JP2022116820A - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】厚み方向の複屈折の変化を容易に達成することができ、且つフィルムの白濁等の不所望な現象が抑制された、光学フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】ガラス転移温度TgR(℃)の結晶性樹脂(a)からなる層を備えるフィルム(pA)を用意する工程(I)と、前記フィルム(pA)を加熱する工程(II)と、前記フィルム(pA)の温度Tfが(TgR-50)℃以上(TgR-20)℃以下である状態で、前記フィルム(pA)の少なくとも片面に、溶媒を接触させて、前記フィルム(pA)の厚み方向の複屈折を変化させ、フィルム(qA)とする工程(III)とを含む、光学フィルムの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
従来から、結晶性の樹脂をフィルムの形状に成形し、様々な用途に用いることが知られている。またそのようなフィルムの製造の過程において、原反のフィルムを延伸してから、その後に炭化水素系の溶媒と接触させ、それにより製品としてのフィルムの加熱時寸法安定性を向上させることが知られている(特許文献1)。
特開2016-026909号公報
本願発明者は、結晶性樹脂を溶媒に接触させることにより物性を変化させることに関して種々検討した。その結果、かかる溶媒との接触により、フィルムの厚み方向の複屈折を変化させることができ、その結果、通常の固有複屈折が正の光学フィルム用樹脂を単に延伸するといった通常の製造方法では製造することができない、特殊な光学特性を有し、光学フィルムとして有用なフィルムを製造しうるということを見出した。
しかしながら、結晶性の樹脂を溶媒に接触させる工程により、そのような厚み方向の複屈折を変化させる場合、かかる複屈折の変化量を所望の値とするために十分な溶媒との接触を行う必要がある。一方、製造効率の観点から、そのような接触を行う時間は短時間とすることが求められる。本発明者は、そのような必要性を満たすため、溶媒の温度を高めた状態での接触工程を行うことを検討した。しかしながら、溶媒の温度を高めた場合、フィルムが容易に白濁する等の不所望な現象が発生し、良好な品質の光学フィルムを得ることができない。
したがって、本発明の目的は、厚み方向の複屈折の変化を容易に達成することができ、且つフィルムの白濁等の不所望な現象が抑制された、光学フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記の課題を解決するべく検討した。その結果、本発明者は、溶媒接触の工程において、溶媒ではなくフィルムを加熱しその温度を特定の温度範囲内とすることにより、前記課題を解決することができることを見出した。当該知見に基づき、本発明者は本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 ガラス転移温度TgR(℃)の結晶性樹脂(a)からなる層を備えるフィルム(pA)を用意する工程(I)と、
前記フィルム(pA)を加熱する工程(II)と、
前記フィルム(pA)の温度Tfが(TgR-50)℃以上(TgR-20)℃以下である状態で、前記フィルム(pA)の少なくとも片面に、溶媒を接触させて、前記フィルム(pA)の厚み方向の複屈折を変化させ、フィルム(qA)とする工程(III)とを含む、光学フィルムの製造方法。
〔2〕 前記工程(II)が、前記フィルム(pA)をオーブン内において加熱することを含む、〔1〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔3〕 前記工程(II)が、前記フィルム(pA)を、加熱されたロールに接触させた状態で搬送することを含む、〔1〕又は〔2〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔4〕 前記フィルム(qA)を延伸する工程(IV)をさらに含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔5〕 前記光学フィルムのNz係数が0より大きく1未満である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔6〕 前記光学フィルムが単層のフィルムである、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔7〕 前記結晶性樹脂(a)の固有複屈折値が、正である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔8〕 前記結晶性樹脂(a)が、脂環式構造含有重合体を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、厚み方向の複屈折の変化を容易に達成することができ、且つフィルムの白濁等の不所望な現象が抑制された、光学フィルムの製造方法が提供される。
