JP2024049134A - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カール量の小さい光学フィルムを製造できる、光学フィルムの製造方法。【解決手段】結晶性を有する重合体を含む樹脂を、押出成形してNZ係数Nz1を有するフィルム(a)を得る工程(1)、前記フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる工程(2)、及び前記溶剤を接触させた前記フィルム(a)を、鉛直方向上向きに搬送しながら乾燥して、NZ係数Nz2を有するフィルム(b)を得る工程(3-1)を、この順で含み、NZ係数Nz1及びNZ係数Nz2が、下記式(1)を満たす、光学フィルムの製造方法。Nz2-Nz1<0 (1)【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
結晶性を有する重合体を含む樹脂のフィルムの両表面に、溶剤を塗工して乾燥させて、光学フィルムを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
国際公開第2022/145152号
結晶性を有する重合体を含む樹脂からなる樹脂フィルムに溶剤を接触させると、得られる光学フィルムが大きくカールして、光学フィルムの搬送が困難になる場合がある。光学フィルムの搬送が困難になると、光学フィルムをその後の工程を行うための装置に連続的に供給することが困難となって、光学フィルムを含む製品を、効率的に製造することが困難となる場合がある。
したがって、カール量の小さい光学フィルムを製造できる、光学フィルムの製造方法が求められる。
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、溶剤を接触させたフィルムを、鉛直方向上向きに搬送しながら乾燥する工程を含む製造方法により、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1] 結晶性を有する重合体を含む樹脂を、押出成形してNZ係数Nz1を有するフィルム(a)を得る工程(1)、
前記フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる工程(2)、及び
前記溶剤を接触させた前記フィルム(a)を、鉛直方向上向きに搬送しながら乾燥して、NZ係数Nz2を有するフィルム(b)を得る工程(3-1)を、この順で含み、
NZ係数Nz1及びNZ係数Nz2が、下記式(1)を満たす、光学フィルムの製造方法。
Nz2-Nz1<0 (1)
[2] 前記工程(2)を、前記フィルム(a)の幅1000mm当たり150N以下の搬送張力で搬送しながら行う、[1]に記載の光学フィルムの製造方法。
[3] 前記結晶性を有する重合体を含む樹脂の固有複屈折値が、正である、[1]又は[2]に記載の光学フィルムの製造方法。
[4] 前記結晶性を有する重合体が、脂環式構造を含む重合体である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[5] 前記フィルム(b)を延伸する工程(4)を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[6] 前記光学フィルムのNZ係数が、0より大きく1未満である、[5]に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、カール量の小さい光学フィルムを製造できる、光学フィルムの製造方法を提供できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法を実施しうる装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。また、図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
以下の説明において、フィルム又は層の遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルム又は層の面内における遅相軸を表す。
以下の説明において、固有複屈折値が正の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも大きくなる材料を意味する。また、固有複屈折値が負の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも小さくなる材料を意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、層の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。さらに、層のNZ係数Nzは、別に断らない限り、Nz=(nx-nz)/(nx-ny)で表される値である。層のNZ係数Nzは、Nz=Rth/Re+0.5により算出されうる。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。測定装置としては、位相差計(例えば、AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」)を用いうる。
以下の説明において、要素又は操作の方向が「水平」、「鉛直」、「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°、±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
例えば、搬送方向が「水平」方向であるとは、搬送方向が、水平方向に対して、±5°、±3°、±2°又は±1°の範囲内で傾斜した方向であってもよい。
また例えば、搬送方向が「鉛直方向上向き」であるとは、搬送方向が、鉛直方向上向きに対して、±5°、±3°、±2°又は±1°の範囲内で傾斜した方向であってもよい。
[1.光学フィルムの製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、
結晶性を有する重合体を含む樹脂を、押出成形してNZ係数Nz1を有するフィルム(a)を得る工程(1)、
前記フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる工程(2)、及び
前記溶剤を接触させた前記フィルム(a)を、鉛直方向上向きに搬送しながら乾燥して、NZ係数Nz2を有するフィルム(b)を得る工程(3-1)を、この順で含み、
NZ係数Nz1及びNZ係数Nz2が、下記式(1)を満たす。
Nz2-Nz1<0 (1)
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法によれば、カール量が小さく、ハンドリング性に優れたフィルムを得られる。
[2.工程(1)]
工程(1)では、結晶性を有する重合体を含む樹脂を、押出成形してNZ係数Nz1を有するフィルム(a)を得る。
押出成形される結晶性を有する重合体を含む樹脂は、通常熱可塑性樹脂である。
「結晶性を有する重合体」とは、融点Tmを有する重合体を表す。すなわち、「結晶性を有する重合体」とは、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる重合体を表す。以下の説明において、結晶性を有する重合体を、「結晶性重合体」ということがある。また、結晶性重合体を含む樹脂を「結晶性樹脂」ということがある。
結晶性樹脂は、正の固有複屈折値を有することが好ましい。正の固有複屈折値を有する結晶性樹脂を用いることにより、所望の光学特性を有する光学フィルムを容易に製造しうる。
