JP7363485B2 - ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドフィルムに関する。
ポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドは、その電気絶縁性や低吸湿性、耐熱性の高さを活かし、電気絶縁材料や自動車材料への適用が進められている。
従来、有機ELなどの各種表示素子や、太陽電池などの基板材料には、ガラスが用いられてきた。しかし、割れやすい、重い、薄型化困難などの欠点がガラスにはあり、また近年ディスプレイの薄型化及び軽量化や、ディスプレイのフレキシブル化に関してガラスは十分な材質を有していなかった。そのため、ガラスに代わる代替材料として、薄型でかつ軽量の透明樹脂製のフィルム状基板が検討されている。
そのような透明性樹脂性のフィルム基板として、透明なポリイミド(以下PI)フィルム、環状ポリオレフィン樹脂フィルム(以下COP)等が検討されており、透明性、欠点検出性(欠点の検出しやすさ)、耐熱性、熱寸法安定性、取り扱い性、機械強度、接着性等の向上および両立について開発が進められている。
しかしながら、PPSフィルムにおいては、ヘイズが高く透明性を向上させる技術の検討は行われて来なかった。例えば、表面平滑性や透明性と合わせて滑り性を向上させたものとして、300℃で溶融しない0.1~3μm径の高融点PPSを樹脂中に分散させ、表面平滑性、透明性、滑り性および耐摩耗性を向上させる技術が開示されているが(特許文献1)、押出機内の温度変化で局所的に高融点PPSが半融解するため、粗大凝集塊が発生するなど、サンプルロット間の均一性、取り扱い性、製膜安定性に課題があった。また、平均粒子径0.005~1.0μmの酸化亜鉛を0.1~10重量%含有させることで透明性、走行性および耐摩耗性を向上させる技術が開示されているが(特許文献2)、欠点検出性や透明性が十分でないという課題があった。
更に、二軸延伸PPSフィルムにコーティングし、欠点検出性、透明性および走行性の両立させる技術が開示されているが(特許文献3)、二軸延伸フィルム単体で、欠点検出性、透明性および走行性を両立しておらず、またPPS樹脂が高屈折率であるためPPSフィルムとコーティング樹脂との界面で光の屈折・反射による直線透過光率の減少や、PPSフィルムとコーティング樹脂との界面で剥離発生が発生するなどの課題があった。
特開平6-322150号公報 特開平5-320380号公報 特開2014-46463号公報
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、高い欠点検出性と走行性に優れた二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムを安定的に製造、提供することにある。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に、不活性粒子(p1)を含有し、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)を主成分とする層(A層)が積層されたフィルムであって、ヘイズが10%以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルムである。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、欠点検出性に優れつつ、フィルム表面の走行性にも優れることから、自動車用部材、電池用部材、電気・電子材料の特に透明性を必要とし、作業工程中に欠点検出工程を必要とするような、各種部品および工業用包材、例えばフレキシブルプリント基板の下板保護材料、として好適に用いることができる。また、本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは生産性に優れる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に、不活性粒子(p1)を含有し、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)を主成分とする層(A層)が積層された構造を有する。なお、ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)と共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)は、化学構造が同一ではない。ここで主成分とは、A層およびB層のそれぞれにおいて、構成する原料のうち50質量%より多いことをいう。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)とは、-(Ar-S)-の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)~式(K)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 0007363485000001
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)の繰り返し単位としては、上記の式(A)で表されるp-アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp-アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p-フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)とは、主要構成単位として下記構造式で示されるp-アリーレンスルフィド単位を全繰り返し単位の97モル%以上で構成されていることが好ましい。好ましくは、98モル%以上である。かかる主成分が97モル%未満では、結晶性やガラス転移温度などが低くなり、耐熱性、電気特性、耐薬品性が低下する場合がある。
