JP2007090540A - 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法および熱可塑性樹脂フィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルムの製造方法および熱可塑性樹脂フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】
耐熱性、特に低熱変形性に優れるフィルムを、簡便かつ低コストで製造する方法を提供することにあり、さらに高耐熱・低熱膨張率を併せもつフィルムを提供することにある。
【解決手段】
ポリアリーレンスルフィド樹脂と液晶ポリエステル樹脂を主な構成成分とし、液晶ポリエステル樹脂を70〜30重量部含有してなる熱可塑性樹脂組成物(A)を、口金から溶融押出して未延伸シートを作成する際に、融点240〜320℃の熱可塑性樹脂組成物(B)を共押出して、少なくとも(A)、(B)の2層からなる未延伸積層フィルムとして得ることを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は熱可塑性樹脂フィルムの製造方法および熱可塑性樹脂フィルムに関し、詳しくは、高耐熱・低熱変形率を備える優れたフィルムを低コストで製造する方法に関するものである。本フィルムは電気絶縁用、コンデンサー用、包装用、インクリボン用、回路基板用などの各種工業材料用として広く活用でき、特に回路基板用フィルムとして好適である。
従来、耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミド樹脂フィルムや、液晶性樹脂フィルム、あるいはそれらにガラス繊維や無機物を含有させたフィルムなどが良く知られている。これらの樹脂フィルムは、高耐熱性、低線変形(変形)率、高絶縁性、低吸湿性、高ガスバリアー性、高強度などに優れた樹脂フィルムであり、回路基盤用途などにおいて実用化されている。また、該樹脂フィルムを用いたIC用のプリント配線基盤の開発もされ実用化されている。また、加熱エージングして耐熱性を向上させたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂フィルムも検討されている。
しかしながら、上記したもののうち、ポリイミド樹脂フィルムの場合は、吸湿寸法安定性が悪く、高湿度下での寸法変化が激しいものであり、ICプリント配線基盤のように寸法変化を嫌う用途には使用が制限されるという欠点があり、さらに、加熱接着法で銅箔と貼り合わせて多層基盤を作ることができないという重大な欠点もあった。
このために吸湿寸法安定性に優れた、熱接着性のある液晶樹脂フィルムが用いられるようになってきた。しかしながら、液晶樹脂フィルムにあっては、どのような種類の液晶樹脂であっても、また、単層フィルム化や他の樹脂との積層フィルム化を図ったとしても、押出・成形性が極端に悪いため、その結果、得られるフィルムは一般に厚みムラが大きく、表面粗さも大きく、また接着性にも劣り、実用上大きな問題点があった。さらに、液晶樹脂は溶融状態でしか延伸することが出来ず、インフレーション法などの特殊な延伸方法が必要であり、生産性に劣るものであった。
また、長時間の加熱エージングをさせたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂フィルムでは、熱収縮性は改良されるものの、該フィルムの平面性が極端に悪く、さらに熱変形係数も20ppm以下にはならず、金属箔と熱接着した場合、カールして使用できないばかりか、また製造コストの高いものになってしまい、実用上は使用できないのが実状であった。
こうした液晶樹脂フィルムおよびPPS樹脂フィルムのそれぞれの長所を生かし、短所を補うための技術として、液晶樹脂とPPS樹脂の混合物からなるフィルムが開示されている(特許文献1および2)が、液晶樹脂フィルムにおいて問題となっていた押出成形性の改善にはいたっておらず、厚みムラが依然として大きく、また、押出方向への強い配向による縦裂けのし易さが問題であった。また、この製膜時の縦裂けのし易さを補う技術として、フッ素樹脂多孔体からなるシートを、液晶樹脂/PPS樹脂溶融押出シートに熱圧着させ、該フィルムを延伸した後にフッ素樹脂多孔体からなるシートを剥離して液晶樹脂とPPS樹脂の混合物からなるフィルムを得る方法が開示されている(特許文献3および4)。しかしながら、フッ素樹脂多孔体シートは一般に非常に高価であり、しかも再利用が非常に困難であり廃棄することになるため、コスト的にも環境的にも問題があった。また、これらの技術(特許文献1〜4)いずれにおいても、液晶樹脂については、如何なる液晶樹脂が性能及び生産性の両面から好適であるかについては、詳細な化学構造的構成は全く開示されていなかった。
特開平9−76397号公報 特開平9−174786号公報 特開平2004−175995号公報 特開平2004−244630号公報
