JP7187914B2 - ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドフィルムに関する。
ポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドは、その電気絶縁性や低吸湿性、耐熱性の高さを活かし、電気絶縁材料や自動車材料への適用が進められている。しかしながら、ポリアリーレンスルフィドフィルムは、一般に金属や他樹脂との接着性、密着性が低く、また、接着剤との反応性が乏しいという欠点を有している。これらを改善したものとして、例えば、ポリアリーレンスルフィドフィルムの熱収縮を低減させ金属と熱圧着する技術が開示されているが(特許文献1)、p-フェニレンスルフィドを主成分としており、上記フィルムは融点が高く、熱融着加工時に接着性が発現しにくいといった問題があった。
また、p-アリーレンスルフィド単位にm-アリーレンスルフィド単位を共重合することで低融点化し低温加工性を付与する技術が開示されているが、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を用いたフィルム単膜では、熱圧着加工の際にフィルム全体を溶融させるため、熱収縮や極端に表面粗度が低下するため、シワや気泡の混入による外観不良が課題となっていた(特許文献2)。また、p-アリーレンスルフィドフィルムに共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を薄く積層したフィルムとすることでフィルムとしての耐久性を向上させる手法が提案されているが、従来の延伸条件を用いると各層を構成する樹脂の融点が異なることから、各層で延伸時の配向のつき方が異なり、加工時にカールが発生し、接着性の低下や外観不良がおこることが課題となっていた(特許文献3)。
特開2005-88273号公報 特開2014-1363号公報 特開2007-326362号公報
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、金属および/または樹脂成形体との接着耐久性、接着加工後の外観および生産性に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することにある。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記課
題を解決するために次の構成を有する。すなわち、ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層されたフィルムであって、A層がフィルム表面の少なくとも片面の最表層に配され、下記式(i)で表される屈折率比が0.90以上1.02以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルムである。
(i) 屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB)
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属および樹脂成形体との接着耐久性、接着加工後の外観に優れることから、ヒートシール材として、自動車用部材、電池用部材、電気・電子材料の各種部品および工業用包材として好適に用いることができる。また、本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは生産性に優れる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムと接着される対象は金属および樹脂成型体の種類は特に限定されないが、金属としては銅、アルミ、SUSなどの板あるいは箔、鋼板、珪素鋼板、鉄板等、が挙げられ、樹脂成形体に用いる樹脂としてはポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶樹脂などの押出成形品または射出成形品が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層された構造を有する。積層構成としては、A層をA、B層をBとした場合、A/Bの2層、A/B/A、A/B/A/B、A/B/A/B/Aなどの多層構成が挙げられるが、これに限定されない。また、A層、B層とは異なる組成からなる層をさらに追加した層構成にすることもできる。なお、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂と前記共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂とは、一次構造、すなわち化学構造において同一ではない。ここで主成分とは、A層およびB層を構成する原料の80質量%以上を占めることをいう。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、-(Ar-S)-の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(1)~式(11)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 0007187914000001
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのB層に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の繰り返し単位としては、上記の式(1)で表されるp-アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp-アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p-フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのB層の主成分であるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、主要構成単位として下記構造式で示されるp-アリーレンスルフィド単位を全繰り返し単位の97モル%以上で構成されていることが必要である。好ましくは、98モル%以上である。かかる主成分が97モル%未満では、結晶性やガラス転移温度などが低くなり、耐熱性、電気特性、耐薬品性が低下する場合がある。
Figure 0007187914000002
また、繰り返し単位の3モル%未満であれば共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。このような繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基等の置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位などが具体例としてあげられ、このうち1つまたは2つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれの形態でも差し支えない。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのB層の主成分であるポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量は重量平均分子量で40,000以上であることが好ましく、40,00~80,000であることがより好ましく、45,000~75,000であることがさらに好ましい。分子量を上記範囲とすることで、分子鎖の絡み合いが増えることから延伸性や優れた機械特性が発現する。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本発明の共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層、以下A層とも言う)の主成分である共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂は、80~95モル%がポリ‐p‐アリーレンスルフィドユニットで構成されてなり、好ましくは85~92モル%以下である。かかる成分が80モル%未満では、結晶性が低下し、耐熱性、長期接着性が低下する場合があり、95モル%を超えると、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点を充分低下させることができず金属あるいは樹脂との接着性が低下する場合がある。
