JP2022038918A - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂で形成された樹脂層(A)と、この樹脂層(A)上に形成される樹脂層(B)とを備える光学フィルムを、樹脂層(B)のクラックを抑制しながら製造できる製造方法を提供する。【解決手段】結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む第一樹脂で形成された樹脂層(A)を用意する工程(I)と、前記樹脂層(A)に結晶化処理を施す工程(II)と、前記樹脂層(A)の表面に、第二樹脂によって樹脂層(B)を形成する工程(III)と、をこの順に含む、光学フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
脂環式構造含有重合体は、一般に結晶性を有さないが、一部の脂環式構造含有重合体は、結晶性を有しうる。出願人はこれまでに、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を用いてフィルムを製造する技術を提案している(特許文献1及び2)。
国際公開第2018/079627号 国際公開第2019/003980号
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、通常、脂環式構造含有重合体の結晶化を進行させることにより、樹脂の物性を改善することができる。そこで、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いてフィルムを製造する場合、その製造方法は、フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化度を高めるための結晶化処理を含むことがあった。このような結晶化処理は、加熱によって行われることが一般的であった。
ところで、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いてフィルムを製造する場合、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂の層上に、更に別の樹脂によって樹脂層を形成したい場合がある。この場合、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂の層と、当該層上に形成される樹脂層との密着強度を高める観点から、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂の層上に樹脂層を形成した後で、結晶化処理を行うことが一般的であった。しかし、この場合には、結晶化処理の際に加えられる熱によって、樹脂層にクラックが生じることがあった。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂で形成された樹脂層(A)と、この樹脂層(A)上に形成される樹脂層(B)とを備える光学フィルムを、樹脂層(B)のクラックを抑制しながら製造できる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む第一樹脂で形成された樹脂層(A)を用意する工程と、記樹脂層(A)に結晶化処理を施す工程と、樹脂層(A)の表面に第二樹脂によって樹脂層(B)を形成する工程と、をこの順に含む製造方法によれば、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む第一樹脂で形成された樹脂層(A)を用意する工程(I)と、
前記樹脂層(A)に結晶化処理を施す工程(II)と、
前記樹脂層(A)の表面に、第二樹脂によって樹脂層(B)を形成する工程(III)と、をこの順に含む、光学フィルムの製造方法。
〔2〕 前記工程(III)における前記樹脂層(A)の前記表面の表面自由エネルギーγ(A)、
前記表面自由エネルギーγ(A)の水素結合成分γ(A)、
前記工程(III)で形成される前記樹脂層(B)の表面自由エネルギーγ(B)、及び、
前記表面自由エネルギーγ(B)の水素結合成分γ(B)が、下記式(1)及び式(2)を満たす、〔1〕に記載の光学フィルムの製造方法。
10mJ/m ≦ γ(A)-γ(B) ≦ 40mJ/m (1)
5mJ/m ≦ γ(A)-γ(B) ≦ 20mJ/m (2)
〔3〕 前記工程(II)と前記工程(III)との間に、前記樹脂層(A)の前記表面に親水化処理を施す工程(IV)を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔4〕 前記工程(III)が、前記第二樹脂を含む塗工液を前記樹脂層(A)の前記表面に塗工する工程(III-1)を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔5〕 前記脂環式構造含有重合体が、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔6〕 光学フィルムに含まれる前記脂環式構造含有重合体の結晶化度が、30%以上である、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂で形成された樹脂層(A)と、この樹脂層(A)上に形成される樹脂層(B)とを備える光学フィルムを、樹脂層(B)のクラックを抑制しながら製造できる製造方法を提供できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
[1.光学フィルムの製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む第一樹脂で形成された樹脂層(A)を用意する工程(I)と、
樹脂層(A)に結晶化処理を施す工程(II)と、
樹脂層(A)の表面に、第二樹脂によって樹脂層(B)を形成する工程(III)と、
をこの順に含む。以下の説明において、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を「結晶性脂環式重合体」と呼ぶことがある。
前記の製造方法によれば、樹脂層(A)及び樹脂層(B)を備える光学フィルムを、樹脂層(B)におけるクラックを抑制しながら、製造することができる。製造される光学フィルムにおいて、樹脂層(A)と樹脂層(B)とは、通常、直接に接している。2つの層が「直接に」接するとは、別に断らない限り、それら2つの層の間に他の層が無いことをいう。
[2.樹脂層(A)を用意する工程(I)]
工程(I)では、第一樹脂で形成された樹脂層(A)を用意する。第一樹脂は、通常は熱可塑性樹脂であり、結晶性脂環式重合体を含む。
結晶性脂環式重合体とは、前記の通り、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を表す。脂環式構造含有重合体とは、分子内に脂環式構造を含有する重合体を表す。脂環式構造を含有する重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。また、「結晶性を有する重合体」とは、融点Tmを有する〔すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる〕重合体を表す。よって、結晶性脂環式重合体は、分子内に脂環式構造を含有する重合体であって、融点Tmを有するものでありうる。このような結晶性脂環式重合体を用いることにより、光学フィルムの機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性を良好にできる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
