JP5594005B2 - 二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents

二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池用材料、電気絶縁材料、成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料などに好適に用いられるカーボンブラックが内部に分散された二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)は、耐熱性、耐加水分解性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有している。近年、フィルム化されたPPSが各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などへ適用されている。
ところで近年、地球温暖化の原因となる石油エネルギーに代わるエネルギー手段として、太陽電池が注目を浴びており、太陽電池の効率を向上させるための要求も高まっており、自然環境に対する耐久性(耐候性)向上も要求されているが、公知のPPSフィルムはフィルムが劣化するなどでその適用が困難であった。またPPSフィルムは靱性が不足しており加工時に曲げなどを必要とする給湯器モーター用電気絶縁材料や、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料用途や金型を加熱し圧空および真空法などを施す成型材料などでは加工時に割れが生じることがあり、その適用には限界があった。
このような課題を解決するために、例えば、特許文献1ではポリフェニレンスルフィドにカーボンブラックを添加し耐候性の向上を行う提案がされているが、該フィルムは破断伸度が低く靱性が不足しており、加工時に曲げなどを必要とするモーター用電気絶縁材料や金型成型材料などでは加工時に割れが生じ安く、機械特性としては不十分であった。また、改善されたとはいえ耐候性のレベルも十分とはいえなかった。他方、特許文献2ではポリフェニレンスルフィドに粒子としてカーボンブラックを添加して二軸配向させたフィルムが提案されているがカーボンブラックは滑材用粒子として利用されるだけであって、滑材である以上一定の大きさが要求されるため、耐候性の改善としても不十分であり、また、靱性などの機械特性の改善としても不十分であった。
特開昭59−100139号公報 特開2002−20508号公報
本発明の課題とするところは、優れた耐候性を有し、靱性などの機械特性が改良された二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供するところにある。
上記課題を達成するため、本発明は、次のような構成を有する。すなわち、ポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性樹脂にカーボンブラックを0.1重量%〜10重量%含有したフィルムであって、該フィルム中にカーボンブラックが平均二次粒子径50nm〜900nmで分散していることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを骨子とする。
本発明によれば、耐候性が向上し、靱性などの機械特性が改善されたポリアリーレンスルフィドフィルムを得ることができる。機械特性が改善されることで成形加工性も改善され、太陽電池用材料、電気絶縁材料、成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料など各種工業材料用フィルム、詳しくは太陽電池バックシート用、各種モーターに用いられる電気絶縁材料、金型による成型材料など多くの用途に好適に使用できる。
以下、本発明の二軸配向積層フィルムについて説明する。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは平均二次粒子径50〜900nmのカーボンブラックが分散されている。好ましいカーボンブラックの平均二次粒子径は80〜700nm、さらに好ましくは100〜500nmである。カーボンブラックを平均二次粒子径50〜900nm範囲で分散せしめることでPPS本来の耐熱性、耐薬品性、電気特性などを維持しながら、延伸されたフィルムとすることと相まって格段に耐候性や機械特性が改良され、特に引張破断伸度の著しい向上をはかることができる。その結果、耐候性と成形加工性の優れたフィルムとできる。カーボンブラックの平均二次粒子径が50nm未満であると、機械特性の改善による成形加工性を付与できないことがある。また、平均二次粒子径が900nmより大きいと、耐候性の向上が不十分であったり、引張破断伸度は小さく成形加工性としても不十分であり、また、延伸中にフィルム破れが発生したりすることがある。
本発明の作用は必ずしも明らかではないが、次のように推定している。つまり、ポリアリーレンスルフィドは延伸工程中、カーボンブラックを基点に縦あるいは横に延伸され、その結果ポリアリーレンスルフィドの分子鎖の配向がいっそう高まり、未延伸である場合よりも耐候性が飛躍的に向上し、また、破断伸度が改善される。カーボンブラックが高度に分散された態様であるときその効果は一層顕著に表れたフィルムを得ることが可能となる。
本発明でいうカーボンブラックの平均二次粒子径は、次のように求められる。フィルムを(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断した面のそれぞれでカーボンブラックの平均二次粒子径を求め、これらを平均して求める。(ア)〜(ウ)の各面における二次粒子径の測定は、超薄切片法で作製された試料を透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、任意の倍率(通常1万倍程度である)で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、必要に応じて、画像処理を行う。上記(ア)〜(ウ)の各面毎に任意の100個のカーボンブラック相(画面中、他のカーボンブラックとはつながっておらずにフィルム中に存在する一次粒子または一次粒子が互いにつながって形成された凝集体(二次粒子))について、最長径(la)と最長径の軸に直交する軸における径(lb)との平均値{(la+lb)/2}を二次粒子径としてそれぞれ測定し、その平均値を各面での平均二次粒子径とする。
カーボンブラックは、耐候性および機械特性をより一層優れたものとできるので、フィルム中にはポリアリーレンスルフィド樹脂とカーボンブラックとの和を100重量%とした場合にカーボンブラックが0.1〜10重量%含。下限としては1重量%以上であることが特に好ましい。また、上限としては、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。カーボンブラックの含有量が少ないとき、耐候性の向上および機械特性の改良効果が得られ難い場合があり、多いときには粗大な粒子が発生しやすく、製膜性に悪影響が発生する場合がある。
本発明に用いるカーボンブラックの種類としては、その製造方法によって区別されファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなどが例示でき、なかでも、アセチレンブラックやファーネスブラックは一次粒子径が小さく、ポリアリーレンスルフィド中に二次粒子として適度なサイズで分散し、ポリアリーレンスルフィド分子鎖の延伸配向を高める作用が機械特性の改良に有利であるので好ましい。他方、サーマルブラックは一次粒子径が比較的大きいものが多く、またケッチェンブラックは一次粒子がブドウ房状に連なり凝集しやすいなどの特徴から、ポリアリーレンスルフィド樹脂へ分散させた場合において平均二次粒子径が大きくなやすく、本発明の効果を得られ難い場合がある。これらカーボンブラックは、1種類あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に用いるカーボンブラックのDBP(n−ジブチルフタレート)吸油量は、好ましく30〜400ml/100g、より好ましくは80〜350ml/100g、さらに好ましくは100〜300ml/100gである。DBP吸油量が低すぎるカーボンブラックを用いると、粗大粒子が発生しやすく機械特性の改善に不利であったり、製膜時の延伸工程で破れが発生する場合がある。他方、DBP吸油量が高すぎる場合は、フィルムが導電性を持つことが多く絶縁用途に用いることができないなど用途に制限が生じることがある。勿論、DBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックを組み合わせて使用することもできる。