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、特に低熱変形性に優れるフィルムを、簡便かつ低コストで製造する方法を提供することにあり、さらに高耐熱・低熱変形率を併せもつフィルムを提供することにある。
本発明の課題は、ポリアリーレンスルフィド樹脂と液晶ポリエステル樹脂を100重量部として、液晶ポリエステル樹脂を70〜30重量部含有してなる熱可塑性樹脂組成物(A)を、口金から溶融押出して未延伸シートを作成する際に、融点240〜320℃の熱可塑性樹脂組成物(B)を共押出して、少なくとも(A)、(B)の2層からなる未延伸積層フィルムとする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により達成される。
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、
(1)熱可塑性樹脂(B)が、80モルパーセント以上がエチレンテレフタレートあるいはエチレンナフタレート単位からなるポリエステル組成物であること、
(2)(1)により得られた未延伸フィルムを、少なくとも一軸方向に配向して積層延伸フィルムを得ること、
(3)(1)〜(3)のいずれか一項に記載の製造方法により得られる積層フィルムより、熱可塑性樹脂(B)からなる層を剥離して熱可塑性樹脂(A)からなるフィルムを得ること、
を、それぞれ好ましい態様として含んでおり、
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムは
(1)(4)により得られること、
(2)フィルム面に対して少なくとも一方向の熱変形係数が20ppm/℃未満であること、
を、それぞれ好ましい態様として含んでいる。
本発明によれば、高耐熱・低変形張率のフィルムを低コストで製造・提供することができ、工業材料フィルムとしての利用価値は極めて高く、特に回路基板用途として好適である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 2007090540
(R1、R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位として下記構造式で表されるp−フェニレン単位
Figure 2007090540
を90モルパーセント以上含有するポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられ、ポリフェニレンスルフィドが特に好ましい。
耐熱性の観点からは前記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、さらには90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、式(A)〜式(K)のいずれかの構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。なかでもp−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体(m−フェニレンスルフィド単位20%以下)などは、成形加工性とバリア性を兼備する点で、用途によっては好ましく用いられ得る。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−単位に対して0〜5モル%の範囲であることが好ましく、1モル%以下の範囲がより好ましい。
Figure 2007090540
かかるPPS樹脂は、ポリハロゲン芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で反応させて得られるPPS樹脂を回収および後処理することで、高収率で製造することができる。具体的には特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによっても製造できる。前記のように得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することもできる。
PPS樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において、希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃である。また、加熱処理時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間である。この両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明で用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂としてPPS樹脂を用いる場合は、洗浄処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。かかる洗浄処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶媒洗浄処理などが例示できる。これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いても良い。
