JP2006336004A - セルロースアシレートフィルム - Google Patents

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斉和 橋本
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Abstract

【課題】液晶表示装置に組み込んだ時に発生する表示のボケを大幅に解消することができる溶融製膜したセルロースアシレートフィルムを提供すること。
【解決手段】高さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凸部の数と、深さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凹部の数との合計が、フィルムの幅10cmあたり10本以下であることを特徴とする、溶融製膜によって形成されたセルロースアシレートフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶融流延によって形成されたセルロースアシレートフィルムに関する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置に組み込む光学フィルムとして有用である。
従来、液晶表示装置等に使用されるセルロースアシレートフィルムを製造する際に、セルロースアシレートをジクロロメタンのような塩素系有機溶剤に溶解し、これを基材上に流延、乾燥して製膜する溶液流延法が主に実施されている。ジクロロメタンは、従来からセルロースアシレートに対する良好な溶媒として用いられており、また、沸点が低い(約40℃)ことから製造工程の製膜および乾燥工程において乾燥させ易いという利点があり、好ましく使用されている。
近年、環境保全の観点から、密閉設備における取り扱い工程でも低沸点である塩素系有機溶媒の漏れを著しく低減することが要求されるようになっている。このため、例えば徹底的なクローズドシステムによる系からの漏れ防止、万が一漏れても外気に出す前にガス吸収塔を設置し、有機溶媒を吸着させて処理する方法等が採用されている。さらに、排出する前に火力による燃焼あるいは電子線ビームによる塩素系有機溶媒の分解などを行うことにより、殆ど有機溶媒を排出することはなくなった。しかしながら、完全な非排出までには至っておらず、さらなる研究が必要とされている。
そこで、有機溶剤を用いない製膜法として、特定のセルロースアシレートを溶融製膜する方法が提案された(特許文献1)。この方法は、セルロースアシレートのエステル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ、溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、セルロースアセテートから、セルロースプロピオネートやセルロースブチレート等に変えることで溶融製膜を可能にしている。しかし、この特許記載の方法で溶融製膜したものを用いて偏光板を作成し液晶表示装置に組み込んだところ、画像ボケが発生することが明らかになっている。このため、改良が望まれていた。
特開2000−352620号公報
本発明は、液晶表示装置に組み込んだ時に発生する表示のボケを大幅に解消することができる溶融製膜したセルロースアシレートフィルムを提供することを目的とする。
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
[1]高さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凸部の数と、深さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凹部の数との合計が、フィルムの幅10cmあたり10本以下であることを特徴とする、溶融製膜によって形成されたセルロースアシレートフィルム。
[2]高さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凸部の数と、深さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凹部の数との合計が、フィルムの幅10cmあたり10本以下であり、残留溶媒量が0.01質量%以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
[3]高さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凸部の数と、深さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凹部の数との合計が、フィルムの幅10cmあたり10本以下であり、残留溶媒量が0であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
[4]180℃〜240℃における貯蔵弾性率G'が100Pa〜30000Paであり、かつ180℃〜240℃における損失弾性率G”が1000Pa〜30000Paであり、かつ180℃〜240℃におけるtanδ[ここにおいてtanδはG”/G'で計算される]が1〜6のメルトを用いて溶融製膜したことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[5]180℃〜240℃における法線方向の伸張破断長さが20μm〜400μmであり、かつ180℃〜240℃における法線方向の伸張破断応力が0.01N/cm2〜0.5N/cm2のメルトを用いて溶融製膜したことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[6][1]〜[5]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを構成するセルロースアシレートが下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1):2.6≦X+Y≦3.0
式(2):0≦X≦2.8
式(3):0.3≦Y≦3
(式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
[7]タッチロールを用いて溶融製膜されたことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[8][1]〜[7]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1方向に1%〜300%延伸したことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
[9]セルロースアシレートの重合度が100〜270であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[10]芳香環を2つ以上含み、分子量100〜3000の化合物を1質量%〜20質量%含むメルトを用いて溶融製膜したことを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[11]炭素数2〜6の脂肪酸を1ppm〜1000ppm含むメルトを用いて溶融製膜したことを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[12]硫酸量が0ppm〜200ppmのメルトを用いて溶融製膜したことを特徴とする[1]〜[11]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[13]先端角を1°〜60°のダイリップを用いて溶融製膜したことを特徴とする[1]〜[12]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[14]ダイリップをキャスティングドラムの中心から、キャスティングドラムの半径の0.7倍〜1.3倍の範囲内にセットし溶融製膜したことを特徴とする[1]〜[13]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[15]下記式(4)〜(6)を満足することを特徴とする[1]〜[14]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(4):Rth≧Re
式(5):200≧Re≧0
式(6):500≧Rth≧0
[16]偏光層に[1]〜[15]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
[17][1]〜[15]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
[18][1]〜[15]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
[19][1]〜[15]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置に組み込んだ時に発生する表示故障(ぼけ)を大幅に解消することができる。
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(フィルムの凹凸)