好ましい共重合単位は、
Figure 0007187914000003
Figure 0007187914000004
Figure 0007187914000005
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 0007187914000006
Figure 0007187914000007
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、特に好ましい共重合単位は、m-フェニレンスルフィド単位である。共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂および/または共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤やブロッキング防止剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
本発明のA層の屈折率は1.80以上1.95以下であることが好ましい。A層の屈折率を上記範囲とすることで、熱圧着加工後においてもフィルム内部の分子配向を残存させることができ、接着耐久性を向上することができる。A層の屈折率が1.80未満であるとA層の分子鎖の配向が小さく、高温高湿環境下で脆化が起こり、接着耐久性が低下する場合がある。1.95を超えると配向が高くなるためフィルム製膜時の破れなど製膜性が悪化する場合がある。A層の屈折率はより好ましくは1.83以上1.93以下である。A層の屈折率を上記範囲とするには、後述する製膜条件の中でも延伸温度を変更することで達成できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのB層の屈折率は1.88以上1.95以下であることが好ましい。B層の屈折率を上記範囲とすることで、熱圧着加工時の収縮応力を低減し、接着性を向上することができる。B層の屈折率が1.88未満であると、緩和が進みすぎるため、接着耐久性が低下する場合がある。1.95を超えると配向が高まり、分子鎖が伸びきるためフィルム製膜時の破れが発生する場合がある。B層の屈折率はより好ましくは1.90以上1.93以下である。B層の屈折率を上記範囲するには後述する製膜条件の中でも延伸温度を変更することで達成することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、式(i)で表される屈折率比が0.90以上1.02以下を満たす。
(i) 屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB)
屈折率比が上記の範囲とすることで、A層とB層の配向差が小さくでき、収縮応力差が減少し、接着加工後のカールを抑制することができる。これにより、接着加工後の外観を改良することができる。屈折率比が0.90未満であると、A層に対してB層の配向が大きいため、B層側の収縮によりカールが発生し外観性が悪化する場合がある。また、屈折率比が1.02を超えるとA層に対してB層の配向が小さくなり、A層側の収縮によりカールが発生する場合がある。屈折率比はより好ましくは0.93以上1.00以下であり、さらに好ましくは0.95以上0.98以下である。屈折率比を上記範囲とするには、後述する製膜条件の中でも延伸温度および/またはB層の樹脂組成を変更することで達成できる。屈折率および屈折率比は後述する手法にて評価できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのB層は可塑剤を含むことが好ましい。ここで可塑剤とは、組成物として配合することで溶融状態においては流動性を、固化した状態では柔軟性や樹脂を構成する高分子の分子鎖間のすべりを向上させる機能を有する物質をさす。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのB層に用いる可塑剤としては、熱可塑性樹脂からなるものが好ましい。例えば、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、アリーレンスルフィド系樹脂やその重合体、各種熱可塑性エラストマー(ポリエステル系、アクリル系、オレフィン系、スチレン系)が挙げられる。また、上記から1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることも出来る。上記の中でもアリーレンスルフィド系樹脂が接着性の向上の観点から好ましい。
本発明の可塑剤として好ましく用いられるアリーレンスルフィド系樹脂としては、低分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂があげられる。上記樹脂を含有させることで、局所的に柔軟な部分ができ可塑化効果によって延伸時の応力を分散し延伸配向を制御することができる。可塑剤の含有量はポリアリーレンスルフィド樹脂B層の組成物全体を100質量%としたときに、0.1~15質量%であることが好ましく0.1~8質量%であることがより好ましい。含有量を上記の範囲とすることで、ポリアリーレンスルフィドとしての耐熱性を損なうことなく屈折率を制御し接着性を改善することができる。添加剤の含有量が0.1質量%未満では可塑化効果が低く屈折率が低減しないため接着性が向上しない場合がある。含有量が15質量%を超えるとポリアリーレンスルフィド樹脂B層の配向がつかず、高温高湿下での接着耐久性が悪化する場合がある。上記樹脂の含有の有無は機械特性を評価することで確認できる。
本発明において、低分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂とは、重量平均分子量が5,000~25,000であるポリアリーレンスルフィド樹脂を指し、重量平均分子量が10,000~20,000であることがより好ましい。重量平均分子量が25,000を超えると、B層を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂と重量平均分子量の差が小さくなるため充分な可塑化効果が得られない場合がある。また、重量平均分子量が5,000未満であると分子鎖の絡み合いがなくなり、製膜性が悪化する場合がある。
また、上記熱可塑性樹脂以外の添加剤をポリアリーレンスルフィド樹脂に添加し可塑化効果による流動性を高め屈折率を制御する方法も可能である。添加剤としては、脂肪酸アミド系化合物、アミン系化合物、炭化水素系化合物、脂肪酸、高級アルコール系化合物といった郡から好ましく選ぶことができる。添加剤の好ましい含有量としてはポリアリーレンスルフィド樹脂を100質量%として、添加剤を0.01質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは可塑剤を0.1質量%以上2質量%以下である。添加剤含有量が0.01質量%未満では流動性が充分に低下せず屈折率を制御できない場合があり、また、添加剤を2質量%を超えて含有していると、配向緩和が顕著となり、加工時のシワや気泡による外観性が低下する場合がある。添加剤の含有の有無は、ポリアリーレンスルフィドフィルムを有機分析することで確認することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、式(ii)で表されるA層の積層比が0.55~0.85であることが好ましい。
(ii)A層の積層比=A層厚み/(A層+B層厚み)