図1は、本発明の製造方法を実施するための製造装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の操作の一例を概略的に示した側面図である。 図2は、図1に示したものと異なる加熱方法の一例を概略的に示した部分側面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、フィルム等の層状の構造物の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。層状の構造物の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。層状の構造物のNz係数は、別に断らない限り、(nx-nz)/(nx-ny)で表される値である。
nx、ny及びnzは、層状の構造物の主屈折率である。即ち、nxは、層状の構造物の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層状の構造物の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは、層状の構造物の厚み方向の屈折率を表す。dは、層状の構造物の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
以下の説明において、固有複屈折が正の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも大きくなる材料を意味する。また、固有複屈折が負の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも小さくなる材料を意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
以下の説明において、層状の構造物の遅相軸は、別に断らない限り、面内の遅相軸である。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長さの上限に特段の制限は無いが、通常、幅に対して10万倍以下である。
〔光学フィルムの製造方法:概要〕
本発明の光学フィルムの製造方法は、下記工程(I)~(III)を含む。本発明の光学フィルムの製造方法はさらに、下記工程(IV)を含みうる。
工程(I):結晶性樹脂(a)からなる層を備えるフィルム(pA)を用意する工程。
工程(II):フィルム(pA)を加熱する工程。
工程(III):フィルム(pA)の温度Tfが特定範囲の値である状態で、フィルム(pA)の少なくとも片面に、溶媒を接触させて、フィルム(pA)の厚み方向の複屈折を変化させ、フィルム(qA)とする工程。
工程(IV):フィルム(qA)を延伸する工程。
〔工程(I)〕
工程(I)では、結晶性樹脂(a)からなる層を備えるフィルム(pA)を用意する。フィルム(pA)の用意は、単に市販品を入手することによって行ってもよく、結晶性樹脂(a)を材料として用いフィルム(pA)を製膜することによって行ってもよい。
フィルム(pA)は、結晶性樹脂(a)からなる層以外の層を備えていてもよいが、結晶性樹脂(a)のみからなるフィルムであってもよい。フィルム(pA)が結晶性樹脂(a)からなる層以外の層を備える場合は、フィルム(pA)のオモテ面及びウラ面のうち少なくとも一方は結晶性樹脂(a)からなる層である。またフィルム(pA)は、結晶性樹脂(a)からなる層を2層以上有していてもよいが、通常は、1層の結晶性樹脂(a)からなる層のみからなる単層のフィルムである。したがって、本発明の製造方法により得られる光学フィルムも、結晶性樹脂(a)からなる層以外の層を備えていてもよいが、結晶性樹脂(a)のみからなるフィルムであってもよく、また結晶性樹脂(a)からなる層を2層以上有していてもよいが、通常は、1層の結晶性樹脂(a)からなる層のみからなる単層のフィルムである。
本発明の製造方法は、工程(I)においてフィルム(pA)を長尺のフィルムとして製膜した場合、製造ラインにおいてフィルム(pA)を長手方向に沿って搬送し、その後の工程を連続的に行いうる。かかる方式により製造方法を実施することによって、効率的な製造を行うことができる。但し本発明の製造方法はこれに限られない。例えば工程(I)においてフィルム(pA)を長尺のフィルムとして製膜した後、フィルム(pA)を裁断して矩形等の形状を有する枚葉状のフィルムとし、これを順次その後の工程に供することにより製造方法を実施してもよい。
工程(I)を、結晶性樹脂(a)を材料として用いフィルム(pA)を製膜することによって行う場合の製膜は、既知の各種の製膜方法により行いうる。特に、溶融押出成形により製膜を行うことが、製造効率の観点から好ましい。成膜の条件は、結晶性樹脂(a)の性質に応じて適宜調整しうる。工程(I)にて成膜するフィルム(pA)の厚みは、特に限定されず、製品としての光学フィルムの厚みが所望の値となるよう適宜調整しうる。フィルム(pA)は、光学異方性を有するフィルムであってもよいが、特に光学異方性を有していない状態であっても、この後の工程に供することにより、本発明の光学フィルムを容易に製造しうる。
