JP4807939B2 - セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このようなセルロースアシレートシートの延伸方法としては、縦(長手)方向に延伸する方法(縦延伸)、横(幅)方向に延伸する方法(横延伸)、または、同時に縦、横方向に延伸する方法(同時延伸)が知られている。これら延伸方法の中でも、縦延伸は設備がコンパクトであるため、従来から多く用いられている。
この延伸方法については幾つかの改良が提案されており、例えば、縦延伸する方向を流延製膜方向に対して逆にすることで、遅相軸の角度むらを改良した方法が提案されている(特許文献1参照)。また、縦横比(L/W)を0.3〜2として延伸し、厚み方向のレターデーション(Rth)を改良する方法も提案されている(特許文献2参照)。しかし、これらの方法で得られた延伸フィルムを液晶表示装置の位相差板として使用すると、経時に伴って液晶表示画面に色むらが発生するという問題があった。このため、その改良が望まれていた。
(1)面内のレターデーション(Re)の80℃および1000時間での経時変化(δRe)、並びに、厚み方向のレターデーション(Rth)の80℃および1000時間での経時変化(δRth)が、いずれも0%〜10%であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(2)前記面内のレターデーション(Re)が0nm〜500nmであり、且つ、前記厚み方向のレターデーション(Rth)が30nm〜500nm以下であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3)経時後の波打ちの高さが0mm〜5mmであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(5)前記延伸工程において、テンターにより前記セルロースアシレートシートを1倍〜2.5倍に横延伸することを特徴とする上記(4)のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(6)前記セルロースアシレートシートのアシレート基が、下記の式(1)および式(2)で表される置換度を満足することを特徴とする上記(4)または(5)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1):2.5≦A+B<3.0
式(2):1.25≦B<3.0
〔上記式(1)および式(2)中、Aはアセテート基の置換度を示し、Bはプロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の各置換度の総和を示す。〕
(8)前記延伸工程において、前記縦延伸が、直径3cm〜50cmのニップロールを用いて行われることを特徴とする上記(4)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(9)前記予熱ロールによる予熱の温度が(Tg−40℃)〜(Tg+60℃)であることを特徴
とする上記(7)または(8)のいずれかに記載に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(11)基材上に少なくとも1層の偏光層を有する偏光板であって、前記基材が上記(1)〜(3)または(10)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
(12)上記(1)〜(3)または(10)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
(13)(1)〜(3)または(10)のいずれかに記載に記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
本発明でいうRe、Rthの経時変化δReおよびδRthとは、80℃で1000時間経時後のRe、Rth変化であり、下記式(3)および式(4)で示される。なお、80℃・1000時間での経時は、常温で10年以上の経時に相当する。このような経時変化は湿熱条件下より、乾燥加熱条件下において顕著に発現する。
Re経時変化(δRe:%)=
100×|Re(F)−Re(T)|/Re(F)
式(4):
Rth経時変化(δRth:%)=
100×|Rth(F)−Rth(T)|/Rth(F)
〔式(3)および式(4)中、Re(F)およびRth(F)はそれぞれ80℃・相対湿度10%以下・1000時間経時前のReおよびRthを示し、Re(T)およびRth(T)はそれぞれ80℃・相対湿度10%以下・1000時間経時後のReおよびRthを示す。)
式(5):Re=|n(MD)−n(TD)|×T
式(6):Rth=|{(n(MD)+n(TD))/2}−n(TH)|×T
〔式(5)および式(6)中、n(MD)、n(TD)およびn(TH)は、それぞれ長手方向、幅方向および厚み方向の屈折率を示し、Tはnm単位で表した膜の厚みを示す。〕
このような縦延伸は、セルロースアシレートシート中に残留する溶剤が3質量%以下の状態で実施することが好ましく、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。これは、残留溶剤存在下ではフィルム中の分子の配向が経時で緩和し易く、ReおよびRthが経時変化しやすいためである。
本発明においては、このうちRe≦Rthを満足するものがより好ましく、さらに好ましくはRe×2≦Rthを満足するものがさらに好ましい。このような高Rthおよび低Reを実現するためには、上述のように縦延伸したものを、横(幅)方向に延伸するのが好ましい。即ち、縦方向と横方向との配向の差が面内のレターデーションの差(Re)となるが、縦方向に加えその直交方向である横方向にも延伸することで、縦横の配向の差を小さくし面配向(Re)を小さくできる。一方、縦に加え横にも延伸することで面積倍率が増加するため、厚みの減少に伴い厚み方向の配向は増加し、Rthを増加させることができる。
さらに、ReおよびRthの幅方向、長手方向の場所(測定部位)による変化をいずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にすることが好ましい。これらは上述のような縦横比(L/W)の小さな延伸を行うことで達成される。即ち低い縦横比(L/W)で急激に延伸することでフィルムに延伸むらが発現する前に延伸が終了するためである。
(セルロースアシレート樹脂)
本発明のセルロースアシレートフィルムの原料として用いるセルロースアシレート樹脂は、本発明の条件を満たすセルロースアシレートフィルムを製造しうるものであれば特に制限されない。好ましいのは、形成されるセルロースアシレートフィルムのアシレート基が、下記式(1)および下記式(2)で表される置換度を満足するセルロースアシレート樹脂である。
式(1):2.5≦A+B<3.0
式(2):1.25≦B<3.0
〔上記式(1)および式(2)中、Aはアセテート基の置換度を示し、Bはプロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の各置換度の総和を示す〕。
・Bの1/2以上がプロピオネート基の場合、下記式(1A)および下記式(2A)であり、
式(1A):2.6≦A+B≦2.95
式(2A):2.0≦B≦2.95
・Bの1/2未満がプロピオネート基の場合、下記式(1A’)および下記式(2A’)である。
式(1A’):2.6≦A+B≦2.95
式(2A’):1.3≦B≦2.5
・Bの1/2以上がプロピオネート基の場合、下記式(1B)および下記式(2B)であり、
式(1B):2.7≦A+B≦2.95
式(2B):2.4≦B≦2.9
