JP2005335226A - 耐熱性多層シート - Google Patents
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Abstract
【課題】寸法安定性、低熱膨張性および、はんだ耐熱性に優れた耐熱性多層シートに関するものであり、回路基盤材料、工程・離型材料、電気絶縁材料、印刷材料および磁気記録媒体用などの各種工業材料用途において、好適に使用できる耐熱性多層シートを提供すること。
【解決手段】少なくとも3層からなる二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムであって、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムを構成する最外層以外の少なくとも1層が熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bからなる樹脂層Cであり、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリアミド酸を主原料とし、かつそのイミド化率が50%以上である耐熱樹脂層が積層されている耐熱性多層シート。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも3層からなる二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムであって、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムを構成する最外層以外の少なくとも1層が熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bからなる樹脂層Cであり、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリアミド酸を主原料とし、かつそのイミド化率が50%以上である耐熱樹脂層が積層されている耐熱性多層シート。
【選択図】なし
Description
本発明は、寸法安定性、低熱膨張性および、はんだ耐熱性に優れた耐熱性多層シートに関するものであり、さらに詳しくは、回路基盤材料や工程離型材料、電気絶縁材料、印刷材料、成形材料、磁気記録媒体用および建材などの各種工業材料用途において、好適に使用できる耐熱性多層シートに関するものである。
近年、携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、フレキシブルプリント回路基板(FPC)の需要が急激に伸びている。
また、電気や電子部品分野において、機器の小型化や高機能化の観点から、はんだ耐熱性、熱および湿度に対する高寸法安定性などの諸特性が高次元でバランス化した絶縁基材への要求が増加しているが、ポリエステルフィルムでは、はんだ耐熱性、熱寸法安定性の問題がある。
ポリエステルの両面にポリイミドをコーティングしたフィルムがあるが、熱膨張係数が大きく、銅箔との反りが発生し回路周辺材料として満足のいくものではなかった(特許文献1)。
また、液晶性樹脂層の少なくとも片表面に耐熱樹脂層を積層したフィルムが開示されているが、フィルムの厚みむらなど点で不十分なものであった(特許文献2)。
また別に、液晶性樹脂を熱可塑性樹脂フィルム中に特性分散形状で分散させたフィルムが提案されている。
例えば、ポリエステル中に液晶性樹脂を分散させたフィルムが機械特性などに優れるものとして提案されている(特許文献3および特許文献4)。
また、ポリフェニレンスルファイド中に液晶性樹脂を分散させたフィルムが、機械特性に優れ、厚みむらや表面欠点の少ないフィルムとして提案されている(特許文献5)。
しかしながら、これらのフィルムは熱膨張係数などの寸法安定性やはんだ耐熱性が、なお不十分なものであった。
特開平12−295515号公報
特開2002−307617号公報
特開平10−298313号公報
特開平11−5855号公報
特開平10−130389号公報
そこで、本発明の目的は、寸法安定性、低熱膨張性およびはんだ耐熱性に優れた高品質の耐熱性多層シートを提供することにあり、特に、回路基盤材料や回路材料製造工程の工程離型材料や電気絶縁材料、磁気記録媒体用および印刷部材などに好適である耐熱性多層シートを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明によれば、少なくとも3層からなる二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムであって、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムを構成する最外層以外の少なくとも1層が熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bからなる樹脂層Cであり、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリアミド酸を主原料とし、かつそのイミド化率が50%以上である耐熱樹脂層が積層されていることを特徴とする耐熱性多層シートが提供される。
そして、本発明の耐熱性多層シートには、次の好ましい態様が含包されている。
(a)樹脂層Cが空隙を有し、該樹脂層Cの空隙率が、樹脂層C面中の面積分率で5%〜80%であること。
(b)上記液晶性樹脂Bが、上記樹脂層C中に20重量%以上〜70重量%以下の重量分率で含有されていること。
(c)上記耐熱樹脂層の厚み比率が、シート全体の0.3%〜30%であること。
(d)上記樹脂層Cの厚さが、シート全体の厚さの10〜80%であること。
(e)上記熱可塑性樹脂Aが、ポリエステルおよびポリフェニレンスルフィドから選ばれた少なくとも一種からなる樹脂を含むこと。
(f)ポリアミド酸の全構造単位の70%以上が、下記式(I)および/または(II)で表される単位構造であること。
(a)樹脂層Cが空隙を有し、該樹脂層Cの空隙率が、樹脂層C面中の面積分率で5%〜80%であること。
(b)上記液晶性樹脂Bが、上記樹脂層C中に20重量%以上〜70重量%以下の重量分率で含有されていること。
(c)上記耐熱樹脂層の厚み比率が、シート全体の0.3%〜30%であること。
(d)上記樹脂層Cの厚さが、シート全体の厚さの10〜80%であること。
(e)上記熱可塑性樹脂Aが、ポリエステルおよびポリフェニレンスルフィドから選ばれた少なくとも一種からなる樹脂を含むこと。
(f)ポリアミド酸の全構造単位の70%以上が、下記式(I)および/または(II)で表される単位構造であること。
ここで、式(III)中のX、Yは、下記式(IV)の中から選ばれる少なくとも1種の基である。
−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2−
(IV) )
(g)シートの長手方向と幅方向の熱膨張係数がともに3〜45ppm/℃の範囲であること。
(h)シートの長手方向と幅方向の破断強度が、ともに100〜400MPaであること。
(i)シートの長手方向と幅方向の200℃における熱収縮率が、ともに0〜3%であること。
−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2−
(IV) )
(g)シートの長手方向と幅方向の熱膨張係数がともに3〜45ppm/℃の範囲であること。
(h)シートの長手方向と幅方向の破断強度が、ともに100〜400MPaであること。
(i)シートの長手方向と幅方向の200℃における熱収縮率が、ともに0〜3%であること。
本発明によれば、寸法安定性、低熱膨張性およびはんだ耐熱性に優れた高品質の耐熱性多層シートであり、特に、回路基盤材料や回路材料製造工程の工程離型材料および印刷部材などに好適な耐熱性多層シートを得ることができる。
また、樹脂層Cの空隙率が樹脂層C面中の面積分率で5%〜80%であると、熱が付加された場合の熱変形、カールを抑制および熱膨張係数をより低減させることができる。
以下、本発明の耐熱性多層シートについて最良の実施形態を説明する。
本発明の耐熱性多層シートは、少なくとも3層以上の積層構造を有する二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面にポリアミド酸を主原料として、かつそのイミド化率が50%以上である耐熱樹脂層が積層されたものである。
該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムは、少なくとも3層以上の積層構造を有するものであり、特に限定されるものではないが、好ましい積層数は3〜1000である。少なくとも3層以上の積層構造とするのは、樹脂層Cを最外層以外の層とすることにより延伸性と厚みムラの点を良好にするためである。
該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムは、少なくとも3層以上の積層構造を有するものであり、特に限定されるものではないが、好ましい積層数は3〜1000である。少なくとも3層以上の積層構造とするのは、樹脂層Cを最外層以外の層とすることにより延伸性と厚みムラの点を良好にするためである。
すなわち、本発明の二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムでは、本発明の効果発現ならびにフィルムの加工性および生産性の観点から、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bを含む樹脂層Cをフィルムの最外層以外の層とする。熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bを含む樹脂層Cをフィルムの最外層以外の層とすることにより、樹脂層Cがフィブリル化やボイドを発生させたときに、厚みムラや製膜時(延伸時など)に破れが頻発して製膜安定性が悪化し、収率が悪くなることを防ぐことができるためである。
さらに、樹脂層C以外の層を樹脂層D、樹脂層Eとすると、D/C/D、E/D/C/D/E、E/D/C/Dなどの積層構成のように、樹脂層Cがフィルム厚み方向の中心部に位置する層として配置されていることが好ましい。また、樹脂層Cの両外層に熱可塑性樹脂Aと同一の樹脂、例えば、ポリエステルやポリフェニレンスルフィドなどからなる同一の厚みの樹脂層Dが積層してなる3層積層構成(D/C/D)が、熱可塑性樹脂フィルムの生産性および加工時における変形抑止と平面性保時の点から好ましい積層構成である。
本発明の耐熱性多層シート中の樹脂層Cの厚さは、耐熱性多層シート全体の厚さの10〜80%であることが好ましい。厚さは、さらに好ましくは30〜75%であり、より好ましくは40〜70%である。樹脂層Cの厚さの比率が10%未満では、フィルム全体に対する液晶性樹脂Bの含有量が少なくなるために、寸法安定性など本発明の効果を得ることが困難になり、また、80%を超えると、フィルム破れが多発して生産性が低下することがある。
本発明の耐熱性多層シートを構成する樹脂層Cに含有される液晶性樹脂Bとしては、例えば、主鎖にメソゲン基を有する溶融成形性で、かつ液晶形成性があるポリエステルまたはポリエステルアミド等が挙げられる。例えば、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位およびアルキレンジオキシ単位などの群から選ばれた構造単位からなる共重合ポリエステルなどである。具体的には、本発明では、“シベラス”(登録商標)(東レ社製)、“ベクトラ”(登録商標)(ポリプラスチックス社製)、“ゼナイト”(登録商標)(デュポン社製)、“スミカスーパー”(登録商標)(住友化学社製)、“ザイダー”(登録商標)(ソルベイ社製)、“上野LCP”(登録商標)(上野製薬社製)および“タイタン”(登録商標)(イーストマン社製)など各種市販の液晶性樹脂を適宜選択して使用することができる。
この液晶性樹脂Bは、溶融成形性であれば特に限定されない。その流動開始温度は、熱可塑性樹脂Aと混合させる上で200〜360℃であることが好ましく、さらに好ましくは230〜320℃である。
本発明で用いられる好ましい液晶性樹脂Bの例としては、下記(V)、(VI)、(VII)および(VIII)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(V)、(VII)および(VIII)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(V)、(VI)および(VIII)の構造単位からなる共重合ポリエステル、または、それらのブレンドポリマーが挙げられる。下記構造単位からなる共重合ポリエステルは、熱可塑性樹脂Aとの相溶性が良好であり、本発明の効果を得ることができるために特に好ましく例示されるが、本発明で用いられる共重合ポリエステルはこれに限定されるものではない。
から選ばれた一種以上の基を示し、式中のR4は、
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中、Zは水素原子または塩素原子を示す。)ここで、構造単位[(VI)+(VII)]と構造単位(VIII)とは実質的に等モルである。
上記構造単位(V)は、p−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成したポリエステルの構造単位を、構造単位(VI)は、4、4´−ジヒドロキシビフェニル、3、3´、5、5´−テトラメチル−4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2、6−ジヒドキシナフタレン、2、7−ジヒドキシナフタレン、2、2´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4、4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(VII)は、エチレングリコールから生成した構造単位を、そして構造単位(VIII)は、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4´−ジフェニルジカルボン酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、2−ビス(フェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸、1、2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸および4、4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
本発明では、共重合体の共重合量を、ポリマーを形成し得る繰返し構造単位のモル比から計算し、モル%で表す。上記好ましい共重合ポリエステルの場合には、構造単位(V)、構造単位(VI)+(VIII)、構造単位(VII)+(VIII)がポリマーを形成し得る繰返し構造単位であり、これらの共重合モル比から共重合量を計算することができる。
上記構造単位(V)、(VI)、(VII)および(VIII)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位[(V)+(VI)+(VII)]に対する[(V)+(VI)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、30〜90%がより好ましく、50〜80モル%が最も好ましい。また、構造単位[(V)+(VI)+(VII)]に対する(VII)のモル分率は95〜5モル%が好ましく、70〜10モル%がより好ましく、50〜20モル%が最も好ましい。また、構造単位(V)/(VI)のモル比は流動性の点から好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(VIII)のモル数は構造単位[(VI)+(VII)]のトータルモル数と実質的に等しい。