DBP吸油量は、カーボンブラック100g当りに包含される油のml数であり、常法に従って、ジブチルフタレートアブソープトメータを用いて測定することができる。より具体的に、DBP吸油量は、ASTM D2414に規定された方法に従って測定することができる。測定装置(Absorptometer)のチャンバー内にカーボンブラックを入れ、該チャンバー内に、一定速度でDBPを加える。DBPを吸収するに従い、カーボンブラックの粘度は上昇するが、その粘度がある程度に達した時までに吸収したDBPの量に基づいてDBP吸油量を算出する。
本発明に用いるカーボンブラックの平均一次粒子径(d50;電子顕微鏡測定)は、100nm以下であることが望ましい。好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。平均一次粒子径が100nmを越える場合には粗大粒子が発生しやすく、機械特性の改善および耐候性の向上効果が得られ難い場合がある。下限については特に限定はないが、入手が容易であることから10nm以上のものを用いることが一般的である。
本発明において、カーボンブラックをポリアリーレンスルフィドに含有せしめる時期は、特に限定されないが、ポリアリーレンスルフィドとカーボンブラックの混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。予備溶融混練を行うと高い分散性を実現できるので、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法が好ましく例示される。特に、溶融押出前に、ポリアリーレンスルフィドとカーボンブラックの混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましい。もちろん本発明の効果を阻害しない範囲において、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステルおよびワックスなどの有機滑剤などが含有されていてもよい。
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドとは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される構成単位などが挙げられる。
Figure 0005594005
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
アリーレン基としては、フェニル基が好ましく、上式において代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリ−レンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示され、ポリマーの主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上含む樹脂を用いることが好ましい。かかるp−フェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性および誘電特性などを損なうことがある。
Figure 0005594005
上記PPSにおいて、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エ−テル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリ−ル単位、ビフェニル単位、タ−フェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記の構造単位を挙げることができる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
Figure 0005594005
実質的にp−フェニレンスルフィドのみからなるPPS、もしくは3官能成分が1モル%以下添加され99モル%以上がp−フェニレンスルフィドからなるPPSがフィルム原料としてコスト、製膜性、特に高温でのフィルム性能などの観点から最も好ましい。なお、この場合、得られるPPSの融点は280〜290℃、ガラス転移温度は90〜95℃に観察される。
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度310℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜2000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。
ポリアリーレンスルフィドは種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
具体的にPPSの製造法を例に挙げて説明すると、PPSは、例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマを冷却し、ポリマを水スラリーとしてフィルターで濾過して、粒状ポリマを得る。これを酢酸もしくは酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPSの粉末を得る。この粉末を酸素分圧10ト−ル以下、好ましくは5ト−ル以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5ト−ル以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマは、実質的に線状のポリマであるので、安定した延伸製膜が可能になる。もちろん必要に応じて、他の高分子化合物や酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルクおよびカオリンなどの無機や有機化合物や熱分解防止剤、熱安定剤および酸化防止剤などを添加することもできる。
本発明において、ポリアリーレンスルフィドは、空気中で加熱して架橋/高分子量化を行ったり、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理を行ったり、有機溶媒、熱水および酸水溶液などで洗浄し、酸無水物、アミン、イソシアネ−トおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物を用いての活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
本発明のフィルムは二軸配向されていることが必要である。前記のようにカーボンブラックが含有され、二軸配向フィルムとされることで耐候性が向上し、かつ機械特性を改良させることができる。また、機械特性の1つである破断伸度が改良されることで優れた成形加工性を獲得できる。未配向のフィルムであるか、所定のカーボンブラックが含有されていない場合、モーターなどの電気絶縁材料用途や金型を加熱し圧空および真空法などを施す成型材料などでは加工時に割れが生じ易く、他方、屋外に暴露される環境下で使用する太陽電池用途などでは耐候性が不十分となるため、フィルムが劣化しやすい。フィルムの配向性は超音波の伝搬速度から求める方法があり、例えば、野村商事(株)製のSONIC SHEET TESTER(SST)を用いて、フィルムの配向を測定することができる。本発明のフィルムの長手方向および幅方向における超音波の伝搬速度の平均値は1.3〜2.5km/secであることが好ましく、より好ましくは1.4〜2.4km/sec、さらに好ましくは1.5〜2.3km/secである。超音波の伝搬速度が2.5km/secを越える場合、フィルム製造時に延伸倍率を極めて高める必要があり、破れなどが生じやすくなる。二軸配向は例えば、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法によって可能である。