JP4385693B2 - 積層体およびその製造方法 - Google Patents
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(1)燐青銅板にPPSフィルムを積層し、該積層体を可変コンデンサに用いたもの(例えば特許文献2参照)。
(2)二軸延伸PPSフィルム(以下PPS−BOと略称することがある)の表面にプラズマ処理やコロナ処理等を施し該PPSの融点以下の温度で熱融着したものを金属ベース回路基板に用いたもの(例えば特許文献3参照)。
(3)PPS−BOと未延伸PPSフィルム(以下PPS−NOと略称することがある)の積層フィルムのPPS−NOの面と金属板を熱融着接合したもの(例えば特許文献4参照)。
(4)二軸延伸ポリ−p−フェニレンサルファイド(以下ホモPPSと略称する場合がある)フィルムに共重合PPS層を積層したPPS積層フィルムの共重合PPS層と金属板を熱融着積層したものを金属ベース回路基板に用いたもの(例えば特許文献5参照)。
まず、本発明で用いるPPSは、例えば、硫化アルカリとp−ジクロルベンゼンを極性溶媒中で高温高圧下に反応させる方法を用いることができる。特に硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンをN−メチル−ピロリドン等のアミド系高沸点極性溶媒中で反応させることが好ましい。この場合、重合度を調整するために苛性アルカリ、カルボン酸アルカリ金属塩などのいわゆる重合助剤を添加して、230〜280℃で反応させるのが最も好ましい。重合系内の圧力および重合時間は使用する助剤の種類や量および所望する重合度などによって適宜決定される。さらに、最終的に得られるフィルムの揮発分等を取り除くために重合されたポリマ(一般的に粉末状)を金属イオンを含まない水や湯、有機溶媒で充分洗浄し、重合中の副生塩、重合助剤を除去することが好ましい。
<物性および評価方法、評価基準>
(1)配向度OF
本発明の積層体の金属板を希酸(希塩酸等で金属の種類により選定することができる。本実施例では、13%の塩酸を用い24時間程度かけてエッチングして該積層体のPPS層のみを取り出した。2層積層体の場合は、金属板を上記エッチング後、2層目のPPS層をレーザでエッチングし1層目のPPS層のみ取り出した。
各試料を同方向にそろえて厚さ1mm、幅1mm、長さ10mmの短冊状の成形(成型時の各フィルムの固定は5%酢酸アミル溶液)し、フィルムの膜面にそってX線を入射(EdgeおよびEnd方向)してプレート写真を撮影した。X線発生装置は理学電機製D−3F型装置を用い、40kV−20mmAでNiフィルターを通したCu−Ka線をX線源とした。試料−フィルム間距離は41mmでコダックノンスクリーンタイプフィルムを用い多重露出(15分および30分)法を採用した。次にプレート写真上の(200)ピークの強度をφ=0゜(赤道線上)、10゜、20゜、30゜の位置で写真の中心から半径方向にデンシトメータを走査し黒化度を読みとり各試料の配向度OFを下記定義した。
OF=Iφ=30゜/Iφ=0゜
ここでIφ=30゜は30°の走査の最大強度、Iφ=0°は赤道線走査の最大強度である。なお、Iφ=0°はφ=0°とφ=180°、Iφ=30°はφ=30°とφ=150°の強度の平均値を用いた。ここでデンシトメータの測定条件は次の通りである。
装置は小西六写真工業製サクラマイクロデンシトメーターモデルPDM−5タイプAを使用し測定濃度範囲は0.0〜4.0D(最小測定面積4μ2換算)、光学倍率100倍、スリット幅1μ、高さ10μを使用しフィルム移動速度50μm/秒でチャート速度は1mm/秒である。
50mm角の積層体を樹脂層外に90度折り曲げ加工し、121℃、2気圧の飽和水蒸気の耐圧容器(内側ガラスコート)に入れ、定期的に取り出して、樹脂層の90度に折り曲げられた分部に同型の真鍮沿わしプラスチック製のクリップで固定して、該真鍮を電極にした。また金属板側をアース極にして直流2kVの電圧をかけ、その電流値をチャートに記録し下記の基準で評価した。
○:エージング時間が200時間で上記電流が0.2mA以下であった。
△:エージング時間が100時間で上記電流が0.2mA以下で該エージング時間が200時間経つと電流値が0.2mAを越えた。
×:エージング時間が100時間で上記電流値が0.2mAを越えた。
上記(2)のエージング後のサンプルを取り出し、該折り曲げ部分の断面を顕微鏡(10倍)で観察し、発生クラック等の状態から下記の基準で評価した。
○:樹脂層と金属板の界面にクラックや気泡、剥がれ等の欠陥が全く発生していない。