本発明者は、セルロースアシレートフィルムを組み込んだ従来の液晶表示装置に生じる表示ぼけの原因を解析した。その結果、可視光の波長より短い0.1μmの凹凸でも表示板からの光を散乱させ、表示ぼけを発生させることが判明した。このような微細な凹凸はヘーズ計でも計測することができず、画像表示させて初めて認識される。本発明者はこのような微細な凹凸の発生原因を鋭意検討した結果、図1に示すように、メルト(溶融した樹脂)2がダイから押出された時にダイリップ(ダイの先端)1に粘着し、これが引き剥がされる際に、メルトが引っ張られ凸部2bが形成されることを解明した。さらにその凸部2cが冷却ロールの上で押し込まれ、凸部2cの周囲が押し込まれ凹部2dが形成されることを解明した。
通常のダイラインはメルトがダイに押し付けられた際に、ダイの傷や汚れにより凹凸を転写されるため、凹凸のサイズが数百μm以上と大きく、発生する頻度も低い。これに対し本発明の対象となる凹凸は、粘着によりメルトが引っ張られて発生しその凹凸が小さい上、メルトとダイ間の粘着により発生するためダイラインのような偶発的なものではなく、全面にわたって発生する。即ち、本発明の対象となる凹凸は通常のダイラインとは発現機構が逆であり(押し込まれるのでは無く引っ張られて発生)、発現状態も異なる(強い凹凸が偶発的に発生するのではなく、弱い凹凸が全面的に発生する)。このような微細な凹凸(上記のように本発明で対象とする高さ0.1μm〜100μm、長さ1mm以上の微細な凹凸を以後「微細な凹凸」と呼ぶ)は、特にセルロースアシレートにおいて顕著に発生する。本発明のセルロースアシレートフィルムでは、このような微細な凹凸は幅10cmあたり0本〜10本であり、好ましくは0本〜8本、さらに好ましくは0本〜6本である。
本明細書において凹部と凸部の数を確認する際の基準となる10cmの幅は、溶融製膜の際の幅方向(TD)にとる。溶融製膜は工業的には連続的に行うのが一般的であり、通常は製膜後のフィルムをロール状に巻き上げて保管する。したがって、ロール状に巻き上げられたフィルムについて凹部と凸部の数を確認する際には、ロールの幅の方向に10cmの長さをとる。一方、フィルムが切断されているなどの事情により溶融製膜の方向が明らかでない場合は、凹部の数と凸部の数の合計が最大となる方向に10cmの幅をとる。上記のように、凹部と凸部は溶融製膜の方向に沿って生ずるため、凹部の数と凸部の数の合計が最大となる方向が溶融製膜の方向であると推定することができる。なお、凹部と凸部の数を測定する具体的な方法については、後述する測定法の記載を参照することができる。
このような微細凹凸の数が少ないことを特徴とする本発明のセルロースアシレートフィルムは、例えば以下のようにメルトの特性や製膜工程を調整することにより製造することが可能になる。
[1]ダイリップでのメルトの特性の調整
ダイリップでのメルトの貯蔵弾性率G'、損失弾性率G ”、tanδ(ここでいうtanδはG”/G'を指す)を調整することが好ましい。G'はメルトの弾性的な強度の指標であり、G”はメルトの粘性的な強度の指標である。また、180℃〜240℃としたのは、セルロースアシレートを溶融製膜を行う際のダイリップの好ましい温度であり、この範囲において下記物性を達成することがポイントである。
(1)180℃〜240℃におけるメルトのG'が100Pa〜3万Pa、より好ましくは300Pa〜2万Pa、さらに好ましくは500Pa〜1万Paにする。一般的なメルトのG'は約50Paであるが、上記のように高いG'にすることで、ダイリップに粘着したメルトを容易に引張り剥がすことができる。即ちメルトが上記範囲以下で弱いと、図1に示すようにダイリップに粘着したメルトを引き剥がすべく引張っても、メルトが伸びてしまい引き剥がすことができない。
(2)180℃〜240℃におけるG”が1000Pa〜30000Pa、より好ましくは2000Pa〜20000Pa、さらに好ましくは3000Pa〜13000Paにする。粘性項の指標であるG”がこれ以上ではメルトがダイリップに粘着し易くなり、引き剥がし難くなる。通報のメルトのG”は50000程度である。
(3)180℃〜240℃におけるtanδが1〜6であり、より好ましくは1.4〜5であり、さらに好ましくは1.7〜4.5にする。tanδは粘性項を弾性項で割った値であるので、これが小さいほど弾性項が大きいことを意味する。即ちダイリップに粘着しようとする力とダイリップから引き剥がそうとする力の比となる。したがってこれが小さいほど引き剥がしやすいことになる。本発明は上記のようにtanδを小さくすることを特徴としている。因みに一般的なメルトのtanδは8程度である。
(4)180℃〜240℃における法線方向の伸張破断長さが20μm〜400μm、より好ましくは40μm〜300μm、より好ましくは60μm〜200μmにする。これはダイリップにくっ付いたメルトをどこまで破断せずに伸ばせるかを示すものである。上記範囲とすることでダイリップに付いたメルトを引っ張っても図1のようにち切れ難いことを示す。因みに通常のメルトの伸張破断長さは10μm程度である。
(5)180℃〜240℃における法線方向の伸張破断応力が、0.01N/cm2〜0.5N/cm2、より好ましくは0.08N/cm2〜0.4N/cm2であり、さらに好ましくは、0.1N/cm2〜0.3N/cm2にする。これにより、メルトを引き剥がす際にメルトを引っ張っても、伸びてしまったり破断することが起き難い。因みに、一般的なメルトの伸張応力は0.005N/cm2程度である。
溶融製膜性(溶融押出し量の安定化、溶融時の着色、分解等)、光学特性(レターデーション発現性、透明性)等の観点から本発明のセルロースアシレートは後述する組成を有することが好ましいが、この素材をそのまま使用したのでは上記物性は達成されず、例えば以下のような素材をセルロースアシレート中に含ませることで達成することができる。(ア)炭素数2〜6の脂肪酸を1ppm〜1000ppm、より好ましくは2ppm〜500ppm、さらに好ましくは3ppm〜100ppmメルトに含ませる。このような脂肪酸は直鎖構造でも良い。これらの脂肪酸は少量で作用し、上記(1)〜(3)の物性を達成できる。これらの脂肪酸は単独でもちいても良く、2種以上混合して用いても良い。これらの脂肪酸を添加するタイミングはセルロースアシレートをペレットに成形する前でも後でも構わない。
(イ)芳香環を2つ以上含み、分子量100〜3000の化合物を1質量%〜20質量%、より好ましくは2質量%〜10質量%、さらに好ましくは3質量%〜8質量%、メルトに含ませる。これらの化合物はメルトの表面に析出し、ダイリップとメルトとの粘着を防止する効果があり、上記(4)、(5)に対し有効である。より好ましい化合物例としては、特開2001−166144号公報、特開2002−296421号公報に記載される化合物を挙げることができる。また、2つの芳香環の間を−COO−で連結した以下のような化合物を好ましく用いることもできる。
Figure 2006336004
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また、3つの芳香環を−COO−や−CONR’−で連結した以下のような化合物を好ましく用いることもできる。
Figure 2006336004
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また、以下のようなトリアジン誘導体に3つのアリールアミノ基が置換した化合物も好ましく用いることができる。
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さらに、以下のように多数の芳香環が線状に連結された化
Figure 2006336004
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これらの化合物は単独で用いても良く、混合して用いても良い。これらの化合物は微細凹凸の軽減以外にも光学異方性(レターデーション)の発現を促す効果ももつ。ただし、可塑剤(例えば、リン酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、グリコール酸エステル系化合物)やUV吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系化合物やベンゾトリアゾール系化合物)ではこのような効果が得られない。
(ウ)メルト中の硫酸量を0ppm〜200ppm、より好ましくは0ppm〜100、さらに好ましくは0ppm〜50ppmにする。硫酸はセルロースアシレートを合成する際に触媒として添加するが、洗浄が不十分で硫酸の残留量が多いと、溶融製膜中にセルロースアシレートの主鎖を切断し低分子量化する。このような低分子量セルロースアシレートは粘着性を示す上、粘弾性特性も変化させる。このため、上記(1)〜(5)に対し有効であり、(ア)、(イ)と一緒に用いることで相乗的な効果が得られる。セルロースアシレート中の硫酸量は合成直後1000ppm以上存在するが、50℃〜100℃の温水で十分に撹拌することで減少させることができる。このような洗浄効果を効率的に行うためには、セルロースアシレートの粒度を300メッシュ以下に微細化することが有効である。
[2]製膜工程の改良
溶融製膜におけるダイリップおよびキャスティングドラムとのレイアウトを例えば以下のように改良することによっても、本発明のセルロースアシレートフィルムを調製することができる。上記の素材からの改良と併せて実施することで相乗的な効果を得ることができる。
(1)ダイリップの改良
