JP3390921B2 - 新規化合物及び該化合物を用いた光学的素子 - Google Patents

新規化合物及び該化合物を用いた光学的素子

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JP3390921B2 JP2000374330A JP2000374330A JP3390921B2 JP 3390921 B2 JP3390921 B2 JP 3390921B2 JP 2000374330 A JP2000374330 A JP 2000374330A JP 2000374330 A JP2000374330 A JP 2000374330A JP 3390921 B2 JP3390921 B2 JP 3390921B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規化合物及びそ
の合成方法に関し、特に、フォトクロミック材料に用い
ることが可能な化合物及びその合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フォトクロミズムを利用する表示、光記
録、スイッチング素子用材料には、光照射に伴い吸収ス
ペクトルが可逆的に変化すること、吸収スペクトルの変
化(吸光度ならびに吸収帯の波長領域)が大きいこと、
感度が高いこと、吸収スペクトルの変化の速度が大きい
こと、繰り返し安定性に優れること、暗所における光反
応生成物の安定性が高いこと、等が求められる。特に、
光照射に伴う吸収スペクトルの変化をできるだけ大きく
するには、フォトクロミズムを示す光反応基の濃度をで
きるだけ高くするとともに、光照射時における反応の転
化率及び反応の効率を高くする必要がある。更に、表示
素子では、吸収スペクトルが可視領域(400〜700nm)に
おいて変化すること、書き込み速度を向上させるように
着色反応の量子収率が大きいこと、及び通常の強度の可
視光のもとで表示が消えないように、消去反応の量子収
率が小さいことが求められる。また、光散乱しないこと
ならびに薄膜を形成できることが必要である。したがっ
て、このような素子に用いられる材料は、均質なアモル
ファス薄膜を形成できることが望まれる。
【0003】従来、アモルファス薄膜形成能の観点か
ら、フォトクロミズムを利用する表示、光記録媒体、光
スイッチング素子用材料としては、高分子材料、あるい
は、高分子に低分子フォトクロミック化合物を分散した
高分子複合材料が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
高分子材料若しくは高分子複合材料では、光反応基の濃
度を100%にすることができない。なぜなら、高分子
材料の場合には高分子主鎖、高分子複合材料の場合には
高分子バインダーが存在し、これら高分子主鎖及び高分
子バインダーは、光反応基とは無関係の成分であるた
め、これらの系では、光反応基の濃度を100%まで高める
ことは不可能だからである。
【0005】また、高分子複合材料の場合、分散させた
低分子有機化合物と高分子との相溶性の問題から、分散
した低分子有機化合物と高分子が相分離し、結晶化する
などの問題を引き起こす。したがって、光反応基を高密
度化し、相分離を引き起こさず、かつ高い転化率及び反
応効率を達成できるフォトクロミズムを利用する表示、
光記録、光スイッチング素子用材料の開発が望ましい。
しかし、このような材料は、これまで知られていない。
【0006】そこで、本発明の目的は、薄膜の形成が可
能で、かつ、光反応基の高密度化及び高い光反応転化率
を達成することが可能な化合物及び該化合物を用いたフ
ォトクロミック材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、発明者らは、鋭意研究の結果、低分子有機化合物単
独でアモルファス薄膜を形成可能な化合物を見出した。
【0008】本発明の化合物は、以下の一般式、
【化9】 (但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、 Rは、水
素、又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐したアルキル基、
又はアリール基を示し、R3は、共役可能な不飽和結合を
有する任意の置換基を示す。Xは、F、Cl、Br及びI等の
ハロゲンを示す。)で表されることを特徴とする。
【0009】また、本発明の化合物の好ましい実施態様
においては、R3が、次式
【化10】 で表される(但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、
メトキシ基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、R4
は、炭素数1〜10の直鎖又は分岐したアルキル基又はフ
ェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、インドリル
基、フリル基などの芳香族炭化水素あるいは複素環芳香
族置換基を示す。Zは、硫黄、酸素及び水素あるいはア