Figure 0007363485000002
また、繰り返し単位の3モル%未満であれば共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。このような繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基等の置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位などが具体例としてあげられ、このうち1つまたは2つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれの形態でも差し支えない。ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)の合成方法としては、後述する参考例2が例示できる。しかし、参考例2に限定されるものではない。
本発明のA層の主成分である共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)は、80~95モル%がポリ‐p‐アリーレンスルフィドユニットで構成されてなり、好ましくは85~92モル%以下である。かかる成分が80モル%未満では、結晶性が低下し、耐熱性、長期接着性が低下する場合があり、95モル%を超えると、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)の融点を充分低下させることができず透明性向上への寄与が低下する場合がある。
好ましい共重合単位は、
Figure 0007363485000003
Figure 0007363485000004
Figure 0007363485000005
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 0007363485000006
Figure 0007363485000007
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、特に好ましい共重合単位は、m-フェニレンスルフィド単位である。共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが、結晶性および熱特性のばらつき減少による押出性、製膜性の安定性確保が出来るという観点より好ましい。共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)の合成方法としては、後述する参考例1が例示できる。しかし、参考例1に限定されるものではない。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)および/または共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤やブロッキング防止剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、A層の融解ピーク温度(Tm)が270℃以下であることが好ましい。Tmが上記範囲内であると、製膜時あるいは後処理工程で特定条件での熱処理を行うことにより、フィルムの外観および各種特性を害することなく、A層の一部樹脂のみを融解させ、製膜時に形成された粒子周りのボイドを減少させることができる。
発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、ポリアリーレンスルフィドフィルムの微少融解ピーク(T-meta)、A層の融解ピーク温度(Tm)、B層の融解ピーク温度(Tm)の関係が下記式(i)を満たすようになる事が好ましい。
(i)Tm<T-meta<Tm
Tmが270℃より大きいと、上記式(i)におけるT-metaの範囲が狭くなり、製膜時あるいは後処理工程で特定条件での熱処理を行うことが困難となる。本発明のT-meta、Tm、Tm、はJISK7121(1999)に準じて後述する手法にて測定した値をいう。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのA層の樹脂組成には不活性粒子を添加することが必要である。ここでいう不活性粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛などの無機粒子を挙げることができる。不活性粒子を添加することで、フィルムの延伸工程でフィルムの滑り性を向上することができ、フィルムのロール間走行時の皺の発生の抑制や、横延伸に続く熱固定の温度を上げてもフィルムの表面凹凸を保持できるため表面のキズの抑制と走行性を向上することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、A層に含まれる不活性粒子(p1)は、0.1μm以上、15μm以下の平均粒子径を有することが好ましい。p1が上記範囲の平均粒子径を有することで、フィルムの表面の粗度を向上させやすく、加工後のエア噛み(外観)を改善することができる。平均粒子径が0.1μmより小さいと、粗度が低く界面に存在する隙間が小さいため、加工時にエアが抜けきれずエアを噛みやすくなる場合がある。