルチオフェンを出発物質として合成される2位にイソプロピル基を有するチオフェンボロン酸とをカップリング反応させることにより、ヨウ素原子が解離したフェニルチエニルベンゼンの残基と、水酸化ホウ素に由来する基が解離したチオフェンボロン酸の残基とが結合することによって中間生成物(1)が得られ、この中間生成物(1)と、ペルフルオロシクロペンテンとをカップリング反応させることにより、中間生成物(1)に係る臭素原子と、ペルフルオロシクロペンテンに係る水素原子とにおいて解離および結合がなされる結果、目的の一般式(i)で表されるジアリールエテン化合物が合成される。
【0022】
【化5】
【0023】
〔式中、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、Buはブチル基を示す。〕
【0024】
以上のフォトクロミック材料は、例えば記録表示媒体などを構成する材料として好適に用いることができる。
【0025】
以上の一般式(i)で表されるジアリールエテン化合物よりなるフォトクロミック材料は、一般式(1)においてR1 およびR2 が2,5−ジブチル−4−フェニルエチニルベンゼンに由来する基のものであるが、このR1 およびR2 は、共役鎖置換フェニル基であればよい。
【0026】
具体的に、一般式(1)で表されるジアリールエテン化合物としては、下記一般式(ii)で表される化合物などが挙げられる。
【0027】
【化6】
【0028】
〔式中、R3 およびR4 は、それぞれ独立に置換可能なフェニル基を示し、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基を示す。〕
【0029】
一般式(1)で表されるジアリールエテン化合物における開環体と閉環体との可逆的な変化を、下記の反応式(3)に示す。
なお、この反応式(3)における開環体は無色の構造体であり、一方、閉環体は着色構造体である。
【0030】
【化7】
【0031】
〔式中、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基を示す。〕
【0032】
本発明の記録表示媒体は、例えばポリメチルメタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、シクロオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂、ガラス、紙などよりなる、例えば厚さ0.05〜5mmの基板と、この基板上に形成された、上記のフォトクロミック材料を含有する材料よりなる記録層とにより構成されており、例えば基板の両面、あるいは基板の片面に記録層が形成されてなるものである。
ここで、記録層の厚さは、通常、0.01〜1mmである。
【0033】
このような記録表示媒体の記録層は、例えば以下のようにして形成される。
先ず、フォトクロミック材料を樹脂バインダーと共に、有機溶剤に溶解または分散させた塗布液を調製する。
そして、基材の表面に、調製した塗布液を塗布し、得られた塗膜に対して有機溶剤の除去処理を行うことによって記録層が形成される。
【0034】
以上において、塗布液を調製するための樹脂バインダーとしては、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、シクロオレフィン樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂などの紫外線硬化樹脂などが挙げられる。これらの樹脂バインダーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂バインダーの使用割合は、通常、フォトクロミック材料100質量部に対して、0.1〜40質量部となる割合である。
【0035】
塗布液を調製するための有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、四塩化炭素、クロロホルムなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機溶剤の使用割合は、通常、フォトクロミック材料100質量部に対して、、1〜10質量部となる割合である。
また、塗布液を塗布する手段としては、例えばスピンコート法、ディッピング法、ロールコート法などを利用することができる。
【0036】
以上のような構成の記録表示媒体においては、例えばキセノンランプ、水銀ランプ、ハロゲンランプ、LED、レーザーなどを用い、記録層に集束した紫外線を、通常、1秒間以上照射する方法により、この照射に係る部分が着色されることによって情報が記録され、その記録された情報は、着色状態の変化として表示される。
一方、記録表示媒体に記録された情報は、ホットプレート、ヒートローラー、赤外線ランプなどを用い、記録層を、100℃以上で加熱処理する方法によって消去される。
【0037】
このようにして、記録表示媒体においては、情報の記録と消去とを繰り返し行うことができる。
【0038】
以上のような記録表示媒体によれば、当該記録表示媒体の記録層がフォトクロミック材料よりなり、このフォトクロミック材料を構成するジアリールエテン化合物が後述するように、加熱処理による優れた退色性を有するものであることから、温度条件を制御することにより、紫外線を照射することによって記録した情報の保存および消去を選択的に行うことができ、これにより、記録された情報の安定性および保存性が優れたものとなり、しかも、記録されている情報の消去を急速的に行うこともできる。