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムはフィルム面方向の少なくとも1つの方向において、F40値が150MPa以上であることが好ましく、より好ましくは170MPa以上、さらに好ましくは190MPa以上である。上限は特に限定されないが余りに高めると成形加工性が損なわれる場合があり220MPa以下とする程度が適当である。F40値が150MPa未満である場合には、耐候性の向上効果が不十分となり、長期間屋外で使用される太陽電池のような用途ではフィルムの劣化により使用できないおそれがある。F40値を前記好ましい範囲内とするには、例えば、カーボンブラックの種類、含有量およびフィルム中の平均二次粒子径を本発明の好ましい範囲内となるように調節し、延伸倍率として長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)に3.4〜4.5倍の範囲で、面積倍率(MD方向の倍率とTD方向の倍率の積)としては、12倍以上、20倍以下とすることにより達成できる。面積延伸倍率が12倍未満の場合、分子鎖の配向性が弱く屋外においておくと分子鎖緩和の進行が早くなりやすいため耐候性の向上効果が損なわれる場合がある。他方、面積延伸倍率が20倍を超える場合、破れやすくなり生産性に影響が出ることがある。
また本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムはフィルム面方向の少なくとも1つの方向において200℃雰囲気下の引張試験でのF100値が50MPa以下であることが好ましく、より好ましくは40MPa以下である。下限は特に限定されないが生産性の点から20MPa程度とすることが一般的である。フィルムの少なくとも片方向における200℃雰囲気下の引張試験でのF100値が50MPa以上である場合には、加工時に曲げなどを必要とする給湯器モーター用電気絶縁材料や、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料用途や金型を加熱し圧空および真空法などを施す成型材料などでは加工時に割れが生じ易くなり、成形加工性を得られ難くなる。200℃雰囲気下の引張試験でのF100値を好ましい範囲内にするには、カーボンブラックの種類、含有量およびフィルム中の平均二次粒子径を本発明の好ましい範囲内となるように調節し、製膜時の延伸倍率は長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)に2.5〜3.4倍の範囲で、面積倍率(MD方向の倍率とTD方向の倍率の積)7倍以上、12倍未満とすることにより達成できる。面積延伸倍率が7倍未満の場合、製膜工程において延伸による分子鎖配向が不十分となり、後工程の熱処理後に平面性の悪化したフィルムとなる場合がある。他方、面積延伸倍率が12倍以上の場合、フィルムの破断伸度が低下するため加工性向上の効果が得られ難い場合がある。さらに延伸後のフィルムを緊張下で熱固定する場合においても、1段工程の熱処理を施すより、熱処理温度の異なる2段以上の工程で行い、その1段目の熱処理温度を(直前の延伸温度+5℃)〜240℃とし、後段の熱処理温度の最高値を200℃以上もしくは(1段目の熱処理温度+20℃)以上、(フィルムを構成するポリアリーレンスルフィドの融点−5℃)以下とすることが機械特性改善の観点で好ましい。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは少なくとも面内の一方向の室温における引張破断伸度が50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上である。上限は特に限定されないが200%とするものである。破断伸度が50%未満である場合は靱性が不足し、例えばモーター用電気絶縁材料に適した成形加工性が得られ難い場合がある。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは少なくとも面内の一方向の200℃雰囲気下における引張破断伸度が100%以上であることが好ましく、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは140%以上である。200℃雰囲気下の破断伸度が100%未満である場合は靱性が不足し例えば金型を加熱し圧空および真空法などを施す成型材料に適した成形加工性が得られ難い場合がある。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは体積固有抵抗が1×1014Ω以上であることが好ましい。体積固有抵抗が1×1014Ω未満である場合には絶縁性が不十分となり、太陽電池用材料、電気絶縁材料として用いた場合に信頼性に劣ることがある。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、滑り性の改良や耐摩耗性や耐スクラッチ性を付与などのために有機または無機の粒子を含有させることができる。粒子としては例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナやジルコニアなどの無機粒子やシリコーン粒子、架橋アクリル粒子や架橋ポリスチレン粒子などの有機粒子などの不活性粒子を例示でき、またポリマーの重合時に酢酸カルシウムや酢酸リチウムなどを使用し、ポリマーの重合過程で粒子を析出させることも可能である。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの厚みは、目的に応じて適宜決定できるが、各種工業材料用フィルムに用いられる観点から10μm以上、500μm以下であり、好ましくは、15μm以上、350μm以下である。フィルムの厚みが10μm未満では、フィルム全体の強度が不足しハンドリング性が悪化したり、一方、500μmを越えると、フィルムが堅くなり加工が困難となりやすい。例えば、給湯器モーター用電気絶縁材料や、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料用途や金型を加熱し圧空および真空法などを施す成型材料などは曲げなどの加工を施すためフィルムのコシが必要な観点から50μm以上、350μm以下である。また、太陽電池モジュールの薄膜化などから太陽電池バックシート用フィルムは10μm以上、100μm以下である。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、本発明の目的を阻害しない範囲において、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行うことができる。
さらに本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは成形加工性の観点からポリアリーレンスルフィドとカーボンブラックを含む熱可塑性樹脂を表層部(A層)として積層されたものとすることが望ましく、ポリエステル(a)とポリイミド(b)とを含む熱可塑性樹脂からなる基層部(B層)とするA層//B層//A層の積層構造を有することが好ましい。なおここで、A層とB層との間には本発明の目的を阻害しない範囲においてリアリーレンスルフィドとカーボンブラックを含む熱可塑性樹脂およびポリエステル(a)とポリイミド(b)とを含む熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂による層が形成されていても良い。
係る積層構造の形成は、予めポリアリーレンスルフィドとカーボンブラックを含む熱可塑性樹脂からなるフィルムとポリエステル(a)とポリイミド(b)とを含む熱可塑性樹脂からなる二軸配向フィルムを作製し、その後、接着剤層を用いて接着し、若しくは、熱ラミネートにより熱圧着して形成する方法やポリアリーレンスルフィドとカーボンブラックを含む熱可塑性樹脂とポリエステル(a)とポリイミド(b)とを含む熱可塑性樹脂を共押出して形成する方法が挙げられるが、本発明においては、両熱可塑性樹脂の溶融粘度特性が共押出可能な範囲にあるのであれば、共押出法によることが望ましい。
