JP2005169971A - 二軸配向積層フィルム - Google Patents

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哲也 町田
Takuji Toudaiji
卓司 東大路
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Abstract

【課題】ガスバリア性、寸法安定性に優れた二軸配向積層フィルムに関するものであり、さらに詳しくは、包装材料、工程・離型材料、電気絶縁材料、印刷材料、成形材料、磁気記録媒体用、建材などのガスバリア性を必要とする各種工業材料用途において、好適に使用できる二軸配向積層フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも3層からなる二軸配向積層フィルムであって、該フィルムを構成する最外層以外の少なくとも1層が液晶性樹脂Aを含む層(C層)であり、該液晶性樹脂Aの融点Tm1 が最外層(D層)を構成する熱可塑性樹脂Bの融点Tm2 との間に下記式を満足するものであることを特徴とする二軸配向積層フィルムである。
10℃≦Tm2 −Tm1 ≦70℃
【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性に優れかつ寸法安定性に優れた二軸配向積層フィルムに関するものであり、さらに詳しくは、包装材料、工程・離型材料、電気絶縁材料、印刷材料、成形材料、磁気記録媒体用、建材などの各種工業材料用途において、ガスバリア性が必要とされる各用途において好適に使用できる二軸配向積層フィルムに関するものである。
熱可塑性樹脂フィルムは、強度、耐久性、透明性、柔軟性、表面特性の付与が可能などの特長を活かして、包装用、工程・離型材料用、電気絶縁用、印刷材料用、成形材料用、建材用、磁気記録媒体用などの各種工業材料用で用いられている。中でも、食品や薬品等の分野においては、外気からの酸素や水蒸気等の侵入があると内容物が変質してしまい長期保存ができないことから、包装を施すことにより外気の侵入を防ぐことが行われており、このような外気の侵入の防止が可能なガスバリア性を有するフィルムの開発が行われている。
既存のガスバリアフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、エチレンビニルアルコールフィルムや、アルミ箔をラミネートしたフィルムなどが用いられているが、近年の環境問題に関する規制が広がる中で、アルミ箔のような焼却残留物が発生する素材や、ポリ塩化ビニリデンのように焼却時に塩素ガスが発生したり、ダイオキシン類の生成が懸念される素材の使用は規制される方向にある。また、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムはガスバリア性が不足しており、フィルム上に金属アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの少なくとも1種の金属酸化物の蒸着層を設けてなるガスバリア性フィルムが多く用いられているが、得られるガスバリア性は十分ではなかった。
また、電子デバイスの分野においては、電子デバイス用基板として従来、Siウエハやガラスなどの無機材料が広く用いられてきた。ところが、近年、製品の軽量化、基板のフレキシブル化、低コスト化、ハンドリング特性などの様々な理由から高分子基板が望まれるようになっている。しかしながら、高分子材料は、ガラスなどの無機材料と比較した場合、ガスの透過性が著しく大きい。
このため、電子デバイス用基板として高分子基板を用いた場合には、高分子基板を透過して電子デバイス内に侵入・拡散した酸素によりデバイスが酸化して劣化してしまう、電子デバイス内の必要な真空度を維持できない、などの問題がある。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板として高分子フィルムが用いられている(特許文献1、2)。
しかしながら、これらの有機EL素子の場合は、基板である高分子フィルムを透過して有機EL素子内に侵入する酸素や水蒸気により有機膜が劣化してしまうため、発光特性が不十分となり、また、耐久性に不安がある、等の問題が考えられる。
すなわち、上述したように、種々の分野において十分なガスバリア性を有し、そのガスバリア性によりガスバリア対象物の良好な品質を確保することが可能な、優れたガスバリア性能を備えた高分子フィルムは未だ確立されていないのが実情である。
また、液晶性樹脂は耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性およびガスバリア性など優れた特性を有する材料であり、液晶性樹脂を熱可塑性樹脂の間に積層し、ガスバリア性を改善した積層フィルムが提案されている(特許文献3)。
しかし、得られたフィルムは、熱可塑性樹脂と液晶性樹脂との融点差が80℃以上存在するため、液晶性樹脂の連続相において十分な熱寸法安定性がないものであった。
また、液晶性樹脂を熱可塑性樹脂の間に積層し、機械特性、表面特性を改善した積層フィルムが提案されている(特許文献4)。
しかし、このフィルムは、ガスバリア性を十分向上させるものではなかった。
特開平2−251429号公報 特開平6−124785号公報 特開平11−60756号公報 特開平6−210814号公報
本発明の目的は、上記問題を解決し、良好なガスバリア性を有し、かつ、寸法安定性に優れた高品質の二軸配向積層フィルムを提供することを目的とするものである。
上記目的を達成する本発明の二軸配向積層フィルムは、以下の構成からなる。
すなわち、少なくとも3層からなる二軸配向積層フィルムであって、該フィルムを構成する最外層以外の少なくとも1層が液晶性樹脂Aを含む層(C層)であり、該液晶性樹脂Aの融点Tm1 が最外層(D層)を構成する熱可塑性樹脂Bの融点Tm2 との間に下記式を満足するものであることを特徴とする二軸配向積層フィルムである。
10℃≦Tm2 −Tm1 ≦70℃
本発明によれば、以下に説明するとおり、ガスバリア性、寸法安定性に優れた高品質の二軸配向積層フィルムであり、特に包装材料、回路材料製造工程の工程・離型材料や電気絶縁材料、印刷部材、成形材料、建材などガスバリア性が必要とされる各用途に好適な二軸配向積層フィルムを得ることができる。
以下、本発明の最良の実施形態を説明する。
本発明の二軸配向積層フィルムは、C層中に液晶性樹脂Aを含有し、D層を構成する熱可塑性樹脂Bの融点Tm2 と該液晶性樹脂Aの融点Tm1 との差は、10℃以上、70℃以下であることが必須である。好ましくは、30℃以上、60℃以下、最も好ましくは、40℃以上、50℃以下である。
本発明の場合、上記範囲の融点をもつ液晶性樹脂Aを用い、溶融成形後、二軸延伸し、後述する特定の条件で熱処理して、液晶性樹脂Aを溶融させ、液晶性樹脂の連続構造を形成させることでガスバリア性を向上させるものである。従って、上記融点の差が10℃未満の場合、製膜工程における熱処理工程において、液晶性樹脂のみを十分に溶融させることができず、液晶性樹脂の連続構造が十分に形成されず十分なガスバリア性を得ることができなくなる場合がある。また、融点の差が70℃を超えると、液晶性樹脂の液晶性が低下し、フィルムの寸法安定性を十分向上できなくなることがある。
本発明の二軸配向積層フィルムのC層に含有される液晶性樹脂Aの融点およびD層を構成する熱可塑性樹脂Bの融点は、μTA(マイクロサーマルアナライザー)によって測定することが可能である。
本発明の二軸配向積層フィルムは、特に限定されないが、液晶性樹脂Aを含有する層(C層)が、液晶性樹脂の連続構造を含む層であることが好ましい。液晶性樹脂の連続構造とは、液晶性樹脂のドメインがフィルム表面に平行な面において長手方向および/または幅方向に連なった構造を有するものである。層中の面を電子顕微鏡レベルの倍率で拡大することによって、液晶性樹脂の連続構造を確認することができる。
また、液晶性樹脂の連続構造は、フィルム層内で、フィブリル状、ロッド状、または数珠状形態の線状構成要素が網目状または擬網目状に連なった形態をなしていてもよい。前記したフィブリル状、ロッド状、または数珠状等の線状構成要素の径、すなわち、顕微鏡写真で観察されるこれらの線状構成要素の短径は、特に限定されないが、1〜100μmの範囲であることが好ましい。液晶性樹脂の連続構造の線状構成要素の短径のより好ましい範囲は、5〜75μmであり、さらに好ましい範囲は、10〜50μmが最も好ましい。線状構成要素の径を1μm未満にするには、その制御が実際上非常に実現困難である。一方、線状構成要素の径が100μmを越えると、製膜性が悪化して、フィルム表面のウネリが大きくなって、フィルムの平面性が低下して、各種用途でのフィルムの加工性の観点でも問題になることがある。
液晶性樹脂の連続構造を形成するための好ましい形態として、未延伸フィルムで液晶性樹脂Aが相互に連結した構造であることが例示される。互いに連結した構造とは、液晶性樹脂Aが連続相(マトリックス相)を有する樹脂相分離構造(例えば、海海構造)である。未延伸フィルムにおいて、液晶性樹脂Aが互いに連結した構造を有していると、二軸延伸を施した場合に、C層中に液晶性樹脂の連続構造を形成しやすく、本発明の効果を得やすくなるので好ましい。
