JPH11123731A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

位相差フィルムの製造方法

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JPH11123731A
JPH11123731A JP28991397A JP28991397A JPH11123731A JP H11123731 A JPH11123731 A JP H11123731A JP 28991397 A JP28991397 A JP 28991397A JP 28991397 A JP28991397 A JP 28991397A JP H11123731 A JPH11123731 A JP H11123731A
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film
retardation
stretching
solvent
transport direction
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JP28991397A
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Masahiro Hosoi
正広 細井
Tamiaki Nagoshi
民明 名越
Chieko Miyoshi
千江子 三好
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Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分子のキャスト法による位相差フィルムの
製造方法において、特にレターデーション値の斑が改良
された品質の良好な光学用途に好適な位相差フィルムを
製造する。 【解決手段】 延伸前に搬送方向処理工程にて規定量の
溶媒を含有したフィルムを、搬送方向に張力をかけつつ
特定長に把持し、フィルム雰囲気を特定温度に保ち厚み
斑を小さくした後、乾燥し、特定の条件で延伸する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は溶液キャストした
高分子のフィルムを延伸して位相差フィルムを製造する
方法に関する。さらに詳細には、高分子のフィルムを延
伸してレターデーション斑(従って、位相差補償フィル
ムとしたときの色斑、視野角特性の斑)などを発生しな
い位相差フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性高分子フィルムによる位相差板
は防眩材料として、また、液晶表示装置における位相差
補償板としてその用途が広がっている。高分子フィルム
の位相差板は、延伸による分子配向によって生じる複屈
折性を利用するものである。この位相差板の製造方法と
して各種の高分子フィルムを一軸延伸することによって
製造する方法が知られている。一般には固有複屈折性の
大きいポリカーボネート系樹脂を一軸延伸したものが用
いられている。
【0003】位相差板の備えるべき特性は次の4点が特
記される。
【0004】1)透明性が優れることに加えて、フィル
ムの外観欠点、例えば擦り傷やスクラッチ、フィルムの
波打ち等が無く平坦性が良いこと。
【0005】2)レターデーション斑および遅相軸の角
度のばらつきが小さいこと。
【0006】液晶表示画面の大型化にともなって、部材
も大型化する必要から各種の問題が顕在化している。す
なわち、フィルムの小さい範囲でなら比較的容易に制御
できた特性値も、大型化にともなって、より広く大きい
フィルムでの特性の均一性が要求されてきている。
【0007】例えば、位相差フィルムの面内において相
互に10cm離れた2点間のレターデーション値の差が
5nmを超えると、液晶表示装置に生じた色斑が肉眼で
も識別でき、液晶表示装置として使用できないとされて
いるため、シート状フィルム又はロール状に巻かれたフ
ィルムの巾方向、フィルム搬送方向のどの場所でも相互
に10cm離れた2点間のレターデーション値の差が5
nm以下であることが要求されている。
【0008】また遅相軸に関しても同様にフィルムロー
ルのどの場所で部材を切りとっても均一であることが要
求されている。これは、遅相軸が均一に分布していない
場合には、位相差フィルム同士又は他の部材と組み合わ
せて用いる場合等に軸合わせが煩雑になる問題が生じる
ためである。
【0009】3)微小な範囲のレターデーション斑が小
さいこと。
【0010】微小な範囲のレターデーション値の差、例
えば、フィルム面上で10mm離れた点のレターデーシ
ョン値の差、が1.5nm以下であることが要求されて
いる。この値を超える場合には偏光板間にこのフィルム
を挟んで見た場合に色斑が検知される場合があり得る
し、位相差板同士や位相差板と偏光板とを複数枚重ねて
液晶表示素子として用いた場合にレターデーション値の
斑が加算されることがあり、色斑となって検知されるた
め問題になる。
【0011】4)視野角特性を極力良くすること。
【0012】視野角を大きくした場合にも液晶表示装置
の表示が良好に見えるようにする必要がある。液晶表示
装置の画面の大型化にともない、そこで使用される位相
差フィルムも大きくなり必然的により大きな面での特性
値の均一性の要求が増大するからである。
【0013】従来の技術として、縦一軸延伸法による位
相差フィルムおよびその製造方法に関し、いくつかの技
術が提案されている。例えば、特開平8―101306
号公報にはフィルムを縦一軸延伸する位相差板の製造方
法において、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向に温度勾配
を設けて縦一軸延伸する方法が開示されている。この方
法は確かに効果があると思われるが、延伸前のフィルム
の特性に応じて温度勾配を微妙に付ける必要が生じ、実
際は製造上の制約条件を大幅に増やすなどの問題があ
る。すなわち、フィルムの幅方向の温度を微妙に制御で