結晶性重合体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;等でもよく、特に限定されることはないが、脂環式構造を含有する重合体であることが好ましい。脂環式構造を含有する結晶性重合体を用いることにより、光学フィルムの機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性を良好にできる。脂環式構造を含有する重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体を表す。このような脂環式構造を含有する重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造を含有する結晶性重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、100重量%以下としうる。また、脂環式構造を含有する結晶性重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
脂環式構造を含有する結晶性重合体としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
具体的には、脂環式構造を含有する結晶性重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましい。中でも、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは100重量%の重合体をいう。
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、ラセモ・ダイアッドの割合が高いことが好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物における繰り返し単位のラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。ラセモ・ダイアッドの割合が高いことは、シンジオタクチック立体規則性が高いことを表す。よって、ラセモ・ダイアッドの割合が高いほど、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の融点が高い傾向がある。
ラセモ・ダイアッドの割合は、後述する実施例に記載の13C-NMRスペクトル分析に基づいて決定できる。
上記重合体(α)~重合体(δ)としては、国際公開第2018/062067号に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
結晶性重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する結晶性重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた光学フィルムを得ることができる。
通常、結晶性重合体は、ガラス転移温度Tgを有する。結晶性重合体の具体的なガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmは、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定しうる。
結晶性重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
結晶性重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性重合体は、成形加工性に優れる。
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
フィルム(a)に含まれる結晶性重合体の結晶化度は、小さいことが好ましい。具体的な結晶化度は、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、特に好ましくは3%未満である。有機溶剤に接触させる前のフィルム(a)に含まれる結晶性重合体の結晶化度が低いと、有機溶剤を接触させることにより、光学フィルムのNZ係数を制御することが、容易となる。
一方、光学フィルムに含まれる結晶性重合体の結晶化度は、特段の制限はないが、通常は、ある程度以上高い。
具体的な結晶化度の範囲は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは30%以上である。
結晶性重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。
結晶性重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
結晶性樹脂における結晶性重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性重合体の割合が前記範囲の下限値以上である場合、光学フィルムの耐熱性を高めることができる。結晶性重合体の割合の上限は、100重量%以下でありうる。
結晶性樹脂は、結晶性重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアゾール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー;及び、軟質重合体等の、結晶性重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
押出成形法は、溶融した樹脂をダイから押し出して成形し、所望の形状の樹脂成形体を得る方法であり、中でもTダイを用いるTダイ法が好ましい。
押出成形法による製造条件は、例えば下記のとおりである。
シリンダー温度(溶融樹脂温度)は、好ましくはTm以上、より好ましくは「Tm+20℃」以上であり、好ましくは「Tm+100℃」以下、より好ましくは「Tm+50℃」以下である。また、フィルム状に押し出された溶融樹脂が最初に接触する冷却体は特に限定されないが、通常はキャストロールを用いる。このキャストロール温度は、好ましくは「Tg-50℃」以上であり、好ましくは「Tg+70℃」以下、より好ましくは「Tg+40℃」以下である。さらに、冷却ロール温度は、好ましくは「Tg-70℃」以上、より好ましくは「Tg-50℃」以上であり、好ましくは「Tg+60℃」以下、より好ましくは「Tg+30℃」以下である。このような条件でフィルム(a)を製造する場合、厚み1μm~1mmのフィルム(a)を容易に製造できる。ここで、「Tm」は、結晶性重合体の融点を表し、「Tg」は結晶性重合体のガラス転移温度を表す。
フィルム(a)の厚みは、製造しようとする光学フィルムの厚みに応じて設定することが好ましい。通常、工程(2)でフィルム(a)に溶剤を接触させることにより、フィルムの厚みは大きくなる。他方、光学フィルムの製造方法が延伸工程を含む場合、延伸によってフィルムの厚みは小さくなる。したがって、前記のような工程(1)よりも後の工程における厚みの変化を考慮して、フィルム(a)の厚みを設定してもよい。
フィルム(a)の厚みは、例えば、25μm以上、例えば30μm以上、例えば90μm以下、例えば80μm以下としうる。
押出成形によれば、フィルム(a)の厚みを容易に制御しうる。
フィルム(a)は、枚葉のフィルムであってもよいが、長尺のフィルムであることが好ましい。長尺のフィルム(a)を用いることにより、ロール・トゥ・ロール法による光学フィルムの連続的な製造が可能であるので、光学フィルムの生産性を効果的に高めることができる。
フィルム(a)は、有機溶剤の含有量が小さいことが好ましく、有機溶剤を含まないことがより好ましい。フィルム(a)の重量100%に対する当該フィルム(a)に含まれる有機溶剤の比率(溶剤含有率)は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下であり、理想的には0.0%である。有機溶剤に接触させる前のフィルム(a)に含まれる有機溶剤の量が少ないことにより、工程(2)によって光学フィルムのNZ係数を制御することが、容易となる。
押出成形によれば、有機溶剤の含有量が小さい、通常有機溶剤を含まないフィルム(a)が得られうる。
フィルム(a)の溶剤含有率は、密度によって測定しうる。
フィルム(a)のNZ係数Nz1は、好ましくは0より大きく、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。
フィルム(a)のNZ係数Nz1が、前記範囲であることにより、光学フィルムのNZ係数を所望の範囲に調整することが容易となる。
[3.工程(2)]
