JP2022103558A - 多層フィルム及びその製造方法、並びに光学フィルム及びその製造方法 - Google Patents

多層フィルム及びその製造方法、並びに光学フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】延伸により、厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルムを得うる、多層フィルム。【解決手段】結晶性を有する重合体(Pa)を含む固有複屈折が正である樹脂(a)からなる層(A)と、結晶性を有する重合体(Pb)を含む固有複屈折が正である樹脂(b)からなる層(B)とを含み、前記層(A)のNZ係数Nzaが下記式(1)を満たし、前記層(B)のNZ係数Nzbが下記式(2)を満たし、前記層(A)の厚み方向の複屈折Δna及び前記層(B)の厚み方向の複屈折Δnbが、下記式(3)を満たす、多層フィルム。Nza<0・・・(1)Nzb<0・・・(2)1<Δnb/Δna<10 (3)【選択図】図1

Description

本発明は、多層フィルム及びその製造方法、並びに光学フィルム及びその製造方法に関する。
結晶性である樹脂を主成分とするフィルムを延伸して得られた延伸フィルムを、炭化水素系溶媒と接触させる工程を有する、樹脂フィルムの製造方法が知られている(特許文献1)。
特開2016-026909号公報
結晶性を有する重合体を含む樹脂からなるフィルムを溶媒に接触させることにより、フィルムの厚み方向におけるレターデーションRthを変化させうる。フィルムの厚み方向におけるレターデーションRthを変化させた後、フィルムを延伸することにより、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルムを得うる。
一方で、フィルムを溶媒に接触させる条件によっては、フィルムがカールするなどして、フィルムのハンドリング性が低下する場合がある。例えば、フィルムを溶媒に浸漬することによりフィルムに溶媒を接触させる場合には、フィルムの厚みが薄いと、カールが発生しやすい。したがって、フィルムとして、通常ある程度厚みの大きいものを用いる。
また、例えば、フィルムに溶媒を塗工することによりフィルムに溶媒を接触させる場合にも、フィルムの厚みが薄いとカールが発生しやすくなるため、通常フィルムとしてある程度厚みの大きいものを用いる
そのため、フィルムを延伸して得られる光学フィルムは、通常厚みが大きいものとなる。
カールを抑制するために、溶媒の塗工量を減らしてフィルムへの溶媒の接触量を減少させると、得られるフィルムに所望のレターデーションを付与できない場合がある。
よって、延伸により、厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルムを得うる、多層フィルム;当該多層フィルムの製造方法;厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルム;及び当該光学フィルムの製造方法;が求められる。
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、フィルムを、所定の層(A)及び層(B)を含む多層フィルムとすることにより、前記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1] 結晶性を有する重合体(Pa)を含む固有複屈折が正である樹脂(a)からなる層(A)と、
結晶性を有する重合体(Pb)を含む固有複屈折が正である樹脂(b)からなる層(B)とを含み、
前記層(A)のNZ係数Nzaが下記式(1)を満たし、
前記層(B)のNZ係数Nzbが下記式(2)を満たし、
前記層(A)の厚み方向の複屈折Δna及び前記層(B)の厚み方向の複屈折Δnbが、下記式(3)を満たす、多層フィルム。
Nza<0・・・(1)
Nzb<0・・・(2)
1<Δnb/Δna<10 (3)
[2] 前記結晶性を有する重合体(Pb)が、脂環式構造を含有する重合体である、[1]に記載の多層フィルム。
[3] 前記層(A)と前記層(B)とが直接する、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
[4] 前記層(A)の厚み方向におけるレターデーションRtha及び前記層(B)の厚み方向におけるレターデーションRthbが、下記式(4)を満たす、[1]~[3]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
1<Rthb/Rtha≦3・・・(4)
[5] [1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルムの製造方法であって、
前記樹脂(a)からなる基材フィルムを用意する工程(1)と、
前記基材フィルムの二つの表面のうち、少なくとも一つの表面上に、前記樹脂(b)及び溶媒を含む樹脂溶液を塗工して塗工層を形成する工程(2)と、
前記塗工層を乾燥させて層(B)を形成し、前記多層フィルムを得る工程(3)と、
を含む、多層フィルムの製造方法。
[6] [1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルムを延伸して光学フィルムを得る工程を含む、光学フィルムの製造方法。
[7] [1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルムの延伸体である、光学フィルム。
本発明によれば、延伸により、厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルムを得うる、多層フィルム;当該多層フィルムの製造方法;厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルム;及び当該光学フィルムの製造方法;を提供できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る多層フィルムを模式的に示す断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの長手方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
以下の説明において、固有複屈折が正の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも大きくなる材料を意味する。また、固有複屈折が負の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも小さくなる材料を意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、層の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。さらに、層のNZ係数は、別に断らない限り、(nx-nz)/(nx-ny)で表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
NZ係数は、NZ係数=Rth/Re+0.5の式から算出されうる。
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
