JP5014570B2 - セルロースアシレートフィルム - Google Patents
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Description
[1] ドープを流延することにより製膜したセルロースアシレートフィルムであって、前記ドープとして、乾燥後の厚みが100μmになるようにガラス上に28℃で流延してから1分後に測定した振竿法のΔが0.25〜1であるセルロースアシレート溶液を用いることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
[2] 前記セルロースアシレート溶液を乾燥後の厚みが100μmになるようにガラス上に28℃で流延した後に測定した振竿法のΔの最大値が、流延してから1分後〜7分後の間に現れることを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[3] 前記セルロースアシレートが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(1):2.5≦A+B≦3.0
式(2):1.25≦B≦3
(式中、Aはアセチル基の置換度を表し、Bはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
[4] 少なくとも1方向に1%〜300%延伸したことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[5] 面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)とが、下記式(C)〜(E)を満足することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(C):Re≦Rth
式(D):0≦Re≦200
式(E):30≦Rth≦500
[6] 水分を0.01%〜1%含有するセルロースアシレート溶液をドープとして用いることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[7] アルカリ金属イオンを1ppm〜1000ppm含有するセルロースアシレート溶液をドープとして用いることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[8] 重合度が200〜400であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[10] [1]〜[8]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム上に光学異方性層を有することを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
[11] [1]〜[8]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム上に反射防止層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
前記セルロースアシレート溶液が水を0.01〜1質量%含有し且つアルカリ金属イオンを1〜1000ppm含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[13] 前記セルロースアシレートが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする[12]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1):2.5≦A+B≦3.0
式(2):1.25≦B≦3
(式中、Aはアセチル基の置換度を表し、Bはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
[14] ドープを流延することにより製膜するセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、前記ドープとして、乾燥後の厚みが100μmになるようにガラス上に28℃で流延してから1分後に測定した振竿法のΔが0.25〜1であるセルロースアシレート溶液を用いることを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[15] 前記セルロースアシレート溶液を乾燥後の厚みが100μmになるようにガラス上に28℃で流延した後に測定した振竿法のΔの最大値が、流延してから1分後〜7分後の間に現れることを特徴とする[14]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[16] 前記セルロースアシレートが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする[14]または[15]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1):2.5≦A+B≦3.0
式(2):1.25≦B≦3
(式中、Aはアセチル基の置換度を表し、Bはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
[17] 製膜後に少なくとも1方向に1%〜300%延伸することを特徴とする[14]〜[16]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
本発明は、従来法で製造したセルロースアシレートフィルムを液晶表示に組み込んだ際に発生する輝線故障の原因となるフィルム上のスジの発生原因を鋭意解析した結果に基づいて、完成するに至ったものである。
スジは溶液流延時のダイリップにおいて発生する。即ち、ドープ(流延に用いる樹脂の高濃度溶液)をダイから押出し製膜するが、長時間製膜していると、ドープがダイリップ周辺で一部乾燥し皮膜(以下、ドープが乾燥した皮膜を「皮張り」という)を形成する。このような皮張りはセルロースアシレートで最も一般的な三酢酸セルロース(TAC)では発生しにくく、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基で変性したセルロースアシレートにおいて顕著に発生する。これは、これらの樹脂の乾燥過程における粘性(G’’)が弾性(G')に比べて大きいこと、即ちG’’とG'の比であるtanδ(G’’/G')が大きいことに起因するものであることが判明した。tanδが大きい(G’’が大きい)と発生した皮張りがダイリップに粘着しやすい。さらにこれを取り除こうとして力を加えて引張っても、粘性が高いと引張り力が皮張りを伸ばすことに消費されてしまい、ダイリップと皮張りの界面に必要な力が届かない。この結果、一度付着した皮張りをダイから取り除くことができず、これがスジを発生させる原因となる。
