JP3754546B2 - 位相差フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高分子樹脂のフィルムを延伸して製造した位相差フィルム並びにその位相差フィルムを製造する方法に関する。さらに詳細には、溶媒を含有した熱可塑性高分子樹脂フィルムを特定の条件にて少なくとも二軸方向に延伸して特定の光学特性値を持ちかつその特性値のバラツキが充分に小さい位相差フィルム並びにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性高分子フィルムによる位相差板は防眩材料として、また、液晶表示装置における位相差補償板としてその用途が広がっている。高分子フィルムの位相差板としては、各種の高分子フィルムを一軸延伸することによって製造する方法が知られている。一般には固有複屈折性の大きいポリカーボネート系樹脂を一軸延伸したものが用いられている。
【0003】
また、位相差用フィルムとして面内のレターデション値と厚み方向のレターデーション値とを規定した位相差フィルム及び液晶化合物積層タイプ用の位相差フィルム用透明支持体等が使用されている。例えば、液晶化合物積層用位相差フィルム(透明支持体)としては、特定の面内レターデーション値と厚み方向レターデション値とを持つものが用いられている。
【0004】
これは、位相差補償板とした時の光学特性を積層する液晶化合物と透明支持体との複合効果とによって発揮させ液晶表示装置の視野角拡大をせしめようとしたものである。例えば、液晶化合物としてデイスコテイック液晶化合物を特定の光学特性を持つ透明支持体上に積層したものが知られている。
【0005】
なお、本発明においては、フィルム面内において、遅相軸方向の屈折率をNx、進相軸方向の屈折率をNy、厚み方向の屈折率をNzと表示するものとする。更にフィルムの厚みをdとする。また、面内のレターデーション値R(以下R値と略称)をR値=(Nx−Ny)*d(単位nm)、厚み方向のレターデーション値K(以下K値と略称)をK値={(Nx+Ny)/2−Nz}*d(単位nm)で表示するものとする。
【0006】
本発明で求めるごとき位相差用フィルムの備えるべき特性は次の点が特記される。
1)透明性が優れることに加えて、フィルムの外観欠点、例えば擦り傷やスクラッチ、フィルムの波打ち等が無く平坦性が良いこと。
【0007】
2)特定範囲のR値とK値を持ち、かつR値並びにK値の分布が均一であること。液晶表示画面の大型化にともなって、部材を大型化する必要が有り各種の問題が顕在化している。すなわち、フィルムの小さい範囲でなら比較的容易に制御できた特性値も、大型化にともなって、より広く大きいフィルムでの特性の均一性が要求されている。
【0008】
3)更に、位相差フィルムを使用する場合に特に液晶化合物をこのフィルム(透明支持体)面上に積層して用いる場合のように、液晶化合物と透明支持体との複合効果によって光学特性(視野角拡大効果)を発揮させようとする場合遅相軸の均一性が問題になる場合がある。即ち、透明支持体の遅相軸の分布が該透明支持体の大きな面積において均一でない場合には複合材料としての性能が発揮されなくなる。
【0009】
液晶化合物を位相差フィルム(透明支持体)に積層して位相差板を作る場合、積層工程においても不均一な特性は拡大され易い傾向にあるので、基板となる透明支持体(位相差フィルム)にも高度な特性の均一性が要求される。
【0010】
従来の技術として、フィルム面内では比較的等方性(低いR値)であって、厚み方向において特定のレターデーション値(K値)を持つ位相差フィルムおよびその製造方法に関し、いくつかの技術が開示されている。例えば、特開H6−337313号公報には、位相差膜の製造方法として 高分子を逐次二軸延伸し長手方向の屈折率≒幅方向の屈折率の関係になるようにするフィルム延伸方法が開示されている。具体的には流延法で作ったポリカーボネート樹脂フィルムを用い、ロール間で引っ張り延伸法によって、一次縦延伸を行ない,次工程でテンター横一軸延伸により延伸する縦横逐次延伸法が記載されている。この際フィルムの長手方向の屈折率をNmd、幅方向の屈折率をNtd、厚み方向の屈折率をNzとする時Nmd≒ Ntd> Nzなるフィルムの製造法の具体例が記載されている。
【0011】
この方法によれば、ポリカーボネートを高分子フィルムとして用いる場合、確かにNmd≒ Ntd> Nzフィルム、即ちR値の低いかつK値の大きい二軸延伸フィルムを作りうる、しかしながらR値並びにK値の特性が大面積のフィルム内でで均一であるフィルムを製造することは困難であった。
【0012】
なお、この先行技術における屈折率の表示方法を本発明の屈折率の表示方法で表示すると、R値=(Nmd−Ntd)*d,K値={(Nmd+Ntd)/2−Nz}*dとなる。Nmd≒Ntd>NzであるからR値は低くかつK値は大と言うことが出来る。
【0013】
また、特開H9−22002号公報にはR値が、R値≦20nm、K値が、|K値|≦100nmである液晶用プラスチック液晶基板が開示されている。この先行文献には低いR値と−100nm〜+100nmのK値とを持つフィルムについて記載されている。この発明のフィルムはプラスチックフィルムの面内方向に出来るだけ小さな張力で製膜することによってR値を低下させ、、K値の低下は面配向を緩和させる過程を組み入れることによって達成できるとしている。この方法はプラスチックフィルムにおいて、低張力下で面内の配向緩和を充分に起こさせR値を低下させつつK値を特定の値にする技術である。しかし、この方法で製造できるフィルムのK値は比較的小さいものに限られる、大きなK値、例えばK値が100nm以上のフィルムを製造するのは極めて難しいと言う問題がある。なぜならば、この方法においては面内においてNx,Nyが両者とも小さくなり、かつその差が無くなりR値は低くなるが、厚み方向の屈折率Nzは面配向が低下するため大きくなり、K値を高くするのが困難になると言う問題があった。またこの場合においても大面積のフィルムで均一な特性を持つものを得るという問題は解決されていない。
