JP2019127033A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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葉子 若原
高橋 健太
Kenta Takahashi
健太 高橋
青山 滋
Shigeru Aoyama
滋 青山
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Abstract

【課題】耐熱性・電気特性・機械特性に優れる積層体を提供すること。【解決手段】融点または軟化点が270℃以上の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維シートを複合してなる積層体であって、熱可塑性樹脂フィルムが2層以上の積層構成を有し、構成する層の少なくとも1層は無機粒子を含有し、かつ空隙率が20%以上の層(I)であり、200μm換算の端裂抵抗が150N/mm以上であることを特徴とする積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性・電気絶縁性・加工性に優れる積層体に関する。
ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂などに代表される熱可塑性樹脂からなるフィルムや不織布は耐熱性・電気絶縁性・低吸湿性、高温下での寸法安定性および耐薬品性に優れることから、電気・電子部品、電池用部材、機械部品および自動車部品の絶縁材や断熱材として好適に使用されている。
これらの熱可塑性樹脂フィルム同士を組み合わせた構成や、熱可塑性樹脂フィルムと不織布を組み合わせた構成の積層体が耐熱性・電気特性に優れた絶縁材として開発されている(例えば特許文献1〜3)。
近年の部材の小型化・高効率化の流れを受けて、部材として用いられる積層体も薄膜化が要求されているが、絶縁材として用いられる際には薄膜化に伴い電気特性などが低下するといった課題があった(特許文献4および5)。
薄膜化に伴う電気特性を改良する手法として、積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムを多孔化する手法が提案されている。しかし上記の手法を適用したフィルムは樹脂の密度が低い部分を含むことから、機械特性が低下し、加工性が低下するといった課題があった(特許文献6および7)。
特開2006−262687号公報 特開2012−182910号公報 特開2012−021115号公報 特開2013−095057号公報 特開2011−140150号公報 特開2013−206818号公報 特開2014−102946号公報
本発明の課題は、上記した問題を解決することにある。すなわち、耐熱性・電気特性・加工性に優れる積層体を提供することである。
本発明の積層体は、上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、融点または軟化点が270℃以上の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維シートを複合してなる積層体であって、熱可塑性樹脂フィルムが2層以上の積層構成を有し、構成する層の少なくとも1層は無機粒子を含有し、かつ空隙率が20%以上の層(I)であり、200μm換算の端裂抵抗が150N/mm以上であることを特徴とする積層体である。
本発明の積層体は耐熱性・電気特性および加工性に優れることから、電気・電子機器、電池用部材、機械部品および自動車部品や絶縁材、攪拌子、耐熱テープとして好適に用いることができる。
本発明の積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムは融点または軟化点が270℃以上の熱可塑性樹脂を主成分とする。ここで融点とはその樹脂の固体・液体の転移温度を指し、軟化点とはその熱可塑性樹脂が加熱によって実質的に変形し始める温度のことをさす。また主成分とはフィルムを構成する樹脂組成のうち60%以上を占める成分をさす。上記の熱特性を有することで、優れた耐熱性を発現せしめることができる。融点または軟化点が270℃より低いと、180℃以上の高温環境下で使用した際にフィルムが劣化しやすくなり、機械特性・電気特性などが低下する場合がある。融点または軟化点は高ければ高いほど耐熱性が向上するが、生産性の観点から350℃以下であることが好ましい。樹脂の融点は示差走査熱量計で、樹脂の軟化点は熱機械分析装置を用いて後述の手法にて評価できる。
上記の熱可塑性樹脂としては、結晶性、非晶性のいずれでも良く、結晶性の樹脂としては例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンスルフィド樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイドなど)などが、また、非晶性の樹脂としてはポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂などから選択された少なくとも1種であることが好ましい。中でもポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンのいずれかより選択された少なくとも1種であることが耐熱性・絶縁性の観点から好ましく、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトンであることが加工性・生産性の観点から特に好ましい。
本発明の積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムの樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を配合して使用することも可能である。かかる添加剤の具体例としては有機化合物、熱分解防止剤、熱安定剤、光安定剤および酸化防止剤などが挙げられる。
本発明の積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムの樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で上記以外の熱可塑性樹脂以外の樹脂を配合して使用することも可能である。かかる樹脂の具体例としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリケトン、エポキシ樹脂などが挙げられるがこれに限定されない。
本発明の積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムに用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂は、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するコポリマーを指す。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される単位があげられる。
Figure 2019127033
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
繰り返し単位としては、上記の式(1)で表されるp−アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp−アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p−フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を全繰り返し単位の80モル%以上99.9モル%以下で構成されていることが好ましい。上記の組成とすることで、優れた耐熱性、耐薬品性を発現せしめることができる。
Figure 2019127033
また、繰り返し単位の0.01モル%以上20モル%以下の範囲で共重合単位と共重合することもできる。
好ましい共重合単位は、
Figure 2019127033
Figure 2019127033
Figure 2019127033
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2019127033
Figure 2019127033
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、特に好ましい共重合単位は、m−フェニレンスルフィド単位である。