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上を混合して使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂を熱水で洗浄処理する場合の具体的方法としては、以下の方法が例示できる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、熱水で洗浄処理する場合、周期表の第II族の金属元素を含有する水溶液で処理することが好ましく用いられる。周期表の第II族の金属元素を含む水溶液とは、上記水に、周期表の第II族の金属元素を有する水溶性塩を添加したものである。水に対する周期表の第II族の金属元素を有する水溶性塩の濃度は、0.001〜5重量%程度の範囲が好ましい。
ここで使用する周期表の第II族の金属元素の中でも好ましい金属元素としては、Ca、Mg、BaおよびZnなどが例示でき、その他アニオンとしては、酢酸イオン、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオンおよび炭酸イオンなどが挙げられる。より具体的で好適な化合物としては、酢酸Ca、酢酸Mg、酢酸Zn、CaCl、CaBr、ZnCl、CaCO、Ca(OH)およびCaOなどが例示でき、特に好ましくは、酢酸Caである。
周期表の第II族の金属元素を含有する水溶液の温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。洗浄温度の上限については特に制限はないが、通常のオートクレーブを用いる場合には250℃程度が限界である。
かかる周期表の第II族の金属元素を含む水溶液の浴比は、重量比で乾燥PPS樹脂に対し、2〜100の範囲が好ましく選択され、4〜50の範囲がより好ましく、5〜15の範囲であることがさらに好ましい。
PPS樹脂を酸水溶液で洗浄処理する場合の具体的方法としては、以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸や塩などを除去するために、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
本発明における液晶ポリエステル樹脂とは、代表的には特開平2002−294039号公報などに記載された樹脂のように、サーモトロピック液晶ポリマーなどの、溶融状態でも結晶のような規則的構造を有する樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、サーモトロピック液晶ポリマーとして、芳香族ジオール、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等のモノマーから合成される、溶融時に液晶性を示す芳香族ポリエステルがあり、その代表的なものとしては、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)とテレフタル酸とビフェノールからなるタイプのもの、PHBと2,6−ヒドロキシナフトエ酸からなるタイプのもの、PHBとテレフタル酸とエチレングリコールからなるタイプのものが挙げられる。
本発明の上記液晶性ポリエステルの基本的な製造方法としては、従来公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。なお下記は、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸からなる液晶性ポリエステルの合成を例にとり説明したものであるが、共重合組成としてはこれらに限定されるものではない。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
なかでも上記(2)のp−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法が好ましい。さらに、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンの合計使用量とテレフタル酸およびイソフタル酸の合計使用量は、実質的に等モルである。無水酢酸の使用量は、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンのフェノール性水酸基の合計の1.15当量以下であることが好ましく、1.12当量以下であることがより好ましく、下限については1.10当量超であることが好ましい。