本発明の二軸配向積層フィルムは、未延伸フィルムにおいて上記の構造を有したものを二軸延伸することによって、液晶性樹脂の連続構造が形成されるが、該連続構造の場合、本発明のガスバリア性を十分に向上させることができず、該連続構造をさらに特定の熱処理温度で熱処理することによって達成されるものである。
本発明の二軸配向積層フィルムのC層中には、液晶性樹脂A以外に熱可塑性樹脂Eを含有してもよい。C層中に含有される熱可塑性樹脂Eの含有量は、0重量%以上50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、10重量%以上50重量%以下であり、20重量%以上50重量%以下が特に好ましい。C層中の熱可塑性樹脂Eの含有量が50重量%を越えるとフィルムのガスバリア性が十分ではなく、本発明の効果を得ることができないことがある。
本発明のC層を構成する熱可塑性樹脂Eの融点Tm3 は、特に限定されないが、最外層(D層)を構成する熱可塑性樹脂Bの融点Tm2 よりも低いことが好ましく、より好ましくは、Tm2 とTm3 の差が10℃以上、70℃以下であり、さらに好ましくは、30℃以上、60℃以下、最も好ましくは、40℃以上、50℃以下である。
Tm2 とTm3 の差が10℃未満の場合、熱処理工程において、液晶性樹脂を溶融させて、液晶性樹脂の連続構造を形成にくくなることがあり、その結果、空隙率が増加し、ガスバリア性を十分に低下できないことがある。また、Tm2 とTm3 の差が70℃を超えると、最外層を形成する熱可塑性樹脂Bとの溶融粘度の差が大きくなってしまい、製膜安定性が低下し、また、厚みむらの大きなフィルムとなることがある。
本発明の二軸配向積層フィルムのC層中に含有する熱可塑性樹脂Eの融点は、上述したように、最外層(D層)を形成する熱可塑性樹脂Bの融点よりも低いことが例示されるが、この限りではない。例えば、C層を形成する液晶性樹脂Aの含有量が熱可塑性樹脂Eの含有量より多く、液晶性樹脂が海構造を形成する場合、あるいは、C層を形成する熱可塑性樹脂Eの含有量が多くても、液晶性樹脂Aが海構造を形成するように相反転させた場合などは、最外層(D層)を形成する熱可塑性樹脂Bと同等の融点を有する熱可塑性樹脂Eを使用できる。
また、本発明の二軸配向積層フィルムのC層中には、空隙が含まれないことが好ましい。C層中に含まれる空隙率は、C層面中の面積分率で0〜5%が好ましく、さらに好ましくは0〜4%の範囲であり、0〜3%が最も好ましい範囲である。C層中の空隙率が0%未満は、実際上非常に実現困難である。また、空隙率が5%を超える場合、ガスバリア性を十分付与できないことがある。
本発明の液晶性樹脂Aは、主鎖にメソゲン基を有する溶融成形性で、かつ液晶形成性があるポリエステルまたはポリエステルアミドを用いることができる。例えば、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる共重合ポリエステルなどである。具体的には、本発明では、“シベラス”(東レ製)、“ベクトラ”(ポリプラスチックス製)、“ゼナイト”(デュポン社製)、“スミカスーパー”(住友化学製)、“ザイダー”(ソルベイ製)、“上野LCP”(上野製薬製)、“タイタン”(イーストマン製)など各種市販の液晶性樹脂を適宜選択して使用することができる。また、液晶性樹脂Aは、溶融成形性であれば特に限定されない。その流動開始温度が150〜350℃であることが好ましく、さらに好ましくは190〜300℃であり、210℃〜270℃がC層を構成する熱可塑性樹脂Eと混合させる上で最も好ましい。
本発明で用いる好ましい液晶性樹脂Aの例としては、下記(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(I)、(III)および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(I)、(II)および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、または、それらのブレンドポリマーが挙げられる。下記構造単位からなる共重合ポリエステルは、熱可塑性樹脂Eとの相溶性が良好となり、本発明の効果を得ることができるために、特に好ましく例示されるがこれに限定されるものではない。
Figure 2005169971
(但し式中のR1 は、
Figure 2005169971
を示し、R2
Figure 2005169971
から選ばれた一種以上の基を示し、R3 は、
Figure 2005169971
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)ここで、構造単位[((II)+(III)]と構造単位(IV)とは実質的に等モルである。
上記構造単位(I)は、p−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成したポリエステルの構造単位を、構造単位(II)は、4、4´−ジヒドロキシビフェニル、3、3´、5、5´−テトラメチル−4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2、6−ジヒドキシナフタレン、2、7−ジヒドキシナフタレン、2、2´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4、4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)は、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4´−ジフェニルジカルボン酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、2−ビス(フェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸、1、2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸および4、4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
また、上記構造単位(I)、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R1
Figure 2005169971
であり、R2
Figure 2005169971
から選ばれた一種以上であり、R3
Figure 2005169971
から選ばれた一種以上であるものが好ましい。なお、式中のXは水素原子または塩素原子を示す。
また、上記構造単位(I)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R1
Figure 2005169971
であり、R3
Figure 2005169971
であるものが特に好ましい。
また、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R1
Figure 2005169971
であり、R2
Figure 2005169971
であり、R3
Figure 2005169971
であるものが特に好ましい。
本発明では、共重合量を、ポリマーを形成し得る繰返し構造単位のモル比から計算し、モル%で表す。上記好ましい共重合ポリエステルの場合には、構造単位(I)、構造単位(II)+(IV)、構造単位(III)+(IV)がポリマーを形成し得る繰返し構造単位であり、これらの共重合モル比から共重合量が計算できる。
上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位[(I)+(II)+(III)]に対する[(I)+(II)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、30〜90%がより好ましく、50〜80モル%が最も好ましい。また、構造単位[(I)+(II)+(III)]に対する(III)のモル分率は95〜5モル%が好ましく、70〜10モル%がより好ましく、50〜20モル%が最も好ましい。また、構造単位(I)/(II)のモル比は流動性の点から好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III)]のトータルモル数と実質的に等しい。
また、上記構造単位(I)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位(I)は[(I)+(III)]の5〜95モル%が好ましく、50〜80モル%がより好ましい。構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルである。
さらに、上記構造単位(I)、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、単独ではなく、構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルおよび/または構造単位(I)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルとのブレンドポリマーとして用いることが好ましい。このブレンドポリマーの場合においても、前記同様に、構造単位[(I)+(II)+(III)]に対する[(I)+(II)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、30〜90%がより好ましく、50〜80モル%が最も好ましい。