ダイリップの先端角を1°〜60°、より好ましくは3°〜45°、さらに好ましくは5°〜30°にする。通常はダイリップの角度は90°であるが、図2に示すように鋭角にすることで、ダイリップとメルトの粘着を防止できる。鋭角にしておけば、メルトが膨張(ダイスエル)してもダイリップに粘着しにくい。
このような鋭角のダイリップは先端が傷つき易いため、ダイリップの表面を硬い金属で被覆することが好ましい。このような硬い金属とは、ハードクロム、タングステン、チタン、タングステンカーバイド等が挙げられるが、より好ましくはタングステンカーバイド(WC)である。
(2)ダイリップとキャスティングドラム(CD)のレイアウト(図3参照)
図3に示すCDとダイリップの距離(L)と、CDの半径(R)の比(L/R)を0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2、さらに好ましくは0.9〜1.1となるようにダイリップをセットする。これによりダイリップからメルトは真っ直ぐCD上に引き取られる。これによりメルトがダイリップと接触し難くなり、粘着による微細凹凸の発生を抑制できる。通常はCDの中心の真上(半径の0倍)にダイリップを設置する場合が一般的である。
しかし、このようなレイアウトにすることでダイリップとCDとの間隔が広がるため、メルトがこの間でネックインし、さらにCD上でもネックインしメルト幅が狭くなる。このため、CD上でのネックインを減少させるために、静電印加法を用いることが好ましい。静電印加法は全幅にわたってかけても一部だけかけても良いが、両端だけに掛けるのが効率的でより好ましい。好ましい静電印加の幅は各端1cm〜30cm、より好ましくは2cm〜20cm、さらに好ましくは3cm〜15cmである。静電印加は通常の方法を用いることができ、好ましい電圧は1kV〜50kV、より好ましくは2kV〜30kV、さらに好ましくは3kV〜20kVである。この電極は針状でもワイヤー状でもよく、メルトがCDに接地する地点から0.5cm〜20cm、より好ましくは1cm〜10cmのところに設置するのが好ましい。
(3)タッチロール製膜
本発明では溶融後ダイから押出した後、キャスティングドラム上でタッチロールを用いて製膜することがより好ましい(図4)。この方法はダイから出たメルトをキャスティングドラムとタッチロールで挟み込んで冷却固化するものである。これを用いることで、上述のフィルムに形成された微細凹凸を平滑にすることができ液晶表示装置でのボケを軽減できる。
このようなタッチロールは、ダイから出たメルトをロール間で挟む時に生じる残留歪を低減するために、弾性を有するものが好ましい。ロールに弾性を付与するためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mmである。さらに好ましくは0.3mm〜2.0mmである。例えば、外筒厚みを薄くすることにより、弾性を付与したタイプや、金属シャフトの上に弾性体層を設け、その上に外筒を被せ、弾性体層と外筒の間に液状媒体層を満たすことにより極薄の外筒によりタッチロール製膜を可能にしたものが挙げられる。キャスティングロールとタッチロールは、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。具体的には例えば特開平11−314263号、特開2002−36332号、特開平11−235747号、特開2004−216717号、特開2003−145609号各公報、国際公開第97/28950号パンフレット記載のものを利用できる。
このようにタッチロールは薄い外筒の内側を流体が満たされているため、キャスティングロールと接触させるとその押圧で凹状に弾性変形する。従って、タッチロールとキャスティングロールは冷却ロールと面接触するため押圧が分散され、低い面圧を達成できる。このため、この間に挟まれたフィルムに残留歪を残すことなく、表面の微細凹凸を矯正できる。好ましいタッチロールの線圧は3kg/cm〜100kg/cm、より好ましくは5kg/cm〜80kg/cm、さらに好ましくは7kg/cm〜60kg/cmである。ここでいう線圧とはタッチロールに加える力をダイの吐出口の幅で割った値である。線圧が3kg/cm以上であれば、タッチロールの押し付けにより微細凹凸を低減する効果が得られやすい。線圧が100kg/cm以下であれば、タッチロールが歪みにくく、キャスティングロール全域にわたって均一にタッチする状況をつくりやすいため、全幅にわたって微細凹凸を軽減しやすい。
タッチロールの温度は、60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定するのが好ましい。このような温度制御はこれらのロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成できる。
(素材と製膜)
以下に本発明のセルロースアシレートフィルムの素材と製膜手順について説明する。
(1)素材
<セルロースアシレート>
本発明のセルロースアシレートは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、アセチル基、プロピオニル基、ブチレート基、ペンタノエート基、ヘキサノエート基でエステル化されたものが好ましく、より好ましいものとして挙げられる。これらの中でより好ましいのはアセチル基、プロピオニル基、ブチレート基、ペンタノエート基でエステル化されたものであり、さらに好ましいのはアセチル基、プロピオニル基、ブチレート基でエステル化されたものである。これらのセルロースの低級脂肪酸エステルエステルは単一種の脂肪酸からなるものであってもよいし、複数の脂肪酸からなるものであってもよい。
さらに、本発明で使用するセルロースアシレートは下記式(1)〜(3)を満足することが微細な凹凸を軽減できて好ましい。特にYが0.3以上であることが好ましい。
式(1):2.6≦X+Y≦3.0
式(2):0≦X≦2.8
式(3):0.3≦Y≦3
(式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
Yの1/2以上がプロピオニル基の場合、下記式(4)〜(6)を満たすことが好ましい。
式(4): 2.6≦X+Y≦2.95
式(5): 0.1≦X≦1.45
式(6): 1.5≦Y≦2.95
Yの1/2未満がプロピオニル基の場合、下記式(7)〜(9)を満たすことが好ましい。
式(7):2.6≦X+Y≦2.95
式(8):0.5≦X≦1.8
式(9):1.3≦Y≦2.7
Yの1/2以上がプロピオニル基の場合、下記式(10)〜(12)を満たすことがより好ましい。
式(10):2.6≦X+Y≦2.95
式(11):0.1≦X≦0.95
式(12):2.0≦Y≦2.95
Yの1/2未満がプロピオニル基の場合、下記式(13)〜(15)を満たすことがより好ましい。
式(13):2.6≦X+Y≦2.95
式(14):0.5≦X≦1.8
式(15):1.3≦Y≦2.5
さらに好ましいのは次の条件を満たすセルロースアシレートである。すなわち、Yの1/2以上がプロピオニル基の場合、下記式(16)〜(18)を満たすことが好ましい。
式(16):2.7≦X+Y≦2.95
式(17):0.2≦X≦0.75
式(18):2.4≦Y≦2.9
Yの1/2未満がプロピオニル基の場合、下記式(19)〜(21)を満たすことが好ましい。
式(19):2.7≦X+Y≦2.95
式(20):0.7≦X≦1.4
式(21):1.3≦Y≦2.0
これらのセルロースアシレートの中でも、アセチル基以外のアシル基がブチリル基よりプロピオニル基のほうが、微細凹凸を抑制でき液晶表示装置に組み込んだ際のボケを抑制する効果が顕著である。より好ましくはプロピオネート基の置換度が1.5以上、より好ましくは2.0以上である。さらに重合度が250以下、より好ましくは220以下、さらに好ましくは200以下のほうが好ましい。このようなセルロースアシレートを用いると、上記「低分子化合物」を用いなくても溶融条件のみで微細凹凸の発生を抑制でき液晶表示装置でのボケが発生し難くなる。この効果は、ブチリル(Bu)基、アセチル(Ac)基で置換したもの(CAB)に比べ、プロピオニル(Pr)基、アセチル(Ac)基で置換したもの(CAP)で顕著である。
これらのセルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンターや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、平均重合度100〜260、好ましくは120〜250、さらに好ましくは130〜240である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。さらに特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
このような重合度の調整には低分子量成分を除去することでも達成できる。低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。さらに重合方法でも分子量を調整できる。例えば、低分子成分の少ないセルロースシレテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100重量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、さらに好ましくは2.5〜5.0であり、さらに好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
これらのセルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合しても良い。また、セルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。
<添加剤>
上記の添加剤以外に、種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、赤外吸収剤、界面活性剤など)を加えることができる。
可塑剤は例えば特開2000−352620号公報に記載のものが使用でき、セルロースアシレートに対して0.1〜25質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは3〜15質量%含有させることが好ましい。
可塑剤としては、例えば、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステル等が挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類として、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。さらに特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることが好ましい。上述のようにリン酸エステルはセルロースアシレートの結晶化を促しスジを発生させる効果があるが、本発明の低分子化合物と併用することでこの効果は抑制される。このため、本発明の低分子化合物とリン酸エステルと併用することも可能である。
カルボン酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル類、およびクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコールアジペート)等のアジピン酸エステルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独あるいは併用するのが好ましい。
多価アルコール系可塑剤も好ましく用いることができる。多価アルコール系可塑剤は、セルロース脂肪酸エステルとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に現れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物などである。これらの多価アルコール系可塑剤も、また本発明では、上記「低分子化合物」には及ばないが、メルトとスクリューの間の粘着を防止し、メルトの流動をスムースにしVスジの発生を抑制する効果がある。
具体的なグリセリンエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリ
ンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
ジグリセリンエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンアセテート、ポリオキシエチレンプロピオネート、ポリオキシエチレンブチレート、ポリオキシエチレンバリレート、ポリオキシエチレンカプロエート、ポリオキシエチレンヘプタノエート、ポリオキシエチレンオクタノエート、ポリオキシエチレンノナネート、ポリオキシエチレンカプレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンミリスチレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンリノレート、ポリオキシプロピレンアセテート、ポリオキシプロピレンプロピオネート、ポリオキシプロピレンブチレート、ポリオキシプロピレンバリレート、ポリオキシプロピレンカプロエート、ポリオキシプロピレンヘプタノエート、ポリオキシプロピレンオクタノエート、ポリオキシプロピレンノナネート、ポリオキシプロピレンカプレート、ポリオキシプロピレンラウレート、ポリオキシプロピレンミリスチレート、ポリオキシプロピレンパルミテート、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシプロピレンオレート、ポリオキシプロピレンリノレートなどが挙げられるがこられに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報のものが使用でき、紫外線吸収剤は例えば特開2001−151901号公報に記載のものが使用でき、それぞれセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。微粒子は、平均粒子サイズが5〜3000nmのものを使用することが好ましく、金属酸化物や架橋ポリマーからなるものを使用でき、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。劣化防止剤はセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有させることが好ましい。
熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、エポキシ化合物、弱有機酸、フォスフェイト、チオフォスフェイト系化合物、亜リン酸エステル(例えば特開昭51−70316号、特開平10−306175号、特開昭57−78431号、特開昭54−157159号、特開昭55−13765号各公報に記載のもの)、フォスファイト系化合物(特開2004−182979号公報に記載のもの)を用いることができる。これらは単独で使用しても良く2種類以上混合して添加してもよい。
(2)製膜
<ペレット化>
セルロースアシレートはペレット化することが好ましく、好ましいペレットの大きさは1mm3〜10cm3であり、より好ましくは5mm3〜5cm3、さらに好ましくは10mm3〜3cm3である。この際、上記添加剤も一緒にペレット化するのが好ましい。この後、含水量を0.1%以下になるように乾燥する。
<溶融製膜>
(イ)予熱
乾燥したペレットを溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーをTg−50℃〜Tg+30℃、より好ましくはTg−40℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−30℃〜Tgにする。これによりホッパー内での水分の再吸着を抑制し、上記乾燥の効率をより発現し易くできる。
(ロ)混練押出し
上述の圧縮比のスクリューを用い、上述の溶融温度でセルロースアシレートを混練する。この時、溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御しても良い。より好ましくは上流側(ホッパー側)の温度を下流側(T−ダイ側)の温度より1℃〜50℃、より好ましくは2℃〜30℃、さらに好ましくは3℃〜20℃高くするほうが、セルロースアシレートの分解をより抑制できて好ましい。即ち溶融を促すため、これを支配する上流部をより高温にし、溶融後は分解を抑制するために温度を低めにするものである。好ましい混練時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。好ましい溶融押出し機内の平均温度((溶融押出し機内の各ゾーンの温度)×(各ゾーンの滞留時間を全滞留時間で割った値))は170℃〜230℃が好ましく、より好ましくは180℃〜220℃、さらに好ましくは190℃〜215℃である。また、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中で実施するのも好ましい。
(ハ)キャスト
熔融した樹脂をギヤポンプに通し、押し出し機の脈動を除去した後、金属メッシュフィルター等でろ過を行い、この後ろに取り付けたT型のダイから冷却ドラム上にシート状に押し出す。この時、ダイの温度はメルトが上述の物性値になるように設定する。
押出しは上記のようなダイを用いて行う。好ましいダイのリップ間隔は製膜するフィルムの膜厚の1倍〜10倍が好ましく、より好ましくは2倍〜8倍、さらに好ましくは3倍〜7倍である。このように厚めにダイリップから押出したシートをCDの周速を調整することで所望の厚みに調整する。ダイリップの好ましい温度は180℃〜250℃、より好ましくは190℃〜240℃、さらに好ましくは200℃〜230℃である。
押出しは単層で行ってもよく、マルチマニホールドダイやフィールドブロックダイを用いて複数層押出しても良い。
この後、上述のようにキャスティングドラム(CD)上に押出す。CDの温度は樹脂(セルロースアシレートと添加物の混合体のTgを指す)のTg−50℃〜Tg+10℃、より好ましくはTg−30℃〜Tg+5℃、さらに好ましくはTg−20℃〜Tg℃である。CDは1本〜10本が好ましく、より好ましくは2本〜5本である。
キャスティングドラム上でメルトを固化させたあと剥ぎ取り、さらにニップロールを経た後、巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は0.5m〜5m、さらに好ましくは0.7m〜4m、さらに好ましくは1m〜3mである。
製膜後、両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