本発明の液晶性ポリエステルを脱酢酸重縮合反応により製造する際に、液晶性ポリエステルが溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、無水酢酸を攪拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し水酸基をアセチル化させた後、液晶性ポリエステルの溶融温度まで昇温し、次いで減圧により重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。アセチル化させる条件は、通常130〜300℃の範囲、好ましくは135〜200℃の範囲で通常1〜6時間、好ましくは140〜180℃の範囲で2〜4時間反応させる。重縮合させる温度は、液晶性ポリエステルの溶融温度、例えば、250〜350℃の範囲であり、好ましくは液晶性ポリエステルの融点+10℃以上の温度である。重縮合させるときの減圧度は通常13Pa〜2660Paであり、好ましくは1330Pa以下、より好ましくは670Pa以下である。なお、アセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いが、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。
重合終了後、得られたポリマーを反応容器から取り出すには、ポリマーが溶融する温度で反応容器内を、例えばおよそ0.1MPaに加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ好ましい。
本発明の液晶性ポリエステルを製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、本発明の液晶性ポリエステルのポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下、または、減圧下、液晶性ポリエステルの融点−5℃〜融点−50℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するための有利な方法である。
液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
本発明における熱可塑性樹脂組成物(A)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂と液晶ポリエステル樹脂を100重量部として、液晶ポリエステル樹脂を70〜30重量部含有しており、このましくは60〜40重量部、より好ましくは55〜45重量部である。液晶ポリエステル樹脂の含有量が70重量部を越えると、未延伸シートの押出が困難になるばかりでなく、得られるフィルムは延伸処理を施しても裂けやすいフィルムとなる。液晶ポリエステルが30重量部未満であると、充分な耐熱性・熱変形率を満足するフィルムが得られない。
ポリアリーレンスルフィド樹脂と液晶ポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物(A)からなるフィルムは、ポリアリーレンスルフィド樹脂ペレットと液晶ポリエステル樹脂ペレットをあらかじめ乾燥した後、所望の分率となるようにブレンドして、直接溶融押出して未延伸シートを製膜しても良いが、最終的に得られるフィルムが高い耐熱性及び低熱変形率を達成するためには、ポリフェニレンスルフィド樹脂および液晶ポリエステル樹脂を、あらかじめ所望の重量分率となるように一軸あるいは二軸押出機で混練してそれぞれのドメインを微分散させたマスターペレットを製造し、それぞれの成分が所望の重量分率となるように、ポリアリーレンスルフィド樹脂ペレットあるいは液晶ポリエステル樹脂ペレットで希釈し、溶融押出しして所望の分率のフィルムを得る方法が好ましい。
熱可塑性樹脂(B)の融点は、240〜320℃であり、より好ましくは260℃〜315℃、さらに好ましくは270〜310℃である、融点が240℃未満であると、樹脂(A)との溶融温度差が大きすぎるため、共押出が困難となり、また、熱分解も大きくなる。一方、融点が320℃を越えると、熱可塑性樹脂(A)との共押出が困難となる。
本発明においては、最終的には、熱可塑性樹脂(A)からなる層と、融点240〜320℃の熱可塑性樹脂組成物(B)からなる層を剥離するため、熱可塑性樹脂(B)は熱可塑性樹脂組成物(A)と親和性が低いことが好ましい。また、(B)からなる剥離したフィルムは、廃棄するか回収して再利用できることが好ましい。また、廃棄する場合には、樹脂原料が低コストであることが好ましい。これらの観点から、熱可塑性樹脂(B)としては、ポリエステルが好ましく、少なくとも80モルパーセント以上がエチレンテレフタレートあるいはエチレンナフタレート単位からなるポリエステル組成物であることがより好ましく、さらに好ましくは90モルパーセント以上、もっとも好ましくは95モルパーセント以上がエチレンテレフタレートあるいはエチレンナフタレート単位からなるポリエステル組成物である。これらポリエステルの融点は、熱可塑性樹脂(A)の融点に近い方が好ましいため、なるべく融点が高いことが好ましいが、エチレンテレフタレートあるいはエチレンナフタレート単位が80モルパーセント未満であると、融点が熱可塑性樹脂(A)に対して低くなりすぎるため好ましくない。
本発明におけるポリエステルの製造方法は特に制限がなく、従来公知の溶融重合により製造することが出来る。すなわち、直接重合法でもエステル交換反応法でも製造することができ、バッチ式でも連続重合法でも製造することができる。