きたとしても、レターデーション値は複屈折Δnとフィ
ルム厚みとの積で表されるため、レターデーション値を
決める要因はフィルムの厚みの幅方向分布にもあり、原
反フィルムが変わる都度そのフィルムの厚み斑に合わせ
てその温度をフィルム幅方向で微妙に制御する等煩雑な
操作も必要になるという問題がある。
【0014】さらに、延伸時に生じる光学斑を解消する
方法として延伸時のフィルム中の溶媒量を規定する方法
が開示されている。これらの公知文献として特開平4―
282212号公報、特開平4―204503号公報、
ならびに特開平5―113506号公報等をあげること
ができる。これらの方法は溶媒量を比較的多くして一軸
延伸を行うものである。これらの方法によれば含有溶媒
量に応じて見かけ上のガラス転移温度が下がるため、確
かに比較的低温で延伸を実施できる利点がある。
【0015】しかし、これらの方法では延伸開始線を幅
方向で一直線にするのが難しいことと、搬送方向で延伸
点(延伸線)を固定するのが難しく、幅方向、搬送方向
のレターデーション斑を生じやすい問題がある。
【0016】特開平4―204503号公報に延伸直前
のフィルムの溶媒含有量を固形分基準(乾燥した溶質
(固形分)中に含まれる溶媒の量)で2〜10%にして
延伸する方法、特開平5―113506号公報には、溶
媒含有量が固形分基準で3〜10%の範囲にあるときに
155℃以上、175℃以下の雰囲気内において、延伸
する視野角特性に優れた位相差フィルムの製造方法が記
載されている。
【0017】これらの方法では、溶媒含有量が多いフィ
ルムを延伸するため部分的に延伸性に差が生じ易く、こ
のため延伸後に複屈折斑が生じる問題があり、レターデ
ーション値を所望の値に合わせることや、微小なレター
デーション斑を制御することが難しい。また、延伸時の
フィルム中の溶媒量が多いため延伸処理後にも溶媒が残
りやすく、この残存溶媒が液晶表示装置用の部品を作成
するときの加工時に悪影響を及ぼす場合がある。一方、
延伸後の溶媒含有量をさらに少なくしようとすれば、乾
燥のための工程を追加する必要があることやそうした場
合に、乾燥の加熱温度によりせっかく配向させた分子鎖
の緩和が起こり所望のレターデーション値に特性を合わ
せることが難しいという課題もある。
【0018】多量に残留溶媒を含む場合の延伸法の改良
法方法して、溶媒含有量をより少なくして一軸延伸する
技術が提案されている。特開平8―211224号公報
には溶媒含有量が2重量%未満である状態で延伸する技
術が開示されているが、この方法は、高濃度溶媒含有に
よって部分的に延伸性に差が生じこれにより延伸後の膜
厚および高分子の配向性、すなわち、複屈折性に斑を生
じることを改良するためのものである。確かにこの方法
によれば上記の位相差板の備えるべき特性の内、フィル
ムの広い面積でのレターデーション値の範囲を小さくで
きると思われる。しかし、フィルム面上で10mm程度
離れた点の微小な範囲のレターデーション値の斑は解消
できなかった。
【0019】また、レターデーション値Δn*dが、複
屈折値Δnとフィルム厚みdとの積により決まることに
着目し、微小な範囲の厚み斑を規定した位相差板又は無
延伸のフィルムにおいて微小な範囲でフィルム面内の厚
み差をコントロールすることで、レターデーション値の
差を小さく着色斑ならびにレターデーション斑を抑える
技術が提案されている。
【0020】特開平2―59703号公報には厚み
(x)のフレ幅が0.1x以下、且つその変化率が0.
015x/cm以下である高分子フィルムを一軸に延伸
して、レターデーション値のフレ幅が10%以下、その
変化率が1.8%/cm以下である位相差フィルムの製
造方法が開示されている。
【0021】特開平8―101305号公報には、複屈
折性を有する高分子フィルムであって、フィルム面内の
任意の点から1cm離れた場所との厚みの差が0.3μ
m以下であることを特徴とした位相差板によって目的が
達成できると報告されている。
【0022】特開平8―101308号公報には、未延
伸フィルムの厚みの変化がフィルム搬送方向、幅方向と
もに、隣り合った厚い部分と薄い部分の厚みの差が0.
5μm以上3μm以下で、ピッチが1mm〜40mm以
下である波状の変動を有する原反フィルムを一軸又は二
軸に延伸してなり、フィルム面内にて相互に10cm離
れた任意の2点間のレターデーション値の差が5nm以
下であることを特徴とする位相差板が提案されている。
【0023】このように原反フィルムに細かい波状の厚
み変動を作ることによって、フィルム面内に厚みの薄い
部分を無数に有する原反フィルムになる。フィルム面内
に延伸開始点が無数に存在することになりそのため大き
な延伸斑は発生しなくなるとされているが、このような
厚み変動をフィルム面全体に均一に作ることは実際上極
めて難しいという問題がある。
【0024】一方、延伸前のフィルムで厚み斑の少ない
ものを作る技術は、特に微小な範囲の厚み斑、例えばフ
ィルム搬送方向に連続した狭幅のリップ筋や搬送方向に
間欠的に発生する細い筋状の厚み斑を解消するのが難し
いという問題を未解決のまま抱えている。また、フィル
ムの搬送方向にはほぼ直交するような筋状または帯状の
厚み斑についてそれを解消するのが難しいという問題は
解決されていない。
【0025】このような厚み斑が一軸延伸後も残り位相
差フィルムとしての品質を損ねる場合が多いのが現状で
ある。
【0026】上述の位相差板の備えるべき特性の内、
「2)」に示した比較的広い面積中でのレターデーショ
ン斑は、従来技術によって大幅に改良されてきている。
しかしながら、「3)」に示したフィルム面上の微細な
範囲のレターデーション値斑の解消技術については、ま
だ課題が残されている。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は上述の如き
問題点に着目してなされたものであり、レターデーショ
ン斑が十分に少なく、特に微小な範囲のレターデーショ
ン斑が解消された、視野角特性にも優れた、高性能の位