【0039】
フォトクロミック材料は、当該フォトクロミック材料を構成するジアリールエテン化合物が、熱開環反応を促進する機能を有するイソプロピル基と、可視光退色反応を抑制する機能を有する共役鎖置換フェニル基と有しており、活性化エネルギーが大きく、高温に加熱することにより熱開環反応速度が大きくなるものであることから、当該ジアリールエテン化合物の着色構造体が50℃以下では高い構造安定性を有する一方、加熱処理することによって速やかに無色の構造体に変化するものであるため、加熱処理することによって優れた退色性が得られる。
【0040】
また、記録表示媒体は、記録層に係るジアリールエテン化合物がフォトクロミック反応の繰り返し耐久性に優れているものであるため、多数回にわたって情報の記録と消去とを繰り返すことができる。
【0041】
本発明の記録表示媒体は、例えば熱消去可能な記録表示カード、リライタブルペーパー、リライト表示ボード、リライトホワイトボード、リライトカード、リライトディスプレー、リライトOHPシート、リライトフォトマスクなどとして好適に使用することができる。
【0042】
以上、本発明を具体的な例に基づいて説明したが、本発明においては、種々の変更を加えることができる。
例えば記録表示媒体は、例えばガラスセルなどの容器と、この容器内に形成された、上記のフォトクロミック材料よりなる記録層とよりなる構成のものであってもよい。
この記録表示媒体の記録層は、フォトクロミック材料を前述の有機溶媒に溶解することによって得られる記録層用溶液を、ガラスセルなどに封入することによって形成することができる。
【0043】
また、記録表示媒体は、フォトクロミック材料と、前述の樹脂バインダーとを混合した材料を成形することによって形成される基材と記録層とを兼ね備えてなるもの、あるいは、成形体上に、フォトクロミック材料と樹脂バインダーを含むフィルムを積層することによって形成されたものであってもよい。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
また、以下に示す例中の生成物の特性の記述における 1H−NMRは、それぞれプロトン核磁気共鳴スペクトルを表す。CDCl3 は重クロロホルムを表す。プロトン核磁気共鳴スペクトルデータの表示のうち、括弧の中に示されたs、dおよびmはそれぞれ、シングレット、ダブレット、マルチプレットを表し、1H、2H、3Hなどはそれぞれプロトン1個、2個、3個相当分のスペクトル強度を意味する。
【0045】
〔フォトクロミック材料の製造〕
<フォトクロミック材料(1)の製造例>
(2,5−ジブチル−1−ヨード−4−フェニルエチニルベンゼンの合成例)
窒素雰囲気下のフラスコに、マグネシウム4.88g(0.2mol)と、エーテル80ミリリットルとを仕込み、この系に1−ブロモブタン27.4g(0.2mol)をエーテル20ミリリットルに溶解した溶液を少量滴下し、反応が開始してから再び滴下を続け、この滴下が終了した後、この反応溶液を30分間還流することによって得られたグリニャール試薬を滴下ロートに移した。
一方、フラスコに、エーテル60ミリリットルと、1,4−ジクロロベンゼン11.8g(0.08mol)と、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ププロパンニッケル(II)クロリド0.1g(0.2mmol)とを加え、この系を氷冷しながら前記グリニャール試薬を滴下した後に室温に戻して1時間撹拌し、エーテル160ミリリットルを加え4時間還流した。2Nの塩酸100ミリリットルで反応を停止させて水層をエーテルで2回抽出し、エーテル層を食塩水、重曹、食塩水の順で洗浄し、塩化カルシウムで乾燥し、この塩化カルシウムを濾別し、溶媒を留去することによって無色の液体である1,4−ジブチルベンゼンを得た。
【0046】
フラスコに、得られた1,4−ジブチルベンゼン13.8g(72.5mmol)と、ヨウ素16.6g(65.2mmol)と、オルト過ヨウ素酸6.61g(28.7mmol)と、酢酸32.5ミリリットル、水6.50ミリリットル、硫酸0.98ミリリットル(酢酸:水:硫酸=100:20:3)とを仕込み、この系を70℃で71時間30分間撹拌することによって得られた反応溶液に、氷水を注ぎ、酢酸エチルで抽出して炭酸水素ナトリウムで中和し、残留ヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで処理した後に食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、この硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を留去した後にエタノールで再結晶処理することによって白色結晶である2,5−ジヨード−1,4−ジブチルベンゼンを得た。
【0047】
フラスコに、トリエチルアミン80ミリリットルと、得られた2,5−ジヨード−1,4−ジブチルベンゼン1.10g(2.5mmol)と、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド35mg(0.05mmol)と、ヨウ化銅2.5mg(0.025mmol)とを仕込み、30分間アルゴンバブリングを行い、30分間アルゴンバブリングを行ったエチニルベンゼン0.255g(2.5mmol)のトリエチルアミン(20ミリリットル)溶液をゆっくりと滴下し、89℃で一晩撹拌した後、溶媒を留去し、ヘキサンを展開溶液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって黄色のオイルである2,5−ジブチル−1−ヨード−4−フェニルエチニルベンゼンを得た。
