JP4806861B2 - 空洞含有ポリエステル系フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空洞含有ポリエステル系フィルムに関する。更に詳しくは、冷蔵庫あるいは空調機等に組み込まれる、代替フロンガスを冷媒とし、有極性オイルを用いる高温度下での使用に適した耐熱性冷媒圧縮機用の電動機絶縁フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、冷蔵庫等で用いられる冷媒圧縮機は、密閉されたケース内にステータおよびロータで構成される電動機と、この電動機に接続される圧縮装置とを内蔵し、前記密閉ケース内に外部循環冷媒を導入する構成を有している。そして、この冷媒圧縮機用電動機(いわゆるハーメチックモータ)には、機器の省電力化が可能なインバータモータが一般に用いられている。
【0003】
ハーメチックモータ用の絶縁部材としては、従来から低オリゴマー化され、かつ極限粘度が0.72dl/gを超えるような、高分子量化されたポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)フィルムが一般に用いられてきた。これは、冷媒循環系でのオリゴマー成分の再析出防止対策として、また高温高圧冷媒ガス中での長期使用中の脆化防止対策として、PETの高分子量化が有効であることによるものである。
【0004】
しかしながら、近年のインバータ技術の進歩に伴う駆動電源中の高周波成分の増加は、エネルギー効率の向上を図ることが可能となる反面、浮遊電流の発生という新たな問題を生じることが分かってきた。この浮遊電流は、感電ショックの原因となる場合もあるため、可能な限り低減することが必要である。この浮遊電流を有効に低減するための方策として、モータ絶縁材料の低誘電化が要請されている。
【0005】
そして、低誘電性のPETフィルムとして、PET樹脂と該樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂をブレンドし次いで延伸することにより、ボイドを形成させた空洞含有PETフィルムが、例えば特開平9−149576号公報等で提案されている。
【0006】
また、低誘電PETフィルムにおいても、冷媒循環系でのオリゴマー成分の再析出が少ないこと、また高温高圧冷媒ガス中での長期使用中の脆化が小さいことが求められ、PETフィルムの低オリゴマー化及び高分子量化が検討されてきた。しかしながら、通常の低誘電化されていないPETフィルムと同様な、低オリゴマーでかつ高分子量のPETを低誘電PETに適用すると、空洞含有構造が著しく不均一化するという問題があった。これは、高分子量PETの溶融粘度が一般のPETに対して著しく大きいため、押出機からの吐出量を大幅に制限する必要が生じ、メルトライン中での滞留時間が著しく長時間化して、PETと非相溶樹脂との相分離が進行することによるものである。
【0007】
上記の空洞含有構造の不均一化は、フィルムの加工及び実装工程でのフィルムの折れ、座屈、割れ等のハンドリング不良の多発原因となるため、浮遊電流が低減化されたハーメチックモータを実用化する上で、重大な障害となっているのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、ハーメチックモータ用絶縁材料として好適な低オリゴマー性、高温高圧冷媒ガス中での長期使用中の脆化防止性、低誘電性、及び良好なハンドリング性を有する空洞含有ポリエステル系フィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、上記の課題を解決することができた空洞含有ポリエステル系フィルムとは、以下の通りである。
【0010】
即ち、本発明は、ポリエステル樹脂と、前記ポリエステル樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂を含有する組成物からなり、前記ポリエステル樹脂中に微粒子状に分散した非相溶の熱可塑性樹脂に起因する空洞をフィルム内部に多数含有する空洞含有ポリエステル系フィルムであって、前記ポリエステル樹脂が下記(1)を満足し、かつ前記フィルムが下記(2)〜(4)を満足し、前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする空洞含有ポリエステル系フィルムである。
(1)環状3量体の含有量:フィルム全体重量に対して0.50重量%以下
(2)見掛け比重:0.95〜1.30
(3)空洞積層数密度:0.15個/μm以上
(4)熱処理(140℃×1000時間)後の破断伸度残存率:フィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルとは、主として芳香族ジカルボン酸とグリコ−ルとから得られるポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が全酸成分の85モル%、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の90モル%以上のポリエステルである。
【0012】
前記ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸挙げられる。
【0013】
また前記ポリエステルを構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル挙げられる。
【0014】
前記ポリエステル中に共重合可能な酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4´−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0015】
前記ポリエステル中に共重合して使用されるグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0016】
更に、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0017】