・Bの1/2未満がプロピオネート基の場合、下記式(1B’)および下記式(2B’)である。
式(1B’):2.7≦A+B≦2.95
式(2B’):1.3≦B≦2.0
これらのセルロースアシレート樹脂は溶液製膜および溶融製膜のいずれでもシート化、フィルム化することができる。
セルロースアシレート樹脂の溶液製膜に用いる溶剤として、下記の塩素系有機溶媒および非塩素系有機溶媒のいずれも用いることができる。
前記塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタンまたはクロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合、ジクロロメタンは少なくとも50質量%以上使用することが好ましい。
前記塩素系有機溶媒は非塩素系有機溶媒と併用することもできる。前記塩素系有機溶媒と併用される非塩素系有機溶媒について以下に記す。すなわち、前記塩素系有機溶媒と併用するのに好ましい非塩素系有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルおよびアルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。また、エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も前記塩素系有機溶媒に併用する溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
・ジクロロメタン/ブタノール(94/6)
・ジクロロメタン/ブタノール/メタノール(84/4/12)
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(72/9/9/4/6)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10)
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5)
・ジクロロメタン/1,3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5)
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5)
主溶媒として好ましく用いられる非塩素系有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトンおよびエーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/8/4/5)
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5)
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/15/5/5)
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5)
・酢酸メチル/1,3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5)
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5)
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5)
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5)
・アセトン/1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5)
・1、3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(60/20/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4)でセルロースアシレート樹脂溶液を調製し、ろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/5/3)でセルロースアシレート樹脂溶液を調製し、ろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6)でセルロースアシレート樹脂溶液を調製し、ろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加
また、セルロースアシレートは溶解に先立ち、0℃〜50℃で0.1時間〜100時間膨潤させることが好ましい。
なお、種々の添加剤は、膨潤工程の前に添加しても良く、膨潤工程中或いは後でもよく、さらには、この後冷却溶解中若しくは後でも構わない。
さらに本発明においては、ドープする際に、濃縮,ろ過を実施することが好ましく、これらは発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の25頁に詳細に記載されているものを使用できる。
上記溶融製膜は、セルロースアシレート樹脂を乾燥した後、混練押出しし、その後、キャストによって製膜する。
(1)乾燥
セルロースアシレート樹脂は粉体のまま用いてもよいが、製膜の厚み変化を少なくするためにはペレット化したものを用いるのがより好ましい。
セルロースアシレート樹脂は含水率を好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーの温度は好ましくは(Tg−50℃)〜(Tg+30℃)、より好ましくは(Tg−40℃)〜(Tg+10℃)、さらに好ましくは(Tg−30℃)〜(Tg)にする。これによりホッパー内での水分の再吸着を抑制し、上記乾燥の効率をより発現し易くできる。さらに、ホッパー内を脱水した空気や不活性気体(例えば窒素)を吹き込むこともより好ましい。
混練押出しは、好ましくは120℃〜250℃、より好ましくは140℃〜220℃、さらに好ましくは150℃〜200℃で混練しセルロースアシレート樹脂を溶融する。この際、溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御してもよい。好ましい混練時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。さらに、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中、或いはベント付き押出し機を用い真空排気しながら混練押出しを実施するのも好ましい。
溶融したセルロースアシレート樹脂をギヤポンプに通し、押し出し機の脈動を除去した後、金属メッシュフィルター等でろ過を行い、この後ろに取り付けたT型のダイから冷却ドラム上にシート状に押し出す。押出しは単層で行ってもよく、マルチマニホールドダイやフィードブロックダイを用いて複数層押出してもよい。この時、ダイのリップ間隔を調整することで幅方向の厚みむらを調整することができる。
この後キャスティングドラム上にセルロースアシレート樹脂を押出す。この際、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートとの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部(例えば両端のみ)に実施してもよい。
キャスティングドラムの表面温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃であり、さらに好ましくは80℃〜140℃である。この後、キャスティングドラムからシートを剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分であり、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは、必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
