JP5803025B2 - フォトクロミック分子 - Google Patents

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本発明は、機能性色素の技術分野に属し、特に、光により蛍光強度を(オン/オフ)スイッチするフォトクロミック分子に関する。
フォトックロミック分子とは、特定の波長の光を受けると分子量を変えることなくその化学結合様式を変え、吸収スペクトルの異なる、言い替えると、色の異なる異性体へ可逆的に変換する分子を言う。生成した異性体は、別の波長の光により元の異性体へもどる。これまで、数多くのフォトクロミック分子が開発され(非特許文献1)、光メモリ、光スイッチあるいは表示などの分野への応用をめざして研究がすすめられてきている。これらの応用に際しては、フォトクロミック分子の色が、光により可逆的に(オン/オフ)スイッチする性質を利用している。そのために、両異性体の安定性、光反応効率、多種類の色の発色、固体状態での反応性などの性能を向上させることをめざし、研究がすすめられてきた。これらの研究により、現在最も高性能のフォトクロミック分子として、ジアリールエテン誘導体が開発された(非特許文献2)。
フォトクロミック分子は、色のみならず、蛍光特性、屈折率、誘電率なども光照射により可逆的に変化させる。この中で、特に注目されるのは、蛍光特性の変化である。光反応により蛍光強度を(オン/オフ)スイッチするフォトクロミッ分子は、超高密度光メモリ(非特許文献3、4)、超解像蛍光イメージング(非特許文献5,6)などへの応用が可能である。このため、これまで数多くの蛍光性フォトクロミック分子が設計・合成されてきた。ジアリールエテン誘導体についても、蛍光性分子ユニットを結合させ、ジアリールエテン部の光反応により蛍光強度を(オン/オフ)スイッチするフォトクロミック分子が合成されている。代表的な蛍光性フォトクロミック分子としては、次の化合物(1a,2a)が挙げられる(非特許文献7,3)。開環体1aに紫外光を照射すると閉環体1bに変換し、可視光を照射すると元の1aにもどる。2a、2bも同様に紫外光、可視光の照射により可逆に相互変換する。
Figure 0005803025
化合物(1a)は、蛍光性トリフェニルイミダゾール(蛍光量子収率:0.48)を結合させたジアリールエテンである。紫外光による閉環反応、可視光による開環反応によりその蛍光強度を(オフ/オン)スイッチすることが認められたが、蛍光性の開環体1aの蛍光量子収率は0.1以下であった。ここで、蛍光量子収率とは、吸収した光子数に対する、蛍光として発せられる光子数の割合と定義される。最大が1.0である。無蛍光分子では0となる。
化合物(2a)は、蛍光性アントラセンをアダマンチル基ではさんでジアリールエテンに結合させている。この蛍光性開環体2aの蛍光量子収率は、0.73と得られている。紫外光、可視光の照射によるジアリールエテン部の光閉環、光開環反応により、蛍光強度が、(オフ/オン)スイッチすることが認められた。しかし、これらの蛍光性分子ユニットをジアリールエテンに結合させた系では、いずれの分子においても、初期のジアリールエテン部が開環体の場合に蛍光を発し、紫外光照射による光反応によりジアリールエテン部が閉環体になると蛍光は消光される。超解像蛍光イメージングに応用する際には、初期は無蛍光性であり、光反応により可視部に吸収をもつ蛍光性閉環体の生成する機能が必須であるが、これらの系はこの機能に欠けている。
紫外光照射による光反応により生成する可視部に吸収をもつ閉環体が蛍光を発する分子として、最近、スルホン基をもつジアリールエテン誘導体(3a,4a,5a)が開発された(非特許文献8,9)。
Figure 0005803025
これらの誘導体では、紫外光を照射すると可視部に吸収をもった閉環体3b、4b、5bが生成し、蛍光を発するようになる。上記化合物の閉環体3b、4b、5bは、それぞれ、蛍光量子収率0.011、0.036、0.093で蛍光を発する。新たに現れる可視部の吸収位置の波長の光を励起光源として用いると、紫外光を照射する前は、その波長位置に吸収が存在していないため、蛍光は出ない。一方、紫外光の照射により閉環体が生成し、新たに可視部の吸収帯が現れると、その吸収帯が光励起されるため、蛍光が出現することになる。そのため、高い蛍光強度のオフ/オン比が得られる。上記化合物(3a)、化合物(4a)、化合物(5a)は、いずれも紫外光照射による光反応により可視部に吸収をもつ閉環体を生成し、蛍光を発すると言う要件を満たしているが、蛍光量子収率は0.1以下である。蛍光量子収率が0.1以下と低いと、単一分子からの蛍光検出が困難となり、単一分子蛍光を原理とする超高密度光メモリあるいは超解像蛍光イメージングへ応用できない。超解像蛍光イメージング等の蛍光イメージングに応用するには、蛍光量子収率が0.5以上であることが必須であるが、その要件を欠いている。