本発明では測定開始から1分後に測定したΔを1以下にすることでリップでの皮張りを抑制しスジ故障を防止できる。皮張りはダイリップ上でドープが乾燥する過程で生成する。即ち生乾きの状態での皮張り(ゲル)の特性が問題となる。したがって生乾き状態である乾燥から1分でのΔを1以下にすることで皮張りが発生しても取れ易くすることができる。即ち皮張りが発生しても、ダイリップから押出されるドープに引っ張られてダイリップから外れ自浄される。一方、Δが0.25未満であるセルロースアシレート溶液をドープとして用いると以下の欠点がある。即ち、ダイから流延したドープは支持体の上に流延し溶剤を50質量%(対セルロースアシレート)近くまで乾燥させた後剥ぎ取るが、Δが0.25未満ではドープの弾性が高く(粘性が低く)、50質量%以上の乾燥の状態で支持体から剥離してしまう。このような溶剤を多く含んだ状態で支持体から離して搬送すると変形しやすく平面性が低下し好ましくない。
Δは乾燥に伴い上昇し、最大値をとった後に減少する。これは乾燥初期はドープから溶剤が揮発し粘度が増加し、これ以降は乾燥に伴い皮膜を形成するため硬くなり粘度が低下することによる。ダイリップ上の皮張りの乾燥状態は、上記振竿法で1分以前の状態(比較的多くの溶剤を含んだ状態)にある。したがって、ドープのΔの最大値が流延から1分後以降であれば、ダイ上で高粘度の状態で存在し易くなるため、このΔが最大値となる時間をなるべく遅らせることが好ましい。しかし遅らせすぎると、ドープが固化して皮膜となり難くなるため、乾燥に時間を要し流延したフィルムの生産性が低下してしまう。よって、Δの最大値は流延の1分後〜7分後の間であることが好ましい。
(1)微量(0.01%〜1%)の水分をドープに含有させる。
乾燥初期におけるΔの上昇はドープの溶解状態に大きく依存するが、セルロースアシレートを十分に溶解させると分子間に絡み合いが発生し易い。これは水分が貧溶剤として働くため、これが存在しないとセルロースアシレート分子は伸びきった状態で存在し、分子間の絡み合いによる粘度上昇を引き起こすためである。したがって本発明ではドープの溶解性を少し下げた状態で溶解するのが好ましい。これには、これらのセルロースアシレートの貧溶剤である水分を好ましくは0.01%〜1%、より好ましくは0.05%〜0.7%、さらに好ましくは0.1%〜0.5%含有させる。本発明のセルロースアシレートの場合、TACで用いられる貧溶剤(アルコール)には上記効果が無く、水が極めて有効に(微量でも)作用することが見出された。
ドープの粘度の上昇の一因は、セルロースアシレート中にアシル化されずに残っているセルロース水酸基間の水素結合である。このため、アルカリ金属イオンを含有させると、この水酸基をマスクし水素結合を切ることで粘度上昇を抑える効果がある。好ましいアルカリ金属イオンの量は1ppm〜1000ppm、より好ましくは2ppm〜200ppm、さらに好ましくは3ppm〜100ppmである。アルカリ金属イオンの種類はとくに限定されないが、好ましいのはNa,Li,Kである。対イオンは特に限定されないが、好ましいのはF、Cl、Br、Iである。
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するために用いるセルロースアシレートは、下記の式(1)および(2)を満足するものであることが好ましい。このような組成を有するセルロースアシレートを用いることによって、本発明の効果をより有効に発現させることができる。
式(1):2.5≦A+B≦3.0
式(2):1.25≦B≦3
(Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基の置換度の総和を示す)
式(1a):2.6≦A+B≦2.95
式(2a):2.0≦B≦2.95
さらに、下記式(1a’)と(2a’)を満たすことがより好ましい。
式(1a’):2.7≦A+B≦2.95
式(2a’):2.4≦B≦2.9
式(1b):2.6≦A+B≦2.95
式(2b):1.3≦B≦2.5
さらに、下記式(1b’)と(2b’)を満たすことがより好ましい。
式(1b’):2.7≦A+B≦2.95
式(2b’):1.3≦B≦2.0
このような重合度の調整には低分子量成分を除去することでも達成できる。低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。さらに重合方法でも分子量を調整できる。例えば、低分子成分の少ないセルロースシレテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100重量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
これらのセルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合しても良い。また、セルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。
1) 可塑剤
さらに本発明では可塑剤を添加しても良い。例えば、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステル等が挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類として、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができる。
カルボン酸エステルとして、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル類、およびクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類を挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独あるいは併用しても良い。
これらの可塑剤はセルロースアシレートフィルムに対し0質量%〜15質量%が好ましく、より好ましくは0質量%〜10質量%、さらに好ましくは0質量%〜5質量%である。これらの可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
レターデーション上昇剤を添加することがより好ましい。好ましい化合物例としては、特開2001−166144号公報の段落番号[0016]〜[0107]、特開2002−296421号公報の段落番号[0007]〜[0043]に記載される化合物を挙げることができる。また、2つの芳香環の間を−COO−で連結した以下ような化合物を好ましく用いることもできる。
溶解に用いる溶剤は、下記の塩素系溶剤、非塩素系溶剤のいずれも用いることができる。より好ましくは塩素系溶剤であり、これにより振竿法のΔをより小さくすることができる。
1)塩素系溶剤
塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは少なくとも50質量%使用することが必要である。
本発明の好ましい主溶媒である塩素系有機溶媒の組み合わせの具体例を以下に挙げるが、本発明で用いることができる塩素系有機溶媒はこれらに限定されるものではない(下記の括弧内の数字は質量部を示す)。
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/5/5/5)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/5)
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10)