工程(2)では、フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる。フィルム(a)の両面に溶剤を接触させることで、光学フィルムのカール量を低減し、ハンドリング性を向上しうる。
溶剤は、通常有機溶剤である。有機溶剤は、通常光学フィルムに残留する。接触させる有機溶剤としては、通常結晶性重合体を溶解しないものを用いうる。好ましい有機溶剤の例としては、トルエン、リモネン、デカリン等の炭化水素溶剤;二硫化炭素;が挙げられ、好ましくはトルエン及びリモネンである。有機溶剤の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
フィルム(a)の両面のそれぞれの上に接触させる溶剤は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。カール量を効果的に低減する観点からは、フィルム(a)の両面のそれぞれの上に接触させる溶剤は、互いに同一であることが好ましい。
フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる方法の例としては、フィルム(a)を溶剤中に浸漬する、浸漬法、及びフィルム(a)に溶剤を塗工する、塗工法が挙げられる。
塗工法の例としては、ワイヤーバーコート法、スプレー法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スライドコート法、及びエクストルージョンコート法が挙げられ、グラビアコート法及びダイコート法が好ましい。
フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる工程は、通常フィルム(a)を搬送しながら行う。フィルム(a)の搬送方向には特に限定がなく、例えば、水平方向、鉛直方向(上向き又は下向き)、水平方向でも鉛直方向でもない傾斜方向のいずれかであってよい。
フィルム(a)に塗工法で溶剤を接触させる場合、溶剤の塗工ムラを低減するために、フィルム(a)の搬送方向は、鉛直方向上向きとすることが好ましい。
また、フィルム(a)に塗工する溶剤の量は、フィルム(a)の両面のそれぞれにおいて、同一厚みの塗工層が得られる量とすることが好ましい。これにより、効果的に光学フィルムのカール量を低減しうる。
フィルム(a)に塗工法で溶剤を接触させる場合、フィルム(a)の両面への溶剤の塗工を、同時に行ってもよく、逐次に行ってもよい。フィルム(a)の両面のそれぞれに塗工された溶剤の乾燥度合いを同じとするために、フィルム(a)の両面への溶剤の塗工を、同時に行うことが好ましい。
フィルム(a)の両面への溶剤の塗工を、逐次に行う場合、工程(2)は、フィルム(a)の一方の面に溶剤へ塗工する工程(2a)及びフィルム(a)の他方の面に溶剤を塗工する工程(2b)を含む。
フィルム(a)の両面への溶剤の塗工を、逐次に行う場合、フィルム(a)の一方の面への溶剤の塗工位置と、フィルム(a)の他方の面への溶剤の塗工位置との距離は、好ましくは5m以下、より好ましくは1m以下、更に好ましくは0.5m以下、更に好ましくは0.3m以下である。これにより、フィルム(a)の両面のそれぞれに塗工された溶剤の乾燥度合いを同程度としうる。
フィルム(a)に浸漬法で溶剤を接触させる場合、フィルム(a)の搬送方向は任意である。例えば、フィルム(a)の搬送方向は、鉛直方向上向き又は鉛直方向下向きとしてよい。
フィルム(a)の溶剤への浸漬時間は、好ましくは300秒以下、より好ましくは120秒以下、更に好ましくは60秒以下、更に好ましくは30秒以下、更に好ましくは10秒以下、更に好ましくは5秒以下であり、通常0秒より長い。これにより、フィルム(a)の延びを効果的に抑制しつつ、光学フィルムのNZ係数を所望の範囲に調整しうる。
工程(2)におけるフィルム(a)の搬送張力は、フィルム(a)の幅1000mm当たりとして、好ましくは150N以下、より好ましくは100N以下、更に好ましくは50N以下であり、通常0Nより大きいが、0Nに近いほうが好ましい。
工程(2)におけるフィルム(a)の搬送張力が前記範囲内にある場合、光学フィルムの意図されない伸びを低減しうる。光学フィルムの延びは、光学フィルムの収縮率Rsに基づき評価できる。収縮率Rsは、フィルム(a)の幅Wa、光学フィルム(光学フィルムが延伸されたフィルムである場合には、延伸される前のフィルム)の幅Wb’より、下記の式に従い算出できる。収縮率Rsが大きいほど、光学フィルムの搬送方向における伸びが大きい。
Rs={(Wa-Wb’)/Wa}×100(%)
[4.工程(3-1)]
工程(3-1)では、前記溶剤を接触させた前記フィルム(a)を、鉛直方向上向きに搬送しながら乾燥して、NZ係数Nz2を有するフィルム(b)を得る。ここで、NZ係数Nz1及びNZ係数Nz2は、下記式(1)を満たす。
Nz2-Nz1<0 (1)
フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる工程(2)の後、乾燥させることで、フィルム(a)に溶剤が一定量侵入し、かつ、フィルム(a)に浸入せずにフィルム(a)の表面に残った溶剤が除去される。
フィルム(a)に溶剤が侵入することで、厚み方向の屈折率が変化し、式(1)を満たすフィルム(b)を得ることができる。
フィルム(a)の厚み方向の屈折率が変化する理由は、下記のように推察されるが、本発明を限定するものではない。
フィルムの(a)の両面上に溶剤を接触させた後、フィルム(a)を乾燥させる間に、その溶剤がフィルム(a)中に浸入する。浸入した溶剤の作用により、フィルム(a)中の結晶性重合体の分子にミクロブラウン運動が生じ、フィルム(a)の分子鎖が配向すると考えられる。
ところで、フィルム(a)の表面積は、主表面であるオモテ面及びウラ面が大きい。よって、溶剤の浸入速度は、前記のオモテ面又はウラ面を通った厚み方向への浸入速度が、大きい。そうすると、前記の結晶性重合体の分子鎖の配向は、当該重合体の分子が厚み方向に配向するように進行しうる。このように結晶性重合体の分子が厚み方向に配向することにより、フィルム(a)の厚み方向の屈折率が変化しうる。その結果、式(1)を満たすフィルム(b)が得られると考えられる。
工程(3-1)において、フィルム(a)を鉛直方向上向きに搬送することで、光学フィルムのカール量を低減させハンドリング性を向上させる理由は、下記のように推察されるが、本発明を限定するものではない。
工程(3-1)において、フィルム(a)を鉛直方向上向きに搬送すると、フィルム(a)の表面に残る溶剤の量は、フィルム(a)の一方の面と他方の面とで、同程度となると考えられる。フィルム(b)のNZ係数Nz2が式(1)を満たすようになるまで、フィルム(a)を乾燥させる場合、フィルム(b)の一方の面と他方の面とで、溶剤の除去量が同程度となると考えられる。その結果、フィルム(b)の一方の面側と他方の面側とで、フィルム(b)に浸入している溶剤の量も同程度となって、収縮率などの物性の差が極めて小さくなり、フィルム(b)又はフィルム(b)から得られるフィルムのカール量が低減されると考えられる。
一方、フィルム(a)を鉛直方向上向きではない、傾斜方向又は水平方向に搬送すると、フィルム(a)の表面に残る溶剤の量は、フィルム(a)の一方の面と他方の面とで、異なり得る。フィルム(b)のNZ係数Nz2が、式(1)を満たすようになるまで、フィルム(a)を乾燥させる場合、フィルム(b)の一方の面と他方の面とで、溶剤の除去量が異なり得る。その結果、フィルム(b)の一方の面側と他方の面側とで、フィルム(b)に浸入する溶剤の量に差が生じて、収縮率などの物性の差が生じ、カール量が大きくなると考えられる。
工程(3-1)における乾燥の方法は任意であり、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、これらの組み合わせであってもよい。工程(3-1)における乾燥は、工程(2)においてフィルム(a)に接触させた溶剤であって、フィルム(a)に浸入せずにフィルム(a)の表面に残った溶剤を除去することを含む。