平均粒子径が15μmより大きいと、粗度の増大により界面の隙間が大きくなりすぎ、エアが噛みやすくなったり、製膜時に欠点となり破れが発生したりするなど製膜性が優れない場合がある。平均粒子径は0.3μm以上、10μm以下がより好ましく、0.5μm以上、5μm以下がさらに好ましい。p1の平均粒子径は、後述する手法にて確認することができる。p1の平均粒子径を上記の範囲とする方法としては、条件を満たす不活性粒子を選定し使用する方法、後述する粒子マスターバッチの製造工程において、不活性粒子にかかる剪断力を混練温度や時間等からコントロールし粒子径減少を制御する方法、およびそれら組み合わせなどが挙げられる。平均粒子径は後述する手法にて確認される、分離された不活性粒子の粒子粒度分布のピーク値とする。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、A層に含まれる不活性粒子(p1)の濃度は、ポリアリーレンスルフィドやその他の添加物からなる当該層の原料組成を100質量%とした際に、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。p1の含有濃度を上記の範囲とすることで、A層の表面粗度とフィルムのヘイズをそれぞれ最適な範囲とすることができる。p1の含有濃度が0.1質量%を下回ると、粗度が不十分となりエアを噛みやすくなる場合がある。また、5質量%を上回ると粗度の増大により界面の隙間が大きくなりすぎ、エアが噛みやすくなる場合がある。A層に含まれるp1の濃度は、目的の層をナイフやマイクロプレーンを用いて削りとり、500℃で灰化させて熱可塑性樹脂を除去する前後の重量変化にて確認することができる。A層に含まれる不活性粒子(p1)の濃度は、後述する粒子マスターバッチの添加量を変更することで、制御することが出来る。
フィルムの少なくとも片面について、VertScanで測定される、50nm以上の表面突起数が50個/mm以上であることが好ましく、100個/mm以上であることがより好ましく、500個/mm以上であることが更に好ましく、1000個/mm以上であることが最も好ましい。表面突起数を上記の範囲とすることで、フィルムの走行性を十分に発揮させることができ、50個/mm未満であると、走行性が不十分となり、フィルムの製膜性および取り扱い性が不良となる事がある。表面突起数を上記の範囲とする方法として、(一層あたりのA層厚み)/(不活性粒子(p1)の平均粒子径)が0.1以上5.0以下となるようにする、製膜中あるいは製膜後にフィルムの結晶化温度(Tcc)以上で熱処理を行い、フィルム表層中に微結晶を形成させる、粒子濃度の増大させる、等の方法が挙げられる。各面の表面突起数は後述する手法にて確認することが出来る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、A層の樹脂成分と不活性粒子(p1)の屈折率差が0.15以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましく、0.05以下であることが更に好ましい。A層の樹脂成分と不活性粒子(p1)の屈折率差が0.15以下とすることで、A層での樹脂成分と不活性粒子(p1)の界面での反射・屈折・散乱を抑制することができ、透明性を更に向上させることができる。A層の樹脂成分と不活性粒子(p1)の屈折率が0.1より大きくなると、樹脂成分と不活性粒子(p1)間の界面での反射・屈折・散乱が大きくなり、透明性が損なわれる場合がある。A層の樹脂成分と不活性粒子(p1)の屈折率は後述する手法にて確認することができる。
上記A層の樹脂成分と不活性粒子(p1)の屈折率差が0.1以下となる条件を満たすような不活性粒子(p1)としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、硫化銅、アルミン酸コバルト、ニッケル、鉛白、酸化亜鉛等が好ましい。その中でも、アルミナおよび酸化マグネシウムが屈折率差を小さく抑えられることから特に好適に用いることができる。また、不活性粒子(p1)は、フィルムの物性を損なわない範囲で表面処理を施すことができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのヘイズは、10%以下であることが必要であり、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。ポリアリーレンスルフィドフィルムのヘイズを上記範囲とすることで、フィルム内部での光拡散を抑制し、光を効率よく透過・利用でき、該フィルムを使用した製品生産工程中での欠点検出や位置合わせが可能となったり、光学用フィルムとして利用が可能となったりする。ポリアリーレンスルフィドフィルムのヘイズが10より大きいと、欠点検出性が不十分となり、上述するような光学用途で不具合が起こる場合がある。ヘイズを上記範囲とする達成手段としては、ボイド形成粒子率を後述する範囲にし、ボイドによる光の反射および屈折を低減させる方法、A層中の樹脂成分と不活性粒子(p1)の屈折率差を上述する範囲にし、不活性粒子と樹脂の界面での光の反射および屈折を低減させる方法、およびそれら組み合わせ、が挙げられる。ボイド形成粒子率を後述する範囲とする方法としては、縦延伸倍率を小さくする、縦延伸温度を高くする、A層中の共重合PPSの比率を増大させる、横延伸後の熱処理温度を高くする、およびそれら組み合わせが挙げられる。本発明のヘイズは後述する手法にて測定した値をいう。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、二軸延伸フィルムであることが必要である。