ルキル基が結合した窒素のいずれか1つを示す。)こと
を特徴とする。
【0010】また、本発明の化合物の好ましい実施態様
においては、一般式、
【化11】 で表される(但し、Rは、水素、メチル基、エチル
基、メトキシ基、i−プロピル基、t−ブチル基を示
し、R4は、炭素数1〜10の直鎖又は分岐したアルキル基
又はフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、インド
リル基、フリル基などの芳香族炭化水素あるいは複素環
芳香族置換基を示す。Zは、硫黄、酸素及び水素あるい
はアルキル基が結合した窒素のいずれか1つを示す。X
は、F、Cl、Br及びI等のハロゲンを示す。)ことを特徴
とする。
【0011】また、本発明の化合物の好ましい実施態様
においては、R3が次式、
【化12】 (但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、 Rは、水
素、又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐したアルキル基、
又はアリール基を示す。Xは、F、Cl、Br及びI等のハロ
ゲンを示す。)で表されることを特徴とする。
【0012】また、本発明の化合物の好ましい実施態様
においては、一般式、
【化13】 (但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、 Rは、水
素、又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐したアルキル基を
又はアリール基を示す。Xは、F、Cl、Br及びI等のハロ
ゲンを示す。)で表されることを特徴とする。
【0013】また、本発明の化合物の好ましい実施態様
においては、R1が、メチル基であることを特徴とする。
【0014】また、本発明の化合物の好ましい実施態様
においては、光照射時における開環反応の量子収率が、
0.01以下であることを特徴とする。
【0015】また、本発明の化合物の好ましい実施態様
においては、溶液中における光閉環反応の量子収率が0.
5以上であることを特徴とする。また、本発明の光学的
素子は、前記化合物を用いることを特徴とする。
【0016】また、本発明の光学的素子の好ましい実施
態様としては、前記化合物のチオフェンとシクロペンテ
ンによって形成される環が光照射時に開閉することによ
って、フォトクロミズムを示すことを特徴とする。
【0017】また、本発明の光学的素子の好ましい実施
態様としては、光照射時における閉環反応の転化率が、
50%以上であることを特徴とする。
【0018】また、本発明の化合物の合成方法は、
【化14】 (但し、R1は、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、 Rは、水
素、又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐したアルキル基を
示す。Xは、F、Cl、Br及びI等のハロゲンを示す。)で表
される化合物を、アルキルリチウムと反応させて、反応
生成物と、ハロゲン化シクロペンテンとを、反応させる
過程により構成される、
【化15】 の化合物を合成することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
【化16】 上記[化16]で表される本発明の化合物(但し、R
は、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基、i−プ
ロピル基、t−ブチル基を示し、 Rは、水素、又は炭
素数1〜20の直鎖又は分岐したアルキル基を示し、R
3は、共役可能な不飽和結合を有する任意の置換基を示
す。Xは、F、Cl、Br及びI等のハロゲンを示す。)は、
【化17】 で表される化合物(但し、R1は、水素、メチル基、エチ
ル基、メトキシ基、i‐プロピル基、t−ブチル基を示
し、Rは、水素、又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐した
アルキル基又はアリール基を示す。Xは、F、Cl、Br及び
I等のハロゲンを示す。)を、エーテル類(テトラヒドロ
フラン、ジエチルエーテルなど)の溶液中において、ア
ルキルリチウム(例えば、メチルリチウム、エチルリチ
ウム、n−プロピルリチウム、i−プロピルリチウム、
n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリ
チウムなど)と反応させて、反応生成物と、下記式
【化18】 で示されるようなハロゲン化シクロペンテンとを、反応
させることにより得られる。反応式は、以下のようであ
る。
【0020】
【化19】 [化19]において、R1は、水素、メチル基、エチル
基、メトキシ基、i−プロピル基、t−ブチル基を示
し、Rは、水素、炭素数1〜20の直鎖又は分岐したア
ルキル基、アリール基から選択される置換基を示す。R
2は、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐したアル
