JP4601096B2 - フォトクロミック化合物およびそれを用いた光機能素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフォトクロミック化合物およびそれを用いた光機能素子に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
フォトクロミック化合物とは、光の照射により状態の異なる2つの異性体を可逆的に生成する分子または分子集合体を含む材料であり、光化学反応によって分子構造が変化し、この変化に応じて、光吸収係数、屈折率、旋光性あるいは誘電率等の光学特性を可逆的に変える性質を有している。これらの光学特性の差を利用することにより、情報の記録・再生を行うことができる。また、分子構造を元に戻すことにより、情報の消去が可能となる。
【0003】
フォトクロミック化合物の示す可逆的な光異性化反応は、簡潔に示すと下記式(F1)、(F2)のようになる。
【0004】
A (λ1) → B (λ2) ・・・ (F1)
B (λ2) → A (λ1) ・・・ (F2)
A (λ1)、B (λ2)は、各々吸収スペクトルの異なる異性体を示す。また、式(F1)は波長λ1の照射による異性化反応を示し、式(F2)はλ2の光照射により異性化反応を示す。
【0005】
フォトクロミック化合物を光記録媒体として用いる場合、波長λ1、λ2のうち、一方の波長の光を記録光としてデータを記録することができる。記録されたデータは吸収によって読み出す(再生する)ことができ、もう一方の波長の光照射により消去が可能である。
【0006】
通常は、上記のように異性体間の吸光度の差、つまり透過率変化によってデータの読み出しが行われる。この吸光度の差が大きいほど良好な再生信号、すなわち高いC/N比が得られる。
【0007】
通常は、吸収度の差によってデータを読み出しているが、フォトクロミック反応自体がしきい値を持たないため、この方法では再生時にデータの破壊が生じ、、多数回データを読み出すことができない。そのため非破壊にデータを読み出すことが、フォトクロミック光メモリの課題の一つとなっている。
【0008】
非破壊読出しを達成するには、大きくわけて2つの方法がある。一つは、光反応にしきい値を持つフォトクロミック化合物や3つの異性体が反応する化合物の開発である。もう一つの方法は、吸収を伴わずにデータを読み出す方法である。
例えば、フォトクロミック反応が誘起しない波長の光を読み出し光とし、位相コントラスト(屈折率変化)を用いて読み出す。
【0009】
フォトクロミック化合物は、光照射によって屈折率が可逆的に変化するフォトリフラクティブ効果を有しているため、この効果を利用して光メモリに応用することができる。フォトクロミック反応により媒体に記録したビットデータを、屈折率差として読み出すことができる。
【0010】
光照射によって屈折率が可逆的に変化するフォトリフラクティブ効果は、ここ数年来注目を集めている現象で、光メモリ素子や光スイッチング素子への応用が期待されている。
【0011】
従来フォトリフラクティブ現象は、ストロンチウム バリウム ナイオベート(SrxBa1-xNb2O6 )やリチウムナイオベート(LiNbO3)等の無機物で主に見られた。電界を印加した場合に屈折率が大きく変化し、変化した屈折率が安定に保持され、さらに別のパターンで光照射を行うと、最初のパターンが消去されて新たなパターンが形成される、いわるる可逆的な屈折率変化を示す。近年有機物でも同様の効果が報告されており、有機物の場合その屈折率変化は無機物に比較して、数倍から数十倍も大きいことが特長となっている。
【0012】
最近、フォトリフラクティブ有機材料として、フォトクロミック化合物を用いることが提案されている。フォトクロミック化合物は、光を照射するだけで屈折率が変化し、屈折率が変化した後もエネルギーを消費することなく、変化した状態で屈折率を保持できるという利点を有している。さらに、着色・消色状態の屈折率変化幅も大きく、従来のフォトリフラクティブ材料と比較すると数百倍に達するという特長を有している。
【0013】
また、このような性質は、光メモリだけではなく、光スイッチング素子へも非常に有効な性質である。特に光スイッチング素子に用いる場合、屈折率変化が大きいため、素子の小型化が可能となる。さらに、光による制御が可能なことから、光を用いた遠隔操作に関しても可能となるため、非常に有効である。
【0014】
フォトクロミック化合物を光記録媒体等の光機能素子に応用する場合、フォトクロミック化合物を含有させた薄膜の形成が必要となる。これまで薄膜形成法としては、フォトクロミック化合物をポリメチルメタクリレートやポリスチレンなどの高分子マトリックス中に分散させる方法が一般的に用いられていた。しかしながら、フォトクロミック材料が高濃度になるほど変換率が低下し、高分子100 重量部に対して30重量部程度の濃度で最大値をとることが知られている。さらにフォトクロミック化合物の中には、高分子との相溶性が悪く、分散性が悪いという問題も有している。その結果、これまで十分な特性が得られていなかった。