【0014】
特開H9−5521号公報には、R値及びK値が、0≦R値.≦80nmかつ、300>K値>140となる特性を有する光学補償フィルムにおいて、面配向パラメータが、0.0065以上(Nzの小さくなりやすさの尺度)となる いわゆる面配向性の良い高分子樹脂を選択して用いる方法が提案されている。
【0015】
この方法は面配向パラメーターの大きい、即ちNzが小さくなり易い高分子樹脂を用いて、R値が比較的小さく、かつK値が140〜300nmなるフィルムを作る方法である。この方法もまた大面積で特性が均一であるフィルムを作る方法は開示されていない。
【0016】
以下本発明に係わる透明支持体フィルムについての特性、R値とK値とを規定した先行資料として下記のものが例示される。
特開H7−333433号公報、特開平8−5837号公報、特開H8−50206号公報、特開H9−5520号公報、特開H9−197397号公報、特開H9−197397号公報、特開H9−211444号公報、特開H9−222600号公報、特開H9−230143号公報、特開H9−230334号公報並びに特開H9−230335号公報において、R値とK値とを規定した透明支持体(フィルム)に液晶化合物を積層(または塗布)することにより製造する位相差補償フィルムの技術が開示されている。これらの開示技術の中にも広い面積において均一な光学特性(R値、K値並びに遅相軸の角度)を持つフィルム並びにその製造方法については記載されていない。
【0017】
小面積のフィルムであれば 従来技術によっても本願発明のR値、並びにK値を持つ位相差フィルムを作ることができたが、大面積でかつ光学特性の均一性のよいフィルムを得ることはできなかった。即ち大面積にてフィルムを連続的に製造する際に起こる微細構造発生の不均一さの問題を解決してR値、K値並びに遅相軸角度の均一なフィルムを製造する方法については未だ課題が残されている。
【0018】
本発明の目的とする如き光学特性を持つフィルムを製造するには、フィルムの3次元屈折率(Nx,Ny並びにNz)を制御する必要がある。即ち、
▲1▼面内レターデション値Rを極力小さくし(NxとNyとを極力近ずける)かつ、▲2▼厚み方向のレターデーション値Kを大きくするために高分子のいわゆる面配向を向上(Nzを小さくする)させることが必要である。また、
▲3▼遅相軸の角度についてはR値が著しく小さければ(即ちフィルム面内の等方性が著しく良ければR値=0nm)実用上問題はなくなるが、R値がある程度高い例えばR値=15nm程度以上になると実用上の影響が出てくると表示装置の側からいわれている。この意味で遅相軸の角度並びにそのバラツキを小さく制御する必要が出てくる。
【0019】
R値を低下させるのみであればフィルムを極力低張力下で熱緩和させれば大面積で均一な光学特性(R値のバラツキが実質上無い)のものを工業的に製造しうることが知られている。しかしながら、この方法によるとK値は比較的低い値のものしか得られず、また狭いK値の範囲でしか変えることが出来ない。この低張力熱緩和法においては 高分子が固有に持っている分子鎖の面配向性により制約を受け、本発明におけるR値とK値とを同時に満足し、かつこれらのバラツキが特に小さいフィルムを作ることには限界がある。
【0020】
一方R値を極力小さくする他の方法として、延伸によって実現する方法がある。即ちフィルム面内で分子配向の異方性を極力生じないように延伸することによって低いR値は達成できる。この場合、フィルム内での高分子鎖の面配向が向上するから(厚み方向の屈折率Nzが低下するから)その結果厚み方向のレターデーションK値を同時に大きくすることができる。即ち縦横の延伸倍率をできる限り高くし(フィルム面内でのNxとNyとをほぼ等しくしたまま)して延伸すればNzを小さくできるのでR値とK値とをある程度自由に変えることが出来る。
【0021】
しかし、実際上は逐次延伸によって低R値(面内の配向バランス極力よくするため、NxとNyとを極力近ずける)並びにその均一性を大面積のフィルムで実現するのは製造上はきわめて難しかった。
【0022】
高い濃度の溶媒を含有した状態で二軸延伸すること自体は、特開平3−58825号公報で公知である。しかしながら、本公報記載の技術は耐熱性、電気絶縁性、機械的強度に優れたフイルムを得ることを目的としているため、延伸倍率が高すぎて光学的特性としては好ましいものが得られない。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は上述の如き問題点に着目してなされたものである。R値K値並びに遅相軸が特定の値を持ちかつ広い面積に渡りそのバラツキが充分に小さい、視野角特性にも優れた、高性能の位相差フィルム並びに液晶化合物積層用位相差フィルム(透明支持体)並びにその製造方法を提供しようとするものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは上記課題を解決するため、フィルムの延伸のメカニズムを鋭意検討の結果、特定の溶媒量を含有した高分子樹脂フィルムを特定の延伸温度、倍率にて縦−横、又は横−縦に逐次二軸延伸することにより本願発明のフィルムを製造しうることを見出し本願発明に到達したものである。