キル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、イソプ
ロピル基、ブチル基又は芳香族置換基であるフェニル
基、トリル基、ナフチル基等である。Rは、フェニル
基、チエニル基、フリル基、インドリル基などの芳香族
炭化水素または複素環芳香族を示し、好ましくは、チエ
ニル基である。Rは、更に好ましくは、下記式[化2
0]に示されるものである。
【0021】
【化20】 (但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、Rは、炭素
数1〜10の直鎖又は分岐したアルキル基又はフェニル
基、ジフェニルアミノフェニル基、インドリル基、フリ
ル基などの芳香族炭化水素あるいは複素環芳香族置換基
を示す。Zは、硫黄、酸素、及び水素あるいはアルキル
基が結合した窒素のいずれか1つを示す。)
【0022】Rは、更に好ましくは、下記式[化21]
に示されるものである。
【化21】 (但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、R4は、炭素
数1〜10の直鎖又は分岐したアルキル基又はフェニル
基、ジフェニルアミノフェニル基、インドリル基、フリ
ル基などの芳香族炭化水素あるいは複素環芳香族置換基
を示す。Zは、硫黄、酸素、及び水素あるいはアルキル
基が結合した窒素のいずれか1つを示す。) さらに、Xは、F、Cl、Br、I等のハロゲンを示
し、電気陰性度の観点から、Xは、好ましくは、Fであ
る。
【0023】特に、
【化22】 の化合物を合成する場合の反応式は、以下のようであ
る。
【化23】
【0024】また、
【化24】 の化合物を合成する場合の反応式は、以下のようであ
る。
【化25】
【0025】なお、本発明においては、低分子系有機化
合物であっても非平面性トリフェニルアミン骨格を有し
ているため結晶化が抑制され、アモルファス薄膜を形成
することができる。
【0026】即ち、一般に、低分子系有機物化合物は、
結晶性が高く、融点以下では結晶として存在するが、本
発明においては、このような結晶化を防止して、良好な
アモルファス薄膜を形成することができる。
【0027】本発明による化合物のフォトクロミック特
性について説明すると、以下のようになる。
【化26】
【0028】即ち、チオフェン、シクロペンテン、及び
芳香族炭化水素若しくは複素環芳香族置換基によって形
成される部分がフォトクロミズムを示す光反応基であ
る。本発明による化合物、及び該化合物を用いたフォト
クロミック材料は、当該光反応基に光を照射することに
より、化合物の吸収スペクトルが変化し、フォトクロミ
ズム特性を示す。これは、チオフェン、シクロペンテ
ン、及び芳香族炭化水素あるいは複素環芳香族置換基と
によって形成される環が光照射時に開閉することによる
ものである。チオフェン、シクロペンテン、及び芳香族
炭化水素あるいは複素環芳香族置換基とによって形成さ
れる環が開いた状態から閉じた状態とする反応を、光閉
環反応若しくは、単に閉環反応と定義する。一方、チオ
フェン、シクロペンテン、及び芳香族炭化水素あるいは
複素環芳香族置換基とによって形成される環が閉じた状
態から開いた状態とする反応を、光開環反応若しくは、
単に開環反応と定義する。本発明において、光反応基を
閉環反応させるには、光反応基に照射する光の波長は、
化合物の種類にもよるが、250〜400nmとする。好ましく
は、365nmとする。一方、光反応基を開環反応させるに
は、光反応基に照射する光の波長は、化合物の種類にも
よるが、580nm以上とする。好ましくは、600nm以上とす
る。可視光の波長を用いるという観点から、上限は、76
0〜830nm程度とする。また、本発明の化合物において
は、光照射時における光開環反応の量子収率が0.01以下
とすることができる。好ましくは、0.005以下とするこ
とができる。かかる量子収率を有する化合物を、表示素
子などの光学的素子に利用した場合、表示した文字等を
消去しにくくする作用がある。したがって、本発明によ
れば、光開環反応の量子収率の小さい化合物を適宜選択
して表示素子に使用することにより、文字等の表示状態
が常に良好な表示素子を達成することができる。また、
本発明の化合物においては、溶液中における光閉環反応
の量子収率を0.5以上とすることができる。かかる量子
収率を有する化合物を、表示素子などの光学的素子に利
用した場合、表示する文字の書き込み速度をあげること
ができる。したがって、本発明によれば、光閉環反応の
量子収率の大きい化合物を適宜選択することにより、文
字等の書き込みが迅速な表示素子を達成することができ
る。また、本発明の化合物を用いた光学的素子によれ
ば、光照射時における閉環反応の転化率が、50%以上と
することができる。好ましくは、60%以上である。閉環
反応の転化率が高い場合、吸収スペクトルの変化を大き
くすることができるという利点を有する。
【0029】また、本発明の化合物を用いた光学的素子
によれば、光照射時における開環反応の量子収率を、0.