前記ポリエステルは、エチレンテレフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)である。
【0018】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度は0.72dl/g以下とすることが好ましく、より好ましくは0.55〜0.70dl/g、特に好ましくは0.58〜0.65dl/gである。
【0019】
ポリエステル樹脂の極限粘度が0.72dl/gを超えると、ポリマーの溶融押出し成型工程における押出し機への負荷やフィルターの圧損が著しくなる傾向がある。その際には、ポリマー吐出量を大幅に制限せざるを得なくなるため、メルトライン中での滞留時間が長くなり、ポリエステルと該ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂との相分離が進行し、空洞含有構造が不均一化しやすくなる。その結果、後述する空洞積層数密度を0.15個/μm以上とすることが困難となり、フィルムの加工及び実装工程でのフィルムの折れ、座屈、割れ等のハンドリング性不良の多発原因となる傾向がある。
【0020】
一方、ポリエステル樹脂の極限粘度の下限は特に定められないが、0.55dl/g未満では、後述の熱処理(140℃×1000時間)後の破断伸度残存率をフィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上とすることが困難となりやすく、電動モータ用絶縁材として高温で長期間使用した際にフィルムの脆化が著しくなる傾向があるので好ましくない。
【0021】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、ポリエステル樹脂中の環状3量体の含有量がフィルム全体重量に対して0.50重量%以下であることが必要であり、好ましくは0.45重量%以下、より好ましくは0.40重量%以下である。ポリエステル樹脂中の環状3量体の含有量が、フィルム全体重量に対して0.50重量%を超える場合には、電動モータ系へのオリゴマー放出が急激に増加し、モータの信頼性が低下する。
【0022】
前述のようにポリエステル樹脂中の環状3量体の含有量を制御する方法は任意であり、特に制限されるものではないが、減圧または加圧下での加熱処理法、固相重合法、水や有機溶剤による抽出法、及びこれらの方法を組合せた方法等を挙げることができる。
【0023】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムに使用することができる、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルム好ましい実施態様として、ポリエステル樹脂中にポリオレフィン系樹脂およびポリスチレン系樹脂を含むポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂が分散されていることが好ましい。詳しくは、ポリオレフィン系樹脂粒子の周りにポリスチレン系樹脂よりなる相で被覆されたコア・シェル構造を有する分散粒子が形成され、非相溶樹脂同士の界面がより安定した(界面エネルギーの小さい)状態で空洞発現剤粒子としてポリエステル樹脂中に分散していることが好ましい。本発明のフィルムに含まれる空洞は、ポリエステル樹脂中に上記構造を有する分散粒子を含む溶融成形物を延伸することにより、前記分散粒子とポリエステル系樹脂の界面に発現していることが好ましい。
【0025】
さらに好ましい実施態様として、前記非相溶な熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂とポリスチレン樹脂を含み、かつ前記ポリオレフィン系樹脂中の主成分樹脂の溶融粘度ηoと前記ポリスチレン樹脂の溶融粘度ηs(いずれも樹脂温度が285℃で、剪断速度が100/秒での値をいい、単位はポイズである)の比(ηo/ηs)が0.80以下となるポリオレフィン系樹脂およびポリスチレン樹脂を使用することが好ましい。前記溶融粘度比(ηo/ηs)は、0.60以下であることがより好ましく、特に好ましくは0.50以下である。ここで、前記ηo及びηsは、いずれも樹脂温度が285℃で、剪断速度が100/秒で測定したときの値であり、単位はポイズである。
【0026】
前記溶融粘度比(ηo/ηs)が0.80を超えると、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂からなるコア・シェル構造を有する分散粒子におけるポリスチレン樹脂相の分布が不均一になりやすくなる。そのため、前記分散粒子の相構造が不安定となり、空洞積層数密度を0.15個/μm以上とすることが困難となる傾向があり、フィルムのハンドリング性が低下する恐れがあるので好ましくない。
【0027】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。これらは必ずしもホモポリマーに限定されるものではなく、2種以上のオレフィン系モノマーを重合したコポリマー(ランダムコポリマー等)や、2種以上のポリオレフィン系樹脂を重合したコポリマー(ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等)でもよい。また、2種以上のオレフィン系モノマーを重合したコポリマーでもよい。さらに、上記ポリオレフィン系樹脂は単独で使用してもよく、あるいは2種以上混合して使用してもよい。
【0028】
本発明においては、ポリエステル系樹脂との界面剥離性がよく、空洞発現能に優れ、かつ高温での変形が少ないことから、ポリメチルペンテン(以下、PMPと略す)を使用することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としてPMPを単独で使用してもよく、あるいはPMPを主成分とし、PMPの上記特性が損なわれない範囲で、他のポリオレフィン系樹脂を副成分として混合または共重合(グラフト共重合、ブロック共重合)してもよい。ここで、副成分として使用できるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンやこれらに種々の成分を共重合させたものが挙げられる。これらの副成分としてのポリオレフィン系樹脂の量は、PMPの量を超えないことが好ましい。