主要構成単位に共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムは、フィルムを構成する層のうち、少なくとも1層は無機粒子を含有し、かつ空隙率が20%以上の層(I)からなる。上記の構成を有することで、積層体としての電気特性を向上せしめることができる。空隙率は好ましくは30〜70%、より好ましくは30〜55%である。ここで空隙率とは、層(I)の任意のサイズの断面画像の面積を100とした際に、その画像中に含まれる空孔の面積の割合を指し、層(I)の任意サイズの断面画像に空孔が観察されない場合が空隙率0%となる。空隙率が20%より小さくなると、熱可塑性樹脂フィルム中に含まれる空孔が少なくなり、フィルム中に占める誘電率の小さい空気の割合が減るため、電気特性が低下する場合がある。また空隙率は高ければ高いほど好ましいが生産性保持の観点から70%以下が好ましい。空隙率を上記の範囲とするには後述する粒子濃度や製膜条件を適用することで達成できる。空隙率は積層体の断面について後述する手法で評価することで確認できる。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に空孔を形成する手法としては、工程を簡略化でき生産性に優れることから乾式法(樹脂を溶融し、シート状に押出したものを延伸により多孔化する方法)を用いることが好ましい。また、乾式法の中でも滞留安定性と生産性を考慮して、空孔を形成させる層に無機粒子を添加して延伸することで、粒子の周囲に空孔を形成させる手法が好適に用いられる。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に含まれる無機粒子の濃度は、熱可塑性樹脂フィルムを構成する樹脂やその他の添加物からなる当該層の原料組成を100質量%とした際に、10質量%以上であることが好ましく、10〜60質量%がより好ましく20〜40質量%であることが特に好ましい。粒子濃度を上記の範囲とすることで効率よく空孔を形成することができる。粒子濃度が10質量%未満であると、後述するフィルム製造時に粒子濃度が低いため空孔が形成されにくく、熱可塑性樹脂フィルムを積層体の構成部材として用いた際に電気特性が低下する場合がある。また粒子濃度が60質量%を上回ると熱可塑性樹脂フィルムの製造時に延伸が困難となり、生産性が低下する場合がある。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に用いる無機粒子としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックスや窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維等のなどの無機化合物があげられる。用いる粒子は1種でもよく、複数種を混合して用いてもかまわない。上記の中でも分散性の観点から炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、低コストの観点から炭酸カルシウム、シリカが最も好ましい。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に用いる無機粒子は、熱可塑性樹脂フィルムの物性を損なわない範囲で表面処理を施すことができる。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に用いる無機粒子の体積平均粒径は、1.0〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがより好ましい。上記の体積平均粒径の粒子を用いることで、粒子を高濃度で配合した際に発生しやすくなる粒子同士の凝集を抑制し、延伸した際に粒子の周囲に応力が集中するため、層(I)中に効率よく空孔を形成させることができる。無機粒子の体積平均粒径が1.0μm未満であると、延伸時に空孔が形成しにくくなったり、空孔の大きさが小さくなるため空隙率が低下したり、粒子の表面積が増えるため凝集を起こす場合がある。また、体積平均粒径が20μmより大きいと粒子の突き抜けにより延伸の際にフィルム破れが発生しやすくなり、熱可塑性樹脂フィルムの生産性が低下する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に好ましく用いられる粒子は、レーザー回折法(粒子にレーザービームを照射することで得られる回折光の強度分布を解析して粒子径を求める手法)によって得られる粒度分布(累積分布)の中央値に対応する50%数値の粒子径(D50:メジアン径)が1〜10μmであることが好ましく、1〜8μmであることがより好ましい。上記のD50の粒子を用いることで、粒子を高濃度で配合した際に発生しやすくなる粒子同士の凝集を抑制し、延伸した際に粒子の周囲に応力が集中するため、層(I)中に効率よく空孔を形成させることができる。粒子のD50が1μm未満であると、粒子の表面積増加により凝集が起こりやすく生産性が低下したり、延伸時に空孔が形成されにくくなるため空孔率が低下する場合がある。また、D50が10μmより大きいと粒子の突き抜けにより延伸の際にフィルム破れが発生しやすくなり、熱可塑性樹脂フィルムの生産性が低下する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に用いる粒子は、粒度分布測定で得られる累積分布の5%数値の粒子径(D5)が0.5μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましい。D5を上記の範囲とすることで、層(I)に含まれる空孔のうち2μm以下の微細なボイドの発生を抑制でき、端裂抵抗を向上することができる。D5が0.5μm未満であると、層(I)に含まれる微細な粒子が増加することを示しており、この微小粒子の増加によってフィルムに物理的に力がかかった際に破壊の起点となりやすい微小なボイドが増加し、機械特性、特に端裂抵抗が低下する場合がある。D5の上限は粒子径の均一化の観点からD50に近ければ近いほど好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に用いる粒子は、粒度分布測定で得られる累積分布の90%数値の粒子径(D90)が20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。D90が上記の範囲を満たすことで、粒度分布の幅を狭くでき、延伸時の応力分散を均一化できることから微小な空孔の発生を抑制することができる。D90が20μmよりも大きくなると、延伸時に応力集中しやすい大径粒子の含有率が増加することから、延伸の不均一化が起こり、延伸応力が伝達されにくい小径粒子の近傍に微小な空孔が増加し、機械特性が低下する場合がある。D90の下限は粒子径の均一化の観点からD50に近ければ近いほど好ましい。本発明の熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に好ましく用いられる粒子の粒度分布測定で得られる累積分布の5、50、90%数値の粒子径および粒子濃度は、後述する手法を用いて確認することができる。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に用いる無機粒子の体積平均粒径および濃度は、後述する手法を用いて確認することができる。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に含まれる空孔の平均径は7〜30μmであることが好ましく、9〜20μmであることが好ましく、11〜20μmであることがより好ましい。空孔の平均径を上記とすることで、熱可塑性樹脂フィルムの機械特性を向上することができる。空孔の平均径が7μm以下であると、機械特性の低下を引き起こす微小な空孔が増加し、端裂抵抗が低下する場合がある。平均径は30μmよりも大きくなると、熱可塑性樹脂フィルムの製膜の延伸の際に局所的に樹脂量の少ない箇所が生じることになるためフィルムが破れやすくなり、生産性が低下する場合がある。熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)に含まれる空孔の平均径は後述の製膜条件を用いることで達成できる。空孔の平均径は後述の方法で確認できる。