JP7187914B2 - ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents
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Description
題を解決するために次の構成を有する。すなわち、ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層されたフィルムであって、A層がフィルム表面の少なくとも片面の最表層に配され、下記式(i)で表される屈折率比が0.90以上1.02以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルムである。
(i) 屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB)
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層された構造を有する。積層構成としては、A層をA、B層をBとした場合、A/Bの2層、A/B/A、A/B/A/B、A/B/A/B/Aなどの多層構成が挙げられるが、これに限定されない。また、A層、B層とは異なる組成からなる層をさらに追加した層構成にすることもできる。なお、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂と前記共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂とは、一次構造、すなわち化学構造において同一ではない。ここで主成分とは、A層およびB層を構成する原料の80質量%以上を占めることをいう。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、-(Ar-S)-の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(1)~式(11)などであらわされる単位などがあげられる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのB層に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の繰り返し単位としては、上記の式(1)で表されるp-アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp-アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p-フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
本発明の共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層、以下A層とも言う)の主成分である共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂は、80~95モル%がポリ‐p‐アリーレンスルフィドユニットで構成されてなり、好ましくは85~92モル%以下である。かかる成分が80モル%未満では、結晶性が低下し、耐熱性、長期接着性が低下する場合があり、95モル%を超えると、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点を充分低下させることができず金属あるいは樹脂との接着性が低下する場合がある。
(i) 屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB)
屈折率比が上記の範囲とすることで、A層とB層の配向差が小さくでき、収縮応力差が減少し、接着加工後のカールを抑制することができる。これにより、接着加工後の外観を改良することができる。屈折率比が0.90未満であると、A層に対してB層の配向が大きいため、B層側の収縮によりカールが発生し外観性が悪化する場合がある。また、屈折率比が1.02を超えるとA層に対してB層の配向が小さくなり、A層側の収縮によりカールが発生する場合がある。屈折率比はより好ましくは0.93以上1.00以下であり、さらに好ましくは0.95以上0.98以下である。屈折率比を上記範囲とするには、後述する製膜条件の中でも延伸温度および/またはB層の樹脂組成を変更することで達成できる。屈折率および屈折率比は後述する手法にて評価できる。
積層比を上記の範囲とすることでA層とB層の収縮応力の釣り合いを取ることができカールを抑制し接着性を向上することができる。A層の積層比が0.55未満の場合、B層の収縮応力が大きくなり、剥離方向に応力がかかるため接着性が低下する場合がある。また、A層厚みの比率が0.85を超えると、A層の収縮応力が大きくなり熱圧着加工時にシワや気泡などによって接着耐久性が低下する場合がある。A層厚みの比率はより好ましくは0.60以上0.7以下である。ポリアリーレンスルフィドフィルムのA層の積層比を上記の範囲とするには、溶融押出の際の吐出量を調整することで達成できる。本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのA層の積層比は後述する手法を用いて測定することができる。
(iii)温度比=T-meta/TmA