【0029】
上記ポリオレフィン系樹脂の含有量は、組成物中、好ましくは2.0〜15.0重量%、より好ましくは4.0〜10.0重量%である。前記含有量が2.0重量%未満であると、フィルムの空洞含有量が不十分となって、十分な低誘電性を発現させることが困難となりやすい。一方、15.0重量%を超えると、製膜時の延伸工程で破断が生じ易くなり、好ましくない。
【0030】
上記ポリオレフィン系樹脂中の主成分の樹脂として、PMPを使用する場合には、その含有量は、全ポリオレフィン系樹脂中、好ましくは60.0〜100重量%、より好ましくは70.0〜100重量%である。前記含有量が60.0重量%未満であると、製膜時の延伸工程で分散粒子の変形が大きくなってフィルムの空洞含有量が少なくなり、好ましくない。
【0031】
また、PMPの溶融粘度ηoは、500〜3500ポイズであることが好ましく、1000〜2000ポイズであることが特に好ましい。前記溶融粘度が500ポイズ未満であると、延伸時の応力により分散粒子がつぶれやすくなり(即ち、空洞がつぶれやすくなり)、逆に3500ポイズを超えると、押出機中で分散されにくくなるので、分散粒子のサイズが大きくなり、好ましくない。
【0032】
なお、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を2種以上使用する場合、主成分のポリオレフィン系樹脂の溶融粘度ηoとは、2種以上のポリオレフィン系樹脂の総含有量に対し、50.0重量%を超える成分のポリオレフィン系樹脂の溶融粘度をいう。
【0033】
また、前記ポリスチレン樹脂としては、ポリスチレン、あるいはマレイン酸やアクリル酸等により変性されたポリスチレン等が挙げられる。
【0034】
上記ポリスチレン系樹脂はボイド発現剤として作用するとともに、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂の相構造を安定化させる働きがある。このため、上記ポリスチレン樹脂の含有量は、組成物中、好ましくは1.0〜5.0重量%、より好ましくは1.3〜3.0重量%である。当該含有量が1.0重量%未満であると、分散粒子のサイズが大きくなり、その結果フィルム中の空洞が大きくなる。逆に、5.0重量%を超えると、フィルムの剛性が高くなって柔軟性が損なわれる恐れがあり、好ましくない。
【0035】
また、ポリスチレン樹脂の溶融粘度ηsは、1000〜10000ポイズ、特に3000〜7000ポイズが好ましい。前記溶融粘度ηsが1000ポイズ未満であると、分散粒子中のポリスチレン樹脂相の分布が不均一となって分散粒子の相構造が不安定となる。逆に、10000ポイズを超えると、押出機中で分散されにくくなって分散粒子のサイズが大きくなり、好ましくない。
【0036】
上記ポリオレフィン系樹脂と上記ポリスチレン樹脂を含む、ポリエステル系樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂の合計含有量は、組成物中、好ましくは3.0〜15.0重量%、より好ましくは5.0〜12.0重量%である。当該含有量が3.0重量%未満であると、フィルムの空洞含有量が不十分となり、その結果低誘電性が不十分となりやすくなる。逆に、15.0重量%を超えると、製膜時の延伸性が低くなりやすくなり、好ましくない。
【0037】
また、本発明の空洞含有ポリエステル系フィルム中には、隠蔽性等を向上させるため、無機または有機の粒子を必要に応じて含有させてもよい。使用可能な粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、硫化亜鉛、有機白色顔料等が例示されるが特に限定されるものではない。これらの粒子は、予めポリエステル樹脂中及び/又はポリエステル樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂中に添加することにより、フィルム内に含有させることができる。
【0038】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、見掛け比重が0.95〜1.30であることが必要であり、より好ましくは1.00〜1.20である。見かけ比重が0.95未満では、フィルムのハンドリング性が不良となり、フィルムの加工及び実装工程でのフィルムの折れ、座屈、割れ等を生じる。逆に、見かけ比重が1.30を超えると、フィルムの低誘電性が不充分となる。本発明における好ましい誘電率は3.0未満、より好ましくは2.8未満、最も好ましくは2.6未満である。
【0039】
本発明でいう空洞積層数密度とは、フィルムを縦延伸方向に平行にかつフィルム面に対して垂直な断面における、フィルム厚み方向の空洞の数(個)をフィルム厚み(μm)で除したパラメータである。前記ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂からなるコア・シェル構造を有する分散粒子の数を微分散化手段により増やすとともに、フィルム厚み方向の径を小さくしたり、延伸によって形成されるフィルム面に対し平行方向の空洞を長くすることにより、前記空洞積層数密度を大きくすることができる。
【0040】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、空洞積層数密度が0.15個/μm以上であることが必要であり、好ましくは0.20個/μm以上、特に好ましくは0.25個/μm以上である。空洞積層数密度が0.15個/μm未満では、空洞含有構造が不均一化して、フィルムの加工及び実装工程でのフィルムの折れ、座屈、割れ等のハンドリング不良が多発する。
【0041】
空洞積層数密度を本発明の範囲に制御するための方法は任意であり、特に制限されないが、例えば、前述のように、ポリエステル樹脂の極限粘度を特定の範囲とすること、及び/又は特定の溶融粘度比を有するポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを組合せて、適切な溶融押出し条件及び延伸条件でフィルムを製造することによって達成できる。