ここでポリエステル(a)とは、ジオールとジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体の縮重合により得られる構造単位が少なくとも80重量%含有される共重合体あるいはエステル形成性誘導体が縮重合された高分子の混合物である。ジカルボン酸とは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4、4’−ジフェニルジカルボン酸、3、3’−ジフェニルジカルボン酸、などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1、3−アダマンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体などで代表されるものであり、また、エステル形成性誘導体とは、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチルなどである。一方、ジオールとは、エチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノールなど、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族、脂環式ジオールクロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4’−ジヒドロキシビフェニル、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、p−キシレングリコールなどの芳香族ジオールなどをあげることができる。また、上記の酸成分、グリコール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度で用いることができる。ポリエステルの具体的としては、例えば、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを挙げることができる。勿論、これらのポリエステルは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、コポリマーの場合、共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分、ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸成分を含有していても良い。
本発明の場合、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、および、これらの共重合体が好ましく、中でもエチレンテレフタレート単位を少なくとも70モル%以上含有するポリエチレンテレフタレート共重合体若しくはポリエチレンテレフタレートが本発明の効果発現の観点から特に好ましい。
本発明において、ポリイミド(b)とは、環状イミド基を含有する溶融成形性のポリマーであり、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリエーテルイミドが好ましく用いられる。
このようなポリエーテルイミドとしては、例えば、米国特許第4141927号明細書、日本特許第2622678号公報、同特許第2606912号公報、同特許第2606914号公報、同特許第2596565号公報、同特許第2596566号公報、同特許第2598478号公報などに記載のポリエーテルイミド、日本特許第2598536号公報、同特許第2599171号公報、同特開平9−48852号公報、同特許第2565556号公報、同特許第2564636号公報、同特許第2564637号公報、同特許第2563548号公報、同特許第2563547号公報、同特許第2558341号公報、同特許第2558339号公報および同特許第2834580号公報に記載のポリマーが挙げられる。
また、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、ポリイミドの主鎖に環状イミドとエーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位およびオキシカルボニル単位等が含有されていても良い。
また、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミドとエーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位およびオキシカルボニル単位等が含有されていても良い。
本発明で好ましく使用できるポリエーテルイミドの具体例としては、下記一般式で示されるポリマーを例示することができる。
Figure 0005594005
ただし、上記式中、Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基であり、Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。また、上記R、Rとしては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
Figure 0005594005
本発明では、熱可塑性樹脂との相溶性および溶融成形性の観点から、ガラス転移温度が好ましくは350℃以下、より好ましくは250℃以下のポリエーテルイミドが好ましく、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物およびこれらの共重合体ならびに変性体が、熱可塑性樹脂との相溶性、コストおよび溶融成形性等の観点から最も好ましい。このポリエーテルイミドは、ジーイープラスチックス社製で市販されており、「Ultem1000」、「Ultem5000」および「Ultem6000」シリーズの登録商標名で知られているものである。
Figure 0005594005
または
Figure 0005594005
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの基層部(B層)におけるポリエーテルイミドの含有量は、基層部(B層)全体に対して1〜50重量%であることが好ましく、耐熱性および耐候性を向上させる観点から、より好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。ポリエーテルイミドの含有量が1重量%未満であると、耐熱性および耐候性の向上効果が劣る場合があり、他方、50重量%を超えると製膜時に破れが生じやすくなるため好ましくない。
本発明において、ポリイミド(b)をポリエステル(a)に添加する時期は、特に限定されないが、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に溶融押出前に添加してもよい。また、溶融押出前に、ポリエステルとポリイミドをペレタイズしてもよい。
次いで、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィドとしてポリ−p−フェニレンスルフィドを用いた二軸配向ポリフェニレンフィドフィルムの製造を例にとって説明する。もちろん、本発明は、かかる例に限定して解釈されるものではない。
まず、PPSのペレットまたは顆粒とカーボンブラックとを、ヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダーあるいはタンブラー等の混合機を利用して一定の割合で混合して、ベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いることが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、混練部では290〜405℃の樹脂温度範囲であることが好ましく、さらに好ましい温度範囲は295〜355℃である。混練部の樹脂温度範囲を好ましい範囲にすることにより、せん断応力を高めやすく、分散不良物も低減できる効果が高くなり、フィルム中のCBの平均二次粒子径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、フィルム中のCBの平均二次粒子径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることはさらに好ましい。
PPSとカーボンブラックを混合する上で、例えば、ステアリン酸亜鉛などに代表される金属石鹸やポリエチレンワックス、モンタン酸のエステルワックスなどの分散剤が添加されると、分散不良物が低減できて分散性が高まることがある。