以下の説明において、長尺のフィルムの長手方向は、通常は製造ラインにおけるフィルム搬送方向と平行である。また、MD方向(machine direction)は、製造ラインにおけるフィルムの搬送方向であり、通常は長尺のフィルムの長手方向と平行である。さらに、TD方向(transverse direction)は、フィルム面に平行な方向であって、前記MD方向に垂直な方向であり、通常は長尺のフィルムの幅方向と平行である。
以下の説明において、「結晶性を有する重合体」とは、融点Tmを有する重合体を表す。すなわち、「結晶性を有する重合体」とは、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる重合体を表す。以下の説明において、結晶性を有する重合体を、「結晶性重合体」ということがある。また、結晶性重合体を含む樹脂を「結晶性樹脂」ということがある。この結晶性樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂である。
[1.多層フィルムの概要]
本発明の一実施形態に係る多層フィルムは、結晶性を有する重合体(Pa)を含む固有複屈折が正である樹脂(a)からなる層(A)と、結晶性を有する重合体(Pb)を含む固有複屈折が正である樹脂(b)からなる層(B)とを含み、層(A)のNZ係数Nzaが下記式(1)を満たし、層(B)のNZ係数Nzbが下記式(2)を満たし、層(A)の厚み方向の複屈折Δna及び層(B)の厚み方向の複屈折Δnbが、下記式(3)を満たす。
Nza<0・・・(1)
Nzb<0・・・(2)
1<Δnb/Δna<10 (3)
多層フィルムが、層(A)及び層(B)を含み、前記式(1)~(3)を満たすことにより、多層フィルムから、延伸により厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルムを製造しうる。
一実施形態において、多層フィルムは、後述する工程(1)~(3)を含む製造方法により得られうる多層フィルムである。
[1.1.多層フィルムの構造]
本実施形態に係る多層フィルムの構造について、以下図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る多層フィルムを模式的に示す断面図である。
多層フィルム100は、層(A)としての層110と、層(B)としての層120を含む。層110は、主表面として第一の表面110Uと第二の表面110Dとを有する。層110の第一の表面110Uに直接して、層120が設けられている。すなわち、層110と層120との間には、他の層が存在せず、層110の第一の表面110Uが、他の層を介さずに層120の主表面と接している。
別の実施形態では、多層フィルムは、層(A)及び第一の層(B)に加えて、第二の層(B)を備えていてもよい。この実施形態では、層(A)が有する主表面としての第一の表面に直接して、第一の層(B)が設けられ、層(A)が有する主表面としての第二の表面に直接して、第二の層(B)が設けられている。第一の層(B)及び第二の層(B)の両方は、前記式(1)~(3)を満たす。
[1.2.多層フィルムの材料]
以下に、本実施形態の多層フィルムに含まれる層(A)及び層(B)の材料について説明する。層(B)についての説明は、前記第一の層(B)及び前記第二の層(B)の両方について適用されうる。
(層(A))
層(A)は、結晶性を有する重合体(Pa)を含む固有複屈折が正である樹脂(a)からなり、当該樹脂(a)を含み、当該樹脂(a)から形成されている。
結晶性を有する重合体(Pa)(以下、結晶性重合体(Pa)ともいう。)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;等でもよく、特に限定されることはないが、脂環式構造を含有することが好ましい。脂環式構造を含有する結晶性重合体(Pa)を用いることにより、多層フィルムの機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性を良好にできる。脂環式構造を含有する重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体を表す。このような脂環式構造を含有する重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる多層フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造を含有する結晶性重合体(Pa)において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、100重量%以下としうる。また、脂環式構造を含有する結晶性重合体(Pa)において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
脂環式構造を含有する結晶性重合体(Pa)としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
具体的には、脂環式構造を含有する結晶性重合体(Pa)としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましい。中でも、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは100重量%の重合体をいう。
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、ラセモ・ダイアッドの割合が高いことが好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物における繰り返し単位のラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。ラセモ・ダイアッドの割合が高いことは、シンジオタクチック立体規則性が高いことを表す。よって、ラセモ・ダイアッドの割合が高いほど、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の融点が高い傾向がある。
ラセモ・ダイアッドの割合は、後述する実施例に記載の13C-NMRスペクトル分析に基づいて決定できる。
上記重合体(α)~重合体(δ)としては、国際公開第2018/062067号に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
結晶性重合体(Pa)の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する結晶性重合体(Pa)を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた多層フィルムを得ることができる。
通常、結晶性重合体(Pa)は、ガラス転移温度Tgを有する。結晶性重合体(Pa)の具体的なガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmは、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定しうる。
結晶性重合体(Pa)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性重合体(Pa)は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