【0042】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、熱処理(140℃×1000時間)後の破断伸度残存率が、フィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上であることが必要であり、好ましくは50%以上、より好ましくは65%以上、特に好ましくは75%以上である。フィルムの長手方向又は幅方向いずれかの破断伸度残存率が20%未満では、高温高圧冷媒ガス中での長期使用中の脆化防止が不十分である。
【0043】
熱処理(140℃×1000時間)後の破断伸度残存率をフィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上とするためには、例えば原料ポリエステルを固相重合してポリエステルの極限粘度を0.72dl/gよりも高粘度化(高分子量化)すれば容易であるが、この方法では、前述のように、空洞含有構造が不均一化して、空洞積層数密度を本発明で規定された範囲とすることが困難となり、フィルムのハンドリング性が著しく低下しやすくなる。
【0044】
空洞積層数密度を本発明で規定された範囲としつつ、熱処理(140℃×500時間)後の破断伸度残存率をフィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上に制御するための方法は特に制限されるものではないが、例えばフィルム延伸及び熱処理条件を後述のように制御することにより得られる。
【0045】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムの製造方法は任意であり、特に制限されるものではないが、例えば以下のようにして製造することが出来る。
【0046】
まず、ポリエステル原料とボイド形成剤との混合は、予備的にペレット混合して押出機に供給することが好ましい。ペレットを攪拌、混合する方法としては、原料空送系での自然攪拌、インラインミキサーを用いた連続攪拌、バッチ処理のミキサーを用いる方法を単独あるいは組合せて用いることが出来る。
【0047】
原料ペレットを予備混合することによって、後続の押出し機スクリュー部でのデッドスペースを低減することが可能となり、低オリゴマー性に優れたフィルムの製造が容易となる。逆に、ペレット混合なしで押出し機に原料を供給した場合には、原料組成の不均質化によって、溶融ポリマーの部分的な滞留を生じる原因となり、フィルムを低オリゴマー化するうえで好ましくない。
【0048】
次いで、ペレット混合した原料を押出し機に供給する。押出し機は単軸押出し機あるいは2軸押出し機等が使用可能であるが、工業生産においては吐出能力の安定性から単軸押出し機が好ましい。なお、単軸押出し機を用いる場合、そのスクリュー形状は任意であるが、本発明においては、ダブルフライト型のスクリューを採用することが好ましい。ポリマーの吐出能力の点からは通常のシングルフライトスクリューが優れるが、不均質なペレット混合物の押出しにおいては、デッドスペースを排除し、より低オリゴマー化を図るため、ダブルフライトスクリューの採用が好ましい。
【0049】
次に、押出機によって溶融・混合されたポリマーは、定量供給装置及びフィルターを介し、フラットダイに供給される。
【0050】
なお、本発明においては、フィルターとフラットダイの間(好ましくはフラットダイの直前)に、5エレメント以上のインラインスタティックミキサーを装着することが好ましい。前記ミキサーの装着によって、非相溶性樹脂の分散状態を均一化し、より優れたハンドリング性を有するフィルムの製造が可能となる。
【0051】
また、フィルムのハンドリング性を向上させるために、フィルムを多層共押出し構成とすることも可能である。この場合、ダイ直上部にフィードブロックを設置し、前記のポリマー層の片面もしくは両面あるいは内層に別原料を供給して積層させた後、フラットダイに供給すれば良い。また、フィードブロック法以外の共押出し法として、マルチマニホールドダイを使用してもかまわない。
【0052】
次いで、溶融ポリマーをフラットダイから冷却ドラム上にキャスティングして、未延伸フィルムを製造する。冷却ドラムへのキャスティングに際しては、静電密着法やエアナイフ法を用いることが出来るが、フィルム表裏で空洞含有構造を均一化するため、エアナイフ等を用いて反ドラム面からも強制冷却することが好ましい。
【0053】
次に、前記の方法で製造した未延伸シートを、2軸延伸及び熱処理する。第1段の縦延伸工程では、周速が異なる2本あるいは多数本のロール間で延伸する。このときの加熱手段としては、加熱ロールを用いる方法でも非接触の加熱方法を用いる方法でもよく、それらを併用してもよい。
【0054】
ただし、ポリエステルと非相溶性樹脂との界面に均一に空洞を発現させ、かつ熱処理(140℃×1000時間)後の破断伸度残存率をフィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上とするためには、加熱ロールを用いて未延伸フィルムを2次転移温度以下の温度、好ましくは50〜70℃に均一加熱した後、未延伸フィルムの片面もしくは両面から赤外線加熱ヒータを用いて加熱し、均一延伸に必要十分な熱量を供給して瞬間的に延伸を開始・完了させる方法を採用すれば良い。この場合の好ましい縦延伸倍率は、2.8〜4.0倍であり、さらに好ましくは3.0〜3.5倍である。
【0055】
次いで、縦1軸延伸フィルムをテンターに導入し、フィルムを幅方向に延伸する。好ましい延伸温度は100〜160℃であるが、前記温度範囲内で加熱昇温しつつ延伸処理を施すことがさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は3.2〜4.2倍であり、さらに好ましくは3.5〜4.0倍の範囲である。
【0056】