このようにして得たセルロースアシレートの弾性率は1.5kN/mm2〜2.9kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.7kN/mm2〜2.8kN/mm2、さらに好ましくは1.8kN/mm2〜2.6kN/mm2である。Tg(フィルムのTg即ちセルロースアシレートと添加物の混合体のTgを指す)は95℃〜145℃が好ましく、より好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは105℃〜135℃である。
このようにして得た厚みは50μm〜250μmが好ましく、より好ましくは70μm〜200μm、さらに好ましくは90μm〜180μmである。
(3)延伸
延伸はTg〜Tg+50℃で実施するのが好ましく、より好ましくはTg+3℃〜Tg+30℃、さらに好ましくはTg+5℃〜Tg+20℃である。好ましい延伸倍率は少なくとも一方に10%〜300%、より好ましくは15%〜200%、さらに好ましくは20%〜150%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施しても良い。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げても良い(横延伸)。また、特開2000−37772号、特開2001−113591号、特開2002−103445号各公報に記載の同時2軸延伸法を用いても良い。
さらにRe、Rthの比を自由に制御するには、縦延伸の場合、ニップロール間をフィルム幅で割った値(縦横比)を制御することで達成できる。即ち縦横比を小さくすることで、Rth/Re比を大きくすることができる。横延伸の場合、直交方向に延伸すると同時に縦方向にも延伸したり、逆に緩和させることで制御することができる。即ち縦方向に延伸することでRth/Re比を大きくすることができ、逆に縦方向に緩和することでRth/Re比を小さくすることができる。さらに縦延伸と横延伸を組み合わせることで、Reを小さくしながら(縦と横の延伸倍率を近づける)、Rthを大きくする(面積倍率(縦倍率×横倍率)を上げる)ことで、Re,Rthを制御できる。本発明では縦、横の延伸倍率の差を10%〜100%、さらに好ましくは20%〜80%、さらに好ましくは25%〜60%にし、縦横非対称に延伸するのがより好ましい。この時、横方向の延伸倍率を高くすることがさらに好ましい。
このような延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、さらに好ましくは30%/分〜800%/分である。
延伸後のセルロースアシレートフィルムのRe、Rthは下記式(a)〜(c)を満足することが好ましい。
式(a):Rth≧Re
式(b):200≧Re≧0
式(c):500≧Rth≧30
Re、Rthは下記式(d)〜(f)を満足することがより好ましい。
式(d):Rth≧Re×1.1
式(e):150≧Re≧10
式(f):400≧Rth≧50
Re、Rthは下記式(g)〜(i)を満足することがより好ましい。
式(g):Rth≧Re×1.2
式(h):100≧Re≧20
式(i):350≧Rth≧80
本明細書において、Reレターデーション値およびRthレターデーション値は、以下に基づき算出するものとする。Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。この時、平均屈折率の仮定値および膜厚を入力することが必要である。KOBRA 21ADHはRth(λ)に加えてnx、ny、nzも算出する。平均屈折率は、セルロースアセテートでは1.48を使用するが、セルロースアセテート以外の代表的な光学用途のポリマーフィルムの値としては、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)、等の値を用いることができる。その他の既存のポリマー材料の平均屈折率値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)やポリマーフィルムのカタログ値を使用することができる。また、平均屈折率が不明な材料の場合は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。本明細書におけるλは、特に記載がなければ550±5nmまたは590±5nmを指す。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、さらに好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°あるいは−90±2°、さらに好ましくは90±1°あるいは−90±1°である。
延伸後のセルロースアシレートフィルムの厚みはいずれも15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは30μm〜170μm、さらに好ましくは40μm〜140μmである。厚みむらは未延伸、延伸後とも、厚み方向、幅方向いずれも0%〜2%が好ましく、より好ましくは0%〜1.5%、さらに好ましくは0%〜1%である。
このようにして得たセルロースアシレートの弾性率は1.5kN/mm2〜2.9kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.7kN/mm2〜2.8kN/mm2、さらに好ましくは1.8kN/mm2〜2.6kN/mm2である。Tg(フィルムのTg即ちセルロースアシレートと添加物の混合体のTgを指す)は95℃〜145℃が好ましく、より好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは105℃〜135℃である。延伸後の厚みは30μm〜200μmが好ましく、より好ましくは40μm〜150μm、さらに好ましくは50μm〜100μmである。
これらの未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用しても良い。
(表面処理)
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液に浸漬しても良く、鹸化液を塗布しても良い。浸漬法の場合は、NaOHやKOH等のpH10〜14の水溶液を20℃〜80℃に加温した槽を0.1分から10分通過させたあと、中和、水洗、乾燥することで達成できる。
塗布方法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設しても良く、表面処理なしで塗設しても良い。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
(機能層)
本発明のセルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(1)偏光層の付与(偏光板の作成)
[使用素材]
現在、市販の偏光層は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、特開平9−152509号および特開平9−316127号の各公報に記載がある。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合しても良く、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与しても良い。架橋は、光、熱あるいはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
[延伸]
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸はMD方向に平行に行っても良く(平行延伸)、斜め方向におこなっても良い(斜め延伸)が、前者がより好ましい。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
(イ)平行延伸法
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の重量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。延伸倍率は、延伸後/初期状態の長さ比(以下同じ)に基づくが前記作用効果の点より好ましい延伸倍率は1.2〜3.5倍、就中1.5〜3.0倍である。この後、50℃から90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
(ロ)斜め延伸法
これには特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%、より好ましくは10%〜100%である。
延伸時の温度は40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。相対湿度は50%〜100%が好ましく、より好ましくは70%〜100%、さらに好ましくは80%〜100%である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
延伸の終了後、50℃〜100℃、より好ましくは60℃〜90℃で、0.5分〜10分乾燥する。より好ましくは1分〜5分である。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10度〜80度が好ましく、より好ましくは30度〜60度であり、さらに好ましくは実質的に45度(40度〜50度)である。
[貼り合せ]