本発明のポリエステルの製造触媒は、特に限定されるものではなく、従来公知の触媒を用いることができる。エステル交換反応に有効な触媒としては、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の他、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、酢酸スズ、アルコキシドチタンなどを用いることができる。また、重合触媒としては、三酸化二アンチモン、二酸化ゲルマニウム、アルコキシドチタンなどの他、アルミ・シリカ・チタンなどを構成成分として含む複合酸化物などを用いることができる。また、安定剤として、リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェートなどの各種リン化合物を添加することが好ましい。該リン化合物の添加時期は、エステル化反応後あるいはエステル交換反応後から重縮合反応の初期に添加することが好ましい。
本発明におけるポリエステルは、フィルムに易滑性を与える目的で各種不活性粒子を含有することができる。これら不活性粒子としては、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、などの酸化物無機粒子、金、銀、銅、鉄、白金等の無機金属粒子、架橋ポリスチレン、架橋ジビニルベンゼンなどに代表される有機粒子、その他炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、硫酸バリウムなどの粒子を挙げることができる。これら粒子は、ポリエステルの重縮合における任意の工程、好ましくはオリゴマーから重縮合工程に移行する前に反応系に添加されることが分散性向上の観点から好ましい。また、粒子は、水あるいはエチレングリコールなどのポリエステルモノマー化合物を分散媒として添加されることが好ましい。また、これら粒子を、ベント孔つき二軸押出機を用いて、あらかじめ得られたポリエステルに混練分散しても構わない。また、ポリエステルの重縮合触媒に起因して重縮合過程において生成する、いわゆる内部粒子を含有しても構わない。
また、本発明のポリエステルは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤、着色剤などの各種添加剤を、ポリエステルおよび本発明のフィルムの物性を損なわない範囲で添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、延伸を施すことにより、さらに機械強度・耐熱性および熱変形率の低減を図ることができるが、本発明においては、熱可塑性樹脂(A)と(B)からなる積層未延伸フィルムを、積層フィルムのまま延伸装置に供して延伸を行い、しかる後に熱可塑性樹脂(B)からなる層を剥離して熱可塑性樹脂(A)からなる延伸フィルムを得る。熱可塑性樹脂(A)の未延伸フィルムは、液晶ポリエステルが押出方向に配向しているため、押出方向に非常に裂けやすい傾向があるため、もし熱可塑性樹脂(B)からなる層が積層されていない状態で延伸を行う場合、フィルム破れが頻発し、生産性に劣る。
本発明の製造方法により得られる、熱可塑性樹脂(A)からなるフィルムは、少なくともフィルム面に対する一方向の熱変形率が20ppm/℃未満であることが好ましく、より好ましくは15ppm/℃未満である。熱変形率が20ppm/℃以上であると、銅箔と張り合わせて回路基板用途として用いる場合には、ハンダ浴に付けた場合に、銅箔との熱変形率差が大きくなりすぎるため、反り返ったり、銅箔が剥離するなどの問題を引き起こす。なお、ここでいう熱変形率とは、60〜200℃まで、20℃/分の速度で温度を変化させた場合の、フィルムの変形あるいは収縮率の平均値の絶対値であり、[60〜200℃の総変位量]/[試験前のサンプル長]×10/140で求められる値である。
また、フィルムの延伸は、縦一軸延伸、横一軸延伸、縦横逐次二軸延伸、縦横同時二軸延伸いずれでも構わないが、縦・横方向の熱変形率の値のバランスがとれたフィルムを得るためには、横一軸延伸フィルムであることが好ましい。
また、延伸倍率は、横1.2〜3倍であることが好ましく、より好ましくは1.5倍〜2.5倍であることが好ましい。横一軸延伸倍率が1.2倍未満、あるいは3倍を越えると、熱変形率が±20ppmを越えてしまう。
本発明の製造法により得られるフィルムのハンダ耐熱温度は、240℃以上であることが好ましく、よりこのましくは250℃以上である。ハンダ耐熱温度が240℃未満であると、回路基板用途に用いる場合には、ハンダリフロー時の熱変形を引き起こすため好ましくない。なお、ハンダ耐熱温度とは、JIS C5013に従い、ハンダ浴にサンプルを浸漬し、サンプルの外観変化のない最高温度を指す。
以下に本発明のフィルム製造方法の一例を、横一軸延伸により製造する方法を例示するが、逐次二軸延伸法でも、同時二軸延伸法でも良く、さらにはこれらの方法に限定されるものではない。