このようにして得られた2軸延伸フィルムに対し、テンター内で熱処理を施す。熱処理温度の設定は、縦延伸法の選択とともに、熱処理(140℃×1000時間)後の破断伸度残存率を、フィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上とするために極めて重要な要件である。熱処理温度は190〜220℃が好ましく、195〜215℃での熱処理がさらに好ましい。
【0057】
なお、上記の製造条件を採用した場合には、通常の電気用ポリエステルフィルムと比較して、フィルムの熱寸法安定性が不良となる場合がある。そのため本発明では、フィルムの製造工程中あるいはフィルムの製造後に加熱弛緩処理をフィルム長手方向及び/又は幅方向に施すことが好ましい。弛緩処理の方法として、テンター内でクリップを開放あるいは端部を切断して弛緩処理する方法、テンターを出てからフィルムを巻き取るまでの間にフィルムを再加熱して弛緩させる方法、フィルム巻き取り後に別工程でアニール処理を実施する方法等を採用することが出来る。
【0058】
この場合、弛緩処理温度は150℃以上かつ前記の熱処理温度未満が好ましく、さらに好ましくは160〜190℃である。
【0059】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムでは、前記の弛緩処理を行うことによって熱寸法安定性を向上させることが出来る。詳しくは、フィルムを加熱処理(160℃で120分間)した際の長手方向の熱収縮率が3.0%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.0%以下である。
【0060】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、厚みが20〜500μmであることが電気絶縁用基材フィルムとして好ましく、特にハーメチックモーター用絶縁材料として使用する場合には、厚みが100〜500μmであることが好ましい。
【0061】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは単層であっても、同種または異種の熱可塑性樹脂フィルム層を複合した複層構成としてもよい。かかる複合に用いられる熱可塑性樹脂フィルム層は、前記の共押出し法によって得られるが、その他の方法として、コーティング法、接着剤層等を介するラミネート法によっても形成することが出来る。
【0062】
また、かかる熱可塑性樹脂フィルムとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレートまたはポリイミドの1 種または2種以上を主成分とするフィルムを用いることが出来るが、これらに制限されるものではない。
【0063】
また、前記熱可塑性樹脂フィルム層には、必要に応じて着色剤、耐光剤、蛍光剤、帯電防止剤などを添加することも可能である。また、前述の無機粒子や有機粒子を添加してもよい。
【0064】
また、本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、少なくともそのいずれか一方の表面に塗布層を有していても構わない。そして、塗布層を設けることにより、インキやコーティング剤などの塗れ性や接着性を改良することができる。塗布層を構成する化合物としては、ポリエステル系樹脂が好ましいが、この他にも、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂など、通常のポリエステルフィルムの接着性を向上させる手段として開示されている化合物等が適用可能である。
【0065】
塗布層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる。塗布する段階としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗布する方法、延伸処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能である。
【0066】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を示す。また、本発明で用いた特性の評価方法を以下に示す。
【0067】
(1)ポリエステルの極限粘度
フェノール60重量%と1,1,2,2,−テトラクロロエタン40重量%の混合溶媒に、ポリエステル原料(または空洞含有ポリエステル系フィルム)を溶解し、固形分をガラスフィルターで実質的に濾過した後、30℃にて測定した。
【0068】
(2)溶融粘度(ηo、ηs)
樹脂温度285℃、剪断速度100/秒における溶融粘度を、島津製作所製フローテスター(CFT−500)を用いて測定した。なお、剪断速度100/秒での溶融粘度の測定は、剪断速度を100/秒に固定して行うことが困難であるため、適当な荷重を用いて、100/秒未満の任意の剪断速度および当該速度よりも大きい任意の剪断速度で溶融粘度を測定し、縦軸に溶融粘度、横軸に剪断速度をとり、両対数グラフにプロットした。前記の2点を直線で結び、内挿により剪断速度100/秒での溶融粘度(η:ポイズ)を求めた。
【0069】
(3)フィルムの厚みt
Sony Precision Technology Inc.製 Digital Micrometer M−30を使用し、ランダムに20点フィルムの厚みを測定し、その平均値をフィルムの厚みt(mm)とした。
【0070】
(4)見かけ比重
JIS K−7112浮沈法による。
【0071】
(5)フィルムのハンドリング性(低圧誘導電動機スロット絶縁部分への実装性)
各サンプルを図1に示す大きさに100枚切り出し、これをそれぞれ図2に示す形状に折り曲げて、図3に示すモータースロットモデルへ挿入し、実装性を評価した。判定基準は次の通り。
○:100枚中で潰れ、折れ曲りによる挿入不良なし
△:100枚中で潰れ、折れ曲りによる挿入不良が1回以上5回未満
×:100枚中で潰れ、折れ曲りによる挿入不良が5回以上
【0072】
(6)ポリエステル樹脂中の環状3量体(以下、CTと略す)の含有量
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロホルム混合液(容量比:2/3)3mlに溶解し、さらにクロロホルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルホルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法によりCTを定量した。