このようにして得られたセルロースアシレート樹脂の溶液製膜若しくは溶融製膜フィルムのガラス転移温度(Tg)は70℃〜180℃が好ましく、より好ましくは80℃〜160℃であり、さらに好ましくは90℃〜150℃である。
上述の方法で製膜した後、延伸工程において上述の方法で1軸または2軸に延伸し、延伸セルロースアシレートフィルムを作製する。作製したセルロースアシレートフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板とを組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。これらは以下の工程により達成できる。
(1)表面処理
セルロースアシレートフィルムは表面処理を行うことによって、各機能層(例えば、下塗層やバック層)との接着性を向上させることができる。前記表面処理としては、例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、プラズマ励起性気体存在下でフィルム表面にプラズマ処理を施す処理である。グロー放電処理は、10-3Torr〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理でもよく、更に大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。前記プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンのようなフロン類およびそれらの混合物等が挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。
これら表面処理の中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理である。
塗布方法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗或いは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(イ)偏光層の付与(偏光板の作製)
(イ−1)使用素材
現在、市販の偏光層は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素若しくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、若しくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光層には、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光層におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素またはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
偏光層のバインダーは架橋していてもよい。このため、架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合してもよく、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与してもよい。架橋は、光、熱或いはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1質量%〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光層の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
偏光層は、延伸するか(延伸法)、若しくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5倍〜30.0倍が好ましく、3.0倍〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5倍〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0倍〜10.0倍が好ましい。延伸はMD方向に平行に行ってもよく(平行延伸)、斜め方向におこなってもよい(斜め延伸)。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
a)平行延伸法
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させるのが好ましい。この際膨潤度は1.2倍〜2.0倍(膨潤前と膨潤後との質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、好ましくは15℃〜50℃、就中17℃〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。延伸倍率は、延伸後/初期状態の長さ比(以下同じ)に基づくが、前記作用効果の点より好ましい延伸倍率は1.2倍〜3.5倍であり、就中1.5倍〜3.0倍である。この後、50℃〜90℃において乾燥させて偏光層を得る。
斜め延伸法としては特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必要である。好ましい含水率は5%〜100%、より好ましくは10%〜100%である。
延伸時の温度は40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。相対湿度は50%〜100%が好ましく、より好ましくは70%〜100%、さらに好ましくは80%〜100%である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
延伸の終了後、好ましくは50℃〜100℃、より好ましくは60℃〜90℃で、0.5分〜10分乾燥する。乾燥時間は、より好ましくは1分〜5分である。
このようにして得られた偏光層の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、さらに好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
上記鹸化後のセルロースアシレートフィルム(基材)と、延伸して調製した偏光層とを貼り合わせ偏光板を作製するのが好ましい。張り合わせる方向は、セルロースアシレートフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向とが45°になるように行うのが好ましい。
貼り合わせに用いる接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30%〜50%の範囲にあることが好ましく、35%〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40%〜50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90%〜100%の範囲にあることが好ましく、95%〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99%〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作製することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板との吸収軸を45°になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20°〜70°傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層からなるλ/4板を用いることが好ましい。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