△:樹脂層と金属板の界面にクラックや気泡、剥がれ等の欠陥が少し発生しているが実用上問題ないレベル。
×:樹脂層と金属板の界面にクラックや気泡、剥がれ等の欠陥が発生し実用上問題があるレベル。
積層体の作成後の樹脂層表面を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:樹脂層表面に、皺、気泡が見られなかった。
△:樹脂層表面に、多少皺や気泡が見られた。
×:樹脂層表面に、多数の皺や気泡が発生し実用上問題であった。
積層体を、サイズが50mmφ、深さが最大10mmφの半球状に常温にてプレスで絞り成形したときの成形常態を、顕微鏡により断面観察し下記の基準で評価した。
○:樹脂層に剥がれやクラック等が全く見られず、成形性に問題ないレベル。
△:樹脂層に一部微少な剥がれ部分あるが、クラックはなく実用上問題ないレベル。
×:樹脂層に剥がれまたは/およびクラックが発生し実用上問題になるレベル。
積層体(10mm幅×50mm)を金属ロールからなるカレンダニングロール(プレスロール)で10%金属を圧延した後、手で剥がして密着力を下記の基準で評価した。プレス圧力は金属の種類や厚さで調整した。
○:金属板と樹脂層の界面に力を入れても簡単に剥がれない。
△:金属板と樹脂層の界面に力を入れたら一部が浮き上がるが他は簡単に剥がれない。
×:圧延後に剥がれるか、金属板と樹脂層の界面に力を入れたら簡単に剥がれる。
JIS C2151(1990)に準じて、フィルム面にアルミニウム蒸着で電極を作成し、金属面をアース側にして、1MHzの周波数で測定し、%表示して比較した。
パージ&トラップ法により試料を加熱して発生したガスを有機成分吸収管(ORBO−100)、無機成分吸収管(ORBO−52)にそれぞれ捕集し、有機成分を溶媒脱離法で溶出してガスクロマトグラフィー、無機成分を溶媒脱離法で溶出してイオンクロマトグラフィーをそれぞれ用いて測定した。また、試料の量および加熱は以下の条件で行った。
試料:ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物あるいはポリフェニレンサルファイドフィルム0.5〜3.0g
加熱温度:250℃、150℃
加熱雰囲気:空気気流(100ml/分)中
加熱時間:1時間
上記の250℃揮発分と150℃揮発分の差を高温揮発分とした。
PPSフィルムの長手方向、幅方向各々を10mm幅×230mm長に切り出し、該長尺方向に200mm間隔のマークを入れ、金尺で正確にマーク間距離を読みとる(αmm)。該サンプルを250℃の熱風オーブンに10分間エージングした後に該サンプルのマーク間距離を上記の方法で読みとる(βmm)。上記のマーク間距離から次式で熱収縮率を算出し%で表した。
加熱収縮率(%)=(α−β)/α×100
(10)融点の測定
示差熱量分析法(DSC法)で測定した融点のピークの頂点を融点とした。
(1)PPSの重合
オートクレーブに硫化ナトリウム32kg(250モル、結晶水40wt%を含む)、水酸化ナトリウム100g、安息香酸ナトリウム36.1kg(250モル)、およびN−メチル−2−ピドリドン(以下NMPと略称する)79.2kgを仕込み、撹拌しながら徐々に205℃まで昇温し、水6.9kgを含む留出液7リットルを除去した。残留混合物に1,4−ジクロルベンゼン(以下DCBと略称する)37.5kg(255モル)、およびNMP20kgを加え、250℃で5時間重合した。得られた反応生成物をイオン交換水を用いた熱湯とNMPで交互に8回洗浄し、真空乾燥機で80℃、24時間乾燥した。得られたPPS粉末ポリマの溶融粘度は4100ポイズ、ガラス転移温度90℃、融点285℃であった。
(2)PPS樹脂組成物の調合
上記(1)で得られたPPSの粉末に、平均粒径が1μmの炭酸カルシウム粉末を1%添加しヘンシェルミキサーで混合した後、30mmφ二軸押出機で320℃の温度にてガット状に押しだし、水中で冷却後短くカットしてPPS樹脂組成物のペレットを作成した。
(3)PPS樹脂組成物の乾燥
上記(2)で得られたポリ−p−フェニレンサルファイド樹脂組成物を180℃、10mmHgの減圧下にてミキサーでかき混ぜながら7時間乾燥した後、160℃、10mmHgで5時間乾燥した。得られたポリ−p−フェニレンサルファイド樹脂組成物の250℃での揮発分から150℃での揮発分を引いた差(高温揮発分)は0.15重量%であった。
(4)二軸延伸PPSフィルムの製造