【0073】
(7)熱処理(140℃×1000時間)後の伸度残存率
使用冷媒としてハイドロフルオロカーボン混合冷媒(旭硝子社製、R410A)を20g、使用オイルとしてポリオールエーテル系合成オイル50gを用い、140℃、40気圧の120ccオートクレーブ中に測定試料を入れ1000時間処理した。
【0074】
なお、冷媒及びオイルの投入に先立ち、測定試料をオートクレーブ内で140℃、26.7Pa(0.2Torr)の真空下にて3時間の脱水処理を施した。また、使用オイルについても予め脱水処理を施し、水分率を50ppm未満に制御したものを用いた。
【0075】
次に、上記試験前後でのフィルムの長手方向及び幅方向の破断伸度を測定し、試験前のフィルム破断伸度に対する試験後のフィルム破断伸度の比率(保持率)を求め伸度残存率とした。伸度残存率は%で示し、%単位の小数第1位の桁は四捨五入した。なお、破断伸度の測定は、JIS−C2318に規定された方法に準拠して行った。
【0076】
(8)誘電率
JIS−C2151−1990「電気用プラスチックフィルム試験方法」に準拠して測定した。
【0077】
(9)熱収縮率
JIS−C2318と同様の方法で測定サンプルを準備した。次いで、熱処理温度と時間を変更(160℃±0.5℃、120分間)して、フィルム長手方向の寸法変化率(熱収縮率)を下記式により測定した。
熱収縮率(%)=[(A−B)/A]×100
なお、Aは熱処理前のフィルム長手方向の寸法(mm)、Bは熱処理後のフィルム長手方向の寸法(mm)を示す。
【0078】
(10)空洞積層数密度
まず、フィルムをエポキシ樹脂に埋設し、ミクロトームを用いてフィルムの縦延伸方向と平行かつフィルム面に垂直に割断したサンプルを5点作成した。同一サンプルにおいて、異なる部位の5箇所において、走査型電子顕微鏡を用いて、割断面を300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、フィルム全厚みにおける空洞の分布状態が確認できる写真を撮影した。写真画像上の任意の場所でフィルム表面に垂直な直線を引き、この直線と交わる空洞の数(積層数)を計数した。また、この直線に沿ってフィルムの全厚み(μm)を測定し、空洞の積層数をこれで除して空洞積層数密度(個/μm)を求めた。なお、測定は写真1枚につき5箇所で行い、総計25箇所の平均値を求めてサンプルの空洞積層数密度(個/μm)とした。
【0079】
実施例1
(空洞形成剤の調整)
溶融粘度(ηo)1300ポイズのポリメチルペンテン樹脂60重量%、溶融粘度2000ポイズのポリプロピレン樹脂20重量%、及び溶融粘度(ηs)3900ポイズのポリスチレン樹脂20重量%をペレット混合して、285℃に温調したベント式二軸押出機に供給、混練して空洞形成剤(A)を調整した。
【0080】
(ポリエステル原料の製造)
まず、二次凝集粒子径が1.5μmの凝集体シリカ粒子をエチレングリコール中に混合し、該スラリーを高圧式均質分散機により49.0MPaで5パス相当時間循環処理し、さらに95%カット径が30μmのビスコースレーヨン製フィルターで濾過処理を行ない、平均粒子径が1.0μmの凝集体シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを得た。スラリー濃度は140g/Lであった。
【0081】
シリカ粒子含有ポリエチレンテレフタレート(A)を次の方法で得た。エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4重量部及びエチレングリコールを64.4重量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03重量部及び酢酸マグネシウム4水和物を0.088重量部、トリエチルアミンを0.16重量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、リン酸トリメチル0.040重量部を添加した。さらに、260℃に昇温し、リン酸トリメチルを添加した15分後に、上記シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成ポリエステルに対し、500ppmとなるよう添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、95%カット径が28μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、極限粘度が0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを製造した。得られたPET中のCT含有量は0.90重量%であった。
【0082】
次に、得られたPET樹脂ぺレットを密封容器内に封入して窒素パージし、220℃に加熱、攪拌しながら48時間の熱処理を施して、原料PET樹脂ペレット(B)を得た。得られたPET樹脂ペレット(B)の極限粘度は0.64dl/g、PET中のCT含有量は0.26重量%であった。
【0083】
(フィルムの製造)
上記の空洞形成剤(A)とPET樹脂ペレット(B)とを別々に加熱、真空乾燥し、別々のホッパーに供給した。次いで、ホッパー下部に取り付けたスクリューフィーダーを用いて、A/B=7/93の重量比となるように連続計量し、インラインミキサーを用いて連続攪拌した後、ダブルフライトスクリューを備えた単軸押出機に供給した。以下、前記混合原料(A/B=7/93;重量比)をコア層原料と略す。
【0084】
次に、押出機によって溶融、混合された前記のコア層原料を、ギアポンプ、フィルター、直径50mmの短管内部に装着された10エレメントのインラインスタティックミキサーを経由してフィードブロック(共押出し接合器)に供給した。
【0085】
一方、前記PET樹脂ペレット(B)を単独でスキン層原料として用い、真空乾燥を施して、前記コア層とは別の単軸押出機に供給し、溶融押出し、ギアポンプ、フィルターの工程を経由して、前記フィードブロックに供給した。