温度比を上記範囲とすることは、ポリアリーレンスルフィドフィルムがA層の融点近傍における熱履歴を受けていることを示す。これより、加熱圧着時に熱変形が小さくなることでシワやエア噛みが抑制でき外観性を向上させることができる。また、前記温度比は好ましくは0.98以上1.02以下である。温度比が1.06を超えると、フィルムの融解が進み、破れや粘着によって製膜性が悪化する場合がある。0.98未満であると熱圧着加工時に大きく熱変形が生じ外観性が悪化する場合がある。温度比を上記範囲とするには、製膜条件の中でも熱固定温度を調整することで達成でき、特にT-metaは、製膜機や製膜速度によって変動するが熱固定温度が高いほど高くなる。本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの温度比は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
未延伸フィルムを加熱ロール郡で加熱し、長手方向に2.8~4.5倍、より好ましくは3.2~4.0倍、1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。本発明では、MD延伸の際に、式(v)で表される積層フィルムのA層の延伸表面温度とB層の延伸表面温度差が5℃以上18℃以下であることが好ましい。
(v)延伸表面温度差=(B層延伸表面温度)-(共重合A層延伸表面温度)
本発明でいう延伸表面温度は、延伸ロールと冷却ロール間におけるフィルム延伸部における表面温度を指し、延伸表面温度差を上記範囲とすることで、積層フィルムの配向差を抑制できるため、カール量を低減でき、外観性と接着性を両立することができる。延伸表面温度差が5℃未満であると配向差が大きくカール量が大きくなる場合がある。延伸表面温度差が18℃を超えると、配向がし難く製膜性が悪化する場合がある。延伸表面温度差は、7~16℃の温度差をつけることがより好ましく、7~12℃が更に好ましく、9~10℃が最も好ましい。延伸表面温度差はロールの温度設定を交互に変更する手法や、延伸前に一方の面に赤外線ヒーターを設置し一方面を加熱する手法があるが、赤外線ヒーターを設置する手法が表面温度を制御しやすく好ましい。フィルム表面温度は放射温度計を用いて測定することができる。
MD延伸前の予熱は、予熱ロールと赤外線ヒーターによって制御することができ、赤外線ヒーターは予熱ロールと延伸ロールの間に設置することが好ましい。予熱ロール温度は、{共重合PPSのガラス転移温度(TgA)}~(TgA+12)℃の範囲であり、赤外線ヒーターを用いてB層のフィルムの延伸直前の予熱表面温度を{PPSのガラス転移温度(TgB)+5}~(TgB+30)℃、好ましくは(TgB+10)~(TgB+25)℃の範囲となるように制御する。上記の予熱温度とすることで、続く延伸工程でフィルムの延伸表面温度差をつけることができ、カール量を抑制することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記金属とのシール材として好適に用いることが可能であり、例えば、コネクタ、プリント基板、封止成形品などの電子・電気用シール材として使用される。また、金属および/または樹脂成形体との複合体は、自動車部材としてハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などに使用される駆動モータ用絶縁材用シール材に使用される。また、同様に電池用シール材などとしてシールされることにより形成され、電池用部材として使用される。
また、さらに、金属および/または樹脂成形体との複合体は金属腐食予防用の内張り材、建材などとして有用である。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属を主成分とする回路を少なくとも1層以上含み、かつA層と回路が接してなる回路基板として用いることも有用である。本発明において回路とは、導電体をパターン化した電気の通路で、その導電体の材料としては、銅、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属材料、カーボン材料などを主たる成分とする材料であり、必要な導通性などに応じて適宜選択される。また、回路に電気部品や電子部品が実装されていてもよい。また、該回路基板が2層以上積層されてあってもよい。かかる回路基板にはドリル、レーザー、溶融貫通法などで穴をあけて、一方の面の回路から反対面の回路を導通させて使用することも好ましく用いられる。
回路の形成方法は、本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに、i)膜状の金属を熱融着(熱圧着)する、ii)蒸着やスパッタなど乾式法で金属を堆積させる、iii)メッキなどの湿式法で形成する、等によりフィルムの少なくとも片面に金属層を設けた複合体とし、感光性樹脂を塗布し、回路形状を光で焼き付けた後、未露光部分の樹脂を除去して得ることができる。金属層が銅の場合には塩化第二鉄水溶液でエッチングする方法が例として挙げられるがこれに限定されない。また、iv)金属材料やカーボン材料などを分散させた塗料を用いて、回路パターン上に印刷、乾燥する、v)所望の形状に形成した金属材料からなる回路を熱融着(熱圧着)する、ことなどによっても得ることができる。これらの中でもi)、v)の方法が簡便で、生産性が高いという点で有用である。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いてなる回路基板は、接着性、接着耐久性、電気絶縁性、低吸湿性、難燃性、耐熱性などに優れることから高周波アンテナ基板、高速伝送ケーブル、フレキシブルフラットケーブルなどとして有用である