また、上記構造単位(V)、(VII)および(VIII)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位(V)は[(V)+(VII)]の5〜95モル%が好ましく、50〜80モル%がより好ましい。構造単位(VIII)は構造単位(VII)と実質的に等モルである。
さらに上記構造単位(V)、(VI)および(VIII)からなる共重合ポリエステルの場合は、単独ではなく、構造単位(V)、(VI)、(VII)および(VIII)からなる共重合ポリエステルおよび/または構造単位(V)、(VII)および(VIII)からなる共重合ポリエステルとのブレンドポリマーとして用いることが好ましい。このブレンドポリマーの場合においても、前記同様に、構造単位[(V)+(VI)+(VII)]に対する[(V)+(VI)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、30〜90%がより好ましく、50〜80モル%が最も好ましい。
なお、必要に応じて、ポリエステルの末端基のうちのカルボキシル末端基あるいはヒドロキシル末端基のいずれかを多くした場合には、構造単位(VIII)のモル数は構造単位[(VI)+(VII)]のトータルモル数と完全に等しくはならないが、このような場合も、上述した説明中の「実質的に」に含まれる。
上記の液晶性共重合ポリエステルを重縮合により製造する際には、上記構造単位(V)〜(VIII)を構成する成分以外に、3、3´−ジフェニルジカルボン酸や2、2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィドおよび4、4´−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジオールおよび1、4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、およびp−アミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度の少割合の範囲でさらに共重合せしめることができる。
上記した液晶性共重合ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造することができる。
例えば、上記の好ましく用いられる液晶性共重合ポリエステルのうち、上記構造単位(VII)を含まない場合は下記(1)および(2)の製造方法が好ましく、また、構造単位(VII)を含む場合は下記(3)の製造方法が好ましい。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4、4´−ジアセトキシビフェニル、4、4´−ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で、上記(1)または(2)の方法により製造する方法。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4、4´−ジアセトキシビフェニル、4、4´−ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で、上記(1)または(2)の方法により製造する方法。
これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を添加した方が好ましい場合もある。
本発明の耐熱性多層シートでは、低熱膨張性の付与により熱が付加された場合の熱変形、カールを抑制することなどの観点から、フィルムの樹脂層C中に空隙を含有させることが好ましい。空隙率は、樹脂層C面中の面積分率で5〜80%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜70%の範囲である。最も好ましくは15〜60%の範囲である。樹脂層C中の空隙率が5%未満であると、熱膨張を低減させる効果が小さく、熱変形を起こしやすくなることがある。また、空隙率が80%を超えるフィルムは、積層間の接着性が十分でないことがあったり、強度が低下したり、延伸時に破れが発生することがある。
また、樹脂層C中の液晶性樹脂Bの平均分散径や延伸倍率で空隙率を好ましい範囲に制御することができる。該空隙率は、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの手法を用いて測定できる。例えば、サンプルを50nmの厚みに超薄切片法で作成し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、5千倍で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、画像処理を行うことにより、空隙率を計算することができる(測定法の詳細は後述する)。
本発明で用いられる液晶性樹脂Bは、分散相を形成していることが好ましい。この液晶性樹脂Bからなる分散相は、その平均分散径が0.1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは0.5〜15μmであり、最も好ましい範囲は、0.5〜10μmである。この平均分散径を上記の範囲にすることにより、液晶性樹脂Bの優れた特性を付与しつつ、樹脂層C中に適度な空隙を形成することができ、機械強度、寸法安定性、表面特性および低熱膨張性のバランスに優れた耐熱性多層シートを得ることができる。分散相の平均分散径が0.1μm未満であると、樹脂層C中に空隙が形成されず、熱膨張などの寸法安定性が不十分である。また、平均分散径が30μmより大きいと、機械特性や表面特性が悪化したりする。ここでいう分散相の平均分散径とは、フィルム長手方向の径と幅方向の径と厚さ方向の径の平均値を意味する。該平均分散径は、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの手法を用いて測定することができる。例えば、サンプルを50nmの厚みに超薄切片法で作成し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、5千倍で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、平均分散径を計算することができる(測定法の詳細は後述する)。
液晶性樹脂Bの分散相の形状は、特に限定されないが、球状もしくは細長い島状、小判状、あるいは繊維状であることが好ましい。分散相のアスペクト比は、特に限定されないが、1〜20の範囲であることが好ましい。さらに好ましい分散相のアスペクト比の範囲は2〜15であり、より好ましい範囲は2〜10である。これら島成分のアスペクト比を上記範囲にすることにより、液晶性樹脂Bが熱可塑性樹脂A中で連なった連続構造を形成しやすくなり、かつ、寸法安定性や機械強度および低熱膨張性に優れた耐熱性多層シートを得ることができる。
ここで、アスペクト比は、分散相の平均長径/平均短径の比を意味するものである。該アスペクト比は、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの手法を用いて測定することができる。例えば、サンプルを50nmの厚みに超薄切片法で作成し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、5千倍で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、アスペクト比を計算することができる(測定法の詳細は後述する)。
本発明では、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bの溶融粘度において、(熱可塑性樹脂Aの溶融粘度)/(液晶性樹脂Bの溶融粘度)の比率は、特に限定されないが、0.5〜20の範囲であることが好ましい。その比率を上記範囲にすることが、分散相の平均分散径とアスペクト比を所望の範囲に制御する上で好ましい。(熱可塑性樹脂Aの溶融粘度)/(液晶性樹脂Bの溶融粘度)の比率のさらに好ましい範囲は、0.7〜10であり、特に好ましい範囲は、1〜10である。中でも、溶融粘度の比率が1以上であると、液晶性樹脂Bの溶融粘度が熱可塑性樹脂Aの溶融粘度以下となるため、液晶性樹脂Bからなる分散相を小さくできて本発明の効果が得られやすく、機械強度の低下を抑制することができ、最も好ましい。ここで、溶融粘度は、熱可塑性樹脂Aの融点(Tm)+30(℃)における剪断速度1000(1/sec)における値である。
本発明の二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムの樹脂層C中における液晶性樹脂Bの含有量は、20〜70重量%の範囲にあることが好ましい。液晶性樹脂Bの含有量は、さらに好ましくは25〜65重量%の範囲であり、より好ましくは30〜50重量%の範囲である。中でも、液晶性樹脂Bの含有量を30〜50重量%とすることで、未延伸フィルムの状態で熱可塑性樹脂中で液晶性樹脂Bが分散した状態、または液晶性樹脂Bと熱可塑性樹脂Aが相互に連結した構造となりやすく、二軸延伸により空隙を形成しやすいので、特に好ましい態様である。樹脂層C中の液晶性樹脂Bの含有量が20重量%未満であれば、空隙が形成されずにフィルムの熱膨張などによる低熱膨張性などの点で本発明の効果を得ることができないことがある。また、樹脂層C中の液晶性樹脂Bの含有量が80重量%を超えるフィルムは、延伸時に破れが発生したり、得られたフィルムの強度や伸度が不足して成形加工性が不十分であることがある。
本発明の耐熱性多層シートは、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bからなる樹脂層Cが、網目状構造を含む層であることが好ましい。
該網目状構造は、フィルム層内の厚み方向または面内に、例えば、フィルム表面に平行な面において長手方向及び/または幅方向に連なった(擬)網目状が観察されるものである。樹脂層C中の面を電子顕微鏡レベルの倍率で拡大することによって、網目状構造を確認することができる。この網目状構造とは、フィルム層内で、フィブリル状、ロッド状、または数珠状形態の線状構成要素が網目状または擬網目状に連なった形態をなしている構造のことをいうものである。この網目状構造において、網目を構成する要素が湾曲していてもよいし、また、本発明の効果が特に阻害されない限りにおいて、部分的にその連なりが切れていてもよいし、また、該網目状構造はフィルムの厚み方向に重なっていてもよい。また、空隙の連続構造の間を網目状構造と考えてもよい。ここで、空隙の連続構造とは、フィルム層内の厚み方向または面内に、例えば、フィルム表面に平行な面において長手方向及び/または幅方向に空隙が連なった(擬)網目状が観察されたものである。
網目状構造は、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bの混合体であることが好ましく、その場合、熱可塑性樹脂Aから構成された網目状構造中に液晶性樹脂Bが分散相として存在する。本発明でいう網目状構造を有する樹脂層Cは、その層中の面を顕微鏡レベルの倍率で拡大することによって観察される層である。
前記したフィブリル状、ロッド状または数珠状等の線状構成要素の径、すなわち、顕微鏡写真で観察されるこれらの線状構成要素の短径は、1〜100μmの範囲であることが好ましい。網目構造の線状構成要素の短径の、より好ましい範囲は5〜75μmであり、さらに好ましい範囲は10〜50μmである。線状構成要素の径を1μm未満にするには、その制御が実際上非常に実現困難である。一方、線状構成要素の径が100μmを超えると、製膜性が悪化してフィルム表面のウネリが大きくなって、フィルムの平面性が低下して、各種用途でのフィルムの加工性の観点でも問題になることがある。樹脂層C中に線状構成要素の径のサイズが異なる複数の網目状構造が形成されている場合には、その平均値をとる。
網目状構造を形成するための好ましい形態として、未延伸フィルムで液晶性樹脂Bが熱可塑性樹脂A中で分散した状態であっても液晶性樹脂Bと熱可塑性樹脂Aが相互に連結した構造であってもよい。互いに連結した構造とは、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bが共に連続相(マトリックス相)を有する樹脂相分離構造(例えば、海海構造)である。未延伸フィルムにおいて、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bが互いに連結した構造を有していると、二軸延伸を施した場合に樹脂層C中に網目状構造を形成しやすく、本発明の効果を得やすくなる。
本発明の耐熱性多層シートの樹脂層Cに含有される熱可塑性樹脂Aは、二軸延伸可能な樹脂であり、例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリ乳酸等の各種ポリマーおよびこれらのポリマーの少なくとも一種を含むブレンド物を挙げることができる。本発明では、熱可塑性樹脂Aは、二軸延伸性および本発明の効果発現の観点から、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることが好ましく、特に、ポリエステルまたはポリフェニレンスルフィドが好ましく用いられる。
本発明でいうポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分とジオール成分から構成されるものである。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸および4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、中でも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、ポリエステルには、ラウリルアルコールやイソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトールおよび2,4−ジオキシ安息香酸等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに上記の酸成分とジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノールあるいはp−アミノ安息香酸などを、本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
本発明の場合、ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびその共重合体または変性体よりなる群から選ばれた少なくとも一種類の使用が好ましい。本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートとは、酸成分として、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸を少なくとも80モル%以上含有するポリマーである。酸成分については、少量の他のジカルボン酸成分を共重合してもよく、またエチレングリコールを主たるジオール成分とするが、他のジオール成分を共重合成分として加えてもかまわない。