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(I)以外の層を層(II)とした場合、この層は無機粒子を含んでもよいし、含まなくてもよい。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(II)に無機粒子が含まれる場合、その無機粒子の濃度は層(II)に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。上記の濃度とすることで、フィルムを延伸する際に層(II)の支持体としての機能が発現できる。層(II)に含まれる無機粒子の濃度が10質量%を上回ると、延伸時にフィルムにかかる応力に対してフィルムが耐えることができず破断しやすくなり、製膜安定性が損なわれる場合がある。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムを構成する層(II)に粒子が含まれる場合、その粒子の体積平均粒径は0.5〜20μmであることが好ましく、0.5〜18μmであることが製膜安定性の観点からより好ましい。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムは、2層以上の積層構成を有する。2層以上の層構成を有することで、熱可塑性樹脂フィルム自体の延伸性が向上し破れが抑制され生産性を向上することができる。積層構成としては、層(I)、層(II)で構成される(I)/(II)の2層、(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)、(II)/(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)/(I)/(II)などの多層構成が挙げられるが、これに限定されない。また、(I)〜(II)とは異なる組成からなる層をさらに追加した層構成にすることもできる。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、生産性の観点から10〜300μmが好ましく、25〜250μmがより好ましい。フィルム厚みおよびフィルムを構成する各層の厚みは未延伸シートを得る際に原料の供給量を調整することで制御できる。またフィルム厚みおよび層厚みは後述する手法にて評価できる。
本発明の積層体は熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維シートを複合してなる。繊維シートの複合により、フィルム層への外部応力によるキズ付を抑制し、実用耐久性を向上したり、機械特性を向上することができる。例えば、該積層体をモーターのステータコア部に挿入して絶縁材として用いる際に、繊維シート表面の凹凸が挿入時の滑り性を付与して作業性を向上させ、また、ステータコア壁面の突起に接触して積層体の表面が損傷した際には、繊維シート層が損傷することで絶縁層となるフィルム層を傷付きから保護できたり、その傷からの破れの伝播を抑制することができる。
本発明の積層体は、繊維シートをA、熱可塑性樹脂フィルムをBとしたときに、A/B、A/B/AやB/A/B、A/B/A/B、A/B/A/B/Aなどの構成が挙げられるがこれに限定されない。また、繊維シートの種類を変えて1方をA、もう1方をA’とした場合、A/B/A’のように表裏で異なる繊維シートを複合することもできる。
本発明の積層体に用いる繊維シートとは、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維からなるシートである。ここで主成分とするとは繊維シートを構成する樹脂組成のうち60質量%以上を占めることを言う。繊維シートには織物、編み物、不織布を用いることができ、特に不織布がコストや特性面、延伸性の観点から好ましい。
本発明の積層体に用いる繊維シートの製造方法は特に限定されないが、フラッシュ紡糸法、メルトブロー法、スパンボンド法、抄紙法などが適用できる。
本発明の積層体に用いる繊維シートを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン・ポリメチルペンテン・エチレン−プロピレン−ジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレンナフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリアリレート等のポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンもしくはポリアリーレンスルフィド、6ナイロン・6−6ナイロンもしくは6−12ナイロンやアラミドなどのポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドなどが上げられる。中でも耐熱性、加工性の観点からポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリーレンスルフィドが好ましく、電気絶縁性、耐薬品性、耐熱性の観点からポリアリーレンスルフィド、ポリアミド樹脂が特に好ましい。
本発明の積層体の厚みは実用性の観点から50〜500μmが好ましく、50〜400μmがより好ましい。
本発明の積層体を構成する繊維シートと熱可塑性樹脂フィルムは、接着剤を介すことなく積層・複合することができる。接着剤を介すことなく複合するとは、繊維シートと熱可塑性樹脂フィルムの界面に、実質的にフィルムを構成する樹脂組成物および繊維シートを構成する組成物のみが存在することを意味する。接着剤を介することなく複合することによって、高温高湿下で長期間使用した場合に、経時的な劣化が小さく高い機械特性を保持することができ、優れた耐久性を発現することができる。繊維シートと熱可塑性樹脂フィルムを、接着剤を介することなく接合する方法としては、熱ラミネート(繊維シートと熱可塑性樹脂フィルムを重ね合わせた状態で加熱し、加圧ロールなどで挟んで加圧することで、繊維シートまたは熱可塑性樹脂フィルムの一部を溶融させ接合する手法)やプラズマ接合(電極間への高電圧印加によって発生する放電(コロナ放電やグロー放電)に処理基材を曝すことによって表面改質処理を行った後に加熱・加圧して接合する手法)、溶融積層(熱可塑性樹脂フィルムを形成するための溶融押出時に、溶融状態のシートと繊維を重ね合わせて積層する手法)などの手法が挙げられるが、上記に限定されない。積層体の界面に繊維シートまたはフィルムを構成する樹脂組成物のみが存在することは、積層体の厚み方向の断面を観察することで確認できる。
本発明の積層体を構成する繊維シートと熱可塑性樹脂フィルムは、接着剤を介して複合することもできる。接着剤を介す事でこの接着剤層を熱可塑性樹脂フィルムの保護層として、より高い保護機能や端裂抵抗を向上することができる。
本発明において接着剤とは、繊維シートと熱可塑性樹脂フィルムを物理的・化学的に接合する成分をさす。接着剤としては、加熱・加圧により熱可塑性樹脂を溶融させて接合させるヒートシール用接着剤や、常温にて流動性を示し、部材に塗布および/または複合時に加熱・乾燥させるドライラミネート用接着剤が挙げられる。ヒートシール用接着剤としては、フッ素系樹脂やポリアミド樹脂、変性エポキシ樹脂やオレフィン系樹脂などの樹脂を単独または2種以上を混合して用いることが出来る。熱可塑性樹脂フィルムおよび繊維シートを構成する樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。またドライラミネート用接着剤は主剤および硬化剤の2つの樹脂を溶剤で希釈して調合したものが用いられる。硬化剤としては活性水酸基との反応性に富み、その反応速度及び初期密着力の発現が早いイソシアネート基含有ポリマーや、耐熱性の高いイミダゾール系ポリマーを用いることができる。また主剤に用いる樹脂としては、ウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂などがあり、単独または数種を混合して用いることができる。また、溶剤としては、エステル類、ケトン類、脂肪族類、芳香族類等の溶剤が上げられ、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられるがこれに限定されない。