結晶性脂環式重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を含有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造を含有する構造単位の割合が前記のように多い場合、耐熱性を高めることができる。全ての構造単位に対する脂環式構造を含有する構造単位の割合は、100重量%以下としうる。また、結晶性脂環式重合体において、脂環式構造を含有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
結晶性脂環式重合体としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び可撓性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
具体的には、結晶性脂環式重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましい。中でも、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、ラセモ・ダイアッドの割合が高いことが好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物における繰り返し単位のラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。ラセモ・ダイアッドの割合が高いことは、シンジオタクチック立体規則性が高いことを表す。よって、ラセモ・ダイアッドの割合が高いほど、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の融点が高い傾向がある。
ラセモ・ダイアッドの割合は、後述する実施例に記載の13C-NMRスペクトル分析に基づいて決定できる。
上記重合体(α)~重合体(δ)としては、国際公開第2018/062067号、国際公開第2018/079627号に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
結晶性脂環式重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する結晶性脂環式重合体を用いる場合、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた光学フィルムを得ることができる。
通常、結晶性脂環式重合体は、ガラス転移温度Tgを有する。結晶性脂環式重合体の具体的なガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
結晶性脂環式重合体は、結晶性を有するので、特定の温度においては結晶化が進行する。この際、結晶化速度が最も速い温度を、「結晶化温度」ということがある。結晶性脂環式重合体の結晶化温度Tpcは、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、特に好ましくは160℃以上であり、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、特に好ましくは190℃以下である。
重合体の融点Tm、ガラス転移温度Tg及び結晶化温度Tpcは、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体を液体窒素で急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体の融点Tm、ガラス転移温度Tg及び結晶化温度Tpcを測定しうる。
結晶性脂環式重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性脂環式重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
結晶性脂環式重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性脂環式重合体は、成形加工性に優れる。
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
工程(I)で用意される樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の結晶化度は、特段の制限はない。工程(II)で行われる結晶化処理によって結晶性脂環式重合体の結晶化度を高めることができるので、工程(I)で用意される樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の結晶化度が低くても、本実施形態に係る製造方法によれば、好ましい結晶化度を有する結晶性脂環式重合体を含む光学フィルムを得ることができる。工程(I)で用意される樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の結晶化度の具体的な範囲は、工程(II)以外の結晶化度を高めるための工程を省略して光学フィルムの製造方法をシンプルにする観点では、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
結晶化度は、第一樹脂に含まれる結晶性脂環式重合体のうち、結晶化したものの割合を示す指標である。結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。具体的には、JIS K0131に準じて、広角X線回折装置(例えばリガク社製「RINT 2000」)を用いて、結晶性部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(I)によって結晶化度を求めうる。
Xc=K・Ic/It (I)
上記式(I)において、Xcは被検試料の結晶化度、Icは結晶性部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
結晶性脂環式重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
第一樹脂における結晶性脂環式重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性脂環式重合体の割合が前記範囲の下限値以上である場合、光学フィルムの複屈折の発現性及び耐熱性を高めることができる。結晶性脂環式重合体の割合の上限は、100重量%以下でありうる。
第一樹脂は、結晶性脂環式重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー;及び、軟質重合体等の、結晶性脂環式重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂層(A)は、通常、第一樹脂で形成されたフィルムとして用意される。樹脂層(A)は、市場から入手して用意してもよいが、第一樹脂から製造することで用意してもよい。第一樹脂から樹脂層(A)を製造する方法としては、例えば、第一樹脂をフィルム状に成形する樹脂成形法が挙げられる。樹脂成形法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、圧縮成形法等が挙げられ、中でも、厚みの制御が容易であることから、押出成形法が好ましい。