工程(3-1)における乾燥は、溶剤を接触させたフィルム(a)中に浸入した溶剤の少なくとも一部を除去する程度まで行ってもよく、溶剤を接触させたフィルム(a)の表面に付着した溶剤の液滴が、観察されなくなる程度までであってもよい。
工程(3-1)における乾燥の際の温度は、通常室温以上であり、通常5℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは23℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
乾燥時間は、乾燥温度に応じて調整できるが、例えば、好ましくは0.5分以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上であり、例えば40分以下である。
式(1)は、溶剤を接触させる前のフィルム(a)のNZ係数Nz1よりも、フィルム(a)に溶剤を接触させ乾燥させて得られたフィルム(b)のNZ係数Nz2が小さいことを示す。
フィルム(b)のNZ係数Nz2は、好ましくは0未満、より好ましくは-2以下、更に好ましくは-5以下、更に好ましくは-10以下であり、例えば、-1000以上であってもよい。フィルム(b)のNZ係数が前記範囲となるように工程(3-1)の乾燥を行うことで、光学フィルムのカール量を効果的に低減できる。フィルム(b)のNZ係数Nz2は、工程(3-1)の乾燥時間を調整することにより調整することができる。
フィルム(a)のNZ係数Nz1とフィルム(b)のNZ係数Nz2との差の絶対値|Nz1-Nz2|は、通常0より大きく、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは5以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは300以下である。絶対値|Nz1-Nz2|が前記範囲となるように工程(3-1)の乾燥を行うことで、光学フィルムのカール量を効果的に低減できる。絶対値|Nz1-Nz2|は、工程(3-1)の乾燥時間を調整することにより調整することができる。
工程(3-1)により得られるフィルム(b)が、所望の光学特性を有する場合は、フィルム(b)を光学フィルムとしてもよく、フィルム(b)に対して更に任意の工程を実施して得られるフィルム(例えば、下記のフィルム(b’))を、光学フィルムとしてもよい。
[5.任意の工程]
本実施形態の光学フィルムの製造方法は、前記の工程(1)、工程(2)、工程(3-1)に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
任意の工程の例としては、フィルム(a)を鉛直方向上向きに搬送しながら乾燥してフィルム(b)を得る工程(3-1)の後、さらに、フィルム(a)を鉛直方向上向き以外の任意の方向(鉛直方向下向き、水平方向又は傾斜方向)に搬送しながらフィルム(b)を乾燥させる工程(3-2);フィルム(b)を延伸する工程(4);光学フィルムを巻き取る工程;光学フィルムを切断する工程が挙げられる。
[5.1.工程(3-2)]
工程(3-2)は、通常工程(3-1)の後に行われる。工程(3-2)では、鉛直方向上向き以外の任意の方向に、フィルム(b)を搬送しながらフィルム(b)を乾燥して、フィルム(b’)を得る。
工程(3-2)における乾燥の方法は任意であり、工程(3-1)における乾燥方法の例と同様の例が挙げられる。工程(3-1)における乾燥方法は、加熱乾燥、減圧乾燥、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
工程(3-2)における乾燥の温度は、特に限定されないが、好ましくは23℃以上、より好ましくは40℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
一実施形態では、工程(3-2)における乾燥は、好ましくは40℃以上200℃以下の温度のオーブン中で、フィルム(b)を水平方向に搬送しながら加熱して行う。
フィルム(b’)のNZ係数Nz3は、好ましくは-0.5以下、より好ましくは-0.8以下、更に好ましくは-1.0以下であり、好ましくは-500以上、より好ましくは-300以上、更に好ましくは-200以上である。NZ係数Nz3が前記範囲内であると、工程(3-1)を経たフィルム(例えば、フィルム(b’))を延伸して得られるフィルムのNZ係数を、容易に所望の範囲内に収めることができる。
[5.2.工程(4)]
工程(4)は、通常工程(3-1)の後に行われる。
工程(4)では、フィルム(b)を延伸する。延伸するフィルムは、工程(3-1)で得られるフィルム(b)であってもよく、工程(3-1)に更に任意の工程を実施して得られるフィルム(b)であってもよい。したがって、工程(4)で延伸されるフィルム(b)は、工程(3-1)及び工程(3-2)を経たフィルム(b)(例えば、前記のフィルム(b’))でありうる。
延伸により、フィルム(b)に含まれる結晶性重合体の分子を延伸方向に応じた方向に配向させて、フィルム(b)の複屈折を変化させることができる。よって、工程(4)によれば、フィルム(b)のNZ係数等の光学特性;及び、厚みdを調整することができる。
延伸方向に制限はなく、例えば、長手方向、幅方向、斜め方向などが挙げられる。ここで、斜め方向とは、厚み方向に対して垂直な方向であって、幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を表す。また、延伸方向は、一方向でもよく、二以上の方向でもよい。よって、延伸方法としては、例えば、フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法等の、二軸延伸法;フィルムを斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);などが挙げられる。
一軸延伸法の別の例としては、フィルムの端部を固定して行う、固定一軸延伸法、フィルムの端部を固定せずに行う、自由一軸延伸法が挙げられる。
延伸により、光学フィルムに容易に所望とするNZ係数を発現させる観点から、工程(4)における延伸は、一軸延伸法が好ましい。
延伸倍率は、好ましくは1倍以上、より好ましくは1.01倍以上であり、好ましくは1.9倍以下、より好ましくは1.8倍以下である。具体的な延伸倍率は、延伸するフィルム(b)の光学特性、厚み、強度などの要素に応じて適切に設定することが望ましい。
延伸倍率が前記範囲の下限値以上である場合、延伸によって複屈折を大きく変化させることができる。また、延伸倍率が前記範囲の上限値以下である場合、遅相軸の方向を容易に制御したり、フィルムの破断を効果的に抑制したりできる。
延伸温度は、好ましくは「Tg+5℃」以上、より好ましくは「Tg+10℃」以上であり、好ましくは「Tg+100℃」以下、より好ましくは「Tg+90℃」以下である。ここで、「Tg」は結晶性重合体のガラス転移温度を表す。延伸温度が前記範囲の下限値以上である場合、フィルム(b)を十分に軟化させて延伸を均一に行うことができる。また、延伸温度が前記範囲の上限値以下である場合、結晶性重合体の結晶化の進行によるフィルム(b)の硬化を抑制できるので、延伸を円滑に行うことができる。また、延伸によって複屈折を大きく変化させうる。さらに、通常は、延伸後に得られるフィルムのヘイズを小さくして透明性を高めることができる。
前記の延伸処理を施すことにより、フィルム(c)を得ることができる。前記のように、工程(4)での延伸によって複屈折が変化しうるので、フィルム(c)のNZ係数の調整を行うことができる。
工程(4)は、フィルム(b)を延伸する工程(工程(4b)とする。)に加えて、更に下記工程のいずれかを含んでいてもよい。
工程(4a):フィルム(b)を予熱する工程。
工程(4c):フィルム(b)を熱処理する工程。
工程(4d):フィルム(c)を冷却する工程。
工程(4)が工程(4a)を含む場合、工程(4a)は通常工程(4b)の前に行われる。
工程(4)が工程(4c)を含む場合、工程(4c)は通常工程(4b)の後に行われる。
工程(4)が工程(4d)を含む場合、工程(4d)は、通常工程(4a)~(4c)の後に行われる。