図1は、本発明の製造方法を実施するための製造装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の操作の一例を概略的に示した側面図である。図1では、樹脂(a)を溶融押出成形により製膜し長尺のフィルム(pA)12とし、それを製造ラインにおいて矢印A1方向に搬送し、その後の工程を連続的に行う例を示している。図1において、製造装置10は、製造ラインの搬送経路の上流から順に、溶融押出成形装置110、加熱装置としてのオーブン120、溶媒槽130、及び延伸装置140を含む。製造装置10はまた、溶媒槽130に入る直前のフィルム11の温度を測定するための測定装置190を含む。
図1の例では、溶融押出成形装置110は、ダイ111及びキャストロール112を含む。加熱溶融させた樹脂(a)11をダイ111からフィルムの形状に押出し、これをキャストロール112にキャストし冷却することにより、フィルム(pA)12を成形している。
〔樹脂(a)〕
樹脂(a)は、結晶性重合体、即ち結晶性を有する重合体を含む樹脂としうる。結晶性を有する重合体とは、融点Tmを有する重合体を表す。すなわち、結晶性を有する重合体とは、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる重合体を表す。結晶性樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂である。
結晶性重合体は、正の固有複屈折を有することが好ましい。正の固有複屈折を有する結晶性重合体を用いることにより、樹脂(a)を、固有複屈折値が正の樹脂としうる。この場合、Nz係数に関して特に有用な性質を備える光学フィルムを特に容易に製造できる。
結晶性重合体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;等でもよく、特に限定されることはないが、脂環式構造を含有することが好ましい。脂環式構造を含有する結晶性重合体を用いることにより、得られる光学フィルムの機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性を良好にできる。脂環式構造を含有する重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体を表す。このような脂環式構造を含有する重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造を含有する結晶性重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、100重量%以下としうる。また、脂環式構造を含有する結晶性重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
脂環式構造を含有する結晶性重合体としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
具体的には、脂環式構造を含有する結晶性重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましい。中でも、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、ラセモ・ダイアッドの割合が高いことが好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物における繰り返し単位のラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。ラセモ・ダイアッドの割合が高いことは、シンジオタクチック立体規則性が高いことを表す。よって、ラセモ・ダイアッドの割合が高いほど、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の融点が高い傾向がある。
ラセモ・ダイアッドの割合は、後述する実施例に記載の13C-NMRスペクトル分析に基づいて決定できる。
上記重合体(α)~重合体(δ)としては、国際公開第2018/062067号に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
結晶性重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する結晶性重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた光学フィルムを得ることができる。
結晶性重合体は、ガラス転移温度を有し、それを主成分として含有する結晶性樹脂(a)は当該温度をガラス転移温度TgRとして示す。TgRは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
ガラス転移温度TgR及び融点Tmは、以下の方法によって測定できる。まず、サンプルを、加熱によって融解させ、融解したサンプルをドライアイスで急冷する。続いて、このサンプルについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、ガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定しうる。