上記鹸化後のセルロースアシレートフィルムと、延伸して調製した偏光層を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、セルロースアシレートフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45度になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作成することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸を45度になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20度〜70度傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層からなるλ/4板を用いることが好ましい。
(2)光学補償層の付与(光学補償シートの作成)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
[配向膜]
上記表面処理したセルロースアシレートフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。2種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。が発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行って良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している偏光層のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
[棒状液晶性分子]
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
[円盤状液晶性分子]
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
[光学異方性層の他の組成物]
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
[光学異方性層の形成]
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
[液晶性分子の配向状態の固定]
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
この光学補償フィルムと偏光層を組み合わせることも好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
偏光層と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
[液晶表示装置]
このような光学補償フィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
(TNモード液晶表示装置)
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4583825号、米国特許第5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
[反射防止層(反射防止フィルム)の付与]
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けてなる。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層からなる反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
[塗布型反射防止フィルムの層構成]
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなる反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率又、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
[高屈折率層および中屈折率層]
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、特開平11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1号、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、特開2001−315242号公報、特開2001−31871号公報、特開2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
[低屈折率層]
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、特開昭58−147483号公報、特開昭58−147484号公報、特開平9−157582号公報、特開平11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、特開2001−48590号公報、特開2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
[ハードコート層]
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。 硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、特開2000−9908号公報、国際公開WO0/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
[前方散乱層]
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
[その他の層]
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
[塗布方法]
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
[アンチグレア機能]
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、特開2000−95893号公報、特開2001−100004号公報、特開2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
以下に本明細書における物性値の測定法について記載する。
(1)微細凹凸
セルロースアシレートフィルムを3次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製New View5022)を用いて下記条件で測定する。
対物レンズ:2.5倍
イメージズーム:1倍
測定視野:幅方向(TD)2.8mm、長手方向(MD)2.1mm
この中で0.1μm〜100μmの高さの山(凸部)、0.1μm〜100μmの深さの谷(凹部)の本数を数えた。ただし、凸部、凹部はいずれもMD方向に連続して1mm以上つながっているものを指す。この凸部、凹部の本数を測定幅(2.8mm)で割った後100倍し、10cm当りの凸部、凹部の数とした。
上記測定を、製膜したサンプルフィルム全幅にわたって等間隔で30点測定して平均化することにより、幅10cm当りの凸部と凹部の数を求める。
(2)G'、G”、tanδ
パラレルコーンを用いた粘弾性測定装置(例えばAnton Paar社製モジュラーコンパクトレオメーター:Physica MCR301)を使用して、下記の手順で測定する。
樹脂を十分に乾燥した後、パラレルコーンのギャップ500μm、周波数1Hz、歪み1%で170℃から毎分5℃で昇温しながら250℃まで測定する。これからダイ温度でのG'、G”、tanδを求める。
(3)法線方向の伸張破断長さ、伸張破断応力
パラレルコーンを用いた粘弾性測定装置(例えばAnton Paar社製モジュラーコンパクトレオメーター:Physica MCR301)を使用して、下記の手順で測定する。
樹脂を十分に乾燥した後、パラレルコーンのギャップ500μm、温度を220℃とする。パラレルコーンを垂直方向に10μm/秒で引き上げながら、それに要する力を測定し、これをパラレルコーンの面積で割り応力を求める。横軸にパラレルコーンの引上げ距離、縦軸に応力をとりグラフを作成する。グラフの最大点の応力およびその時の引き上げ距離を、それぞれ法線方向の伸張破断応力および伸張破断長さとする。
(4)セルロースアシレートの置換度
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法にしたがって13C−NMRにより求める。
(5)セルロースアシレートの重合度
絶対乾燥したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて
25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0 T :測定試料の落下秒数
[η]=(1nηrel )/C T0 :溶剤単独の落下秒数
DP=[η]/Km C :濃度(g/l)
Km:6×10-4
(6)Tg
DSCの測定パンにサンプルを20mg入れる。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却する。この後、再度30℃から250℃まで昇温して、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとする。