熱処理により、延伸されたフィルム(b)に含まれる結晶性重合体の結晶化を進行させうる。よって、工程(4c)により、光学フィルムの耐熱性を向上させうる。
熱処理温度は、通常、結晶性重合体のガラス転移温度Tg以上、結晶性重合体の融点Tm以下である。より詳細には、熱処理温度は、好ましくはTg℃以上、より好ましくはTg+10℃以上であり、好ましくはTm-20℃以下、より好ましくはTm-40℃以下である。前記の温度範囲では、結晶化の進行による白濁を抑制しながら、速やかに結晶性重合体の結晶化を進行させることができる。
熱処理の処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下である。
工程(4a)における予熱温度は、通常、工程(4b)における延伸温度と同じであるが、異なっていてもよい。予熱温度は、延伸温度T1に対し、好ましくはT1-60℃以上、より好ましくはT1-10℃以上、更に好ましくはT1-5℃以上であり、好ましくはT1+50℃以下、より好ましくはT1+40℃以下、更に好ましくはT1+30℃以下又はT1+5℃以下又はT1+2℃以下である。予熱時間は任意であり、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上でありえ、また、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下でありえる。
工程(4d)における冷却温度は、工程(4d)の前に行われる工程(工程(4b)又は工程(4c))における加熱温度よりも低く設定される。冷却時間は任意であり、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上でありえ、また、好ましくは30秒以下、より好ましくは20秒以下でありえる。
一実施形態において、光学フィルムの製造方法は、工程(4)を含むことが好ましい。
工程(4)後の光学フィルムには残留応力が含まれうる。そこで、光学フィルムの製造方法は、例えば、延伸後のフィルムを熱収縮させて残留応力を除去する緩和処理を行う工程を含んでいてもよい。緩和処理では、通常、延伸されたフィルムを平坦に維持しながら、適切な温度範囲でフィルムに熱収縮を生じさせることで、残留応力を除去できる。
[6.光学フィルムの製造装置]
本実施形態の光学フィルムの製造方法は、任意の製造装置により実施しうる。
以下、図を用いて光学フィルムの製造装置の一例を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法を実施しうる装置の一例を示す模式図である。
図1に示すとおり、光学フィルムの製造装置100は、巻き出し装置101、グラビアコーター102a,102b、加熱乾燥装置103、延伸装置104、搬送ロール105,106、巻き取り装置107を備える。巻き出し装置101からフィルム1aが巻き出され、搬送ロール105により搬送方向が、鉛直方向上向きに変更され、そのままフィルム1aは鉛直方向上向きにグラビアコーター102a、102bへ搬送される。グラビアコーター102a,102bにより、フィルム1aの両面に溶剤が塗工されて、工程(2)の溶剤接触工程が行われる。フィルム1aに溶剤が塗工された後、フィルム1aは、そのまま鉛直方向上向きに搬送されて、自然乾燥ゾーンZ1で室温で自然乾燥されて、工程(3-1)が行われる。自然乾燥されたフィルム1bは、搬送ロール106により搬送方向が水平方向に変更され、加熱乾燥装置103を通過して、工程(3-2)が行われる。加熱乾燥装置103を通過したフィルム1b’は、延伸装置104により延伸され、工程(4)が行われ、光学フィルムとしてのフィルム1cが製造される。フィルム1cは、巻き取り装置107により巻き取られる。
図示されないが、結晶性を有する重合体を含む樹脂は、溶融押出装置により溶融押出されてフィルム状に成形され、次いで冷却ロールにより冷却されて、フィルム1aが製造され(工程(1))、巻き取られてロールの形態とされた後、巻き出し装置101に取り付けられる。
[7.本実施形態の製造方法により得られうる光学フィルム]
本実施形態の製造方法により、光学フィルムを得うる。前記のとおり、光学フィルムは、工程(3-1)において得られうるフィルム(b)そのものであってもよく、工程(3-1)において得られうるフィルム(b)に、更に工程(3-2)、工程(4)などの任意の工程を施して得られるフィルムであってもよい。
本実施形態の製造方法により得られうる光学フィルムのNZ係数Nzは、好ましくは0より大きく、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、好ましくは1未満、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。
NZ係数Nzが前記範囲内の光学フィルムは、好ましくは表示装置に設けられて、表示装置に表示される画像の視野角、コントラスト、画質などの表示品質を改善しうる。
光学フィルムの厚みは、光学フィルムの用途に応じて適切に設定できる。光学フィルムの厚みdは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下である。光学フィルムの厚みdが前記範囲の下限値以上である場合、ハンドリング性を良好にしたり、強度を高くしたりできる。また、光学フィルムの厚みdが上限値以下である場合、長尺の光学フィルムの巻取りが容易である。
光学フィルムは、枚葉のフィルムであってもよく、長尺のフィルムであってもよい。通常、光学フィルムは長尺のフィルムとして製造される。長尺の光学フィルムは、ロール・トゥ・ロール法を用いて効率的に他の長尺の光学要素と組み合わされうる。したがって、光学フィルムは、長尺であることが好ましい。
光学フィルムは、高い透明性を有することが好ましい。光学フィルムの具体的な全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。光学フィルムの全光線透過率は、通常100%以下である。光学フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定しうる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(20℃±15℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
[評価方法]
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMRにより測定した。
(ガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定方法)
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定は、以下のようにして行った。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷した。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定した。
(固有複屈折値の符号の確認)
測定対象のフィルムを50mm×150mmの寸法にカットしてフィルム片を得た。測定装置として、恒温恒湿槽付の引張試験機(インストロン社製「5564型」)を用いて、フィルム片を自由一軸延伸した。延伸温度は、(フィルムを形成する樹脂のTg+15℃)、引張速度は、1.5倍/minとした。
その後、AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」により延伸したフィルム片の遅相軸方向を決定し、延伸方向と遅相軸方向とが平行である場合に、フィルム片を構成する樹脂の固有複屈折値が正であるとし、延伸方向と遅相軸方向とが垂直である場合に、フィルム片を構成する樹脂の固有複屈折値が負であるとした。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定は以下のようにして行った。オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(NZ係数の測定方法)
AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」によりフィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを測定し、その結果からNZ係数Nzを、式:Nz=Rth/Re+0.5に従い算出した。この際、測定は、波長590nmで行った。
(フィルムの厚みの測定方法)
フィルムの厚みは、接触式厚さ計(MITUTOYO社製 Code No.543-390)を用いて測定した。
(ハンドリング性(カール))
フィルムを平板上に置き、フィルムの幅方向端からフィルムの幅方向内側1cmまでのフィルム端部と、平板とのなす角度θを測定した。
以下の評価基準に従って、光学フィルム(フィルム(b’))のハンドリング性(カールの程度)を評価した。
良:0°≦θ<30°
可:30°≦θ<60°
不良:60°≦θ<90°
悪い:90°≦θ
θが0°に近いほど、フィルムのカール量が小さく、フィルムのハンドリング性は優れている。θが90°以上である場合は、フィルムが折れ曲がるため搬送が困難であった。
(フィルムの伸び)
フィルム(a)の幅を測定し、Waとした。フィルム(b’)の幅を測定し、Wb’とした。フィルムの収縮率Rs(%)を、式:Rs={(Wa-Wb’)/Wa}×100(%)により算出し、下記の基準により評価した。
小:Rs<5%
中:5%≦Rs<10%
大:10%≦Rs
[製造例1.結晶性樹脂Aの製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解し、溶液を調製した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750及び28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は267℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM-37B」、東芝機械社製)に投入した。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物及び酸化防止剤の混合物を、熱溶融押出し成形によりストランド状に成形した後、ストランドカッターにて細断して、ペレット形状の結晶性樹脂Aを得た。前記の二軸押出し機の運転条件は、以下のとおりであった。
・バレル設定温度=270~280℃
・ダイ設定温度=250℃
・スクリュー回転数=145rpm
[実施例1]
(1-1.工程(1):結晶性樹脂Aからなるフィルムの製造)
製造例1で製造した結晶性樹脂Aを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機を用いて成形し、およそ幅400mmの、長尺のフィルム(a)としての押出フィルム(厚み38μm)を得た。得られた押出フィルムを、巻き取ってロールの形態とした。フィルム(a)の評価結果は下表に記載のとおりであった。またフィルム(a)を用いて、結晶性樹脂Aの固有複屈折値の符号を確認した結果、結晶性樹脂Aの固有複屈折値の符号は、「正」であった。
前記のフィルム成形機の運転条件は、以下のとおりであった。
・バレル設定温度=280℃~300℃
・ダイ温度=270℃
・キャストロール温度=80℃
(1-2.工程(2):溶剤接触工程)
(1-1)で作製したフィルム(a)としての押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、搬送張力をフィルム(a)の幅1000mm当たり100Nとして搬送しながら、溶剤としてのトルエンで満たされた浴槽にフィルムを浸漬させ、そののち浸漬したフィルムを鉛直方向上向き(上方向)に搬送した。フィルム(a)が当該浴槽中を通過する時間(すなわち、フィルム(a)が溶剤に接触する時間)は5秒間であった。
(1-3.工程(3-1):初期乾燥工程)
塗工後、フィルムをそのまま鉛直方向上向きに1m/minの速度で2m搬送しフィルムの表面上に溶剤の液滴がなくなるまで室温(23℃)で自然乾燥して初期乾燥工程を行い、フィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(1-4.工程(3-2):加熱乾燥工程)
その後、フィルム(b)の搬送方向を水平方向に変更し、フィルム(b)を100℃のオーブンを通過させて、加熱乾燥を実施し、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。得られたフィルム(b’)について、前記の方法によりNZ係数Nz3、ハンドリング性、及びフィルム伸びを評価した。
(1-5.工程(4):延伸工程)
フィルム(b’)をテンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、横方向に1.5倍に固定一軸延伸し、光学フィルムとしてのフィルム(c)を作製した。延伸を、(4a):フィルム(b’)を110℃に予熱し、次いで;(4b):予熱されたフィルム(b’)を110℃で延伸し、次いで;(4c):延伸されたフィルム(b’)を緊張させた状態で、温度170℃で保持して結晶化を促進させ、次いで;(4d):結晶化が促進されたフィルム(b’)を室温(23℃)で冷却する;ことにより実施した。
得られたフィルム(c)について、前記の方法により、NZ係数を評価した。
[実施例2]
(1-2)において、溶剤としてトルエンの代わりにリモネンを用いた。
(1-4)において、オーブンの温度を40℃とした。
(1-5)において、延伸倍率を1.75倍に変更した。延伸を、(4a):フィルム(b’)を130℃に予熱し、次いで;(4b):予熱されたフィルム(b’)を130℃で延伸し、次いで;(4c):延伸されたフィルム(b’)を緊張させた状態で、温度130℃で保持して結晶化を促進させ、次いで;(4d):結晶化が促進されたフィルム(b’)を室温(23℃)で冷却する;ことにより実施した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、フィルム(c)を得て、評価した。
[実施例3]
(1-2)において、溶剤としてトルエンの代わりにリモネンを用いた。また、搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり200Nとした。
(1-4)において、オーブンの温度を180℃とした。
(1-5)において、延伸倍率を1.2倍に変更した。延伸を、(4a):フィルム(b’)を140℃に予熱し、次いで;(4b):予熱されたフィルム(b’)を140℃で延伸し、次いで;(4c):延伸されたフィルム(b’)を緊張させた状態で、温度140℃で保持して結晶化を促進させ、次いで;(4d):結晶化が促進されたフィルム(b’)を室温(23℃)で冷却する;ことにより実施した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、フィルム(c)を得て、評価した。
[実施例4]
(4-1.工程(1):結晶性樹脂Aからなるフィルムの製造)
実施例1の(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(4-2.工程(2):溶剤接触工程)
フィルム(a)としての押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、押出フィルムを鉛直方向上向き(上方向)に搬送したのち、押出フィルムの両面上にマイクログラビアコーターで溶剤を塗工した。
塗工は、下記の手順にて行った。
押出フィルムを鉛直方向上向きに搬送しながら、押出フィルムの両面のそれぞれに対向して配置された第一のマイクログラビアコーター及び第二のマイクログラビアコーターにより、押出フィルムの両面上に、溶剤としてリモネンを塗工した。塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり100Nとした。
(4-3.工程(3-1):初期乾燥工程)