本発明の積層体は、200μm換算での部分放電開始電圧が1400V以上であることが好ましく、1500V以上であることがより好ましく、1600V以上であることがよりこのましい。上記の特性を有することで、積層体を絶縁材として用いた際に優れた絶縁性能を発揮する。200μm換算での部分放電開始電圧が1400V未満であると、絶縁材として高電圧に対して実用に耐えない場合や、実際に積層体を薄膜化した際に十分な絶縁性を保持できない場合がある。また、部分放電開始電圧は高ければ高いほど好ましいが、実現可能な範囲としては3000V以下である。部分放電開始電圧は後述の方法で評価することができる。200μm換算での部分放電開始電圧を上記の範囲とするには熱可塑性樹脂フィルムの空隙率を前述の範囲とすることで達成できる。部分放電開始電圧は後述する手法にて確認できる。
本発明の積層体は、積層体の長手方向およびそれに直行する幅方向の200μm換算の端裂抵抗の平均値が150N/20mm以上である。上記の特性を有することで、積層体を実用した際に、積層体の厚み方向にかかる応力に対して耐久性を発現することができる。端裂抵抗が150N/20mmより小さいと、厚み方向に応力がかかった場合に破れが生じやすく、実用に耐えない場合がある。端裂抵抗の上限は高ければ高いほど好ましいが、実現可能な範囲としては1500N/20mm以下である。長手方向およびそれに直行する幅方向の200μm換算の端裂抵抗の平均値は170N/20mm以上であることがより好ましく、180N/20mm以上であることがさらに好ましく、250N/20mmが特に好ましい。端裂抵抗を上記の範囲とするには層(I)の空孔の平均径を前述の範囲とすることで達成できる。端裂抵抗は後述する手法により評価することができる。
本発明の積層体は200℃/1000時間処理後のフィルム長手方向および幅方向の強度保持率の平均値が60〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましく、80〜100%であることがより好ましい。強度保持率を上記の範囲とすることで、高温下で長時間使用した際の積層体の機械特性、電気特性を維持することができる。強度保持率が60%未満であると長期耐熱性に劣り、高温化で長時間使用した際に劣化によりクラックが入ったり、電気特性が低下したりする場合がある。強度保持率を上記の範囲とするためには、前述の熱可塑性樹脂フィルムを用いることで達成できる。強度保持率は後述する手法にて評価することができる。
本発明の積層体の製造法を、熱可塑性樹脂フィルムにポリアリーレンスルフィド樹脂フィルムを、繊維シートにアラミド紙を用いて接着剤にて複合化した場合を例に説明する。
本発明の積層体に好ましく用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を説明する。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンを配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、m−ジクロロベンゼンやトリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜290℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、湿潤状態の粒状ポリマーを得る。この粒状ポリマーにアミド系極性溶媒を加えて30〜100℃の温度で攪拌処理して洗浄し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄し、酢酸カルシウムなどの金属塩水溶液で数回洗浄した後、乾燥してポリアリーレンスルフィド樹脂の粒状ポリマーを得る。この粒状ポリマーと無機粒子を任意の割合で混合し300〜350℃に設定したベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製し、層(I)の原料とする。このとき無機粒子の添加濃度は粒状ポリマー100質量部に対して1〜65質量部が好ましく、5〜65質量部がより好ましい。
また、上記の粒状ポリマーのみ、または粒状ポリマーと無機粒子や添加剤などを任意の割合で混合し、300〜350℃に設定したベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製して層(I)とは異なる組成からなるその他の層(II)の原料とする。この2種のチップを、それぞれ別々に180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300〜350℃に設定されたフルフライトの単軸押出機2台にそれぞれ供給し、フィルターに通過させた後、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層構成は、(I)/(II)/(I)、積層比は(I):(II):(I)=1:1:1〜1:10:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に静電荷を印加させながら密着させて急冷固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
次いで、二軸延伸する場合は、上記で得られた未延伸フィルムを、ポリアリーレンスルフィド樹脂のガラス転移点(Tg)以上冷結晶化温度(Tcc)以下の範囲で、逐次二軸延伸機または同時二軸延伸機により二軸延伸した後、150〜280℃の範囲の温度で1段もしくは多段熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を例示する。
未延伸フィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向(MD方向)に2.8〜4.5倍、より好ましくは2.8〜4.0倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg〜Tcc、好ましくは(Tg+5)〜(Tcc−10)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜Tccが好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tcc−10)℃の範囲である。延伸倍率はフィルムの平面性の観点から3.0〜5.0倍、好ましくは3.0〜4.5倍が好ましい。
このとき、フィルムの延伸倍率についてTD倍率に対するMD倍率の比(延伸倍率比=MD倍率/TD倍率)は1.05以下が好ましく、1.00以下がより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。層(I)に含まれる空孔は、初めの延伸方向であるMD方向に延伸される際に、粒子との樹脂の界面に応力集中し剥離が生じる。その後この剥離点を起点としてMD方向に伸びる空孔が形成される。このとき粒子/樹脂界面では応力集中により熱が発生し、フィルムの樹脂組成として結晶性の熱可塑性樹脂を用いた際は局所的な結晶化の進行がすすみ、延伸時の加熱による樹脂部の塑性変形を妨害し、空孔を形成する微小な空孔を形成し脆化を引き起こすと考えられる。また、非晶樹脂では樹脂の軟化が進みすぎ、空孔の形成不良を引き起こすと考えられる。そのため、MD方向への過度な延伸を行うと、次いで行われるTD方向への延伸により、結晶性の熱可塑性樹脂では延伸破れが起こりやすくなったり、フィルムの機械的強度の低下が顕在化したりする。また、非晶性樹脂では二軸に延伸したにもかかわらず低空隙率となる場合がある。そのためMD方向の延伸倍率は平面性を損なわない範囲で低いことが好ましく、TD方向の延伸倍率はフィルム破れを起こさない範囲で高くすることが、二軸延伸後の機械特性とくに端裂抵抗と、電気特性のバランスを維持するために重要となる。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する操作(熱固定処理)を行う。熱固定処理の温度は熱処理ゾーンの始終で、同一温度で加熱処理を行うか、1段熱固定または熱処理ゾーンの前半と後半で異なる温度で加熱処理を行う多段熱固定の何れかで処理を行う。1段熱固定を行う場合、熱固定温度は160〜280℃が好ましい。また、多段熱固定で熱処理を行う場合、1段目(前半)の熱固定温度は150℃〜220℃が好ましく、より好ましくは150℃〜210℃である。1段目熱固定温度を前記範囲とすることで、フィルムの平面性を保持したまま、面積倍率を低下することが可能となる。2段目(後半)の熱固定温度は220〜280℃が好ましく、より好ましくは230〜275℃である。ここで、2段目熱固定温度が220℃未満の場合、フィルムの熱寸法安定性が悪化する場合があり、280℃を超えるとフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂の融解温度に近づく、もしくは超えるため、製膜の際にフィルムの両端を固定するクリップに融着し、延伸装置からフィルムを採取することが困難となる場合がある。熱固定処理後は、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムを得る。