(ロ−1)配向膜
上記表面処理したセルロースアシレートフィルム上に配向膜を設けるのが好ましい。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているため、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明のセルロースアシレートフィルムを基材として用いた偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、或いはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与或いは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、或いは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、或いは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。前記架橋剤としては、反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、上述のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行うことができる。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水との混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜は、本発明のセルロースアシレートフィルム上若しくは該フィルム上に塗布された下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
工業的に実施する場合、搬送している配向膜のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1°〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0°〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40°〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1μm〜10μmの範囲にあることが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或いはカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上させることが出来る。これらは液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、或いは配向を阻害しないことが好ましい。
前記重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが更に好ましい。前記重合性モノマーとしては、例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。重合性モノマーの添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1質量%〜50質量%の範囲にあり、5質量%〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
このようなポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1質量%〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70℃〜300℃が好ましく、70℃〜170℃がさらに好ましい。
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1μm〜20μmであることが好ましく、0.5μm〜15μmであることがさらに好ましく、1μm〜10μmであることが最も好ましい。
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。前記重合反応としては、光重合反応が好ましい。
前記光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20J/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100J/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
また、保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
偏光層と光学補償層との傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光層の透過軸と液晶セルの縦または横方向とのなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
上述のような光学補償フィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
TNモード液晶表示装置:
TNモード液晶表示装置はカラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
OCBモード液晶表示装置は棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
VAモード液晶表示装置は電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に、実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に、実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
IPSモード液晶表示装置は電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号公報、特開2004−12731号公報、特開2004−215620号公報、特開2002−221726号公報、特開2002−55341号公報、特開2003−195333号公報の各々に記載のものなどを使用できる。
その他液晶表示装置:
ECBモードおよびSTNモードに対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
反射防止層は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを本発明のセルロースアシレートフィルムである基材上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜の形成方法としては、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止層としては、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止層が各種提案されている。