H. Durr, H. Bouas-Laurent eds. Photochromism. Molecules and Systems, Elsevier, Amsterdom (2003) M. Irie, Chem. Rev. 100, 1685 (2000) M. Irie et al., Nature, 420, 759 (2002) T. Fukaminato et al., J. Am. Chem. Soc., 126, 14843 (2004) S.W.Hell, Nature Biotech. 21, 1347 (2003) S.W.Hell, Science, 316, 1153 (2007) K. Yagi et al., J. Org. Chem., 66, 5419 (2001) Y. C. Jeong et al., Tetrahedron, 62, 5855 (2006) Y. C. Jeong et al., Macromol. Rapid Commun., 27, 1769 (2006)
本発明の目的は、既述の従来技術における問題点を解決し、可視部に吸収をもつ閉環体の蛍光量子収率が0.5以上の蛍光性ジアリーエテン誘導体を提供することにある。
本発明者らは、種々のジアリールエテン誘導体を設計・合成することにより、光反応により生成する可視部に吸収をもつ閉環体が、0.5以上の蛍光量子収率をもつジアリールエテン誘導体を見出し、本発明を導き出した。
本発明のフォトクロミック分子は、一般式(6a)、(8a)で表されるジアリールエテン誘導体であり、閉環体の蛍光量子収率は、0.5以上である。
Figure 0005803025
一般式(6a)、(8a)において、R1,R2は、各々独立にアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を表し、R3,R4は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、アセチル基、ヒドロキシ基、アルコール基、アミノ基、あるいは下記置換基群より選ばれるもの(但し、下記置換基群の芳香族炭化水素環又は複素環は置換されてもよい)を表し、Xは - S - 又は - O - を、Yは =CH - 又は =N - を表わす。
Figure 0005803025
即ち、本発明者らは、スルホン基をもつジアリールエテン誘導体の閉環体の蛍光量子収率をより一層増加させるべく、置換基の種類やその置換位置について鋭意検討を重ねた結果、スルホン基をもつベンゾチオフェンをアリール部位とするジアリールエテン誘導体(1,2-bis(2-alkyl-1-benzothiophen-1,1-dioxide-3-yl)perfluorocyclopentene)の6および6’位に、フェニル基、置換基群をもつフェニル基、あるいは、チオフェン環、置換基群をもつチオフェン環あるいは、フラン環、置換基群をもつフラン環の導入が、閉環体の蛍光量子収率を0.5以上と格段に増加させる効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
このような本発明のフォトクロミック分子であれば、光反応により生成する可視部に吸収をもつ閉環体の量子収率を0.5以上にすることが可能になる。
本発明によれば、光反応により生成する可視部に吸収をもつ閉環体の量子収率を0.5以上にすることが可能になる。
化合物(Va)のジオキサン溶液に、紫外光(365 nm)を照射した際の吸収スペクトルの変化を示す図。 化合物(Va)のジオキサン溶液に、紫外光(365 nm)を照射した際の蛍光スペクトルの変化を示す図。
本発明のフォトクロミック分子は、前記一般式(6a)、(8a)で表されるジアリールエテン誘導体よりなるものである。
一般式(6a)、(8a)において、R1,R2は、各々独立にアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を表し、R3,R4は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、アセチル基、ヒドロキシ基、アルコール基、アミノ基、あるいは下記置換基群より選ばれるもの(但し、下記置換基群の芳香族炭化水素環又は複素環は置換されてもよい)を表し、Xは - S - 又は - O - を、Yは =CH - 又は =N - を表わす。
Figure 0005803025
このようなジアリールエテン誘導体としては、例えば次のようなものが例示される。
Figure 0005803025
以下に合成例および実施例、参考例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例、参考例に限定されるものではない。
〔合成例1〕
Figure 0005803025