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5)
・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5)
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5)
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (70/10/10/5/5)
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5)
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5)
好ましい非塩素系有機溶媒として、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が挙げられる。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよい。好ましいのは、飽和脂肪族炭化水素である。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/5/5/5)
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5)
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/15/5/5)
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5)
・酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5)
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5)
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5)
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5)
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5)
・アセトン/1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5)
・1、3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール (60/20/10/5/5)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加
本発明では、塩素系、非塩素系溶剤いずれの場合でも、溶媒にセルロースアシレートが10〜35質量%溶解していることが好ましく、より好ましくは13〜33質量%であり、特には15〜30質量%である。この際、上述の水、アルカリイオン金属イオンを添加することが好ましい。また、上述の可塑剤やレターデーション上昇剤も添加することが好ましい。さらに紫外線吸収剤、劣化防止剤、微粒子、赤外吸収剤、界面活性剤などを添加してもよい。赤外吸収剤としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されるものが使用でき、紫外線吸収剤は例えば特開平2001−151901号公報に記載されるものが使用でき、それぞれセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。微粒子は、平均粒子サイズが5〜3000nmのものを使用することが好ましく、金属酸化物や架橋ポリマーからなるものを使用でき、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。劣化防止剤はセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有させることが好ましい。
なお、種々の添加剤は、膨潤工程の前に添加しても良く、膨潤工程中あるいは後でもよく、さらには、この後の溶解中あるいは後でも構わない。これらの添加剤が2種以上ある場合は、同時に添加しても良く、ばらばらに(例えば一部はセルロースアシレート添加前に、一部はセルロースアシレート添加後に)添加しても良い。
さらに本発明のドープは、濃縮,ろ過を実施しても良く、これらは発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁に詳細に記載されているものを使用できる。
上述に従い調製したセルロースアシレートドープ(セルロースアシレートの高濃度溶液)を濾過、脱泡した後、所定の温度(例えば35℃)に保持し、定流量ポンプ(例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧型ダイに送り、口金(スリット)から金属等の平滑支持体(ドラム、バンド等)の上に均一に流延する。流延は単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時およびまたは逐次共流延しても良い。2層以上からなる流延工程を有する場合は、各層のドープのセルロースアシレート、溶剤、添加剤の種類、濃度は同一であっても良く、異なっていても良い。
流延後、平滑支持体上で乾燥後これを剥ぎ取り、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を搬送しながら乾燥させるが、残留溶剤を20質量%以上含む生乾きの状態で剥ぎ取る。これを上述の方法で乾燥させた後、両端をトリミングし、型押し加工(ナーリング付与)した後、巻き取る。このようにして乾燥の終了したフィルム中の残留溶剤は0%〜5%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。乾燥終了後、両端をトリミングして巻き取る。好ましい幅は0.5m〜5mであり、より好ましくは0.7m〜3m、さらに好ましくは1m〜2mである。好ましい巻長は300m〜30000mであり、より好ましくは500m〜10000m、さらに好ましくは1000m〜7000mである。
Re,Rthを発現させるために、セルロースアシレートフィルムを延伸させることが好ましい。延伸は、製膜中未乾燥の状態で実施しても良く(例えば、流延後支持体から剥ぎ取った後から乾燥完了までの間)、乾燥終了後に実施しても良い。より好ましくは乾燥終了後の延伸である。これらの延伸は製膜工程中、オンーラインで実施しても良く、製膜完了後、一度巻き取った後オフ−ラインで実施しても良い。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
延伸は、出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて長手方向に行ってもよいし(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げて行っても良い(横延伸)。また、特開2000−37772号公報、特開2001−113591号公報、特開2002−103445号公報に記載の同時2軸延伸法を用いても良い。