【0086】
フィードブロックでは、前記コア層の両面に前記スキン層を均等に接合した。このとき、スキン層/コア層/スキン層の厚み比率が10/80/10となるように、コア層側及びスキン層側の押出機及びギアポンプの回転数を制御した。
【0087】
次いで、フィードブロックで接合した溶融ポリマーを、フィードブロック直下に設置したコートハンガーダイに供給し、表面温度30℃の冷却ドラム上にキャストした。同時に、冷却ドラム面の反対面からもエアナイフ法を用いて強制冷却して、厚さ2.3mmの未延伸フィルムを製造した。
【0088】
このとき、冷却ドラムの周速は6.45m/分、前記コア層側フィルターの濾過圧力損失は9.2MPa、インラインスタティックミキサーを通過させるのに要した圧力損失は2.9MPaであり、押出し機スクリューからダイまでのメルトライン容積をポリマー流速で除算して求めた平均溶融滞留時間は7.5分であった。一方、前記スキン層側フィルターの濾過圧力損失は8.8MPa、平均溶融滞留時間は10分であった。
【0089】
次に、前記の方法で得られた未延伸フィルムを、数本の加熱ロールを用いて65℃に加熱した後、周速が異なるロール間で3.1倍に延伸し、即座に冷却した。このとき、低速ロール(最終加熱ロール)と高速ロール(第1冷却ロール)の中間部に、金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータを、フィルムを挟んで対向する位置に設置してフィルムの両面から加熱し、均一延伸に必要十分な熱量を供給して瞬間的に延伸を開始、完了させ、1軸延伸フィルムを製造した。
【0090】
次に、得られた1軸延伸フィルムをテンターに導入し、120℃から150℃に加熱昇温しつつ幅方向に3.8倍の延伸を行った。さらに、テンター内で、205℃で30秒間の熱処理を施し、冷却、両端部(クリップ把持部)を切除した。
【0091】
次に、クリップ把持部を切除したフィルムを熱風(180℃)で再加熱し、フィルム長手方向に1.5%の緩和処理を施し、冷却後、ロール状に巻き取った。
このようにして得られた空洞含有ポリエステル系フィルム(実施例1)の特性値を表1に示した。
【0092】
実施例2
実施例1と同一原料、同一吐出条件で、溶融ポリマーを冷却ドラム上にキャストした。ただし、冷却ドラムの周速を4.61m/分とし、厚みが3.2mmの未延伸フィルムを作成した。次に、フィルムの縦延伸及び横延伸は実施例1と同様の方法で実施した。引き続き、テンター内で、200℃で40秒間の熱処理を施した後、冷却し、両端部(クリップ把持部)を切除し、フィルム長手方向の緩和処理を行わずに、ロール状に巻き取った。
【0093】
次に、得られたフィルムロールを1.3m幅にスリットして巻き返した後、フローティングドライヤーを用いて緩和処理を施した。緩和条件は、熱風温度190℃、フィルム走行速度を10m/分とし、緩和量が2.0%となるように走行テンションを制御した。このようにして得られたフィルム(実施例2)の特性値を表1に示した。
【0094】
実施例3
実施例1で示した空洞形成剤の調整において、溶融粘度(ηo)1300ポイズのポリメチルペンテン樹脂に代えて、溶融粘度(ηo)4300ポイズのポリメチルペンテン樹脂を用いた。
なお、実施例1と同一の製造条件では、押出し機の負荷電流とフィルター濾過圧力が上昇する傾向にあったため、コア層原料及びスキン層原料の吐出量(押出し機及びギアポンプ回転数)を適宜調節して厚み2.3mmの未延伸フィルムを製造した。
【0095】
このとき、冷却ドラムの周速は4.90m/分、前記コア層側フィルターの濾過圧力損失は8.4MPa、インラインスタティックミキサーを通過させるのに要した圧力損失は2.6MPaであり、押出し機スクリューからダイまでのメルトライン容積をポリマー流速で除算して求めた平均溶融滞留時間は10分であった。
【0096】
続く縦延伸以降の工程は、実施例1と同様の方法により、空洞含有ポリエステル系フィルム(実施例3)を製造した。得られたフィルムの特性値を表1に示した。
【0097】
比較例1
(ポリエステル原料の製造)
実施例1と同様に、凝集体シリカ粒子を0.05重量%含有するPET樹脂ペレット(極限粘度0.63dl/g、CT含有量0.9重量%)を出発原料として用いた。ただし、脱オリゴマー(脱CT)処理に際して、実施例1で用いた窒素パージ法の代わりに、下記記載の固相重合法を用いた。
【0098】
即ち、前記出発原料を真空容器内で220℃に加熱、攪拌しながら48時間の熱処理を施して、原料PET樹脂ペレット(C)を得た。得られたPET樹脂ペレット(C)の極限粘度は0.76dl/g、PET中のCT含有量は0.25重量%であった。
【0099】
(フィルムの製造)
実施例1で用いたPET樹脂ペレット(B)に代えて、前記固相重合を施したPET樹脂ペレット(C)を用いた。
【0100】
なお、実施例1と同一の製造条件では、押出し機の負荷電流が著しく大きくなり、またフィルター濾過圧力も著しく上昇するため、フィルムの製造が不可能であった。そのため、コア層原料及びスキン層原料の吐出量(押出し機及びギアポンプ回転数)を適宜調節して厚み2.3mmの未延伸フィルムを製造した。
【0101】
このとき、冷却ドラムの周速は3.13m/分、前記コア層側フィルターの濾過圧力損失は9.5MPa、インラインスタティックミキサーを通過させるのに要した圧力損失は3.0MPaであり、押出し機スクリューからダイまでのメルトライン容積をポリマー流速で除算して求めた平均溶融滞留時間は15.5分であった。
【0102】
次に、前記の方法で得られた未延伸フィルムを、常法により数本の加熱ロールを用いて85℃に加熱し、2.9倍に縦延伸した。
【0103】
得られた1軸延伸フィルムを引き続きテンターに導入し、120℃に加熱昇温して幅方向に3.7倍の延伸を行った。次いで、テンター内で、230℃で60秒間の熱処理を施して、2軸延伸フィルム(比較例1)を得た。なお、本比較例1では、緩和処理は施さなかった。得られたフィルム(比較例1)の特性値を表1に示した。
【0104】
比較例2