(Ia)(120 mg, 0.256mmol)を酢酸(10 ml)に溶かし、120℃まで加熱した。これに
50%の過酸化水素水2ml加え、15分間撹拌させた。室温に戻した後反応溶液を250mlの水に入れ、吸引ろ過、さらに蒸留水で数回洗った。この粉末を真空引きし、白い粉末を得た。
これ以上の精製を行わず、得られた白い粉末を濃硫酸10mlに溶かし、さらにI2 (160
mg, 0.630mmol), H5IO6(40mg, 0.175mmol)を入れ室温で3時間撹拌させた。反応溶液を200mlの水で薄めた後にチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水、炭酸ナトリウムで処理し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で単離し、目的化合物(IIa)を
得た。
収量:162mg(収率: 80%)
1H NMR(400MHz, CDCl3): ・δ・2.00 (s.3H), 2.16 (s.3H), 6.79 (dd, J= 8Hz, J=
16Hz, 2H), 7.75 - 795 (dd, 2H), 7.69-7.78 (m, 2H),
MS m/z = 784 [M]+
同様の方法を用いてIVaを合成した。
Figure 0005803025
1H NMR(400MHz, CDCl3): ・δ・1.00 - 1.11, 1.35 - 1.44 (m. 6H), 3.25-2.65
(m. 4H), 6.78-6.84, 6.89-6.95 (d, J= 8Hz, 2H), 7.76-7.81, 7.93-7.98 (dd, J= 1.6Hz, J= 8Hz, 2H), 7.99-8.03, 8.05-8.09 (d, J= 1.6Hz, 2H)
MS m/z = 812 [M]+
〔合成例2〕
Figure 0005803025
(IVa) (150 mg, 0.185 mmol)をTHF (10 ml)に溶かし、K2CO3飽和水(10 ml)を
混合した後に、フェニルボロン酸(47.3 mg, 0.388mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(30 mg, 0.033mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.1 ml, 0.06 mmol)を加え、80℃で1時間還流させた。反応液を室温に戻した後、希塩酸、飽和食塩水で処理し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)を行い、目的化合物(Va)を
得た。収量:123 mg (収率:94%)
MS m/z= 712 [M] +
〔合成例3〕
Figure 0005803025
(IVa) (250 mg, 0.308 mmol)をTHF (10 ml)に溶かし、K2CO3飽和水(10 ml)を
混合した後に、4-ホルミルフェニルボロン酸(97 mg, 0.647mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(40 mg, 0.044mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.1 ml, 0.06 mmol)を加え、80℃で1時間還流させた。反応液を室温に戻した後、希塩酸、飽和食塩水で処理し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を行い、目的化合物(VIa)を得た。
収量:226 mg(収率:95%)
MS m/z= 768 [M]+
〔合成例4〕
Figure 0005803025
(IVa) (150 mg, 0.185 mmol)をTHF (10 ml)に溶かし、K2CO3飽和水(10 ml)を
混合した後に、4-アセチルフェニルボロン酸(63.6 mg, 0.388mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(40 mg, 0.044mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.1 ml, 0.06 mmol)を加え、80℃で1時間還流させた。反応液を室温に戻した後、希塩酸、飽和食塩水で処理し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を行い、目的化合物(VIIa)を得た。
収量:138 mg(収率:94%)
MS m/z= 796 [M] +
〔合成例5〕
Figure 0005803025