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いてなる回路基板は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層されてなり、かつ金属を主成分とする回路がA層と接してなる回路基板であって、かつ下記式で表される屈折率比が0.90以上1.02以下であることを特徴とするものである。
屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB)
屈折率比を上記の範囲とすることで、A層とB層の配向差が小さくでき、収縮応力差が減少し、高温環境下での密着性の低下を抑制することができる。屈折率比が0.90未満であると、A層に対してB層の配向が大きいため、B層側の収縮によりカールが発生し高温環境下での密着性が低下する場合がある。また、屈折率比が1.02を超えるとA層に対してB層の配向が小さくなり、B層側の収縮によりの高温化での密着性が低くなる場合がある。屈折率比はより好ましくは0.93以上1.00以下であり、さらに好ましくは0.95以上0.98以下である。屈折率比を上記範囲とするには、熱プレスのラミ条件の中でもプレス温度および/またはB層の樹脂組成を変更することで達成できる。屈折率および屈折率比は後述する手法にて評価できる。
本発明における回路基板の回路については上述の回路と同様のものであるが、その幅は加工性の観点から0.02mm以上が好ましい。より好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。幅0.02mm未満の場合、加工時のハンドリング性が悪化や、屈曲された場合に断線する場合がある。
回路の厚みは、加工性と絶縁性の観点から1μm以上100μm以下が好ましい。より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μ以上90μm、さらに好ましくは、15μm以上90μm以下である。1μm未満の場合、加工時のハンドリング性が悪化する場合がある。100μmを超えると回路とA層との間に間隙が発生し絶縁不良となる場合がある。
本発明の回路基板の作成方法の一例について、フラットケーブルの場合の例を示す。フラットケーブルを製造する方法は、2枚のポリアリーレンスルフィドフィルムを、A層側を対向させ、その間に線状に形成された金属材料を複数、間隔をあけて並べて挟み、熱融着(熱圧着)、レーザー溶着、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着、スピン溶着などにより貼り合わせる。これらの中で生産性の観点から熱融着(熱圧着)が好ましく用いられ、その温度としては、ポリアリーレンフィルムのA層の融点Tm以上、B層の融点以下とするのが好ましい。また貼合わせ後には線状の金属材料はその断面方向から観察した際に、A層を構成する樹脂が金属材料の周囲を被覆していることがより耐久密着性に優れるため好ましい形態である。
[特性の測定方法]
(1)屈折率
A層とB層の屈折率は下記装置を用いて、エリプソメトリー法で屈折率を求める。本発明においてA層/B層の2層構成の場合は、A層面から測定した結果をA層の屈折率nAとし、B層面から測定した結果をnBとする。一方、A層/B層/A層やB層/A層/B層のように両表層にA層またはB層が積層されてなり、A層またはB層が最表面ではない場合は、表層を剥離して測定する方法、特開2014-149346などに記載のプラスチック用研磨布で研磨し、表層を取り除いて測定を行う。各面を3回測定し平均値を各層の屈折率とする。
光源:ハロゲンランプ
検出器:Si-Ge
偏光子・検光子:グラムトムソン
検光子回転数:2回
入射角:45°~80°、0°
測定波長:590nm
(2)フィルム厚みおよび積層比
ポリアリーレンスルフィドフィルムの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均値を求めた。
下記装置および条件で、熱収縮率測定を行う。
・測長装置 :万能投影機
・試料サイズ :試長150mm×幅10mm
・熱処理装置 :ギアオーブン
・熱処理条件 :250℃、5分
・荷重 :3g
・算出方法
熱処理前にサンプルに100mmの間隔で標線を描き、熱処理後の標線間距離を測定し、下記式によって熱収縮率を算出する。試長の方向が長手方向または幅方向に平行になるように5サンプルずつ採取して測定を実施し、それぞれの平均値で評価を行う。
(4)表面粗さ(SRa)
小坂研究所製Surfcorder ET30HKを用い、下記条件にてA層表面の平均中心線粗さ(SRa)を求めた。
カットオフ : 0.25mm
測定長 : 0.5mm
測定間隔 : 5μm
測定回数 : 40回。
JIS K7121(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC-RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
1.金属との接着性
横30mm×縦150mmサイズのアルミニウム板(合金番号:A1050、厚さ:0.5mm)2枚を、縦方向の先端から15mmの部分で90℃に折り曲げた。また、PPSフィルムを横30mm×縦15mmサイズにサンプリングし、前記アルミニウム板の折り曲げ部分に縦横が合わさるように重ね合わせ2枚のアルミ板にはさんだ。PPSフィルムをはさんだ部分のみをプレス機にて260℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムとアルミニウム板との積層体を作製した。作製した積層体のフィルムと貼り合わせをしていない金属板の端部を、各々引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が250N/30mm以上