(7)Re,Rth
フィルムを25℃・相対湿度60%で3時間以上調湿する。その後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、波長550nmにおけるレターデーション値を測定する。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
《実施例A》
1.セルロースアシレートフィルムの製膜
(1)素材の調製
表1に記載されるようにアシル基の種類と置換度が異なる各セルロースアシレートを調製した。調製に際して、触媒として硫酸(セルロース100重量部に対し7.8重量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加して、40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類と量を調整することで、アシル基の種類と置換度を調整した。このアシル化後に40℃で熟成を行った。熟成時間を変えることにより、表1に記載されるように重合度の異なるセルロースアシレートを得た。
この後、50℃の温水でセルロースアシレートの洗浄を行ったが、この時間を変えることで表1に記載されるように残留硫酸量の異なるセルロースアシレートを得た。残留硫酸量は、セルロースアシレートを湿式灰化した後、原子吸光法でS量を定量し、その定量値から換算したものである。
得られたセルロースアシレートに、芳香環を2つ以上含む化合物である下記化合物A〜Dのいずれかを表1に記載される量で添加した。
化合物A(分子量100〜3000の下記構造を有する化合物)
Figure 2006336004
化合物B(下記構造を有する棒状化合物)
化合物C(下記構造を有する板状化合物)
Figure 2006336004
化合物D(上記の例示化合物(1))
また、得られたセルロースアシレートに、炭素数2〜6の脂肪酸である下記化合物X〜Zのいずれかを表1に記載される量で添加した。
化合物X(酢酸)
化合物Y(プロピオン酸)
化合物Z(酪酸)
さらに各セルロースアシレートに、トリフェニルフォスフェート2質量%、二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%を添加した。なお、実施例および表1に示す質量%は、全てセルロースアシレートに対する重量比を示す。
(2)溶融製膜
上記各化合物を添加して混合したセルロースアシレートを、直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形したものを、110℃の真空乾燥機で乾燥し含水率を0.1%以下とした。これを200℃で溶融した後、表1の温度に設定したダイリップを通して押出した。このとき、ダイリップとキャスティングドラム(CD)の中心との距離Lをキャスティングドラム(CD)の半径Rで割った比(図3中のL/R)が表1の値になるように位置決めされた設備を用いた。なお、ダイリップ先端から出たメルトがCD上に接地するまでの距離は5cmとなるようにし、一部のサンプルについては、この間に3kVの電極をメルトから5cm離した所に設置し、両端5cmずつに静電印加処理を行った。この際のネックイン率を下記式にしたがって計算した結果を表1に示した。
ネックイン率(%)=100×{(ダイリップ幅)−(製膜フィルム幅)}/(ダイリップ幅)
(Tg−5)℃、Tg、(Tg−10)℃に設定した直径40cmのCDを3本連続して通して固化させ、厚み125μmのセルロースアシレートフィルムを得た。これを両端5cmトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけ巻き取った。各サンプルとも、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。Tgは表1に示すとおりであった。
Figure 2006336004
本発明を実施したものはいずれも良好な性能を示した。芳香環を2つ以上含む化合物、炭素数2〜6の脂肪酸、硫酸量の調整により、本発明のG'、G”、tanδ、法線方向の伸張破断長さ、伸張破断応力にすることができ、LCD上でのぼけを軽減できた(実施例1〜14)。さらにダイリップの調整によっても同様に効果が得られた(実施例15〜22)。さらに延伸の倍率を変えたものでも、同様な効果が得られた(実施例23〜27)。これらと同様の実験をセルロースアセテートプロピオネート(実施例37の置換度)においても実施したが同様の効果が得られた。また未延伸フィルムの厚みを50μm、100μmとしたものでも同様の効果が得られた。さらに、実施例1および28の化合物Aを、本願の化合物(1)およびA’−1に置き換えてセルロースアシレートフィルムを作製したところ、実施例1および28と同様な効果が得られた。
一方、比較例、特に特開2000−3526620号公報の実施例の試料No.6に準じて実施した表1中の比較例4は、それに近い本発明37に比べの特にその性能が著しく低下した。
2.延伸セルロースアシレートの作成
上記セルロースアシレートシートをTg+15℃において表1に記載の倍率に縦延伸および/または横延伸した。延伸はいずれも300%/分で実施した。得られたフィルムのRe、Rthを表1に示した。
3.偏光板の作成
(1)セルロースアシレートフィルムの鹸化
未延伸セルロースアシレートフィルムと延伸セルロースアシレートフィルムに対して、下記浸漬鹸化法にしたがって表面の親水化を行った。なお、下記塗布鹸化も実施したが、浸漬鹸化と同様の結果が得られた。
i)浸漬鹸化
鹸化液であるNaOHの1.5mol/L水溶液を60℃に調温し、セルロースアシレートフィルムを2分間浸漬した。この後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
ii) 塗布鹸化
iso−プロパノール80重量部に水20重量部を加え、これにKOHを1.5規定となるように溶解して60℃に調温したものを鹸化液として用いた。これを60℃のセルロースアシレートフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。この後、50℃の温水をスプレーを用い、10l/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。
(2)偏光層の作成
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸することで偏光層を作成した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光層と、上記鹸化処理した未延伸セルロースアシレートフィルムと延伸セルロースアシレートフィルムを、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向が45度となるように張り合わせた。このうち未延伸セルロースアシレートフィルムを特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置(LCD)に取り付け、評価した。即ち幅10mmの線を画面に映し出し、線がにじんでぼけている幅をルーペを用いて測長し、その幅を表1に記載した(表1中に「ぼけ幅」と記載)。本発明を実施したものは良好な性能が得られた。
4.光学補償フィルムの作成
(1)未延伸フィルム
特開平11−316378号公報の実施例1の第1透明支持体に、本発明の未延伸セルロースアシレートフィルムを使用したところ、ぼけの無い良好な光学補償フィルムを作成できた。
(2)延伸セルロースアシレートフィルム
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムを使用したところ、良好な光学補償フィルムを作成できた。
特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムを使用して光学補償フィルターフィルムを作製したところ、ぼけの無い良好な光学補償フィルムを作成できた。
5.低反射フィルムの作成
本発明のセルロースアシレートフィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムと未延伸セルロースアシレートフィルムを用いて低反射フィルムを作成したところ、ぼけの無い良好な光学性能が得られた。
6.液晶表示素子の作成
上記本発明の偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置に用いた。さらに、本発明の低反射フィルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、ぼけの無い良好な視認性能が得られた。これらと同様の実験をセルロースアセテートプロピオネート(実施例37の置換度)においても実施したが同様の効果が得られた。また未延伸時のフィルムの厚みを50μm、100μmとしたものでも同様の効果が得られた。
《実施例B》
1.セルロースアシレートフィルムの製膜
(1)素材の調製
実施例Aと同様にして、表2に記載されるようにアシル基の種類と置換度が異なる各セルロースアシレートを調製した。
得られたセルロースアシレートに、芳香環を2つ以上含む化合物として上記の化合物(36)を表2に記載した量で添加した。
また、得られたセルロースアシレートに、炭素数2〜6の脂肪酸である下記化合物X〜Zのいずれかを表2に記載される量で添加した。