本発明で使用されるポリエチレンテレフタレートは、通常、次の(1)、(2)のいずれかのプロセスで製造される。
すなわち、
(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、
(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、
である。
(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、
(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、
である。
ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウムあるいはチタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。
前記エステル化あるいはエステル交換反応は、130〜260℃の温度条件下で行い、重縮合反応は高真空下、温度220〜300℃で行うのが通常である。リン化合物の種類としては、亜リン酸、リン酸、リン酸トリエステル、ホスホン酸およびホスホネート等があるが、特に限定されず、また、これらのリン化合物を二種以上併用してもよい。また、エステル化あるいはエステル交換から重縮合の任意の段階で必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、核生成剤、表面突起形成用無機および有機粒子を添加することも可能である。
本発明で用いられるポリエステルの固有粘度は、フィルム成形加工の安定性や液晶性ポリマーとの混合性の観点から、0.55〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.60〜1.5(dl/g)である。
本発明でいうポリフェニレンスルフィド(PPS)とは、下記構造式で示されるフェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む樹脂である。かかるフェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、および機械特性などを損なうことがある。
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記の構造単位を挙げることができる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
PPSを主成分とする樹脂組成物を熱可塑性樹脂Aとして使用する場合には、PPS成分を60重量%以上含む組成物が好ましい。PPSの含有量が60重量%未満では、該組成物からなるフィルムの機械特性、熱融着特性、および寸法安定性などを損なう場合があるので注意すべきである。該組成物中の残りの40重量%未満はPPS以外のポリマー、無機または有機のフィラー、滑剤あるいは着色剤などの添加物を含むことができる。
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の溶融粘度は、溶融混練が可能であればよく、特に限定されないが、温度315℃で剪断速度1000(1/sec)のもとで、50〜5,000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは100〜2,000Pa・sの範囲である。
本発明でいうPPSは公知の方法、すなわち、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明において、得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
次に、PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では、特にこれに限定されるものではない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥する。
かくして得られたポリマーは、実質的に線状のPPSポリマーであり、しかも、該PPS樹脂の溶融結晶化温度Tmcは160〜190℃の範囲にあるので、安定した延伸製膜が可能になる。もちろん、必要に応じて、他の高分子化合物や酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルクおよびカオリンなどの無機や有機化合物や熱分解防止剤、熱安定剤および酸化防止剤などを添加してもよい。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気や酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は、通常170〜280℃が選択され、より好ましくは200〜270℃であり、また、加熱処理時間は、通常0.5〜100時間が選択され、より好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率良くしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率良く、しかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。脱イオン処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、および有機溶剤洗浄処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであればよく、特に制限はされないが、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中で、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムが特に好ましく用いられる。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度について特に制限はなく、常温〜300℃の範囲の任意の温度を選択することができる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱し攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の方が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。
すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであればよく、特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸やジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸やクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸やサリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸およびフマル酸などのジカルボンン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸および珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸と塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いられる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。酸水溶液洗浄処理を施すと、PPS樹脂の酸末端成分が増加して、液晶性樹脂Bと混合する場合に分散混合性が高まり、液晶性樹脂Bの分散相の平均分散径が小さくなる効果が得られる。
本発明において、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bを混合する時期、例えば、液晶性樹脂Bをポリエステルやポリフェニレンスルフィドに添加する時期は、特に限定されないが、溶融押出前に、ポリエステルやポリフェニレンスルフィドと液晶性樹脂との混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。中でも、二軸押出機などの剪断応力のかかる高剪断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高剪断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、二軸3条タイプまたは二軸2条タイプのスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高い剪断応力が付加されやすく、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)が好ましい範囲である二軸押出機を用いることは、十分に混合するための滞留時間を制御しやすく、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を、本発明の好ましい範囲に制御することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bの混合において、必要に応じて、相溶化剤を配合することも両樹脂の相溶性の向上に有効である。この相溶化剤の例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコシキシランなどの有機シラン化合物、エチレンやプロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸やクロレン酸などのα、β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα、β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これら2種以上同時に使用することもできる。特に好適な相溶化剤として、α−オレフィンおよびα、β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とする変性オレフィンを挙げることができ、中でも、α−オレフィンの最も好ましい例は、エチレンである。また、α、β−不飽和酸のグリシジルエステルは下記一般式
相溶化剤である上記の変性ポリオレフィンには、その効果が損なわれない範囲内で、共重合可能な他の不飽和モノマー、例えば、ビニルエーテル類、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチル、エチルおよびプロピルなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル類、アクリロニトリルおよびスチレンなどを共重合することもできる。かかる変性ポリオレフィン樹脂を用いるときに好適な配合量としては、熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bの合計100重量部に対して、変性ポリオレフィン樹脂を1〜50重量部配合することが好ましく、さらに好ましくは3〜30重量部である。特に、熱可塑性樹脂AがPPS樹脂である場合に効果が著しく、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を本発明の好ましい範囲を満たすことができる。
本発明の二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムは、少なくとも片面にポリアミド酸を主原料とした耐熱樹脂層を積層することが重要である。本発明におけるポリアミド酸は、その全単位構造の70%以上が下記式(I)および/または(II)で表される単位構造である必要がある。
ここで、式(III)中のX、Yは下記式(IV)の中から選ばれる少なくとも1種の基である。
−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2−……式(IV)
ポリアミド酸の全単位構造の70%以上が上記式(I)および/または(II)で表される単位構造でない場合には、はんだ耐熱性および低熱膨張性の効果がなかったり、積層厚みを厚くしなければ寸法安定性の効果が得られず生産性やコスト面での優位性のないものとなったりする。また、他の単位構造を30%より多く有するポリアミド酸は、これを合成するときの原料コストが高くなるため、耐熱性多層シートのコストが高くなるなどの問題が生じる。本発明におけるポリアミド酸は、より好ましくは下記式(IX)で表される単位構造を70%以上有するポリアミド酸であり、特に好ましくは下記式(IX)で表される単位構造を90%以上有するポリアミド酸である。
−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2−……式(IV)
ポリアミド酸の全単位構造の70%以上が上記式(I)および/または(II)で表される単位構造でない場合には、はんだ耐熱性および低熱膨張性の効果がなかったり、積層厚みを厚くしなければ寸法安定性の効果が得られず生産性やコスト面での優位性のないものとなったりする。また、他の単位構造を30%より多く有するポリアミド酸は、これを合成するときの原料コストが高くなるため、耐熱性多層シートのコストが高くなるなどの問題が生じる。本発明におけるポリアミド酸は、より好ましくは下記式(IX)で表される単位構造を70%以上有するポリアミド酸であり、特に好ましくは下記式(IX)で表される単位構造を90%以上有するポリアミド酸である。
本発明の耐熱樹脂層に含まれるポリアミド酸は、そのイミド化率が50%以上であることが必要である。このイミド化率はアミド酸成分が脱水閉環されている割合のことである。このイミド化率を測定する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、耐熱樹脂層の赤外吸収スペクトルを赤外分光光度計を用いてATR法によって測定し、そのとき1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収の強度から求める方法などを用いることができる。アミド酸成分を脱水閉環させる方法は、特に限定されるものではないが、150℃以上の熱処理により脱水閉環させる方法が好適に用いられる。このイミド化率が50%未満であると、はんだ耐熱性の機能が十分に発現しない。ポリアミド酸のイミド化率は好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
本発明の耐熱樹脂層に含まれるポリアミド酸のイミド化率は、熱処理温度や時間またはポリアミド酸が溶解された溶液中にイミド化促進剤などを含有させ、その含有率などにより好ましい範囲に制御することができる。イミド化促進剤としては、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−フェノールスルホン酸がある。また、本発明においてはこれらのイミド化促進剤から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ポリアミド酸のカルボキシル基に対して5モル%以上含まれることが好ましい。また、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−フェノールスルホン酸には脱水閉環促進効果があることから、これらの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が添加されていると、添加しない場合よりも低温、短時間の熱処理でもってイミド化率を上げることができるので、生産効率が良くなるため好ましい。その添加量は、より好ましくはポリアミド酸のカルボキシル基に対して50モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上である。添加量がポリアミド酸のカルボキシル基に対して5モル%未満であると低温、短時間でイミド化率を上げる効果が十分でなくなるため好ましくない。添加量の上限は、特に限定されるものではないが、ポリアミド酸のカルボキシル基に対して150モル%以下であることが好ましい。150モル%を越えて添加しても効果を著しく向上させるものではなく、逆に消費量が多くなることによりコスト面の不利益となるので好ましくない。