このような延伸の延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、さらに好ましくは30%/分〜800%/分である。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°または−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、さらに好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°あるいは−90±2°、さらに好ましくは90±1°あるいは−90±1°である。
Re≦Rth
0≦Re≦200
30≦Rth≦500
より好ましくは
Re×1.1≦Rth
10≦Re≦150
50≦Rth≦400
さらに好ましくは
Re×1.2≦Rth
20≦Re≦100
80≦Rth≦350
である。このような延伸を行うことで、ダイリップにより発現したスジを伸ばし、より軽減することができる。
尚、本明細書において、Re、Rthは各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。本明細書においては、特に断らない場合にはλの値として590nmを用いる。
未延伸または延伸後のセルロースアシレートフィルムは、表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
塗布方法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設しても良く、表面処理なしで塗設しても良い。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
[使用素材]
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合しても良く、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与しても良い。架橋は、光、熱あるいはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許第23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、またはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸はMD方向に平行に行っても良く(平行延伸)、斜め方向におこなっても良い(斜め延伸)。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。より好ましいのが平行延伸である。
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の重量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。延伸倍率は、延伸後/初期状態の長さ比(以下同じ)に基づくが前記作用効果の点より好ましい延伸倍率は1.2〜3.5倍、就中1.5〜3.0倍である。この後、50℃〜90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
これには特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%、より好ましくは10%〜100%である。
延伸時の温度は40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。相対湿度は50%〜100%が好ましく、より好ましくは70%〜100%、さらに好ましくは80%〜100%である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
延伸の終了後、50℃〜100℃より好ましくは60℃〜90℃で、0.5分〜10分乾燥する。より好ましくは1分〜5分である。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10度〜80度が好ましく、より好ましくは30度〜60度であり、さらに好ましくは実質的に45度(40度〜50度)である。
上記鹸化後のセルロースアシレートフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、セルロースアシレートフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45度になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作成することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸を45度になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20度〜70度傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層から成るλ/4板を用いることが好ましい。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
上記表面処理したセルロースアシレートフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0080]〜[0100]に記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。が発生することがある。
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0151]〜[0168]に記載の化合物等が挙げられる。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報の段落番号[0018]〜[0020]に記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]に記載の化合物が挙げられる。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報の段落番号[0178]に記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 〜50J/cm2 の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2 の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2 の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
偏光膜と光学補償層の傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
このような光学補償フィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
<TNモード液晶表示装置>
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