塗工後、フィルムをそのまま鉛直方向上向きに1m/minの速度で2m搬送し、フィルムの表面上に溶剤の液滴がなくなるまで室温(23℃)で自然乾燥してフィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(4-4.工程(3-2):加熱乾燥工程)
その後、フィルム(b)の搬送方向を水平方向に変更し、フィルム(b)を40℃のオーブンを通過させて、加熱乾燥を実施し、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。フィルム(b’)の評価結果は下表に記載のとおりであった。
(4-5.工程(4):延伸工程)
フィルム(b’)を自由一軸延伸して、光学フィルムとしてのフィルム(c)を得た。自由一軸延伸は、下記方法に従って行った。
延伸機として、予熱ロールを4本、延伸ロールを2本、及び冷却ロールを2本を、この順で備えるロール縦延伸機を用いた。このロール縦延伸機は、2本の延伸ロールの回転速度に差を設けることにより、延伸を行う装置である。4本の予熱ロールの温度はすべて100℃に設定した。2本の延伸ロールの温度はすべて140℃に設定した。2本の冷却ロールの温度はすべて60℃に設定した。2本の延伸ロールの回転速度をそれぞれ調整して、フィルム(b’)を倍率1.2倍に縦一軸延伸した。
得られたフィルム(c)について、前記の方法により、NZ係数Nzを評価した。
[実施例5]
(4-2)において、塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり200Nとした。
以上の事項以外は、実施例4と同様に操作して、フィルム(c)を得て、評価した。
[実施例6]
(6-1.工程(1))
(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(6-2.工程(2):溶剤接触工程)
フィルム(a)としての押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、押出フィルムを鉛直方向上向きに搬送しながら、押出フィルムの両面上にマイクログラビアコーターで溶剤としてのリモネンを塗工した。塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり100Nとした。
塗工は、下記の手順にて行った。
まず押出フィルムの一方の面に、当該一方の面に対向して配置された第一のマイクログラコーターにより溶剤を塗工した。
次いで、第一のマイクログラビアコーターから押出フィルムの搬送方向のおよそ50cm下流において、押出フィルムの他方の面に、当該他方の面に対向して配置された第二のマイクログラビアコーターにより溶剤を塗工した。
(6-3.工程(3-1):初期乾燥工程)
塗工後、フィルムをそのまま鉛直方向上向きに1m/minの速度で2m搬送しながら、フィルムの表面上に溶剤の液滴がなくなるまで室温(23℃)で自然乾燥してフィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(6-4.工程(3-2):加熱乾燥工程)
その後、フィルム(b)の搬送方向を水平方向に変更し、フィルム(b)を40℃のオーブンを通過させて、加熱乾燥を実施し、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。フィルム(b’)の評価結果は下表に記載のとおりであった。
(6-5.工程(4):延伸工程)
フィルム(b’)を実施例4の(4-5)と同様の操作にて自由一軸延伸して、光学フィルムとしてのフィルム(c)を得て、評価した。
[比較例1]
(C1-1.熱可塑性樹脂Aからなるフィルムの製造)
(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(C1-2.溶剤接触工程)
押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、搬送張力をフィルム(a)の幅1000mm当たり100Nとして搬送しながら、溶剤としてのトルエンで満たされた浴槽中を通過させることにより、フィルム(a)をトルエンに浸漬した。フィルム(a)が当該浴槽中を通過する時間(すなわち、フィルム(a)がトルエンに接触する時間)は5秒間であった。
(C1-3.初期乾燥工程)
次いで、当該浴槽中を通過させたフィルム(a)を、水平方向に1m/minの速度で4m搬送しながら室温(23℃)で自然乾燥して、フィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(C1-4.加熱乾燥工程)
次いで、フィルム(b)を100℃のオーブンを通過させて、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。フィルム(b’)の評価結果は下表に記載のとおりであった。
(C1-5.延伸工程)
得られたフィルム(b’)を、実施例1の(1-5)と同様の操作にて延伸し、フィルム(c)を得て、評価した。
[比較例2]
(C1-2)において、搬送張力をフィルム(a)の幅1000mm当たり200Nとして搬送しながら、フィルム(a)をトルエンに浸漬した。
以上の事項以外は、比較例1と同様に操作して、フィルム(c)を得て、評価した。
[比較例3]
(C3-1.熱可塑性樹脂Aからなるフィルムの製造)
(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(C3-2.溶剤接触工程)
フィルム(a)としての押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、押出フィルムの両面上にダイコーターで溶剤としてのリモネンを塗工した。塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり100Nとした。
塗工は、下記の手順にて行った。
押出フィルムのロールから、押出フィルムを水平方向に繰り出しながら、押出フィルムの両面のそれぞれに対向して配置された第一のダイコーター及び第二のダイコーターにより、押出フィルムの両面上に溶剤を塗工した。第一のダイコーターのリップと、第二のダイコーターのリップとを、押出フィルムを介して対向するように配置し、押出フィルムの両面上に、同時に溶剤を塗工するようにした。
(C3-3.初期乾燥工程)
塗工後、フィルムを水平方向に搬送し、1m/minの速度で4m搬送しながら室温(23℃)で自然乾燥して、フィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(C3-4.加熱乾燥工程)
フィルム(b)を水平方向に搬送しながら40℃のオーブン内で2分間加熱乾燥し、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。フィルム(b’)の評価結果は下表に記載のとおりであった。
(C3-5.延伸工程)
得られたフィルム(b’)を、実施例4の(4-5)と同様の操作にて延伸し、フィルム(c)を得て、評価した。
[比較例4]
(C4-1.熱可塑性樹脂Aからなるフィルムの製造)
(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(C4-2.溶剤接触工程)
(C3-2)において、溶剤をリモネンからトルエンに変更した。また、塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり200Nとした。
以上の事項以外は比較例3の(C3-2)と同様に操作して、溶剤が両面上に塗工されたフィルムを得た。
(C4-3.初期乾燥工程)
(C4-2)で得られたフィルムから、比較例3の(C3-3)と同様に操作して、フィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(C4-4.加熱乾燥工程)
(C3-4)において、オーブンの温度を100℃に変更した。
以上の事項以外は比較例3の(C3-3)と同様に操作して、フィルム(b’)を得た。
(C4-5.延伸工程)
(C4-4)で得られたフィルム(b’)から、下記操作によりフィルム(c)を得て、評価した。