積層比を上記の範囲とすることでA層とB層の収縮応力の釣り合いを取ることができカールを抑制し接着性を向上することができる。A層の積層比が0.55未満の場合、B層の収縮応力が大きくなり、剥離方向に応力がかかるため接着性が低下する場合がある。また、A層厚みの比率が0.85を超えると、A層の収縮応力が大きくなり熱圧着加工時にシワや気泡などによって接着耐久性が低下する場合がある。A層厚みの比率はより好ましくは0.60以上0.7以下である。ポリアリーレンスルフィドフィルムのA層の積層比を上記の範囲とするには、溶融押出の際の吐出量を調整することで達成できる。本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのA層の積層比は後述する手法を用いて測定することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、A層の厚みが1μm~285μmであることが好ましく、3~200μmがより好ましく、5~100μmが更に好ましい。A層の厚みを上記範囲とすることで、金属や樹脂性形態との接着性を発現することができる。A層の厚みが1μm未満であると熱圧着工程において被着体表面への量が減るため接着性が低下する場合がある。また、285μmを超えるとフィルム厚みが厚くなるため製膜性が悪化する場合がある。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルム全体の厚みは特に制限はないが、製膜性の観点から2~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、15~150μmがさらに好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、250℃で5分間加熱した際の長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の熱収縮率が7.0%以下であることが好ましい。フィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率が上記範囲内であると、金属や樹脂との加熱圧着時に熱変形が小さく接着性を向上でき、また、シワやエア噛みが抑制でき外観性を向上させることができる。前記長手方向の熱収縮率および幅方向の熱収縮率の範囲の下限は-3.0%である。また、前記長手方向の熱収縮率および幅方向の熱収縮率は好ましくは-1.0~5.0%であり、より好ましくは-1.0~3.0%である。なお、長手方向の熱収縮率の範囲と幅方向の熱収縮率の範囲は同じでも異なっていても良い。また、熱収縮率が7.0%を超えると熱圧着時の収縮応力が大きくなり接着性が損なわれる場合がある。熱収縮率が-3.0%未満であると熱による膨張が大きく熱変形が生じ外観性が損なわれる場合がある。ポリアリーレンスルフィドフィルムの熱収縮率を上記の範囲とするには、後述する製膜条件の中でも特に熱固定を制御することで達成することができる。また、熱収縮率は後述する手法にて評価することができる。
なお、本発明においてフィルムの長手方向とは、ロール状のポリアリーレンスルフィドフィルムであれば、ロールの巻き方向を長手方向とし、ロールの幅方向が幅方向に相当する。一方、ポリアリーレンスルフィドフィルムがカットされたシート状である場合には、フィルムの長辺方向を長手方向とみなし算出する。フィルムの形状が略正方形である場合は、各辺に平行な方向の任意の一方向のいずれかを長手方向、幅方向とみなし算出する。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、下記式(iii)で表されるA層の融点(Tm)とポリアリーレンスルフィドフィルムの微小融解ピーク(T-meta)の温度比が0.96以上1.06以下であることが好ましい。
(iii)温度比=T-meta/Tm
温度比を上記範囲とすることは、ポリアリーレンスルフィドフィルムがA層の融点近傍における熱履歴を受けていることを示す。これより、加熱圧着時に熱変形が小さくなることでシワやエア噛みが抑制でき外観性を向上させることができる。また、前記温度比は好ましくは0.98以上1.02以下である。温度比が1.06を超えると、フィルムの融解が進み、破れや粘着によって製膜性が悪化する場合がある。0.98未満であると熱圧着加工時に大きく熱変形が生じ外観性が悪化する場合がある。温度比を上記範囲とするには、製膜条件の中でも熱固定温度を調整することで達成でき、特にT-metaは、製膜機や製膜速度によって変動するが熱固定温度が高いほど高くなる。本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの温度比は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの各層の樹脂組成には不活性粒子を添加することができる。ここで言う不活性粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛などの無機フィラーおよび3 0 0 ℃ で溶融しない有機の高分子化合物( 例えば、架橋ポリスチレン等) の粒子等を挙げることができる。不活性粒子を添加することで、フィルムの延伸工程でフィルムの滑り性を向上することができ、フィルムのロール間走行時の皺の発生の抑制や、横延伸に続く熱固定の温度を上げてもフィルムの表面凹凸を保持できるため表面のキズの抑制と走行性を向上することができる。
これまで、フィルムの不活性粒子による表面粗さ制御によって、離型性を向上させることが知られている(例えば、特開2012-81741)。本発明では、不活性粒子を後述する条件にて添加することで、離型性と相反する特性である接着加工時の外観性を改善できることを見出した。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、少なくとも一方の表面がA層であって、A層表面の中心面平均粗さ(SRa)が30nm以上150nm以下であることが好ましい。SRaとは3次元表面粗さのパラメータで、表面粗さ曲線をサインカーブで近似した際の中心面における平均粗さを意味し、中心面平均粗さと定義する。中心面平均粗さは、JIS-B0601-1994に記載されている2次元粗さパラメータの中心線平均粗さ(Ra)を3次元に拡張したもので、表面形状曲面と中心面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものである。中心面をXY面、縦方向をZ軸とし、測定された表面形状曲線をf(x、y)とする時、下記式(iv)によって定義される。ここで、LxはX方向測定長、LyはY方向測定長である。
Figure 0007187914000008
A層のSRaを上記範囲とすることで、被着体(例えば樹脂、フィルム、金属)を重ね合わせた際に界面に微小な隙間を形成させることができ、溶融加工を行った際にはこの隙間が界面に存在する気泡の抜け道となった後に融着しエア噛み(外観)を改善することができる。A層の表面粗さSRaが30nm未満であると溶融加工時にエア抜け性が低下し加工後の外観を損なう場合がある。また、150nmを超えると粗度が高まりすぎるため、エアがかみやすく外観を損なう場合がある。A層の表面粗さSRaは好ましくは50nm以上120nm以下であり、より好ましくは65nm以上100nm以下である。A層の表面粗さは後述する粒子径と粒子濃度を変更することで達成することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのA層には、平均粒径が1~15μmの不活性粒子を含むことが好ましい。上記の粒子を含有することで、フィルムの表面の粗度を向上させやすく、加工後のエア噛み(外観)を改善することができる。平均粒径が1μmより小さいと、粗度が低く界面に存在する隙間が小さいため、加工時にエアが抜けきれずエアを噛みやすくなる場合がある。粒径が15μmより大きいと、粗度の増大により界面の隙間が大きくなりすぎ、エアが噛みやすくなる場合がある。平均粒径は3~10μmがより好ましく、5~10μmがさらに好ましい。