結晶性重合体(Pa)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性重合体(Pa)は、成形加工性に優れる。
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
結晶性重合体(Pa)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
結晶性樹脂(a)における結晶性重合体(Pa)の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性重合体(Pa)の割合が前記範囲の下限値以上である場合、多層フィルムの耐熱性を高めることができる。結晶性重合体(Pa)の割合の上限は、100重量%以下でありうる。
結晶性樹脂(a)は、結晶性重合体(Pa)に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー;及び、軟質重合体等の、結晶性重合体(Pa)以外の任意の重合体;などが挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(層(B))
層(B)は、結晶性を有する重合体(Pb)を含む固有複屈折が正である樹脂(b)からなり、当該樹脂(b)を含み、当該樹脂(b)から形成されている。
結晶性を有する重合体(Pb)(以下結晶性重合体(Pb)ともいう。)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;等でもよく、特に限定されることはないが、脂環式構造を含有することが好ましい。脂環式構造を含有する結晶性重合体(Pb)を用いることにより、多層フィルムの機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性を良好にできる。
脂環式構造を含有する結晶性重合体(Pb)としては、前記の脂環式構造を有する結晶性重合体(Pa)の例及び好ましい例として挙げられた結晶性重合体と同様の重合体としうる。これにより、結晶性重合体(Pb)が、結晶性重合体(Pa)と同様の利点を得られる。
結晶性重合体(Pb)の融点Tm及びガラス転移温度Tgは、それぞれ前記の結晶性重合体(Pa)の好ましい融点の範囲及び好ましいガラス転移温度の範囲と同様の範囲としうる。これにより、結晶性重合体(Pb)が、結晶性重合体(Pa)と同様の利点を得られる。
結晶性重合体(Pb)の重量平均分子量(Mw)は、結晶性重合体(Pa)の好ましい重量平均分子量(Mw)の範囲と同様の範囲としうる。これにより、結晶性重合体(Pb)が、結晶性重合体(Pa)と同様の利点を得られる。
結晶性重合体(Pb)の分子量分布(Mw/Mn)は、結晶性重合体(Pa)の好ましい分子量分布(Mw/Mn)の範囲と同様の範囲としうる。これにより、結晶性重合体(Pb)が、結晶性重合体(Pa)と同様の利点を得られる。
結晶性重合体(Pb)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
結晶性樹脂(b)における結晶性重合体(Pb)の割合は、結晶性樹脂(a)における結晶性重合体(Pa)の好ましい割合の範囲と同様の範囲としうる。これにより、結晶性樹脂(b)が、結晶性樹脂(a)と同様の利点を得られる。
結晶性樹脂(b)は、結晶性重合体(Pb)に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分の例としては、結晶性樹脂(a)に含まれうる任意成分と同様の例が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
結晶性樹脂(a)及び結晶性樹脂(b)は、互いに同一の樹脂であってもよいし、互いに異なる樹脂であってもよい。
[1.3.多層フィルムの光学特性]
前記のとおり、本実施形態の多層フィルムは、前記式(1)~(3)を満たす。
層(A)のNZ係数Nzaは、通常0未満、好ましくは-5以下、より好ましくは-10以下であり、好ましくは-200以上、より好ましくは-100以上である。
NZ係数Nzaは、例えば、多層フィルムの製造に使用される基材フィルムの面内レターデーションの調整、基材フィルムに形成する、樹脂(b)を含む樹脂溶液の層(塗工層)の厚みの調整などの、多層フィルムの製造条件の調整により、調整しうる。通常、基材フィルムに形成する塗工層の厚みを大きくすることにより、NZaをより小さくしうる。
層(B)のNZ係数Nzbは、通常0未満、好ましくは-10以下、より好ましくは-20以下であり、好ましくは-200以上、より好ましくは-100以上である。
NZ係数Nzbは、例えば、塗工層の厚みを調整するなどの、多層フィルムの製造条件の調整により、調整しうる。通常、塗工層の厚みを大きくすることにより、NZbをより小さくしうる。
層(B)の厚み方向の複屈折Δnbの、層(A)の厚み方向の複屈折Δnaに対する比(Δnb/Δna)は、前記式(3)を満たし、通常1より大きく、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、通常10未満、好ましくは9.5以下、より好ましくは9以下である。
層(A)のNZ係数Nza、層(B)のNZ係数Nzb、及び比(Δnb/Δna)を、前記範囲内に収めることにより、多層フィルムを延伸して得られる光学フィルムを、NZ係数が0より大きく1未満であるフィルムとしうる。
Δnb/Δnaの値は、例えば、Δnaの値を調整することにより、調整しうる。通常、塗工層の厚みを大きくすることにより、Δnaの値をより小さくしうる。
本実施形態に係る層(A)及び層(B)のそれぞれの面内レターデーションRe、厚み方向におけるレターデーションRth、厚み方向の複屈折Δnは、例えば下記のようにして求めうる。
多層フィルム全体について、面内レターデーションRe0、厚み方向におけるレターデーションRth0、及び厚みdを測定する。
多層フィルムの表面から、層(B)を削り取り、層(A)のみとする。多層フィルムから削り取る部分の厚みは、層(B)を形成する際に用いた樹脂溶液中の樹脂(b)の濃度及び当該樹脂溶液の層(塗工層)の厚みから、層(B)の厚みdbを概算することにより、決定しうる。
次いで、層(A)について、面内レターデーションRea、厚み方向におけるレターデーションRtha、及び厚みdaを測定する。
層(B)の面内レターデーションReb、厚み方向におけるレターデーションRthbを、下記式に従い求める。
Reb=Re0-Rea
Rthb=Rth0-Rtha
それぞれの層のNZ係数は、それぞれの層の面内レターデーションRe及び厚み方向におけるレターデーションRthから、式:NZ=Rth/Re+0.5に従い算出しうる。
また、得られた各層の厚み方向におけるレターデーションRthから、下記式に従い各層の厚み方向の複屈折Δnを求める。
Δna=Rtha/da
Δnb=Rthb/db
層(A)の厚み方向の複屈折Δnaは、好ましくは-0.01以上、より好ましくは-0.005以上であり、好ましくは0以下、より好ましくは-0.0001以下、更に好ましくは-0.001以下である。
複屈折Δnaが、前記範囲内であることにより、Δnb/Δnaの値をより容易に所望の範囲に調整でき、また層(A)の薄膜化が可能となる。
層(A)の厚み方向におけるレターデーションRthaは、好ましくは-100nm以上、より好ましくは-90nm以上、更に好ましくは-80nm以上であり、好ましくは-10nm以下、より好ましくは-15nm以下、更に好ましくは-20nm以下である。