押出成形法における製造条件は、好ましくは下記の通りである。シリンダー温度(溶融樹脂温度)は、好ましくはTm以上、より好ましくは「Tm+20℃」以上であり、好ましくは「Tm+100℃」以下、より好ましくは「Tm+50℃」以下である。また、フィルム状に押し出された溶融樹脂が最初に接触する冷却体は特に限定されないが、通常はキャストロールを用いる。このキャストロール温度は、好ましくは「Tg-50℃」以上、より好ましくは「Tg-30℃」以上であり、好ましくは「Tg+70℃」以下、より好ましくは「Tg+40℃」以下、更に好ましくはTg以下、特に好ましくは「Tg-15℃」以下である。さらに、冷却ロール温度は、好ましくは「Tg-70℃」以上、より好ましくは「Tg-50℃」以上であり、好ましくは「Tg+60℃」以下、より好ましくは「Tg+30℃」以下である。このような条件で樹脂層(A)を製造する場合、厚み1μm~1mmの樹脂層(A)を容易に製造できる。ここで、「Tm」は、結晶性脂環式重合体の融点を表し、「Tg」は結晶性脂環式重合体のガラス転移温度を表す。
工程(I)は、樹脂層(A)を用意した後、その樹脂層(A)を延伸する前に、当該樹脂層(A)を延伸温度に加熱するための予熱処理を行う工程を含んでいてもよい。通常、予熱温度と延伸温度は同じであるが、異なっていてもよい。予熱温度は、延伸温度T1に対し、好ましくはT1-10℃以上、より好ましくはT1-5℃以上であり、また、好ましくはT1+5℃以下、より好ましくはT1+2℃以下である。予熱時間は任意であり、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、また、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下である。
工程(I)は、樹脂層(A)を用意し、必要に応じて予熱処理を行った後で、その樹脂層(A)を延伸する工程を含んでいてもよい。通常、延伸により、樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の分子を延伸方向に応じた方向に配向させることができる。以下の説明では、フィルム状の樹脂層(A)のうち、延伸処理を施される前のものを「延伸前フィルム」と呼ぶことがあり、延伸処理を施された後のものを「延伸フィルム」と呼ぶことがある。
延伸方向に制限はなく、例えば、長手方向、幅方向、斜め方向などが挙げられる。ここで、斜め方向とは、厚み方向に対して垂直な方向であって、幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を表す。また、延伸方向は、一方向でもよく、二以上の方向でもよい。よって、延伸方法としては、例えば、延伸前フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、延伸前フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;延伸前フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、延伸前フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法等の、二軸延伸法;延伸前フィルムを斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);などが挙げられる。
延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは20.0倍以下、より好ましくは10.0倍以下、更に好ましくは5.0倍以下、特に好ましくは2.0倍以下である。例えば二軸延伸法のように異なる複数の方向に延伸を行う場合、前記の延伸倍率は、各延伸方向における延伸倍率の積で表される総延伸倍率のことを表す。具体的な延伸倍率は、製造したい光学フィルムの光学特性、厚み、強度などの要素に応じて適切に設定することが望ましい。延伸倍率が前記範囲の下限値以上である場合、延伸によって複屈折を大きく変化させることができる。また、延伸倍率が前記範囲の上限値以下である場合、遅相軸の方向を容易に制御したり、フィルムの破断を効果的に抑制したりできる。
延伸温度は、好ましくは「Tg-30℃」以上、より好ましくは「Tg-10℃」以上、更に好ましくは「Tg+5℃」以上、特に好ましくは「Tg+10℃」以上であり、好ましくは「Tg+100℃」以下、より好ましくは「Tg+90℃」以下、更に好ましくは「Tg+60℃」以下、特に好ましくは「Tg+50℃」以下である。ここで、「Tg」は結晶性脂環式重合体のガラス転移温度を表す。延伸温度が前記範囲の下限値以上である場合、第一樹脂を十分に軟化させて延伸を均一に行うことができる。また、延伸温度が前記範囲の上限値以下である場合、結晶性脂環式重合体の結晶化の進行による第一樹脂の硬化を抑制できるので、延伸を円滑に行うことができ、また、延伸によって大きな複屈折を発現させることができる。
[3.樹脂層(A)に結晶化処理を施す工程(II)]
工程(I)で樹脂層(A)を用意した後で、工程(II)を行う。工程(II)では、樹脂層(A)に結晶化処理を施す。結晶化処理により、樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の結晶化度を高めることができる。
結晶化処理としては、樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の結晶化度を高めることができる任意の方法を採用できる。中でも、結晶化処理としては、樹脂層(A)の温度を所定の加熱温度に調整する加熱処理が好ましい。
加熱処理における加熱温度は、結晶性脂環式重合体のガラス転移温度Tg以上、融点Tm以下の温度範囲において設定しうる。具体的な加熱温度の範囲は、好ましくはTg+20℃以上、より好ましくはTg+30℃以上であり、好ましくはTm以下、より好ましくはTm-20℃以下、更に好ましくはTm-40℃以下である。また、加熱温度は、結晶性脂環式重合体の結晶化温度Tpcに近いことが好ましく、Tpc-10℃~Tpc+10℃の範囲にあることが特に好ましい。工程(II)において、加熱温度は、前記の範囲内で変動してもよいが、一定であることが好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上である場合、結晶性脂環式重合体の結晶化を効果的に進行させて、フィルムの耐熱性を高めることができる。また、加熱温度が前記範囲の上限値以下である場合、樹脂層(A)のヘイズを小さくできるので、ヘイズの小さい光学フィルムを得ることができる。
前記の加熱処理に用いる加熱装置としては、加熱装置と樹脂層(A)との接触が不要であることから、樹脂層(A)の雰囲気温度を上昇させうる加熱装置が好ましい。好適な加熱装置の具体例を挙げると、オーブン及び加熱炉が挙げられる。
工程(II)において、樹脂層(A)を前記の加熱温度の範囲に維持する結晶化時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上、更に好ましくは10秒以上、特に好ましくは20秒以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下、更に好ましくは50秒以下、特に好ましくは30秒以下である。結晶化時間が、前記範囲の下限値以上である場合、結晶性脂環式重合体の結晶化を十分に進行させて、光学フィルムの耐熱性を高めることができる。また、結晶化時間が、前記範囲の上限値以下である場合、樹脂層(A)のヘイズを小さくできるので、ヘイズの小さい光学フィルムを得ることができる。