化合物X: 酢酸
化合物Y: プロピオン酸
化合物Z: 酪酸
さらに、得られたセルロースアシレートに、下記可塑剤を表2に示す量で添加した。
可塑剤A: ポリエチレングリコール(分子量600)
可塑剤B: グリセリンジアセテートオレート
可塑剤C: グリセリンテトラカプリレート
可塑剤D: グリセリンジアセテートラウレート
全水準に、二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)を0.05質量%、安定剤(ビス2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)を0.1質量%添加した。なお、実施例および表2に示す質量%は、全てセルロースアシレートに対する質量比を示す。
(2)溶融製膜
実施例Aと同様にしてペレット化、乾燥し、これを215℃で溶融した後、表2の温度に設定したダイリップを通して押出した。このとき、ダイリップとキャスティングドラム(CD)中心との距離(L)をCD半径(R)で割った値(L/R)が表2の値になるように位置決めされた設備を用いた。なお、ダイリップ先端から出たメルトがCD上に接地するまでの距離は5cmとなるようにし、一部のサンプルについては、この間に3kVの電極をメルトから5cm離した所に設置し、両端5cmずつに静電印加処理を行った。この際のネックイン率を下記式に従って計算した結果を表2に示した。
ネックイン率(%)=100×{(ダイリップ幅)−(製膜フィルム幅)}/(ダイリップ幅)
(Tg−5)℃、Tg、(Tg−10)℃に設定した直径40cmのCDを3本連続して通して固化させ、厚み80μmのセルロースアシレートフィルムを得た。これを両端5cmトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけ巻き取った。各サンプルとも、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。Tgは表2に示した。
Figure 2006336004
本発明を実施したものはいずれも良好な性能を示した。また、プロピオニル(Pr)基、アセチル(Ac)基で置換したもの(CAP)は、ブチリル基(Bu)基、アセチル(Ac)基で置換したもの(CAB)に比べ、「芳香環を2つ以上含む化合物」を含まない場合の「微細凹凸」の発生が少なく、LCDでのボケも少なかった(本発明pとu、qとv)。さらにこの効果は重合度が240を下回ると特に顕著であった(本発明t、t‘)。
2.延伸セルロースアシレートフィルムの作成
上記セルロースアシレートシートフィルムを実施例Aと同様の条件で、表2に記載の倍率で延伸し、得られたフィルムのRe、Rthを表2に示した。
3.偏光板の作成
(1)鹸化
実施例Aと同様にしてセルロースアシレートフィルムを浸漬鹸化した。フジタックも同様に浸漬鹸化した。
(2)偏光層の作成
実施例Aと同様にして偏光層を作成した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光層と、上記鹸化処理した未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムとを、下記の層構成から選び(表2に記載)、 実施例Aと同様にして張り合わせた。
偏光板A: 未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジタック(富士
写真フィルム製TD80U)
偏光板B: 未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延伸セルロース
アシレートフィルム
偏光板C: 延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジタック(富士写
真フィルム製TD80U)
偏光板D: 延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延伸セルロースア
シレートフィルム
偏光板E: 延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/延伸セルロースアシ
レートフィルム
これらの偏光板を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置(LCD)の偏光板として取り付け、評価した。なお、偏光板A,BはLCDの偏光板と入れ替え、偏光板C〜Eは偏光板および位相差板と入れ替えた。これらについて、実施例Aと同様にして「ぼけ幅」を計測し、表2に結果を示した。本発明を実施したものは良好な性能が得られた。
また、特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の未延伸セルロースアシレートフィルムを使用したところ、良好な光学補償フィルムを作成できた。
4.低反射フィルム
本発明のセルロースアシレートフィルムを用いて上記実施例Aと同様にして低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能が得られた。このようにして得た本発明の低反射フィルムを、上記実施例Aと同様にしてVA、OCB、IPS型液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、良好な液晶表示素子を得た。
5.液晶表示素子の作成
上記本発明の偏光板を実施例Aと同様にして、ディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、VA型液晶表示装置、OCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。さらに、本発明の低反射フィルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、ぼけの無い良好な視認性能が得られた。
《実施例C》
実施例2の本発明a、p〜vに対し、特開平11−235747号公報の実施例1に記載のタッチロール(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)、表3記載の条件でタッチロール製膜を実施した。タッチロール製膜を実施したこと以外は、全て実施例2と同じ条件で実施した。表3から明らかなように、タッチロール製膜により微細凹凸、液晶表示装置でのぼけ幅が改良された。
また国際公開第97/28950号パンフレットの第1の実施例と同様のタッチロール(シート成形用ロールと記載のあるもの)を用い(但し金属製外筒に用いた冷却水は温度18℃から120℃のオイルに変更)、表3記載の条件でタッチロールを実施したところ、表3と同様の結果を得た。
Figure 2006336004
本発明のセルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置に組み込んだ時に発生する表示故障(ぼけ)を大幅に解消することができる。このため、産業上の利用可能性が極めて高い。
微細な凹凸の発生機構を説明する図である。 ダイリップの形状とメルトの粘着性の関係を説明する図である。 ダイリップとキャスティングドラムの位置関係を示す図である。 タッチロールを用いた溶融製膜を説明する図である。
符号の説明
1、1’ ダイリップ
2 メルト
3 キャスティングドラム
4 押出し機
5 ダイリップ
6 タッチロール

Claims (6)

  1. 高さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凸部の数と、深さ0.1μm〜100μmで長さ1mm以上の凹部の数との合計が、フィルムの幅10cmあたり10本以下であることを特徴とする、溶融製膜によって形成されたセルロースアシレートフィルム。
  2. 180℃〜240℃における貯蔵弾性率G'が100Pa〜30000Paであり、かつ180℃〜240℃における損失弾性率G”が1000Pa〜30000Paであり、かつ180℃〜240℃におけるtanδ(ここにおいてtanδはG”/G'で計算される)が1〜6のメルトを用いて溶融製膜したことを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 180℃〜240℃における法線方向の伸張破断長さが20μm〜400μmであり、かつ180℃〜240℃における法線方向の伸張破断応力が0.01N/cm2〜0.5N/cm2のメルトを用いて溶融製膜したことを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを構成するセルロースアシレートが下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
    式(1):2.6≦X+Y≦3.0
    式(2):0≦X≦2.8
    式(3):0.3≦Y≦3
    (式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
  5. タッチロールを用いて溶融製膜されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1方向に1%〜300%延伸したことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
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