本発明の積層体に用いる熱可塑性樹脂フィルムの接着剤塗布面はコロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施すことが好ましい。上記の処理を行うことで、熱可塑性樹脂フィルムと接着剤の密着性を向上させることができる。
本発明の積層体に好ましく用いる接着剤は主剤として、JIS K 7236により求められるエポキシ当量が800〜1000g/eqのビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を用いることが好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂とは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を意味しており、例えば、ジャパンエポキシレジン社から商品名「エピコート828」、「エピコート1001」、「エピコート1004」、「エピコート1009」、「エピコート1010」などとして市販のものや、大日本インキ社より商品名「エピクロン4050」、「エピクロン9055」、ダウケミカル社より商品名「DER668」、「DER669」などとして市販されているものを用いることができる。硬化剤としてはイミダゾール系硬化剤を用いる。例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−ウンデシルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−エチル−4−メチルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどを1種または2種以上組合せて用いることができるが、なかでも、2−ウンデシルイミダゾールが好ましい。主剤と硬化剤とを5:1〜20:1の比率で混合し、希釈溶剤として酢酸エチルを添加する。溶剤は固形成分濃度が50〜90%となるように添加する。
なお、該接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、老化防止剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、増粘剤、顔料などといった各種配合剤を適宜加えることができる。
前述の熱可塑性樹脂フィルムの表面にグラビアコーターを用いて調製した接着剤を塗布する。その後50〜180℃に加熱した乾燥機内で溶剤を乾燥させる。片面に繊維シートを複合する場合は片面のみ、両面に繊維シートを複合する場合は両面に接着剤を塗布し、乾燥させる。ついで、熱可塑性樹脂フィルムの接着剤が塗布された面と、繊維シートとして市販のアラミド紙(芳香族ポリアミド繊維シート、「ノーメックス」(商標登録)、タイプ410/厚み50μm、デュポン帝人アドバンスドペーパー社製)を重ね、熱した金属ロールとシリコーンゴムロールとからなる熱ラミネート加工機を用いて、熱ラミネートすることで熱可塑性樹脂フィルムと紙繊維シートとを貼り合わせる。ラミネート温度は60℃以上、200℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは80℃以上、180℃以下である。加工圧力(線圧)は、1kgf/cm以上、50kgf/cm以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3kgf/cm以上、40kgf/cm以下である。熱ラミネートの加工速度は0.5〜15m/minの範囲が好ましく、より好ましくは1〜12m/minの範囲である。熱ラミネートによって得られた積層体は、接着剤の硬化を飽和させる目的で40℃の保温室で3〜5日間エージングした後に各種測定等に用いるのが好ましい。
本発明の積層体は電気特性および機械特性に優れることから、自動車用、電気・電子材料の各種部品、とくに各種モーター用の絶縁紙や断熱材、回路基盤用基材、耐熱テープ基材、印刷用トナー攪拌子用フィルムとして好適に用いることができる。
[特性の測定方法]
(1)積層体および積層体を構成する各層の層厚みと層構成、接着剤の有無
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した積層体を、スパッタリング装置を用いて減圧度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍にて観察し、積層体の厚み方向全体が観察できる画像を採取する。観察により得られた画像より積層体の厚みおよび積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルム、繊維シートおよび接着剤層があれば接着剤層の厚みを計測した。
上記の倍率で積層体の厚み方向が全体を確認できない場合は厚み方向に数点の画像を撮影し、画像をつなぎ合わせることで全体像を確認する。厚みの測定に用いるサンプルは任意の場所の合計10箇所を選定し、10サンプルの計測値の平均をそのサンプルのフィルム厚みおよびフィルムを構成する層の厚みとした。
(2)層(I)の粒子濃度および無機粒子の含有の有無、体積平均粒径
a.粒子濃度および粒子の含有の有無
(1)の方法を用いて積層体および各層の厚みを確認したのち、マイクロプレーンと電子マイクロメータ(アンリツ(株)製、K−312A型、針圧30g)を用いて23℃65%RHの雰囲気下で厚みを確認しながら積層体に含まれる層(I)を削りだす。削り取った層(I)のサンプルを秤量したるつぼに入れた後、再度秤量し、サンプルの加熱前の重量を秤量する。次にサンプルが入ったるつぼをマッフル炉(ヤマト科学社製)にて500℃/6hで加熱しサンプルを灰化させる。るつぼを冷却した後に秤量し、加熱後の重量をはかりとり、加熱前後の重量を下記式に挿入し、フィルムに含まれる粒子濃度を算出した。測定はn=3で実施し、その平均値が0より大きい場合は層(I)に粒子を含むと判断し、その平均値をそのサンプルの粒子濃度とした。また、試料量は粒子を含むと判断される場合は残存物の質量が100〜200mgの範囲となるように調整した。
粒子濃度(質量%)=加熱後の重量(mg)/加熱前の重量(mg)×100。 b.体積平均粒径
a.で得られた残存物を精製水と混合し、透過率が90%前後になるように調整した。この分散液をレーザー光回折散乱粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000、日機装製)をもちいて、レーザー光波長780nm、測定温度25℃の条件にて、測定前に超音波処理を4分間行なったのちJIS Z8825−1:2001に準じて測定し、サンプルの粒度分布を求めた。得られた粒度分布から下記式を用いて体積平均粒径を算出した。
体積平均粒径(μm)=Σ(vd)/Σv
d:各粒径チャンネルの代表値、v:各粒径チャンネルごとの粒子の含有量(体積%)のパーセント。
(3)層(I)の空隙率(%)
走査型電子顕微鏡の試料台に固定したサンプルを、フィルム長手方向の断面がみえるようにスパッタリング装置を用いて減圧度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率2000倍にて観察した。得られた観察像について画像解析ソフトウェア((株)マウンテック製、MacView ver4.0)を用いて、樹脂部を白、空孔部を黒に2値化処理し、観察像の厚み方向の位置に対して濃淡(intensity)を取り、分布をグラフ化する。この濃淡分布について濃淡のintensityが増加に転じる点を界面と判別し、空孔を有する層(I)とその他の層(II)とを区別した。得られた観察像のうち、空孔を有する層(I)について、画像解析装置を用いて空隙部分の面積A(μm)と同観察像の内の該層の全面積B(μm)を算出し、下記式に当てはめて層(I)の空隙率C(%)を求めた。上記の操作で10点の観察像の撮影および空隙率の算出を行い、10点の平均を、層(I)の空隙率(%)とした。
層Xの空隙率C(%)=層中の空隙部分の面積A(μm)/層の全面積B(μm)×100。