ポリアリーレンスルフィドおよび液晶ポリエステル樹脂を所望の重量分率含有するフィルムを得るにあたっては、これら樹脂を所望の重量分率となるよう計量して乾燥し、溶融押出して直接未延伸フィルムを製造しても構わないが、よりポリアリーレンスルフィドおよび液晶ポリエステルが均一に分散したフィルムを得るためには、あらかじめ二軸押出機でこれら樹脂を強い剪断力をかけて混練・微分散したマスターペレットとすることが好ましい。
マスターペレットの製造方法を以下に述べる。ポリアリーレンサルファイドは特に乾燥しなくても構わないが、表面の吸着水を除去する目的で乾燥しても構わない。まず、ポリアリーレンスルフィドを、結晶化温度以上融点以下の温度で乾燥する。例えばポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンサルファイド(PPS)である場合は、好ましくは140〜200℃の温度で2〜5時間減圧乾燥する。また、液晶ポリエステル樹脂は明確な結晶化温度を持たないことが多いが、PPSと同程度の乾燥条件で乾燥すればよく、やはり好ましくは140〜200度の温度で2〜5時間乾燥する。乾燥後の水分率は好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下である(重量基準)。
乾燥したポリアリーレンスルフィドと液晶ポリエステル樹脂をブレンドし、270℃〜320℃に加熱されたベント式二軸押出機に供給する。マスターペレット製造時のポリアリーレンスルフィドと液晶ポリエステル樹脂の重量分率は、未延伸フィルム溶融押出時にポリアリーレンスルフィドあるいは液晶ポリエステル樹脂で希釈して押し出さない場合には特に制限されるものではない。未延伸フィルム溶融押出時に、マスターペレットをそのまま用いる場合には、液晶ポリエステル樹脂の重量分率が70〜30重量部、好ましくは60〜40重量部、より好ましくは55〜45重量部となるように二軸押出機に供給する。二軸押出機のスクリュー構成は、パドルやダルメージなどからなるニーディングゾーンを備えていることが好ましい。剪断速度は50〜400sec−1が好ましく、より好ましくは100〜300sec−1である。剪断速度が50sec−1以下であると十分な分散状態が得られず、剪断速度が300sec−1を越えると、剪断発熱の発生などにより温度制御が困難となるばかりでなく、ポリマーの分解を引き起こす可能性がある。混練ポリマーの滞留時間は0.5〜10分であることが好ましく、より好ましくは1〜5分である。滞留時間が0.5分未満であると十分な分散状態が得られず、10分を越えるとポリマーの分解を引き起こす可能性がある。また、この混練工程において分散剤を共に配合・分散させるとポリアリーレンスルフィドおよび液晶ポリエステルの分散性が向上するので好ましい。
一方、熱可塑性樹脂(B)として、ポリエステルを用いる場合には、やはり予め結晶化温度以上融点以下の温度で乾燥を施すことが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、140〜200度の温度で2〜5時間乾燥する。
本発明においては、フィルム構成を、熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層と熱可塑性樹脂組成物(B)からなる層の、少なくとも2層以上の積層構成とするため、2台の押出機で2層以上の積層用マニホールド又は合流ブロックを用いて溶融状態の2種の樹脂を積層し、シート状に押し出し、10〜50℃に冷却されたキャスティングドラム上で、ドラムを一定速度で回転させながら、静電印加法により密着固化し、積層未延伸フィルムを得る。合流ブロック方式を用いる場合は、ポリマー合流部分を矩形のものとすることが好ましい。マスターペレット中のポリアリーレンスルフィド成分および液晶ポリエステル成分の含有量が、最終的に所望するフィルム中の含有量と異なる場合には、押出機に供給する際に、ポリアリーレンスルフィドのペレットあるいは液晶ポリエステル樹脂のペレットとあらかじめブレンドして供給し、所望の組成比の熱可塑性樹脂組成物(A)からなるフィルムを得ることができる。
該未延伸フィルムにおいて、溶融状態のポリマーを口金から押し出す場合のドラフト比(=口金リップポリマ流速/キャスティングドラム上のフィルム(ポリマー)流速)は1〜10と低めに設定することが、本発明のフィルムを得る上で好ましい。ドラフト比が10を越える場合は、フィルムの縦裂けを引き起こしやすくなるばかりでなく、フィルムの面方向に対する熱変形率のバランスが悪化する。
次にこの未延伸フィルムを延伸し、配向せしめる。
延伸方法としては、逐次二軸延伸法あるいは同時二軸延伸法も可能であるが、フィルムの面方向に対してバランスのとれた熱変形率を実現するためには、横一軸延伸を用いるのが好ましい。幅方向の延伸は、公知のテンターを用いて、90〜160℃、好ましくは100〜150℃の延伸温度で1〜3倍、好ましくは1.5〜2.5倍、幅方向の延伸速度は1000〜30000%/分の範囲で行うことがよい。幅方向の延伸条件をこの範囲とすることは、本発明の効果を有効に得るために特に好ましい。次にこの延伸フィルムを熱処理する。この場合の熱処理温度は180〜250℃、特に200〜220℃で行うことが有効である。熱処理の時間は、1〜20秒の範囲が好適である。また、さらに熱処理工程後に100〜160℃の中間冷却および弛緩処理を行ってもよい。弛緩処理の倍率は、幅方向及び/または長手方向に2〜10%であることが好ましく、より好ましくは4〜9%である。