結晶性重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
結晶性重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性重合体は、成形加工性に優れる。
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
結晶性重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
結晶性樹脂(a)における結晶性重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性重合体の割合が前記下限値以上である場合、得られる光学フィルムの複屈折の発現性及び耐熱性を高めることができる。結晶性重合体の割合の上限は、100重量%以下でありうる。
結晶性樹脂(a)は、結晶性重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー;及び、軟質重合体等の、結晶性重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔工程(II)及び(III)〕
工程(II)では、フィルム(pA)を加熱する。図1の例では、フィルム(pA)12は搬送経路中に設けられたオーブン120内を通過し、オーブン120内において加熱される。但し本発明の製造方法において加熱の態様はこれには限られず、他の加熱方法を採用してもよい。例えば、図2に示す通り、フィルム(pA)12を、加熱ロール220に接触させた状態で搬送し、加熱ロール220の熱をフィルム(pA)12に伝達させることにより工程(II)を行ってもよい。また、工程(II)の前にフィルム(pA)を枚葉状の形状とした場合は、オーブン内にフィルム(pA)を静置することによって工程(II)を行ってもよい。
工程(II)に続く工程(III)では、フィルム(pA)はその温度Tfが特定範囲の値である状態で、フィルム(pA)を溶媒に接触させる。かかる温度は、(TgR-50)℃以上、好ましくは(TgR-45)℃以上、より好ましくは(TgR-40)℃以上であり、一方(TgR-20)℃以下、好ましくは(TgR-22)℃以下、より好ましくは(TgR-25)℃以下である。本発明者が見出したところによれば、温度Tfをかかる範囲とすることにより、フィルムが容易に白濁する等の不所望な現象を抑制しながら、厚み方向の複屈折を十分に変化させることができる。
図1の例では、オーブン120を出たフィルム(pA)12が溶媒槽130に入る直前の、測定装置190で測定される位置におけるフィルム(pA)12の温度を温度Tfとして測定する。この時点における温度Tfが前記特定範囲の値となるよう操作条件を調整することにより、工程(III)の温度条件を達成しうる。したがって例えば図1の例において、オーブン120と溶媒槽130とが大きく離隔しており、オーブン120を出てから溶媒槽130に入るまでの間にフィルム12が冷却される可能性がある場合は、オーブン120の出口におけるフィルム温度は、所望のTfの値より高い温度に設定しうる。フィルム(pA)12が溶媒槽130に入った後は、フィルム(pA)12は溶媒により冷却され降温しうるが、当該降温の程度に拘わらず、フィルム(pA)12が溶媒槽130に入る直前の位置におけるフィルム(pA)12の温度Tfが上記特定範囲の値であることにより、工程(III)の温度条件を達成しうる。
工程(III)で用いる溶媒としては、結晶性樹脂(a)を溶解させずに当該樹脂中に浸入できる溶媒を適宜選択しうる。溶媒としては、通常は有機溶媒が用いられる。有機溶媒の例としては、トルエン、リモネン、デカリン等の炭化水素溶媒;及び二硫化炭素が挙げられる。溶媒の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
図1の例では、工程(III)における接触は、フィルム(pA)を溶媒中に浸漬する浸漬法により行っているが、工程(III)における接触はこれに限られず、任意の操作により達成しうる。接触の操作の他の例としては、フィルム(pA)の表面に溶媒をスプレーするスプレー法、及びフィルム(pA)の表面に溶媒を塗布する塗布法が挙げられる。連続的な接触を容易に行える観点からは、浸漬法が好ましい。
フィルム(pA)と溶媒とを浸漬法により接触させる場合、接触時間は、好ましくは0.5秒以上、より好ましくは1.0秒以上、特に好ましくは5.0秒以上であり、好ましくは120秒以下、より好ましくは80秒以下、特に好ましくは60秒以下である。接触時間が前記下限値以上である場合、溶媒との接触によるフィルム(pA)の複屈折の調整を効果的に行うことができる。他方、接触時間を長くしても複屈折の調整量は大きく変わらない傾向がある。よって、接触時間が前記上限値以下である場合、フィルムの品質を損なわずに生産性を高めることができる。