また、ポリアミド酸を溶解させた溶液中におけるポリアミド酸のイミド化率は、特に限定されるものではないが、溶解性の点で40%未満であることが好ましい。イミド化率が40%以上であると溶媒に溶解しないなどの問題が生じる場合がある。この溶液中のポリアミド酸のイミド化率はより好ましくは20%未満であり、さらに好ましくは10%未満である。
本発明の耐熱樹脂層は、前記したポリアミド酸からなり、かつ、そのイミド化率が50%以上である層であり、このポリアミド酸樹脂成分以外の樹脂や有機化合物等(他成分という)が、共重合や混合により含有されていてもよい。しかし、その他成分物が過度に含有される場合は寸法安定性やはんだ耐熱性など好ましくないことを誘発し易いので、本発明では特に限定されないが、耐熱樹脂層中における、イミド化率50%以上のポリアミド酸樹脂成分の含有量は70重量%以上であることが好ましい。より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
上記耐熱樹脂層を二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルム上に積層する方法は、特に限定されるものではなく、各種の積層方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法などを用いることができるが、特に、ダイコート法が塗液粘度による塗布性の点で好適に用いられる。また、溶剤をより効率よく乾燥させるために、遠赤外線による加熱を用いてもよい。また、ポリアミド酸が溶解された溶液を積層熱塑性樹脂フィルム表面に積層した後、少なくとも一方向に延伸し、かつ積層されたポリアミド酸のイミド化率を高める方法により本発明の耐熱性多層シートを得ることが好ましい。中でも、積層熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向が完了する前のフィルム表面に、ポリアミド酸が溶解された溶液を積層した後、その溶媒が乾燥する前に少なくとも一方向に延伸し、その後溶媒を蒸発揮散させて二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向を完了させ、耐熱樹脂層のポリアミド酸のイミド化率を上げる方法が好適である。この場合、使用する溶媒は積層した後、フィルム延伸の前の予熱工程、延伸工程ではそのほとんどが耐熱樹脂層中に残存し、延伸後の熱処理工程で蒸発揮散させられることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂フィルムがポリエステルフィルムの場合、予熱、延伸温度は通常85〜150℃、また延伸後の熱処理温度は通常200〜250℃という温度条件が好適にとられているので、この温度条件の点から、使用する溶剤は沸点が160℃以上250℃以下のものが好ましい。このような溶剤でかつポリアミド酸を溶解させるものとしてN−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。このような方法によって作製される耐熱性多層シートにおいて、シート全体厚みに対する耐熱樹脂層厚みの割合は、特に限定されるものではないが、0.3%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4%以上10%以下、さらに好ましくは0.5%以上5%以下程度が塗工性、乾燥性の点から望ましい。ここで、耐熱樹脂層厚みは、両面の耐熱樹脂層の合計および耐熱樹脂層が片面のみの場合は片面の耐熱樹脂層の厚みである。耐熱樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合が0.3%未満であると、寸法安定性、はんだ耐熱性および低熱膨張性が十分に発揮されないなどの問題が生じる場合がある。耐熱樹脂層の積層シート全体に対する厚みの割合が30%を越えると、生産性が悪化し、また原料価格が高いものになってしまうためコストの面でも好ましくない。
本発明では、耐熱樹脂層を二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムに積層させる場合には、二軸配向積層熱可塑性樹脂と耐熱樹脂層との間にプライマー層が積層されていても良い。ここで、プライマー層とは、熱可塑性樹脂層と耐熱樹脂層との接着性を高める効果を有する層である。熱可塑性樹脂層と耐熱樹脂層との接着性が高いと、回路材料フィルムを加工する加工工程において、耐熱樹脂層がはがれる等の不都合を生じにくくなる。プライマー層の積層方法は、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂層との共押出によって設ける方法、熱可塑性樹脂および/または耐熱樹脂層にプライマー層形成成分を溶解した溶液を塗布後、乾燥する方法など任意である。プライマー層の材料としては、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、異なる2種類以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。これらの樹脂は、変性体であってもよく共重合体であってもよい。
また、プライマー層には、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、エポキシ樹脂、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系樹脂、アミドエポキシ化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
中でも、プライマー層にオキサゾリン基を有する化合物を含むことが特に好ましい。プライマー層にオキサゾリン基を有する化合物が含まれていると、溶剤に浸したり、高温高湿下におかれた場合でも熱可塑性樹脂層と耐熱樹脂層との接着性が低下することがないために好ましい。
さらには、プライマー層にオキサゾリン基を有する化合物およびポリエステル樹脂を含むことが、溶剤処理および湿熱処理を行った後の、熱可塑性樹脂層と耐熱樹脂層との接着性の点でより好ましい。溶剤処理後の接着性が高いと、回路材料フィルムに対して、溶剤を用いた加工を行っても、耐熱樹脂層がはがれる等の不都合を生じにくいので好ましい。
本発明において用いられるオキサゾリン基を有する化合物は、官能基としてオキサゾリン基を有する化合物であれば良いが、オキサゾリン基を有するモノマーを少なくとも1種含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーと共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体が好ましい。
ここで、オキサゾリン基を有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを用いることができる。これらは、単独でも、または2種以上を併用して使用することもできる。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
また、オキサゾリン基を有するモノマーと共重合させる他のモノマーとしては、オキサゾリン基を有するモノマーと共重合可能なモノマーであればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン−α,β−不飽和モノマー類、スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族モノマー類などを用いることができる。これらは単独でも、または2種以上を併用して使用することもできる。
本発明の効果をより効果的に発現させるためには熱可塑性樹脂フィルムの両面に上記耐熱樹脂層が実質的に接着層を介さずして積層されることが好ましい。
ここで、実質的に接着層を介さないとは、熱可塑性樹脂フィルム上に耐熱樹脂層が積層された状態において、熱可塑性樹脂層と耐熱樹脂層との界面に、熱可塑性樹脂層および耐熱樹脂層形成物質以外の物質による層が形成されていないことを意味するものである。ただし、その界面に耐熱樹脂層と耐熱樹脂層との混在層が形成された場合には、より接着性が向上するので特に好ましく、その混合層は接着層の範疇から外れるものである。また、ポリアミド酸が溶解された溶液を熱可塑性樹脂フィルム上に積層する際、その溶液として、全溶媒に対する双極性非プロトン溶媒の割合が10重量%以上である溶媒にポリアミド酸が溶解された溶液を用いることが上記混合層の形成の点から好ましく、また、上記の特定溶媒に、ポリアミド酸を溶解させた溶液を結晶配向の完了する前の熱可塑性樹脂フィルムに積層した後、少なくとも一方向に延伸し、かつ塗布されたポリアミド酸のイミド化率を高めることにより、イミド化率が50%以上の耐熱樹脂層が積層された耐熱性多層シートを製造する方法が、上記混合層の形成の点から特に好ましい。
双極性非プロトン溶媒は、結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させ得るので、この双極性非プロトン溶媒の割合が全溶媒に対して10重量%以上であることが熱可塑性樹脂層と耐熱樹脂層との接着性を高める点において特に好ましい。双極性非プロトン溶媒の一例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどを挙げることができるが、これら中でもN−メチル−2−ピロリドンが結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させる効果に優れるため、特に好ましい。
本発明の耐熱性多層シートは、本発明の効果が阻害されない範囲内で、各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。
例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン化合物、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には易滑性、耐傷性などが向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μm程度である。また、その添加量は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。
このようにして得られる耐熱性多層シートにおいて、耐熱樹脂層と熱可塑性樹脂層との接着性はT字剥離において100g/25mm幅以上、好ましくは200g/25mm幅以上であることが好ましい。100g/25mm幅未満では、耐熱樹脂層が剥離しやすいという問題が生じ、はんだ耐熱性、寸法安定性を低下させる場合がある。
本発明の耐熱性多層シートの長手方向(MD)と幅方向(TD)の破断強度は、いずれも100〜400(MPa)であることが好ましく、より好ましくは120〜350(MPa)、さらに好ましくは150〜320(MPa)である。破断強度の好ましい範囲を達成するためには、液晶性樹脂Bの分散相の平均分散径を本発明の範囲に制御することが重要である。液晶性樹脂Bの分散相が本発明の範囲を満たさないと、破断強度が低下することがある。フィルムの長手方向と幅方向の破断強度が100(MPa)未満であれば、例えば、機械的強度が不足し、フィルムの加工時や使用時に破損したり、実用上使用に耐えないことがある。また、フィルムの長手方向と幅方向のいずれの方向にも破断強度が400(MPa)を越えるフィルムを得るためには、延伸工程において延伸倍率を上げる必要があるが、延伸時に破れが発生したりすることがある。
本発明の耐熱性多層シートの長手方向(MD)および幅方向(TD)の熱膨張係数は、いずれも3〜45ppm/℃であることが好ましい。熱膨張係数は、より好ましくは4〜25ppm/℃であり、さらに好ましくは5〜20ppm/℃である。熱膨張係数が3ppm/℃未満であったり、45ppm/℃を超えたりすると、回路材料フィルムや印刷材料などの加工時に熱変形してカールしたりすることがある。
本発明の耐熱性多層シートの長手方向と幅方向の200℃の温度で30分間熱処理したときの熱収縮率がともに3%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下である。当該熱収縮率の下限は特に限定されないが、−1%であることが好ましい。長手方向と幅方向の熱収縮率がともに3.0%より大きいフィルムは、回路材料フィルムや印刷材料などの加工時に熱変形してカールしたり、平面性悪化の観点から好ましくない。
本発明の耐熱性多層シートの厚さは、用途等により異なるが500μm以下が好ましく、薄膜用途や作業性などの観点からは、より好ましくは10〜300μmの範囲であり、さらに好ましくは20〜200μmの範囲である。
本発明の耐熱性多層シートは、これに他のポリマー層、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンまたはアクリル系ポリマーからなる層を直接、あるいは接着剤などの層を介して、さらに積層させて用いてもよい。
また、耐熱性多層シートは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
本発明の耐熱性多層シートの用途は、特に限定されないが、工程・離型材料用や回路材料、電気絶縁材料および印刷材料用などの各種工業材料用などに用いられる。
次いで、本発明の耐熱性多層シートを製造する方法について説明するが、本発明は、下記の記載に限定されないことは無論である。
ここで例示する製法においては、テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化させ、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応することにより、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次に、このBHTを重合槽に移送し、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5程度のポリエステルを得る。得られたポリエステルをペレット状で減圧下において固相重合する。固相重合する場合は、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmHg程度の減圧下、10〜50時間固相重合させる。また、フィルムを構成するポリエステルに粒子を含有させる方法としては、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールをテレフタル酸と重合させる方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、粒子の水スラリーを直接所定のポリエステルペレットと混合し、ベント式2軸混練押出機を用いて、ポリエステルに練り込む方法も有効である。粒子の含有量と個数を調節する方法としては、上記方法で高濃度の粒子のマスターを作っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないポリエステルで希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