【0015】
一方、このような状況に鑑みて結晶状態でフォトクロミック特性を有するジアリールエテン化合物が得られている( M.Irie,Chem.Lett.899(1995) 、特開平8 -1199633号公報を参照)。
【0016】
結晶状態でフォトクロミック特性を有するジアリールエテン化合物は、高分子樹脂中にも分散させなくとも、蒸着等により高い吸光度を持つフォトクロミック薄膜を形成できる利点を有する。しかしながら、このフォトクロミック化合物から成る結晶膜は、真空蒸着法などにより形成させる必要があり、量産性において劣るという欠点を有する。
【0017】
本発明は上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は高分子樹脂媒体中に分散せず、フォトクロミック化合物単独でアモルファス薄膜を形成させることが可能であるフォトクロミック化合物、及びそれを用いた優れた光機能素子を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のフォトクロミック化合物は、図1に示す式(1)又は図2に示す式(2)で表せるフォトクロミック化合物とする。
【0019】
(ただし、各式中R1,R2は、水素又はアルキル基とし、RAは、芳香族環又は複素環とし、また、これらは同一であっても、異なっていても良く、さらに未置換でも或いは一部が置換されていても良い。
【0020】
置換基としてはアルキル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、シアノ基とする。
【0021】
Xは、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子とする。
【0022】
環Aは、パーフルオロシクロペンテンとし、環B、環C及び環Dは、未置換でも或は一部置換されていても良い。置換基としてはアルキル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、シアノ基とする。nは1〜3の整数とする。)また、上記フォトクロミック化合物から成る薄膜に、光を照射することにより情報の記録を行わせるように成した光機能素子とする。
【0023】
上記フォトクロミック化合物は、具体的には、ジアリールエテン骨格を有し、さらにジアリールエテン骨格内のヘテロ環上に立体的に嵩高い置換基テトラアリールメチル基が置換されていることが化学構造上の特長である。
【0024】
このようにジアリールエテン骨格を有している本発明のフォトクロミック化合物は、熱不可逆的なフォトクロミック反応を示し、さらに着色状態と消色状態の双方が熱的に安定でしかも繰り返し耐久性に優れるという特徴を有している。
【0025】
また、フォトクロミック化合物の分子内に、上記立体的に嵩高い置換基が置換されているため、低分子でありながら安定なガラス状態を形成することが可能である。
【0026】
その結果、本発明のフォトクロミック化合物は、単独でアモルファス薄膜を形成することが可能であり、さらに溶液系と同様に可逆的なフォトクロミック反応を示す特長を有する。本発明のフォトクロミック化合物を用いることにより、吸光度変化の大きなフォトクロミック薄膜を提供することができる。
【0027】
また、本発明の光機能素子は、基板上にフォトクロミック化合物から成るアモルファス薄膜を形成せしめ、該薄膜に情報の記録を行わせるように成したことを特徴とする。
【0028】
本発明のフォトクロミック化合物から成るアモルファス薄膜は、高分子等のようなマトリックス中に分散されておらず、従来例に記載の結晶膜と同様に単独の状態であるため、分散膜と比較してより大きな吸光度変化を示す。
【0029】
また、本発明のフォトクロミック化合物なるアモルファス薄膜は、結晶膜形成に必要な真空蒸着法等の大がかりな装置を必要とせず、スピンコート法等による塗布法により形成可能である。
【0030】
また基板上に前記フォトクロミック化合物から成るアモルファス薄膜を形成せしめ、該薄膜に情報の記録を行わせるように成したことを特徴とする光機能素子を提供することにある。本発明の光機能素子は、優れた光学特性を示す前記フォトクロミック化合物から成る記録層を有しているため、高いC/N比が得られる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
図1に示す式(1)又は図2に示す(2)で表される本発明のフォトクロミック化合物は、例えば図3(a)〜(d)の方法にて製造することができる。但し、製造方法は、この方法に限定されるものではなく、公知の方法から適宜選択して製造することができができる。