なお、必要に応じて、ポリエステルの末端基のうちのカルボキシル末端基あるいはヒドロキシル末端基のいずれかを多くした場合には、構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III)]のトータルモル数と完全に等しくはならないが、このような場合も、上述した説明中の「実質的に」に含まれる。
上記好ましい液晶性共重合ポリエステルを重縮合により製造する際には、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に、3、3´−ジフェニルジカルボン酸、2、2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4´−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の目的が損なわれない程度の少割合の範囲でさらに共重合せしめることができる。
上記した液晶性共重合ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法などに準じて製造できる。
例えば、上記の好ましく用いられる液晶性共重合ポリエステルのうち、上記構造単位(III)を含まない場合は下記(1)および(2)の製造方法が好ましく、また、構造単位(III)を含む場合は下記(3)の製造方法が好ましい。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4、4´−ジアセトキシビフェニル、4、4´−ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマ、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸のビス(βーヒドロキシエチル)エステルの存在下で、上記(1)または(2)の方法により製造する方法。
これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を添加した方が好ましい場合もある。
また、本発明の二軸配向積層フィルムは、液晶性樹脂層が分散相を形成していることが好ましく、該液晶性樹脂からなる分散相は、その平均分散径が0.1〜30μmであり、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは0.5〜15μmであり、最も好ましい範囲は、0.5〜10μmである。この平均分散径を上記範囲にすることにより、液晶性樹脂Aの優れた特性を付与しつつ、寸法安定性、表面特性、機械特性などに優れた二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。分散径が0.1μm未満であることは実用上必須ではないが、分散相の平均分散径が0.1μm未満であると、延伸工程でLCPの連続構造が形成されず、寸法安定性が不十分である。平均分散径が30μmより大きいと、機械特性や表面特性が悪化したりする。ここでいう分散相の平均分散径とは、フィルム長手方向の径と幅方向の径と厚み方向の径の平均値を意味する。
液晶性樹脂Aの分散相の形状は、特に限定されないが、球状もしくは細長い島状、小判状、繊維状となるのが好ましい。分散相のアスペクト比は、特に限定されないが、1〜20の範囲であることが好ましい。さらに好ましい範囲は2〜15であり、より好ましい範囲は2〜10である。これら島成分のアスペクト比を上記範囲にすることにより、液晶性樹脂Bが連なった連続構造を形成しやすくなり、かつ、寸法安定性や機械強度に優れた二軸配向積層フィルムを得ることができるので好ましい。ここで、アスペクト比は、分散相の平均長径/平均短径の比を意味するものである。
本発明の二軸配向積層フィルムのC層中における液晶性樹脂Aの含有量は、特に限定されないが、50〜100重量%の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、50〜90重量%の範囲であり、より好ましくは、50〜80重量%の範囲である。中でも、液晶性樹脂Aの含有量を50〜80重量%とすることで、未延伸フィルムの状態で液晶性樹脂Aと熱可塑性樹脂Eが相互に連結した構造となりやすく、二軸延伸により液晶性樹脂の連続構造を得られやすいので、特に好ましい。C層中の液晶性樹脂Aの含有量が50重量%未満であれば、フィルムのガスバリア性が十分ではなく、本発明の効果を得ることができないことがある。
本発明のC層を構成する熱可塑性樹脂Eあるいは最外層を構成する熱可塑性樹脂Bとしては、例えば、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリアミドイミド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリスルフォン、ポリ乳酸等の各種ポリマーおよび各種ポリマーの共重合体を挙げることができる。本発明では、ガスバリア性発現の観点から、熱可塑性樹脂Eとしては、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、熱可塑性樹脂Eとしては、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびこれら各ポリマーの共重合体が好ましく、寸法安定性の観点から、熱可塑性樹脂Bとしては、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドがさらに好ましく、熱可塑性樹脂Eとしては、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびこれら各ポリマーの共重合がさらに好ましい。
共重合ポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、エチレンテレフタレートとエチレンナフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとのブレンド等を挙げることができる。ガスバリア性向上の点から好ましくは、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体が好ましい。
本発明において、共重合ポリフェニレンスルフィドとは、p−フェニレンスルフィド単位を主たる繰り返し単位として、1種以上の共重合単位を共重合して構成されたものを言う。該共重合ポリフェニレンスルフィドにおけるp−フェニレンスルフィド単位の含有量は、全繰り返し単位に対して50〜95モル%、好ましくは70〜92モル%の範囲である。共重合単位としては、m−フェニレンスルフィド単位、
Figure 2005169971
Figure 2005169971
(ここでXは、アルキレン、CO、SO2 単位を示す。)
Figure 2005169971
Figure 2005169971
(ここで、Rはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、これらの複合の単位が存在してもかまわない。好ましい共重合単位は、m−フェニレンスルフィド単位である。これらの単位の共重合量は、共重合ポリフェニレンスルフィドの主たる繰り返し単位であるp−フェニレンスルフィド単位に次いで多い共重合単位が、全繰り返し単位に対して3〜50モル%、好ましくは5〜30モル%の範囲である。
該含有量が3モル%未満では、ガスバリア性を十分に向上できなくなることがあり、50モル%を越えると、耐熱性、寸法安定性が低下することがある。共重合ポリフェニレンスルフィドの繰り返し単位の残りの部分については、他の共重合可能な単位で構成されていてもよいが、
Figure 2005169971
で代表される3官能フェニレンスルフィド単位は、共重合体全体の1モル%以下であることが好ましい。
また、本発明の共重合ポリフェニレンスルフィドの共重合の態様は、ランダム、ブロックを問わないが、ランダムであることが好ましい。なお、共重合組成は、その組成に応じたあらゆる手段によって決定できる。
さらに共重合ポリフェニレンスルフィドは、上記共重合ポリフェニレンスルフィドが80重量%以上、好ましくは90重量%以上占めるものをいう。残りの20重量%未満であれば、共重合ポリフェニレンスルフィド以外の有機、無機の添加物、不活性粒子などを含むことは差し支えない。
本発明でいうポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分から構成されるものである。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
本発明の場合、ポリエステルとして特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびその共重合体または変性体よりなる群から選ばれた少なくとも一種類の使用が好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートとは、酸成分として、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸を少なくとも80モル%以上含有するポリマーである。酸成分については、少量の他のジカルボン酸成分を共重合してもよく、またエチレングリコールを主たるジオール成分とするが、他のジオール成分を共重合成分として加えてもかまわない。