フィルムに含まれる不活性粒子の平均粒径は、後述する手法にて確認することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのA層に含まれる不活性粒子の濃度は、ポリアリーレンスルフィドやその他の添加物からなる当該層の原料組成を100質量%とした際に、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。不活性粒子の濃度を上記の範囲とすることで、A層の表面の粗度を最適な範囲とすることができ、外観を向上可能となる。不活性粒子の濃度が0.1質量%を下回ると、粗度が不十分となりエアを噛みやすくなる場合がある。また、5質量%を上回ると粗度の増大により界面の隙間が大きくなりすぎ、エアが噛みやすくなる場合がある。フィルムに含まれる不活性粒子の濃度は、目的の層をナイフやマイクロプレーンを用いて削りとり、500℃で灰化させて熱可塑性樹脂を除去する前後の重量変化にて確認することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに用いる粒子はフィルムの物性を損なわない範囲で表面処理を施すことができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィド樹脂としてポリ-p-フェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略紀する場合がある)を用い、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂としてPPSにm-フェニレンスルフィドを共重合させたポリ-m-フェニレンスルフィド樹脂(以下共重合PPS樹脂と略記する場合がある)を用いた場合のフィルムの製造方法を例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されない。
PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp-ジクロロベンゼンを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧下で反応させる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230~280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30~100℃の温度で10~60分間攪拌処理し、イオン交換水にて30~80℃の温度で数回洗浄、乾燥してPPS粒状ポリマーを得る。これを30~100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液や酢酸塩水溶液(たとえば酢酸ナトリウムや酢酸カルシウム)にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30~80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥してPPSの粒状ポリマーを得る。
共重合PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法がある。硫化ナトリウムとp-ジクロロベンゼンおよびm-ジクロロベンゼンを本発明でいう比率で配合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、200~280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを30~100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液や酢酸塩水溶液(たとえば酢酸ナトリウムや酢酸カルシウム)にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30~80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥して共重合PPSの粒状ポリマーを得る。
ポリアリーレンスルフィド樹脂および共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂として上記で得られたPPS、共重合PPSポリマーを、ベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製する。
積層フィルムは、PPS樹脂チップと、共重合PPS樹脂チップを別々の溶融押出装置に供給し、各樹脂の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置に溶融状態でPPS層/共重合PPS層の2層に積層され、スリット上の口金出口から押出される。このシート状物を表面温度20~70℃の冷却ドラム上にPPS層が冷却ドラム側となるように密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の2層積層シートを得る。
次いで、二軸延伸する場合は、上記で得られた未延伸フィルムを、共重合PPS樹脂のガラス転移点以上冷結晶化温度以下の範囲で、逐次二軸延伸機または同時二軸延伸機により二軸延伸した後、熱処理を行い二軸配向フィルムを得る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を例示する。
未延伸フィルムを加熱ロール郡で加熱し、長手方向に2.8~4.5倍、より好ましくは3.2~4.0倍、1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。本発明では、MD延伸の際に、式(v)で表される積層フィルムのA層の延伸表面温度とB層の延伸表面温度差が5℃以上18℃以下であることが好ましい。
(v)延伸表面温度差=(B層延伸表面温度)-(共重合A層延伸表面温度)
本発明でいう延伸表面温度は、延伸ロールと冷却ロール間におけるフィルム延伸部における表面温度を指し、延伸表面温度差を上記範囲とすることで、積層フィルムの配向差を抑制できるため、カール量を低減でき、外観性と接着性を両立することができる。延伸表面温度差が5℃未満であると配向差が大きくカール量が大きくなる場合がある。延伸表面温度差が18℃を超えると、配向がし難く製膜性が悪化する場合がある。延伸表面温度差は、7~16℃の温度差をつけることがより好ましく、7~12℃が更に好ましく、9~10℃が最も好ましい。延伸表面温度差はロールの温度設定を交互に変更する手法や、延伸前に一方の面に赤外線ヒーターを設置し一方面を加熱する手法があるが、赤外線ヒーターを設置する手法が表面温度を制御しやすく好ましい。フィルム表面温度は放射温度計を用いて測定することができる。
本発明においてMD延伸温度は、B層の表面温度を赤外線ヒーター、A層の表面温度を延伸ロールを用いて延伸温度差を制御した場合について述べる。
MD延伸前の予熱は、予熱ロールと赤外線ヒーターによって制御することができ、赤外線ヒーターは予熱ロールと延伸ロールの間に設置することが好ましい。予熱ロール温度は、{共重合PPSのガラス転移温度(Tg)}~(Tg+12)℃の範囲であり、赤外線ヒーターを用いてB層のフィルムの延伸直前の予熱表面温度を{PPSのガラス転移温度(Tg)+5}~(Tg+30)℃、好ましくは(Tg+10)~(Tg+25)℃の範囲となるように制御する。上記の予熱温度とすることで、続く延伸工程でフィルムの延伸表面温度差をつけることができ、カール量を抑制することができる。