その後、上記ペレタイズ作業により得られた、PPSとカーボンブラックからなるブレンドチップや必要に応じて粒子マスターを一定の割合で混合して、180℃で3時間以上10mmHg以下の減圧で乾燥した後、300〜350℃の温度、好ましくは320〜340℃に加熱された押出機に投入する。その後、溶融物をフィルターに通過させた後、Tダイの口金を用いてシート状に吐出する。このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態のポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
次に、この実質的に無配向のポリフェニレンスルフィドフィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法について、例を説明する。
逐次二軸延伸は加熱ロール群で加熱し、長手方向(MD方向)1段もしくは2段以上の多段で延伸後、20〜50℃冷却ロール群で冷却する(MD延伸)。MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。これら延伸温度は、Tg(PPSのガラス転移温度)〜(Tg+50)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+40)℃の範囲である。延伸倍率については、長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)に2.5〜4.5倍、好ましくは2.6〜4.3倍、さらに好ましくは、2.7〜4.2倍の範囲である。次に、この延伸フィルムを緊張下で熱処理温度170〜275℃にて熱固定する。
次にこのフィルムを40℃以上ポリフェニレンスルフィドの融点以下、より好ましくは延伸温度以上熱固定温度以下(多段熱固定の場合は最も高い熱固定温度以下)の温度ゾーンで幅方向に弛緩処理する。弛緩率は、0.1〜8%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜7%、さらに好ましくは2〜6%の範囲である。弛緩処理は1秒〜100秒、好ましくは1秒〜60秒、更に好ましくは1秒〜10秒かけて上記温度範囲で行う。
さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
なお、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの耐候性をより向上させる好ましい延伸倍率として長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)に3.4〜4.5倍の範囲とし、面積倍率(MD方向の倍率とTD方向の倍率の積)は、12倍以上、20倍以下とすることが好ましい。一方で成形加工性をより向上させる好ましい延伸倍率として長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)に2.5〜3.4倍の範囲とし、面積倍率(MD方向の倍率とTD方向の倍率の積)は7倍以上、12倍未満とすることが好ましい。
また、延伸後のフィルムを緊張下で熱固定する場合においても、1段工程の熱処理を施すより、熱処理温度の異なる2段以上の工程で行い、その1段目の熱処理温度を(直前の延伸温度+5℃)〜240℃とし、後段の熱処理温度の最高値を200℃以上もしくは(1段目の熱処理温度+20℃)以上、(フィルムを構成するポリアリーレンスルフィドの融点−5℃)以下とすることが好ましい。
本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)フィルム中のカーボンブラック(CB)の平均二次粒子径
フィルムを(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断し、サンプルを超薄切片法で作製した。切断面(ア)(イ)(ウ)の各切断面それぞれについて透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、1万倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、画像処理を行い、各切断面毎に任意の100個のカーボンブラック相(画面中、他のカーボンブラックとはつながっておらずにフィルム中に存在する一次粒子や一次粒子が互いにつながって形成する凝集体(二次粒子))を選択し、該カーボンブラック相の最長径(la)と最長径の軸に直交する軸における径(lb)との平均値{(la+lb)/2}を粒子径として測定し、その100個の平均値を粒子径とした。これを(ア)(イ)(ウ)の各切断面毎について測定し、算出された各切断面の粒子径の平均値をフィルム中のカーボンブラックの平均二次粒子径とした。
(2)フィルム中のカーボンブラック含有量
フィルムをα−クロロナフタレンに溶解し、加熱時に濾過を行って粒子を分離し、フィルム全重量に対する比率(重量%)で表す。また、必要に応じて赤外分光法、蛍光X線法、SEM−XMAを利用して定量することもできる。
(3)フィルムの超音波伝搬速度の平均値(SST ave.)
フィルムを野村商事(株)製のSONIC SHEET TESTER(SST−250)にフィルム長手方向が装置上で0°の角度、フィルム幅方向が装置上で90°の角度となる位置に載せ角度を5°刻みにて360°(1回転相当)の超音波伝達速度を測定し、長手方向(0°)の超音波伝達速度と幅方向(90°)の超音波伝達速度との平均値を求めた。
(4)破断伸度およびF40値(室温)
フィルム長手方向および幅方向について、それぞれ長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して測定に供した。ASTM−D882−97に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃、65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行い、その破断伸度の平均値(X)を求めた。F40値は伸張40%時点の応力であり、前記20回の測定における平均値を求めた。
(5)破断伸度およびF100値(200℃雰囲気)
フィルム長手方向および幅方向について、それぞれ長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して測定に供した。ASTM−D882−97に規定された方法に従って、200℃雰囲気に加熱された炉内にて引っ張り試験器を用いて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行い、その破断伸度の平均値(X)を求めた。F100値は伸張100%時点の応力であり、前記20回の測定における平均値を求めた。
(6)耐候性
フィルム長手方向に沿い、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出し、ASTM−D882−97に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃、65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行いその破断伸度の平均値(X)を求めた。また、フィルム長手方向に沿い、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを、紫外線劣化促進試験機アイスーパーUVテスターSUV−W131(岩崎電気(株)製)を用い、60℃、50%RHの雰囲気下で照度が100mW/cmの条件で処理した後、自然冷却し、このサンプルについて前記と同条件での引っ張り試験を20回行い、その破断伸度の平均値(Y)を求めた。得られた破断伸度の平均値(X)、(Y)から伸度保持率を次式で求めた。
伸度保持率(%)=(Y/X)×100
伸度保持率が50%以下となるまでの紫外線劣化促進試験機での処理時間を破断伸度の半減時間とした。耐耐候性は下記の基準に従って評価した。AとBおよびCが合格である(BよりAが、CよりBが優れる)。
A:伸度半減時間が72時間以上である。
B:伸度半減時間が48時間以上72時間未満である。
C:伸度半減時間が24時間以上48時間未満である。