【0025】
本発明者等はフィルムに特定量の溶媒を含有させた状態で逐次延伸することによって、即ち、
▲1▼高分子樹脂に比較的高い濃度の溶媒を含有させて可塑化することにより均一な延伸を行うことができる、
▲2▼逐次延伸において、1次延伸と2次延伸の条件を好ましい条件で組合わせることによって屈折率を制御できるばかりでなくフィルムの広い面積においてもこの屈折率の分布を均一にすることができる、
▲3▼更に また上記▲1▼及び▲2▼項によってフィルムの遅相軸の角度及びその均一さを広い面積に渉って制御できる、
ことを見出し本発明に到達したものである。
【0026】
即ち本発明は
[1]溶媒の含有量が10〜20重量%である高分子樹脂フイルムを、逐次二軸延伸して高分子樹脂位相差フイルムを製造する方法に於いて、高分子樹脂がポリカーボネートであって、該二軸延伸が横縦逐次延伸であり、第1次延伸が延伸温度(Tg+50)〜(Tg+100)℃、延伸倍率1.05〜1.15倍に横方向に延伸し、第2次延伸が延伸温度(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃、延伸倍率1.01〜1.04倍に縦方向に延伸する二軸延伸高分子樹脂位相差フィルムの製造方法、
[2]溶媒の含有量が10〜20重量%である高分子樹脂フイルムを、逐次二軸延伸して高分子樹脂位相差フイルムを製造する方法に於いて、高分子樹脂がポリカーボネートであって、該二軸延伸が縦横逐次延伸であり、第1次延伸が延伸温度(Tg)〜(Tg+20)℃、延伸倍率1.03〜1.13倍に縦方向に延伸し、第2次延伸が延伸温度(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃、延伸倍率1.03〜1.13倍に横方向に延伸する二軸延伸高分子樹脂位相差フィルムの製造方法、ならびに
[3] 上記[1]または[2]の製造方法によって得られた、下記(1)、(2)及び(3)
(1)R値:0≦R値≦30nm
(2)K値:100≦K値≦600nm
(3)遅相軸の角度:0≦|遅相軸の角度|≦30度
を満足し、1m四方の中の100ヵ所の上記(1)及び(2)のバラツキが5nm以下であることを特徴とするニ軸延伸高分子樹脂位相差フィルム、
である。
【0027】
本発明のフィルムは、規定量の溶媒を含有したフィルムを逐次に少なくとも二方向に特定の条件で延伸することにより、即ち特定の条件下で縦方向延伸し、ついでピンテンターで横延伸し、その後要すれば懸垂型乾燥機により乾燥処理することにより(縦横逐次二軸延伸法)、また、規定量の溶媒を含有したフィルムを特定の条件下でピンテンターにて横延伸、ついで縦延伸し、その後要すれば懸垂型乾燥機により乾燥処理することにより(横縦逐次二軸延伸法)製造することが出来る。
【0028】
より詳細には、本発明は
a)下記(1)、(2)及び(3)
(1)R値:0≦R値≦30nm
(2)K値:100≦K値≦600nm
(3)遅相軸の角度:0≦|遅相軸の角度|≦30度
を満足し、1m四方の中の100ヵ所の上記(1)及び(2)のバラツキが5nm以下であることを特徴とする高分子樹脂位相差フィルム、
である。R値の好ましい範囲は、20nm以下であり、k値の好ましい範囲は 150〜450nmである。また、|遅相軸の角度|の好ましい範囲は0≦|遅相軸の角度|≦25度である。
【0029】
本願発明はまた、上記高分子樹脂位相差フイルムの製造方法であり、それは溶媒を含有した高分子フィルムを二軸延伸することにより位相差フィルムを製造する方法において、好ましくは以下の縦横又は横縦逐次二軸延伸法である。
【0030】
(縦横逐次二軸延伸法)
1.含有溶媒量10〜20重量%の高分子樹脂フィルムを、
2.フィルムの雰囲気温度が(Tg)〜(Tg+20)℃において、縦方向の延伸倍率が1.03〜1.13倍になるように、上記フィルムを延伸し、
3.次いで、該フィルムをピンテンターにより把持し、フィルムの雰囲気温度が(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃において、横方向に1.03〜1.13倍延伸し、
4.要すれば更に、該フィルムを懸垂型乾燥機により、フィルムの含有溶媒量が1.0重量%以下となるまで雰囲気温度(Tg”−15)℃以下において、フィルムの張力を0.5〜2.0Kg/cm^で処理して乾燥させることによって達成される。
【0031】
なおここでTgは延伸前の溶媒を含有した高分子フィルムの当該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表示)である。Tg’は一次延伸終了後のフィルムの溶媒を含有した高分子フィルムの当該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度℃表示)である。また、Tg”は逐次延伸終了後のフィルムの溶媒を含有した高分子フィルムの当該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表示)である。Tg,Tg’,Tg”(℃)は乾燥の程度により残留溶媒含有量の減少とともに上昇する。
【0032】
(横縦逐次二軸延伸法)
1.含有溶媒量が10〜20重量%のフィルムを、