【0033】
すなわち、図3(a)左に示したヘテロ環化合物とブチルリチウムを反応させる。その反応溶液に塩化亜鉛を添加して反応させることにより、反応右に示された亜鉛化合物が合成される。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、ヨウ素化されたアミン化合物とパラジウム金属触媒を混合した溶液に図3(a)で得られた亜鉛化合物を加え、反応させる。その結果、図3(b)右に示されたアミノ基が置換されたヘテロ環化合物が合成される。
【0035】
図3(b)で得られたアミノ基置換ヘテロ環化合物にヨウ素、ヨウ素酸水溶液を加え、反応を行うと、図3(c)右に示されたヘテロ環3位にヨウ素が置換された化合物が合成される。
【0036】
図3(c)で得られたヨウ素化合物とブチルリチウムを反応させ、リチウム- ハロゲン交換によりアニオン種を発生させる。このアニオン種に環A化合物(ハロゲン原子置換)を反応させることにより、目的とするジアリールエテン(図3(d)右)を合成することができる。
【0037】
ここで、各式中R1、R2は、水素又はアルキル基とし、RAは芳香族環又は複素環とし、未置換でも或いは一部が置換されていても良い。置換基としてはアルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アルコキシ、シアノがある。
【0038】
Xは酸素、硫黄、窒素原子を示す。特に硫黄原子が好ましい。環Aは、脂肪族環、酸無水物、マレイミド基とする。また、環B、環C、環Dは、未置換でも或は一部置換されていても良い。置換基としてはアルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アルコキシ、シアノがある。
【0039】
本発明のフォトクロミック化合物は、分子内に立体的に嵩高い置換基であるテトラアリールメチル基が置換されているため、結晶化速度が抑えられ、その結果低分子でありながら安定なガラス状態を示す。そのため、該フォトクロミック化合物は、単独でアモルファス薄膜を形成することが可能であり、さらに溶液系と同様に可逆的なフォトクロミック反応を示す。本発明のフォトクロミック化合物から成るフォトクロミック薄膜は、高分子樹脂分散膜とは異なり、フォトクロミック化合物単一のアモルファス薄膜であるため、大きな吸光度変化や屈折率変化を示す、等の優れた光学特性を有する。
【0040】
また、本発明のフォトクロミック化合物から成るフォトクロミック薄膜は、真空蒸着等の大がかりな装置を用いることなく、有機薄膜形成で一般的に用いられる塗布法(スピンコート法、バーコート法、浸積法、溶融押し出し法、スプレー法など)により形成可能である。具体的には、粘性の高い有機溶媒に前記フォトクロミック化合物を溶解させ、その溶液を塗布、さらに80〜150℃程度で加熱処理することにより、薄膜形成することができる。
【0041】
上記方法で得られたフォトクロミック薄膜は、光記録媒体等の光機能素子に用いることができる。本発明の光機能素子である光記録媒体P1は、図4に断面図にて示すように、例えば透光性を有するポリカーボネート等の樹脂材料やガラス等から成るディスク状の基板1上に、本発明の方法により作製したフォトクロミック体からなる薄膜を記録層2として設け、さらにこの反射層3を設けたものである。
【0042】
上記光記録媒体P1を構成する基板1は、、透光性を有するプラスティック(例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂)やガラス、セラミック、金属等を用いることができる。また記録層は厚み100Å〜5μm(好ましくは1000Å〜1μm)程度に積層し、さらにこの上に蒸着法等により高反射で腐食され難い金属(Au、Al、Ag、Cu、Cr、Ni等)や半金属(Si等)等から成る反射層3を含み50Å〜3000Å(より好ましくは100Å〜3000Å)程度に積層する。
【0043】
記録層2の厚みは上記範囲より薄すぎると光感度が得られないし、厚すぎると厚み方向に光反応速度が遅くなるので好ましくない。また、反射層3の場合、その厚みが上記範囲より薄すぎると反射率が得られない。
【0044】
上記のように構成した光記録媒体P1によれば、基板1より入射した光L1で情報の記録ができ、反射光L2を検出することにより、情報の読み出しを行うことができる。
【0045】
また、図5に示す光記録媒体P2のように、基板1に不透明なものを使用する場合には、反射層3を基板1上に設け、次いで記録層2をその上に設けるようにし、記録層2側から光を照射するようにしても良い。また、これら層構成は最小限度必要な構成であって、例えば反射層や記録層を保護層で覆って多数の層構成としても良い。かくして、反射率変化が大きく、さらに着色・消色の繰り返し耐久性が良好な光記録媒体P2とすることができる。
【0046】