D:伸度半減時間が24時間未満である。
(7)成形加工性
(a)金型成形性
浅野研究所製成形機(FKS−0631−20)を用いて400℃の遠赤外線ヒーターで、フィルム表面温度が200℃の温度になるようにフィルムを加熱し、50℃に加熱した金型(底面直径50mm)に沿って真空圧空成形(圧力:1MPa)を行った。金型に沿って成形できた状態を成形度合い(絞り比:成形高さ/底面直径)を用いて以下の基準で評価した。A、BおよびCが合格である(BよりAが、CよりBが優れる)。
A:絞り比0.3以上で成形できた。
B:絞り比0.2〜0.3で成形できた。
C:絞り比0.2で成形できた。
D:追従性が低く、絞り比0.3の形に成形できなかった。
E:破れて成形できなかった。
(b)モーター挿入性
モーター加工機(小田原エンジニアリング社製)を用いて、フィルムを12×80mmのサイズ(80mmのサイズをとる方向をフィルムの長手方向に合わせた)に打ち抜き、さらに折り目をつける加工を加工速度2個/秒で1,000回行い、割れや亀裂の発生数を数えて、以下のように判断した。A、BおよびCが合格である(BよりAが、CよりBが優れる)。
A:割れや亀裂の発生数が50個未満
B:割れや亀裂の発生数が50個以上100個未満
C:割れや亀裂の発生数が100個以上200個未満
D:割れや亀裂の発生数が200個以上
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と比較しながら説明する。
(参考例1)ポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS)の調製
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1,260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸カルシウム水溶液70000gで洗浄、濾別した。この洗浄、濾別の後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂は、溶融粘度が2000ポイズ(310℃、剪断速度1000/s)であり、ガラス転移温度が90℃、融点が280℃であった。
(参考例2)ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールの混合物に、ジメチルテレフタレートに対して、酢酸カルシウム0.09重量%と三酸化アンチモン0.03重量%とを添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、得られたエステル交換反応生成物に、原料であるジメチルテレフタレートに対して、酢酸リチウム0.15重量%とリン酸トリメチル0.21重量%とを添加した後、重合反応槽に移行し、次いで加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重合し、固有粘度0.54dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。得られたPETを回転型真空重合装置を用いて、1mmHg以下の減圧下、225℃の温度で35時間加熱処理し、固有粘度0.85dl/gのPETポリマを得た。
(参考例3)ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)の製造
ジメチル−2、6−ナフタレート100重量%、エチレングリコール60重量%および酢酸マグネシウム4水和物0.09重量%を反応器にとり、約4時間をかけて230℃まで徐々に加熱昇温した。この時生成してくるメタノールを留去させ、エステル交換反応を終了した。この反応物にリン酸トリメチル0.04重量%、三酸化アンチモン0.03重量%およびエチレングリコール10重量部に分散させた平均粒子径0.3μmの酸化チタン0.3重量%を添加し、常法に従って重合し、固有粘度0.48のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)チップを得た。このチップを200℃で30時間固相重合し、固有粘度0.78のPENチップを得た。
(実施例1)
参考例1で作製したPPS97重量%とカーボンブラックとして三菱化学社製ファーネスブラック“#3030B”(平均一次粒子径=55nm、DBP吸油量=130ml/100g)(CB−1)3重量%を乾燥空気下で均一に配合後、ニーディングパドル混練部を設けた真空ベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。得られたPPS/CB−1(97/3重量%)のブレンドチップを180℃で7時間1mmHgの減圧下で乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給した。
次いで押出機で溶融したポリマを温度320℃に設定したフィルターで濾過し、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、実質的に無配向のフィルムを作製した。
この実質的に無配向のフィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、98℃の温度でフィルムの長手方向に3.8倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度100℃、延伸倍率3.8倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて温度200℃で4秒間熱処理(1段目熱処理)を行い、続いて260℃4秒間熱処理(2段目熱処理)を行った。引き続き、260℃の弛緩処理ゾーンで4秒間横方向に5%弛緩処理を行った後、115℃の除冷工程を経て室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚さ50μmの二軸配向フィルムを作製した。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、極めて良好な耐候性を有し、成形加工性も良好なものであった。
(比較例1)
参考例1で作製したPPS樹脂100重量%のみ使用し、カーボンブラックを含有しないこと以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本比較例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、耐候性は向上せず、また、機械特性の改善もないため成形加工性が不十分であり、特にモーター挿入においては割れや亀裂が酷いものであった。
(実施例2〜5、比較例2)
カーボンブラックの含有量を表1に示す割合に変更した(なお、PPSとカーボンブラックの重量の和で100重量%である。以下同じ)以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。各実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりである。実施例2の二軸配向フィルムは十分な耐候性を有しながら成形加工性も良好で、特に金型成形性に優れたものであった。また実施例3の二軸配向フィルムは十分な耐候性を有しながら成形加工性も良好なものであった。
実施例4および5の二軸配向フィルムはカーボンブラックの含有量が実施例1に対して多く平均二次粒子径が大きくなったため、破断伸度が低く、F40値が大きくなり成形加工性が若干劣るものであるが実使用上問題ないレベルであった。耐候性については十分な特性を有していた。
他方、比較例2の二軸配向フィルムはカーボンブラックの含有量が本発明の好ましい範囲より多く、そのためフィルム中の平均二次粒子径が本発明の規定する範囲より極めて大きく、製膜時の延伸工程において破れが頻発し、製膜性が不安定なためフィルムを採取することが困難であった。
(実施例6〜8)
製膜時の長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の延伸倍率を表1に示した条件に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。各実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりである。