なお、長手方向にも延伸する逐次二軸延伸を行う場合には、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法が、延伸破れなく本発明フィルムを得るために有効である。長手方向の延伸は、通常ロールを用いて行われるが、延伸温度は80〜150℃、好ましくは90〜120℃である。長手方向の延伸は、1段もしくは2段階以上の多段階で行い、2〜8倍、好ましくは2.5〜7倍の範囲で延伸することが好ましい。
こうして延伸されたフィルムは、両端部をスリットし、熱可塑性樹脂(B)からなるフィルムを剥離して熱可塑性樹脂(A)からなるフィルムを製品として巻き取る。熱可塑性樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートである場合には、剥離したフィルムは回収し、採用有して再度熱可塑性樹脂(B)の一部としてリサイクルする事も可能であり、また、繊維や他の成型品として再利用したり、加水分解することにより原料としてケミカルリサイクルすることも可能であり、経済的であり、環境負荷も低いため好ましい。
こうして得られた、熱可塑性樹脂(A)からなるフィルムは、耐熱性に優れ、熱変形率の低いフィルムであり、銅箔と張り合わせて用いる回路基板用途として特に好適である。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)製膜安定性
製品フィルムの巻き取りを開始してから、フィルムに破断が生じるまでの巻き取り製品フィルムの長さL(m)で判定した。判定基準は下記とした。
・ :L>200
・ :100<L≦200
× :L≦100。
(2)熱変形係数α(ppm/℃)
幅5mmにサンプルを切り出し、恒温恒湿槽(大栄化学製PKL−50D)にセットされた定荷重伸び試験機(日本自動制御(株)定荷重伸び試験機)でチャック間距離を150mmになるようにサンプルを挟み込み、65RH%中で昇温速度2℃/minで30〜260℃まで昇温したときの、60℃〜200℃(△=140℃)までの変形量の平均傾きの絶対値から求めた。ASTM D696に準じる。α=|(△L/L)/△|で求め、単位は10-6/℃すなわちppm/℃である。これを、フィルムの長手方向(αMD)および幅方向(αTD)それぞれについて求めて評価した。
(3)耐ハンダ性
JIS C5013に従い、ハンダ浴にサンプルを浸漬し、サンプルの外観変化のない最高温度を求める。この温度が高い方が耐ハンダ性に優れている。
単位は℃とした。
参考例1
液晶ポリエステル樹脂(LCP)の製造
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸839重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル381重量部、ハイドロキノン97重量部、テレフタル酸287重量部、イソフタル酸199重量部および無水酢酸1364重量部(フェノール性水酸基合計の1.12当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら155℃で2時間反応させた後、310℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を310℃に保持し、1.0時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例2
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)の製造
ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール65重量部を、還留塔およびコンデンサーを備えた反応容器に仕込み、150℃で溶融した後、酢酸マグネシウム0.06重量部を仕込み、攪拌しながら250℃まで徐々に昇温し、メタノールを理論留出量に達するまで留出させる。さらに、3酸化2アンチモン0.04重量部、リン酸トリメチル0.03重量部を添加し、反応缶内を徐々に減圧させながら290℃まで昇温させ、所定のトルクに達したらガット上にして水槽で冷却し吐出、カッティングしてPETのチップを得た。
参考例3
ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂(PEN)の製造
ジメチル−2,6−ナフタレート130重量部、エチレングリコール65重量部を、還留塔およびコンデンサーを備えた反応容器に仕込み、160℃で溶融した後、酢酸マグネシウム0.06重量部を仕込み、攪拌しながら250℃まで徐々に昇温し、メタノールを理論留出量に達するまで留出させる。さらに、3酸化2アンチモン0.04重量部、リン酸トリメチル0.03重量部を添加し、反応缶内を徐々に減圧させながら295℃まで昇温させ、所定のトルクに達したらガット上にして水槽で冷却し吐出、カッティングしてPENのチップを得た。