層(A)の厚み方向におけるレターデーションRtha及び層(B)の厚み方向におけるレターデーションRthbは、下記式(4)を満たすことが好ましい。
1<Rthb/Rtha≦3・・・(4)
これにより、多層フィルムを延伸して得られる光学フィルムの厚みをより薄くできる。
Rthb/Rthaの値は、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.5以下である。
[1.4.多層フィルムの厚み]
多層フィルムの厚みは、好ましくは25μm以下、より好ましくは23μm以下、更に好ましくは20μm以下であり、好ましくは10μm以上である。
これにより、多層フィルムから容易に厚みの薄い光学フィルムを製造することができる。
[2.多層フィルムの製造方法]
本実施形態の多層フィルムは、任意の方法で製造されうる。例えば、本実施形態の多層フィルムは、下記工程(1)~工程(3)を含む製造方法により製造されうる。
工程(1):前記樹脂(a)からなる基材フィルムを用意する工程。
工程(2):前記基材フィルムの二つの表面のうち、少なくとも一つの表面上に、前記樹脂(b)及び溶媒を含む樹脂溶液を塗工して塗工層を形成する工程。
工程(3):前記塗工層を乾燥させて層(B)を形成し、前記多層フィルムを得る工程。
工程(1)、工程(2)、及び工程(3)は、通常この順に行われる。
本実施形態の製造方法は、工程(1)~工程(3)に加えて、任意の工程を含みうる。
[2.1.工程(1)]
工程(1)では、樹脂(a)からなる基材フィルムを用意する。用意される基材フィルムは、前記層(A)に含まれる樹脂(a)と同じ樹脂からなり、当該樹脂を含み、当該樹脂から形成されている。
ただし、基材フィルムに含まれる結晶性重合体(Pa)の結晶化度は、小さいことが好ましい。具体的な結晶化度は、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、特に好ましくは3%未満である。基材フィルムに含まれる結晶性重合体(Pa)の結晶化度が小さいことにより、工程(2)において基材フィルムに含まれる多くの結晶性重合体(Pa)の分子を厚み方向に配向させられるので、多層フィルムの厚み方向におけるレターデーションRthを広い範囲で調整しうる。
基材フィルムは、有機溶媒の含有量が小さいことが好ましく、有機溶媒を含まないことがより好ましい。基材フィルムの重量100%に対する当該基材フィルムに含まれる有機溶媒の比率(溶媒含有率)は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.1%以下であり、理想的には0.0%である。基材フィルムに含まれる有機溶媒の量が少ないことにより、工程(2)において多くの結晶性重合体(Pa)の分子を厚み方向に配向させられるので、多層フィルムの厚み方向におけるレターデーションRthを広い範囲で調整しうる。
基材フィルムの溶媒含有率は、密度によって測定しうる。
基材フィルムは、枚葉のフィルムであってもよいが、長尺のフィルムであることが好ましい。長尺の基材フィルムを用いることにより、多層フィルムの連続的な製造が可能であるので、多層フィルムの生産性を効果的に高めることができる。
基材フィルムは、光学等方性を有するフィルムであることが好ましい。すなわち、基材フィルムは、面内方向の複屈折(Re/d)が小さく、且つ、厚み方向の複屈折の絶対値|Rth/d|が小さいフィルムであることが好ましい。光学等方性を有することは、基材フィルムに含まれる結晶性重合体(Pa)の分子の配向性が低く、実質的に無配向状態となっていることを表す。このような光学等方性の基材フィルムを用いた場合、当該基材フィルムの光学特性の精密な制御が不要であり、よって結晶性重合体(Pa)の分子の配向性の精密な制御が不要であるので、多層フィルムの製造方法をシンプルにできる。
基材フィルムは、任意の製造方法により製造されたフィルムでありうる。基材フィルムの製造方法としては、有機溶媒を含まない基材フィルムが得られることから、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、圧縮成形法等の樹脂成形法が好ましい。これらの中でも、厚みの制御が容易であることから、押出成形法が好ましい。
押出成形法における製造条件は、好ましくは下記の通りである。シリンダー温度(溶融樹脂温度)は、好ましくはTm以上、より好ましくは「Tm+20℃」以上であり、好ましくは「Tm+100℃」以下、より好ましくは「Tm+50℃」以下である。また、フィルム状に押し出された溶融樹脂が最初に接触する冷却体は特に限定されないが、通常はキャストロールを用いる。このキャストロール温度は、好ましくは「Tg-50℃」以上であり、好ましくは「Tg+70℃」以下、より好ましくは「Tg+40℃」以下である。さらに、冷却ロール温度は、好ましくは「Tg-70℃」以上、より好ましくは「Tg-50℃」以上であり、好ましくは「Tg+60℃」以下、より好ましくは「Tg+30℃」以下である。このような条件で基材フィルムを製造する場合、厚み1μm~1mmの基材フィルムを容易に製造できる。ここで、「Tm」は、結晶性重合体(Pa)の融点を表し、「Tg」は結晶性重合体(Pa)のガラス転移温度を表す。
基材フィルムの面内レターデーションRe1は、好ましくは10nm以下、より好ましくは8nm以下、更に好ましくは5nm以下であり、通常0nm以上であり、0nmであってもよく、1nm以上であってもよい。
基材フィルムの厚み方向におけるレターデーションRth1の絶対値|Rth1|は、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは8nm以下であり、通常0nm以上であり、0nmであってもよく、1nm以上であってもよい。
基材フィルムの厚みは、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは13μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。基材フィルムの厚みが、前記範囲内であることで、得られる多層フィルムを薄くしうると共に、多層フィルムのカールを少なくして多層フィルムのハンドリング性を向上させうる。
[2.2.工程(2)]
工程(2)では、基材フィルムの二つの表面のうち、少なくとも一つの表面上に、前記樹脂(b)及び溶媒を含む樹脂溶液を塗工して塗工層を形成する。
工程(2)により、通常、基材フィルムの厚み方向における複屈折を変化させて、基材フィルムから層(A)を得うる。また、工程(2)により、得られる多層フィルムの厚みを薄くしうると共に、多層フィルムを所望の光学特性を有するフィルムとしうる。
また、基材フィルムの表面上に樹脂溶液を塗工して塗工層を形成することにより、層(A)と層(B)とが直接する多層フィルムを製造しうる。
樹脂溶液に含まれる溶媒は、通常有機溶媒である。有機溶媒の例としては、基材フィルムに含まれる結晶性重合体(Pa)を溶解させにくいが、当該基材フィルム中に浸入できる溶媒が挙げられ、例えば、トルエン、リモネン、デカリン等の炭化水素溶媒;二硫化炭素;が挙げられる。有機溶媒の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