ポリアリーレンスルフィドフィルムを二軸延伸フィルムとすることで、機械強度、平面性、生産性を向上させ、厚みムラが減少させることが可能であり、自動車用部材、電池用部材、電気・電子材料の各種部品および工業用包材として使用する際には、二軸延伸処理はフィルムの特性を向上させる観点で必要である。二軸延伸処理の方法としては、後述する製造方法で例示されているように、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることが挙げられる。ここで本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムが二軸延伸フィルムであるとは、分子配向計(王子計測機器製、MOA-6015)を用いて測定される、ポリアリーレンスルフィドフィルムの共振の鋭さを示すパラメータ(Q値)の10回測定の平均値が4300以上であることをいう。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、一層あたりのA層の厚みが0.1μm以上、8μm未満であることが好ましい。一層あたりのA層の厚みが上記範囲内であると、走行性を維持しつつ、更にフィルムのヘイズを低下させることができる。一層あたりのA層の厚みが、0.1μm未満であると走行性が不十分となる可能性があり、8μm以上であると欠点検出性が悪化したりする可能性がある。一層あたりのA層の厚みは、0.1μm以上、5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上、1μm未満であることが更に好ましい。一層あたりのA層の厚みは後述する手法にて評価できる。A層厚みを上記範囲とする方法として、A層およびB層の原料押出量をコントロールする方法、延伸倍率の変更する方法、などが挙げられる。製造例として後述する参考例1などが挙げることが出来る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、(一層あたりのA層厚み)/(不活性粒子(p1)の平均粒子径)が0.1以上5.0以下であることが好ましく、0.1以上3.0以下がより好ましく、0.1以上1.0以下が更に好ましい。(一層あたりのA層厚み)/(不活性粒子(p1)の平均粒子径)が上記範囲内であると、粒子の滑落がなく、外観性を保ちつつ、走行性を十分に確保出来る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、ボイド形成粒子率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。本発明のボイド形成粒子率とはA層の不活性粒子(p1)について、フィルム断面のFE-SEM画像において、粒子断面積の50%以上のサイズを有するボイドを周囲に形成している粒子数の比率を言い、後述する方法で測定した値をいう。ボイド形成粒子率を上記範囲とすることで、フィルム内部での光拡散および光反射、および引張強度や引裂応力などの機械特性の低下をそれぞれ抑制することが可能となる。ボイド形成粒子率が10%より大きいと、フィルムの欠点検出性が悪化したり、フィルムが裂けやすくなり、スリット性、製膜性が悪化する場合がある。ボイド形成粒子率を上記範囲とする方法としては、製造工程における延伸工程において延伸倍率を低下させる事や、熱処理工程における熱処理温度をTm以上とし、T-metaがTmより大きくTmより小さくする方法が挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、400nm~500nmの平行光線透過率が50%以上であり、かつ700nm~800nmの平行光線透過率が70%以上であることが好ましい。
400nm~500nmの平行光線透過率を上記の範囲とすることで、本フィルム上で紫外線硬化樹脂をより効率的に硬化させることが可能となる。400nm~500nmの平行光線透過率が50%未満の場合、本フィルム上での紫外線硬化樹脂の硬化に多くの時間を要したり、更には硬化不可能となったりする場合がある。400nm~500nmの平行光線透過率の範囲は、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上以下である。400nm~500nmの平行光線透過率を上述する範囲とする方法として、1)ボイド形成粒子率を後述する範囲にし、ボイドによる光の反射および屈折を低減させる方法、2)A層中の樹脂成分と不活性粒子p1の屈折率差を上述する範囲にし、粒子と樹脂の界面での光の反射および屈折を低減させる方法、400nm~500nmの特定波長に吸収領域を持つ低分子不純物の除去、およびそれら組み合わせなどが挙げられる。
また、700nm~800nmの平行光線透過率を上記の400nm~500nmの平行光線透過率の範囲と同様にすることで、可視光領域でのヘイズが抑制され、欠点検出性が良好となる。700nm~800nmの平行光線透過率が70%未満の場合、フィルムの光透過性が不良となり、欠点検出性に劣り、光学用フィルムとして好適に使用できない場合がある。700nm~800nmの平行光線透過率は、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上である。平行光線透過率は後述する手法にて評価できる。700nm~800nmの平行光線透過率を上述する範囲とする方法として、ボイド形成粒子率を後述する範囲にし、ボイドによる光の反射および屈折を低減させる方法、A層中の不活性粒子と樹脂成分の屈折率差を上述する範囲にし、粒子/樹脂界面での光の反射および屈折を低減させる方法、粒子径が700nm以下である粒子が80%以上を占める不活性粒子をA層の不活性粒子p1として選定する方法、およびそれら組み合わせなどが挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、静摩擦係数(μs)が0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。