(IVa) (150 mg, 0.185 mmol)をTHF (10 ml)に溶かし、K2CO3飽和水(10 ml)を混合した後に、5-メチル-2-チオフェンボロン酸(55.1 mg, 0.388mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(40 mg, 0.044mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.1 ml, 0.06 mmol)を加え、80℃で1時間還流させた。反応液を室温に戻した後、希塩酸、飽和食塩水で処理し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)を行い、参考例である目的化合物(VIIIa)を得た。収量:130 mg (収率:93%)
MS m/z= 752 [M] +
〔合成例6〕
Figure 0005803025
(IVa) (100 mg, 0.123 mmol)をTHF (10 ml)に溶かし、K2CO3飽和水(10 ml)を混合した後に、2-フリルボロン酸(29.0 mg, 0.259mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(20 mg, 0.022mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.05 ml, 0.03 mmol)を加え、80℃で1時間還流させた。反応液を室温に戻した後、希塩酸、飽和食塩水で処理し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)を行い、参考例である目的化合物(IXa)を得た。収量:78 mg (収率:92%)
MS m/z= 692 [M] +
〔合成例7〕
Figure 0005803025
(IVa) (220 mg, 0.271 mmol)をTHF (10 ml)に溶かし、K2CO3飽和水(10 ml)を
混合した後に、4アセチルフェニルボロン酸(22.2 mg, 0.135mmol)、5-メチル-2-チオフェンボロン酸(19.2 mg, 0.135mmol) 、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(15 mg, 0.016mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.05 ml, 0.03 mmol)を加え室温で20分撹拌させた。反応液を室温に戻した後、希塩酸、飽和食塩水で処理し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)を行い、目的化合物(Xa)を得た。収量:69mg
(収率:33%)
MS m/z= 774 [M] +
〔合成例8〕
Figure 0005803025
(IVa) (200 mg, 0.260 mmol)をTHF (40 ml)に溶かした後、-5℃まで冷却した。こ
れにトリフェニルホスフィノメチルベンゼン(226 mg, 0.52mmol)及びカリウムtert-ブトキシドを入れ、室温で24時間撹拌させた。希塩酸、飽和食塩水で処理し、クロロホルムで抽出した。有機層を濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)を行い、目的化合物(XIa)を得た。収量:102mg (収率:43%)

〔合成例9−1〕
Figure 0005803025
(XIIa)(570 mg; 2.16 mmol)を窒素雰囲気下でTHF(15 mL)に溶かした。-78℃に冷
却した後、1.6 M n-BuLiヘキサン溶液(1.4 mL ; 2.2 mmol)をゆっくり滴下し、30分撹拌させた。続けてB(OBu)3を約0.6 ml滴下ロートを用いて滴下した。1時間 -70℃以下に保ち反応させた後、Na2CO3 20%水溶液200 ml、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム触媒を1.2 g、(XIIIa)(800 mg ; 0.9 mmol)を加え、約40時
間還流した。NaCl飽和水溶液で処理し、ジエチルエーテルで抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で単離し、目的化合物(XIVa)を得た。収量:417mg (収率:51%)
MS m/z= 740 [M] +
〔合成例9−2〕
Figure 0005803025
(XIVa)(110 mg, 0.172 mmol)をジクロロメタン10 mlに溶かし、12時間ごとに3-ク
ロロ過安息香酸(MCPBA)200 gを合計三回混合した。反応溶液をNa2SO4飽和水溶液、チオ硫酸ナトリウム水溶液、少量の炭酸水素ナトリウムで処理し、酢酸エチルで抽出した。カラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=5:5)を行い、目的化合物(XVa)を得た。収量:30mg (収率:28%)