基材フィルムの表面上に、有機溶媒を含む樹脂溶液を塗工することにより、基材フィルムの表面に有機溶媒が接触する。これにより、基材フィルムの厚み方向における複屈折が変化して、基材フィルムから層(A)が形成される。基材フィルムの表面に有機溶媒を接触させることにより、基材フィルムの厚み方向における複屈折を変化させて、層(A)が形成される理由は、以下のように推察されるが、本発明を限定するものではない。
結晶性樹脂(a)で形成された基材フィルムを、工程(2)において有機溶媒と接触させると、その有機溶媒が基材フィルム中に浸入する。浸入した有機溶媒の作用により、フィルム中の結晶性重合体(Pa)の分子にミクロブラウン運動が生じ、フィルムの分子鎖が配向する。
ところで、基材フィルムの表面積は、主表面であるオモテ面及びウラ面が大きい。よって、有機溶媒の浸入速度は、前記のオモテ面又はウラ面を通った厚み方向への浸入速度が、大きい。そうすると、前記の結晶性重合体(Pa)の分子の配向は、当該重合体の分子が厚み方向に配向するように進行しうる。
このように結晶性重合体(Pa)の分子が厚み方向に配向することにより、当該基材フィルムの厚み方向の複屈折が変化する。よって、工程(2)を経ることにより、基材フィルムから、層(A)を得ることができる。
また、工程(2)において、基材フィルムの表面上に樹脂溶液を塗工して塗工層を形成すると、塗工層から基材フィルムの主表面へ向かう溶媒の流れが生じると考えられる。その結果、塗工層中の結晶性樹脂(b)に含まれる結晶性重合体(Pb)の分子が塗工層において厚み方向に配向すると考えられ、その結果、塗工層から層(B)を得ることができると考えられる。しかし、以上の推察は、本発明を限定するものではない。
工程(2)において、基材フィルムの二つの表面のうち、一つの表面上のみ、前記樹脂溶液を塗工して塗工層を形成してもよく、二つの表面上に前記樹脂溶液を塗工して、塗工層を基材フィルムの両面上に形成してもよい。
工程(2)における塗工法は、好ましくは塗工により基材フィルムの表面に形成される塗工層の厚みを制御しうる方法が用いられる。
塗工法の例としては、ワイヤーバーコート法、スプレー法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スライドコート法、及びエクストルージョンコート法が挙げられ、ワイヤーバーコート法、ダイコート法が好ましい。
工程(2)において形成される塗工層の厚みは、塗工直後における厚みである。塗工層の厚みは、例えば、塗工装置の設定(例、ワイヤーバーの種類、塗工装置からの樹脂溶液流量、基材フィルムの搬送速度)を調整することにより、調整しうる。
塗工層の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは8μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。塗工層の厚みを前記範囲内に収めることにより、多層フィルムのハンドリング性を向上させうる。
ここで、塗工層の厚みとは、塗工層を基材フィルムの両面上に形成する場合、形成された二つの塗工層の厚みの合計を意味する。
樹脂溶液における樹脂(b)の濃度は、好ましくは、樹脂(b)が析出しない濃度であり、樹脂溶液を100重量%として、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。
塗工する樹脂溶液の温度は、樹脂溶液に含まれる溶媒の沸点以下の範囲で任意であり、好ましくは、有機溶媒中に樹脂(b)が溶解しうる温度である。樹脂溶液の温度は、例えば130℃~150℃であってよい。
[2.3.工程(3)]
工程(3)では、前記塗工層を乾燥させて層(B)を形成し、前記層(A)及び層(B)を含む多層フィルムを得る。工程(3)により、塗工層から溶媒が除去されうる。
乾燥方法として、用いた溶媒の沸点に応じて任意の方法を採用しうる。乾燥方法の例としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等が挙げられる。
[2.4.任意の工程]
前記の製造方法によれば、長尺の基材フィルムを用いて、長尺の多層フィルムを製造することができる。多層フィルムの製造方法は、工程(1)~(3)に加えて、このように製造された長尺の多層フィルムをロール状に巻き取る工程を含んでいてもよい。さらに、多層フィルムの製造方法は、長尺の多層フィルムを所望の形状に切り出す工程を含んでいてもよい。
[3.多層フィルムの用途]
本実施形態の多層フィルムを延伸することにより、厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルムを得うる。当該光学フィルムを、例えば、表示装置に設けうる。この場合、光学フィルムは、表示装置に表示される画像の視野角、コントラスト、画質等の表示品質を改善することができる。したがって、本実施形態の多層フィルムは光学フィルムを製造するために好ましく用いられうる。
[4.光学フィルム]
前記のとおり、多層フィルムを延伸することにより、多層フィルムの延伸体としての光学フィルムを得ることができる。
多層フィルムを延伸することにより、厚みが薄く、NZ係数が0より大きく1未満である光学フィルムを得ることができる。
光学フィルムの厚みdcは、好ましくは10μm以上、より好ましくは13μm以上であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である。
一実施形態において、光学フィルムは、1/2波長板として機能しうる面内レターデーションを有する。
光学フィルムの面内レターデーションRecは、好ましくは240nm以上、より好ましくは250nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは290nm以下である。
光学フィルムのNZ係数Nzcは、好ましくは0より大きく、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。
光学フィルムは、高い透明性を有することが好ましい。光学フィルムの具体的な全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。光学フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定しうる。
[5.光学フィルムの製造方法]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、前記多層フィルムを延伸して光学フィルムを得る工程を含む。以下、多層フィルムを延伸して光学フィルムを得る工程を工程(4)ともいう。
多層フィルムは、任意の方法により製造しうるが、前記工程(1)~(3)を含む製造方法により製造された多層フィルムであることが好ましい。したがって、光学フィルムの製造方法は、好ましくは、前記工程(1)~(3)、及び工程(4)を含む。工程(1)、工程(2)、工程(3)、及び工程(4)は、通常この順で行われる。多層フィルムの製造方法は、前記工程(4)の他に、任意の工程を含んでいてもよく、工程(1)~(4)の他に、任意の工程を含んでいてもよい。
[5.1.工程(4)]
工程(4)では、多層フィルムを延伸して光学フィルムを得る。
多層フィルムを延伸することにより、多層フィルムの層(A)及び層(B)に含まれる結晶性重合体の分子を、延伸方向に応じた方向に配向させうる。