ポリエステルと液晶性樹脂を混合する場合、溶融押出前に、ポリエステルと液晶性樹脂との混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示される。
本発明では、まず、上記液晶性樹脂とPETとを二軸混練押出機に投入し、液晶性樹脂とPETの重量分率が95/5〜20/80のブレンド原料1を作成することが好ましい。液晶性樹脂とPETからなる樹脂組成物の混合・混錬方法は、特に限定されることはなく各種混合・混錬手段が用いられる。例えば、各々別々に溶融押出機に供給して混合してもよいし、また、予め紛体原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダーあるいはタンブラー等の混合機を利用して乾式予備混合し、その後、溶融混錬機にて溶融混錬することでもよい。その後、前記ブレンド原料1を、必要に応じてPETやこれらの回収原料と共に押出機に投入して、液晶性樹脂の重量分率を下げて、目的とするフィルムC層の組成とし、これを樹脂層C用のポリエステル原料とすることが、フィルムの品質と製膜性の観点で好ましい。上記樹脂層C用ポリエステル原料を作成する場合、フィルム中への異物混入を可能な限り低減させるために、溶融押出工程で樹脂をフィルトレーションすることも好ましく行うことができる。この押出機内で異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンドおよび金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。積層熱可塑性樹脂フィルムを作製するための2台以上の押出機、マニホールドまたは合流ブロックを用いて、溶融状態のポリエステルおよびポリエステル/液晶性ポリマー混合物をそれぞれ積層させたシートをスリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを作る。中でも口金入口前で積層する合流ブロック方式より、口金内でスリット出口前で積層するマニホールド方式を採用すると積層精度を高めることができる。本発明のように、液晶性樹脂Bを使用する場合には、積層合流部における低せん断場の溶融粘度の急激な上昇が起こることがあり、マニホールド方式が特に好ましい。
上記の好ましい耐熱性多層シートの製造法のより具体的な条件は、以下のとおりである。
まず、液晶性樹脂ペレットとPETペレットとを、一定の割合で混合して、280〜320℃に加熱されたベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。このときの二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いることが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、二軸3条タイプまたは二軸2条のスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)が好ましい範囲である二軸押出機を用いることは、十分に混合するための滞留時間を制御し易く、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることが好ましく、その混練部を2箇所以上設けて、各混練部の1個を通常のフィードスクリューとして、スクリュー形状にすることはさらに好ましい。
まず、液晶性樹脂ペレットとPETペレットとを、一定の割合で混合して、280〜320℃に加熱されたベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。このときの二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いることが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、二軸3条タイプまたは二軸2条のスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)が好ましい範囲である二軸押出機を用いることは、十分に混合するための滞留時間を制御し易く、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることが好ましく、その混練部を2箇所以上設けて、各混練部の1個を通常のフィードスクリューとして、スクリュー形状にすることはさらに好ましい。
液晶性樹脂ペレットとPETペレットを混合する上で、PETと液晶性樹脂の混合組成物あるいは相溶化剤が添加されると、分散不良物が低減できて相溶性が高まることがある。
その後、上記ペレタイズ作業により得られた、液晶性樹脂とPETからなるブレンドチップ1、PET、および必要に応じて製膜後の回収原料を一定の割合で適宜混合して樹脂Cとし、180℃で3時間以上真空乾燥した後、270〜320℃の温度に加熱された押出機1に投入する。一方、押出機2には、PETおよび必要に応じて適宜粒子を混合した原料(樹脂D)を乾燥した上で投入する。その後、押出機1,2を経た溶融ポリマーをフィルター内を通過させた後、その溶融体を口金内のマルチマニホールドを用いて合流させて3層積層(D/C/D)し、その後、Tダイを用いてシート状に吐出し、このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、またはそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ここでは、最初に長手方向に延伸し、次に耐熱樹脂層を形成させた後に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。延伸温度については、ポリエステルや液晶性ポリマーの構造成分や、積層の構成成分により異なるが、例えば、積層熱可塑性樹脂フィルムが3層でその中央層が液晶性樹脂を含む樹脂層Cからなる場合を例にとって以下説明する。
未延伸積層熱可塑性樹脂フィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向に2〜5倍、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは3〜4倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度)〜(Tg+60)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+55)℃、さらに好ましくは(Tg+10)〜(Tg+50)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
長手方向延伸後、次に耐熱樹脂層を形成するためにポリアミド酸を溶解させた溶液を塗布する。このとき使用するポリアミド酸を溶解させる溶剤は、特に限定されるものではないが、N−メチル−2−ピロリドンとする。塗布方法としては、特に限定されないが、ここではダイコート法を用いて耐熱樹脂層を形成させる。
ポリアミド酸を溶解させた溶液を塗布させた後に続く幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+80)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+10)〜(Tg+70)℃、さらに好ましくは(Tg+20)〜(Tg+60)℃の範囲である。延伸倍率は、2〜6倍が好ましく、より好ましくは2.5〜5倍、さらに好ましくは3〜4.5倍の範囲である。
さらに、シートを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、シートを冷やして巻き取り、目的とする耐熱性多層シートを得る。また、熱可塑性樹脂シートの厚みは、一般に0.5〜500μm程度であり、用途により適宜決定をすればよい。
本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は、次の通りである。
(1)樹脂層Cの厚さ比率、樹脂層C中の空隙率、線状構成要素の径
シートをシートの長手方向かつ厚み方向に切断し、その切断面の透過型電子顕微鏡写真を撮り、樹脂層Cの厚さを求め、シート全体の厚みに対する樹脂層Cの厚さ比率を算出する。
(1)樹脂層Cの厚さ比率、樹脂層C中の空隙率、線状構成要素の径
シートをシートの長手方向かつ厚み方向に切断し、その切断面の透過型電子顕微鏡写真を撮り、樹脂層Cの厚さを求め、シート全体の厚みに対する樹脂層Cの厚さ比率を算出する。
また、シートの樹脂層Cにおいて、シート表面と平行に切断し、樹脂層Cの切断平面とし、透過型電子顕微鏡写真を撮る。この顕微鏡写真による画像の空隙部分をマーキングして、その空隙部分をハイビジョン画像解析処理装置PIAS−VI(ピアス製)を用いて画像処理を行い、空隙面積の総和を算出し、下記式によりC層中の空隙率を求める。
空隙率(%)=(空隙面積の総和(μm2)/樹脂層Cの切断面積(μm2))×100
空隙率(%)=(空隙面積の総和(μm2)/樹脂層Cの切断面積(μm2))×100
さらにまた、樹脂層Cの切断平面を透過型電子顕微鏡で観察し、網目構造の有無を判定する。その切断平面に網目構造が観察される場合、この切断平面に現れた網目構造を形成する線状構成要素のうち無作為抽出した100部位について短径Diを測定し、次式から平均径Dを求め、線状構成要素の径とした。
D=ΣDi/100
ここで、Diは線状構成要素の短径(測定値)である。
D=ΣDi/100
ここで、Diは線状構成要素の短径(測定値)である。
以上の測定において、シートは、適宜、樹脂に包埋して観察することができる。また、シートにもよるが、樹脂層C以外の層が透明である場合には、光学顕微鏡などの簡易装置を用いることも可能である。
上記顕微鏡観察は、シートにもよるが、100〜100万倍の倍率範囲で適宜選択して観察すればよい。
(2)分散相の平均分散径、アスペクト比
シートを(ア)長手方向に平行かつシート面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつシート面に垂直な方向、(ウ)シート面に対して平行な方向に切断し、サンプルを50nmの厚さに超薄切片法で作成し、切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、5千倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、次に示すようにして分散相の大きさを求めた。(ア)の切断面に現れる分散相のシート厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)、(イ)の切断面に現れる分散相のシート厚さ方向の最大長さ(lc)と幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる分散相のシート長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求めた。次いで、分散相の形状指数I=(lbの平均値+leの平均値)/2、形状指数J=(ldの平均値+lfの平均値)/2、形状指数K=(laの平均値+lcの平均値)/2とした場合、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とした。さらに、I,J,Kの中から、平均長径Lと平均短径Dを決定し、分散相のアスペクト比をL/Dとした。
シートを(ア)長手方向に平行かつシート面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつシート面に垂直な方向、(ウ)シート面に対して平行な方向に切断し、サンプルを50nmの厚さに超薄切片法で作成し、切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、5千倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、次に示すようにして分散相の大きさを求めた。(ア)の切断面に現れる分散相のシート厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)、(イ)の切断面に現れる分散相のシート厚さ方向の最大長さ(lc)と幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる分散相のシート長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求めた。次いで、分散相の形状指数I=(lbの平均値+leの平均値)/2、形状指数J=(ldの平均値+lfの平均値)/2、形状指数K=(laの平均値+lcの平均値)/2とした場合、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とした。さらに、I,J,Kの中から、平均長径Lと平均短径Dを決定し、分散相のアスペクト比をL/Dとした。
(3)ガラス転移温度(Tg)、融解温度(Tm)
擬似等温法にて下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121に従って決定した。
装置: TA Instrument社製温度変調DSC
測定条件:
加熱温度:270〜570K(RCS冷却法)
温度校正:高純度インジウムおよびスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
昇温ステップ:5K
試料重量:5mg
試料容器:アルミニウム製開放型容器(22mg)
参照容器:アルミニウム製開放型容器(18mg)
擬似等温法にて下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121に従って決定した。
装置: TA Instrument社製温度変調DSC
測定条件:
加熱温度:270〜570K(RCS冷却法)
温度校正:高純度インジウムおよびスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
昇温ステップ:5K
試料重量:5mg
試料容器:アルミニウム製開放型容器(22mg)
参照容器:アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度(Tg)は下記式により算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
また、示唆走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上300℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融解温度(Tm)とした。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
また、示唆走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上300℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融解温度(Tm)とした。