実施例1と同じ原料を用い、未延伸フィルムの製造も実施例1と同条件で実施した。そして、縦延伸以降の製造条件は比較例1と同様の方法により、2軸延伸フィルム(比較例2)を得た。得られたフィルム(比較例2)の特性値を表1に示した。
【0105】
比較例3
実施例1で用いたPET樹脂ペレット(B)の代わりに、凝集体シリカ粒子を0.05重量%含有するPET樹脂ペレット(極限粘度0.63dl/g、CT含有量0.9重量%)を低オリゴマー処理(密封容器内での窒素パージ熱処理)せずにそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして未延伸フィルムを製造した。縦延伸条件、横延伸条件、熱処理条件についても、実施例1と同じ条件にて実施したが、フィルム長手方向の緩和処理は施さなかった。得られたフィルム(比較例3)の特性値を表1に示した。
【0106】
【表1】
Figure 0004806861
【0107】
表1から、実施例1〜3のフィルムは本発明で規定される要件を満足しており、ハーメチックモータ用絶縁材料として好適な低オリゴマー性、高温高圧冷媒ガス中での長期使用中の脆化防止性、低誘電性、良好なハンドリング性を有するフィルムであることが分かる。
【0108】
これに対し、原料PET樹脂に固相重合を施して、PETを高分子量化及び低オリゴマー化し、かつ従来公知の延伸、熱処理条件で製造したフィルム(比較例1)では、ポリマーのメルトライン中での滞留時間が長くなるため、空洞積層数密度が本発明で規定する要件を満たすことが出来ず、フィルムのハンドリング性が著しく不良となることがわかる。また、オリゴマー成分がメルトライン中で再析出するために実施例1〜3と比較して低オリゴマー性が乏しくなること、さらに140℃で1000時間処理後の伸度残存率も乏しいことが分かる。
【0109】
また、実施例1と同じ原料を用いた場合でも、従来公知の延伸、熱処理条件で製造したフィルム(比較例2)では、140℃で1000時間処理後のフィルムの脆化が著しく進行し、大幅に伸度残存率が低下していることが分かる。
【0110】
また、実施例1と同様の製造法を採用した場合でも、原料PET樹脂の低オリゴマー処理を行っていないフィルム(比較例3)では、CT含有量が高いことが分かる。
【0111】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、オリゴマーの再析出が少なく、高温で長時間(140℃×1000時間)処理しても伸度の低下が小さく、かつ均一な空洞含有構造を有しているため低誘電性及びハンドリング性(折れ曲がり、潰れなど)に優れるという利点がある。そのため、冷蔵庫あるいは空調機等に組み込まれる、代替フロンガスを冷媒とし、有極性オイルを用いる高温度下での使用に適した耐熱性冷媒圧縮機用の電動機絶縁フィルム、特にハーメチックモータ用絶縁材料として好適である。また、フレキシブル印刷回路、フラットケーブル、絶縁テープ、粘着テープ、ラベルなどの基材としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は裁断されたフィルムであり、破線は折り返し位置を示す。なお、図中の長さの単位はmmである。
【図2】図2は図1のフィルムを破線で折り返し、u字形に曲げた状態を示す。
【図3】図3は図2のフィルムを挿入するモータースロット例である。なお、図中の長さの単位はmmである。
【符号の説明】
1 絶縁フィルム
2 絶縁フィルムを折り曲げたもの
3 モータースロット
4 フィルム挿入

Claims (6)

  1. ポリエステル樹脂と、前記ポリエステル樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂を含有する組成物からなり、前記ポリエステル樹脂中に微粒子状に分散した非相溶の熱可塑性樹脂に起因する空洞をフィルム内部に多数含有する空洞含有ポリエステル系フィルムであって、
    前記ポリエステル樹脂が下記(1)を満足し、
    かつ前記フィルムが下記(2)〜(4)を満足し、
    前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする空洞含有ポリエステル系フィルム。
    (1)環状3量体の含有量:フィルム全体重量に対して0.50重量%以下
    (2)見掛け比重:0.95〜1.30
    (3)空洞積層数密度:0.15個/μm以上
    (4)熱処理(140℃×1000時間)後の破断伸度残存率:フィルムの長手方向及び幅方向ともに20%以上
  2. 前記非相溶の熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂とポリスチレン樹脂を含み、
    ポリオレフィン系樹脂中の主成分樹脂の溶融粘度ηoと前記ポリスチレン樹脂の溶融粘度ηsの比ηo/ηsが0.80以下であることを特徴とする請求項1に記載の空洞含有ポリエステルフィルム。
  3. 前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が2.0〜15.0重量%であり、
    前記ポリスチレン樹脂の含有量が1.0〜5.0重量%であることを特徴とする請求項2に記載の空洞含有ポリエステルフィルム。
  4. 前記フィルムを150℃、120分間処理した際の長手方向の熱収縮率が1.0%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空洞含有ポリエステルフィルム。
  5. 前記フィルムが二軸延伸及び熱処理して得られたものであり、
    第1段の延伸工程において非接触の加熱方法を用いて延伸することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空洞含有ポリエステルフィルム。
  6. フィルム製造工程中にテンター内でフィルム端部を切断して長手方向に加熱弛緩処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空洞含有ポリエステルフィルム。
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