本発明で使用するポリエチレンテレフタレートは、通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は、無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。前記エステル化あるいはエステル交換反応は、130〜260℃の温度条件下で行い、重縮合反応は高真空下、温度220〜300℃で行うのが通常である。
リン化合物の種類としては、亜リン酸、リン酸、リン酸トリエステル、ホスホン酸、ホスホネート等があるが、特に限定されず、また、これらのリン化合物を二種以上併用してもよい。また、エステル化あるいはエステル交換から重縮合の任意の段階で必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、核生成剤、表面突起形成用無機および有機粒子を添加することも可能である。
本発明で用いるポリエステルの固有粘度は、特に限定されないが、フィルム成形加工の安定性や液晶性ポリマーとの混合性の観点から、0.55〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.60〜1.5(dl/g)である。
本発明でいうポリフェニレンスルフィド(PPS)とは、下記構造式で示されるフェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む樹脂である。かかるフェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性などを損なうことがある。
Figure 2005169971
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記構造単位を挙げることができる。このうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
Figure 2005169971
PPSを主成分とする樹脂組成物を熱可塑性樹脂として使用する場合には、PPS成分を60重量%以上含む組成物が好ましい。PPSの含有量が60重量%未満では、該組成物からなるフィルムの機械特性、耐熱性などを損なう場合があるので注意すべきである。
該組成物中の残りの40重量%未満は、PPS以外のポリマー、無機または有機のフィラー、滑剤、着色剤などの添加物を含むことができる。
本発明でいうPPSは、公知の方法、すなわち、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造できる。
本発明において、得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などにより洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することも可能である。
PPS樹脂の製造法を例示するが、特にこれらに限定されるものではない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧下で反応させる。必要に応じてトリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリ、カルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄・乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマーは、実質的に線状のPPSポリマーであり、しかも、該PPS樹脂の溶融結晶化温度Tmcは160〜190℃の範囲にあるので安定した延伸製膜が可能になる。
また、必要に応じて、他の高分子化合物や酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルク、カオリンなどの無機、有機化合物や熱分解防止剤、熱安定剤、酸化防止剤などを添加してもよい。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃であり、時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。
加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率よくしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いるのがより好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。脱イオン処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、および有機溶剤洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであればよく、特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中でN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。
有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については、特に制限はなく、常温〜300℃の範囲の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては以下の方法が例示できる。つまり、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水のほうが多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法が例示できる。つまり、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。
用いられる酸はPPS樹脂を分解する作用を有しないものであればよく、特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボンン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸、塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。酸水溶液洗浄処理を施すと、PPS樹脂の酸末端成分が増加して、液晶性樹脂Aと混合する場合に分散混合性が高まり、液晶性樹脂Aの分散相の平均分散径が小さくなる効果が得られることがあり好ましいが、特に限定されない。
本発明において、熱可塑性樹脂Eと液晶性樹脂Aを混合する時期、例えば、液晶性樹脂Aをポリエステルやポリフェニレンスルフィドに添加する時期は、特に限定されないが、溶融押出前に、ポリエステルやポリフェニレンスルフィドと液晶性樹脂との混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。中でも、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。
二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、二軸3条タイプのスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加されやすく、液晶性樹脂Aの分散相の分散径を本発明の範囲に制御することができるので好ましいが、特に限定されない。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率が20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、30〜50の範囲である。
(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)が好ましい範囲である二軸押出機を用いることは、十分に混合するための滞留時間を制御しやすく、液晶性樹脂Aの分散相の分散径を本発明の範囲に制御することができるので好ましいが、特に限定されない。
また、本発明の熱可塑性樹脂Eと液晶性樹脂Aの混合において、必要に応じて、相溶化剤を配合することも両樹脂の相溶性の向上に有効であるので好ましく用いることができる。この相溶化剤の例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコシキシランなどの有機シラン化合物、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロレン酸などのα、β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロック、グラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα、β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これら2種以上同時に使用することもできる。特に、好適な相溶化剤として、α−オレフィンおよびα、β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とする変性オレフィンを挙げることができ、中でも、α−オレフィンの最も好ましい例は、エチレンである。また、α、β−不飽和酸のグリシジルエステルは、下記一般式