次にMD延伸温度は、延伸ロールとニップロールによって制御することが好ましい。延伸ロール温度は、(予熱ロール温度-5)~(予熱ロール温度+10)℃、好ましくは(予熱R温度)~(予熱ロール温度+5)℃の範囲であり、ニップロール温度は、(延伸ロール温度+5)~(延伸ロール温度+15)℃より好ましくは(延伸ロール温度+7)~(延伸ロール温度+12)℃である。上記延伸温度とすることで、予熱でできた表面温度差を維持することができ、延伸表面温度差を制御しカール量を抑制することができる。その後20~50℃の冷却ロール群で冷却する。本発明の積層フィルムにおいて、MD延伸工程を制御することは、続く工程を経て得られる二軸延伸フィルムの金属および/または樹脂成形体との接着耐久性、接着加工後の外観および生産性を向上するうえで好ましい。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸時に十分に配向させ、製膜安定性・平面性を向上させる観点から延伸温度はTg~(Tg+15)℃が好ましく、より好ましくは(Tg)~(Tg+10)℃の範囲で3.5~5.0倍、好ましくは3.5~4.5倍に延伸することが好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する操作(熱固定処理)を行う。熱固定処理の温度は、熱処理ゾーンの前半と後半で異なる温度で加熱処理を行う多段熱固定の何れかで処理を行うことが好ましい。1段目熱固定の好ましい熱固定温度は共重合PPSの融点(Tm)-15℃~PPSの融点(Tm)-10℃であり、好ましくはTm-10℃~Tm-10℃であり、さらに好ましくはTm~Tm-15℃である。1段目熱固定温度を前記範囲とすることで、共重合PPS層のみの配向を効果的に緩和させるとともに、PPS層の結晶成長を促進させ、効果的に熱収縮量を低減しシワやエア噛みを抑制し外観性を向上することができる。1段目の熱固定温度がTm-15℃未満であると、共重合PPS層の分子鎖の緊張が緩和しきれず、またPPS層の結晶性が低くなるため熱接着加工時の熱収縮量が大きくなり外観性が低下する場合がある。1段目の熱固定温度がTm-10℃を超えると、フィルムが融解し破れやすく製膜性が悪化する場合がある。
次いで、2段目の熱固定を施す。2段目の熱固定の好ましい熱固定温度は180℃~Tm-20℃の融点であり、好ましくは190℃~Tmの融点-20℃であり、さらに好ましくは200~Tmの融点-20℃である。2段目熱固定温度を180℃~Tm-20℃の融点とすることで、PPS層の配向を効率的に緩和することができカール量および熱収縮を低減し接着性を向上することができる。2段目熱固定温度が180℃未満の場合、PPS層の配向の緩和が進まず、カール量が悪化する場合があり、Tm-20℃を超えると製膜性が悪化する場合がある。1段目と2段目の熱固定温度に差を付け、かつ上記範囲とすることにより、共重合PPS層とPPS層の両層において配向緩和と製膜性を両立することができ、高い熱寸法安定性でカール量を抑制できるため、金属との優れた接着性および、加工時の外観性を発現せしめることが可能となる。さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向フィルムを得る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムと金属および/または樹脂成形体との複合体を製造する方法としては、熱融着(熱圧着)、レーザー溶着、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着 スピン溶着などが挙げられるが、方法は特に限定されない。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記金属とのシール材として好適に用いることが可能であり、例えば、コネクタ、プリント基板、封止成形品などの電子・電気用シール材として使用される。また、金属および/または樹脂成形体との複合体は、自動車部材としてハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などに使用される駆動モータ用絶縁材用シール材に使用される。また、同様に電池用シール材などとしてシールされることにより形成され、電池用部材として使用される。
また、本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、印刷層、バリア層などを熱融着(熱圧着)および/または接着剤などにより複合体とし、シーラントフィルムとしての利用も可能である。これらの積層体は、ポリアリーレンスルフィドフィルムをシール層(最内面)として、平袋、やスタンディングパウチ状に加工し、耐薬品性包装材として使用される。
また、さらに、金属および/または樹脂成形体との複合体は金属腐食予防用の内張り材、建材などとして有用である。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、A層側にドライラミネーション法によって他のフィルムや金属箔を貼り合わせ積層体とした後、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂B層同士をヒートシールによって袋状に成型し、耐薬品包装材や工業用包装材として用いることも有用である。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属を主成分とする回路を少なくとも1層以上含み、かつA層と回路が接してなる回路基板として用いることも有用である。本発明において回路とは、導電体をパターン化した電気の通路で、その導電体の材料としては、銅、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属材料、カーボン材料などを主たる成分とする材料であり、必要な導通性などに応じて適宜選択される。また、回路に電気部品や電子部品が実装されていてもよい。また、該回路基板が2層以上積層されてあってもよい。かかる回路基板にはドリル、レーザー、溶融貫通法などで穴をあけて、一方の面の回路から反対面の回路を導通させて使用することも好ましく用いられる。
回路の形成方法は、本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに、i)膜状の金属を熱融着(熱圧着)する、ii)蒸着やスパッタなど乾式法で金属を堆積させる、iii)メッキなどの湿式法で形成する、等によりフィルムの少なくとも片面に金属層を設けた複合体とし、感光性樹脂を塗布し、回路形状を光で焼き付けた後、未露光部分の樹脂を除去して得ることができる。金属層が銅の場合には塩化第二鉄水溶液でエッチングする方法が例として挙げられるがこれに限定されない。また、iv)金属材料やカーボン材料などを分散させた塗料を用いて、回路パターン上に印刷、乾燥する、v)所望の形状に形成した金属材料からなる回路を熱融着(熱圧着)する、ことなどによっても得ることができる。これらの中でもi)、v)の方法が簡便で、生産性が高いという点で有用である。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いてなる回路基板は、接着性、接着耐久性、電気絶縁性、低吸湿性、難燃性、耐熱性などに優れることから高周波アンテナ基板、高速伝送ケーブル、フレキシブルフラットケーブルなどとして有用である
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いてなる回路基板は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層されてなり、かつ金属を主成分とする回路がA層と接してなる回路基板であって、かつ下記式で表される屈折率比が0.90以上1.02以下であることを特徴とするものである。
屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB)
屈折率比を上記の範囲とすることで、A層とB層の配向差が小さくでき、収縮応力差が減少し、高温環境下での密着性の低下を抑制することができる。屈折率比が0.90未満であると、A層に対してB層の配向が大きいため、B層側の収縮によりカールが発生し高温環境下での密着性が低下する場合がある。また、屈折率比が1.02を超えるとA層に対してB層の配向が小さくなり、B層側の収縮によりの高温化での密着性が低くなる場合がある。屈折率比はより好ましくは0.93以上1.00以下であり、さらに好ましくは0.95以上0.98以下である。屈折率比を上記範囲とするには、熱プレスのラミ条件の中でもプレス温度および/またはB層の樹脂組成を変更することで達成できる。屈折率および屈折率比は後述する手法にて評価できる。