又、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。 又、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシト゛組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性または重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
又、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。 硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開WO0/46617号公報等記載のものが挙げられる。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書)により、塗布により形成することができる。
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
(1)振竿法
流延振り子型粘弾性測定器(オリエンテック社製 Rheovibron DDV−OPA型)を用いて、ガラス上に流延したドープを直ちに測定した。測定に際しては、直径1mmφの振り子を用いる。また、測定は10秒間隔で室温(28℃・相対湿度50%)において行った。測定の具体的手順は以下のとおりである。
i) ドクターブレードを用い、ガラス板上にドープを乾燥後の厚みが100μmとなるように流延した(乾燥後の厚みとは、残留溶剤が1質量%以下になるまで乾燥した後、ガラス板から剥ぎ取って得たフィルムの厚みを意味する)。
ii) 直ちに、ガラス板上のドープに竿(円柱)を渡し、その両端から下にブランコ状の錘をぶら下げた。この錘を、竿との距離を一定に保ったまま特定の高さまで弧を描くように持ち上げた後、錘を開放することによって振動させた(図1参照)。
iii) この振幅の経時変化を測定した。n回目の振幅をA(n)、n+1回目の振幅をA(n+1)としたとき、減衰率Δは{A(n+1)− A(n)}/A(n)を計算することにより求めた。本発明ではn=2で測定した。
Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%に3時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA-21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±40°傾斜させた方向から波長550nmにおけるレターデーション値を測定した。垂直方向から面内のレターデーション(Re)を求め、垂直方向、±40°方向の測定値からRthを求めた。なお、測定に際しては、サンプルを回転させて最も高いReを発現する方向(遅相軸)を求め、その位置で測定を行った(このためReは面内の最大のReの絶対値を示す)。
絶対乾燥したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel=T/T0 T:測定試料の落下秒数
[η]=(1nηrel)/C T0:溶剤単独の落下秒数
DP=[η]/Km C:濃度(g/l)
Km:6×10-4
DSCの測定パンにサンプルを20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runで求めたTg(ベースラインが低温側から偏奇し始める温度)を採用した。
(1)セルロースアシレートの調製
表1に記載されるアシル基と置換度を有する各セルロースアシレートを調製した。アシル化反応においては、触媒として硫酸(セルロース100重量部に対し7.8重量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加して、40℃で反応を行った。この時、カルボン酸の種類と量を調整することで、アシル基の種類と置換度を調整した。これらのセルロースアシレートの重合度を表1に記載した。これらのセルロースアシレートの分子量分布(Mw/Mn)はいずれも2.5〜3であった。
i)溶剤
下記溶剤の中から表1に記載されるものを選択して用いた。
・非塩素系:酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール
(80/5/7/5/3、質量部)
・塩素系A:ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール
(85/6/5/4、質量部)
・塩素系B:ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81.4/14.8/3.6)
・塩素系C:ジクロロメタン/ブタノール(94/6)
下記添加剤を上記ドープに添加した。添加量(質量%)は全てセルロースアシレートに対する割合である。
・水:表1に記載した量をドープに添加した。
・アルカリ金属イオン:表1に記載のアルカリ金属の塩化物を表1に記載の量添加
した。
・可塑剤A:トリフェニルフォスフェートとビフェニルジフェニルフォスフェート
を重量比3:1で1質量%添加した。
・Re上昇剤;特開2003−344655号公報に記載の化合物I−(2)を
5質量%添加した。
(なお、特開2003−66230号公報[0055]に記載の棒状化合物を6質
量%添加した場合も、特開2003−66230号公報[0055]に記載の板
状化合物を4質量%添加した場合も同様の結果が得られた。)
・UV剤a:2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,
5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(0.2質量%)
・UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)
−5−クロロベンゾトリアゾール(0.2質量%)
・UV剤c:2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)
−5−クロロベンゾトリアゾール(0.1質量%)
・微粒子:二酸化ケイ素(粒子サイズ20nm)、モース硬度約7(0.25質量%)
・クエン酸エチルエステル(モノエステルとジエステルが1:1混合、0.2質量%)
これらのセルロースアシレート、溶剤、添加剤を溶剤中に撹拌しながら投入した。投入が終わると撹拌を停止し、25℃で3時間膨潤させてスラリーを作成した。これを再度撹拌し、完全にセルロースアシレートを溶解した。
この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
上述のドープを35℃に加温し、バンド法で流延した。表1にはバンド法の結果を記載したが、ドラム法においても同様の結果が得られた。
i)バンド法
ギーサーを通して、15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号公報に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは60m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が100質量%で剥ぎ取った後、120℃で5分、さらに145℃で20分乾燥しセルローストリアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与しロール状に巻き取った。