相差補償板の製造方法を提供しようとするものである。
【0028】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは上記課題
を解決するため、溶液キャストフィルムの延伸のメカニ
ズムを鋭意検討の結果、レターデーション値斑、微小レ
ターデーション値斑ならびに遅相軸のばらつきを抑える
ためには、フィルムを規定量の溶媒を含有した状態で縦
方向に張力をかけ処理し、ついでピンテンターで処理
し、その後懸垂型乾燥機により処理し、更に、縦又は横
方向に一軸延伸することにより目的が達成できることを
見いだし本願発明に到達したものである。
【0029】溶媒を高濃度に含有した状態でフィルムに
僅かな張力を掛けると、大きな延伸をする場合とは異な
り、フィルム面内で周囲よりも含有溶媒量の多い部分、
従って、周囲よりも厚みが局所的に厚い帯状や筋状の見
かけのガラス転移点が低い部分が局所的に延伸され、そ
の結果、厚み斑を小さく改良できることが見出された。
ここで、見かけのガラス転移点とは溶媒を含有する高分
子フィルムのガラス転移温度であり、この温度は乾燥が
進むにつれ溶媒含有量の減少とともに上昇するものであ
る。
【0030】またその周囲よりも厚かった帯状や筋状部
分の位相差は、フィルムの搬送方向に張力を掛ける処理
を行なった後もほとんど変わることがないことが見出さ
れた。このことは、その部分についてレターデーション
値の測定をした結果、特に分子配向が増したという変化
は観察されなかったことにより確かめられた。その結果
から、帯状や筋状になっていた部分の構造変化は、この
程度の延伸によっては、実質的に起こっておらず、通常
の方法では検出できないくらいに小さいものであろうと
推定された。すなわち、規定条件(溶媒含有量、温度、
伸張率)でフィルムに張力を掛ければ分子配向構造を殆
んど変化させることなく厚み斑を小さくできることを見
いだした。
【0031】またポリカーボネートの一軸延伸時のレタ
ーデーション値の延伸温度依存性について、例えば帝人
化成(株)製のポリカーボネート(商品名パンライトC
―1400QJ)の溶媒を含有しないフィルムを1.1
〜1.6倍に延伸して位相差フィルムを作る場合、延伸
温度を1℃だけ上げるとレターデーション値は約30n
m低下すること、また含有溶媒としてメチレンクロライ
ドが存在するフィルムを延伸する場合では、同様の延伸
条件下溶媒を0.1重量%増やすとレターデーション値
は約9nm低下すること、フィルムの見かけのガラス転
移温度は1.4℃低下すること(特開平7―29982
8号公報)等の知見を得た。
【0032】これらの事実からレターデーション値斑の
制御には、延伸の温度(幅方向にも、フィルム搬送方向
にも)延伸の倍率を精密にコントロールすること、ま
た、溶媒を含有する場合、微量の溶媒量で見かけのガラ
ス転移温度が著しく変わるから、延伸に際しては、含有
溶媒量も極力均一になるように制御することが必要であ
る事がわかり、本願発明の完成に至ったものである。
【0033】すなわち、本願発明の方法は、高分子溶液
を支持体上にキャストし、得られたフィルムを乾燥した
後延伸することにより高分子からなる位相差フィルムを
製造する方法において、 1. 高分子溶液を支持体上にキャストし、得られたフ
ィルムを乾燥した後、延伸することにより高分子からな
る位相差フィルムを製造する方法において、 支持体よりフィルムを剥離し、乾燥して、搬送方向
処理工程の入り口で含有溶媒量が8〜20重量%となる
ように調節し、 搬送方向処理工程において、搬送方向のフィルムの
長さが、搬送方向処理工程直前におけるフィルムの長さ
の100%〜110%になるように、フィルムの雰囲気
温度が(Tg+10)〜(Tg+50)℃下、上記フィ
ルムを処理し、 次いで、乾燥処理工程において、フィルムをピンテ
ンターにより把持し、フィルム雰囲気温度Tg′〜(T
g′+55)℃下、上記フィルムの溶媒含有量が5.0
重量%以下となるまで乾燥し、 さらに、懸垂型乾燥機処理工程において、該フィル
ムを懸垂型乾燥機により、フィルムの含有溶媒量が2.
0重量%以下となるまで、雰囲気温度(Tg´´−2
0)〜(Tg´´+10)℃下、乾燥処理し、 その後、さらに、延伸工程において、該フィルムを
Tg´´´〜(Tg´´´+45)℃下、フィルムの搬
送方向に又は搬送方向と直交する方向に1.1〜3.2
倍一軸延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造
方法、および、 2. 高分子溶液がポリカーボネートの溶液であること
を特徴とする上記1記載の位相差フィルムの製造方法、
である。
【0034】なお、Tg、Tg′、Tg´´、Tg´´
´(℃)は、それぞれ、搬送方向処理工程、乾燥処理工
程、懸垂型乾燥機処理工程および延伸工程の入り口にお
ける、溶媒を含有する高分子フィルムのガラス転移温度
である。この温度は乾燥が進むにつれ溶媒含有量の減少
とともに上昇する。
【0035】本願発明において用いられる高分子につい
ては、希望するフィルムの諸特性が得られるものであれ
ば特に制約はない。高分子としては例えばポリカーボネ
ート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリ
レート、ポリスチレン、トリアセチルセルロースなど従
来公知のもので溶液流延法で製膜できるものが挙げられ
る。すなわち溶液流延法に必要な濃度、粘度を持った溶
液を形成する高分子溶液であれば本願発明方法に適用で
きる。これらのなかでも特にポリカーボネートが好まし
い。
【0036】一般に、ポリカーボネートと総称される高
分子材料は、重縮合反応で生成され、主鎖が炭酸結合で
結ばれているものを総称する。ポリカーボネートはビス
フェノール誘導体と、ホスゲンあるいはジフェニルカー
ボネートとから重縮合反応により得られるものが多い。
【0037】ビスフェノール誘導体については、経済性
および達成面からビスフェノールAと呼称されている