延伸方向に制限はなく、例えば、長手方向、幅方向、斜め方向などが挙げられる。ここで、斜め方向とは、厚み方向に対して垂直な方向であって、幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を表す。また、延伸方向は、一方向でもよく、二以上の方向でもよい。よって、延伸方法としては、例えば、樹脂フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、樹脂フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;樹脂フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、樹脂フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法等の、二軸延伸法;樹脂フィルムを斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);などが挙げられる。
一軸延伸法の別の例としては、フィルムの端部を固定して行う、固定一軸延伸法、フィルムの端部を固定せずに行う、自由一軸延伸法が挙げられる。
延伸により、光学フィルムに容易に所望とするNZ係数を発現させる観点から、工程(4)における延伸は、一軸延伸法が好ましく、自由一軸延伸法がより好ましい。
延伸倍率は、好ましくは1倍以上、より好ましくは1.01倍以上であり、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.4倍以下である。具体的な延伸倍率は、延伸する多層フィルムの光学特性、厚み、強度などの要素に応じて適切に設定することが望ましい。
延伸倍率が前記範囲の下限値以上である場合、延伸によって複屈折を大きく変化させることができる。また、延伸倍率が前記範囲の上限値以下である場合、遅相軸の方向を容易に制御したり、フィルムの破断を効果的に抑制したりできる。
延伸温度は、好ましくは「Tg+5℃」以上、より好ましくは「Tg+10℃」以上であり、好ましくは「Tg+100℃」以下、より好ましくは「Tg+90℃」以下である。ここで、「Tg」は結晶性重合体(Pa)のガラス転移温度を表す。延伸温度が前記範囲の下限値以上である場合、多層フィルムを十分に軟化させて延伸を均一に行うことができる。また、延伸温度が前記範囲の上限値以下である場合、結晶性重合体の結晶化の進行による多層フィルムの硬化を抑制できるので、延伸を円滑に行うことができる。また、延伸によって複屈折を大きく変化させうる。さらに、通常は、延伸後に得られる光学フィルムのヘイズを小さくして透明性を高めることができる。
工程(4)は、多層フィルムを延伸する工程(工程(4b)とする。)に加えて、更に下記工程のいずれかを含んでいてもよい。
工程(4a):多層フィルムを予熱する工程。
工程(4c):多層フィルムを熱処理する工程。
工程(4d):延伸された多層フィルムを冷却する工程。
工程(4)が工程(4a)を含む場合、工程(4a)は通常工程(4b)の前に行われる。
工程(4)が工程(4c)を含む場合、工程(4c)は通常工程(4b)の後に行われる。
工程(4)が工程(4d)を含む場合、工程(4d)は、通常工程(4a)~(4c)の後に行われる。
熱処理により、延伸された多層フィルムに含まれる結晶性重合体の結晶化を進行させうる。よって、工程(4c)により、光学フィルムの耐熱性を向上させうる。
熱処理温度は、通常、結晶性重合体(Pa)のガラス転移温度Tg以上、結晶性重合体(Pa)の融点Tm以下である。より詳細には、熱処理温度は、好ましくはTg℃以上、より好ましくはTg+10℃以上であり、好ましくはTm-20℃以下、より好ましくはTm-40℃以下である。前記の温度範囲では、結晶化の進行による白濁を抑制しながら、速やかに結晶性重合体の結晶化を進行させることができる。
熱処理の処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下である。
工程(4a)における予熱温度は、通常、工程(4b)における延伸温度と同じであるが、異なっていてもよい。予熱温度は、延伸温度T1に対し、好ましくはT1-10℃以上、より好ましくはT1-5℃以上であり、好ましくはT1+5℃以下、より好ましくはT1+2℃以下である。予熱時間は任意であり、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上でありえ、また、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下でありえる。
工程(4d)における冷却温度は、工程(4d)の前に行われる工程における加熱温度よりも低く設定される。冷却時間は任意であり、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上でありえ、また、好ましくは30秒以下、より好ましくは20秒以下でありえる。
工程(4)後の光学フィルムには残留応力が含まれうる。そこで、光学フィルムの製造方法は、例えば、延伸後のフィルムを熱収縮させて残留応力を除去する緩和処理を行う工程を含んでいてもよい。緩和処理では、通常、延伸されたフィルムを平坦に維持しながら、適切な温度範囲でフィルムに熱収縮を生じさせることで、残留応力を除去できる。
長尺の多層フィルムを用いることにより、長尺の光学フィルムを製造しうる。
光学フィルムの製造方法は、このように製造された長尺の光学フィルムをロール状に巻き取る工程を含んでいてもよい。さらに、光学フィルムの製造方法は、長尺の光学フィルムを所望の形状に切り出す工程を含んでいてもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃で あった。
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMRにより測定した。
(ガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定方法)
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定は、以下のようにして行った。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷した。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定した。
(固有複屈折の符号の確認)
測定対象の樹脂(結晶性樹脂A又は結晶性樹脂B)について、下記の手順に従って固有複屈折の符号を確認した。
確認対象の樹脂を、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機を用いて成形し、およそ幅400mmの、長尺の樹脂フィルム(厚み39μm)を得た。
前記のフィルム成形機の運転条件は、以下のとおりであった。
・バレル設定温度=280℃~300℃
・ダイ温度=270℃
・キャストロール温度=80℃
得られた樹脂フィルムを50mm×150mmの寸法にカットしてフィルム片を得た。測定装置として、恒温恒湿槽付の引張試験機(インストロン社製「5564型」)を用いて、フィルム片を自由一軸延伸した。延伸温度は、(フィルムを形成する樹脂のTg+15℃)、引張速度は、1.5倍/minとした。