A:接着強度が200N/30mm以上、250N/30mm未満
B:接着強度が100N/30mm以上、200N/30mm未満
C:接着強度が100N/30mm未満。
2.樹脂成形体との接着性
140℃で3時間静置乾燥したPPS樹脂(A310M、東レ(株)製)を、射出成形機を用いて射出温度330℃、金型温度140℃、射出圧力40MPaで射出し、横10mm×縦130mm、厚み4mmの樹脂成形体を作製した。また、フィルムを横10mm×縦130mmサイズにサンプリングし、両サンプルの先端部分10mm×15mmのみをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムと樹脂成形体との積層体を作製した。フィルムと貼り合わせをしていない樹脂成形体の端部およびフィルムの端部それぞれを引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が120N/10mm以上
A:接着強度が80N/10mm以上、120N/10mm未満
B:接着強度が30N/10mm以上、80N/10mm未満
C:接着強度が30N/10mm未満。
上述する金属とフィルムの積層体をヒートサイクル試験し後述する方法にて接着耐久性とした。ヒートサイクル試験は、「-40℃雰囲気下に30分放置後、150℃雰囲気下にて30分放置する」という条件を1サイクルとし、計10サイクル実施することを条件とした。ヒートサイクル試験後の積層体を上述と同様の方法で最大接着強度を求め、ヒートサイクル試験前の接着強度をE0、ヒートサイクル試験後の接着強度をE1とし、下記式により接着強度保持率を算出する。接着強度保持率から長期接着性を以下の基準で判定をした。
接着強度保持率=E1/E0×100
AA:接着力保持率が90%以上
A:接着力保持率が80%以上90%未満
B:接着力保持率が60%以上80%未満
C:接着力保持率が60%未満
(8)外観性(I)
ポリアリーレンスルフィドフィルムを10cm角に切り出し、15cm角に切り出したカプトン(登録商標)フィルム(厚み25μm)で挟みこみ、250℃、5MPaの条件にて上下から5分間加熱プレスを実施した後、温度25℃、湿度60%に調整された部屋で24時間調整する。調整されたサンプルを平坦な台上に置き、垂直方向での4隅の浮き高さ最大の高さ(mm)を測定した。なお、フィルムを台上においた際に上面がポリアリーレンスルフィド樹脂からなるB層の場合を正、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂A層の場合を負の値とした。サンプルが丸まって筒状となる場合は測定不可とした。
AA:カール量が-7mm以上、7mm以下
A:カール量が-10mm以上、10mm以下
B:カール量が-15mm以上、15mm以下
C:フィルムが筒状に変形および/または収縮変形が大きく測定不可
(9)外観性(II)
平角銅線(幅4mm×厚み1mm×長さ100mm)に積層フィルム(幅14mm×150mm)を共重合PPS層(A層)が銅側となるように隙間無くらせん状に巻きつけ端部を耐熱テープで固定し、250℃のオーブンで90秒間過加熱した。その際の外観を下記基準で判定した。
AA:巻きズレやシワ、気泡がない。
A:巻きズレが少しあるが、シワや気泡がない。
B:巻きズレ、シワ、気泡が少しある。
C:巻きズレ、シワ、気泡があるが使用できる。
D:巻きズレ、シワ、気泡が大きく使用不可。
実施例および比較例に記載の製膜を10時間連続して行い、フィルム破れ(縦延伸時の破断および横延伸、熱固定処理時のいずれも含む)の発生回数を以下の基準で判定をした。
A:破れ発生なし(製膜安定性良好)
B:破れの発生頻度が5回以下(製膜安定性に劣る)
C:破れの発生頻度が5回を超える(製膜安定性に難あり)
(11)回路の包埋性
横50mm×縦150mmサイズのフィルムを、A層を上側にしてプレス機の下板状に置き、その上に銅線(圧延銅箔(C1100)、幅2mm、長さ:38μm)4本を互いに平行に、2mm間隔で並べた。さらに、その上にもう一枚のフィルムをA層が銅線側になるように重ね合わせた。それをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、回路基板を形成した。作製した回路基板について、回路断面を、回路の長さ方向に直角の方向で回路の幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。次いで切断した断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、200倍に拡大観察した画像を得る。なお、観察場所は無作為に定めるものとするが、画像の上下方向が回路基板の厚み方向と、画像の左右方向が回路基板の幅方向と、それぞれ平行になるようにするものとする。また、厚み方向に観察位置を移動させて行い、一方の表面からもう一方の表面まで連続した画像を準備した。
前記で得られる画像中において、空隙の面積を求めてその値を断面積を除することで空隙率を求めた。得られた値を下記基準で評価した。
A:空隙率が2%以下
B:空隙率:2%を超えて、5%以下
C:空隙率:5%を超える
(12)回路基板の屈折率
(11)で作製した回路基板について、(1)に記載した方法と同じ法によりA層の屈折率、B層の屈折率を求めた。なお、測定面に回路が形成されている場合は、塩化第二鉄水溶液でエッチングする方法で回路を取り除き測定を行う。