また、上記のように基板上に記録層と反射層とから成る積層体を配設する以外に、図6に示すように、透光性の基板1上に記録層2を設け、入射光L1により情報を記録し、入射光L1と出射光L2の検出により光透過率の差によって情報の再生を行うようにした光記録媒体P3とするようにしても良い。この場合においても、記録層を透光性の保護層等で覆って多数の層構成としても良い。
【0047】
また、図7に示すように、屈折率変化を利用した光記録媒体P4への応用することが可能である。すなわち、情報を記録する場合、図8(a)に示すように、例えば波長350nm のアルゴンレーザもしくは波長633nm のHe-Ne レーザの書込み光23を使用し、ビームスプリッタ21、ミラー22a,22b を介して記録層2へ照射し、記録層2に屈折率を変化させ情報の記録を行う。また、情報の再生には、図8(b)に示すように、例えば波長830nm の読み出し光24を使用し、ミラー22a を介して記録層2に照射し、検出器25で検出することにより、情報の再生を行う。
【0048】
なお、本発明の実施形態では、図1の式(1)又は図2の式(2)で表されるジアリールエテン骨格を含み、さらに分子内に立体的に嵩高い置換基であるテトラアリールメチル基を有するフォトクロミック化合物と、該フォトクロミック化合物から成るアモルファスフォトクロミック薄膜を光記録媒体に適用した場合について示したが、これに限定されるものではなく、例えば光スイッチ素子や調光材料や光センサ等に適用が可能である。またこのフォトクロミック薄膜形成する基板も上記材料に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更実施が可能である。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるのもではない。
【0050】
〔実施例1〕
図12の式(3)で示されるフォトクロミック化合物を次の通り合成した。
【0051】
(1)2,4-ジメチルチオフェン(図9の式(4))の合成
300ml 三ツ口フラスコに3-メチルチオフェン25.5g(0.26mol)、乾燥エーテル1 25ml、TMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)33.2g を入れ、反応系を0 ℃まで冷却した。この反応溶液に204ml のノルマルブチルリチウム/へキサン溶液をゆっくりと滴下し、0 ℃で1 時間、さらに室温で2時間攪拌した。次いで、再び氷冷しながら17.5mlのヨウ化メチル加え、0 ℃で2 時間、さらに室温で3 時間攪拌した。攪拌終了後、水を加えて有機層と水層を分離した後、水層をエーテルで抽出した。有機層を希塩酸、さらに水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをグラスフィルターで除去した後、溶媒を減圧留去し、得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製、減圧蒸留を行い、無色液体の2,4-ジメチルチオフェンを得た。
【0052】
(2)2,4-ジメチル-5-(4-( トリフェニルメチル) フェニル) チオフェン(図10の式(5))の合成
500ml 三ツ口フラスコに2,4-ジメチルチオフェン22.4g (0.2mol)、乾燥エチルエーテル200ml 、TMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)22.5g (0.22mol )を入れ、室温で攪拌しながら、ノルマルブチルリチウム/へキサン溶液157ml (1.4M、0.22mol )を加え、室温にて2時間攪拌した。
【0053】
2時間後、室温にて反応系に塩化亜鉛/エーテル溶液200ml (塩化亜鉛0.2mol)を加え、室温にてさらに5時間攪拌した(反応溶液A)。
【0054】
次に、別の500ml 三ツ口フラスコに4-ヨード−テトラフェニルメタン89.2g(0.2mol) 、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 2.31g、乾燥テトラヒドロフラン200ml を入れ、室温にて1時間攪拌した。1時間後、この反応溶液に先に調整した反応溶液Aを室温にて滴下した。滴下終了後、反応系を50℃まで加熱し、50℃にて2時間、さらに室温にて10時間攪拌を行った。
【0055】
攪拌終了後、水を加えて有機層と水層を分離した後、水層をエーテルで抽出した。有機層を希塩酸、さらに水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをグラスフィルターで除去した後、溶媒を減圧留去し、得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、式(5)で表される無色液体の目的化合物を得た。