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使
用する芳香族ポリカーボネートが好ましいが、適宜各種
ビスフェノール誘導体を選択することで、ポリカーボネ
ート共重合体を構成することが出来る。
【0038】かかる共重合成分としてビス(4−ヒドロ
キシフェニル)メタン、1,1―ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)シクロヘキサン、9,9―ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)フルオレン、1,1―ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)―3,3,5−トリメチルシクロヘキサ
ン、2,2―ビス(4−ヒドロキシ―3−メチルフェニ
ル)プロパン、2,2―ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)―2−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフル
オロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェ
ニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファ
イド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン等を
あげることができる。さらに、これらのフェニル基の水
素基が一部メチル基やハロゲン基で置換されているもの
も含む。
【0039】また、一般に炭酸成分の一部をテレフタル
酸及び/又はイソフタル酸成分で置き換えたポリエステ
ルカーボネートを使用することも可能である。このよう
な構成単位を、ビスフェノールAをビスフェノール誘導
体として用いるポリカーボネートの構成成分の一部に使
用することによりポリカーボネートの性質、例えば耐熱
性、溶解性を改良することができるため、このような共
重合体も本願発明では用いることができる。
【0040】本願発明において用いられるポリカーボネ
ート系樹脂の分子量は、濃度0.5g/dlの塩化メチ
レン溶液中20℃での粘度測定から求めた粘度平均分子
量で10,000以上200,000以下であり、好ま
しくは20,000以上120,000以下の範囲が用
いられる。粘度平均分子量が10,000より低い樹脂
を使用すると得られるフィルムの機械的強度が不足する
場合がある。また200,000を越える高分子量にな
るとドープ粘度が高くなりすぎて溶解やキャスト工程で
の取り扱い上問題を生じるので好ましくない。
【0041】本願発明において用いられる溶媒としては
塩化メチレンを主体とする溶媒や1,3―ジオキソラン
を主体とする溶媒が挙げられる。
【0042】ポリカーボネートの溶液を作成する具体的
方法としては、塩化メチレン中にポリカーボネートを投
入攪拌して溶解する。要すれば、予め塩化メチレン中に
剥離助剤として所定量のエタノールを混合しておき、そ
こにポリカーボネートを投入して室温で攪拌溶解する方
法が挙げられる。
【0043】ポリスルホン、ポリエーテルエステル、ポ
リアリレート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース
の各溶液についても同様に、塩化メチレンを主体とする
溶媒や1,3―ジオキソランを主体とする溶媒にこれら
の樹脂を溶解させることにより調製することができる。
【0044】本願発明において高分子溶液の濃度を10
〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%に調製
することにより溶液流延法により好適にフィルムを製膜
することができる。
【0045】このようにして得られた溶液は、公知の方
法でスチールベルトやドラム又は支持体フィルム(一般
的にはポリエステルの2軸配向フィルム)面上などに、
キャストし、乾燥して半乾きの状態で支持体より剥離す
る。
【0046】剥離後のフィルムの溶媒含有量は、当該フ
ィルムの乾燥等により、搬送方向処理工程の入り口で8
〜20重量%になるように調節する。本願発明の方法に
おいてはキャストの剥離直後から搬送方向処理工程入口
までのガイドロールのあいだで室温〜80℃の温度で乾
燥することによってこの目的を達成することができる。
【0047】このようにして溶媒含有量を8〜20重量
%に調節したフィルムは、ついで、搬送方向の長さが元
のフィルム長さに対して100%〜110%となるよう
に張力を掛けて処理する工程である搬送方向処理工程に
通す。100%の場合にも張力を掛けることになるのは
収縮があるためである。また、この際のフィルムの雰囲
気温度を(Tg+10)〜(Tg+50)℃となるよう
に加熱処理する。ここで、Tgとは、搬送方向処理工程
の入り口における溶媒を含有した高分子フィルムの、当
該溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表
示)である。
【0048】含有溶媒量が8〜20重量%のフィルムを
搬送方向処理工程で上記のように加熱乾燥することによ
り、溶液キャストの工程で発生した厚み斑(フィルム搬
送方向にほぼ直交した厚み斑)を小さくすることができ
る。
【0049】含有溶媒量が8重量%未満で上記のように
加熱乾燥した場合は、フィルム全体の平均的な溶媒量が
低いため、フィルムの厚みが大きい部分と小さい部分の
溶媒量の差が小さく、したがってガラス転移点の差が少
なく、厚み斑を良化する効果がなくなる。また、このフ
ィルムをその後の工程で縦方向又は横方向に一軸に延伸
してもそのまま斑が残り、微小な厚み斑を解消すること
ができない。
【0050】一方、搬送方向処理工程における含有溶媒
量が20重量%を超える場合には、乾燥による溶媒の蒸
発が急激すぎるため、厚み斑を良くすることができな
い。さらに、含有溶媒量が20重量%を超える場合に
は、微小な気泡がフィルム中に発生すると言う問題があ