2.ピンテンターにより把持し、フィルム雰囲気温度(Tg+50)〜(Tg+100)℃において、延伸倍率1.05〜1.15倍に横延伸した後ピンテンターの出口で室温まで冷却し。
3.更に、該横延伸したフィルムを縦延伸機により雰囲気温度(Tg‘+5)〜(Tg‘+15)℃にて1.01〜1.04倍に延伸することによって達成される。
4.要すれば更に、該フィルムを懸垂型乾燥機によって (Tg”−15)℃以下の雰囲気温度にて含有溶媒量が1.0重量%以下になるまで低張力(0.5〜2.0Kg/cm^2)下にて乾燥処理する。
【0033】
なおここでTgは延伸前の溶媒を含有した高分子フィルムの当該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表示)である。Tg’は一次延伸終了後のフィルムの溶媒を含有した高分子フィルムの当該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表示)である。また、Tg”は逐次延伸終了後のフィルムの溶媒を含有した高分子フィルムの当該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表示)である。Tg,Tg’,Tg”(℃)は乾燥が進むにつれ残留溶媒含有量の減少とともに上昇する。
【0034】
(高分子種)
本発明において用いられる高分子としてはポリカーボネートである。この場合溶液流延法に必要な濃度、粘度を持った溶液を形成する高分子溶液であれば本発明方法に適用できる。
【0035】
一般に、ポリカーボネートと総称される高分子材料は、重縮合反応で生成され、主鎖が炭酸結合で結ばれているものを総称する。ポリカーボネートはビスフェノール誘導体と、ホスゲンあるいはジフェニルカーボネートとから重縮合反応により得られるものが多い。
【0036】
ビスフェノール誘導体については、経済性および達成面からビスフェノールAと呼称されている2、2ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンを使用する芳香族ポリカーボネートが好ましいが、適宜他の種ビスフェノール誘導体を選択することで、他のポリカーボネートあるいはポリカーボネート共重合体を構成することが出来る。 かかる他種成分としてビス(4ヒドロキシフェニル)メタン、1、1ービス(4ーヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9、9ービス(4ヒドロキシフェニル)フルオレン、1、1ービス(4ヒドロキシフェニル)ー3、3、5トリメチルシクロヘキサン、2、2ービス(4ーヒドロキシー3メチルフェニル)プロパン、2、2ービス(4ーヒドロキシフェニル)ー2フェニルエタン、2、2ービス(4ーヒドロキシフェニル)−1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオンプロパン、ビス(4ーヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4ーヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4ーヒドロキシフェニル)スルフォン等をあげることができる。さらに、これらのフェニル基の水素基が一部メチル基やハロゲン基で置換されているものも含む。
【0037】
また、一般に炭酸成分の一部をテレフタル酸及び/又はイソフタル酸成分で置き換えたポリエステルカーボネートを使用することも可能である。このような構成単位を、ビスフェノールAをビスフェノール誘導体として用いるポリカーボネートの構成成分の一部に使用することによりポリカーボネートの性質、例えば耐熱性、溶解性を改良することができるが、このような共重合体も本発明では用いることができる。
【0038】
(ポリカーボネート樹脂の分子量)
本発明において用いられるポリカーボネート系樹脂の分子量は、濃度0.5g/dlの塩化メチレン溶液中20℃での粘度測定から求めた粘度平均分子量で10、000以上200、000以下であり、好ましくは20、000以上120、000以下の範囲が用いられる。粘度平均分子量が10、000より低い樹脂を使用すると得られるフィルムの機械的強度が不足する場合がある。また200、000を超える高分子量になるとドープ粘度が高くなりすぎて溶液やキャスト工程での取り扱い上問題を生じるので好ましくない。
【0039】
本発明において用いられる溶媒としては塩化メチレンを主体とする溶媒や1、3−ジオキソランを主体とする溶媒が挙げられる。 ポリカーボネートの溶液を作成する具体的方法としては、塩化メチレン中にポリカーボネートを投入攪拌して溶解する。要すれば、予め塩化メチレン中に剥離助剤として所定量のエタノールを混合しておき、そこにポリカーボネートを投入して室温で攪拌溶解する方法が挙げられる。
【0041】
(溶液〜キャスト〜乾燥)
本発明において高分子溶液中のポリマー濃度を10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%に調製することにより溶液流延法により好適にフィルムを製膜することができる。
このようにして得られた溶液は、公知の方法でスチールベルトやドラム又は支持体フィルム(一般的にはポリエステルの2軸配向フィルム)面上などに、キャストし、乾燥して半乾きの状態で支持体より剥ぎ取る。
【0042】
(溶媒含有フィルム)