本発明における回路基板の回路については上述の回路と同様のものであるが、その幅は加工性の観点から0.02mm以上が好ましい。より好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。幅0.02mm未満の場合、加工時のハンドリング性が悪化や、屈曲された場合に断線する場合がある。
回路の厚みは、加工性と絶縁性の観点から1μm以上100μm以下が好ましい。より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μ以上90μm、さらに好ましくは、15μm以上90μm以下である。1μm未満の場合、加工時のハンドリング性が悪化する場合がある。100μmを超えると回路とA層との間に間隙が発生し絶縁不良となる場合がある。
本発明の回路基板の作成方法の一例について、フラットケーブルの場合の例を示す。フラットケーブルを製造する方法は、2枚のポリアリーレンスルフィドフィルムを、A層側を対向させ、その間に線状に形成された金属材料を複数、間隔をあけて並べて挟み、熱融着(熱圧着)、レーザー溶着、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着、スピン溶着などにより貼り合わせる。これらの中で生産性の観点から熱融着(熱圧着)が好ましく用いられ、その温度としては、ポリアリーレンフィルムのA層の融点Tm以上、B層の融点以下とするのが好ましい。また貼合わせ後には線状の金属材料はその断面方向から観察した際に、A層を構成する樹脂が金属材料の周囲を被覆していることがより耐久密着性に優れるため好ましい形態である。
[特性の測定方法]
(1)屈折率
A層とB層の屈折率は下記装置を用いて、エリプソメトリー法で屈折率を求める。本発明においてA層/B層の2層構成の場合は、A層面から測定した結果をA層の屈折率nAとし、B層面から測定した結果をnBとする。一方、A層/B層/A層やB層/A層/B層のように両表層にA層またはB層が積層されてなり、A層またはB層が最表面ではない場合は、表層を剥離して測定する方法、特開2014-149346などに記載のプラスチック用研磨布で研磨し、表層を取り除いて測定を行う。各面を3回測定し平均値を各層の屈折率とする。
装置:位相差測定装置NPDM-1000(株式会社ニコン社製)
光源:ハロゲンランプ
検出器:Si-Ge
偏光子・検光子:グラムトムソン
検光子回転数:2回
入射角:45°~80°、0°
測定波長:590nm
(2)フィルム厚みおよび積層比
ポリアリーレンスルフィドフィルムの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均値を求めた。
また、ポリアリーレンスルフィドフィルムの各層の層厚みを測定する際は、フィルム断面を、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面をライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡LeicaDMLMを用いて、フィルムの断面を倍率100倍の条件で透過光を写真撮影し、積層フィルムの各層の層厚みについて、各層ごとに任意の5ヶ所を測定し、その平均値を各層の層厚みとした。
(3)250℃熱収縮率
下記装置および条件で、熱収縮率測定を行う。
・測長装置 :万能投影機
・試料サイズ :試長150mm×幅10mm
・熱処理装置 :ギアオーブン
・熱処理条件 :250℃、5分
・荷重 :3g
・算出方法
熱処理前にサンプルに100mmの間隔で標線を描き、熱処理後の標線間距離を測定し、下記式によって熱収縮率を算出する。試長の方向が長手方向または幅方向に平行になるように5サンプルずつ採取して測定を実施し、それぞれの平均値で評価を行う。
熱収縮率(%)={(熱処理前の標線間距離)-(熱処理後の標線間距離)}/熱処理前の標線間距離×100
(4)表面粗さ(SRa)
小坂研究所製Surfcorder ET30HKを用い、下記条件にてA層表面の平均中心線粗さ(SRa)を求めた。
触針曲率半径 : 2μm
カットオフ : 0.25mm
測定長 : 0.5mm
測定間隔 : 5μm
測定回数 : 40回。
(5)微小融解ピーク(T-meta)、A層の融点(Tm
JIS K7121(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC-RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンに試料を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した。そのとき、観察される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とし、Tmより低温側に現れる微小な吸熱ピークをT-metaとした。
積層フィルムの各層を構成する樹脂の融点を測定する場合には、予め上述した方法により観察した厚み構成から、その各層に対応する分を削り取って融点測定に供する。各層の融点のうち最も低温のものをA層の融点(Tm)とする。
(6)接着性
1.金属との接着性
横30mm×縦150mmサイズのアルミニウム板(合金番号:A1050、厚さ:0.5mm)2枚を、縦方向の先端から15mmの部分で90℃に折り曲げた。また、PPSフィルムを横30mm×縦15mmサイズにサンプリングし、前記アルミニウム板の折り曲げ部分に縦横が合わさるように重ね合わせ2枚のアルミ板にはさんだ。PPSフィルムをはさんだ部分のみをプレス機にて260℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムとアルミニウム板との積層体を作製した。作製した積層体のフィルムと貼り合わせをしていない金属板の端部を、各々引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が250N/30mm以上
A:接着強度が200N/30mm以上、250N/30mm未満
B:接着強度が100N/30mm以上、200N/30mm未満
C:接着強度が100N/30mm未満。
2.樹脂成形体との接着性
140℃で3時間静置乾燥したPPS樹脂(A310M、東レ(株)製)を、射出成形機を用いて射出温度330℃、金型温度140℃、射出圧力40MPaで射出し、横10mm×縦130mm、厚み4mmの樹脂成形体を作製した。また、フィルムを横10mm×縦130mmサイズにサンプリングし、両サンプルの先端部分10mm×15mmのみをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムと樹脂成形体との積層体を作製した。フィルムと貼り合わせをしていない樹脂成形体の端部およびフィルムの端部それぞれを引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が120N/10mm以上
A:接着強度が80N/10mm以上、120N/10mm未満
B:接着強度が30N/10mm以上、80N/10mm未満
C:接着強度が30N/10mm未満。
(7)接着耐久性
上述する金属とフィルムの積層体をヒートサイクル試験し後述する方法にて接着耐久性とした。ヒートサイクル試験は、「-40℃雰囲気下に30分放置後、150℃雰囲気下にて30分放置する」という条件を1サイクルとし、計10サイクル実施することを条件とした。ヒートサイクル試験後の積層体を上述と同様の方法で最大接着強度を求め、ヒートサイクル試験前の接着強度をE0、ヒートサイクル試験後の接着強度をE1とし、下記式により接着強度保持率を算出する。接着強度保持率から長期接着性を以下の基準で判定をした。
接着強度保持率=E1/E0×100
AA:接着力保持率が90%以上
A:接着力保持率が80%以上90%未満
B:接着力保持率が60%以上80%未満
C:接着力保持率が60%未満
(8)外観性(I)