工程(III)の接触時における溶媒の温度は、溶媒が液体状態を維持できる範囲で任意であり、よって、溶媒の融点以上沸点以下の範囲に設定しうる。但し、フィルムの白濁をより有効に抑制する観点からは、ある程度以上低い温度であることが好ましく、一方複屈折の調整を効率的に行う観点からは、ある程度以上高い温度であることが好ましい。具体的には、溶媒の温度Tsは、Tfより低い温度であることが好ましく、これらの差(Tf-Ts)は、好ましくは30℃以上、より好ましくは33℃以上であり、一方好ましくは50℃以下、より好ましくは47℃以下である。溶媒の温度Tsをかかる範囲に調整することにより、白濁の抑制と効率的な製造とを達成することができる。
工程(III)での溶媒との接触の結果、フィルム(pA)は、フィルム(qA)となる。フィルム(qA)は、フィルム(pA)と比べて、その厚み、及びその厚み方向の複屈折が変化したものとなり得る。このような、溶媒との接触によりもたらされる変化は、光学フィルム用樹脂を単に延伸するといった、通常の位相差フィルムの製造方法では得ることが困難なものである。したがって、かかる変化の結果、本発明の光学フィルムの容易な製造が可能となる。
工程(III)の結果得られるフィルム(qA)は、Nz係数が0より大きく1未満となった場合は、そのまま、三次元位相差フィルムとして用いうる製品である光学フィルムとしうる。しかしながら多くの場合、フィルム(qA)は、Nz係数が0未満となり得る。その場合、工程(IV)を行うことにより、光学フィルムを容易に製造することができる。
〔工程(IV)〕
工程(IV)では、工程(III)で得られたフィルム(qA)を延伸する。フィルム(qA)の延伸により、フィルム(qA)の厚み方向の屈折率を変化させ、Nz係数を容易に0より大きい所望の値に調整しうる。フィルム(qA)は、工程(III)を経ているため、工程(IV)の結果、光学フィルム用樹脂を単に延伸するといった通常の位相差フィルムの製造方法では得ることが困難な光学特性を備える光学フィルムを容易に得ることができる。
工程(IV)における延伸は、単純な一軸延伸としうる。かかる単純な一軸延伸によってもNz係数の調整を容易に行いうる。工程(IV)における延伸方向に制限はなく、延伸方向の例としては、長手方向、幅方向、斜め方向などが挙げられる。ここで、斜め方向とは、厚み方向に対して垂直な方向であって、幅方向とがなす角が0°でも無く90°でも無い方向(即ち幅方向とがなす角が0°超90°未満である方向)を表す。
工程(III)を伴わない製造方法により三次元位相差フィルムとして機能しうる光学特性を有するフィルムを製造しようとする場合、通常は複数回の複雑な延伸工程、及びフィルムを構成する材料に固有複屈折値が負の材料を配合する等の手段が必要になる。これらの実施は、製造効率の観点からの不利益が大きい。これに対して、本発明の製造方法では、比較的容易な工程により三次元位相差フィルムとして機能しうる光学フィルムを得ることができるので、製造効率の観点から有利である。
延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは2.0倍以下、さらにより好ましくは1.9倍以下、特に好ましくは1.8倍以下である。具体的な延伸倍率は、製品たる光学フィルムの光学特性、厚み、強度などの要素に応じて適切に設定することが望ましい。延伸倍率が前記下限値以上である場合、延伸によって複屈折を大きく変化させることができる。また、延伸倍率が前記上限値以下である場合、遅相軸の方向を容易に良好に制御しうる等の、良好な光学的特性を実現することができる。また、フィルムの破断を効果的に抑制することができる。
延伸温度は、好ましくは(TgR+5)℃以上、より好ましくは(TgR+10)℃以上であり、好ましくは(TgR+100)℃以下、より好ましくは(TgR+90)℃以下である。延伸温度が前記下限値以上である場合、フィルムを十分に軟化させて延伸を均一に行うことができる。また、延伸温度が前記上限値以下である場合、結晶性重合体の結晶化の進行によるフィルムの硬化を抑制できるので、延伸を円滑に行うことができ、また、延伸によって大きな複屈折を発現させることができる。さらに、通常は、得られる光学フィルムのヘイズを小さくして透明性を高めることができる。
工程(IV)によりフィルムの複屈折が変化しうるので、Nz係数の調整を行うことができる。よって、工程(IV)による延伸によって所望の光学特性を有するフィルムが得られる。得られたフィルムは、そのまま製品たる光学フィルムとして利用することができる。または、得られたフィルムにさらに任意の処理を行い、製品とすることもできる。任意の工程の例としては、延伸された寸法を維持した状態での熱処理又は延伸された寸法を縮めての緩和処理等の処理による複屈折の調整が挙げられる。
〔その他の工程〕
本発明の光学フィルムの製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含みうる。例えば、工程(III)の後で、フィルム(III)に付着した溶媒を除去する工程を含みうる。溶媒の除去方法としては、例えば、乾燥、ふき取り等が挙げられる。