本発明の二軸延伸法で用いられる溶媒含有フィルムとは二軸延伸直前の溶媒含有量が10〜20重量%、好ましくは12〜20重量%のフイルムであり、それは▲1▼キャスト−乾燥−延伸を連続して行う工程においてキャスト−乾燥後剥とり、延伸工程直前のフィルムであるのが特に好ましいが、▲2▼例えば溶媒を全く含まないフィルムや10重量%以下の溶媒を含むフィルムを巻き取り保管したものを繰り出し溶媒の蒸気に曝して含有溶媒量が10〜20重量%となるようにさせたフィルムであっても良い。ここで溶媒含量は乾燥フイルム基準で計算するものとする。
【0043】
逐次二軸延伸の場合、第一次延伸の前で溶媒含有量が10〜20重量%であり、第二次延伸の前では第一次延伸前より低下した溶媒濃度になるが、溶媒含有量が0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0044】
(縦横逐次二軸延伸法詳細)
溶液キャスト−乾燥ーフィルムの剥ぎ取り次いで延伸を連続して行うプロセスの場合、剥離後のフィルムの溶媒含有量は、当該フィルムの乾燥等により、縦延伸処理工程の入り口で10〜20重量%になるように調節する。本発明の方法においてはキャストの剥離直後から縦延伸工程入口までのガイドロールのあいだで室温〜80℃の温度で乾燥することによってこの目的を達成することができる。
【0045】
このようにして溶媒含有量を特定重量%に調節したフィルムは、ついで、縦方向の長さが元のフィルム長さに対して1.03〜1.13倍となるように縦延伸する。
【0046】
また、この際のフィルムの雰囲気温度を(Tg)〜(Tg+20)℃となるように調整する。ここで、Tgとは、縦延伸工程の入り口における溶媒を含有した高分子フィルムの、当該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表示)である。
【0047】
含有溶媒量が10重量%以下で上記のように加熱延伸した場合は、フィルム全体の平均的な溶媒含有量が少ないため可塑化効果が少なくなるため思われるが、このフィルムをその後の工程で横方向に延伸してもR値、K値を目的の値にすることができず R値、K値並びに遅相軸角度の分布の均一なフィルムを得ることができないという問題がある。
【0048】
一方、縦延伸工程における含有溶媒量が20重量%を超える場合には、延伸のための加熱による溶媒の蒸発が急激すぎるため、微小な気泡がフィルム中に発生するという問題とこの工程における延伸の不均一さが増大するという問題が有る。
【0049】
上記の、フィルムの雰囲気温度が(Tg)〜(Tg+20)℃であるとは、具体的にはポリカーボネート溶液については50℃〜80℃、より好ましいフィルム雰囲気温度は55〜70℃である。
【0050】
縦延伸工程のフィルム雰囲気温度が(Tg)℃より低い場合には当該工程中における溶媒の乾燥が十分に行われないために次ぎのピンテンター工程において加熱延伸する際に(含有溶媒の影響により)フィルムの特性を制御できないことがある。また、フィルム雰囲気温度が(Tg+20)℃を超える場合には特に光学特性(R値、K値及び遅相軸の角度並びにそれらのバラツキ)が所望の値からはずれてしまうことがある。
【0051】
縦延伸工程において、溶媒含有フィルムを延伸するための装置は、低速ロール側から高速ロール側へフィルムを通す従来公知の方法をとることができる。上記のロールにはニップロールを用いるか、又はロールのフィルムの抱き角を適度に大きくして摩擦力によりフィルムの滑りを抑える方式としたものを用いるのが好ましい。
【0052】
延伸雰囲気は、延伸前ロールと延伸終了後のロール間でフィルムを空気噴流で加熱し、延伸は延伸前ロールと延伸終了後のロールとの間で起こるようにする(ロール面上でフィルムが滑らないようにする)ことがフィルムに擦り傷を生じさせないために重要である。空気噴流は幅方向で均一に熱風がでるようにしたスリットノズルによって、フィルムが延伸ロールを離れる直後に吹き付け、延伸が開始されるようにするのが好ましい。熱風の噴流の速度はフィルムへの熱伝達率を極力アップするため15〜30m/secの範囲が好ましい。このための装置として、空気浮遊式の熱風装置を好ましく用いることができる。延伸中のフィルム全面にわたって熱風を吹きつける点で、また熱風の風速、熱風の温度を延伸ロール間のフィルム走行方向で変えることもできる点でこの方法は極めて好都合である。
【0053】
(横方向延伸)
縦延伸工程の処理を終えたフィルムは、次の横延伸工程において、フィルムの幅方向の両端部をピンテンターにより把持し延伸する。通常はピンでフィルムの端部を突き刺し固定して搬送しつつ延伸する。ピンテンターの把持幅はその入り口では、フィルム幅とほぼ同じ幅として搬入し3〜6のゾーンに分割(各ゾーン毎にフィルムの把持幅と雰囲気温度を変えることができるように分割した)されたオーブン中にて徐々に拡幅しつつ延伸する。この時のフィルムの雰囲気温度を(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃として延伸倍率1.03〜1.13倍に延伸する。雰囲気温度が(Tg’+5)℃よりも低すぎる場合も、(Tg’+15)℃よりも高すぎる場合もR値とK値とを所定の値にすることが難しくなる他、これらの値のバラツキも大きくなって制御することができなくなる。
【0054】
横延伸工程の出口においてはフィルムを室温まで冷却し両エッジ部を切除しロール状に巻き取る。
ここでこのフィルムを製品とすることも可能である。