る。
【0051】上記の、フィルムの雰囲気温度が(Tg+
10)〜(Tg+50)℃であるとは、具体的にはポリ
カーボネート溶液については50℃〜100℃、より好
ましいフィルム雰囲気温度は80〜100℃である。
【0052】搬送方向処理工程のフィルム雰囲気温度が
(Tg+10)℃より低い場合には当該工程中における
溶媒の乾燥が十分に行われないために次ぎの乾燥処理工
程において含有溶媒の影響によりフィルムの特性を制御
できないことがある。また、フィルム雰囲気温度が(T
g+50)℃を超える場合には特に光学特性(レターデ
ーション値や遅相軸ならびにそれらの斑、ばらつき)が
所望の値からはずれてしまうことがある。
【0053】搬送方向処理工程において、溶媒含有フィ
ルムに張力を掛けるための装置は、低速ロール側から高
速ロール側へフィルムを通す従来公知の方法をとること
ができる。上記のロールにはニップロールを用いるか、
又はロールのフィルムの抱き角を適度に大きくして摩擦
力によりフィルムの滑りを抑えることが好ましい。
【0054】搬送方向処理工程で、フィルム搬送方向に
張力をかけ、搬送方向のフィルムの長さが、元の(すな
わち、搬送方向処理工程直前におけるフィルムの長さ
の)100%〜110%(伸長量0%〜伸長量10%)
になるようにして制御することにより、溶液キャストの
工程で発生した搬送方向にほぼ直交する方向の厚み斑を
少なくすることができる。
【0055】搬送方向処理工程ではフィルムの乾燥が起
こるので、フィルム搬送方向で張力をかけないで自由長
とした場合には、フィルム搬送方向のフィルムの長さが
元のフィルム長さの96%以下(縮少量4%)となるフ
ィルムの収縮が起こるが、搬送方向処理工程で元のフィ
ルムの長さの100%(縮少量0%)〜元のフィルムの
長さの110%(伸長量x10%)となるようにして制
御する場合には、フィルム搬送方向を自由長とした場合
にくらべ伸張力と同時にフィルムの収縮応力が発生し、
帯状部や筋状部の厚み斑を良くすることができる。
【0056】これに対し、搬送方向処理工程でフィルム
の長さを110%を超える値(伸長量が10%を越える
場合)とする場合は、溶媒蒸発による収縮応力が大のた
めレターデーション値ならびに遅相軸の大きさや分布の
フィルム幅方向のばらつきが大きくなり、本願発明の目
的が達成できなくなるので好ましくない。
【0057】搬送方向処理工程の処理を終えたフィルム
は、次の乾燥処理工程において、フィルムの幅方向の両
端部をピンテンターにより把持し、またその把持の際に
その把持幅が当初幅の95%〜99%となるようにして
フィルム幅方向に極力張力をかけない状態(通常はピン
で突き刺し固定して搬送する)で連続的にフィルム雰囲
気温度Tg′〜(Tg′+55)℃になるようにして、
フィルムの溶媒含有量が5.0重量%以下となるまで加
熱乾燥する。その把持幅が当初幅の95%未満の場合も
99%を越えている場合も、原因は異なるのであろう
が、いずれも、レターデーション値斑が増大し、遅相軸
のばらつきが大きくなる。
【0058】なお、ここで、Tg′は、乾燥処理工程の
入り口における溶媒を含有した高分子フィルムの、当該
溶媒を含有した状態におけるガラス転移温度(℃表示)
である。
【0059】乾燥処理工程の出口においてはフィルムを
室温まで冷却しフィルムの構造を固定する。また、ピン
テンターのピンで把持した約50mmの両エッジ部を切
除する。両エッジ部を切除しない場合にはピンの突き刺
し孔等から生じた白粉(ピンによる削れ粉)がフィルム
の製品になる部分に再付着し汚染してしまうという問題
を生じる。
【0060】乾燥処理工程を終えたフィルムは、次いで
フィルムをロール懸垂型乾燥装置を用いて乾燥する工程
である懸垂型乾燥機処理工程に通膜する。このロール懸
垂型乾燥装置を用いた乾燥処理工程においてはフィルム
の特性を次のように制御することにより次の延伸の工程
のレターデーション斑を良化することができる。
【0061】すなわち、(Tg´´−20)〜(Tg´
´+10)℃下、乾燥処理し、含有溶媒量を、懸垂型乾
燥機処理工程出口で、2.0重量%以下、好ましくは
0.5〜2.0重量%、より好ましくは0.5〜1.6
重量%に制御する。溶媒含有量が上記の範囲を外れる場
合、次の延伸の工程のレターデーション斑を良化するこ
とができず、特性の優れた位相差フィルムを製造するこ
とができない。
【0062】懸垂型乾燥機処理工程を終えたフィルム
は、さらに、延伸工程で1.1〜3.2倍搬送方向に又
は搬送方向と直交方向に一軸延伸する必要がある。その
際、延伸温度とロール間長(延伸スパン)を厳密に制御
する。延伸の開始点(又は延伸開始線)から延伸終了ま
での延伸ニップロール間の長さを延伸前のフィルムの幅
に対して1.5倍以上4.0倍以下にすることが好まし
い。
【0063】上記延伸ニップロール間長が延伸前フィル
ム幅の1.5倍以上4.0倍以下であれば、フィルムが
延伸された延伸の終了点がこの間にある間にフィルム幅
および厚みの自由な変化(幅及び厚みの減少)が起こ
る、いわば、自由幅一軸延伸、自由厚み一軸延伸となっ
て、延伸方向の主屈折率をnx、延伸方向に直交方向の
主屈折率をny、厚み方向の主屈折率をnzとしたときの
yとnzとが等しくなるような理想の一軸延伸構造とな
り、視野角特性が向上する。上記延伸ニップロール間長
がフィルム幅に対して1.5倍未満の場合には、フィル
ム幅方向の自由な収縮に基づく高分子鎖の延伸軸に沿う
回転が起こりにくいため、いわゆる面配向が大きい(厚
み方向の屈折率が小さい)ままでフィルムの光学的構造
が固定される。すなわち、屈折率nyとnzとが等しくな
る理想の一軸延伸とはならず、視野角特性は向上しな
い。
【0064】本願発明に係る延伸工程における延伸の温
度はTg´´´〜(Tg´´´+45)℃である。ここ
で、Tg´´´は、延伸工程の入り口における溶媒を含
有した高分子フィルムの、当該溶媒を含有した状態にお
けるガラス転移温度(℃表示)である。延伸温度をこの
ように設定することによって一軸延伸中におけるフィル