工程(I)においてフィルム(pA)を長尺のフィルムとして調製し、その後の工程を長尺の状態のまま製造ラインにおいて行った場合は、光学フィルムとして長尺のフィルムを得うる。長尺の光学フィルムは、必要に応じてロール状に巻き取り、フィルムロールとしうる。また、必要に応じて、所望の形状に裁断しうる。
〔光学フィルム〕
本発明の製造方法により得られる光学フィルムについて説明する。
光学フィルムのNz係数は好ましくは0より大きく、より好ましくは0.2以上であり、一方好ましくは1より小さく、より好ましくは0.8以下である。このようなNz係数を有するフィルムは、三次元位相差フィルムと呼ばれる。三次元位相差フィルムは、液晶表示装置等の表示装置に設けられた場合、傾斜方向から見た表示面の色付きを低減するといった効果を発現することができる。
光学フィルムの面内レターデーションReの値は、光学フィルムの用途に適合した値に調整しうる。ある例においては、波長590nmにおける面内レターデーションRe(590)の好ましい範囲は137.5nm又はそれに近い値、具体的には好ましくは127.5~147.5nm、より好ましくは130.5~144.5nmの範囲としうる。Re(590)の値を当該範囲内とすることにより、光学フィルムをλ/4波長板として用いうる。別のある例においては、Re(590)の好ましい範囲は275nm又はそれに近い値、具体的には好ましくは265~285nm、より好ましくは268~282nmの範囲としうる。Re(590)の値を当該範囲内とすることにより、光学フィルムをλ/2波長板として用いうる。
本発明の製造方法により光学フィルムとなった時点での、結晶性樹脂(a)に含まれる結晶性重合体の結晶化度は、特段の制限はないが、通常は、ある程度以上高い。具体的な結晶化度の範囲は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは30%以上である。
結晶性重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。
一般に表示装置等の装置に用いる光学フィルムは、光学的特性を発現するためにある程度以上の厚みを必要とする一方、装置の薄型化の要請から、薄いことが求められる。本発明の製造方法により得られる光学フィルムの厚みは、特に限定されないが、厚みが薄くても所望の光学的特性を満たすフィルムとすることが可能である。具体的には、光学フィルムの厚みは、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは120μm以下、さらにより好ましくは100μm以下としうる。光学フィルムの厚みの下限は、特に限定されないが例えば20μm以上としうる。
本発明の製造方法により得られた光学フィルムにおいては、樹脂(a)は、有機溶媒を含みうる。この有機溶媒は、通常、本発明の製造方法の工程(III)において使用した有機溶媒が、フィルム中に取り込まれたものである。工程(III)に供する前の樹脂(a)は、有機溶媒を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。通常は、工程(III)に供した後の樹脂(a)は、工程(III)に供する前の樹脂(a)より多い量の有機溶媒を含む。
工程(III)においてフィルム中に取り込まれた有機溶媒の全部または一部は、重合体の内部に入り込みうる。したがって、有機溶媒の沸点以上で乾燥を行ったとしても、容易には溶媒を完全に除去することは難しい。よって、本発明の製造方法により得られた光学フィルムは、有機溶媒を含むことが通常である。
本発明の製造方法により得られた光学フィルム100重量%に対する、その中に含まれる有機溶媒の比率(溶媒含有率)は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。溶媒含有率の下限は特に限定されないが、0.001重量%以上、又は0.01重量%以上としうる。フィルム中の溶媒の含有量は、熱質量分析によって測定しうる。
本発明の製造方法により得た光学フィルムは、必要に応じて矩形などの所望の形状に加工した上で、表示装置等の光学装置の構成要素として使用しうる。光学フィルムを表示装置の構成要素として用いた場合、表示装置に表示される画像の視野角、コントラスト、画質等の表示品質を改善することができる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
〔評価方法〕
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMR測定により測定した。
(ガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定方法)