01以下とすることができる。好ましくは、0.005以下と
することができる。
【0030】次に、本発明の化合物を用いる光学的素子
の製造方法について説明する。光学的素子は、常法によ
り製造することができる。例えば、基板上に化合物を含
んだベンゼン溶液から、スピンコーティング法等により
薄膜を形成することができる。スピンコーティング法
は、高分子固体フィルムを作製する方法の1つであり、
化合物を溶媒に溶かし、この溶液を回転している基板の
中心に滴下し、溶媒を蒸発させて基板上にフィルムを形
成する方法である。
【0031】その他の薄膜形成法としては、真空蒸着法
などのPVD法、CVD法等を挙げることができる。
【0032】このように形成されたフォトクロミック材
料の膜厚は、フォトクロミズム特性をよりよく発揮し得
るような吸光度を示すように、20〜200nm、好ましく
は、50〜100nmである。
【0033】
【実施例】ここで、本発明の一実施例を説明するが、本
発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではな
い。また、本発明の趣旨を逸脱することなく、本発明を
適宜変更して実施することが可能である。
【0034】以下、[化4]で表される化合物のうち
【化27】 である化合物、[化5]で表される化合物のうち
【化28】 である化合物、及び[化1]で表される化合物のうち
【化29】 である化合物、を例にとって説明する。
【0035】実施例1 [化27]で示されるフォトクロミック材料、1,2-ビス
(5-{4-[N,N-ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニ
ル}-2-メチルチオフェン-3-イル)-3,3,4,4,5,5-ヘキ
サフルオロシクロペンテンの合成は、以下の通りであ
る。5-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}
-3-ブロモ-2-メチルチオフェン5.40g(0.012mol)を含む
テトラヒドロフラン溶液を加え、-78℃で攪拌しながら
1.6N n-ブチルリチウム11.5ml(0.018 mol)を滴下し、約
1時間攪拌した。次に、オクタフルオロシクロペンテン
1.25ml(0.009 mol)を加え、約24時間攪拌を行った。攪
拌終了後、水を加えジエチルエーテルで抽出した後、有
機層を0.1N 塩酸及び水で洗浄した。溶媒留去後、トル
エン:へキサン混合溶媒を展開溶媒とするシリカゲルク
ロマトグラフィー、及び、へキサンとトルエンの混合溶
媒から再結晶することにより化合物[化27]を得た。収
量は2.5gで、収率は45%であった。以下に物性値を示
す。 融点 207℃ 質量分析:m/e=911(M H NMR(benzene-d6,600MHz):δ(pp
m)=2.09(s、6H)、2.97(s、12
H)、6.67(s、2H)、6.89(d、4H、J
=8.9Hz)、6.91(d、8H、J=8.2H
z)、7.02(d、8H、J=8.2Hz)、7.1
2(d、4H、J=8.9Hz) 赤外吸収スペクトル(KBr、cm-1):3100(芳香族C-H
伸縮)、2920(脂肪族C-H伸縮)、1600(C=C環
伸縮)、1520(C=C環伸縮チオフェン環)、132
0(芳香族第3級アミンC-N伸縮)、1280(芳香族第
3級アミンC-N伸縮)、820(1,4−二置換ベンゼ
ン)、720(2,3,5−三置換チオフェンC-H面外
変角) 紫外−可視吸収スペクトル(ベンゼン):304、362
nm 元素分析(C554422) 理論値:C、72.28;H、4.94;N、2.95
% 実測値:C、72.51;H、4.87;N、3.07
【0036】実施例2 [化28]で示されるフォトクロミック材料、1-(5-{4-
[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-2-メチル
チオフェン-3-イル)-2-(2-メチル-1-ベンゾチオフェン
-3-イル)ぺルフルオロシクロペンテンの合成は、以下の
通りである。5-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フ
ェニル}-3-ブロモ-メチルチオフェン3.5g(0.0078 mol)
を含むTHF溶液を−78℃まで冷却し、1.6N n−BuLi 6ml
(0.096mol)を滴下し、約1時間攪拌した。次に、1-(2-
メチル-1-ベンゾチオフェン-3-イル)ぺルフルオロシク
ロペンテン 3.0ml(0.088mol)をTHF30mlに溶かした溶液
を滴下し、約24時間攪拌を行った。攪拌終了後、0.1N H
Clを加え反応を止めた後、水で洗浄した。溶媒留去後、
シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン)で
分離し、EtOH/THFで再結晶を行うことにより淡黄色固体
の化合物[化28]を得た。収量1.8gで、収率は、33%で
あった。 融点 158℃ 質量分析:m/e=689(M H NMR(benzene-d6,600MHz):δ(pp
m)=1.65(s、3H)、1.97(s、3H)、
2.10(s、6H)、6.91(d、4H、J=8.