その後、AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」により延伸したフィルム片の遅相軸方向を決定し、延伸方向と遅相軸方向とが平行である場合に、フィルム片を構成する樹脂の固有複屈折が正であるとし、延伸方向と遅相軸方向とが垂直である場合に、フィルム片を構成する樹脂の固有複屈折が負であるとした。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定は以下のようにして行った。オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(フィルムの厚みの測定方法)
フィルム又は層の厚みは、接触式厚さ計(MITUTOYO社製 Code No.543 -390)を用いて測定した。
(Re、Rth、NZ係数、厚み方向複屈折Δnの測定方法)
フィルム又は層の面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthは、AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」により測定した。この際、測定は、波長590nmで行った。
更に、フィルム又は層のNZ係数は、下記式により算出した。
NZ=Rth/Re+0.5
フィルム又は層の厚み方向の複屈折Δnの値は、下記式により算出した。
Δn=Rth(nm)/d(nm)
これら光学特性を測定するための多層フィルムにおける層(A)のサンプルは、下記のとおりにして作製した。
多層フィルムの表面を水で濡らしながら、サンドペーパー(4000番、8000番、15000番)を用いて表面の層(B)を削り取って層(A)のみとした。
多層フィルムから削り取る部分の厚み(すなわち、層(B)の部分の厚み)は、層(B)を形成する際に用いた塗工液中の樹脂(b)の濃度Cb(33%)及び塗工層の厚み(12μm)から、塗工層を乾燥させた後に得られる層(B)の厚みが、塗工層の厚みのCb%(33%)の厚みとなるとみなして概算した。
このようにして得られた層(A)について、面内レターデーションRea、厚み方向におけるレターデーションRtha、NZ係数Nza、厚み方向の複屈折Δnaを測定した。
多層フィルムにおける層(B)の面内レターデーションReb、厚み方向におけるレターデーションRthb、NZ係数Nzを、下記式に従い求めた。
Reb=Re0-Rea
Rthb=Rth0-Rtha
NZb=Rthb/Reb+0.5
[製造例1.結晶性樹脂Aの製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解し、溶液を調製した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750及び28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は267℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM-37B」、東芝機械社製)に投入した。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物及び酸化防止剤の混合物を、熱溶融押出し成形によりストランド状の成形した後、ストランドカッターにて細断して、ペレット形状の結晶性樹脂Aを得た。前記の二軸押出し機の運転条件は、以下のとおりであった。
・バレル設定温度=270~280℃
・ダイ設定温度=250℃
・スクリュー回転数=145rpm
また、前記の方法により結晶性樹脂Aの固有複屈折の符号を確認したところ、符号は「正」であった。
[製造例2.結晶性樹脂Bの製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン152.7部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.9部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.53部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.028部を2.772部のトルエンに溶解し、溶液を調製した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.156部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,680及び27,000であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.11であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤としてメタノール0.37部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは95℃、融点(Tm)は266℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM-37B」、東芝機械社製)に投入した。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物及び酸化防止剤の混合物を、熱溶融押出し成形によりストランド状の成形した後、ストランドカッターにて細断して、ペレット形状の結晶性樹脂Bを得た。前記の二軸押出し機の運転条件は、以下のとおりであった。
・バレル設定温度=270~280℃
・ダイ設定温度=250℃
・スクリュー回転数=145rpm
また、前記の方法により結晶性樹脂Bの固有複屈折の符号を確認したところ、符号は「正」であった。
[製造例3.結晶性樹脂Bを用いた塗工用樹脂溶液の製造]
デカリン溶媒を耐圧容器に入れ、その中に製造例2で製造した樹脂(b)としての結晶性樹脂Bを濃度33%となるように添加した。その後、窒素ガス雰囲気下、200℃で1時間加熱した。結晶性樹脂Bが溶解したことを確認後、130℃までゆっくり温度を下げてその温度を保持し、温度130℃の塗工用樹脂溶液を作製した。温度低下により結晶性樹脂Bが析出することを避けるため、塗工工程で使用するまで、液温130℃を保ちながら静置した。
[実施例1]
(1-1.工程(1):結晶性樹脂Aからなるフィルムの製造)
製造例1で製造した樹脂(a)としての結晶性樹脂Aを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機を用いて成形し、およそ幅400mmの、長尺の基材フィルムとしての押出フィルム(フィルム(1)、厚み15μm)を得た。得られた押出フィルムを、巻き取ってロールの形態とした。
前記のフィルム成形機の運転条件は、以下のとおりであった。
・バレル設定温度=280℃~300℃
・ダイ温度=270℃
・キャストロール温度=80℃
押出フィルム(フィルム(1))の特性は、下表のとおりであった。下表において、略号は以下の意味を表す。
「Re1」:面内レターデーション
「Rth1」:厚み方向におけるレターデーション
「d1」:厚み
「Δn1」:厚み方向における複屈折(Rth1/d1)
「Nz1」:NZ係数
Figure 2022103558000002
(1-2.工程(2):塗工工程)
(1-1)で作製した基材フィルムとしての押出フィルムのロールから、押出フィルムの製造時における搬送方向(MD方向)を長辺にして、A4サイズ(210mm×297mm)に押出フィルムを切り出した。切り出された押出フィルムの片面に、バーコーターで塗工層の厚みが12μmとなるように製造例3で得られた樹脂溶液を塗工した。塗工層の厚みは、バーコーターのバーの選択により調整した。