μsを上記の範囲とすることで、フィルムの走行性を十分に確保することが出来る。μsが0.6より大きくなると、フィルムの走行性が不十分となり、取り扱い性が損なわれる場合がある。μsは後述する手法にて確認することができる。静摩擦係数(μs)を上記の範囲とする方法として、A層の不活性粒子濃度を増大させる方法、(一層あたりのA層厚み)/(不活性粒子(p1)の平均粒子径)を上述する範囲にする方法、T-metaが上述する範囲を満たす条件内で熱処理温度を低下させる方法、およびその組み合わせが挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)としてポリ-p-フェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略紀する場合がある)を用い、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)としてPPSにm-フェニレンスルフィドを共重合させたポリ-m-フェニレンスルフィド樹脂(以下共重合PPS樹脂と略記する場合がある)を用いた場合のフィルムの製造方法を例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されない。
PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp-ジクロロベンゼンを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧下で反応させる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230~280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30~100℃の温度で10~60分間攪拌処理し、イオン交換水にて30~80℃の温度で数回洗浄、乾燥してPPS粒状ポリマーを得る。これを30~100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液もしくは酢酸塩水溶液にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30~80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥してPPSの粒状ポリマーを得る。
共重合PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法がある。硫化ナトリウムとp-ジクロロベンゼンおよびm-ジクロロベンゼンを本発明でいう比率で配合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、200~280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを30~100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液もしくは酢酸塩水溶液にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30~80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥して共重合PPSの粒状ポリマーを得る。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)として上記で得られたPPS粒状ポリマーの、またはPPS粒状ポリマーと無機粒子や添加剤などを任意の割合で混合したものを、ベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製し、ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)を主成分とする層(B層)の原料とする。
また、このPPS粒状ポリマー、共重合PPS粒状ポリマー、不活性粒子を任意の割合で混合し300~350℃に設定したベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製し、不活性粒子(p1)を含有し、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)を主成分とする層(A層)の原料とする。このとき不活性粒子の添加濃度は粒状ポリマー100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
積層フィルムは、上記の2種のチップを、別々の溶融押出装置に供給し、各樹脂の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置に溶融状態で共重合PPSを主たる成分とする層/PPSを主たる成分とする層/共重合PPSを主たる成分とする層の3層、あるいは共重合PPSを主たる成分とする層/PPSを主たる成分とする層の2層、に任意の積層比(例えば1:23:1や1:24)で積層され、スリット上の口金出口から押出される。このシート状物を表面温度20~70℃の冷却ドラム上にPPS層が冷却ドラム側となるように密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の3層積層シートあるいは2層積層シートを得る。