また、前記反射防止層としては、上述したような塗布によって形成される反射防止フィルム上に最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
本発明のセルロースアシレートフィルムである基材上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止層は、以下の関係式を満足する屈折率を有する様に設計される。
関係式・・・高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層との間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、反射防止フィルムは、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
前記反射防止フィルムについては、例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、上述の各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
反射防止膜の高い屈折率を有する層(高屈折率層)は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物超微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。高屈折率の無機化合物超微粒子としては、例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或いは有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104等)、特定の分散剤の併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等が挙げられる。
更に、マトリックスを形成する材料としては、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有する有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物とから得られる硬化性膜も好ましい。該硬化性膜は、例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は好ましくは1.20〜1.55であり、更に好ましくは1.30〜1.50である。
前記低屈折率層は、耐擦傷性および防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段としては表面への滑り性の付与が有効であり、従来公知のシリコーン化合物によるシリコーンの導入、含フッ素化合物によるフッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましく、より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物は、フッ素原子を35質量%〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
前記含フッ素化合物としては、例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
架橋性基若しくは重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤や増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
これらシランカップリング剤としては、例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基である(ポリ)パーフルオロアルキルエーテル基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜150nmであることがさらに好ましく、60nm〜120nmであることが最も好ましい。
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、本発明のセルロースアシレートフィルムである基材の表面に設ける。ハードコート層は、特に基材と前記高屈折率層との間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、或いは、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物の硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開WO0/46617号公報等記載のものが挙げられる。
また、上述の高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合に、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。また、上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
前方散乱層としては、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子との相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等に記載のものが挙げられる。
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を本発明のセルロースアシレートフィルム上に設けてもよい。
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
反射防止フィルムは、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止フィルムがアンチグレア機能を有する場合、反射防止フィルムのヘイズは、3%〜30%であることが好ましく、5%〜20%であることがさらに好ましく、7%〜20%であることが最も好ましい。
反射防止フィルム表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05μm〜2μm)を少量(0.1質量%〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
1.Re、Rthの経時変化
(1)経時前測定
サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%の条件下で3時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、サンプルフィルム表面に対し垂直方向、および、フィルム面法線から±40°傾斜させた方向から波長550nmにおけるレターデーション値を測定する。垂直方向から面内のレターデーション(Re)、フィルム面法線から±40°方向の測定値から厚み方向のレターデーション(Rth)を算出する。これらをRe(F)およびRth(F)とする。
(2)経時後測定
自然経時10年以上に相当する条件として、80℃、相対湿度10%以下で1000時間経時させた後、25℃・相対湿度60%の条件下で3時間以上調湿後、25℃・相対湿度60%中で経時前測定と同様にして、Re,Rthを測定する。これらをRe(T)およびRth(T)とする。
(3)これらの値から、下記式に従い、Re,Rthの経時変化を求めることができる。
Reの経時変化(%:δRe)=100×|Re(F)−Re(T)|/Re(F)
Rth経時変化(%:δRth)=100×|Rth(F)−Rth(T)|/Rth(F)