上記(3)の乾燥ペレットを50mmφの単軸押出機に供給し320℃の温度で溶融し、300mmのスリット状のTダイから押し出し、表面温度30℃の鏡面金属ドラムにキャストし、厚さ350μmの未延伸PPSシートを得た。該シートをロール群からなる縦延伸装置に導き、98℃の温度で3.7倍長手方向に延伸した。その後、横延伸装置(テンター)に該一軸延伸フィルムを導き、延伸温度98℃、延伸倍率3.5倍で幅方向に延伸し、後続する熱処理室で270℃の温度で10秒間熱処理した。さらに同一テンターで幅方向に5%のリラックスを行い、25μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを得た。該フィルムの配向度OFは、Edge方向が0.68、End方向が0.71であった。更に該フィルムの表面に6000J/m2のコロナ放電処理を施した。また得られたPPSフィルムの高温揮発分は0.016%であった。また250℃の熱収縮率は、長手方向が4.1%、幅方向が1.8%であった。
(5)金属との積層
1mm厚さ、表面粗さ(Rt)が3μmのアルミニウム板(表面にリン酸クロム塩処理)を準備した。金属との積層は、アルミ板を連続にヒータで加熱しながら、金属ロール(25℃に通水冷却)とシリコンゴム被覆ロール(25℃に通水冷却)からなるプレスロールに供給し、該プレスロールで二軸延伸PPSフィルムと連続的に熱圧着積層した。加熱されたアルミ板の表面温度は380℃(赤外線温度計で測定)で、プレスロールに供給された二軸延伸PPSフィルムがアルミ板と熱圧着される直前の温度は360℃(赤外線温度計で測定)であり、プレス圧力は3kg/cmに調整した。また該積層は、アルミ板の表面処理面とフィルムのコロナ放電処理が積層されるようにした。このようにして得られた積層体を積層体−1とする。
実施例1と同様の方法で、二軸延伸PPSフィルムとアルミ板を熱圧着したが、アルミ板の加熱温度を変更し、該表面温度が330℃で、熱圧着直前のフィルム温度は310℃であった。このようにして得られた積層体を積層体−2とする。
実施例1と同様の方法で、二軸延伸PPSフィルムとアルミ板を熱圧着したが、アルミ板の加熱温度を変更し、該表面温度が305℃で、熱圧着直前のフィルム温度は295℃であった。このようにして得られた積層体を積層体−3とする。
実施例1と同様の方法で、二軸延伸PPSフィルムとアルミ板を熱圧着したが、アルミ板の加熱温度を変更し、該表面温度が300℃で、熱圧着直前のフィルム温度は283℃であった。このようにして得られた積層体を積層体−4とする。
実施例1の未延伸PPSシートの製造で、溶融押出機へのPPS樹脂組成物の供給量を制御して、厚さ25μmの未延伸PPSシートを得た(得られた未延伸PPS層の配向度OFは、Edge:0.97、End:0.95であった)。該シートを実施例3の条件で未延伸PPSシートと金属板を熱圧着し積層体−5を得た。
特開平4−319436号広報の実施例3の方法および条件で、PPS組成物/共重合PPS組成物の積層二軸延伸フィルム得た。フィルムの厚さは25μmで、該PPS組成物層は19μm、共重合PPS組成物層の厚さは6μmになるよう調整した。なお、該共重合PPSの融点は253℃であった。
該積層フィルムを実施例1の熱圧着方法で、熱圧着直前のフィルム温度が255℃になるよう調整した。該積層体を積層体−6とする。
市販されているポリイミドワニス(東レ製“トレニース”#3000)を実施例1で用いたアルミ板に乾燥後の塗布厚みが25μmになるようアプリケーターで調整し、270℃の温度で2時間イミド化反応させた。得られた積層体を積層体−7とする。
実施例1に用いたアルミ板に、市販されているシリコン樹脂(スリーボンド3160)を硬化後の厚さが25μmになるようアプリケーターで調整し、紫外線で硬化させた。得られた積層体を積層体−8とする。
実施例1の二軸延伸PPSフィルムのコロナ処理面に耐熱ウレタン系の接着剤(東洋モートン社製:アドコート76P1)を10μm/dryの塗布厚みになるようメタリングバーで調整し、実施例1のアルミ板に積層した。積層の条件は加熱プレス方式で温度100℃、プレス圧1kg/cmであった。また熱硬化の条件は、80℃で2日間とした。この積層体を積層体−9する。
実施例1と同条件で12μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを得た(配向度OF:Edge=0.72、End=0.75、250℃の加熱収縮率は、長手方向が5.3%、幅方向が1.7%)。該フィルムを実施例1の方法でアルミ板に積層(熱圧着)した。アルミ板の加熱温度は320℃で、熱圧着直前のフィルム温度は305℃であった。該積層体を積層体−10とする。