3Hz)、6.92(t、1H、J=8.0Hz)、
7.00(d、2H、J=8.9Hz)、7.05
(t、1H、J=8.0Hz)、7.05(d、4H、
J=8.3Hz)、7.15(d、2H、J=8.9H
z)、7.18(s、1H)、7.30(d、1H、J
=8.0Hz)、7.64(d、1H、J=8.0Hz) 赤外吸収スペクトル(KBr、cm-1):3000(芳香族C-H
伸縮)、2910(脂肪族C-H伸縮)、1600(C=C環
伸縮)、1520(C=C環伸縮チオフェン環)、132
0(芳香族第3級アミンC-N伸縮)、1270(芳香族第
3級アミンC-N伸縮)、830(1,4−二置換ベンゼ
ン)、730(2,3,5-三置換チオフェンC-H面外変
角) 紫外−可視吸収スペクトル(ベンゼン):302、357
nm 元素分析(C3929NF62) 理論値:C、67.83;H、4.26;N、2.04
% 実測値:C、67.91;H、4.24;N、2.03
【0037】実施例3 本発明の化合物を用いる素子の一例を図1に示す。ガラ
ス基板上に、化合物のベンゼン溶液(6.6×10-3mol d
m-3)からスピンコート法により、膜厚約75nm、面積約3c
m2のアモルファス薄膜を形成させた。フォトクロミック
材料の膜厚は、吸光度の関係により、50nm以上、100
nm以下とした。
【0038】光開環・閉環反応は、超高圧水銀灯より36
5nm光(1.6mW/cm2)、および、キセノンランプより580
nm以上の波長の光(9mW/cm2)を照射することにより行っ
た。示差走査熱量測定の結果、化合物[化27]及び化合
物[化28]は、高いガラス転移温度(それぞれ、94℃及
び66℃)を有することが分かった。また、化合物のアモ
ルファス薄膜は、安定で、長期にわたって結晶化を起こ
さないことが分かった。
【0039】以下、化合物[化27]を例にとって、アモ
ルファス薄膜における吸収スペクトルの変化について調
べた。化合物[化27]のアモルファス薄膜における吸収
スペクトルの測定結果を図2に示す。化合物[化27]の
アモルファス薄膜に365nmの光を照射することにより、
約10秒で吸収スペクトルがスペクトル4から5に変化
し、光定常状態に達した。それに伴い、色彩は薄黄色か
ら緑色に変化した。これは、下記式に示すように、光照
射に伴い、化合物[化27]の構造が開環体から閉環体へ
変化することに基づくものである。この構造変化は可逆
であり、閉環体は、600nmの光を照射することにより開
環体に戻り、吸収スペクトルは約9分で365nm光照射前の
スペクトルの約95%まで回復した。化合物[化27]の閉
環体は暗所で熱的に極めて安定であり、80℃に加熱して
も、開環体生成に基づく吸収スペクトルの変化は観察さ
れなかった。
【0040】実施例4 上述の実施例と同様の方法を用いて[化27、29]の化
合物を合成し、当該化合物について、アモルファス薄膜
中における光照射時の閉環反応における転化率を調べ
た。結果を次式に示す。
【化30】
【化31】
【0041】その結果、トリフェニルアミン骨格を2つ
有する[化27]の光閉環反応の転化率は、0.77と高
い数値を示し、次いで、[化29]の光閉環反応の転化率
は、0.67であった。高い転化率の達成により、大きな吸
光度変化及び大きな物性変化が得られる。
【0042】実施例5 次に、本発明の化合物のうち[化27]、[化28]、及び
[化29]の化合物について、光閉環させた後の可視光照
射に伴う開環反応の量子収率を調べた。
【化32】
【化33】
【化34】
【0043】その結果、[化32]および[化34]の
反応の量子収率が、0.001、ついで[化33]の反応の
量子収率が0.01と、極めて低い値を示した。低い開環反
応の量子収率を有する材料を表示素子に用いることによ
り、通常の強度の可視光のもとでは消去されない安定な
画像が得られた。
【0044】実施例6 実施例1及び2で合成した[化27]及び[化28]で示
される化合物のベンゼン溶液中における光閉環反応の量
子収率を、超高圧水銀灯からの365nmの光を照射したと
きの溶液の吸収スペクトル変化から求めた。
【化35】
【化36】
【0045】その結果、[化35]の光閉環反応の量子収
率は、0.61、[化36]の光閉環反応の量子収率は、0.79
と大きな値を示した。光閉環反応の量子収率の大きな化
合物を表示素子に応用することにより、書き込み速度の
高い表示素子が得られる。
【0046】
【発明の効果】本発明の化合物及び/又は材料によれ
ば、光反応基の高密度化が可能となり、さらに、相分離
の問題も生じないという有利な効果を奏する。
【0047】本発明の化合物及び/又は材料によれば、
低分子系有機化合物であっても、アモルファス薄膜を形
成することが可能となり、安定であり、長期間に渡って
結晶化を起こさないという有利な効果を奏する。
【0048】さらに、本発明の化合物及び/又は材料に
よれば、熱的にも極めて安定しており、可逆でかつ転化