次いで、二軸延伸する場合は、上記で得られた未延伸フィルムを、PPS樹脂のガラス転移点(Tg)以上冷結晶化温度(Tcc)以下の範囲で、逐次二軸延伸機または同時二軸延伸機により二軸延伸した後、熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を例示する。
未延伸フィルムを加熱ロール郡で加熱し、長手方向に2.8~4.5倍、より好ましくは3.2~4.0倍、1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg~Tcc、好ましくは(Tg+5)~(Tcc-10)℃の範囲である。その後20~50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg~Tccが好ましく、より好ましくは(Tg+5)~(Tcc-10)℃の範囲である。延伸倍率はフィルムの平面性の観点から2.8~5.0倍、好ましくは3.0~4.5倍が好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する操作(熱固定処理)を行う。熱固定処理の温度は熱処理ゾーンの始終で、同一温度で加熱処理を行うか、1段熱固定または熱処理ゾーンの前半と後半で異なる温度で加熱処理を行う多段熱固定の何れかで処理を行う。1段熱固定を行う場合、熱固定温度は200~280℃が好ましく、230~275℃がより好ましい。また、多段熱固定で熱処理を行う場合、1段目(前半)の熱固定温度は150℃~220℃が好ましく、より好ましくは150℃~210℃である。1段目熱固定温度を前記範囲とすることで、フィルムの平面性を保持したまま、面積倍率を低下することが可能となる。2段目(後半)の熱固定温度は220~280℃が好ましく、230~275℃がより好ましく、240~270℃が更に好ましい。ここで、2段目熱固定温度が220℃未満の場合、フィルムの熱寸法安定性が悪化する場合があり、280℃を超えるとフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)の融解温度に近づく、もしくは超えるため、製膜の際にフィルムの両端を固定するクリップに融着し、延伸装置からフィルムを採取することが困難となる場合がある。2段目熱固定温度を240~270℃とした場合、A層の共重合PPSのみを効率的に軟化および一部融解させ、A層の不活性粒子の周りに出来たボイドを減少させることができ、熱寸法安定性、製膜性、平面性を維持しつつ、透明性を向上させる事が出来る点で好ましい。
熱固定処理後は、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、二軸延伸された積層フィルムを得る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、透明性に優れつつ、フィルム表面の走行性にも優れることから、自動車用部材、電池用部材、電気・電子材料として、特に透明性を必要とする各種部品および工業用包材、例えばフレキシブルプリント基板の下板保護材料、として好適に用いることができる。
また本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、耐候性や接着性の向上や、表面保護などを目的として、インラインまたはオフラインにて、両面または片面に、各種コーティング剤を塗布させてもよい。
[特性の測定方法]
(1)ヘイズ
フィルム全体のヘイズは下記装置を用いて測定した。
装置:濁度計NDH5000(日本電色工業社製)
光源:白色LED5V3W(定格)
受光素子:V(λ)フィルタ付Siフォトダイオード
測定光束:φ14mm(入射開口φ25mm)
光学条件:JIS-K7136(2000)に準拠
(2)平行光線透過率
各フィルムについて、波長域400~500nmおよび波長域700nm~800nmの分光透過率を、紫外可視近赤外分光光度計U-4100(((株))日立ハイテクノロジーズ製)の分光光度計を用いて測定した。
(3)ボイド形成粒子率
方向aに垂直フィルム断面について、厚み方向に潰すことなく、凍結ミクロトームを用いて、フィルム面方向に対して垂直に断面を切り出した。次に、切り出した断面に対し、熱による材料変質が起こらない各ポリエステルフィルムに対する適した条件で、(株)日立ハイテクノロジーズ製イオンミリング装置IM4000PLUSを用いて断面イオンリミング処理、続いてPt蒸着を行った。そして、得られたフィルム断面に対し、日本電子(株)製電解放射走査型電子顕微鏡JSM-6700Fを用いて、加速電圧3.0kV、ワーキングディスタンス8.0mm、観察倍率3000倍の条件で観察し、画像を得た。なお、観察場所はフィルム断面において無作為に定めるものとするが、画像の上下方向がフィルムの厚み方向と、画像の左右方向がフィルム面方向と、それぞれ平行になるようにした。そして、画像解析ソフトImageJを用いて、得られた画像におけるフィルム断面について面積を計測し、これをD1、また、画像中のフィルム断面に存在する全てのボイド面積を計測し、総面積をD2とした。ここでボイドの特定は、フィルム断面のみに対し行われるImageJの自動二値化により、総面積D2の計測は、抽出下限を0.1μmとした粒子分析により、それぞれ行った。D2をD1で除し(D2/D1)、それに100を乗じることにより、フィルム断面におけるボイドの面積割合を求め、フィルム切断箇所を無作為に変更してこの解析を計10回行い、その相加平均値をポリエステルフィルムのボイド率(%)とした。