(11)で作製した回路基板を回路配線1本が含まれる形で横2mm×縦100mmのサイズにサンプリングし、フィルム部分をチャックし回路とフィルムの密着強度を180°剥離試験により求めた。回路の長手方向と同じ方向に剥離速度50mm/分での、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が0.5N/mm以上
A:接着強度が0.3N/mm以上、0.5N/mm未満
B:接着強度が0.1N/mm以上、0.3N/mm未満
C:接着強度が0.1N/mm未満。
接着強度保持率=E1/E0×100
AA:接着力保持率が90%以上
A:接着力保持率が80%以上90%未満
B:接着力保持率が60%以上80%未満
C:接着力保持率が60%未満
オートクレ-ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマーとして90モルのp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして10モルのm-ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cm2で加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により2回洗浄した後、酢酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、蒸留水により1回洗浄し、減圧下120℃の温度にて乾燥して融点が255℃の共重合PPS樹脂(粉体)を得た。共重合PPS樹脂の305℃で測定した溶融粘度は2900ポイズであった。
主成分モノマーとして100モルのp-ジクロロベンゼンを用い、副成分モノマーを用いないこと、170℃の温度で窒素を3kg/cm2で加圧封入後、昇温し、270℃の温度にて4時間重合した以外は、参考例1の共重合PPS樹脂(顆粒)の製造と同様にしてPPS樹脂(顆粒)を作製した。なお、該PPS樹脂(顆粒)の330℃で測定した溶融粘度は3300ポイズであった。また、PPS樹脂1をGPCによって測定したところ重量平均分子量は60,000であった。
主成分モノマーとして100モルのp-ジクロロベンゼンを用い、副成分モノマーを用いないこと以外は、参考例1の共重合PPS樹脂(顆粒)の製造と同様にしてPPS樹脂(顆粒)を作製した。なお、該PPS樹脂2(顆粒)の330℃で測定した溶融粘度は2000ポイズであった。また、PPS樹脂2をGPCによって測定したところ重量平均分子量は10,000であった。
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)を、300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして共重合PPSペレットを作製した。
参考例2で作製したPPS樹脂1(顆粒)を、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入したこと以外は、参考例4の共重合PPSペレットの製造と同様にしてPPSペレット1を作製した。
(参考例6)PPSペレット2の製造方法
参考例3で作製したPPS樹脂2(顆粒)を用いること以外は、参考例4と同様にしてPPSペレット2を作製した。
参考例2で作製したPPS樹脂1(顆粒)を99.5質量%、可塑剤として脂肪酸アミド(日油(株)製、アルフロー H-50S)0.5質量%を320℃に加熱された1軸混練押出機に投入し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPPSペレット3を作製した。
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)と平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粒子をエチレングリコール中に50重量%分散させたスラリーの混合物を溶融する以外は、参考例4と同様にして共重合PPS樹脂からなる粒子含有量5質量%の共重合PPS粒子ペレット1を作製した。
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)を85質量%、炭酸カルシウムP40(平均粒径7μm、白石工業(株)製)を15質量%の混合物を溶融する以外は参考例4と同様にして粒子含有量15%の共重合PPS粒子ペレット2を作製した。
(実施例1~6、比較例1)
A層の共重合PPSペレットを、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300℃に加熱された単軸押出機1(A層)に供給した。また、B層のPPSペレット1を、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱された単軸押出機2(B層)に供給した。