率の大きな光反応を示すという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の化合物を用いて作製した素子構成の
一例を示す素子の側面図である。
【図2】 本発明の化合物を用いて作製した素子におけ
る吸収スペクトルの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板 2 光反応性アモルファス膜 3 表示・光記録・光スイッチング素子 4 365nm光照射前の吸収スペクトル 5 光定常状態における吸収スペクトル(365nm光(1.6m
W/cm2)照射時)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 333/20 C07D 333/58 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 【化1】 (但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
    基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、Rは、水
    素、又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐したアルキル基又
    はアリール基を示す。Xは、F、Cl、Br及びIのハロゲン
    を示す。)で表される化合物であって、 R3が、下記式 【化2】 で表される(但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、
    メトキシ基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、R4
    は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐したアルキル基又
    はフェニル基、インドリル基、若しくはフリル基を示
    す。Zは、硫黄、酸素、及び水素あるいはアルキル基が
    結合した窒素のいずれか1つを示す。)ことを特徴とする
    化合物。
  2. 【請求項2】 R1が、メチル基である請求項1項に記載
    の化合物。
  3. 【請求項3】 光照射時における光開環反応の量子収率
    が0.01以下である請求項1又は2項に記載の化合物。
  4. 【請求項4】 溶液中における光閉環反応の量子収率が
    0.5以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合
    物。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4に記載の前記化合物を用い
    た光学的素子。
  6. 【請求項6】 前記化合物のチオフェン、シクロペンテ
    ン、及び芳香族炭化水素若しくは複素環芳香族置換基に
    よって形成される環が光照射時に開閉することによっ
    て、フォトクロミズムを示すことを特徴とする請求項5
    記載の光学的素子。
  7. 【請求項7】 光照射時における閉環反応の転化率が、
    50%以上である請求項5又は6項に記載の光学的素子。
  8. 【請求項8】 【化6】 (但し、R1は、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
    基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、 Rは、水
    素、又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐したアルキル基又
    はアリール基を示す。Xは、F、Cl、Br及びIのハロゲン
    を示す。)で表される化合物を、アルキルリチウムと反
    応させて、反応生成物と、ハロゲン化シクロペンテンと
    を、反応させる過程により構成される、 【化7】 の化合物であって、 Rが、下記式 【化8】 (但し、Rは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ
    基、i−プロピル基、t−ブチル基を示し、Rは、炭素
    数1〜10の直鎖若しくは分岐したアルキル基又はフェニ
    ル基、インドリル基、若しくはフリル基を示す。Zは、
    硫黄、酸素、及び水素あるいはアルキル基が結合した窒
    素のいずれか1つを示す。)で示される化合物の合成方
    法。
  9. 【請求項9】 アルキルリチウムが、メチルリチウム、
    エチルリチウム、n‐プロピルリチウム、i−プロピル
    リチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t
    −ブチルリチウムから選択される群からなる少なくとも
    1種である請求項8記載の方法。
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