結晶化処理は、樹脂層(A)の少なくとも二辺を保持した状態で行うことが好ましい。「樹脂層(A)の少なくとも二辺を保持した状態」とは、樹脂層(A)にたわみが認められない程度に、保持具で延樹脂層(A)を保持した状態をいう。ただし、この状態には、樹脂層(A)が実質的に延伸されるような保持状態は含まれない。また、実質的に延伸されるとは、樹脂層(A)のいずれかの方向への延伸倍率が通常1.1倍以上になることをいう。樹脂層(A)の少なくとも二辺を保持した状態で結晶化処理を行う場合、樹脂層(A)は、張力がかかった緊張状態となるので、収縮及びたわみが抑制される。よって、樹脂層(A)が平坦に維持されるので、波打ち及びシワといった変形を抑制でき、平面形状の樹脂層(A)を得ることができる。樹脂層(A)の少なくとも二辺を保持した状態での結晶化処理の態様は、例えば、国際公開第2018/061841号、国際公開第2018/079627号に記載の態様と同じにしうる。
[4.樹脂層(A)に親水化処理を施す工程(IV)]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、工程(II)と工程(III)との間に、樹脂層(A)の表面に親水化処理を施す工程(IV)を含むことが好ましい。親水化処理によれば、通常、樹脂層(A)と樹脂層(B)との密着強度を高めることができる。
親水化処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理等が挙げられる。これらの親水化処理を樹脂層(A)の表面に施すことにより、通常は、その表面に、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等の親水性基が生成する。よって、樹脂層(A)の表面の親水性が向上させることができる。また、前記の親水化処理によれば、通常は、樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーを調整することができる。親水化処理の中でも、処理効率の観点から、コロナ処理及びプラズマ処理が好ましく、コロナ処理が特に好ましい。
コロナ処理では、通常、誘電体と絶縁された電極との間に高周波で高電圧をかけてコロナを発生させ、誘電体と電極との間に樹脂層(A)を通すことによって、樹脂層(A)の表面を処理する。一般に、電極の種類、電極間隔、電圧、湿度、処理される樹脂層(A)の種類に応じて、コロナ処理を施された表面の表面自由エネルギーが調整される。
コロナ処理の処理条件は、樹脂層(A)と樹脂層(B)との密着強度を高められるように設定することが好ましい。一実施形態において、電極と樹脂層(A)との距離は、0.5mm~10mmが好ましく、1mm~5mmがより好ましく、1mm~3mmが特に好ましい。コロナ処理を施される樹脂層(A)の搬送速度は、0.01m/分~20m/分が好ましく、0.05m/分~10m/分がより好ましい。電極長は、0.1m~2mが好ましい。コロナ出力は、好ましくは20W以上、より好ましくは40W以上、特に好ましくは100W以上であり、樹脂層(A)の傷付きを抑制する観点では、好ましくは5kW以下、より好ましくは3kW以下、特に好ましくは1.5kW以下である。樹脂層(A)を搬送しながら行うコロナ処理において、処理強度は、「処理強度=(出力)/(搬送速度×電極長)」で計算される。この処理強度は、好ましくは1W・min/m以上、より好ましくは10W・min/m以上、特に好ましくは100W・min/m以上であり、好ましくは2000W・min/m以下、より好ましくは1000W・min/m以下、特に好ましくは800W・min/m以下である。
特に、樹脂層(A)と樹脂層(B)との密着強度を効果的に高める観点では、上述した親水化処理の処理条件は、後述する式(1)及び式(2)を満たす表面自由エネルギーを樹脂層(A)の表面が有するように、設定することが好ましい。したがって、親水化処理の具体的な処理条件は、樹脂層(B)を形成する第二樹脂の組成に応じて設定することが好ましい。
[5.樹脂層(A)の表面に、樹脂層(B)を形成する工程(III)]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、工程(II)の後で、工程(III)を行う。工程(III)では、樹脂層(A)の表面に、第二樹脂によって樹脂層(B)を形成する。また、光学フィルムの製造方法が工程(IV)を含む場合、工程(III)は、工程(IV)の後に行われる。この場合、樹脂層(B)は、通常、樹脂層(A)の親水化処理を施された表面に形成される。
第二樹脂としては、第一樹脂と異なる組成を有する樹脂を用いうる。中でも、第二樹脂としては、表面自由エネルギーに関する特定の要件を満たす樹脂が好ましい。具体的には、第二樹脂は、下記式(1)及び式(2)で表される要件を満たしうるものが好ましい。
10mJ/m ≦ γ(A)-γ(B) ≦ 40mJ/m (1)
5mJ/m ≦ γ(A)-γ(B) ≦ 20mJ/m (2)
(γ(A)は、工程(III)において樹脂層(B)を形成される樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーを表し、
γ(A)は、表面自由エネルギーγ(A)の水素結合成分を表し、
γ(B)は、工程(III)で形成される樹脂層(B)の表面自由エネルギーを表し、
γ(B)は、表面自由エネルギーγ(B)の水素結合成分を表す。)
以下、式(1)及び式(2)で表される要件の意義について説明する。
北崎・畑(Kitazaki and Hata)の理論に沿って、固体の表面自由エネルギーγSVを下記式(3)で表し、液体の表面自由エネルギーγLVを下記式(4)で表し、固体と液体の接着仕事WSLを式(5)で表す。式(5)の関係を、式(6)で表されるヤング-デュプレの式に当てはめると、式(7)が導出される。ここで、γSV 、γSV 及びγSV は、固体の表面自由エネルギーγSVの分散成分、極性成分及び水素結合成分を表す。γLV 、γLV 及びγLV は、液体の表面自由エネルギーγLVの分散成分、極性成分及び水素結合成分を表す。θは、固体に対する液体の接触角を表す。
Figure 2022038918000001
前記の北崎・畑の理論によれば、工程(III)において樹脂層(B)を形成される樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーγ(A)は、その分散成分γ(A)、極性成分γ(A)及び水素結合成分γ(A)によって、下記式(8)で表される。また、工程(III)で形成される樹脂層(B)の表面自由エネルギーγ(B)は、その分散成分γ(B)、極性成分γ(B)及び水素結合成分γ(B)によって、下記式(9)で表される。
γ(A)=γ(A)+γ(A)+γ(A) (8)
γ(B)=γ(B)+γ(B)+γ(B) (9)
したがって、前記の式(1)に記載された「γ(A)-γ(B)」は、樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーと、その表面に接した樹脂層(B)の表面自由エネルギーとの差を表す。また、前記の式(2)に記載された「γ(A)-γ(B)」は、樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーの水素結合成分と、その表面に接した樹脂層(B)の表面自由エネルギーの水素結合成分との差を表す。