(4)イミド化率(I)
シートの耐熱樹脂層の赤外吸収スペクトルを、日本分光(株)社製フーリエ変換型赤外吸収分光光度計FT/IR−5000を用いて、KRS−5の45°の結晶をプリズムとしたATR法にて測定し、1550cm−1から1450cm−1に現れるベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1)と1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収の吸光度(a2)を求めた。このとき下記式から、a1を基準にしたa2の相対値を求め、rとした。
r=a2/a1
シートの耐熱樹脂層の赤外吸収スペクトルを、日本分光(株)社製フーリエ変換型赤外吸収分光光度計FT/IR−5000を用いて、KRS−5の45°の結晶をプリズムとしたATR法にて測定し、1550cm−1から1450cm−1に現れるベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1)と1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収の吸光度(a2)を求めた。このとき下記式から、a1を基準にしたa2の相対値を求め、rとした。
r=a2/a1
続いて、このシートを250℃で120分間熱処理し、この熱処理後のポリアミド酸のイミド化率が100%であるとした。このシートにおける耐熱樹脂層の赤外吸収スペクトルを、同様にATR法で測定し、ベンゼン環の特性吸収の吸光度(a’1)を基準にしたイミド基の特性吸収の吸光度(a’2)の相対値を求め、r’とした。
r’=a’2/a’1
r’=a’2/a’1
本発明においては、下記式から、r’を基準にしたrの相対値を求めてイミド化率Iとした。
I(%)=100×(r/r’)
I(%)=100×(r/r’)
(5)破断強度
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行った。
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行った。
測定装置:オリエンテック(株)製フイルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
(6)熱膨張係数
熱機械測定装置TMA/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mm、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷した。室温から175℃(設定185℃)まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持した。その後、40℃まで10℃/分で降温させ、20分間保持した。このときの降温部分160℃から60℃までの寸法変化量から、下記式により熱膨張係数を求めた。
温度膨張係数α(1/℃)={(L160−L60)/L0}/△T
L0:23℃におけるフィルム長さ
L160:降温時の160℃におけるフィルム長さ
L60:降温時の60℃におけるフィルム長さ
△T:温度変化量(160−60=100)
熱機械測定装置TMA/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mm、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷した。室温から175℃(設定185℃)まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持した。その後、40℃まで10℃/分で降温させ、20分間保持した。このときの降温部分160℃から60℃までの寸法変化量から、下記式により熱膨張係数を求めた。
温度膨張係数α(1/℃)={(L160−L60)/L0}/△T
L0:23℃におけるフィルム長さ
L160:降温時の160℃におけるフィルム長さ
L60:降温時の60℃におけるフィルム長さ
△T:温度変化量(160−60=100)
(7)平面性
シートを25cm×25cmの大きさに切り出し、温度160℃で30分間処理した。その後、コルク製台上に広げ、表面が不織布で巻かれた棒でシート表面をならして、シートと台の間の空気を完全に排除する。3分間放置した後に、シートの状態を観察し、台からシートが浮き上がった部分の個数を数えた。
シートを25cm×25cmの大きさに切り出し、温度160℃で30分間処理した。その後、コルク製台上に広げ、表面が不織布で巻かれた棒でシート表面をならして、シートと台の間の空気を完全に排除する。3分間放置した後に、シートの状態を観察し、台からシートが浮き上がった部分の個数を数えた。
浮き上がった個数が、5個以下のものを◎、6個以上10個以下のものを○、11個以上15個以下のものを△、16個以上のものを×とした。
(8)溶融粘度
フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用いて、口金長さを10mm、口金径を1.0mmとして、予熱時間を5分に設定して測定した。
フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用いて、口金長さを10mm、口金径を1.0mmとして、予熱時間を5分に設定して測定した。
(9)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式により計算される値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度と溶媒粘度は、オストワルド粘度計を用いて測定した。
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式により計算される値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度と溶媒粘度は、オストワルド粘度計を用いて測定した。
(10)はんだ耐熱性
シートを10cm×10cmの大きさに切り出し、260℃のはんだ浴に10秒間浸して取り出し、その形状を目視で確認し変化が無い場合を○、やや収縮や反りがある場合は△、溶融してしまった場合、または収縮が大きく平面性を保てない場合を×とした。
シートを10cm×10cmの大きさに切り出し、260℃のはんだ浴に10秒間浸して取り出し、その形状を目視で確認し変化が無い場合を○、やや収縮や反りがある場合は△、溶融してしまった場合、または収縮が大きく平面性を保てない場合を×とした。
(11)耐熱樹脂層のシート全体に対する厚みの割合(T)
シートから断面を切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡で観察し、一方の面の耐熱樹脂層の厚み(t1)、もう一方の面の耐熱樹脂層の厚み(t2)およびシート全体の厚み(t3)を測定した。なお混在相がある場合は混在相を含めた厚みを耐熱樹脂層の厚みとした。このとき耐熱樹脂層のシート全体に対する厚みの割合Tを、下記式より求めた。
T(%)=100×(t1+t2)/t3
シートから断面を切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡で観察し、一方の面の耐熱樹脂層の厚み(t1)、もう一方の面の耐熱樹脂層の厚み(t2)およびシート全体の厚み(t3)を測定した。なお混在相がある場合は混在相を含めた厚みを耐熱樹脂層の厚みとした。このとき耐熱樹脂層のシート全体に対する厚みの割合Tを、下記式より求めた。
T(%)=100×(t1+t2)/t3
(12)200℃、30分における熱収縮率
JIS C 2318に従って、フィルムの長手方向および幅方向に測定する。
試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件:温度200℃、処理時間30分、無荷重状態
200℃の温度における熱収縮率を次式より求める。
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
L0:加熱処理前の標線間隔
L :加熱処理後の標線間隔。
JIS C 2318に従って、フィルムの長手方向および幅方向に測定する。
試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件:温度200℃、処理時間30分、無荷重状態
200℃の温度における熱収縮率を次式より求める。
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
L0:加熱処理前の標線間隔
L :加熱処理後の標線間隔。
(13)厚みムラ
アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタ「KG601A」および電子マイクロメーター「K306C」を用い、フィルム幅方向に10m長、30mm幅でサンプリングしたフィルムについて、フィルム長手方向に沿って連続的に厚みを測定し、その最大値Ta、最小値Tb、平均値Tcから次式より算出した。
厚みムラ=[(Ta−Tb)/Tc]×100
アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタ「KG601A」および電子マイクロメーター「K306C」を用い、フィルム幅方向に10m長、30mm幅でサンプリングしたフィルムについて、フィルム長手方向に沿って連続的に厚みを測定し、その最大値Ta、最小値Tb、平均値Tcから次式より算出した。
厚みムラ=[(Ta−Tb)/Tc]×100
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、これに限定されるものではない。
<耐熱樹脂層形成用の塗布液>
(1)塗布液A
乾燥したフラスコに、秤量した4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをN−メチル−2−ピロリドンとともに加え、撹拌して溶解した。次に、この溶液にピロメリット酸二無水物を4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100molに対して100mol、反応温度が60℃以下になるように添加した。その後、粘度が一定になったところで重合の終点とし、重合を終了し、下記式(IX)の単位構造からなるポリアミド酸の重合溶液を得た。積層膜の厚みに応じた所望濃度となるように、この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで適宜希釈して、さらに塗布前にm−ヒドロキシ安息香酸をポリアミド酸のカルボキシル基に対して100モル%添加し、これを塗布液Aとした。
(1)塗布液A
乾燥したフラスコに、秤量した4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをN−メチル−2−ピロリドンとともに加え、撹拌して溶解した。次に、この溶液にピロメリット酸二無水物を4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100molに対して100mol、反応温度が60℃以下になるように添加した。その後、粘度が一定になったところで重合の終点とし、重合を終了し、下記式(IX)の単位構造からなるポリアミド酸の重合溶液を得た。積層膜の厚みに応じた所望濃度となるように、この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで適宜希釈して、さらに塗布前にm−ヒドロキシ安息香酸をポリアミド酸のカルボキシル基に対して100モル%添加し、これを塗布液Aとした。
(2)塗布液B
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100molに対してピロメリット酸二無水物を70mol、及び、3,4:3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を30mol加えた以外は塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Bとした。塗布液B中のポリアミド酸は上記式(IX)の単位構造と下記式(X)の単位構造の比が7:3で構成されたものであった。
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100molに対してピロメリット酸二無水物を70mol、及び、3,4:3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を30mol加えた以外は塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Bとした。塗布液B中のポリアミド酸は上記式(IX)の単位構造と下記式(X)の単位構造の比が7:3で構成されたものであった。
(3)塗布液C
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100molに対してピロメリット酸二無水物を50mol、及び、3,4:3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50mol加えた以外は、塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Cとした。塗布液C中のポリアミド酸は上記式(IX)の単位構造と上記式(X)の単位構造の比が5:5で構成されたものであった。
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100molに対してピロメリット酸二無水物を50mol、及び、3,4:3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50mol加えた以外は、塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Cとした。塗布液C中のポリアミド酸は上記式(IX)の単位構造と上記式(X)の単位構造の比が5:5で構成されたものであった。
(4)塗布液D
塗布前にm−ヒドロキシ安息香酸を添加しない以外は塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Dとした。
塗布前にm−ヒドロキシ安息香酸を添加しない以外は塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Dとした。
<プライマー層形成用の塗布液>
(1)塗布液1
下記のポリエステル樹脂1に対して、架橋剤として下記のメラミン化合物1を、固形分重量比で85/15となるように混合し、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(10/90(重量比))を用いて、固形分濃度を3重量%となるように希釈したものをプライマー層形成用の塗布液1とした。
・ポリエステル樹脂1:
・酸成分
テレフタル酸 60モル%
イソフタル酸 14モル%
トリメリット酸 20モル%
セバチン酸 6モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 28モル%
ネオペンチルグリコール 38モル%
1,4−ブタンジオール 34モル%
(1)塗布液1