(4)層(I)に含まれる空孔の平均径(μm)
クロスセクションポリッシャ(日本電子製SM−9010)を用いてクライオ処理したサンプルの長手方向と厚み方向を含む平面における断面を作製後、観察面に白金コートをして観察試料とした。次に、日立製作所社製電界放射走査電子顕微鏡(S−4800)を用いて撮影倍率1500倍、加速電圧は3.0kVで層(I)が含まれるフィルム断面について任意の5箇所を観察し、得られた5つの観察画像について層(I)のみが含まれる部分から任意の縦横比で2500μm の四角形状にトリミングし、画像解析ソフトScion Image(Scion Corporation社製)を用いて、画像に含まれる空孔部分のうち、上記の面積中に空孔の全形が含まれる空孔について空孔部分の外接円の直径を求め、検出個数の平均値を算出し、その値を熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に含まれる空孔の平均径(μm)とした。
(5)熱可塑性樹脂フィルムの融点または軟化点
a.融点(℃)
熱可塑性樹脂フィルムの主成分に結晶性の樹脂を用いる場合は、マイクロプレーンを用いて積層体の両表層にある繊維シートを表層の厚さを超えない範囲で削り取り、熱可塑性樹脂フィルムがむき出しになった部分から試料のサンプリングを行う。JIS K7121−1987に準じ、示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、秤量した3mgの試料をアルミニウム製受皿上で室温から340℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を測定する。測定は1サンプルにつき3回実施し、得られた値の平均値をそのサンプルの融点(℃)とした
b.軟化点(℃)
熱可塑樹脂フィルムの主成分に非晶性の樹脂を用いる場合はaと同様にして熱可塑性樹脂フィルムをむき出しにした後、直径5mmの円形に切り出して試料とする。この試料を、熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、SS6100)に先端径0.5mmの円錐型の針入プローブを用いて、荷重49mNにて10℃/分の昇温条件で加熱し、プローブの針入量と加熱温度のプロットより軟化点を測定する。測定は1サンプルにつき3回実施し、得られた値の平均値をそのサンプルの軟化点(℃)とした。
(6)積層体の200μm換算の部分放電開始電圧(V)
積層体から一辺50mmの正方形のテストピースを切り出し、23℃65%RHの雰囲気下で電子マイクロメータ(アンリツ(株)製、K−312A型、針圧30g)にて サンプルの任意の3箇所の厚みを測定し、その平均値をサンプルの厚み(μm)とした。次に、三菱電線工業社製の部分放電測定器(型名「QM−50」を用いて、部分放電開始電圧の測定を行う。前記テストピースをステンレス板と真鍮電極との間に挟み込み、該ステンレス板と該真鍮電極とに200Vrms/秒の昇圧速度で交流電圧を印加し、部分放電測定器によって測定される放電電荷量が100pCとなったときの電圧値を測定した。測定値および厚みを下記式に挿入し、そのサンプルの200μm換算の部分放電開始電圧を求める。
200μm換算の部分放電開始電圧(V)=測定値(V)/厚み(μm)×200(μm)
測定はn=10で実施し、算術平均にて求めた数値をそのサンプルの200μm換算の部分放電開始電圧とした。
(7)積層体の200μm換算の端裂抵抗(N/20mm)
JISC2151(1990)に準じて評価を行う。試料は幅20mm×長さ300mmにサンプリングした後、23℃65%RHの雰囲気下で電子マイクロメータ(アンリツ(株)製、K−312A型、針圧30g)にて サンプルの任意の3箇所の厚みを測定し、その平均値をサンプルの厚み(μm)とした。次に試験金具B(V字切り込みタイプ)を用いて、引張り速度200mm/分、23℃の条件で測定を行った。端裂抵抗は厚みに比例することから、測定値および厚みを下記式に挿入し、200μm換算の端裂抵抗を求めた。
200μm換算の端裂抵抗(N/20mm)=各サンプルの測定値(N/20mm)/厚み(μm)×200(μm)
測定はフィルムの長手方向および幅方向についてそれぞれ10枚について実施し、算術平均にて求めた数値をそのサンプルの200μm換算の端裂抵抗(N/20mm)とした。

(8)積層体の耐熱性
積層体をMD方向およびTD方向それぞれで幅10mm、長さ250mmに切削して試験片とし、200℃の温度に設定した熱風オーブン中で1000時間の加熱処理を行い、加熱処理前後での破断強度を測定し、下記の式から強度保持率を算出し、下記の判定基準にて評価した。破断強度は、JIS−C2151に規定された方法に従って、テンシロン引張試験機を用いて、幅10mmのサンプル片をチャック間長さ100mmとなるようセットし、引張速度300mm/minで引張試験を行う。この条件でMDおよびTD方向にそれぞれ10回測定し、その平均値を求め、下記の基準にて評価した。
強度保持率(%)=Y/Y0×100
Y0:加熱処理前の破断強度(MPa)
Y:加熱処理後の破断強度(MPa)
A:強度保持率が70%以上
B:強度保持率が60%以上、70%未満
C:強度保持率が60%未満。
(9)積層体の加工性
モータースロット加工機(小田原エンジニアリング社製)を用い、試料を、幅24mm、長さ39mmのスロットに加工速度2ヶ/秒で加工し、加工後のサンプルを目視で確認し、試料の変形および破れが発生したものを不良品とし、不良品発生率を次の基準で評価した。なお、加工個数は各試料100個ずつとする。
AAA:不良率の発生が5%未満
AA:不良率の発生が5%以上10%未満
A:不良率の発生が10%以上15%未満
B:不良率の発生が15%以上20%未満
C:不良率の発生が20%以上
(10)層(I)に含まれる粒子の累積分布の5、50、90%数値の粒子径
(1)の方法を用いて積層体の各層の厚みを確認したのち、マイクロプレーンを用いて所望の層をその厚さを超えない範囲で削り取る。削り取ったサンプルを秤量したるつぼに入れた後、再度秤量し、サンプルの加熱前の重量を秤量する。次にサンプルが入ったるつぼをマッフル炉(ヤマト科学社製)にて500℃/6hで加熱しサンプルを灰化させる。得られた残存物を精製水と混合し、透過率が90%前後になるように調整した。この分散液をレーザー光回折散乱粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000、日機装製)をもちいて、レーザー光波長780nm、測定温度25℃の条件にて、測定前に超音波処理を4分間行なったのちJIS Z8825−1:2001に準じて測定し、サンプルの粒度分布より、累積分布の5%、50%、90%数値の粒子径(D5、D50、D90)を求めた。
(参考例1)ポリフェニレンスルフィド樹脂(顆粒)の製造方法
オートクレ−ブ(最高使用圧力:14MPa)に100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマとして100モルのp−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、270℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により2回洗浄した後、酢酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、蒸留水により1回洗浄し、減圧下120℃の温度にて乾燥して融点が280℃のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂の顆粒を得た。
(参考例2)フィルム用原料(PPS0)の製造方法
参考例1で作製したPPS樹脂の顆粒を、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用原料(PPS0)とした。
(参考例3)フィルム用原料(PPS1)の製造方法
参考例1で作製したPPS樹脂の顆粒50質量%と炭酸カルシウム(CaCO、白石カルシウム社製、P―40、平均粒径5μm)50質量%を、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用原料(PPS1)とした。
(参考例4)フィルム用原料(PPS2)の製造方法
PPS樹脂の顆粒70質量%、炭酸カルシウム30質量%とした以外は参考例3と同様にして、フィルム用原料(PPS2)を得た。