よって、式(1)は、樹脂層(A)と樹脂層(B)との界面において接する表面間の表面自由エネルギーの差Δγ(=γ(A)-γ(B))が、特定の範囲にあることを表す。また、式(2)は、樹脂層(A)と樹脂層(B)との界面において接する表面間の表面自由エネルギーの水素結合成分の差Δγ(=γ(A)-γ(B))が、特定の範囲にあることを表す。本発明者が実験を繰り返して見い出したところによれば、前記の式(1)及び式(2)で表される要件を満たす場合、樹脂層(A)と樹脂層(B)との密着強度を顕著に高められる。本発明者の実験によれば、表面自由エネルギーの分散成分及び極性成分には密着強度との相関は認められなかったことから、表面自由エネルギー及びその水素結合成分には密着強度に影響する特異的な作用があるものと推察される。
式(1)を更に詳細に説明する。樹脂層(A)と樹脂層(B)との密着強度を顕著に高める観点では、式(1)で表される表面自由エネルギーの差Δγ(=γ(A)-γ(B))は、好ましくは10mJ/m以上、より好ましくは12mJ/m以上、特に好ましくは14mJ/m以上であり、好ましくは40mJ/m以下、より好ましくは38mJ/m以下、特に好ましくは35mJ/m以下である。
式(2)を更に詳細に説明する。樹脂層(A)と樹脂層(B)との密着強度を顕著に高める観点では、式(2)で表される表面自由エネルギーの水素結合成分の差Δγ(=γ(A)-γ(B))は、好ましくは5mJ/m以上、より好ましくは6mJ/m以上、特に好ましくは7mJ/m以上であり、好ましくは20mJ/m以下、より好ましくは18mJ/m以下、特に好ましくは16mJ/m以下である。
樹脂層(A)の表面自由エネルギーγ(A)及びその水素結合成分γ(A)は、樹脂層(A)の両面のうち、樹脂層(B)を形成される表面において測定される。また、表面自由エネルギーγ(A)及びその水素結合成分γ(A)は、樹脂層(B)を形成する直前に測定することが好ましい。よって、光学フィルムの製造方法が工程(IV)を含む場合には、その工程(IV)の後に、表面自由エネルギーγ(A)及びその水素結合成分γ(A)を測定しうる。
通常、樹脂層(B)の両面の表面自由エネルギーは等しい。そこで、樹脂層(B)の表面自由エネルギーγ(B)及びその水素結合成分γ(B)は、樹脂層(A)とは反対側の表面において測定しうる。このように樹脂層(A)とは反対側の表面で測定された樹脂層(B)の表面自由エネルギーγ(B)及びその水素結合成分γ(B)は、通常、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接する表面(即ち、樹脂層(B)の、樹脂層(A)側の表面)の表面自由エネルギーγ(B)及びその水素結合成分γ(B)と等しいものでありうる。式(1)及び式(2)では、これを利用して、樹脂層(A)と樹脂層(B)との界面において接する表面同士の関係を規定している。
固体試料(樹脂層(A)及び樹脂層(B)など)の表面自由エネルギー及びその水素結合成分は、表面自由エネルギーが既知の3種類の液体を用いて前記固体試料に対する接触角θを測定し、その測定値を式(7)に当て嵌めて3元連立方程式を解くことにより、測定できる。具体的な測定条件は、後述する実施例で説明する条件を採用しうる。
樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーγ(A)は、上述した式(1)を満たす範囲にあることが好ましい。本発明の効果を顕著に得る観点では、表面自由エネルギーγ(A)の具体的な範囲は、好ましくは40mJ/m以上、より好ましくは50mJ/m以上、特に好ましくは55mJ/m以上であり、好ましくは90mJ/m以下、より好ましくは85mJ/m以下、特に好ましくは80mJ/m以下である。
樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーγ(A)の水素結合成分γ(A)は、上述した式(2)を満たす範囲にあることが好ましい。本発明の効果を顕著に得る観点では、水素結合成分γ(A)の具体的な範囲は、好ましくは5mJ/m以上、より好ましくは8mJ/m以上、特に好ましくは10mJ/m以上であり、好ましくは30mJ/m以下、より好ましくは25mJ/m以下、特に好ましくは20mJ/m以下である。
樹脂層(A)の表面の表面自由エネルギーγ(A)及びその水素結合成分γ(A)は、例えば、結晶性脂環式重合体が含む官能基の種類及び量、第一樹脂の組成、工程(IV)で行われる親水化処理の条件、などによって調整しうる。
樹脂層(B)の表面自由エネルギーγ(B)は、上述した式(1)を満たす範囲にあることが好ましい。本発明の効果を顕著に得る観点では、表面自由エネルギーγ(B)の具体的な範囲は、好ましくは30mJ/m以上、より好ましくは35mJ/m以上、特に好ましくは40mJ/m以上であり、好ましくは70mJ/m以下、より好ましくは60mJ/m以下、特に好ましくは55mJ/m以下である。
樹脂層(B)の表面自由エネルギーγ(B)の水素結合成分γ(B)は、上述した式(2)を満たす範囲にあることが好ましい。本発明の効果を顕著に得る観点では、水素結合成分γ(B)の具体的な範囲は、好ましくは1mJ/m以上、より好ましくは2mJ/m以上であり、好ましくは20mJ/m以下、より好ましくは15mJ/m以下である。
樹脂層(B)の表面の表面自由エネルギーγ(B)及びその水素結合成分γ(B)は、例えば、第二樹脂が含む重合体の構造及び官能基、第二樹脂が含みうる任意の成分の種類及び量、などによって調整しうる。
第二樹脂の例としては、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、カーボネート樹脂及びアクリル樹脂などが挙げられる。中でも、第二樹脂の種類は、当該第二樹脂によって形成される樹脂層(B)が表面自由エネルギーに係る前記の要件を満たせるように選択することが好ましい。例えば市販の樹脂を第二樹脂として採用する場合、その樹脂によって樹脂層を形成し、当該樹脂層の表面自由エネルギー及びその水素結合成分が上述した要件を満たせるものを選択することが好ましい。
第二樹脂は、重合体を含みうる。ただし、第二樹脂に含まれる重合体としては、通常、結晶性脂環式重合体以外の重合体を用いる。この重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。第二樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
第二樹脂は、重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、第一樹脂が含みうる任意の成分と同じ例が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
第二樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いてもよい。硬化性樹脂を第二樹脂として用いる場合、通常、工程(III)では、非硬化状態の第二樹脂の層を樹脂層(A)の表面に形成した後、第二樹脂を硬化させて、硬化状態の第二樹脂を含む樹脂層(B)を得る。
工程(III)において樹脂層(B)を形成する方法に制限は無い。通常、工程(III)は、第二樹脂を含む塗工液を樹脂層(A)の表面に塗工する工程(III-1)を含む。