(1)サンプルフィルムを製膜方向と平行に50cm角に裁断する。これを80℃、相対湿度10%以下で1000時間経時する。
(2)80℃、相対湿度10%以下で1000時間経時後、水平で平滑な台の上にサンプルフィルムを広げ、25℃・相対湿度60%で12時間経時させた後、波打ちにより台から浮き上がった高さを、全ての波打ちしたところでノギスを用いて計測する。
(3)全計測点のうち、最大高さ(台からフィルムまでの最大距離)を波打ち高さと呼ぶ。
縦横比(L/W)は、延伸に用いるニップロールの間隔(L:2対のニップロールの回転中心軸間の距離)を延伸前のセルロースアシレートフィルムの幅(W)で割った値(L/W)を意味する。尚、3対以上のニップロールがある場合は、もっとも大きいL/Wの値を縦横比(L/W)とした。
セルロースアシレート樹脂のアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
下記表1、2に記載に従って、アシル基の種類および置換度の異なるセルロースアシレート樹脂を調製した。セルロースアシレート樹脂の調製は、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応をして行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することで、アシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後、40℃で熟成を行った。このようにして得たセルロースアシレート樹脂の重合度を下記の方法で求め、表1、2に記載した。
絶乾したセルロースアシレート樹脂約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0 T :測定試料の落下秒数
[η]=〔ln(ηrel)〕/C T0 :溶剤単独の落下秒数
DP=[η]/Km C :濃度(g/l)
Km:6×10-4
ln:自然対数
(Tg測定)
DSCの測定パンにサンプルを20mg入れ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st−run)、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温した(2nd−run)。2nd−runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とし表1、2に記載した。
また、全水準に二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V:日本アエロジル(株)製)0.05質量%を添加した。
(1)溶融製膜
上記セルロースアシレート樹脂を直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。この際、可塑剤は以下の中から選定し(表1に記載)ペレットに混練した。これを110℃の真空乾燥機で乾燥し、含水率を0.1質量%以下とした後、(Tg−10℃)になるように調整したホッパーに投入した。
TPP:トリフェニルフォスフェート
BDP:ビフェニルジフェニルフォスフェート
DOA:ビス(2−エチルヘキシル)アジペート
PTP:1,4−フェニレンーテトラフェニルリン酸エステル
溶融粘度が1000Pa・sとなるように溶融温度を調整し、この温度で5分間かけて1軸混練機を用い溶融した。その後、溶融温度と同温度に設定したT−ダイから(Tg−5℃)に設定したキャスティングドラム上に流延し固化しフィルムとした。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。各水準とも、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。
(i)仕込み
上記セルロースアシレート樹脂を含水率が0.1質量%以下になるように乾燥した後、表2に記載の可塑剤を添加し、下記から選んだ溶剤で溶解した。その後、セルロースアシレート樹脂が25質量%となるように溶解した。
・非塩素系有機溶媒:酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール
(80/5/7/5/3:質量部)
・塩素系有機溶媒:ジクロロメタン/ブタノール
(94/6:質量部)
・光学異方性コントロール剤:特開2003−66230に記載の(化1)に記載の板状化合物(3質量%)
・UV剤a:2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(0.5質量%)
・UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(0.2質量%)
・UV剤c:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(0.1質量%)
・微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm)、モース硬度 約7(0.25質量%)
・クエン酸エチルエステル(モノエステルとジエステルが1:1混合、0.2質量%)
※上記添加量(質量%)は全てセルロースアシレートに対する割合である。
これらのセルロースアシレート樹脂、溶剤および添加剤を溶剤中に撹拌しながら投入した。投入が終わると撹拌を停止し、25℃で3時間膨潤させスラリーを調製した。これを再度撹拌し、完全にセルロースアシレートを溶解した。
(iii)ろ過・濃縮
この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
上述のドープを35℃に加温し、下記いずれかの方法で流延した(表2に記載)。
(イ)バンド法
ギーサーを通して、15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号公報に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは60m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が100質量%で剥ぎ取った後、130℃で乾燥し、残留溶剤が1質量%以下となったところで巻き取り、セルロースアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与し、3000mロール状に巻き取った。
ギーサーを通して、−15℃に設定した直径3mの鏡面ステンレスのドラムに流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号公報に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは100m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が200質量%で剥ぎ取った後、130℃で乾燥した後、残留溶剤が1質量%以下となったところで巻き取ったとりセルロースアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与し、3000mロール状に巻き取った。
上記溶融製膜または溶液製膜で得たセルロースアシレートフィルムを下記表1、2に記載の温度および本数の予熱ロールを用いて予熱した後、表1、2記載の温度で、表1、2記載の直径のニップロールを用い、表1、2記載の縦横比で延伸した。なお、延伸温度はいずれも各水準の樹脂のTgに対し、何℃高いか、低いかをそれぞれ+、−の温度で表1に「対Tg」として示した。また、縦延伸、横延伸は同じ温度で実施した。このようにして延伸した本発明の要件を満たすセルロースアシレートフィルムは、全幅、長手方向、いずれもRe,Rthの変化(全幅を10等分し長手方向1m間隔で10回測定(合計100点)の最大値と最小値との差を平均値で割り、百分率で示したもの)が2%以下であった。