(4-5)において、2本の延伸ロールの温度をすべて160℃に設定した。2本の延伸ロールの回転速度をそれぞれ調整して、フィルム(b’)を倍率1.1倍に縦一軸延伸した。
以上の事項以外は、実施例4の(4-5)と同様に操作した。
[比較例5]
(C5-1.熱可塑性樹脂Aからなるフィルムの製造)
(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(C5-2.溶剤接触工程)
押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、押出フィルムを水平方向に搬送しながら、押出フィルムの両面上にダイコーターで溶剤としてのトルエンを塗工した。塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり100Nとした。
塗工は、下記の手順にて行った。
まず押出フィルムの一方の面に第一のダイコーターにより溶剤を塗工した。
第一のダイコーターから押出フィルムの搬送方向のおよそ1.5m下流において押出フィルムの他方の面に第二のダイコーターにより溶剤を塗工した。
(C5-3.初期乾燥工程)
塗工後、フィルムを水平に1m/minの速度で4m搬送しながら室温(23℃)で自然乾燥して、フィルム(b)を得た。
(C5-4.加熱乾燥工程)
次いで、フィルム(b)を100℃のオーブン内で2分間加熱乾燥し、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。フィルム(b’)の評価結果は下表に記載のとおりであった。
(C5-5.延伸工程)
(C5-4)で得られたフィルム(b’)から、下記操作によりフィルム(c)を得て、評価した。
(4-5)において、2本の延伸ロールの温度をすべて160℃に設定した。2本の延伸ロールの回転速度をそれぞれ調整して、フィルム(b’)を倍率1.1倍に縦一軸延伸した。
以上の事項以外は、実施例4の(4-5)と同様に操作した。
[比較例6]
(C5-2)において、塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり200Nとした。
以上の事項以外は、比較例5と同様に操作して、フィルム(c)を得て、評価した。
[比較例7]
(C7-1.熱可塑性樹脂Aからなるフィルムの製造)
(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(C7-2.溶剤接触工程)
フィルム(a)としての押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、押出フィルムを鉛直方向上向きに搬送しながら、押出フィルムの片面上にマイクログラビアコーターで溶剤としてのリモネンを塗工した。塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり100Nとした。
(C7-3.初期乾燥工程)
塗工後、フィルムをそのまま鉛直方向上向きに1m/minの速度で2m搬送しながら、フィルムの表面上に溶剤の液滴がなくなるまで室温(23℃)で自然乾燥してフィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(C7-4.加熱乾燥工程)
その後、フィルム(b)の搬送方向を水平方向に変更し、フィルム(b)を40℃のオーブンを通過させて、加熱乾燥を実施し、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。フィルム(b’)の評価結果は下表に記載のとおりであった。
(C7-5.延伸工程)
フィルム(b’)を実施例4の(4-5)と同様の操作にて自由一軸延伸して、光学フィルムとしてのフィルム(c)を得て、評価した。
[比較例8]
(C8-1.熱可塑性樹脂Aからなるフィルムの製造)
(1-1)と同様に操作して、フィルム(a)としての押出フィルムを得た。
(C8-2.溶剤接触工程)
フィルム(a)としての押出フィルムのロールから、押出フィルムを繰り出し、押出フィルムを水平方向に搬送しながら、押出フィルムの片面上にダイコーターで溶剤としてのトルエンを塗工した。塗工の際の搬送張力を、フィルム(a)の幅1000mm当たり200Nとした。
(C8-3.初期乾燥工程)
塗工後、フィルムを水平方向に搬送し、1m/minの速度で4m搬送しながら室温(23℃)で自然乾燥してフィルム(b)を得た。フィルム(b)のNZ係数Nz2を前記の方法により測定した。
(C8-4.加熱乾燥工程)
その後、フィルム(b)を100℃のオーブンを通過させて、加熱乾燥を実施し、長尺のフィルム(b’)を得た。得られたフィルム(b’)を巻き取って、ロールの形態とした。フィルム(b’)の評価結果は下表に記載のとおりであった。
(C8-5.延伸工程)
2本の延伸ロールの回転速度をそれぞれ調整して、フィルム(b’)を倍率1.5倍に縦一軸延伸した。
以上の事項以外は、実施例4の(4-5)と同様に操作した。
[結果]
結果を下表に示す。
下表における略号は、下記の意味を表す。
A:製造例1で製造された結晶性樹脂A(ジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物)
Nz1:フィルム(a)のNZ係数
両面(同時):両面に同時に溶剤を塗工
両面(逐次):両面に逐次に溶剤を塗工
片面:片面に溶剤を塗工
Nz2:フィルム(b)のNZ係数
Nz3:フィルム(b’)のNZ係数
固定一軸:固定一軸延伸
自由一軸:自由一軸延伸
Figure 2024049134000002
Figure 2024049134000003
Figure 2024049134000004
以上の結果より、以下の事項が分かる。
工程(2)において、フィルムの両面に溶剤を接触させ、かつ、工程(3-1)において、鉛直方向上向きにフィルムを搬送した実施例では、工程(3-2)で得られたフィルム(b’)のカール量の評価が「良」又は「可」であり、ハンドリング性に優れた光学フィルムを製造することができる。
一方、工程(2)において、比較例7、8では、フィルムの片面にのみ溶剤を接触させており、比較例1-6、8では、工程(3-1)において、水平方向にフィルムを搬送している。これらの比較例では、カール量の評価が「不良」又は「悪い」であり、製造された光学フィルムのハンドリング性が劣る。
1a,1b,1b’,1c:フィルム
100:光学フィルムの製造装置
101:巻き出し装置
102a,102b:グラビアコーター
103:加熱乾燥装置
104:延伸装置
105,106:搬送ロール
107:巻き取り装置

Claims (6)

  1. 結晶性を有する重合体を含む樹脂を、押出成形してNZ係数Nz1を有するフィルム(a)を得る工程(1)、
    前記フィルム(a)の両面に溶剤を接触させる工程(2)、及び
    前記溶剤を接触させた前記フィルム(a)を、鉛直方向上向きに搬送しながら乾燥して、NZ係数Nz2を有するフィルム(b)を得る工程(3-1)を、この順で含み、
    NZ係数Nz1及びNZ係数Nz2が、下記式(1)を満たす、光学フィルムの製造方法。
    Nz2-Nz1<0 (1)
  2. 前記工程(2)を、前記フィルム(a)の幅1000mm当たり150N以下の搬送張力で搬送しながら行う、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記結晶性を有する重合体を含む樹脂の固有複屈折値が、正である、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記結晶性を有する重合体が、脂環式構造を含む重合体である、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記フィルム(b)を延伸する工程(4)を含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記光学フィルムのNZ係数が、0より大きく1未満である、請求項5に記載の光学フィルムの製造方法。
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