実施例6〜8のフィルムは延伸倍率が実施例1のフィルムに対して低倍率で延伸している故に、破断伸度が向上し、かつ200℃雰囲気下のF100値が低下しているため成形加工性は極めて優れたものであった。一方、耐候性についても改善の効果は見られ、実施例6のフィルムは良好であり、延伸倍率の低い実施例7、さらに延伸倍率の低い実施例8のフィルムにおいては若干劣るレベルであったが実使用上問題ない程度であった。
(実施例9)
製膜条件として延伸後の熱固定温度を表1に示した通り2段熱処理から1段熱処理工程に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、耐候性においては良好であったが、破断伸度が低く、F40値が大きくなり成形加工性が若干劣るものであるが実使用上問題ないレベルであった。
(実施例10)
三菱化学社製ファーネスブラック“#3230B”(平均一次粒子径=23nm、DBP吸油量=140ml/100g)(CB−2)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、極めて良好な耐候性を有し、成形加工性も良好なものであった。
(実施例11)
三菱化学社製ファーネスブラック“#960B”(平均一次粒子径=16nm、DBP吸油量=64ml/100g)(CB−3)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、極めて良好な耐候性を有しているが、破断伸度が低く、F40値が大きくなり成形加工性が若干劣るものであるが実使用上問題ないレベルであった。
(実施例12)
電気化学工業社製アセチレンブラック“デンカHS100”(平均一次粒子径=48nm、DBP吸油量=140ml/100g)(CB−4)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、極めて良好な耐候性を有し、成形加工性も良好なものであった。
(実施例13)
PPS樹脂とカーボンブラックとの混合方法としてニーディングパドル混練部を設けた真空ベント付き同方向回転式二軸混練押出機の代わりに、フルフライトスクリュを設けた真空ベント付き同方向回転式二軸混練押出機を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、極めて良好な耐候性を有しているが、破断伸度が低く、F40値が大きくなり成形加工性が若干劣るものであるが実使用上問題ないレベルであった。
(比較例3)
カーボンブラックとしてケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラック“EC600JD”(平均一次粒子径=34nm、DBP吸油量=495ml/100g)(CB−5)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本比較例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、耐候性においては若干の改善効果が見られたが、カーボンブラックの平均二次粒子径が本発明の規定する範囲より大きいため、機械特性の改善効果が得られておらず成形加工性が不十分であり特に金型成形においては破れて成形不可、モーター挿入においては割れや亀裂が酷いものであった。
(比較例4)
PPS樹脂とカーボンブラックとの混合方法として同方向回転式二軸混練押出機の代わりにフルフライトの単軸押出機を用いてブレンドチップを作製した以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本比較例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、フィルム中のカーボンブラックの平均二次粒子径が本発明の規定する範囲より大きく、耐候性の向上が得られず、また、機械特性の改善もないため成形加工性が不十分であり特に金型成形においては破れて成形不可、モーター挿入においては割れや亀裂が酷いものであった。
(比較例5)
カーボンブラックの含有量を表1に示す割合に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本比較例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、フィルム中のカーボンブラックの平均二次粒子径が本発明の規定する範囲より小さく、耐候性の向上が得られず、また、機械特性の改善もないため成形加工性が不十分であり、特にモーター挿入においては割れや亀裂が酷いものであった。
(比較例6)
二軸延伸および熱固定を施さないこと以外は実施例10と同様にして無配向のフィルムを作製した。本比較例のフィルムはフィルム中のカーボンブラックの平均二次粒子径が本発明の規定する範囲にあるものの二軸配向していないため耐候性の向上が不十分であり、かつ機械特性の向上効果が得られていないため成形加工性も不十分であり特に金型成形においては破れて成形不可、モーター挿入においては割れや亀裂が酷いものであった。
(比較例7)
カーボンブラックとしてCancarb社製サーマックス“MT−N900”(平均一次粒子径=230nm、DBP吸油量=37ml/100g)(CB−6)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。本比較例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表1に示したとおりであり、耐候性においては若干の改善効果が見られたが、カーボンブラックの平均二次粒子径が本発明の規定する範囲より大きいため、機械特性の改善効果が得られておらず成形加工性が不十分であり特に金型成形においては破れて成形不可、モーター挿入においては割れや亀裂が酷いものであった。
(実施例14)
参考例2で得た固有粘度0.85のPETチップ50重量%とGeneral Electric社製のポリエーテルイミド(PEI)チップ”ウルテム”1010(ガラス転移温度217℃、固有粘度0.68)を50重量%、150℃で5時間除湿乾燥した後、320〜290℃に加熱された(スクリューゾーン、押出ヘッド部で温度勾配を設定)二軸3段タイプのスクリュー(PETとPEIの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相溶化ゾーン)を具備したベント式二軸押出機(L/D=40、ベント孔の減圧度は200Paとした)に供給して、滞留時間3分にて溶融押出し、ウルテムを50重量%含有したPET/PEIブレンドチップを得た。
次に、参考例1で作製したPPS97重量%とカーボンブラックとして三菱化学社製ファーネスブラック“#3030B”(平均一次粒子径=55nm、DBP吸油量=130ml/100g)(CB−1)3重量%を乾燥空気下で均一に配合後、ニーディングパドル混練部を設けた真空ベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。
先に得られたPPS/CB−1(97/3重量%)のブレンドチップを180℃で7時間1mmHgの減圧下で乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機1(A層)に供給し、他方、先に得られたPET/PEIブレンドチップ30重量%と前記の固有粘度0.85のPETチップ70重量%とを混合させ、(PETとPEIの混合比率、PET;85重量%、PEI;15重量%)、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が280℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機2(B層)に供給した。
次いで2台の押出機で溶融したポリマを温度310℃に設定したフィルターで濾過し、3層用の合流ブロック用いて3層積層(積層比率A層/B層/A層=1/4/1)となるように合流させて、温度300℃に設定したTダイの口金から溶融共押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、実質的に無配向の積層フィルムを作製した。この実質的に無配向のフィルムを実施例1と同様の条件で延伸・熱処理等行い、全体厚み50μmに対し本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムが片側表面に厚み8μmで積層された二軸配向積層フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向積層フィルムの構成および特性は表2に示したとおりであり、極めて良好な耐候性、成形加工性を有したものであった。