(参考例5)フィルム用原料(PPS3)の製造方法
PPS樹脂の顆粒85質量%、炭酸カルシウム15質量%とした以外は参考例3と同様にして、フィルム用原料(PPS3)を得た。
(参考例6)フィルム用原料(PPS4)の製造方法
PPS樹脂の顆粒95質量%、炭酸カルシウム5質量%とした以外は参考例3と同様にして、フィルム用原料(PPS4)を得た。
(参考例7)フィルム用原料(PEEK1)の製造方法
融点340℃のPEEK樹脂(90G、ビクトレックス社製)のチップ70質量%、炭酸カルシウム(CaCO、白石カルシウム社製、P―40、平均粒径5μm)30質量%を360℃に加熱された参考例3のベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用原料(PEEK1)とした。
(参考例8)フィルム用原料(PEI1)の製造方法
軟化点340℃のPEI樹脂(ULTEM1010、SAVICイノベーティブプラスチックス社製)のチップ70質量%、炭酸カルシウム(CaCO、白石カルシウム社製、P―40、平均粒径5μm)30質量%を350℃に加熱された参考例3のベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用原料(PEI1)とした。
(参考例9)フィルム用原料(PEN1)の製造方法
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、酢酸マンガン・4水和物塩0.03重量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024重量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042重量部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル0.023重量部を添加した。次いで、反応生成物を重合反応器に移し、290℃の温度まで昇温し、0.2mmHg以下の高減圧下にて重縮合反応を行い、固有粘度0.65dl/g、融点265℃のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)チップを得た。このPENチップ70質量%と炭酸カルシウム(CaCO、白石カルシウム社製、P―40、平均粒径5μm)30質量%を290℃に加熱された参考例3のベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用原料(PEN1)とした。
(参考例10)フィルム用原料(PPS5)の製造方法
シリカ粒子としてアドマテックス社製 FE9(D50=6.1μm、D5=0.7μm、D90=11.0μm)と水を1:7の割合で混合しマグネチックスターラーを用いて10分撹拌した。その後、攪拌を止めて30分静置したのち、浮遊する微粒子を含む上澄み液を初期の重量の10wt%分除去する。その後再度スターラーを用いて攪拌した分散液の粒度分布を測定する。この作業をD5=0.9μmとなるまで繰り返したのち、24時間静置して完全に粒子を沈降させたのち、上澄みの水をできるだけ除去し、残ったスラリー状の粒子をバットに広げ、110℃で24時間乾燥させ、水を除去し、粒度分布を調整したシリカ粒子を得た。得られた粒子の粒径はD50=6μm、D5=0.9μm、D90=11μmであった。次に上記で調整したシリカ30wt%と参考例1で作製したPPS樹脂の顆粒70質量%とを、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用原料(PPS5)とした。
(実施例1)
参考例2で得られたPPS0のチップを層(II)用、参考例3で得られたPPS1のチップを層(I)用として、それぞれ180℃で3時間、真空乾燥した後、320℃に加熱された2台の押出機に別々に供給し、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層構成は、(I)/(II)/(I)、積層比は(I):(II):(I)=1:8:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させて、550μmの未延伸の積層シートを得た。次いで、得られた未延伸の積層シートを、表面温度90℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度100℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.2倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に95℃の温度で3.0倍に延伸し、続いて260℃で熱処理し引き続き260℃の弛緩処理ゾーンでTD方向に5%の弛緩処理を行った後室温まで冷却し、厚み90μmのPPSフィルムAを得た。
次に、主剤1としてアクリル樹脂(ポリアクリル酸ブチル)32質量%、主剤2としてエポキシ樹脂(市販品:エポキシ当量が900〜1000g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂)32質量%、硬化剤1としてイミダゾール(2−ウンデシルイミダゾール)4質量%を計量し、32質量%の酢酸エチルを溶剤として混合し、接着剤を調整した。この接着剤をPPSフィルムAの両表面にグラビアコーターを用いて乾燥後の塗布厚みが片面で各5μmとなるように塗布した。次に120℃に加熱した乾燥機内で5秒間溶剤を乾燥させた。この接着剤付のPPSフィルムAの両表面に金属ロールとシリコーンゴムロールとからなる熱ラミネート加工機を用いて芳香族ポリアミド繊維シート(「ノーメックス」(商標登録)、タイプ410/厚み50μm、デュポン帝人アドバンスドペーパー社製)を重ねて、温度180℃、線圧5kgf/cm、速度2m/minで熱ラミネートし、PPSフィルムA(B層)の両面にA層としてアラミド繊維シート(アラミド紙とも言う)が積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例2)
参考例4で得られたPPS2のチップを層(I)用の原料として用いた以外は実施例1と同様にして、厚み90μmのPPSフィルムBを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例3)
参考例5で得られたPPS3のチップを層(I)用の原料として用いた以外は実施例1と同様にして、厚み90μmのPPSフィルムCを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例4)
参考例4で得られたPPS2のチップを層(I)用の原料として用いて、延伸倍率を長手方向(MD方向)に3.1倍、長手方向と垂直の方向(TD方向)に3.0倍に延伸した以外は実施例1と同様にして、厚み90μmのPPSフィルムDを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例5)
延伸倍率を長手方向(MD方向)に3.0倍、長手方向と垂直の方向(TD方向)に3.0倍に延伸した以外は実施例4と同様にして、厚み90μmのPPSフィルムEを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例6)
延伸倍率を長手方向(MD方向)に3.0倍、長手方向と垂直の方向(TD方向)に3.2倍に延伸した以外は実施例4と同様にして、厚み90μmのPPSフィルムFを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例7)
吐出量を調整して未延伸シートの厚みを600μmとした以外は実施例6と同様にして厚み100μmのPPSフィルムGを得た。このPPSフィルムEの両表面に。内部電極方式の低温プラズマ処理装置で、処理ガスにArを用い、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度(印加電圧/(処理速度×電極幅)で計算した値)は500W・min/mにてプラズマ処理を施した。また実施例1で用いたアラミド繊維シートの片面に同様の低温プラズマ処置装置で、処理ガスをNとし、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度は650W・min/mにてプラズマ処理を施した。上記のプラズマ処理を施したPPSフィルムとアラミド繊維シートのプラズマ処理面同士を重ね合わせて、180℃に設定された熱板プレス機にて、圧力40kg/cm2、時間10分間の条件で熱融着積層し、常温まで自然冷却し、A/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。