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定は、以下のようにして行った。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷した。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定した。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定は以下のようにして行った。オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(厚みの測定)
フィルムの厚みは、接触式厚さ計(MITUTOYO社製 Code No. 543-390)を用いて測定した。
(屈折率)
フィルムの屈折率は、位相差計(AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」)を用いて測定した。測定波長は590nmとした。
(結晶化度の測定)
フィルムの結晶化度は、JIS K0131に準じて、X線回折により確認した。具体的には、広角X線回折装置(リガク社製「RINT 2000」)を用いて、結晶化部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(i)によって結晶化度を求めた。
Xc=K・Ic/It 式(i)
上記式(i)において、Xcは被検試料の結晶化度、Icは結晶化部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
〔製造例1:結晶性樹脂(a)〕
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を入れ、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解し、溶液を調製した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器内の混合物に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM-37B」、東芝機械社製)に投入した。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物及び酸化防止剤の混合物を、熱溶融押出し成形によりストランド状に成形した後、ストランドカッターにて細断して、結晶性樹脂(a)のペレットを得た。前記の二軸押出し機の運転条件は、以下の通りであった。
・バレル設定温度=270~280℃
・ダイ設定温度=250℃
・スクリュー回転数=145rpm
〔実施例1〕
(1-1.工程(I))
製造例1で製造した結晶性樹脂(a)を、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(Optical Control Systems社製「Measuring Extruder Type Me-20/2800V3」)を用いて成形し、1m/分の速度でロールに巻き取って、長尺のフィルム(pA)を得た。フィルム(pA)の厚み39μmであり、幅はおよそ120mmであった。フィルム成形機の運転条件は、以下の通りであった。
・バレル設定温度=280℃~300℃
・ダイ温度=270℃
・スクリュー回転数=30rpm
・キャストロール温度=80℃
得られたフィルム(pA)の主屈折率(nx(pA)、ny(pA)、及びnz(pA))を測定した。
(1-2.工程(II))
(1-1)で得られたフィルム(pA)を裁断し、100mm×100mmの矩形のフィルムとした。矩形のフィルムの辺のそれぞれは、長尺のフィルム(pA)の長手方向と平行又は垂直な方向とした。矩形のフィルムを、120℃に加熱したオーブン中に静置した後、取り出した。次の工程(III)に供する直前の時点での矩形のフィルムの温度Tfを、赤外線放射温度計にて測定したところ、60℃であった。
(1-3.工程(III))
バットを処理溶媒としてのトルエンで満たした。トルエンの温度Tsを、25℃に保った。
工程(II)にて温度を測定した矩形のフィルムを、温度測定後直ちに、トルエンに浸漬させた。浸漬時間は5秒間とした。
浸漬時間経過後、トルエンから矩形のフィルムを取り出し、ガーゼで表面をふき取り、フィルム(qA)を得た。得られたフィルム(qA)の主屈折率(nx(qA)、ny(qA)、及びnz(qA))を測定した。
(1-4.工程(IV))
延伸装置(エトー株式会社製「SDR-562Z」)を用意した。この延伸装置は、矩形の樹脂フィルムの端部を把持可能なクリップと、オーブンとを備えていた。クリップは、樹脂フィルムの1辺当たり5個、及び、樹脂フィルムの各頂点に1個の合計24個設けられていて、これらのクリップを移動させることで樹脂フィルムの延伸が可能であった。また、オーブンは2つ設けられており、延伸温度及び熱処理温度にそれぞれ設定することが可能であった。さらに、前記の延伸装置では、一方のオーブンから他方のオーブンへの樹脂フィルムの移行は、クリップで把持したまま行うことができた。
(1-3)で得られたフィルム(qA)を、前記の延伸装置に取り付け、予熱温度110℃で10秒間処理した。その後、フィルム(qA)を、延伸温度130℃で、縦延伸倍率1倍、横延伸倍率1.7倍、延伸速度1.5倍/10秒で延伸し、フィルム(rA)を得た。前記の「縦延伸倍率」は、長尺のフィルム(pA)の長手方向に一致する方向への延伸倍率を表し、「横延伸倍率」は、長尺のフィルム(pA)の幅方向に一致する方向への延伸倍率を表す。