【0048】
(チオフェンボロン酸の合成例)
フラスコに、2−イソプロピル−4−メチルチオフェン71.0g(7.13mmol)と、酢酸25ミリリットルとを仕込み、この系に臭素2.45g(15.3mmol)の酢酸溶液5ミリリットル溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した後、氷水を注いだ後に水酸化ナトリウム水溶液で中和してからエーテル抽出を行い、炭酸ナトリウムで中和し、残留臭素をチオ硫酸ナトリウムで処理して食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、この硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を留去後、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより無色のオイルである3,5−ジブロモ−2−イソプロピル−4−メチルチオフェンを得た。
【0049】
アルゴン雰囲気下のフラスコに、得られた3,5−ジブロモ−2−イソプロピル−4−メチルチオフェン3.54g(11.9mmol)と、エーテル80ミリリットルとを仕込み、この系を−70℃に冷却した後、15%のn−ブチルリチウムヘキサン溶液7.60ミリリットル(12.5mmol)を滴下して1時間撹拌し、その後、ホウ酸トリ−n−ブチル4.80ミリリットル(17.80mmol)を滴下して、−70℃で2時間撹拌した後、室温に戻しながら終夜撹拌した。そして、2.0Nの塩酸で反応を停止させてエーテル抽出を行い、そのエーテルを6.5Nの水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、エーテル層に析出した無色結晶を水に溶解し、それを0℃に冷却して濃塩酸でpH1とすることによって得られた白色沈殿を吸引濾過し、減圧乾燥して白色粉末である3−ブロモ−2−イソプロピル−4−メチル−5−チオフェンボロン酸を得た。
【0050】
(フォトクロミック材料の合成例)
フラスコに、得られた3−ブロモ−2−イソプロピル−4−メチル−5−チオフェンボロン酸1.21g(4.60mmol)と、テトラヒドロフラン35ミリリットルと、20質量%の炭酸ナトリウム水溶液12ミリリットルと、得られた2,5−ジブチル−1−ヨード−4−フェニルエチニルベンゼン1.91g(4.60mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.273g(0.236mmol)とを仕込み、この系を70℃で5時間加熱還流した後に室温に戻し、エーテル抽出して食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥し、この硫酸マグネシウムを濾別してエーテルを留去した後、ヘキサンを展開溶液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって展開分離し、GPC(3サイクル)により、黄色のオイルであり、中間生成物であって反応式(2)における中間生成物(1)で表される3−ブロモ−5−(2’,5’−ジブチル−4’−フェニルエチニルベンゼン)−2−イソプロピル−4−メチルチオフェンを得た。
【0051】
アルゴン雰囲気下のフラスコに、得られた3−ブロモ−5−(2’,5’−ジブチル−4’−フェニルエチニルベンゼン)−2−イソプロピル−4−メチルチオフェン0.20g(0.39mmol)と、無水テトラヒドロフラン3.0ミリリットルとを仕込み、この系を−73℃に冷却して、15%n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.25ミリリットル(0.41mol)をゆっくりと滴下した後、−73℃で1時間撹拌し、ペルフルオロシクロペンテン26.4×10-3ミリリットルの無水テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、この系を4時間撹拌した後に水によりクエンチし、エーテル抽出して食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥し、この硫酸マグネシウムを濾別し、溶媒を留去した後、ヘキサンを展開溶液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって展開分離し、HPLCによって精製することによって反応生成物を得た。
得られた反応生成物をNMR測定したところ、下記の結果が得られ、この反応生成物が、上記一般式(i)で表される1,2−ビス(5−(2’,5’−ジブチル−4’−フェニルエチニルベンゼン)−2−イソプロピル−4−メチル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテンであることが確認された。
【0052】
1H−NMR(400MHz,CDCl3 ):δ=1.00,1.23,1.32(d,12H,CH(CH 3 )2 ),0.7−1.0(m,12H,CH3 ),1.3−1.7(m,16H,CH2 ),2.3−2.9(m,8H,CH2 ),1.75,1.97(s,6H,CH3 ),2.95,3.12(sept,2H,CH(CH3 )2 ),7.3−7.4,7.5−7.6(m,10H,Ar),7.01,7.44(s,4H,Ar).