Figure 2005169971
(式中Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)で示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。特に、メタクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。α、β−不飽和酸のグリシジルエステルの共重合量は1〜50重量%が好ましく、3〜40重量%がさらに好ましい。
相溶化剤である上記の変性ポリオレフィンには、その効果を損なわない範囲内で、共重合可能な他の不飽和モノマー、例えばビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチル、エチル、プロピルなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル類、アクリロニトリル、スチレンなどを共重合することもできる。かかる変性ポリオレフィン樹脂を用いるときに好適な配合量としては、熱可塑性樹脂Eと液晶性樹脂Aの合計100重量部に対して、変性ポリオレフィン樹脂を1〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは3〜30重量部である。特に、熱可塑性樹脂EがPPS樹脂である場合に効果が著しく、液晶性樹脂Aの分散相の分散径を本発明の範囲を満たすことができるので、特に好ましい。
本発明の二軸配向積層フィルムは、少なくとも3層以上の積層構造を有するものである。特に限定されないが、本発明が適用できる一般的なフィルムの積層数は3〜1000である。本発明の積層フィルムでは、本発明の効果発現ならびにフィルムの加工性および生産性の観点から、熱可塑性樹脂Eと液晶性樹脂Aを含む層(C層)をフィルムの最外層以外の層とする。さらに、C層以外の層をD層、F層とすると、D/C/D、F/D/C/D/F、F/D/C/Dなどの積層構成のように、フィルム厚み方向の厚み方向における中心部に位置する層として配置されているのが好ましい。また、C層の両外層に、同一のポリエステルやポリフェニレンスルフィドなどからなるD層が積層してなる3層積層構成(D/C/D)がフィルム生産性および加工時における変形抑止、平面性保時の点から好ましい。
C層以外の層(上記D層、F層等)は、その少なくとも一部の層が熱可塑性樹脂Bからなる層であり、必要に応じて添加剤等が配合された層であってもよい。
本発明の二軸配向積層フィルム中のC層の厚みは、フィルム全体の厚みの10〜80%であることが好ましい。さらに好ましくは30〜75%であり、より好ましくは40〜70%である。C層の厚みの比率が10%未満では、フィルム全体に対する液晶性樹脂Aの含有量が少なくなるために、寸法安定性や液晶性樹脂による連続構造が形成されず、本発明の効果を得ることが困難になり、また、80%を越えると、フィルム破れが多発して生産性が低下することがある。
本発明の二軸配向積層フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)の破断強度は、特に限定されないが、いずれも100〜400(MPa)であることが好ましく、より好ましくは200〜350(MPa)、さらに好ましくは250〜320(MPa)である。
破断強度の好ましい範囲を達成するためには、液晶性樹脂Aの分散相の平均分散径を本発明の範囲に制御することが好ましい。液晶性樹脂Aの分散相が本発明の範囲を満たさないと、破断強度が低下することがある。フィルムの長手方向と幅方向の破断強度が100(MPa)未満であれば、例えば、機械的強度が不足し、フィルムの加工時や使用時に破損したり、実用上使用に耐えないことがある。また、フィルムの長手方向と幅方向のいずれの方向にも破断強度が400(MPa)を越えるフィルムを得るためには、延伸工程において延伸倍率を上げる必要があるが、延伸時に破れが発生したりすることがある。
本発明の二軸配向積層フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)の熱膨張係数は、回路材料などへの用途展開の観点から、3ppm/℃以上、30ppm/℃以下であることが好ましい。熱膨張係数が3ppm/℃未満であったり、30ppm/℃を越えたりすると、回路材料用離型フィルムや印刷材料などの加工時に熱変形してカールし易くなるので注意すべきである。フィルムの熱膨張係数は、5ppm/℃以上、25ppm/℃以下がより好ましく、10ppm/℃以上、20ppm/℃以下が最も好ましい。
本発明の二軸配向積層フィルムは、特に限定されないが、表面粗さRaが3〜200nmであることが好ましく、さらに好ましい範囲は5〜150nmであり、さらに好ましい範囲は10〜100nmの範囲である。表面粗さの好ましい範囲を達成するためには、液晶性樹脂Aの分散相の平均分散径を本発明の範囲に制御することが重要である。
表面粗さが3nm未満であれば、フィルムの滑り性が悪化して、取り扱い性や巻取り特性が不良となることがある。また、表面粗さが200nmより大きいと、表面突起の問題が発生することがある。
本発明の二軸配向積層フィルムは、本発明の効果が阻害されない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックスなどの有機滑剤など他の成分が添加されてもよい。
また、フィルム表面に易滑性や耐磨耗性、耐スクラッチ性等を付与するために、積層フィルムの最外層に無機粒子、有機粒子などを添加することもできる。そのような添加物としては、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリエステルやポリフェニレンスルフィドの重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子や、界面活性剤などがあげられる。
本発明の二軸配向積層フィルムの厚みは、特に限定されないが、500μm以下が好ましく、薄膜用途や作業性などの観点からは、より好ましくは10〜300μmの範囲であり、さらに好ましくは20〜200μmの範囲である。
本発明の二軸配向積層フィルムは、特に限定されないが、酸素透過率が、0〜10cc/m2・24hr・1atmが好ましく、より好ましくは、0〜5cc/m2・24hr・1atmであり、0〜1cc/m2・24hr・1atmが最も好ましい。酸素透過率が0cc/m2・24hr・1atm未満は、本発明の二軸配向積層フィルムでは実現困難であり、10cc/m2・24hr・1atmを越えると、ガスバリア性が十分でない場合がある。また、水蒸気透過率は、0〜10g/m2・24hr・1atmが好ましく、より好ましくは、0〜5g/m2・24hr・1atmであり、0〜1g/m2・24hr・1atmが最も好ましい。水蒸気透過率が0cc/m2・24hr・1atm未満は、本発明の二軸配向積層フィルムでは実現困難であり、10cc/m2・24hr・1atmを越えると、ガスバリア性が十分でない場合がある。
本発明の二軸配向積層フィルムは、これに他のポリマー層、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンまたはアクリル系ポリマーからなる層を直接、あるいは接着剤などの層を介して、さらに積層させて用いてもよい。
また、本発明の二軸配向積層フィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
本発明の二軸配向積層フィルムの用途は、特に限定されないが、包装材料、工程・離型材料用や電気絶縁材料、印刷材料用、成形材料用、建材用などガスバリア性が要求される各種工業材料用などに用いられる。
次いで、本発明の二軸配向積層フィルムを製造する方法について、熱可塑性樹脂Bとしてポリエチレンテレフタレート(PET1)を用い、熱可塑性樹脂Eとしてイソフタル成分を17モル%共重合させたポリエチレンテレフタレート(PET2、融点210℃)を用い、液晶性樹脂Aとして液晶性ポリエステル(“上野LCP”8000、上野製薬製、融点220℃)を用いた場合の混合物からなるフィルムC層の両外面に、ポリエチレンテレフタレート(PET1)からなる層を積層させた二軸配向積層フィルムの製造を例にとって説明するが、本発明は、下記の記載に限定されないことは無論である。
ここで例示する製法においては、テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化させ、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応させる。次いで、重合槽に移送し、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5程度のポリエステルを得る(PET1)。また、イソフタル酸を17モル%をPET1と同様にして重合反応を進めて固有粘度0.4程度のポリエステルを得る(PET2)。