(実施例8)
繊維シートとしてPPS紙(「トルコン」、東レ製、タイプPS0040S/厚み50μm)を用いた以外は実施例6と同様にして、A/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例9)
融点340℃のPEEK樹脂(90G、ビクトレックス社製)のチップを層(II)用、参考例7で得られたPEEK1のチップを層(I)用として、それぞれ180℃で3時間、真空乾燥した後、360℃に加熱された2台の押出機に別々に供給し、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層構成は、(I)/(II)/(I)、積層比は(I):(II):(I)=1:8:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させて、550μmの未延伸の積層シートを得た。次いで、得られた未延伸シートを、100mm×100mmの大きさにカットして、フィルムストレッチャー(ブルックナー社製、KARO−IV)を用いて 予熱・延伸温度いずれも160℃で予熱時間1分、延伸速度5%/secにてシートの長手(MD)方向に延伸倍率3.0倍、次いでシートの横手(TD)方向に3.2倍の逐次延伸を行い、続いて280℃で熱処理し引き続き280℃のTD方向に280℃で5%の弛緩処理を行った後に室温まで冷却し、厚み90μmのPEEKフィルムを得た。また、PEEKフィルムをB層として用い、実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例10)
軟化点340℃のPEI樹脂(ULTEM1010、SAVICイノベーティブプラスチックス社製)のチップを層(II)用、参考例8で得られたPEI1のチップを層(I)用として、それぞれ180℃で3時間、真空乾燥した後、350℃に加熱された2台の押出機に別々に供給し、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層構成は、(I)/(II)/(I)、積層比は(I):(II):(I)=1:8:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させて、550μmの未延伸の積層シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートを、100mm×100mmの大きさにカットして、フィルムストレッチャー(ブルックナー社製、KARO−IV)を用いて 予熱・延伸温度いずれも230℃で予熱時間1分、延伸速度5%/secにてシートの長手(MD)方向に延伸倍率3.0倍、次いでシートの横手(TD)方向に3.2倍の逐次延伸を行い、続いて280℃で熱処理し引き続き280℃のTD方向に280℃で5%の弛緩処理を行った後に室温まで冷却し、厚み90μmのPEIフィルムを得た。また、PEIフィルムをB層として用い、実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層された厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(実施例11)
参考例10で得られたPPS5のチップを層(I)用の原料として用いた以外は実施例1と同様にして、厚み90μmのPPSフィルムBを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(比較例1)
層(I)を有さないPPSフィルムとして「トレリナ」(東レ製、タイプ3030/厚み100μm)を用いた以外は実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(比較例2)
参考例9で得た融点265℃のPENチップを層(II)用、参考例9で得られたPEN1のチップを層(I)用として、それぞれ160℃で3時間、真空乾燥した後、290℃に加熱された2台の押出機に別々に供給し、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層構成は、(I)/(II)/(I)、積層比は(I):(II):(I)=1:8:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させて、550μmの未延伸の積層シートを得た。次いで、得られた未延伸の積層シートを、表面温度130℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度100℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.0倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に130℃の温度で3.2倍に延伸し、続いて230℃で熱処理し引き続き230℃の弛緩処理ゾーンでTD方向に5%の弛緩処理を行った後室温まで冷却し、厚み90μmのPENフィルムを得た。
また、PENフィルムをB層として用い、実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(比較例3)
参考例6で得られたPPS4のチップを層(I)用の原料として用いた以外は実施例1と同様にして、層(I)の空孔率が10%、厚み90μmのPPSフィルムHを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
(比較例4)
延伸倍率を長手方向(MD方向)に3.5倍、長手方向と垂直の方向(TD方向)に3.0倍に延伸した以外は実施例4と同様にして、厚み90μmのPPSフィルムIを得た。また実施例1と同様にして両表層にアラミド繊維シートが積層されたA/B/A構成の厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体は40℃の保温室で5日間エージングした後に、各種評価を実施した。
実施例1〜10、比較例1〜4で得た積層体の特性評価結果を表1に示す。
Figure 2019127033
Figure 2019127033

Claims (11)

  1. 融点または軟化点が270℃以上の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維シートを複合してなる積層体であって、前記熱可塑性樹脂フィルムが2層以上の積層構成を有し、構成する層の少なくとも1層は無機粒子を含有し、かつ空隙率が20%以上の層(I)であり、積層体の200μm換算の端裂抵抗が150N/mm以上であることを特徴とする積層体。
  2. 積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムと繊維シートが接着剤を介すことなく複合されていることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
  3. 積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムと繊維シートが、接着剤を用いて積層されたことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
  4. 200μm換算の端裂抵抗が170N/mm以上であることを特徴とする積層体。
  5. 積層体全体の厚みが50〜500μmであることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
  6. 積層体を構成する熱可塑性樹脂フィルムが二軸延伸されたフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層体を用いた断熱材。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層体を用いた絶縁材。
  9. 請求項8に記載の絶縁材を用いたモーター。
  10. 請求項1〜6に記載の積層体を用いたテープ。
  11. 請求項1〜6に記載の積層体を用いた攪拌子。
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