しかし、延伸温度が全行程を通じて低い場合や製膜の速度が高い場合には製品の含有溶媒量が多い場合もあるのでその際には更にフィルムを乾燥させるのが望ましい。
【0055】
要すれば(例えば含有溶媒量を更に減少させたい時は)縦横逐次延伸を終えたフィルムを、次いでロール懸垂型乾燥装置を用いて乾燥する工程である懸垂型乾燥機処理工程に通膜することができる。。このロール懸垂型乾燥装置を用いた乾燥処理工程においてはフィルムの特性を延伸によって形成させた微細構造(延伸によって形成されたフィルムの3次元屈折率並びに遅相軸の角度)を変化させることがないように極力低張力、かつ比較的低温で(Tg”−15)℃以下で処理する。こうすることによって、含有溶媒量を、懸垂型乾燥機処理工程出口で好ましくは1.0重量%以下、に制御することができる。その後フィルムの温度を室温まで冷却しロール状に巻き取って製品とする。
【0056】
(横縦逐次二軸延伸法詳細)
溶液キャスト〜乾燥〜フィルムの剥離 次いで延伸を連続して行うプロセスの場合、剥離後のフィルムの溶媒含有量は、当該フィルムの乾燥等により、第1次延伸(横延伸)工程の入り口で10〜20重量%になるように調節する。本願発明の方法においてはキャストの剥離直後から横延伸工程入口までのガイドロールのあいだで室温〜80℃の温度で乾燥することによってこの目的を達成することができる。
【0057】
(横方向延伸)
フィルムは、まず、横延伸工程において、フィルムの幅方向の両端部をピンテンターにより把持し延伸する。通常はピンでフィルムの端部を突き刺し固定して搬送しつつ延伸する。ピンテンターの把持幅はその入り口では、フィルム幅とほぼ同じ幅として搬入し3〜6のゾーンに分割(各ゾーン毎にフィルムの把持幅と雰囲気温度とを変えることができるように分割)されたオーブン中にて徐々に拡幅しつつ(ピンテンターの把持幅を拡大しつつ)延伸する。
【0058】
ここで延伸倍率というのはピンテンターの拡幅の最大幅とピンテンター入り口の把持幅との比であらわすものとする。
【0059】
この際フィルムの雰囲気温度を(Tg+50)〜(Tg+100)℃となるように調節し、また、延伸倍率は1.05〜1.15倍となるように調節する。
【0060】
この雰囲気温度が(Tg+50)℃よりも低い場合も、(Tg+100)℃よりも高い場合にも光学特性を所望の値にすることが難しく、目的の特性を持つフィルムを製造することができない。フィルムの雰囲気温度が(Tg+50)〜(Tg+100)℃であるとは、具体的にはポリカーボネート溶液については90℃〜140℃、より好ましいフィルム雰囲気温度は115〜135℃である。
【0061】
また延伸倍率が1.05倍よりも低い場合も、1.15倍よりも高い場合にも光学特性を所望の値にすることが難しくなって不都合を生じる。
【0062】
横延伸工程の出口においてはフィルムを室温まで冷却しフィルムの微細構造を固定する。また、ピンテンターで把持した約50mmの両エッジ部を切除する。両エッジ部を切除しない場合には、ピン突き刺し孔等から生じた白粉(ピンによるフィルムの削れ粉)がフィルムの製品になる部分に再付着して異物混入の原因になるという問題を生じる。
【0063】
(縦延伸)
ついで、フィルムの雰囲気温度を(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃となるようにして、フィルムを縦方向に1.01〜1.04倍となるように延伸する。フィルムの雰囲気温度が(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃であるとは、具体的にはポリカーボネート溶液については145℃〜155℃、より好ましいフィルム雰囲気温度は148〜155℃である。
【0064】
縦延伸工程のフィルム雰囲気温度が(Tg’+5)℃より低い場合には当該工程中における溶媒の乾燥が十分に行われないためにフィルムの特性を制御できないことがある。また、フィルム雰囲気温度が(Tg’+15)℃を超える場合には特に光学特性(R値、K値及び遅相軸の角度)ならびにそれらの斑バラツキ)が所望の値からはずれてしまうことがあるため R値、K値及び遅相軸の角度の均一なフィルムを得ることが出来ない。
【0065】
縦延伸工程の出口においてはフィルムを室温まで冷却し巻き取る。
ここでこのフィルムを製品とすることが可能である。
また、要すれば(例えば含有溶媒量を更に減少させたい時など)横縦逐次延伸を終えたフィルムは、次いでフィルムをロール懸垂型乾燥装置を用いて乾燥する工程である懸垂型乾燥機処理工程に通膜することができる。。このロール懸垂型乾燥装置を用いた乾燥処理工程においては延伸によって形成させた微細構造を変化させることがないように低張力0.5〜2.0Kg/cm^2、かつ比較的低温下で(Tg”−15)℃以下で処理する。
【0066】
すなわち、含有溶媒量を、懸垂型乾燥機処理工程出口で、好ましくは1.0重量%以下、に制御する。その後、延伸終了後のフィルムは冷却しロール状に巻き取り、製品とする。
【0067】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳述する。測定は以下の方法で実施した。なお、本発明は下記の実施例によって制限されるものではない。
【0068】
1)面内レターデーション値R及び遅相軸角度の測定
ロールフィルムより幅方向に1m、フィルム長さ方向に1mの大きさのものを切り出した。このフィルムを100mm*100mmの大きさに碁盤目状に分割してその中央部を測定用のサンプルとした。