MS m/z= 803 [M] +
1H NMR(400MHz, CDCl3): ・λ・1.91 (s. 6H), 3.60 (s. 6H), 5.28 (s. 4H), 7.19
(d, J= 8.8, 2H) , 7.66 (d, J= 8.8, 2H) , 7.96 ~ 8.04 (m, 2H) , 8.13 ~ 8.22 (m, 2H) , 8.24 ~ 8.33 (m, 2H)
〔合成例9−3〕
Figure 0005803025
(XVa)(20 mg)をジクロロメタン8 mlとエタノール2 mlに溶かし、少量の濃塩酸を
加え、3h還流した。水、飽和食塩水溶液で処理し、ジエチルエーテルで抽出した。エバポレーターで溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で単離し、目的化合物(XVIa)を得た。収量:12mg (
収率:96%)
1H NMR(400MHz, CDCl3): ・λ・1.89 (s. 6H), 5.31 (b. 2H), 7.99 (d, J= 8.8, 4
H), 7.62 (d, J= 8.8, 4H) , 8.00 (dd, J= 1.6J= 4.4, 2H), 8.13 (d, J= 1.6, 2H) , 8.13 (d, J= 1.6, 2H) , 8.25 (d, J= 4.4, 2H)
MS m/z = 714 [M]+
〔合成例10〕
Figure 0005803025
(VIa)(100 mg, 0.136 mmol)をメタノール20 mlの溶媒に溶かし、-5℃まで冷却させ
た。これにNaBH4(40 mg, 1.05 mmol)を加え、1時間撹拌させた。反応後、希塩酸、飽和食塩水で処理し、クロロホルムで抽出した。有機層を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=2:8)を行い、目的化合物(XVIIa)を
得た。収量:26mg (収率:39%)
MS m/z = 772 [M]+
<実施例1>
上記合成例により得られた化合物の閉環体の蛍光量子収率をジオキサン中で測定した。吸収極大波長および蛍光量子収率を以下に示す。いずれも0.6以上の値が得られた。
Figure 0005803025
<実施例2>
化合物(Va)は、図1に示すように紫外光(365 nm)の照射により、光照射前には吸収
の存在していない可視部(〜450 nm)に閉環体に由来する新しい吸収が現れた。なお同図における光照射時間は、それぞれ、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒そして35秒としている。図2に示すようにこの吸収位置の波長の光を照射すると、λ> 500 nm 波長の位置に強い蛍光が現れた。蛍光強度は、450 nm 付近の吸収の増加に伴い増大した。450 nm 付近の吸収帯は、λ> 450 nm の光を長時間照射すると徐々に退色し、消滅することが認められた。それとともに、蛍光も減少した。すなわち、紫外光(365 nm)と可視光(λ> 450 nm)の交互照射により、450 nm付近の吸収帯が生成/消滅し、蛍光も同様の(オン/オフ)スイッチ挙動を示すことが確認された。
同様の可逆な吸収スペクトル(蛍光スペクトル)の変化は、化合物(VIa)、(VIIa)、
(VIIIa)、(IXa)、(Xa) 、(XVIa)、(XVIIa)においても認められた。化合物(XI
a)は450 nm の光照射による有意な退色を示さなかった。
本発明は光により蛍光強度を(オン/オフ)スイッチするフォトクロミック分子として利用することができる。

Claims (2)

  1. 一般式(6a)、(8a)で表されるジアリールエテン系化合物よりなり、閉環体の蛍光量子収率が0.5以上であるフォトクロミック分子
    Figure 0005803025
    一般式(6a)、(8a)において、R1,R2は、各々独立にアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を表し、R3,R4は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、アセチル基、ヒドロキシ基、アルコール基、アミノ基、あるいは下記置換基群より選ばれるもの(但し、下記置換基群の芳香族炭化水素環又は複素環は置換されてもよい)を表し、Xは - S - 又は - O - を、Yは =CH - 又は =N - を表わす。
    Figure 0005803025
  2. ジアリールエテン系化合物が下記の化合物から選ばれる請求項1に記載のフォトクロミック分子。
    Figure 0005803025
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