ポリアリーレンスルフィドフィルムを10cm角に切り出し、15cm角に切り出したカプトン(登録商標)フィルム(厚み25μm)で挟みこみ、250℃、5MPaの条件にて上下から5分間加熱プレスを実施した後、温度25℃、湿度60%に調整された部屋で24時間調整する。調整されたサンプルを平坦な台上に置き、垂直方向での4隅の浮き高さ最大の高さ(mm)を測定した。なお、フィルムを台上においた際に上面がポリアリーレンスルフィド樹脂からなるB層の場合を正、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂A層の場合を負の値とした。サンプルが丸まって筒状となる場合は測定不可とした。
AA:カール量が-7mm以上、7mm以下
A:カール量が-10mm以上、10mm以下
B:カール量が-15mm以上、15mm以下
C:フィルムが筒状に変形および/または収縮変形が大きく測定不可
(9)外観性(II)
平角銅線(幅4mm×厚み1mm×長さ100mm)に積層フィルム(幅14mm×150mm)を共重合PPS層(A層)が銅側となるように隙間無くらせん状に巻きつけ端部を耐熱テープで固定し、250℃のオーブンで90秒間過加熱した。その際の外観を下記基準で判定した。
AA:巻きズレやシワ、気泡がない。
A:巻きズレが少しあるが、シワや気泡がない。
B:巻きズレ、シワ、気泡が少しある。
C:巻きズレ、シワ、気泡があるが使用できる。
D:巻きズレ、シワ、気泡が大きく使用不可。
(10)製膜安定性
実施例および比較例に記載の製膜を10時間連続して行い、フィルム破れ(縦延伸時の破断および横延伸、熱固定処理時のいずれも含む)の発生回数を以下の基準で判定をした。

A:破れ発生なし(製膜安定性良好)
B:破れの発生頻度が5回以下(製膜安定性に劣る)
C:破れの発生頻度が5回を超える(製膜安定性に難あり)
(11)回路の包埋性
横50mm×縦150mmサイズのフィルムを、A層を上側にしてプレス機の下板状に置き、その上に銅線(圧延銅箔(C1100)、幅2mm、長さ:38μm)4本を互いに平行に、2mm間隔で並べた。さらに、その上にもう一枚のフィルムをA層が銅線側になるように重ね合わせた。それをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、回路基板を形成した。作製した回路基板について、回路断面を、回路の長さ方向に直角の方向で回路の幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。次いで切断した断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、200倍に拡大観察した画像を得る。なお、観察場所は無作為に定めるものとするが、画像の上下方向が回路基板の厚み方向と、画像の左右方向が回路基板の幅方向と、それぞれ平行になるようにするものとする。また、厚み方向に観察位置を移動させて行い、一方の表面からもう一方の表面まで連続した画像を準備した。
前記で得られる画像中において、空隙の面積を求めてその値を断面積を除することで空隙率を求めた。得られた値を下記基準で評価した。
A:空隙率が2%以下
B:空隙率:2%を超えて、5%以下
C:空隙率:5%を超える
(12)回路基板の屈折率
(11)で作製した回路基板について、(1)に記載した方法と同じ法によりA層の屈折率、B層の屈折率を求めた。なお、測定面に回路が形成されている場合は、塩化第二鉄水溶液でエッチングする方法で回路を取り除き測定を行う。
(13)回路の密着性
(11)で作製した回路基板を回路配線1本が含まれる形で横2mm×縦100mmのサイズにサンプリングし、フィルム部分をチャックし回路とフィルムの密着強度を180°剥離試験により求めた。回路の長手方向と同じ方向に剥離速度50mm/分での、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が0.5N/mm以上
A:接着強度が0.3N/mm以上、0.5N/mm未満
B:接着強度が0.1N/mm以上、0.3N/mm未満
C:接着強度が0.1N/mm未満。
また、上述する回路を長期耐熱試験し後述する方法にて接着耐久性とした。長期耐熱試験は、温度150℃の条件下で2000時間処理を行い、長期耐熱試験後の積層体を上述と同様の方法で最大接着強度を求め、長期耐熱試験前の接着強度をE0、長期耐熱試験後の接着強度をE1とし、下記式により接着強度保持率を算出する。接着強度保持率から長期接着性を以下の基準で判定をした。
接着強度保持率=E1/E0×100
AA:接着力保持率が90%以上
A:接着力保持率が80%以上90%未満
B:接着力保持率が60%以上80%未満
C:接着力保持率が60%未満
(参考例1)共重合PPS樹脂(顆粒)の製造方法
オートクレ-ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマーとして90モルのp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして10モルのm-ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により2回洗浄した後、酢酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、蒸留水により1回洗浄し、減圧下120℃の温度にて乾燥して融点が255℃の共重合PPS樹脂(粉体)を得た。共重合PPS樹脂の305℃で測定した溶融粘度は2900ポイズであった。
(参考例2)PPS樹脂1(顆粒)の製造方法
主成分モノマーとして100モルのp-ジクロロベンゼンを用い、副成分モノマーを用いないこと、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、270℃の温度にて4時間重合した以外は、参考例1の共重合PPS樹脂(顆粒)の製造と同様にしてPPS樹脂(顆粒)を作製した。なお、該PPS樹脂(顆粒)の330℃で測定した溶融粘度は3300ポイズであった。また、PPS樹脂1をGPCによって測定したところ重量平均分子量は60,000であった。
(参考例3)PPS樹脂2(顆粒)の製造方法
主成分モノマーとして100モルのp-ジクロロベンゼンを用い、副成分モノマーを用いないこと以外は、参考例1の共重合PPS樹脂(顆粒)の製造と同様にしてPPS樹脂(顆粒)を作製した。なお、該PPS樹脂2(顆粒)の330℃で測定した溶融粘度は2000ポイズであった。また、PPS樹脂2をGPCによって測定したところ重量平均分子量は10,000であった。
(参考例4)共重合PPSペレットの製造方法
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)を、300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして共重合PPSペレットを作製した。
(参考例5)PPSペレット1の製造方法
参考例2で作製したPPS樹脂1(顆粒)を、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入したこと以外は、参考例4の共重合PPSペレットの製造と同様にしてPPSペレット1を作製した。
(参考例6)PPSペレット2の製造方法
参考例3で作製したPPS樹脂2(顆粒)を用いること以外は、参考例4と同様にしてPPSペレット2を作製した。
(参考例7)PPSペレット3の製造方法
参考例2で作製したPPS樹脂1(顆粒)を99.5質量%、可塑剤として脂肪酸アミド(日油(株)製、アルフロー H-50S)0.5質量%を320℃に加熱された1軸混練押出機に投入し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPPSペレット3を作製した。
(参考例8)共重合PPS粒子ペレット1の製造方法
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)と平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粒子をエチレングリコール中に50重量%分散させたスラリーの混合物を溶融する以外は、参考例4と同様にして共重合PPS樹脂からなる粒子含有量5質量%の共重合PPS粒子ペレット1を作製した。