ムの幅方向の自由収縮によりnyの低下とnzの上昇がお
こり易く、また縦方向の弛緩の寄与もある程度効いて、
視野角特性を向上させることができる。延伸の温度がT
g´´´℃未満の場合には、この縦と横方向の分子鎖の
弛緩が起こりにくいから、このような場合にはこの弛緩
の時間を長くとることが必要となり、ロール間の長さを
長大なものとするか、又は熱弛緩のための工程が別途必
要となり好ましくない。延伸温度が(Tg´´´+4
5)℃より高い場合には分子鎖の配向を上げることが難
しくなり、得られるフィルムのレターデーション値の斑
が増大するので好ましくない。より好ましい延伸温度は
(Tg´´´+10)〜(Tg´´´+30)℃であ
る。
【0065】延伸開始直前のロールに巻き掛けられたフ
ィルムはニップロールでおさえるが、本願発明における
条件によれば問題なく延伸ができる。延伸終了点のロー
ルもフィルムをニップするようにする。ここでフィルム
を高温でニップすると、延伸時に発生した小さなピッチ
の波状斑がロール上で押さえられ、皺が固定されてしま
うことがあるのでニップロールの温度を延伸温度より数
度低くすることが好ましい。
【0066】延伸は、延伸前ロールと延伸終了後のロー
ル間でフィルムを空気噴流で加熱し、延伸前ロールと延
伸終了後のロールとの間でされることが多い。空気噴流
は幅方向で均一に熱風がでるようにしたスリットノズル
によって、フィルムが延伸ロールを離れる直後に吹き付
け、延伸が開始されるようにする。熱風の噴流の速度は
フィルムへの熱伝達率を極力大きくするため15〜30
m/secの範囲が好ましい。このための装置として、
空気浮遊式の熱風装置を好ましく用いることができる。
延伸中のフィルム全面にわたって熱風を吹きつける点
で、また熱風の風速、熱風の温度を延伸ロール間のフィ
ルム搬送方向で変えることもできる点でこの方法は極め
て好都合である。
【0067】その後、延伸終了後のフィルムは冷却しロ
ール状に巻き取られ、製品となる。
【0068】
【実施例】以下に実施例により本願発明を詳述する。測
定は以下の方法で実施した。なお、本願発明は下記の実
施例によって制限されるものではない。
【0069】1) レターデーション値Re、レターデ
ーション値Reの範囲、フィルム微小部分のレターデー
ション値Reの差の最大値および遅相軸角度の測定 フィルムの全幅で搬送方向1mのサンプルについてレタ
ーデーション値連続測定器(新王子製紙(株)製の商品
名KOBRA―21SDH)を使用して、光線をフィル
ム面に垂直方向に入射し、5mm間隔でレターデーショ
ン値Re、レターデーション値Reの範囲、フィルム微
小部分のレターデーション値Reの差の最大値および遅
相軸角度を測定した。
【0070】イ. レターデーション値Re、レターデ
ーション値Reの範囲 測定サンプル全長(フィルム搬送方向1m長)および全
幅の範囲のレターデーション値Reを5mm間隔で測定
した。
【0071】また、その全長と全幅のそれぞれについ
て、最大値と最小値との差を求め、この二つの値のうち
の大きい方をレターデーション値Reの範囲として、均
一性の一つの尺度(単位nm)とした。
【0072】通常求められる10cm長におけるレター
デーション値Reの差ではなく1m長または全幅の範囲
のレターデーション値Reの最大値と最小値との差をレ
ターデーション値Reの範囲としたのは、より、厳しい
使用条件に耐えるようにするためである。
【0073】ロ. フィルム微小部分のレターデーショ
ン値Reの差の最大値 測定サンプル全長(フィルム搬送方向1m長)および全
幅について5mm間隔で測定した上記のレターデーショ
ン値Reの、次の隣りの点との間、すなわち10mm間
のレターデーション値Reの差を測定し、その最大値を
フィルム微小部分のレターデーション値Reの差の最大
値とし、均一性のもう一つの尺度(単位nm)とした。
それが大きい場合にはフィルムを偏光板にはさんでみる
ときにその部分が筋状の色斑となって見える場合があ
る。
【0074】ハ. 遅相軸角度 遅相軸角度は上記レターデーション値Reの測定時に同
時に測定した。遅相軸角度はフィルムの搬送方向を0゜
とし反時計方向をプラスとしたものである。
【0075】なお、測定サンプル全長における測定は、
サンプルを幅方向に見たときの中央部分に当たる部位に
ついて行ったものである。
【0076】2) フィルム中の溶媒含有量の測定 溶媒を含有したフィルム約5gを採取し、170℃の熱
風乾燥機で一時間乾燥させた後室温まで冷却した。その
際、当該乾燥前後の重量を化学天秤で精秤し、その変化
率を求めた。これにより固形分基準の溶媒含有量を求め
た。具体的には、フィルムを幅方向に5等分して測定し
た。そしてこれを3回、別々の幅方向について実施し、
その平均値を求める方法によった。
【0077】当該乾燥前の重量をa、乾燥冷却後の重量
をbとした場合、固形分基準の溶媒含有量の個々の測定
値は、((a−b)/b)*100(%)で表すことが
できる。
【0078】3) 視野角特性の測定 視野角特性の測定の場合には、レターデーション値Re
及び遅相軸角度の測定に使用したレターデーション連続
測定器(新王子製紙(株)製の商品名KOBRA―21
SDH)ではなく、自動複屈折率測定装置(新王子製紙
(株)製の商品名KOBRA―21ADH)を用いた。
【0079】測定は、フィルムの面に垂直に光線を入射
して測定したレターデーション値をRe(0)とし、次
いでフィルムサンプルを入射光線に対して遅相軸を回転
軸として回転させ、入射角を40゜として測定したとき
のレターデーション値をRe(40)とし、Re(0)
とRe(40)との差の絶対値からレターデーション値
の変化率を、下記の式により、視野角特性として、求め
た。すなわち、この変化率の小さな方が視野角特性に優
れることを意味する。
【0080】
【数1】[|Re(0)−Re(40)|/Re
(0)]×100
【0081】この測定範囲は測定サンプル全長(フィル
ム搬送方向1m長)および測定サンプル全幅とし、この