次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーを繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)に通過させた後、310℃に設定した2層用の合流ブロックを用いて2層積層(A/B)とした。合流ブロックを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの厚みが表1に示す比率となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギアポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを2層積層状態にし、温度310℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み400μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを、表1に示す延伸温度条件にて長手方向(MD方向)に3.8倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に95℃の温度で3.8倍に延伸し、続いて255℃で1段目熱処理を行い、230℃で2段目熱処理を行った。引き続き、230℃の弛緩処理ゾーンで4秒間横手方向(TD方向)に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムを横50mm×縦150mmサイズのフィルムを、A層を上側にしてプレス機の下板状に置き、その上に銅線(幅2mm、長さ:35μm)4本を互いに平行に、2mm間隔で並べた。さらに、その上にもう一枚のフィルムをA層が銅線側になるように重ね合わせた。それをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、回路基板を形成した。
1段目の熱処理を230℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
1段目の熱処理を270℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
2段目の熱処理を255℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
2段目の熱処理を180℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
B層にPPSペレット3を使用した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
B層にPPSペレット1を95質量%とPPSペレット2を5質量%混合して使用した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
A層に共重合PPS粒子ペレット1を使用した以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
A層に共重合PPSペレットを96.7質量%、共重合PPS粒子ペレット2を3.3質量%混合して使用した以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
A層とB層の層比率を表1に示す割合とした以外は実施例9と同様にして製膜し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
B層にPPSペレット1を80質量%とPPSペレット2を20質量%混合して使用した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
A層のみでフィルムを作製した以外は実施例1と同様にして製膜し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
B層のみでフィルムを作製した以外は比較例1と同様にして製膜し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
Claims (10)
- ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層されたフィルムであって、下記式で表される屈折率比が0.93以上0.99以下であることを特徴とする積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB) - 前記A層の屈折率が1.80以上1.95以下であること特徴とする請求項1に記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
- 250℃で5分間加熱した際の長手方向および幅方向の熱収縮率が7.0%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
- 少なくとも一方の表層がA層であって、A層の表面の中心面平均粗さ(SRa)が30nm以上150nm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
- 下記式で表されるA層の融点(TmA)とポリアリーレンスルフィドフィルムの微小融解ピーク(T-meta)の温度比が0.96以上1.06以下であることを特徴とする請求項1~4に記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
温度比=T-meta/TmA - 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体。
- 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる電池用部材。
- 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる自動車用部材。
- 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる電気・電子用部材。
- 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる包装用部材。
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