得られたフィルム(rA)の主屈折率(nx(rA)、ny(rA)、及びnz(rA))を測定し、Nz係数Nz(rA)を求めた。また、フィルム(rA)の結晶化度を測定した。さらに、フィルム(rA)の外観を目視にて評価したところ、白濁等の無い良好な透明フィルムの外観を呈していた。
〔実施例2〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、フィルム(フィルム(pA)、フィルム(qA)及びフィルム(rA))を得て評価した。
・(1-2)における加熱の条件を変更した。(1-3)の工程(III)の浸漬に供する直前の時点での、矩形のフィルムの温度Tfは70℃であった。
フィルム(rA)の外観を目視にて評価したところ、実施例1と同様に、白濁等の無い良好な透明フィルムの外観を呈していた。
〔比較例1〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、フィルムを得て評価した。
・(1-3)におけるトルエンの温度Tsを50℃に変更した。
・(1-2)における加熱の条件を変更した。(1-3)の工程(III)の浸漬に供する直前の時点での、矩形のフィルムの温度Tfは25℃であった。
本比較例では、フィルム(qA)及びフィルム(rA)が白濁したために、これらの主屈折率を測定することができなかった。
〔比較例2〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、フィルムを得て評価した。
・(1-2)における加熱の条件を変更した。(1-3)の工程(III)の浸漬に供する直前の時点での、矩形のフィルムの温度Tfは25℃であった。
フィルム(rA)の外観を目視にて評価したところ、実施例1と同様に、白濁等の無い良好な透明フィルムの外観を呈していた。
〔比較例3〕
下記の変更点の他は、実施例1と同じ操作により、フィルムを得て評価した。
・(1-2)における加熱の条件を変更した。(1-3)の工程(III)の浸漬に供する直前の時点での、矩形のフィルムの温度Tfは80℃であった。
本比較例では、フィルム(qA)及びフィルム(rA)が白濁したために、これらの主屈折率を測定することができなかった。
実施例及び比較例の概要及び結果を、表1に示す。
Figure 2022116820000002
*NA:白濁のため屈折率を測定することができなかった。
実施例及び比較例の結果から明らかな通り、本発明の加熱及び溶媒接触の条件を満たした実施例における製造では、フィルムの厚み方向の複屈折の変化を容易に達成することができ、且つフィルムの白濁等の不所望な現象が抑制された製造を行うことができる。
10:製造装置
11:加熱溶融させた樹脂(a)
12:フィルム(pA)
110:溶融押出成形装置
111:ダイ
112:キャストロール
120:オーブン
130:溶媒槽
140:延伸装置
190:測定装置
220:加熱ロール
A1:矢印

Claims (8)

  1. ガラス転移温度TgR(℃)の結晶性樹脂(a)からなる層を備えるフィルム(pA)を用意する工程(I)と、
    前記フィルム(pA)を加熱する工程(II)と、
    前記フィルム(pA)の温度Tfが(TgR-50)℃以上(TgR-20)℃以下である状態で、前記フィルム(pA)の少なくとも片面に、溶媒を接触させて、前記フィルム(pA)の厚み方向の複屈折を変化させ、フィルム(qA)とする工程(III)とを含む、光学フィルムの製造方法。
  2. 前記工程(II)が、前記フィルム(pA)をオーブン内において加熱することを含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記工程(II)が、前記フィルム(pA)を、加熱されたロールに接触させた状態で搬送することを含む、請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記フィルム(qA)を延伸する工程(IV)をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記光学フィルムのNz係数が0より大きく1未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記光学フィルムが単層のフィルムである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記結晶性樹脂(a)の固有複屈折値が、正である、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記結晶性樹脂(a)が、脂環式構造含有重合体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
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