塗工液は、必要に応じて、第二樹脂に組み合わせて溶媒を含んでいてもよい。塗工液が含みうる溶媒としては、第二樹脂を溶解させる液体、及び、第二樹脂を分散させる液体のいずれを用いてもよく、両者を組み合わせて用いてもよい。溶媒の種類は、第一樹脂及び第二樹脂の種類に応じて適切なものを選択しうる。溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン等のケトン溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド;トリエチルアミンなどが挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
塗工液の塗工方法の例としては、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
塗工液が溶媒を含む場合、工程(III)は、通常、工程(III-1)の後で、塗工液を乾燥させる工程(III-2)を含む。乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥などが挙げられる。乾燥により、樹脂層(A)の表面に形成された塗工液の層から溶媒が除去されるので、第二樹脂を含む樹脂層(B)が得られる。
例えば第二樹脂が硬化性樹脂である場合、上述した工程(III)は、樹脂層(A)の表面に塗工された第二樹脂を硬化させる工程(III-3)を含んでいてもよい。工程(III-3)を行うことにより、第二樹脂を硬化させられるので、機械的強度に優れる樹脂層(B)が得られる。硬化方法は、第二樹脂の種類に応じた方法を採用しうる。例えば、第二樹脂が熱硬化性樹脂である場合、加熱によって第二樹脂を硬化させることができる。また、例えば、第二樹脂が光硬化性樹脂である場合、紫外線等の光の照射によって第二樹脂を硬化させることができる。ただし、第二樹脂が熱硬化性樹脂である場合、工程(III-2)で加熱乾燥を行うと、乾燥と同時に第二樹脂の効果が進行しうるので、工程(III-3)は省略してもよい。
[6.任意の工程]
上述した光学フィルムの製造方法は、必要に応じて、更に任意の工程を含んでいてもよい。光学フィルムの製造方法は、例えば、工程(II)の後、工程(III)の前に、樹脂層(A)を熱収縮させて、樹脂層(A)に含まれる残留応力を除去する工程を含んでいてもよい。
上述した光学フィルムの製造方法によれば、長尺の光学フィルムを製造することが可能である。そこで、光学フィルムの製造方法は、得られた光学フィルムを巻き取ってロールを得る工程を含んでいてもよい。
また、光学フィルムの製造方法は、光学フィルムを所望の形状にトリミングする工程を含んでいてもよい。
さらに、光学フィルムの製造方法は、更に任意の層を設ける工程を含んでいてもよい。任意の層としては、例えば、導電層、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、セパレーターフィルム等を挙げることができる。
[7.製造される光学フィルム]
上述した光学フィルムの製造方法によれば、第一樹脂で形成された樹脂層(A)と、樹脂層(A)上に第二樹脂で形成された樹脂層(B)とを備える光学フィルムを得ることができる。上述した製造方法は、樹脂層(B)に大きな熱が加わる工程を含まないことができるので、樹脂層(B)におけるクラックの発生を抑制できる。したがって、得られる光学フィルムの樹脂層(B)は、クラックの数が少ないか、クラックを有さないことができる。一実施形態において、樹脂層(B)の2mm×2mmの範囲当たりにおける長さ100μm以上のクラックの数を、3個未満にすることができる。
光学フィルムの樹脂層(A)と樹脂層(B)との密着強度は、高いことが好ましい。このように高い密着強度は、式(1)及び式(2)で表される表面自由エネルギーに関する要件が満たされている場合に、達成できる。一実施形態において、後述する実施例で説明するように、光学フィルムについてJIS K5600-5-6に則ってセロハンテープ碁盤目剥離試験を行う。この場合、樹脂層(B)に形成される区画100マスあたり、セロハンテープを剥がしたことによっても剥離せず光学フィルムに残る区画個数が、90マス以上であることができる。
光学フィルムが備える樹脂層(A)は、第一樹脂を含む。この第一樹脂が結晶性脂環式重合体を含むので、光学フィルムは、結晶性脂環式重合体が示す優れた特性を発揮できる。よって、光学フィルムは、通常、機械的強度、透明性、寸法安定性、軽量性、可撓性、耐熱性、耐折性、低吸水性等の特性に優れる。
光学フィルムが備える樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の結晶化度は、工程(I)よりも高いものでありうる。光学フィルムが備える樹脂層(A)に含まれる結晶性脂環式重合体の結晶化度の範囲は、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、特に好ましくは40%以上である。結晶化度の上限は、通常100%であり、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下などであってもよい。このように高い結晶化度を結晶性脂環式重合体が有する場合、光学フィルムの可撓性、耐熱性、耐折性、低吸水性等の特性を特に良好にできる。
樹脂層(A)の厚みは、特段の制限は無い。光学フィルムが備える樹脂層(A)の具体的な厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
光学フィルムは、前記のように、樹脂層(A)の表面に樹脂層(B)を備える。樹脂層(B)は、樹脂層(A)の片方の表面のみに形成されていてもよく、両方の表面に形成されていてもよい。樹脂層(A)の両方の表面に樹脂層(B)を有する光学フィルムは、両方の樹脂層(B)を同時に形成してもよい。
樹脂層(B)を備えることにより、光学フィルムは、樹脂層(B)に基づく優れた特性を示すことができる。例えば、樹脂層(B)が第二樹脂としてウレタン樹脂、アクリル樹脂等の接着性に優れる樹脂を含む場合、光学フィルムは、樹脂層(B)の面において優れた接着性を示すことができる。
樹脂層(B)の厚みは、特段の制限は無い。光学フィルムが備える樹脂層(B)の具体的な厚みは、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
光学フィルムは、高い全光線透過率を有することが好ましい。具体的には、光学フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。前記全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定しうる。
光学フィルムは、ヘイズが小さいことが好ましい。具体的には、光学フィルムのヘイズは、好ましくは3.0%未満、より好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満であり、理想的には0%である。ヘイズは、ヘイズメーター(例えば、日本電色工業社製「NDH5000」)を用いて測定しうる。
光学フィルムは、光学用途に任意に適用でき、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置の構成要素として用いることができる。中でも、光学フィルムは、その優れた耐熱性及び機械的強度(特に、可撓性)を活用して、表示装置のタッチセンサの構成要素として用いることが好ましい。特に、結晶性脂環式重合体を含む樹脂層(A)を備えた光学フィルムは、耐折性に優れるので、フレキシブルな表示装置に適用可能であり、好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(25℃)、常圧(1atm)及び大気中の条件において行った。