このようにして得た延伸フィルムの経時前(フレッシュ)のRe,Rth、および80℃・1000時間経時後のRe,Rthの経時変化率、80℃・1000時間経時後の波打ちを高さを表1、2に示した。併せてニップロールで発現する粘着跡を以下の方法で評価し、表1,2に記載した。
サンプルフィルムを黒色の平坦な布の上に置き、タングステンランプの下で反射光で目視観察する。表面に確認される数mm程度の「ハ」字状(鳥の足型状)の模様を20m2観察し、その個数を数え、1m2あたりの平均値として表した(「ハ」字状の粘着跡は、フィルムが延伸ロールに接触したとき粘着し、これからフィルムが離れる際、粘着点を起点とし、放射状にフィルム表面が剥ぎ取られることで発生するものである)。
(1)表面処理
延伸後のセルロースアシレートフィルムを下記のいずれかの方法で鹸化を行い、表1、2に記載した。
(i)塗布鹸化
iso−プロパノール80質量部に水20質量部を加え、これにKOHを1.5規定となるように溶解し、これを60℃に調温したものを鹸化液として用いた。これを60℃のセルロースアシレートフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーを用い、10l/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。
(ii)浸漬鹸化
NaOHの1.5規定水溶液を鹸化液として用いた。これを60℃に調温し、セルロースアシレートフィルムを2分間浸漬した。この後、0.1Nの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸したで厚み20μmの偏光層を形成した。この際、製膜、延伸直後のものと、80℃・1000時間経時後のものを作製した。なお、特開平2002−86554号公報の実施例1のように延伸軸が斜め45°となるように延伸した偏光層も同様に作製したが、以降の評価結果は上述のものと同様な結果が得られた。
このようにして得た延伸直後のもの(フレッシュ品)と80℃・1000時間経時(経時品)したもので作製した偏光層を、上記鹸化処理した延伸セルロースアシレートフィルム(位相差板)と鹸化処理した偏光板保護フィルム(商品名:フジタック)の間に挟み込んだ。この際、位相差板と偏光層との接着は、位相差板がセルロースアシレートの場合はPVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤とし、位相差板がこれ以外の場合はエポキシ系接着剤を用いて貼り合せた。またフジタックと偏光層との間は上述のPVA水溶液を接着剤として貼り合わせた。貼り合わせ方向は、偏光軸と位相差板との長手方向が45°となるようした。このようにして得た偏光板は位相差板を液晶側に、フジタックを外側(目視側)になるようにして、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置液晶表示装置に取り付けた。これをフレッシュ品の偏光板を用いたものと、経時品の偏光板を用いたものを比較し、目視評価し色むらの発生領域の全面積に占める割合を表1、2に記載した。本発明を実施したものは良好な性能が得られた。
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明のセルロースアシレートフィルムを使用した。この時製膜、延伸直後のもの(フレッシュ品)を用いた場合と80℃・1000時間経時させたもの(経時品)を用いたもので作製し、両者比較し色むらの発生している領域を目視評価し、全面積に占める割合を表1、2に示した。このように本発明を用いたものは良好な光学補償フィルムを作製できた。
また、特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムに代わって、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムに変更し光学補償フィルターフィルムを作製したものでも同様に良好な光学補償フィルムを作製できた。
一方、本発明の範囲外のものは、光学特性が低下した。特に、特開2002−311240号公報の実施例1に準じたもの(表1の比較例2−5)、特開2003−315551号公報の実施例中の試料No.S−11に準じたもの(表2の比較例2−4)は、特にその低下が著しかった。
発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムを用いて低反射フィルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。
上記本発明の偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いた。さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、良好な液晶表示装置を得た。
2,3 ニップロール
Claims (5)
- 面内のレターデーション(Re)の80℃、相対湿度10%以下および1000時間での経時変化(δRe)、並びに、厚み方向のレターデーション(Rth)の80℃、相対湿度10%以下および1000時間での経時変化(δRth)が、いずれも0%〜10%であり、経時後の波打ちの高さが0mm〜5mmであるセルロースアシレートフィルムであって、
前記フィルムの残留溶媒量が1質量%以下であり、
前記セルロースアシレートシートのアシレート基が、下記式(1)および式(2)で表される置換度を満足するセルロースアシレートフィルム。
式(1):2.5≦A+B<3.0
式(2):1.25≦B<3.0
〔上記式(1)および式(2)中、Aはアセテート基の置換度を示し、Bはプロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の各置換度の総和を示す。〕 - 前記面内のレターデーション(Re)が0nm〜500nmであり、且つ、前記厚み方向のレターデーション(Rth)が30nm〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- アシレート基が下記式(1)および式(2)で表される置換度を満足するセルロースアシレート樹脂原料の含水率を0.1%以下に乾燥する工程と、
前記セルロースアシレート樹脂原料を用いてセルロースアシレートシートを製膜する工程と、
縦横比(L/W)が0.01を越え0.3未満の条件で、前記セルロースアシレートシートを残留溶媒量が1質量%以下の状態で1.01倍〜3倍に縦延伸する延伸工程を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1):2.5≦A+B<3.0
式(2):1.25≦B<3.0
〔上記式(1)および式(2)中、Aはアセテート基の置換度を示し、Bはプロピオネート基、ブチレート基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の各置換度の総和を示す。〕 - 前記延伸工程において、テンターにより前記セルロースアシレートシートを1倍〜2.5倍に横延伸することを特徴とする請求項3に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 前記セルロースアシレートシートの製膜を溶融製膜により行うことを特徴とする請求項3または4に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
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