実施例1と同じ方法で150μmの二軸延伸PPSフィルムを得て(配向度OF:Edge=0.66、End=0.64、加熱収縮率は長手方向が4.0%、幅方向が1.2%)、実施例1の方法でアルミ板に熱圧着した。アルミ板の加熱温度は400℃、熱圧着直前のフィルム温度は320℃であった。この積層体を積層体−11とする。
実施例1と同条件で100μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを得た。該フィルムを実施例1で得られた積層体−1のPPS層の上に実施例1の方法で熱圧着し本発明の2層積層体を得た。但し、熱圧着の条件は、積層体−1を320℃に加熱し、プレスロールに上記100μmのPPSフィルムを供給する直前の温度は290℃であった。該積層体を積層体−12とする。
実施例5で得た150μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを実施例4の積層体−10に熱圧着して本発明の2層積層体を作成した。この場合の積層体−10の加熱温度は330℃、プレスロール供給直前のフィルム温度は295℃であった。該積層体を積層体−13とする。
実施例1の二軸延伸PPSフィルムの延伸倍率、延伸温度、熱処理温度、リラックス率等を変更し、配向度OFおよび加熱収縮率が異なる50μmの二軸延伸PPSフィルムを得た。得られた3種類のフィルムの特性を表1に示す。該フィルムを実施例1の方法で、アルミ板の加熱温度が340℃、熱圧着温度を310℃になるよう調整し3種類の積層体(積層体−14〜16)を得た。
実施例1の方法で、PPSの重合後の洗浄回数を6回にし、そのPPS樹脂組成物のペレットの真空乾燥の条件は、温度140℃、真空度を10mmHgにし乾燥時間を6時間のみにした。乾燥後の樹脂組成物の高温揮発分は0.38重量%であった。その他は実施例1の方法で厚さ25μmの二軸延伸PPSフィルムを得た。得られたフィルムの高温揮発分は0.024重量%であり、積層体の製造条件も実施例2の条件を用いた(積層体−17)。
実施例1の条件で、50μmのPPSフィルムを得(配向度OF:Edge=0.67、End=0.70、250℃の加熱収縮率は、長手方向が4.6%、幅方向が1.8%)、金属板を0.5mmのSUS板(表面粗さRt:3μm)を用いて、実施例1の方法で積層体を作成した。SUS板の加熱温度は340℃、フィルムとの積層直前のフィルムの温度は310℃であった。該積層体を積層体18とする。
実施例および比較例の評価の結果を表2に比較して示す。
まず、本発明の積層体(実施例1〜3)と従来品(比較例1〜6)を比較してみる。
これに対し、PPSフィルムの融点以下の温度で熱圧着した、本発明の積層体のPPS層の配向度OFが0.65未満の比較例1の積層体−4(PPSフィルムの融点以下で熱圧着したもの)は密着力が弱いために界面剥離しやすく高温高湿度下での絶縁の信頼性が低下する。また絞り成形で完全に剥がれてしまう。また、積層体のPPS層に未延伸PPSシートを用いた比較例2の積層体−5は金属板との密着力は良好なものの、未延伸シート層の配向度OFが0.90を越え、樹脂層の配向が弱く結晶化の影響も受けて、折り曲げ加工や絞り成形加工で樹脂層にクラックが発生し絶縁の信頼性が低下する。また密着性に優れる共重合PPSの積層フィルムを用いた比較例3の積層体−6も、折り曲げられた常態で高温、高湿度の雰囲気に長時間晒されるとクラックが発生し絶縁の信頼性が低下する。
Claims (4)
- 金属板の少なくとも片方の面に、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなる樹脂層が接着剤を介することなく積層された積層体であって、樹脂層の配向度OFが0.65〜0.9の範囲であることを特徴とする積層体。
- ポリフェニレンサルファイドがポリ−p−フェニレンサルファイドである請求項1記載の積層体。
- 樹脂層の表面に更にポリフェニレンサルファイドフィルムが接着剤を介することなく積層された請求項1または2記載の積層体。
- ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなる樹脂層に、高温揮発分が0.02重量%以下、250℃の加熱収縮率が8%以下であるポリフェニレンサルファイドフィルムを該フィルムの融点以上の温度で熱圧着することを特徴とする積層体の製造方法。
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