各々を100mm長単位で区切って方眼を作り、その個
々の方眼の中央部で測定した。この視野角特性値は最小
値と最大値とを「〜」で結んで示した。
【0082】4) ガラス転移温度Tg、Tg′、Tg
´´、Tg´´´の測定 フィルムサンプル約10mgを用い、加熱速度10℃/
min.でDSC曲線を求めた。この曲線の立ち下がり
(変曲点)部を見かけのガラス転移温度Tg、Tg′、
Tg´´、Tg´´´とした。
【0083】5) 厚み斑の測定 アンリツ(株)製の連続厚み計を用いて、厚み斑を測定
した。測定は、全幅でフィルム搬送方向1mのサンプル
を採取し、フィルム幅方向全幅、フィルム搬送方向1m
について行った。
【0084】厚み斑は、このようにして測定した厚みの
データの内の最大値と最小値の差を幅方向とフィルム搬
送方向に別々に求め、その値の内の大きい方を採ったも
のである。なお、フィルム搬送方向の場合には、当該フ
ィルムを幅方向に見た場合に中央となる部分について1
mの長さを測定長とした。
【0085】また、微小な筋状のまたは帯状の厚み斑
は、ほとんどの場合その長軸がフィルムの搬送方向に直
交する形となるため、フィルム搬送方向に厚みを連続測
定し、この測定を幅方向に少しずつずらして繰り返すこ
とにより、厚みのベースラインからのずれとしてμm単
位で求めた。
【0086】[実施例1]帝人化成(株)製のポリカー
ボネート(商品名パンライトC―1400QJ、粘度平
均分子量3.8万、メチレンクロライドを含まないポリ
マーのガラス転移点は159℃であった。)をメチレン
クロライドに溶解し18重量%の溶液を作成した。これ
をスチールベルト上に流延し乾燥し、厚み斑の小さいフ
ィルムとなし、ベルト面より剥ぎ取った。このフィルム
の特性は次の通りであった。
【0087】溶媒含有量 :18%(フィルム幅方向
の平均値、搬送方向処理工程入り口での値) Tg :45℃(溶媒を含んだ状態で測定、搬
送方向処理工程入り口での値) フィルム厚み :70μm フィルム幅 :1500mm 厚み斑 :1μm(フィルム1450mm幅、フ
ィルム長さ1000mm) 微小な筋状の又は帯状の厚み斑は、フィルム搬送方向長
さ1000mm中に、0.5〜0.7μmの高さで20
〜25mmの幅のものが3本あった。
【0088】次いで、このフィルムを搬送方向処理工程
に通し、搬送方向のフィルムの長さが元の長さの106
%になるようにして、フィルムの雰囲気温度が80℃
下、フィルムを処理した。
【0089】次いで、このフィルムを、乾燥処理工程に
おいて、ピンテンターで把持し、フィルム幅方向の端部
を把持幅を95%〜99%となるようにしてフィルム幅
方向に極力張力をかけず両端を把持された(通常はピン
で突き刺し固定して搬送する)状態で連続的にフィルム
雰囲気温度120℃になるように加熱乾燥した。なお、
乾燥処理工程入り口におけるTg′は68℃であった。
【0090】次いでフィルムを把持したまま室温まで空
冷しピンテンター出口にて両エッジ部を50mmずつ切
除した。
【0091】かくして得られたフィルムの特性値は下記
の通りであった。
【0092】 レターデーション値Re:20〜40nm(フィルム全幅、5mm間隔で測定 ) 遅相軸角度の値 :−30〜+30度(フィルム全幅、5mm間隔で測 定) 溶媒含有量 :4.0%(フィルム幅方向の平均値) Tg´´ :110℃(溶媒を含んだ状態で測定、懸垂型乾燥機 処理工程入り口での値) 厚み斑 :0.8μm(フィルム1450mm幅、フィルム搬 送方向長さ1000mm)、 微小な筋状の又は 帯状の厚み斑 :0.2〜0.5μm/20〜25mm(フィルム搬 送方向長さ1000mm中)の厚み斑であった。
【0093】この様にして厚み70μmの無延伸フィル
ムを作成した。
【0094】このフィルムをさらに懸垂型乾燥機処理工
程、ついで延伸工程に通膜し、その後当該フィルムを冷
却工程で処理した。
【0095】 懸垂型乾燥装置処理工程の条件および得られたフィルムの特性値: 条件: 熱風温度 :100℃ フィルムに掛けた張力 :1.5kg/cm2 処理時間 :30分 得られたフィルムの特性値: 溶媒含有量 :1.5%(フィルム幅方向の平均値、延伸工程 入り口での値) Tg´´´ :145℃(溶媒を含んだ状態で測定) レターデーション値Re:30〜50nm(フィルム全幅、5mm間隔で 測定) 遅相軸角度の値 :−20〜+20度(フィルム全幅、5mm間隔 で測定) 延伸工程条件、冷却工程条件および得られたフィルムの
特性値: 延伸条件: 延伸温度155℃、延伸倍率1.25倍、 延伸のロール間長は延伸前フィルム幅の1.6倍。
【0096】冷却条件: 冷却温度120℃、冷却時間5分、 冷却時にフィルムに張力12Kg/cm2を掛けて処理
し、次いで室温まで冷却した。
【0097】 得られたフィルムの特性値: フィルム厚み :54μm フィルム厚み斑 :0.3μm(フィルム全幅1200mm 、フィルム搬送方向長さ1000mm)で極めて小さくなった。
【0098】 レターデーション値Reの範囲:4nm(フィルム全幅1200mm、フ ィルム搬送方向長さ1000mm、5mm間隔で測定) フィルム微小部分の レターデーション値Reの 差の最大値 :1.5nm(フィルム全幅1200mm 、フィルム搬送方向長さ1000mm) 遅相軸角度の値 :−1.5〜+1.5度(フィルム全幅12 00mm、5mm間隔で測定) 視野角特性 :7.0〜8.0 得られたフィルムの位相差フィルムとしての特性は上記
のような値となり極めて優れていた。
【0099】[実施例2,3]搬送方向処理工程の入り
口におけるフィルムの溶媒含有量を10%(Tg:67
℃)、15%(Tg:48℃)と変える以外は、実施例
1と全て同じ条件になるようにして、位相差フィルムを
作成した。このフィルムの特性値を表1に示した(測定
条件は実施例1と同様である)。これらのフィルムは位
相差用として極めて優れたものであった。
【0100】
【表1】
【0101】[比較例1]搬送方向処理工程にて処理す
るときの搬送方向のフィルムの長さを元の長さの98.