[評価方法]
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMR測定により測定した。
(ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tpc、及び融点Tmの測定方法)
窒素雰囲気下で320℃に加熱して融解させた試料を液体窒素で急冷した。示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温し、試料のガラス転移温度Tg、結晶化温度Tpc、及び融点Tmを測定した。ガラス転移温度Tgは吸熱ピークの極小値、結晶化温度Tpcは発熱ピークの極大値、融点Tmは吸熱ピークの極小値である。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定は以下のようにして行った。オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(重合体の結晶化度の測定方法)
結晶化度は、JIS K0131に準じて、X線回折により確認した。具体的には、広角X線回折装置(リガク社製「RINT 2000」)を用いて、結晶化部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(I)によって結晶化度を求めた。
Xc=K・Ic/It (I)
上記式(I)において、Xcは被検試料の結晶化度、Icは結晶化部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
(表面自由エネルギーの測定方法)
試料の面において、自動接触角計(協和界面科学株式会社製「AutoDispenser AD-31」)を使用して、水、ジヨードメタン及びジエチレングリコールの接触角を、10点測定した。測定には液滴法を用い、着滴3000ms後の液滴形状から接触角を測定した。得られた接触角の平均値から、北崎-畑式(日本接着協会誌、Vol.8,No.3,1972,pp.131-141)にしたがって、表面自由エネルギーを算出した。
(クラックの抑制能力の評価方法(フィルム外観の評価方法))
光学フィルムから、2mm×2mmのサンプルを、9つ切り出した。各サンプルの樹脂層(B)の表面を光学顕微鏡(オリンパスBX51)を用いて観察し、長さ100μm以上のクラックの平均数を求めた。クラックの平均数が3個未満を「良」、3個以上を「不良」と判定した。
(密着強度の評価方法(剥離試験))
光学フィルムからサンプルを9つ切り出した。各サンプルについて、JIS K5600-5-6に則ってセロハンテープ碁盤目剥離試験を行った。具体的には、樹脂層(B)に刻みを付けて、2mm×2mmの大きさの区画を100個、碁盤目状に形成した。セロハンテープ(ニチバン社製、幅24mm)を100個の前記区画上に貼り付け、1秒以内に剥がした。セロハンテープを剥がしたことによっても剥離せず光学フィルムに残った区画個数をカウントした。区画100マスのうち、平均値で90マス以上残ったものを「良」、90マス未満しか残らなかったものを「不良」と判定した。
[製造例1.結晶性を有する脂環式構造含有重合体の製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び、1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行った。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは94℃、融点(Tm)は262℃、結晶化温度Tpcは170℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5部を混合して、第一樹脂としての結晶性樹脂Aを得た。
[実施例1]
(1-1.延伸前フィルムの製造)
結晶性樹脂Aを、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM-37B」)に投入した。前記の二軸押出機によって、結晶性樹脂Aを熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、結晶性樹脂Aのペレットを得た。
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、前記の結晶性樹脂Aで形成された長尺の延伸前フィルム(幅120mm、厚み20μm)を製造し、27m/分の速度でロールに巻き取った。前記のフィルム成形機の運転条件を、以下に示す。
・バレル温度設定:280℃~290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
・キャストロール温度:70℃
(1-2.延伸前フィルムの延伸)
オーブンを備える小型延伸機を用意し、オーブン温度を130℃に設定した。この小型延伸機を用いて、長尺の延伸前フィルムを、延伸温度130℃、延伸速度4.0mm/分、延伸倍率1.2倍で長手方向に延伸して、長尺の延伸フィルムを得た。
(1-3.結晶化処理)
長尺の延伸フィルムから、350mm×350mmの正方形の延伸フィルムを切り出した。この切り出しは、得られた延伸フィルムの正方形の各端辺が、長尺の延伸フィルムの長手方向又は幅方向に平行になるように行った。そして、正方形の延伸フィルムを、小型延伸機(東洋精機製作所社製「EX10―Bタイプ」)に設置した。この小型延伸機は、フィルムの四つの端辺を把持しうる複数のクリップを備え、このクリップを移動させることによってフィルムを延伸できる構造を有していた。
小型延伸機に設置した延伸フィルムに、結晶化処理としての加熱処理を施した。この加熱処理は、フィルムの四つの端辺を保持した状態で、小型延伸機に付属する二次加熱板を延伸フィルムの上側の面及び下側の面に近接させ、30秒間保持することによって行った。このとき二次加熱板の温度は170℃とし、フィルムとの距離は上下各々8mmとした。処理後の延伸フィルムに含まれるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の結晶化度は、45%であった。
(1-4.表面処理)
コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力300W、電極長340mm、搬送速度6m/minの条件で、延伸フィルムの表面に親水化処理としての放電処理を施した。放電処理後の延伸フィルムの表面の表面自由エネルギーγ(A)及びその水素結合成分γ(A)を測定した。
(1-5.樹脂層(B)の形成)
塩素化ポリプロピレン変性アクリル樹脂(DIC社製「WML-350」)及びメチルエチルケトンを含む塗工液を用意した。この塗工液を、延伸フィルムの放電処理面に、バーコーターを用いて塗工した。塗工液の塗工厚みは、得られる樹脂層(B)の厚みが0.5μmとなるように調整した。続いて、塗工された塗工液を乾燥温度90℃及び乾燥時間120秒の乾燥条件で乾燥させて、延伸フィルムの表面に樹脂層(B)を形成した。以上の方法により、樹脂層(A)としての延伸フィルムと、樹脂層(B)とを備える光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムの樹脂層(B)の、延伸フィルムとは反対側の表面の表面自由エネルギーγ(B)及びその水素結合成分γ(B)を測定した。さらに、上述した方法によって光学フィルムのフィルム外観を観察して、クラックの抑制能力を評価した。さらに、上述した方法によって剥離試験を行って、延伸フィルムと樹脂層(B)との密着強度を評価した。