(3)3-ヨード-2,4- ジメチル-5-(4-( トリフェニルメチル) フェニル) チオフェン(図11の式(6))の合成
2L 三ツ口フラスコに2,4-ジメチル-5-(4-( トリフェニルメチル) フェニル) チオフェン(式(5))43.0g(0.1mol) 、酢酸650ml 、四塩化炭素650ml を入れる。これにヨウ素酸水溶液(ヨウ素酸3.8g(0.022mol)/水10ml)、ヨウ素8.73g(0.034mol) を加え、2時間加熱還流を行った。加熱還流終了後、これに水を加えて有機層と水層を分離した後、水層をクロロホルムで抽出した。有機層を炭酸ナトリウム水溶液、チオ硫酸ナトリウム、さらに水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをグラスフィルターで除去した後、溶媒を減圧留去し、得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、式(6)で表される無色液体の目的化合物を得た。
【0056】
(4)フォトクロミック化合物(図12の式(3))の合成
500ml 三ツ口フラスコに3-ヨード-2,4- ジメチル-5-(4-( トリフェニルメチル) フェニル) チオフェン(式(6))38.92g(0.07mol )、乾燥テトラヒドロフラン150ml を入れ、反応系をドライアイス/メタノールバスで冷却した。この反応溶液に75ml(0.105mol)のノルマルブチルリチウム/へキサン溶液をゆっくりと滴下し、−78℃で1時間攪拌した。次いで、この反応溶液に2.35ml(0.0175mol) のパーフルオロシクロペンテンを加え、0 ℃で7 時間攪拌した。攪拌終了後、水を加えて有機層と水層を分離した後、水層をエーテルで抽出した。有機層を希塩酸、さらに水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをグラスフィルターで除去した後、溶媒を減圧留去し、得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、式(3)で表される白色固体の目的化合物を得た。
【0057】
得られた4つの化合物(式(3)〜式(6))に関して、1H-NMR、13C-NMR 、FT-IR 、GC/MS にて構造解析を行ったところ、いずれの化合物においても目的生成物であることが確認できた。
【0058】
また、得られたフォトクロミック化合物(式(3))の吸収スペクトルを測定したところ、260nm 、330nm に極大波長を有することが分かった。さらにこの化合物式(3)に、波長313nm の紫外光を照射したところ、溶液は着色し、その吸収極大610nm 付近に観測された。
【0059】
さらに、この光照射による吸収波長の変化は、可逆的に起こることを確認した。そして、再結晶により得られた式(3)の結晶は、265 ℃で融解し、等方性液体となり、これを室温まで冷却すると、透明で安定なガラスが生成することを確認した。このガラス試料を再び昇温していくと、110 ℃にガラス転移現象が認められた。
【0060】
〔実施例2〕
〔実施例1〕で得られたフォトクロミック化合物(式(3))をトルエンに溶解させた後、石英基板上にスピンコート法に塗布し、80℃でベーキングすることによってフォトクロミック薄膜(薄膜1)を作製した(膜厚0.2 μm)。一般に有機薄膜は、結晶化する傾向が強く、長時間放置すると結晶化してしまい、その結晶化部分が欠陥となり特性低下を引起こす。しかしながら、式(3)から成る薄膜1は、3ヶ月以上放置しても結晶化による欠陥発生はなく、さらに特性低下も見られないことを確認した。得られた薄膜1をXRD 測定、偏光顕微鏡観察を行ったところ、XRD 測定では、ブロードなハローが観測されるだけであり、偏光顕微鏡観察ではクロスニコル状態では光が透過せず黒色であることが観測され、均一なアモルファス薄膜であることが確認できた。
【0061】
長時間放置すると結晶化してしまい、均一な膜は得られないが、式(3)から成る薄膜1は、3ヶ月以上放置しても結晶化は起こらず、均一なアモルファス膜であることが確認できた。
【0062】
また、比較として、式(3)をPMMAに30重量部の濃度分散させたフォトクロミック薄膜(薄膜2)を作製した(膜厚1μm)。PMMA分散膜では、式(3)の濃度が30重量部を越えると特性劣化が起こることが確認できた。
【0063】
以上のようにして作製した薄膜1および薄膜2に紫外光313nm の光を照射すると膜が着色された。このときの膜の吸収スペクトルを測定したところ、図13に示すように、いずれの薄膜においても310nm 付近に吸収極大を持つことが確認できた。さらにこの光照射による吸収波長の変化は、可逆的に起こることを確認した。薄膜状態においても可逆的なフォトクロミック反応が進行することが分かった。
【0064】