ギーサーを通して、−15℃に設定した直径3mの鏡面ステンレスのドラムに流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号公報に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは100m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が200質量%で剥ぎ取った後、120℃で5分、さらに145℃で20分乾燥しセルローストリアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2〜10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与しロール状に巻き取った。
上記の方法で24時間連続製膜した後、フィルムに発生したスジを全幅にわたって評価した。スジは直交方向に配置した偏光板の間にサンプルフィルムを置き、これをフィルムの明るさが最も明るくなった所にセットする。この時、明るくスジ状に見える本数を目視で数え表1に記載した。
本発明の条件を満たすフィルムはいずれも良好な結果を示した。特に水とアルカリ金属イオンの両者を加えることによる相乗効果でより顕著な効果が得られた。さらにセルロースアシレートを本発明の置換度にすることで好ましい結果が得られ、アセチル基以外のアシル基の量が多い方が結果が優れていた。一方、公知例である特開2001−188128号公報の実施例1によるフィルム(比較例4)では顕著にスジ故障が発生した。また、連続200時間連続製膜を行った後でも同様の評価結果であった。
上述の未延伸フィルムを延伸し、それぞれのセルロースアシレートフィルムのTgを測定し、測定したTgより10℃高い温度で100%/秒でMD延伸、20%/秒でTD延伸した。各方向の延伸倍率は表1に記載した。
上述の未延伸フィルムの場合と同様に直交した偏光板の間にフィルムをセットし全幅にわたってスジの本数を測定した。これらの結果を表1に示した。さらに連続200時間連続製膜を行った後でも同様の評価結果であった。
2−1)偏光板の作成
(1)セルロースアシレートフィルムの鹸化
未延伸セルロースアシレートフィルムと延伸セルロースアシレートフィルムを、60℃に調温した1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬し、水洗浴を通すことによって鹸化した。
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
このようにして得た偏光膜と、上記鹸化処理した未延伸セルロースアシレートフィルムと延伸セルロースアシレートフィルムのうちから2枚を選び、これらで上記偏光膜を挟んだ後、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向が90度となるように張り合わせた。このうちセルロースアシレートフィルムを特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置液晶表示装置に取り付けた。本発明を実施したものは良好な結果を示し表示むらは確認されなかった。
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の鹸化済みの延伸セルロースアシレートフィルムを使用し、これを、特開2002−62431号公報の実施例9に記載のベンド配向液晶セルに取り付けて表示むらを観察した。本発明を実施したものは良好な結果を示し表示むらは確認されなかった。
本発明の延伸および未延伸セルロースアシレートフィルムを用いて、発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従って低反射フィルムを作成した。表示むらは確認されず良好な光学性能が得られた。
Claims (8)
- ドープを流延することにより製膜したセルロースアシレートフィルムであって、前記ドープとして、乾燥後の厚みが100μmになるようにガラス上に28℃で流延してから1分後に測定した振竿法のΔが0.25〜1であって、水を0.01〜1質量%含有するセルロースアシレート溶液を用いることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
- 前記セルロースアシレート溶液を乾燥後の厚みが100μmになるようにガラス上に28℃で流延した後に測定した振竿法のΔの最大値が、流延してから1分後〜7分後の間に現れることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記セルロースアシレートが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(1):2.5≦A+B≦3.0
式(2):1.25≦B≦3
(式中、Aはアセチル基の置換度を表し、Bはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。) - 少なくとも1方向に1%〜300%延伸したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)とが、下記式(C)〜(E)を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(C):Re≦Rth
式(D):0≦Re≦200
式(E):30≦Rth≦500 - アルカリ金属イオンを1ppm〜1000ppm含有するセルロースアシレート溶液をドープとして用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレートを含有するセルロースアシレート溶液を調製する調製工程と、前記セルロースアシレート溶液を流延することによりセルロースアシレートフィルムを製膜する製膜工程とを有するセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
前記セルロースアシレート溶液が水を0.01〜1質量%含有し且つアルカリ金属イオンを1〜1000ppm含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。 - 前記セルロースアシレートが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする請求項7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1):2.5≦A+B≦3.0
式(2):1.25≦B≦3
(式中、Aはアセチル基の置換度を表し、Bはプロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基の置換度の総和を表す。)
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