(実施例15)
基層部(B層)に含まれるポリエステル(a)として参考例3で製造した固有粘度0.78のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)50重量%とGeneral Electric社製のポリエーテルイミド(PEI)チップ”ウルテム”1010(ガラス転移温度217℃、固有粘度0.68)を50重量%、150℃で5時間除湿乾燥した後、320〜290℃に加熱された(スクリューゾーン、押出ヘッド部で温度勾配を設定)二軸3段タイプのスクリュー(PETとPEIの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相溶化ゾーン)を具備したベント式二軸押出機(L/D=40、ベント孔の減圧度は200Paとした)に供給して、滞留時間3分にて溶融押出し、ウルテムを50重量%含有したPET/PEIブレンドチップを得た。得られたPEN/PEIブレンドチップ30重量%と前記の固有粘度0.78のPENチップ70重量%とを混合させ、(PENとPEIの混合比率、PEN;85重量%、PEI;15重量%)、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機2(B層)に供給した。他方、A層側のポリマーは実施例14と同様条件にて作成、溶融押出し、A層、B層のそれぞれ溶融したポリマを温度310℃に設定したフィルターで濾過し、3層用の合流ブロック用いて3層積層(積層比率A層/B層/A層=1/4/1)となるように合流させて、温度300℃に設定したTダイの口金から溶融共押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、実質的に無配向の積層フィルムを作製した。
この実質的に無配向のフィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、130℃の温度でフィルムの長手方向に3.8倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度140℃、延伸倍率3.8倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて温度200℃で4秒間熱処理(1段目熱処理)を行い、続いて260℃4秒間熱処理(2段目熱処理)を行った。引き続き、260℃の弛緩処理ゾーンで4秒間横方向に5%弛緩処理を行った後、115℃の除冷工程を経て室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、全体厚み50μmに対し本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムが片側表面に厚み8μmで積層された二軸配向積層フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表2に示したとおりであり、極めて良好な耐候性、成形加工性を有したものであった。
(実施例16)
製膜時の長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の延伸倍率を表2に示した条件に変更した以外は実施例14と同様にして、厚さ50μmの二軸配向ポリアリーレンスルフィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表2に示したとおりであり、極めて良好な成形加工性を有しており、耐候性も十分良好であった。
(実施例17)
カーボンの含有量を表2に示す割合に変更した以外は実施例14と同様にして、二軸配向フィルムを得た。本実施例で得られた二軸配向フィルムの構成および特性は表2に示したとおりであり、カーボンブラックの平均二次粒子径が若干大きいが、積層構成としたことで機械特性が単層のフィルムである実施例5より格段に向上し、成形加工性が実使用上問題ないレベルであった。また、耐候性については十分な特性を有していた。
Figure 0005594005
Figure 0005594005
太陽電池用材料、電気絶縁材料、成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料など各種工業材料用フィルム、詳しくは太陽電池バックシート用、各種モーターに用いられる電気絶縁材料、金型による成型材料などに好適に使用できる。

Claims (10)

  1. ポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性樹脂にカーボンブラックを0.1重量%〜10重量%含有したフィルムであって、該フィルム中にカーボンブラックが平均二次粒子径50nm〜900nmで分散していることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. カーボンブラックの平均一次粒子径が100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  3. カーボンブラックがファーネスブラックあるいはアセチレンブラックであることを特徴とする請求項1または2に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. フィルムの長手方向および幅方向における超音波の伝搬速度の平均値が1.3〜2.5km/secであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  5. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである請求項1〜のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  6. フィルム面方向の少なくとも1つの方向において、引張試験にて測定したF40値(フィルム長手方向および幅方向について、それぞれ長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して測定に供し、ASTM−D882−97に規定された方法に従って25℃、65%RH、初期引っ張りチャック間距離100mm、引っ張り速度300m/分にて、伸度40%の時点での応力値を求め、同測定を20回繰り返して得られた20の応力値の平均値をF40値とする)が150Mpa以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  7. フィルム面方向の少なくとも1つの方向において200℃雰囲気下における引張試験でのF100値(フィルム長手方向および幅方向について、それぞれ長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して測定に供し、ASTM−D882−97に規定された方法に従って、初期引っ張りチャック間距離100mm、200℃雰囲気に加熱された炉内にて、引っ張り速度は300m/分で伸度100%の時点での応力値を求め、同測定を20回繰り返して得られた20の応力値の平均値をF100値とする)が50Mpa以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(A層)とポリエステル(a)とポリイミド(b)とを含む熱可塑性樹脂からなるフィルム(B層)とがA層を最外層として積層されてなる二軸配向積層フィルム。
  9. ポリエステル(a)がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエステルであることを特徴とする請求項に記載の二軸配向積層フィルム。
  10. ポリイミド(b)がポリエーテルイミドであることを特徴とする請求項またはに記載の二軸配向積層フィルム。
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