0%(縮少量−2.0%)となるようにする以外は実施
例1と全て同じ条件になるようにして位相差フィルムを
作成した。
【0102】このフィルムを偏光板間にて観察すると上
記レターデーション値斑に基づく筋状の色斑が見られ、
位相差フィルムとして不適なものであった。
【0103】[比較例2]搬送方向処理工程にて処理す
る前のフィルムを空気で加熱乾燥して、溶媒含有量を5
%とする以外は実施例1と全て同じ条件になるようにし
て、位相差フィルムを作成した。
【0104】このフィルムのレターデーション値Reの
範囲は7nm((フィルム全幅1200mm、フィルム
搬送方向長さ1000mm、搬送方向の値)であり、こ
のフィルムのフィルム微小部分のレターデーション値R
eの差の最大値は3nmであった。
【0105】このフィルムを偏光板間にて観察すると筋
状の色斑が見られ、位相差フィルムとして不適なもので
あった。
【0106】[比較例3]一軸延伸直前の溶媒含有量を
4%とする以外は実施例1と全て同じ条件になるように
して、位相差フィルムを作成した。
【0107】このフィルムのレターデーション値Reの
範囲は7nm((フィルム全幅1200mm、フィルム
搬送方向長さ1000mm、搬送方向の値)であり、こ
のフィルムのフィルム微小部分のレターデーション値R
eの差の最大値は3nmであった。
【0108】このフィルムを偏光板間にて観察すると筋
状の色斑ならびに局所的な偏光斑が見られ位相差フィル
ムとして不適なものであった。
【0109】
【発明の効果】本願発明方法の高分子の位相差フィルム
の製造法によって、縦一軸延伸前又は横一軸延伸前に搬
送方向処理工程にて規定量の溶媒を含有したフィルム
を、搬送方向に張力をかけつつ特定長に把持し、フィル
ム雰囲気を特定温度に保ち厚み斑(特にフィルムの搬送
方向にほぼ直交する筋状や帯状の厚み斑)を小さくした
後、乾燥し、特定の条件で縦一軸延伸又は横一軸延伸す
ることにより、レターデーション値の斑が極めて小さい
位相差フィルムを製造することができる。本願発明の高
分子の位相差フィルムの製造方法によって、特にフィル
ムの広い面積でのレターデーション値Reの範囲の値が
極めて小さく、更にフィルムの微小な部分のレターデー
ション斑が解消された品質の良好な位相差フィルムを製
造することができる。この結果光学用途に好適な位相差
フィルムを提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29L 11:00

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子溶液を支持体上にキャストし、得
    られたフィルムを乾燥した後、延伸することにより高分
    子からなる位相差フィルムを製造する方法において、 1.支持体よりフィルムを剥離し、乾燥して、搬送方向
    処理工程の入り口で溶媒含有量が8〜20重量%となる
    ように調節し、 2.搬送方向処理工程において、搬送方向のフィルムの
    長さが、搬送方向処理工程直前におけるフィルムの長さ
    の100%〜110%になるように、フィルムの雰囲気
    温度が(Tg+10)〜(Tg+50)℃下、上記フィ
    ルムを処理し、 3.次いで、乾燥処理工程において、フィルムをピンテ
    ンターにより把持し、フィルム雰囲気温度Tg′〜(T
    g′+55)℃下、上記フィルムの溶媒含有量が5.0
    重量%以下となるまで乾燥し、 4.さらに、懸垂型乾燥機処理工程において、該フィル
    ムを懸垂型乾燥機により、フィルムの含有溶媒量が2.
    0重量%以下となるまで、雰囲気温度(Tg´´−2
    0)〜(Tg´´+10)℃下、乾燥処理し、 5.その後、さらに、延伸工程において、該フィルムを
    Tg´´´〜(Tg´´´+45)℃下、フィルムの搬
    送方向に又は搬送方向と直交する方向に1.1〜3.2
    倍一軸延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造
    方法。(Tg、Tg′、Tg´´、Tg´´´(℃)
    は、それぞれ、搬送方向処理工程、乾燥処理工程、懸垂
    型乾燥機処理工程および延伸工程の入り口における、溶
    媒を含有する高分子フィルムのガラス転移温度であ
    る。)
  2. 【請求項2】 高分子溶液がポリカーボネートの溶液で
    あることを特徴とする請求項1記載の位相差フィルムの
    製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6803411B2 (en) 2000-05-02 2004-10-12 Kuraray Co., Ltd. Polyvinyl alcohol polymer film, method of producing the same and polarization film
JP2011022592A (ja) * 2010-08-30 2011-02-03 Konica Minolta Holdings Inc ロール状長尺偏光板
JP2013205500A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Nippon Zeon Co Ltd 位相差板の製造方法

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