新王子製紙(株))製の商品名KOBRA−21ADH)を使用して、光線をフィルム面に垂直方向に入射し面内レターデーション値Rを測定した。なお遅相軸角度はフィルムの縦方向(搬送方向)を0度とし反時計方向をプラスとしたものである。
このデータより測定サンプル全長(フィルム縦延伸方向1m長)、と全幅(フィルム横延伸方向1m長)における100点の測定値よりその平均値並びに最大値と最小値との差からバラツキの範囲を求めた。
【0069】
2)厚み方向のレターデーション値Kの測定
サンプルは面内レターデーション値Rを求めたと同じサンプル(フィルムの縦延伸方向1m*横方向1m)で100点を測定した。
KOBRA−21ADHによりフィルムの屈折率Nx,Ny及びNzを求めこれよりK値、即ちK値={(Nx+Ny)/2−Nz}*d(単位nm)を算出した。ここでdは測定フィルムの厚みをあらわす。
【0070】
3)フィルム中の含有溶媒量の測定
溶媒を含有したフィルム約5gを採取し、170℃の熱風乾燥機で一時間乾燥させた後室温まで冷却した。その際、当該乾燥前後の重量を化学天秤で精秤し、その変化率を求めた。これにより固形分基準の溶媒含有量を求めた。具体的には、フィルムを幅方向に5等分して測定した。そしてこれを3回、別々の幅方向について実施し、その平均値を求める方法によった。当該乾燥前の重量をa、乾燥冷却後の重量をbとした場合、固形分基準の溶媒含有量の個々の測定値は、((a−b/b)*100(%)で表すことができる。
【0071】
4)ガラス転移温度Tg、Tg‘、Tg”の測定
フィルムサンプル約10mgを用い、加熱速度10℃/min.でDSC曲線を求めた。この曲線の立ち下がり(変曲点)部を見かけのガラス転移温度Tg、Tg‘、Tg”、とした。
【0072】
5)幅方向における製品フィルムの採り幅
R値、K値のバラツキ5nm以下、遅相軸の角度が±30度以内の品質である良好な製品として採り得るフィルムの幅を「均一性」の尺度とした。
【0073】
[実施例1、2、3]
横縦逐次二軸延伸の実施例
帝人化成(株)製のポリカーボネート(商品名パンライトC−1400QJ、粘度平均分子量3.8万、メチレンクロライドを含まないポリマーのガラス転移点は159℃であった。)をメチレンクロライドに溶解し20重量%の溶液を作成した。これをスチールベルト上に流延し乾燥し、厚み斑の小さいフィルムとなし、ベルト面より剥ぎ取った。このフィルムの特性の縦延伸入り口直前での値は次の通りであった。
含有溶媒量 :16%、
Tg :47℃
フィルム厚み :105μm
フィルムの幅 :1200mm
【0074】
このフィルムを、ピンテンターで把持し、ピンテンター入り口のフィルム幅方向の端部を、把持幅がフィルム幅とほぼ同じになるようにしてフィルム幅方向両端を把持された(通常はピンで突き刺し固定して搬送する)状態でフィルムの幅方向に延伸した。その際にフィルム雰囲気温度を130℃になるように加熱しピンテンターのフィルム把持幅を段階的に拡大して1.13倍まで延伸した。即ち6つのゾーンを持つピンテンターにより、最初の延伸ゾーンから5番目までのゾーンをその把持部を直線的に拡大して1.13倍になるよう延伸した。6番目のゾーンでは把持幅を横延伸の最終ゾーン(5番目のゾーン)と同じくなるようにした。
【0075】
延伸終了後のフィルムを把持したままで室温まで冷却し、ピンテンター出口にて両エッジ部を50mmずつ切除した。
【0076】
かくして得られたフィルムの特性値は下記の通りであった。
厚 み : 95μm
含有溶媒量 :1.2%
Tg‘ :143℃
【0077】
これを更に縦延伸工程に通膜して、延伸倍率を1.02倍に固定し、延伸温度を3水準で変えた。
即ち、延伸温度148℃(実施例1とする)、延伸温度151℃(実施例2とする)延伸温度155℃(実施例3とする)である。
その後当該フィルムを冷却工程で室温まで冷却して横縦逐次二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性値は下表1の通りであった。
【0078】
【表1】
【0079】
なお、フィルムの厚みは93μmであった。
これらのフィルムにおいて、R値、K値及び遅相軸の値並びにそれらのバラツキの範囲を見た時にこれらの値を満足する製品フィルムの取り得る製品幅(フィルム幅の実長さ、元の延伸前フィルムの幅に対する比率(%表示))は、実施例1:500mm(42%)、実施例2:800mm(67%)そして実施例3:1000mm(83%)であった。
これらのフィルムは位相差フィルムとしての光学特性値、R値、K値 遅相軸の角度並びにこれらの均一性がフィルム面の大きな面積において優れたものであった。
【0080】
[実施例4]
縦横逐次延伸の実施例
実施例1と同じポリカーボネートフィルムを作成して縦横逐次延伸を実施した。このフィルムの延伸工程入り口直前の特性は実施例1に記載したものと同じ値であった。
このフィルムを縦延伸工程に通し、延伸倍率1.10倍、フィルムの雰囲気温度60℃となるようにしてフィルムを延伸処理した。
【0081】
この一次延伸されたフィルムの横延伸入り口直前での特性値は下記の通りであった。
含有溶媒量 :3.0%
Tg’ :126℃
フィルム厚み:95μm
【0082】
次いで、このフィルムを、ピンテンターで把持し、6個のゾーンを持つオーブン中に送入して延伸した。フィルム幅方向の端部をピンテンター入り口において把持幅をフィルム巾とほぼ同じとし入り口から後半に向かって、5番目のゾーンまで順次把持幅を拡大して延伸した。即ち、延伸温度135℃、延伸倍率1.12倍にて延伸した。ピンテンターオーブンを出た後のフィルムを把持幅を固定したまま室温の空気を吹き付けて冷却した。