得られたポリエステル(PET1、PET2)をペレット状で減圧下において固相重合する。固相重合する場合は、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmHg程度の減圧下、10〜50時間固相重合させる。また、フィルムを構成するポリエステルに粒子を含有させる方法としては、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールをテレフタル酸と重合させる方法が好ましい。
粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルをいったん乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、粒子の水スラリーを直接所定のポリエステルペレットと混合し、ベント式2軸混練押出機を用いて、ポリエステルに練り込む方法も有効である。粒子の含有量、個数を調節する方法としては、上記方法で高濃度の粒子のマスタを作っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないポリエステルで希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
ポリエステル(PET2)と液晶性樹脂を混合する場合、溶融押出前に、ポリエステルと液晶性樹脂との混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示される。
本発明では、まず、上記液晶性樹脂AとPET2とを二軸混練押出機に投入し、液晶性樹脂とPET2の重量分率が95/5〜50/50のブレンド原料1を作成するのが好ましい。液晶性樹脂AとPET2からなる樹脂組成物の混合・混練方法は、特に限定されることはなく各種混合・混練手段が用いられる。例えば、各々別々に溶融押出機に供給して混合してもよいし、また、予め紛体原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダー、タンブラー等の混合機を利用して乾式予備混合し、その後、溶融混練機にて溶融混練することでもよい。その後、前記ブレンド原料1を、PET、および必要に応じてこれらの回収原料と共に押出機に投入して、液晶性樹脂の重量分率を下げて、目的とするフィルムC層の組成とし、これをC層用のポリエステル原料とすることが、フィルムの品質、製膜性の観点で好ましい。上記C層用ポリエステル原料を作成する場合、フィルム中への異物混入を可能な限り低減させるために、溶融押出工程で樹脂をフィルトレーションすることも好ましく行うことができる。
この押出機内で異物や変質ポリマーを除去するために、各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。積層フィルムを作製するための2台以上の押出機、マニホールドまたは合流ブロックを用いて、溶融状態のポリエステルおよびポリエステル/液晶性ポリマー混合物をそれぞれ積層させたシートをスリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを作る。中でも口金入口前で積層する合流ブロック方式より、口金内でスリット出口前で積層するマニホールド方式が積層精度が高まるために好ましい。本発明のように、液晶性樹脂Aを使用する場合には、積層合流部における低せん断場の溶融粘度の急激な上昇が起こることがあり、マニホールド方式が特に好ましい。
上記の好ましい製造法についてのより具体的な条件は、以下のとおりである。
まず、液晶性樹脂ペレットAとPET2ペレットとを、一定の割合で混合して、250〜320℃に加熱されたベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。このときの二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いるのが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、二軸3条タイプのスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加されやすく、液晶性樹脂Aの分散相の分散径を本発明の範囲に制御することができるので好ましいが、特に限定されない。
また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率が20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)が好ましい範囲である二軸押出機を用いることは、十分に混合するための滞留時間を制御しやすく、液晶性樹脂Aの分散相の分散径を本発明の範囲に制御することができるので好ましいが、特に限定されない。
液晶性樹脂AペレットとPET2ペレットを混合する上で、PET2と液晶性樹脂Aの混合組成物あるいは相溶化剤が添加されると、分散不良物が低減できて相溶性が高まることがあるので、好ましい方法として例示される。
その後、上記ペレタイズ作業により得られた、液晶性樹脂AとPET2からなるブレンドチップ1、PET、および必要に応じて製膜後の回収原料を一定の割合で適宜混合して樹脂Aとし、180℃で3時間以上真空乾燥した後、270〜320℃の温度に加熱された押出機1に投入する。一方、押出機2には、PET1および必要に応じて適宜粒子を混合した原料(樹脂B)を乾燥した上で投入する。その後、押出機1,2を経た溶融ポリマーをフィルター内を通過させた後、その溶融体を口金内のマルチマニホールドを用いて合流させて3層積層(B/A/B)し、その後、Tダイを用いてシート状に吐出し、このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、またはそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。延伸温度については、ポリエステルや液晶性ポリマーの構造成分や、積層の構成成分により異なるが、例えば、3層でその中央層が液晶性ポリマーを含む層(C層)からなる場合を例にとって、以下説明する。
未延伸ポリエステルフィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向に2〜5倍、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは3〜4倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度はTg(液晶性樹脂を含んでなるC層のガラス転移温度)〜(Tg+60)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+55)℃、さらに好ましくは(Tg+10)〜(Tg+50)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
特に限定されないが、上記MD延伸の前に微延伸工程を設けてもよい。その場合の延伸温度は(Tg+10)〜(Tg+70)℃が好ましく、より好ましくは、(Tg+15)〜(Tg+60)℃、さらに好ましくは(Tg+20)〜(Tg+50)℃で、延伸倍率は、1.05〜1.8倍が好ましく、より好ましくは1.1〜1.5倍、さらに好ましくは、1.15〜1.3倍である。この微延伸工程は、ポリマー鎖内およびポリマー鎖間に蓄積されたひずみを除去し、その後の延伸をしやすくして、液晶性樹脂を含む層(C層)中に液晶性樹脂の連続構造を作成するために有効である。中でも、この微延伸工程を設けることにより、C層内の厚み方向に液晶性樹脂の連続構造が作成されやすく、本発明の効果が得やすくなるので、特に好ましい。
MD延伸に続く幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+80)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+10)〜(Tg+70)℃、さらに好ましくは(Tg+20)〜(Tg+60)℃の範囲である。延伸倍率は、2.0〜6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0〜5.0倍、さらに好ましくは3.5〜4.5倍の範囲である。
さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行う。その場合、フィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向に1.1〜2.5倍、好ましくは1.2〜2.4倍、さらに好ましくは1.3〜2.3倍に再縦延伸し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。延伸温度はTg〜(Tg+100)℃の範囲が好ましく、より好ましくは(Tg+20)〜(Tg+80)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg+40)〜(Tg+60)℃の範囲である。次に、ステンターを用いて再び幅方向の延伸を行う。延伸温度はTg〜250℃の範囲が好ましく、より好ましくは(Tg+20)〜240℃の範囲、さらに好ましくは(Tg+40)〜220℃の範囲である。延伸倍率は1.1〜2.5倍の範囲が好ましく、より好ましくは1.15〜2.2倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