[実施例2]
塗工液を、ウレタンアクリレート系樹脂(日本化工塗料社製「FA-3291」)及びメチルエチルケトンを含む塗工液に変更した。また、延伸フィルムの放電処理面に塗工された塗工液の乾燥後、紫外線照射を行って、放電処理面上のウレタンアクリレート系樹脂を硬化させた。この紫外線照射は、高圧水銀ランプを用いて照度350mW/cm、積算光量1000mJ/cmの条件で行った。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例3]
延伸フィルムの放電処理の際に搬送速度を1.2m/minに変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例4]
延伸フィルムの放電処理の際に、搬送速度を1.2m/minに変更した。また、塗工液を、ウレタンアクリレート系樹脂(日本化工塗料社製「FA-3291」)及びメチルエチルケトンを含む塗工液に変更した。さらに、結晶化フィルムの放電処理面に塗工された塗工液の乾燥後、紫外線照射を行って、放電処理面上のウレタンアクリレート系樹脂を硬化させた。この紫外線照射は、高圧水銀ランプを用いて照度350mW/cm、積算光量1000mJ/cmの条件で行った。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例5]
塗工液を、イソシアネートカーボネート系樹脂(第一工業製薬社製「スーパーフレックス420」)及び水を含む塗工液に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例6]
延伸フィルムの放電処理の際に搬送速度を1.2m/minに変更した。また、塗工液を、アクリル系樹脂(日立化成社製「ヒタロイド7975D」)及びメチルエチルケトンを含む塗工液に変更した。さらに、延伸フィルムの放電処理面に塗工された塗工液の乾燥後、紫外線照射を行って、放電処理面上のウレタンアクリレート系樹脂を硬化させた。この紫外線照射は、高圧水銀ランプを用いて照度350mW/cm、積算光量1000mJ/cmの条件で行った。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例7]
塗工液を、芳香族イソシアネートエーテル系樹脂(第一工業製薬社製「スーパーフレックス870」)及び水を含む塗工液に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例1]
(C1-1.表面処理)
実施例1と同じ方法で長尺の延伸前フィルムを製造し、延伸処理を施して、長尺の延伸フィルムを得た。この延伸フィルムの表面に、コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力300W、電極長340mm、搬送速度6m/minの条件で、親水化処理としての放電処理を施した。放電処理後の延伸フィルムの表面の表面自由エネルギーγ(A)及びその水素結合成分γ(A)を測定した。また、この延伸フィルムに含まれるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の結晶化度は、3%であった。
(C1-2.樹脂層(B)の形成)
塩素化ポリプロピレン変性アクリル樹脂(DIC社製「WML-350」)及びメチルエチルケトンを含む塗工液を用意した。この塗工液を、延伸フィルムの放電処理面に、バーコーターを用いて塗工した。塗工液の塗工厚みは、得られる樹脂層(B)の厚みが0.5μmとなるように調整した。続いて、塗工された塗工液を乾燥温度90℃及び乾燥時間120秒の乾燥条件で乾燥させて、延伸フィルムの表面に樹脂層(B)を形成して、中間フィルムを得た。
(C1-3.結晶化処理)
長尺の中間フィルムから、350mm×350mmの正方形の中間フィルムを切り出し、結晶化処理としての加熱処理を施した。中間フィルムの切り出し及び結晶化処理は、実施例1における延伸フィルムの切り出し及び結晶化処理と同じ条件で行った。結晶化処理により、延伸フィルム中のジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の結晶化が進行して、光学フィルムを得た。この光学フィルムを、実施例1と同じ方法で評価した。
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記の通りである。
結晶化DCPD:結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物(結晶化したもの)。
DCPD:結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物。
WML-350:DIC社製の塩素化ポリプロピレン変性アクリル樹脂「WML-350」。
FA-3291:日本化工塗料社製のウレタンアクリレート系樹脂「FA-3291」。
SF420:第一工業製薬社製のイソシアネートカーボネート系樹脂「スーパーフレックス420」。
7975D:日立化成社製のアクリル系樹脂「ヒタロイド7975D」。
SF870:第一工業製薬社製の芳香族イソシアネートエーテル系樹脂「スーパーフレックス870」。
MEK:メチルエチルケトン。
工程順の欄で「順」:結晶化処理の後で、樹脂層(B)を形成したもの。
工程順の欄で「逆」:樹脂層(B)を形成した後に、結晶化処理を行ったもの。
Figure 2022038918000002

Claims (6)

  1. 結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む第一樹脂で形成された樹脂層(A)を用意する工程(I)と、
    前記樹脂層(A)に結晶化処理を施す工程(II)と、
    前記樹脂層(A)の表面に、第二樹脂によって樹脂層(B)を形成する工程(III)と、をこの順に含む、光学フィルムの製造方法。
  2. 前記工程(III)における前記樹脂層(A)の前記表面の表面自由エネルギーγ(A)、
    前記表面自由エネルギーγ(A)の水素結合成分γ(A)、
    前記工程(III)で形成される前記樹脂層(B)の表面自由エネルギーγ(B)、及び、
    前記表面自由エネルギーγ(B)の水素結合成分γ(B)が、下記式(1)及び式(2)を満たす、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
    10mJ/m ≦ γ(A)-γ(B) ≦ 40mJ/m (1)
    5mJ/m ≦ γ(A)-γ(B) ≦ 20mJ/m (2)
  3. 前記工程(II)と前記工程(III)との間に、前記樹脂層(A)の前記表面に親水化処理を施す工程(IV)を含む、請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記工程(III)が、前記第二樹脂を含む塗工液を前記樹脂層(A)の前記表面に塗工する工程(III-1)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記脂環式構造含有重合体が、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 光学フィルムに含まれる前記脂環式構造含有重合体の結晶化度が、30%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
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