【0053】
〔フォトクロミック材料の評価〕
(1)フォトクロミック反応特性の試験
得られたフォトクロミック材料(1)をトルエンに溶解することによって得られる無色の溶液をガラスセル中に封入し、その溶液に紫外線を照射したところ、青色に呈色した。
図1は、得られたフォトクロミック材料(1)に係る溶液の紫外線照前後の吸収スペクトルの変化を示すグラフである。
【0054】
(2)退色性の試験
得られたフォトクロミック材料(1)をヘキサンに溶解させた溶液よりなるサンプルに紫外線を照射した後、そのサンプルを、可視光が遮光された暗所において、表1に示す各温度条件下において極大吸収波長の吸収強度を測定し、吸収強度が半分となる半減期を調べたところ、下記の表1に示す結果が得られた。
図2は、フォトクロミック材料(1)の吸収強度と時間との関係を示すグラブである。なお、図2中において、「A/A0 」は、「紫外線照射後に係る吸収強度/紫外線照射前に係る吸収強度」である。
【0055】
【表1】
【0056】
得られたフォトクロミック材料(1)を構成するジアリールエテン化合物の熱開環反応速度定数(頻度因子)は6.4×1016s-1であり、活性化エネルギーは143kJ/molであった。
そして、得られたフォトクロミック材料(1)においては、呈色および退色を可逆的に繰り返し行うことができた。
【0057】
以上の結果から、フォトクロミック材料(1)は、暗所においても加熱することによって優れた退色性を有し、しかも、フォトクロミック反応の繰り返し耐久性に優れたものであることが確認された。
【0058】
また、比較のため、反応式(a)〜(b)で表される開環体と閉環体との可逆的な変化を示すフォトクロミック材料(a)〜(b)を、フォトクロミック材料(1)と同様の測定方法によって求めた、半減期、熱開環反応速度定数(頻度因子)および活性化エネルギーの測定値を表2に示す。これにより、フォトクロミック材料(1)は、常温下における半減期が大きい反面、高温下における半減期が小さく、また、熱開環反応速度定数(頻度因子)および活性化エネルギーが大きいことが理解される。
なお、この反応式(a)〜(b)における開環体は無色の構造体であり、一方、閉環体は着色構造体であり、また、開環体は紫外線が照射されることによって閉環体へと変化し、一方、閉環体は可視光が照射されることによって比較的短時間に、あるいは加熱処理されることによって比較的長い時間をかけて閉環体へと変化する。
【0059】
【化8】
【0060】
〔式中、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基を示す。〕
【0061】
【表2】
【0062】
<記録表示媒体の製造例>
フォトクロミック材料(1)2gをメチルエチルケトン20gに溶解した溶液に、JSR株式会社製UV硬化樹脂「デゾライトZ8001」100gを添加して混合することによって得られた塗布液をロールコーターを用いて紙に塗布することによって形成された塗膜を乾燥させた後、この塗膜を100℃で熱硬化させることにより、紙よりなる基材状に、厚さ20μmの記録層が形成されてなる記録表示媒体(1)を作製した。
【0063】
〔記録表示媒体の評価〕
記録表示媒体(1)の記録層における5mm角の表面領域(以下、「特定領域」という。)に対して、株式会社ディーメック製光造形装置「SCS8000」(レーザー波長355nm、レーザーパワー800mW)を用い、スポットサイズ0.15mm、スキャンスピード1m/秒にて紫外線を照射することによって当該特定領域を着色し、光の吸収強度を測定したところ、波長600nm付近に極大吸収波長を認めた。
更に、紫外線を照射した記録表示媒体(1)を、その表面温度が150℃となるように赤外線ランプを用いて6秒間照射した後、当該記録表示媒体(1)の光の吸収強度を測定した。
このような紫外線の照射処理と加熱処理とを繰り返して1000回行い、1回目の照射処理に係る特定領域の吸収強度(C1)と、1000回目の照射処理に係る特定領域の吸収強度(C1000)との比「C1/C1000」を調べたところ、0.88であった。
【0064】
また、1回目〜10000回目の照射処理に係る特定領域を目視にて確認したところ、特定領域は着色されており、この着色状態は室温下においては長時間保持された。
一方、1回目〜10000回目の加熱処理に係る特定領域を目視にて確認したところ、特定領域は退色していた。
更に、記録表示媒体(1)の記録層における、1000回目の着色に係る特定領域以外の表面領域の吸収強度を調べたところ、0であった。
【0065】
以上の結果から、この記録表示媒体によれば、(1)温度条件を制御することにより、記録されている情報の保存および消去を選択的に行うことができること、(2)加熱により記録されている情報の消去を急速的に行うこともできること、(3)多数回にわたって情報の記録と消去とを繰り返すことができることが確認された。
【0066】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック材料の製造方法によれば、イソプロピル基および共役鎖置換フェニル基を有する特定のジアリールエテン化合物よりなるものであって、加熱処理による優れた退色性を有し、可視光により光退色しにくく、しかも、フォトクロミック反応の繰り返し耐久性に優れたフォトクロミック材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において得られたフォトクロミック材料に係る溶液の紫外線照前後の吸収スペクトルの変化を示すグラフである。
【図2】実施例において得られたフォトクロミック材料の吸収強度と時間との関係を示すグラブである。
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