さらに、無色状態の薄膜1 および薄膜2に紫外光313nm の光を光定常状態まで照射した後、610nmにおける吸光度変化を測定しところ、薄膜1の方が、約3 倍程度吸光度変化が大きいことが確認できた。これは、薄膜1が、フォトクロミック化合物単独でアモルファス薄膜形成されていることにより、PMMA分散系に比べて、フォトクロミック分子の持つ機能を有効に発現できたためであると考えられる。
【0065】
〔実施例3〕
〔実施例2〕で得られたフォトクロミック薄膜を用いて図4に示す光記録媒体P1を作製した。透光性を有するポリカーボネート基板上に〔実施例1〕で得られたフォトクロミック化合物(式(3))から成る記録層を積層し、さらにこの上にAl層から成る反射層を積層した。さらにこの上にアクリル樹脂から成る保護層を形成し、光記録媒体を作製した。
【0066】
この光記録媒体全面に紫外光を照射して、記録層のフォトクロミック化合物を着色状態にした後、680nm の半導体レーザーをピックアップに搭載した装置を用いて記録再生の評価を行った。10mWのパワーで記録を行い、0.2mW のパワーで再生を行ったところ、50db以上の高いC/N比の再生信号が得られた。さらに再生回数は1万回以上であった。
【0067】
〔実施例4〕
さらに無色状態の薄膜1および薄膜2に紫外光He−Neレーザーにて光照射前後の屈折率変化を調べたところ、図14に示すように、薄膜2では7×10-3であったのに対して、薄膜1 では5×10-2であることが分った。これは、薄膜1が、フォトクロミック化合物単独でアモルファス薄膜形成されていることにより、PMMA分散系に比べて、フォトクロミック分子構造変化による屈折率変化が大きく影響したためであると考えられる。
【0068】
〔実施例5〕
〔実施例2〕で得られたフォトクロミック薄膜を用いて図7に示す光記録媒体を作製し、アルゴンレーザー(363nm )を記録光とし、フォトクロミック薄膜にデータを記録した。記録したデータは、半導体レーザー(830nm )で屈折率差として読み出すことができた。
【0069】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック化合物は、ジアリールエテン骨格を含み、さらに分子内に立体的に嵩高い置換基を有しているため、フォトクロミック化合物単独でアモルファス薄膜を形成させることが可能となった。その結果、フォトクロミック分子の持つ機能を有効に発現することが可能となったため、優れた光学特性を有するフォトクロミック薄膜を提供することができる。
【0070】
また、薄膜形成において、真空蒸着法等の大がかりな装置を必要とせず、スピンコート法等による塗布法により形成可能なったため、生産性を向上することができる。
【0071】
さらに、本発明のフォトクロミック薄膜を記録層に用いた場合、繰り返し耐久性に優れ、さらに光学特性に優れた光記録媒体を提供することができる。
【0072】
また、光照射前後の吸光度変化および屈折率変化が、従来の高分子樹脂分散膜よりも非常に大きいため、優れた光記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフォトクロミック化合物の化学式である。
【図2】本発明に係るフォトクロミック化合物の化学式である。
【図3】(a)〜(d)は、それぞれ本発明に係るフォトクロミック化合物の化学反応式である。
【図4】本発明の光記録媒体P1を説明する概略断面図である。
【図5】本発明の光記録媒体P2を説明する概略断面図である。
【図6】本発明の光記録媒体P3を説明する概略断面図である。
【図7】本発明の光記録媒体P4を説明する概略断面図である。
【図8】(a),(b)はそれぞれ屈折率変化を利用した光記録システムの概略図である。
【図9】本発明に係るフォトクロミック化合物の化学反応式である。
【図10】本発明に係るフォトクロミック化合物の化学反応式である。
【図11】本発明に係るフォトクロミック化合物の化学反応式である。
【図12】本発明に係るフォトクロミック化合物の化学反応式である。
【図13】フォトクロミック薄膜1及び2の光照射前後における吸光度変化を示す線図である。
【図14】フォトクロミック薄膜1及び2の屈折率変化を示す線図である。
【符号の説明】
1 :基板
2 :記録層
3 :反射層
P1、P2、P3、P4:光記録媒体
L1 :入射光
L2 :出射光
21:ビームスプリッタ
22a,21b:ミラー
23:書込み光
24:読出し光
25:検出器
Claims (2)
- 請求項1に記載のフォトクロミック化合物から成る薄膜に、光を照射する
ことにより情報の記録を行わせるように成した光機能素子。
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-
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