下記のポリエステル樹脂1に対して、架橋剤として下記のメラミン化合物1を、固形分重量比で85/15となるように混合し、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(10/90(重量比))を用いて、固形分濃度を3重量%となるように希釈したものをプライマー層形成用の塗布液1とした。
・ポリエステル樹脂1:
・酸成分
テレフタル酸 60モル%
イソフタル酸 14モル%
トリメリット酸 20モル%
セバチン酸 6モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 28モル%
ネオペンチルグリコール 38モル%
1,4−ブタンジオール 34モル%
上記ポリエステル樹脂1(Tg:20℃)をアンモニア水で水性化した水分散体とした。
・メラミン化合物1:
ハイソリッド型アミノ樹脂であるサイテック社製“サイメル(登録商標)”325(イミノ基型メチル化メラミン)を、メラミン化合物1とした。
・メラミン化合物1:
ハイソリッド型アミノ樹脂であるサイテック社製“サイメル(登録商標)”325(イミノ基型メチル化メラミン)を、メラミン化合物1とした。
実施例1
テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05重量部のエチレングリコール溶液および三酸化アンチモン0.05重量部を加えて5分間撹拌した後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で、反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを得た。得られたポリエチレンテレフタレートのペレットのガラス転移温度は78℃であり、融点は255℃であった。また、温度285℃、せん断速度1000(1/sec)における溶融粘度は120Pa・sであった。
テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05重量部のエチレングリコール溶液および三酸化アンチモン0.05重量部を加えて5分間撹拌した後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で、反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを得た。得られたポリエチレンテレフタレートのペレットのガラス転移温度は78℃であり、融点は255℃であった。また、温度285℃、せん断速度1000(1/sec)における溶融粘度は120Pa・sであった。
次いで、得られたPETチップ60重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”(登録商標)5000、融点283℃、溶融粘度100Pa・s)(LCP1)40重量部を、180℃で3時間真空乾燥した後、混練ゾーンを二箇所設け290℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間2分、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(PET/LCP1)を得た。次いで、上記の無粒子のPETチップに、平均径2.5μmの凝集シリカ粒子の含有割合が0.1重量%になるように、粒子マスターを配合して樹脂Aとし、180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機Iに供給した。また、一方、上記のPET/LCP1(60/40重量%)のブレンドチップを樹脂Cとし、180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機IIに供給した。次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーをそれぞれフィルターで濾過した後、3層用のマルチマニホールド(口金積層)を使用して、D/C/Dの3層積層とした。マルチマニホールドを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比がD/C/D=15/70/15となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギヤポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを3層積層状態にして溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着させて冷却固化し、ドラフト比(口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比)8で引き取って未延伸積層フィルムを作製した。
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度90℃で1.2倍延伸し、続いて温度95℃で2.8倍延伸(長手方向に3.3倍)し、一軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に塗布液Aをダイコート方式で片面当たりの耐熱樹脂層最終積層厚みが0.5μmになるように塗布した。さらに塗液Aが塗布されたフィルムをテンターで、幅方向に温度100℃で3.5倍延伸した。続いて、定長下で温度230℃で10秒間熱処理した後、幅方向に1%の弛緩処理を施し、厚さ50μmの耐熱性多層シートとした。得られた耐熱性多層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
実施例2
実施例1で得られた一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、一軸延伸フィルムの濡れ張力を55mN/mとした。その後、一軸延伸フィルムの両面にプライマー層形成用の塗布液として、塗布液1を塗布した。ついで、プライマー層形成用の塗布液を塗布した一軸延伸フィルムをクリッププライマー層形成用の塗布液を積層熱可塑性樹脂フィルム両面に塗布した後、このフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き100℃に加熱し、幅方向に延伸した。ひき続き230℃で熱処理を行い、プライマー層を積層したポリエステルフィルムを得た後、塗布液Aをバーコート法でフィルム両面のプライマー層上に片面当たりの耐熱樹脂層最終積層厚みが0.5μmになるように塗布して、130℃で乾燥し、200℃で脱水閉環を行うことを耐熱樹脂層の形成方法として耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
実施例1で得られた一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、一軸延伸フィルムの濡れ張力を55mN/mとした。その後、一軸延伸フィルムの両面にプライマー層形成用の塗布液として、塗布液1を塗布した。ついで、プライマー層形成用の塗布液を塗布した一軸延伸フィルムをクリッププライマー層形成用の塗布液を積層熱可塑性樹脂フィルム両面に塗布した後、このフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き100℃に加熱し、幅方向に延伸した。ひき続き230℃で熱処理を行い、プライマー層を積層したポリエステルフィルムを得た後、塗布液Aをバーコート法でフィルム両面のプライマー層上に片面当たりの耐熱樹脂層最終積層厚みが0.5μmになるように塗布して、130℃で乾燥し、200℃で脱水閉環を行うことを耐熱樹脂層の形成方法として耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
実施例3
塗布液Aの塗布を片面のみとし、その耐熱樹脂層最終積層厚みが1.0μmになるようにした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスの取れたものであった。
塗布液Aの塗布を片面のみとし、その耐熱樹脂層最終積層厚みが1.0μmになるようにした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスの取れたものであった。
実施例4
片面当たりの耐熱樹脂層最終積層厚みが0.05μmになるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性とはんだ耐熱性でバランスの取れたフィルムであった。
片面当たりの耐熱樹脂層最終積層厚みが0.05μmになるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性とはんだ耐熱性でバランスの取れたフィルムであった。
実施例5
実施例1にて得られたPETチップ60重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”(登録商標)5000、融点283℃、溶融粘度100Pa・s)(LCP1)40重量部を、180℃で3時間真空乾燥した後、混練ゾーンを2箇所設け290℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間2分、スクリュー回転数450回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却したこと以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性が良好であった。
実施例1にて得られたPETチップ60重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”(登録商標)5000、融点283℃、溶融粘度100Pa・s)(LCP1)40重量部を、180℃で3時間真空乾燥した後、混練ゾーンを2箇所設け290℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間2分、スクリュー回転数450回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却したこと以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性が良好であった。
実施例6
片面あたりの耐熱樹脂層最終積層厚みが4.0μmになるように塗布したこと以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスの取れたものであった。
片面あたりの耐熱樹脂層最終積層厚みが4.0μmになるように塗布したこと以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスの取れたものであった。
実施例7
塗布液を塗布液Bとした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
塗布液を塗布液Bとした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
実施例8
塗布液を塗布液Cとした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
塗布液を塗布液Cとした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
実施例9
塗布液を塗布液Dとした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスのとれたものであった。
塗布液を塗布液Dとした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスのとれたものであった。
実施例10
二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比がD/C/D=33/33/33となるように、各層の厚さを調整したこと以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比がD/C/D=33/33/33となるように、各層の厚さを調整したこと以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
実施例11
液晶性樹脂として、下記組成の液晶性ポリエステル(融点265℃、溶融粘度30Pa・s)(LCP2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、液晶性樹脂Bとして好ましい組成を有する共重合ポリエステルであったため、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
液晶性ポリエステルの共重合組成
p−ヒドロキシ安息香酸 56.8モル%
4,4’−ジヒドロキシビフェニル 5.9モル%
エチレングリコール 15.7モル%
テレフタル酸 21.6モル%
液晶性樹脂として、下記組成の液晶性ポリエステル(融点265℃、溶融粘度30Pa・s)(LCP2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、液晶性樹脂Bとして好ましい組成を有する共重合ポリエステルであったため、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
液晶性ポリエステルの共重合組成
p−ヒドロキシ安息香酸 56.8モル%
4,4’−ジヒドロキシビフェニル 5.9モル%
エチレングリコール 15.7モル%
テレフタル酸 21.6モル%
実施例12
実施例1で得られたPETチップ60重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”(登録商標)5000、融点283℃、溶融粘度100Pa・s)(LCP1)40重量部を180℃で3時間真空乾燥した後、290℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間3分、スクリュー回転数50回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(PET/LCP1)とした。それ以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを得た。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性、はんだ耐熱性および平面性でバランスの取れたフィルムであった。
実施例1で得られたPETチップ60重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”(登録商標)5000、融点283℃、溶融粘度100Pa・s)(LCP1)40重量部を180℃で3時間真空乾燥した後、290℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間3分、スクリュー回転数50回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(PET/LCP1)とした。それ以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを得た。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性、はんだ耐熱性および平面性でバランスの取れたフィルムであった。
実施例13〜16
液晶性ポリマーの含有量を変更する以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスのとれたフィルムであった。