(参考例9)共重合PPS粒子ペレット2の製造方法
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)を85質量%、炭酸カルシウムP40(平均粒径7μm、白石工業(株)製)を15質量%の混合物を溶融する以外は参考例4と同様にして粒子含有量15%の共重合PPS粒子ペレット2を作製した。
以下では実施例1、11を参考実施例1、11と読み替えるものとする。
(実施例1~6、比較例1)
A層の共重合PPSペレットを、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300℃に加熱された単軸押出機1(A層)に供給した。また、B層のPPSペレット1を、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱された単軸押出機2(B層)に供給した。
次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーを繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)に通過させた後、310℃に設定した2層用の合流ブロックを用いて2層積層(A/B)とした。合流ブロックを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの厚みが表1に示す比率となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギアポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを2層積層状態にし、温度310℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み400μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを、表1に示す延伸温度条件にて長手方向(MD方向)に3.8倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に95℃の温度で3.8倍に延伸し、続いて255℃で1段目熱処理を行い、230℃で2段目熱処理を行った。引き続き、230℃の弛緩処理ゾーンで4秒間横手方向(TD方向)に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムを横50mm×縦150mmサイズのフィルムを、A層を上側にしてプレス機の下板状に置き、その上に銅線(幅2mm、長さ:35μm)4本を互いに平行に、2mm間隔で並べた。さらに、その上にもう一枚のフィルムをA層が銅線側になるように重ね合わせた。それをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、回路基板を形成した。
(実施例7)
1段目の熱処理を230℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例8)
1段目の熱処理を270℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例9)
2段目の熱処理を255℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例10)
2段目の熱処理を180℃で行った以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例11)
B層にPPSペレット3を使用した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例12)
B層にPPSペレット1を95質量%とPPSペレット2を5質量%混合して使用した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例13)
A層に共重合PPS粒子ペレット1を使用した以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例14)
A層に共重合PPSペレットを96.7質量%、共重合PPS粒子ペレット2を3.3質量%混合して使用した以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(実施例15~16)
A層とB層の層比率を表1に示す割合とした以外は実施例9と同様にして製膜し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(比較例2)
B層にPPSペレット1を80質量%とPPSペレット2を20質量%混合して使用した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(比較例3)
A層のみでフィルムを作製した以外は実施例1と同様にして製膜し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
(比較例4)
B層のみでフィルムを作製した以外は比較例1と同様にして製膜し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。また、実施例1と同様に回路基板を形成した。
Figure 0007187914000009
Figure 0007187914000010
Figure 0007187914000011
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属および/または樹脂成形体との接着性に優れることから、各種部品のヒートシール材として好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする層(A層)が積層されたフィルムであって、下記式で表される屈折率比が0.93以上0.99以下であることを特徴とする積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
    屈折率比=A層屈折率(nA)/B層屈折率(nB)
  2. 前記A層の屈折率が1.80以上1.95以下であること特徴とする請求項1に記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  3. 250℃で5分間加熱した際の長手方向および幅方向の熱収縮率が7.0%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. 少なくとも一方の表層がA層であって、A層の表面の中心面平均粗さ(SRa)が30nm以上150nm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  5. 下記式で表されるA層の融点(Tm)とポリアリーレンスルフィドフィルムの微小融解ピーク(T-meta)の温度比が0.96以上1.06以下であることを特徴とする請求項1~4に記載の積層押出ポリアリーレンスルフィドフィルム
    温度比=T-meta/Tm
  6. 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体
  7. 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる電池用部材
  8. 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる自動車用部材
  9. 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる電気・電子用部材
  10. 請求項1~5のいずれかのフィルムと、金属・樹脂フィルムのいずれか1種以上との複合体からなる包装用部材
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