これにより、基材フィルムの表面上に、厚み12μmの塗工層が形成されて、フィルム(2)が得られた。樹脂溶液中の樹脂(b)の濃度と塗工層の厚みとから、塗工層を乾燥させて得られる層(B)の厚みを算出すると約4μmであった。
(1-3.工程(3):乾燥工程)
その後、フィルム(2)を170℃の真空オーブン内で乾燥させることにより、塗工層を乾燥させて、多層フィルムを得た。多層フィルム及び多層フィルムを構成する層(A)及び層(B)について、前記方法により評価した。
(1-4.工程(4):延伸加熱工程)
得られた多層フィルムを、100mm×100mmの寸法に切断した。切断された多層フィルムを、延伸機(エトー株式会社製)に供給し、フィルムの両端それぞれ5つのクリップで把持し、押出成膜工程における長手方向に1.2倍に自由一軸延伸し、光学フィルムとしてのフィルム(c)を作製した。延伸を、(4a):多層フィルムを160℃に予熱し、次いで;(4b):予熱された多層フィルムを160℃で延伸し、次いで;(4c):延伸された多層フィルムを緊張させた状態で、温度160℃で保持して結晶化を促進させ、次いで;(4d):結晶化が促進された多層フィルム(光学フィルム)を温度100℃で冷却する;ことにより実施した。
光学フィルムを、前記方法により評価した。
[比較例1]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、フィルム(3)を得て、更に光学フィルムを得た。
・押出フィルム(フィルム(1))に対して、(1-2.工程(2))及び(1-3.工程(3))を行わず、下記の溶媒浸漬工程を行って、フィルム(3)を得た。
フィルム(1)を、トルエンで満たされた浴槽中を通過させることにより、フィルム(1)をトルエンに浸漬した。フィルム(1)が当該浴槽中を通過する時間(すなわち、フィルム(1)がトルエンに接触する時間)は5秒間であった。フィルム(1)を当該浴槽中を通過させて得られたフィルム(2)を、80℃のオーブン中を通過させることにより、フィルム(2)を乾燥して、フィルム(3)を得た。
・(1-4.工程(4))において、多層フィルムの代わりとしてフィルム(3)を用い、フィルム(3)を自由一軸延伸する代わりに、下記の方法で固定一軸延伸して光学フィルムを得た。
フィルム(3)をテンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、横方向に1.5倍に固定一軸延伸し、光学フィルムとしてのフィルム(c)を作製した。延伸を、(4a):フィルム(3)を110℃に予熱し、次いで;(4b):予熱されたフィルム(3)を110℃で延伸し、次いで;(4c):延伸されたフィルム(3)を緊張させた状態で、温度170℃で保持して結晶化を促進させ、次いで;(4d):結晶化が促進されたフィルム(3)(光学フィルム)を温度100℃で冷却する;ことにより実施した。
フィルム(3)が備える層(A)及び光学フィルムについて、前記の方法により評価した。
結果を下表に示す。
下表において、略号は下記の意味を表す。
「結晶性COP-A」:製造例1で得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む結晶性樹脂A
「結晶性COP-B」:製造例2で得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む結晶性樹脂B
「層構成」:多層フィルム又はフィルム(3)の層構成
「B/A」:層(B)/層(A)の二層構成
「A」:層(A)のみの単層構成
「Rea」:層(A)の面内レターデーション
「Rtha」:層(A)の厚み方向におけるレターデーション
「Δna」:層(A)の厚み方向における複屈折(Rtha/da)
「da」:層(A)の厚み
「Nza」:層(A)のNZ係数
「Reb」:層(B)の面内レターデーション
「Rthb」:層(B)の厚み方向におけるレターデーション
「Δnb」:層(B)の厚み方向における複屈折(Rthb/db)
「db」:層(B)の厚み
「Nzb」:層(B)のNZ係数
「Rec」:光学フィルムの面内レターデーション
「Rthc」:光学フィルムの厚み方向におけるレターデーション
「Nzc」:光学フィルムのNZ係数
「dc」:光学フィルムの厚み
工程(2)及び工程(3)についての、塗工対象、塗工層厚み、塗工条件の項目は、比較例1については浸漬工程について示されている。
Figure 2022103558000003
以上の結果から、以下の事項がわかる。
実施例1に係る多層フィルムを延伸することによりNZ係数が0より大きく1未満であって、厚みが20μm以下である薄い光学フィルムが得られることがわかる。
一方、比較例に係るフィルム(3)を延伸して得られる光学フィルムは、NZ係数が0より大きく1未満であるが、厚みが20μmより大きいことが分かる。
以上の結果は、本発明の多層フィルムにより、NZ係数が0より大きく1未満であって、厚みの薄い光学フィルムを製造しうることを示す結果である。
100 多層フィルム
110 層(層(A))
110U 第一の表面
110D 第二の表面
120 層(層(B))

Claims (7)

  1. 結晶性を有する重合体(Pa)を含む固有複屈折が正である樹脂(a)からなる層(A)と、
    結晶性を有する重合体(Pb)を含む固有複屈折が正である樹脂(b)からなる層(B)とを含み、
    前記層(A)のNZ係数Nzaが下記式(1)を満たし、
    前記層(B)のNZ係数Nzbが下記式(2)を満たし、
    前記層(A)の厚み方向の複屈折Δna及び前記層(B)の厚み方向の複屈折Δnbが、下記式(3)を満たす、多層フィルム。
    Nza<0・・・(1)
    Nzb<0・・・(2)
    1<Δnb/Δna<10 (3)
  2. 前記結晶性を有する重合体(Pb)が、脂環式構造を含有する重合体である、請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記層(A)と前記層(B)とが直接する、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
  4. 前記層(A)の厚み方向におけるレターデーションRtha及び前記層(B)の厚み方向におけるレターデーションRthbが、下記式(4)を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
    1<Rthb/Rtha≦3・・・(4)
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の多層フィルムの製造方法であって、
    前記樹脂(a)からなる基材フィルムを用意する工程(1)と、
    前記基材フィルムの二つの表面のうち、少なくとも一つの表面上に、前記樹脂(b)及び溶媒を含む樹脂溶液を塗工して塗工層を形成する工程(2)と、
    前記塗工層を乾燥させて層(B)を形成し、前記多層フィルムを得る工程(3)と、
    を含む、多層フィルムの製造方法。
  6. 請求項1~4のいずれか一項に記載の多層フィルムを延伸して光学フィルムを得る工程を含む、光学フィルムの製造方法。
  7. 請求項1~4のいずれか一項に記載の多層フィルムの延伸体である、光学フィルム。
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