次に、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。好ましい熱固定温度は、Tm(C層に含有される液晶性樹脂Bの融点)〜(Tm+80)℃、より好ましくは(Tm+10)℃〜(Tm+60)℃、さらに好ましくは、(Tm+20)℃〜(Tm+50)℃の範囲にある。時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。さらにこのフィルムを40〜180℃の温度ゾーンで幅方向に弛緩しながら冷却するのが好ましい。弛緩率は、幅方向の熱収縮率を低下させる観点から1〜10%であることが好ましく、より好ましくは2〜8%、さらに好ましくは3〜7%の範囲である。
さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向積層ポリエステルフィルムを得る。
本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)C層の厚み比率
フィルムサンプルをフィルムの長手方向かつ厚み方向に切断し、その切断面の透過型電子顕微鏡写真を撮り、C層の厚みを求め、フィルム全体の厚みに対するC層の厚み比率を算出する。フィルムサンプルは、適宜、樹脂に包埋して観察することができる。
また、フィルムサンプルにもよるが、フィルムC層以外の層が透明である場合には、光学顕微鏡などの簡易装置を用いることも可能である。上記顕微鏡観察は、フィルムサンプルにもよるが、100〜100万倍の倍率範囲で適宜選択して観察すればよい。
(2)ガラス転移温度(Tg)、融解温度(Tm)
擬似等温法にて下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121に従って決定した。
装置:TA Instrument社製温度変調DSC
測定条件:
加熱温度:270〜570K(RCS冷却法)
温度校正:高純度インジウムおよびスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
昇温ステップ:5K
試料重量:5mg
試料容器:アルミニウム製開放型容器(22mg)
参照容器:アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度(Tg)は下記式により算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
また、示唆走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上300℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融解温度(Tm)とした。
(3)破断強度
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行った。
測定装置:オリエンテック(株)製フイルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
(4)熱膨張係数
熱機械測定装置TMA/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mm、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷した。室温から175℃(設定185℃)まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持した。その後、40℃まで10℃/分で降温させ、20分間保持した。このときの降温部分160℃から60℃までの寸法変化量から、下記式により熱膨張係数を求めた。
温度膨張係数α(1/℃)={(L160−L60)/L0}/△T
L0:23℃におけるフィルム長さ
L160:降温時の160℃におけるフィルム長さ
L60:降温時の60℃におけるフィルム長さ
△T:温度変化量(160−60=100)
(5)ガスバリア性
酸素透過率
JIS K7126 A法(差圧法)に準拠して温度20℃で測定した。単位は、cc/m2、24hr・1atmである。
水蒸気透過率
JIS Z0208(カップ法)に準拠して40℃、相対湿度90%測定した。単位はg/m2・24hr・1atmである。なお、酸素透過率および水蒸気透過率は、フィルムの厚みを25μmに換算して求めた。
(6)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式により計算される値を用いた
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
(実施例1)
テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05重量部のエチレングリコール溶液、および三酸化アンチモン0.05重量部を加えて5分間撹拌した後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET1)のペレットを得た。該ポリエチレンテレフタレートのペレットのガラス転移温度は78℃であり、融点は255℃であった。
また、PET1にイソフタル酸成分を17.5モル%共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート(PET2)は、ガラス転移温度は70℃であり、融点は210℃であった。
得られたPET2チップ50重量部と、、下記組成の液晶性樹脂(融点215℃)(LCP1)50重量部を180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間2分、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(PET2/LCP1)を得た。
次いで、上記の無粒子のPET1チップに、平均径2.5μmの凝集シリカ粒子の含有割合が0.1重量%になるように、粒子マスターを配合して樹脂Aとし、180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機Iに供給した。また、一方、上記のPET2/LCP1(50/50重量%)のブレンドチップを樹脂Cとし、180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機IIに供給した。次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーをそれぞれフィルターで濾過した後、3層用のマルチマニホールド(口金積層)を使用して、A/C/Aの3層積層とした。マルチマニホールドを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比がA/C/A=15/70/15となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギヤポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを3層積層状態にして溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着させて冷却固化し、ドラフト比(口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比)8で引き取って未延伸積層フィルムを作製した。
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度100℃で3.5倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度105℃で3.7倍延伸した。続いて、定長下で温度245℃で10秒間熱処理した後、幅方向に3%の弛緩処理を施し、厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムとした。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このフィルムはガスバリア性、寸法安定性に優れたものであった。
液晶性ポリエステルの共重合組成
p−ヒドロキシ安息香酸 42.5モル%
4,4’−ジヒドロキシビフェニル 7.5モル%
エチレングリコール 50.0モル%
テレフタル酸 57.5モル%
(実施例2)
PET1にイソフタル酸成分を13.7モル%共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度は70℃であり、融点は225℃)(PET3)を使用し、液晶性樹脂として、上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”8000、融点220℃)(LCP2)を使用した以外は実施例1と同様にして二軸配向積層ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このフィルムはガスバリア性、寸法安定性に優れたものであった。
(実施例3)