実施例1
参考例1で得たLCP50重量部とPPS樹脂(東レ(株)ライトン T1881)50重量部を、それぞれ150℃、133Pa以下の減圧化で4時間乾燥した。これら樹脂を、280〜320℃に加熱された二軸三段タイプのスクリュー(LCPとPPSの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相容化ゾーンの構成)を具備したベント式二軸押出機(L/D=40、ベント真空度200Pa)に供給し、滞留時間3分にて溶融押出し、LCP/PPSの重量分率が50/50である熱可塑性樹脂組成物(A−1)のマスターポリマーを得た。こうして得られたA−1と、参考例2で得られたPETを、それぞれ150℃、133Pa以下の減圧下で4時間乾燥した。
一方、副層/主層/副層の三層合流ブロックからなるT−ダイ口金を備え、主層用と副層用2つの押出機を備えた溶融押出複合製膜機を、280〜320℃に昇温させ、この主層押出機に、乾燥したA−1を、副層に乾燥したPETを供給し、T−ダイから膜状に押し出して、キャスティングドラム上20℃で冷却し、積層比1:8:1、層厚み100μmの未延伸積層フィルムを得た。
この未延伸積層フィルムを、100℃に加熱したテンターに導き、横方向のみに延伸倍率2.0倍で延伸後、240℃で熱処理を施した。
さらにフィルムの両端をスリットし、副層のPETフィルム層を剥離・回収後、主層のA−1からなるフィルムを製品として得た。結果を表に示す。
実施例2〜7
主層に供給するLCPとPPSのマスターポリマー化時の重量分率、および延伸倍率を表中の値とする他は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。結果を表に示す。横方向の延伸倍率が3倍を越えると、延伸中に破断しやすい傾向が見られ、熱変形率も悪化した。また、延伸倍率が1.2倍においても熱変形率は悪化する。また、LCPの含有率は30重量部まで低くなると、熱変形率は好ましい範囲の上限である20ppmとなるので、LCP含有量は30重量部以上が好ましい。
比較例1、2
副層には主層と同じLCP/PPSのアロイA−1を供給し、事実上A−1からなる単膜として溶融押出し、延伸を試みたが、フィルムの破断が収まらず、製品を回収することができなかった。
また、LCP濃度を80重量部とすると、延伸が困難となり、やはり均一な製品を採取できなかった。
Figure 2007090540
本発明は、高耐熱・低熱変形率を備える優れたフィルムを低コストで製造する方法に関するものである。本フィルムは電気絶縁用、コンデンサ用、包装用、インクリボン用、回路基板用などの各種工業材料用として広く活用でき、特に回路基板用フィルムとして好適である。

Claims (7)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂と液晶ポリエステル樹脂を100重量部として、液晶ポリエステル樹脂を70〜30重量部含有してなる熱可塑性樹脂組成物(A)を、口金から溶融押出して未延伸シートを作成する際に、融点240〜320℃の熱可塑性樹脂組成物(B)を共押出して、少なくとも(A)、(B)の2層からなる未延伸積層フィルムとする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂(B)の80モルパーセント以上がエチレンテレフタレートあるいはエチレンナフタレート単位からなるポリエステル組成物である請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  3. 請求項1により得られた未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に配向して積層延伸フィルムを得る熱可塑性樹脂延伸配向フィルムの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られる積層フィルムより、熱可塑性樹脂(B)からなる層を剥離して熱可塑性樹脂(A)からなるフィルムを得る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  5. 請求項4記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により得られる熱可塑性樹脂フィルム。
  6. フィルム面に対して少なくとも一方向の熱変形係数が20ppm/℃未満である請求項5に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  7. 回路基板用である請求項6に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
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