液晶性ポリマーの含有量を変更する以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスのとれたフィルムであった。
実施例17
熱処理時間を2秒とした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスのとれたフィルムであった。
熱処理時間を2秒とした以外は実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性でバランスのとれたフィルムであった。
実施例18
東レ(株)製の線状PPS樹脂(“ライトン”(登録商標)T1881、融点285℃、溶融粘度200Pa・s(温度315℃、せん断速度1000(1/sec))60重量部と上野製薬製の液晶性樹脂(“上野LCP”(登録商標)5000(高粘度グレード)、融点283℃、溶融粘度20Pa・s)(LCP3)40重量部を180℃で3時間真空乾燥し、さらにPPS樹脂と液晶性樹脂の合計100重量部に対して、相溶化剤としてエチレン/グリシジルメタクリレート(=88/12重量%)共重合体(住友化学製、”ボンドファーストE”(登録商標))を3重量部を配合後、混練ゾーンを2箇所設け315℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。東レ(株)製の線状PPS樹脂(“ライトン”(登録商標)T1881)に、平均粒径0.7μmのシリカ粉末0.2重量%、ステアリン酸カルシウム0.05重量%を添加し均一に分散配合させた原料を樹脂Dとし、180℃で3時間真空乾燥した後、320℃に加熱された押出機Iに供給した。
東レ(株)製の線状PPS樹脂(“ライトン”(登録商標)T1881、融点285℃、溶融粘度200Pa・s(温度315℃、せん断速度1000(1/sec))60重量部と上野製薬製の液晶性樹脂(“上野LCP”(登録商標)5000(高粘度グレード)、融点283℃、溶融粘度20Pa・s)(LCP3)40重量部を180℃で3時間真空乾燥し、さらにPPS樹脂と液晶性樹脂の合計100重量部に対して、相溶化剤としてエチレン/グリシジルメタクリレート(=88/12重量%)共重合体(住友化学製、”ボンドファーストE”(登録商標))を3重量部を配合後、混練ゾーンを2箇所設け315℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、冷水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。東レ(株)製の線状PPS樹脂(“ライトン”(登録商標)T1881)に、平均粒径0.7μmのシリカ粉末0.2重量%、ステアリン酸カルシウム0.05重量%を添加し均一に分散配合させた原料を樹脂Dとし、180℃で3時間真空乾燥した後、320℃に加熱された押出機Iに供給した。
また、一方、上記のPPS/LCP(60/40重量%)のブレンドチップを樹脂Cとし、180℃で3時間真空乾燥した後、320℃に加熱された押出機IIに供給した。次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーをそれぞれフィルターで濾過した後、3層用のマルチマニホールドを使用して、D/C/Dの3層積層とした。マルチマニホールドを通過するポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比がD/C/D=15/70/15となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギヤポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを3層積層状態にして溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、ドラフト比(口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比)5で引き取って未延伸積層フィルムを作製した。
この未延伸フィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、105℃の温度でフィルムの縦方向に3.1倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両面に塗布液Aをダイコート方式で片面当たりの耐熱樹脂層最終積層厚みが0.5μmになるように塗布した。さらに塗液Aが塗布されたフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度115℃、延伸倍率3.2倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて255℃の温度で3秒間熱処理を行った後、150℃にコントロールされた冷却ゾーンで横方向に4%弛緩処理を行い、その後、100℃にコントロールされた冷却ゾーンで横方向に1%弛緩処理を施し、その後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚さ50μmの耐熱性多層シートを作製した。
得られた耐熱性多層シートの構成や特性についての測定、評価結果は、表1および表2に示したとおりであり、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
実施例19
液晶性ポリマーとして、東レ(株)製の液晶性樹脂(“シベラス”(登録商標)、融点315℃、溶融粘度200Pa・s)(LCP4)を用いたこと以外は、実施例18と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、液晶性樹脂Bとして好ましい組成を有する共重合ポリエステルであったため、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
液晶性ポリマーとして、東レ(株)製の液晶性樹脂(“シベラス”(登録商標)、融点315℃、溶融粘度200Pa・s)(LCP4)を用いたこと以外は、実施例18と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、液晶性樹脂Bとして好ましい組成を有する共重合ポリエステルであったため、この耐熱性多層シートは、寸法安定性、はんだ耐熱性、低熱膨張性および平面性に優れたものであった。
比較例1
樹脂層Cとして、実施例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂だけを用いて製膜したこと以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性に不十分なシートであった。
樹脂層Cとして、実施例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂だけを用いて製膜したこと以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性に不十分なシートであった。
比較例2
樹脂層Cとして、実施例14で得られたポリフェニレンサルファイド樹脂だけを用いて製膜したこと以外は、実施例14と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性、低熱膨張性に不十分なフィルムであった。
樹脂層Cとして、実施例14で得られたポリフェニレンサルファイド樹脂だけを用いて製膜したこと以外は、実施例14と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、寸法安定性、低熱膨張性に不十分なフィルムであった。
比較例3
230℃の熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、イミド化率は28%であり、寸法安定性、はんだ耐熱性に不十分なフィルムであった。
230℃の熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして耐熱性多層シートを作製した。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、イミド化率は28%であり、寸法安定性、はんだ耐熱性に不十分なフィルムであった。
比較例4
液晶性ポリマーとして、東レ(株)製の液晶性樹脂(“シベラス”(登録商標)、融点315℃、溶融粘度200Pa・s)(LCP4)を用い、該液晶性樹脂を130℃で6時間真空乾燥した。乾燥の終了した原料は、それぞれシリンダー径が90mmの溶融押出機に供給し、320℃で溶融させた後、T字型口金からシート状に押し出した。このようにして押し出された溶融フィルムは、エアーナイフによって表面温度が25℃に保たれた直径1mのキャスティングドラムに密着冷却固化させた。該キャストフィルムの両面に耐熱樹脂層を形成させた。耐熱樹脂層としてはガラス転移温度が270℃であるパラ系芳香族ポリアミド二軸延伸フィルム(登録商標:ミクトロン(東レ(株)製))をN−メチル−2−ピロリドンに固形分濃度5重量%となるように60℃で溶解した後、常温まで冷却し、粘度55ポイズのものを製作した。該耐熱樹脂層(5重量%液)をダイコート方式で片面あたり耐熱樹脂層が30μmになるように、液晶性樹脂層の両面に塗布した。塗布されたフィルムをパンタグラフ方式の同時二軸延伸装置に供給して、110℃の予熱ゾーンに導き、引き続き300℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸して320℃で熱処理した。このようにして全シートの厚みが60μm、耐熱樹脂層の厚みが8μmの異方性のないフィルムを得た。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、厚みムラに不十分なものであった。
液晶性ポリマーとして、東レ(株)製の液晶性樹脂(“シベラス”(登録商標)、融点315℃、溶融粘度200Pa・s)(LCP4)を用い、該液晶性樹脂を130℃で6時間真空乾燥した。乾燥の終了した原料は、それぞれシリンダー径が90mmの溶融押出機に供給し、320℃で溶融させた後、T字型口金からシート状に押し出した。このようにして押し出された溶融フィルムは、エアーナイフによって表面温度が25℃に保たれた直径1mのキャスティングドラムに密着冷却固化させた。該キャストフィルムの両面に耐熱樹脂層を形成させた。耐熱樹脂層としてはガラス転移温度が270℃であるパラ系芳香族ポリアミド二軸延伸フィルム(登録商標:ミクトロン(東レ(株)製))をN−メチル−2−ピロリドンに固形分濃度5重量%となるように60℃で溶解した後、常温まで冷却し、粘度55ポイズのものを製作した。該耐熱樹脂層(5重量%液)をダイコート方式で片面あたり耐熱樹脂層が30μmになるように、液晶性樹脂層の両面に塗布した。塗布されたフィルムをパンタグラフ方式の同時二軸延伸装置に供給して、110℃の予熱ゾーンに導き、引き続き300℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸して320℃で熱処理した。このようにして全シートの厚みが60μm、耐熱樹脂層の厚みが8μmの異方性のないフィルムを得た。得られた耐熱性多層シートは、その特性について測定、評価した結果を表1および表2に示したとおり、厚みムラに不十分なものであった。
本発明の耐熱性多層シートは、回路基盤材料、工程・離型材料、回路基板材料、電気絶縁材料、印刷材料および磁気記録媒体用などの各種工業材料用途において、好適に使用することができる。
Claims (10)
- 少なくとも3層からなる二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムであって、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムを構成する最外層以外の少なくとも1層が熱可塑性樹脂Aと液晶性樹脂Bからなる樹脂層Cであり、該二軸配向積層熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリアミド酸を主原料とし、かつそのイミド化率が50%以上である耐熱樹脂層が積層されていることを特徴とする耐熱性多層シート。
- 樹脂層Cが空隙を有し、該樹脂層Cの空隙率が樹脂層C面中の面積分率で5%〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性多層シート。
- 樹脂層Cにおける液晶性樹脂Bが、20重量%以上〜70重量%以下の重量分率で含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱性多層シート。
- 耐熱樹脂層の厚み比率がシート全体の0.3%〜30%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性多層シート。
- 樹脂層Cの厚さが、シート全体の厚さの10〜80%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱性多層シート。
- 熱可塑性樹脂Aが、ポリエステルおよびポリフェニレンスルフィドから選ばれた少なくとも一種からなる樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱性多層シートである。
- シートの長手方向と幅方向の熱膨張係数が、ともに3〜45ppm/℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱性多層シート。
- シートの長手方向と幅方向の破断強度が、ともに100〜400MPaであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の耐熱性多層シート。
- シートの長手方向と幅方向の200℃における熱収縮率が、ともに0〜3%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の耐熱性多層シート。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004157645A JP2005335226A (ja) | 2004-05-27 | 2004-05-27 | 耐熱性多層シート |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5239855B2 (ja) * | 2006-05-10 | 2013-07-17 | 東レ株式会社 | 二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム |
JP5428335B2 (ja) * | 2006-05-10 | 2014-02-26 | 東レ株式会社 | 二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム |
JP2015103671A (ja) * | 2013-11-25 | 2015-06-04 | 住友金属鉱山株式会社 | 2層フレキシブル基板および2層フレキシブル配線板 |
WO2021227505A1 (zh) * | 2020-05-09 | 2021-11-18 | 宁波长阳科技股份有限公司 | 用于柔性印刷线路板的液晶高分子薄膜 |
-
2004
- 2004-05-27 JP JP2004157645A patent/JP2005335226A/ja active Pending
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