オートクレーブに、100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの水酸化ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−ピロリドン(以下NMP)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃まで昇温して含有されている水分を蒸留により除去した。
脱水しの終了した系内へ主成分モノマーとして91モル%のp−ジクロルベンゼン、副成分モノマーとして10モル%のm−ジクロルベンゼン、および0.2モル%の1,2,4トリクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃で窒素を3kg/cm2 加圧封入後、昇温し、260℃にて4時間重合した。重合後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。
このポリマーを90℃の蒸留水により5回洗浄した後、減圧下120℃にて乾燥して融点が253℃の白色粒子状の共重合ポリフェニレンスルフィド組成物を得た(PPS2)。
得られた共重合ポリフェニレンスルフィド組成物(PPS2)50重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”5000(低融点グレード)、融点256℃)(LCP3)50重量部を180℃で3時間真空乾燥し、さらに共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS2)と液晶性樹脂(LCP3)の合計100重量部に対して、相溶化剤としてエチレン/グリシジルメタクリレート(=88/12重量%)共重合体(住友化学製、ボンドファーストE)を3重量部を配合後、315℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。
次いで、東レ(株)製の線状PPS樹脂(“ライトン”T1881、融点280℃)(PPS1)に、平均粒径0.7μmのシリカ粉末0.2重量%、ステアリン酸カルシウム0.05重量%を添加し均一に分散配合させた原料を樹脂Aとし、180℃で3時間真空乾燥した後、320℃に加熱された押出機Iに供給した。また、一方、上記のPPS2/LCP3(50/50重量%)のブレンドチップを樹脂Cとし、180℃で3時間真空乾燥した後、320℃に加熱された押出機IIに供給した。次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーをそれぞれフィルターで濾過した後、3層用のマルチマニホールド(口金積層)を使用してA/C/Aの3層積層とした。マルチマニホールドを通過するポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比がA/C/A=15/70/15となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギヤポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを3層積層状態にして溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、ドラフト比(口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比)5で引き取って未延伸積層フィルムを作製した。
この未延伸フィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、105℃の温度でフィルムの縦方向に3.1倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度115℃、延伸倍率3.5倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて265℃の温度で10秒間熱処理を行った後、150℃にコントロールされた冷却ゾーンで横方向に4%弛緩処理を行い、その後、100℃にコントロールされた冷却ゾーンで横方向に1%弛緩処理を施し、その後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚さ50μmの二軸配向積層PPSフィルムを作製した。
得られた二軸配向積層PPSフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このフィルムはガスバリア性、寸法安定性に優れたものであった。
(実施例4、5)
熱固定温度を変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向積層ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このフィルムはガスバリア性、寸法安定性に優れたものであった。
(実施例6)
実施例1で用いた液晶性樹脂(LCP1)を100重量%用いる以外は、実施例3とと同様にして二軸配向積層PPSフィルムを作製した。得られた二軸積層PPSフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、このフィルムは、ガスバリア性、寸法安定性に優れたものであった。
(比較例1)
実施例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(PET1)だけを用いて単膜で製膜した以外は実施例1と同様にして二軸配向フィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、その特性について測定、評価した結果を表1に示したとおり、ガスバリア性、寸法安定性が不十分なフィルムであった。
(比較例2)
実施例1で得られた(PET1)50重量部と、液晶性樹脂として、上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”5000、融点283℃)(LCP4)50重量部を実施例1と同様にしてブレンドチップを得た。得られたブレンドチップを実施例1と同様にして二軸配向フィルムを作製した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1の二軸配向フィルムと比較して、寸法安定性は同等に優れているが、ガスバリア性は不十分であった。
(比較例3)
実施例4で用いたPPS樹脂(PPS1)を単膜で製膜した以外は実施例4と同様にして二軸配向フィルムを作製した。得られた二軸配向PPSフィルムは、その特性について測定、評価した結果を表1に示したとおり、ガスバリア性、寸法安定性が不十分なフィルムであった。
(比較例4)
実施例4で用いたPPS樹脂(PPS1)50重量部と、東レ(株)製液晶性樹脂“シベラス”(融点315℃)(LCP5)50重量部を実施例3と同様にしてブレンドチップを得た。得られたブレンドチップを実施例4と同様にして二軸配向フィルムを作製した。得られた二軸配向PPSフィルムは、実施例3の二軸配向フィルムと比較して、ガスバリア性、寸法安定性が不十分であった。
(比較例5)
下記組成の液晶性樹脂(融点185℃)(LCP6)を用い、熱可塑性樹脂として、融点265℃であるポリエチレンテレフタレート(PET2)を用い、実施例5と同様に二軸配向積層ポリエステルフィルムを作製した。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムは、ガスバリア性に優れているものの、熱寸法安定性が不十分であった。
液晶性ポリエステルの共重合組成
p−ヒドロキシ安息香酸 50.0モル%
4,4’−ジヒドロキシビフェニル 10.0モル%
イソフタル酸 10.0モル%
ポリエチレンテレフタレート 40.0モル%
Figure 2005169971

Claims (5)

  1. 少なくとも3層からなる二軸配向積層フィルムであって、該フィルムを構成する最外層以外の少なくとも1層が液晶性樹脂Aを含む層(C層)であり、該液晶性樹脂Aの融点Tm1 が最外層(D層)を構成する熱可塑性樹脂Bの融点Tm2 との間に下記式を満足するものであることを特徴とする二軸配向積層フィルム。
    10℃≦Tm2 −Tm1 ≦70℃ (1)
  2. C層中に液晶性樹脂Aを50重量%以上、100重量%以下の重量分率で含有していることを特徴とする請求項1に記載の二軸配向積層フィルム。
  3. C層中に熱可塑性樹脂Eを0重量%以上、50重量%以下の重量分率で含有していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の二軸配向積層フィルム。
  4. 熱可塑性樹脂Bが、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種からなる樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向積層フィルム。
  5. 熱可塑性樹脂Eが、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびこれらの共重合体から選ばれる少なくとも一種からなる樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向積層フィルム。
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