【0083】
次いでフィルムを把持したまま室温まで空冷しピンテンター出口にて両エッジ部を50mmずつ切除して製品としてこのフィルムの溶媒含有量は1.5%であった。またTg’は140℃であった。
【0084】
このフィルムをさらに懸垂型乾燥機処理工程、を含有溶媒量が1.0重量%以下になるまで通してロール状に巻き取った。
【0085】
懸垂型乾燥機処理工程の条件は
熱風温度 :120℃、
フィルムに掛けた張力 :1.5Kg/cm2、
であった。
【0086】
かくして得られた製品フィルムの特性値は下記の通りであった。
フィルムの厚み :86μm
R値並びにR値のバラツキ:27nm、6nm。
K値並びにK値のバラツキ :260nm、7nm。
遅相軸並びにそのバラツキ:−20〜+26度
このフィルムにおいて、R値、K値及び遅相軸の値並びにそれらのバラツキの範囲を見た時にこれらの値を満足する製品フィルムの取り得る製品幅(フィルム幅の実長さ、元の延伸前フィルムの幅に対する比率(%表示))は、58%であった。
【0087】
これらのフィルムは位相差フィルムとしての光学特性値、R値、K値 遅相軸の角度並びにこれらの均一性がフィルム面の大きな面積において優れたものであった。
【0088】
[比較例1]
入り口におけるフィルムの含有溶媒量を5%(Tg:85℃)と変える以外は、実施例3と全て同じ条件になるようにして、横縦逐次二軸延伸による位相差フィルムを作成した。これらのフィルムの特性値は下記の通りであった。
R値並びにそのバラツキ :50nm、20nm。
K値並びにそのバラツキ :270nm、15nm。
遅相軸の角度並びにそのバラツキ:−45〜30度
一次延伸前のフィルムの含有溶媒量によってその後の工程での構造発生が影響を受けて、均一な位相差フィルムを得ることができなかった。これらのフィルムは位相差用としては不適なものであった。
【0089】
[比較例2]
横縦延伸の最初の横延伸条件を温度130℃、倍率1.13倍にて延伸し、ついで縦延伸を145℃、延伸倍率を1.02倍で延伸した以外は実施例1と全て同じ条件になるようにして位相差フィルムを作成した。このフィルムの特性値は下記の通りであった。
R値及びそのバラツキ :10nm、20nm。
K値及びそのバラツキ :190nm、13nm。
遅相軸の角度及びそのバラツキ:−22〜+25度
このフィルムはR値、K値のバラツキが大で位相差フィルムとして不適のものだった。
【0090】
【発明の効果】
本発明方法の高分子樹脂の位相差フィルム並びにその製造方法において、規定量の溶媒を含有した高分子フィルムを、特定の条件で縦横逐次二軸延伸又は横縦逐次二軸延伸することにより、光学特性が所望の値を持ちその均一性が良好な高分子フィルムを大面積で製造することが出来る。光学特性、即ち面内レターデション値R、厚み方向レターデション値K及び遅相軸の角度が所望の値を持ちその均一性がきわめて良好な大面積の高分子樹脂位相差フィルムを製造することが出来る。
この結果光学用途に好適な位相差フィルム並びに液晶化合物積層タイプ用のフィルム(透明支持体)をこの業界に提供することが出来フィルムの大面積での加工が容易になる等の優れた効果を発揮する。
Claims (5)
- 溶媒の含有量が10〜20重量%である高分子樹脂フイルムを、逐次二軸延伸して高分子樹脂位相差フイルムを製造する方法に於いて、高分子樹脂がポリカーボネートであって、該二軸延伸が横縦逐次延伸であり、第1次延伸が延伸温度(Tg+50)〜(Tg+100)℃、延伸倍率1.05〜1.15倍に横方向に延伸し、第2次延伸が延伸温度(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃、延伸倍率1.01〜1.04倍に縦方向に延伸する二軸延伸高分子樹脂位相差フィルムの製造方法。
- 溶媒の含有量が10〜20重量%である高分子樹脂フイルムを、逐次二軸延伸して高分子樹脂位相差フイルムを製造する方法に於いて、高分子樹脂がポリカーボネートであって、該二軸延伸が縦横逐次延伸であり、第1次延伸が延伸温度(Tg)〜(Tg+20)℃、延伸倍率1.03〜1.13倍に縦方向に延伸し、第2次延伸が延伸温度(Tg’+5)〜(Tg’+15)℃、延伸倍率1.03〜1.13倍に横方向に延伸する二軸延伸高分子樹脂位相差フィルムの製造方法。
- 縦延伸が空気浮遊加熱方式の延伸機で行われ、横延伸がピンテンター方式の横延伸機で行われる請求項1〜2に記載のいずれかの二軸延伸高分子樹脂位相差フィルムの製造方法。
- 第2次の延伸後、さらにロール懸垂型乾燥装置を用いた乾燥処理工程において張力0.5〜2.0Kg/cm^2、かつ雰囲気温度(Tg”−15)℃以下で処理する請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸高分子樹脂位相差フィルムの製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法によって得られた、下記(1)、(2)及び(3)
(1)R値:0≦R値≦30nm
(2)K値:100≦K値≦600nm
(3)遅相軸の角度:0≦|遅相軸の角度|≦30度
を満足し、1m四方の中の100ヵ所の上記(1)及び(2)のバラツキが5nm以下であることを特徴とする二軸延伸高分子樹脂位相差フィルム。
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