(4)Tm、T-meta、Tm
JIS K7121(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC-RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
積層フィルムの各層を構成する樹脂の融点を測定するため、予め後述する方法により観察した厚み構成から、その各層に対応する分を削り取って測定に供する。サンプルパンに試料を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した。観察される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とし、A層の融点(Tm)およびB層の融点(Tm)とした。またB層の測定において、Tmより低温側に現れる微小な吸熱ピークをT-metaとした。
(5)積層フィルムおよび積層フィルムを構成する各層の層厚み
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した積層フィルムを、スパッタリング装置を用いて減圧度10-3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率3,000倍にて観察した。観察により得られた画像より積層フィルムの厚みおよび積層フィルムを構成する各層の厚みを計測した。上記の倍率で積層フィルムの厚み方向が全体を確認できない場合は厚み方向に数点の画像を撮影し、画像をつなぎ合わせることで全体像を確認する。厚みの測定に用いるサンプルは任意の場所の合計10箇所を選定し、10サンプルの計測値の平均をそのサンプルのフィルム厚みおよびフィルムを構成する層の厚みとした。
(6)不活性粒子の含有量(濃度)および粒度分布・平均粒子径、不活性粒子種
a.A層の粒子含有濃度
(5)の方法を用いて積層フィルムおよび各層の厚みを確認したのち、マイクロプレーンと電子マイクロメータ(アンリツ(株)製、K-312A型、針圧30g)を用いて23℃65%RHの雰囲気下で厚みを確認しながら積層フィルムから目的の層(A層)を削り取る。削り取ったサンプルを秤量したるつぼに入れた後再度秤量し、サンプルの加熱前の重量を秤量する。次にサンプルが入ったるつぼをマッフル炉(ヤマト科学社製)にて500℃/6hで加熱しサンプルを灰化さる。るつぼを冷却した後に秤量し、加熱後の重量をはかりとり、加熱前後の重量を下記式に挿入し、フィルムに含まれる無機粒子の含有濃度を算出した。測定はn=3で実施し、その平均値が0より大きい場合はその層は粒子を含むと判断し、その平均値を目的の層(A層)の粒子濃度とした。試料量は残存物の質量が100~200mgの範囲となるように調整した。
無機粒子の含有濃度(質量%)=加熱後の重量(mg)/加熱前の重量(mg)×100
b.粒度分布およびピーク値
a.で得られた残存物を精製水と混合し、透過率が90%前後になるように調整した。この分散液をレーザー光回折散乱粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000、日機装製)をもちいて、レーザー光波長780nm、測定温度23℃の条件にて、測定前に超音波処理を4分間行なったのちJIS Z8825-1:2001に準じて測定し、サンプルの粒度分布よりピーク値を読み取り、その値を平均粒子径とした。
c.不活性粒子種
a.で得られた残存物について、蛍光X線分析法で粒子の構成元素を、 X線回折図からより詳細な結晶構造を確認し、粒子の特定を行った。
(7)A層中の樹脂成分および不活性粒子p1の屈折率
(6)で採取した不活性粒子p1に対し、屈折率が既知の溶媒と顕微鏡を用いて行うベッケ線法を用いて、p1の屈折率を求めた。p1の平均粒子径が小さく、ベッケ線の観察が困難な場合は、(6)で調べた不活性粒子種の市販されている10~20μmの平均粒子径を有する粒子の屈折率を同様に測定し、p1の屈折率としてよい。(5)の方法を用いて削り取ったA層を再度加熱融解させ薄膜を作成する。その薄膜をエリプソメータ((株)堀場製作所製、自動薄膜計測装置 Auto SE)に供し、屈折率を測定する。A層中の樹脂成分の屈折率として、本方法で測定される薄膜の屈折率を用いるものとする。
(8)表面突起数
測定は(株)菱化システムVertScan2.0 R5300GL-Lite-ACを使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似にて面補正し、突起高さの閾値を50nmとして表面突起数を求めた。測定条件は下記のとおり。測定は、フィルムの両面について、それぞれn=100で行い、その平均値を各面の表面突起数とした。
製造元 :株式会社菱化システム
装置名 :VertScan2.0 R5300GL-Lite-AC
測定条件:CCDカメラ SONY HR-57 1/2インチ
対物レンズ:5x
中間レンズ:0.5x
波長フィルタ:530nm white
測定モード:Wave
測定ソフトウェア:VS-Measure Version5.5.1
解析ソフトウェア:VS-Viewer Version5.5.1
測定領域:0.561mm×0.561mm。
(9)欠点検出性
黒画用紙上に、1mmから100μmまで順に100μm刻みで径を小さくした白点を印刷する。その黒画用紙上に各フィルムを重ね、フィルム上部からどの径の白点まで視認出来るかを以下の基準で判定をした。Cを欠点検出性不良と判断した。
AA:100μmまで視認可能(欠点検出性優良)
A:250μmまで視認可能(欠点検出性良)
B:500μmまで視認可能(欠点検出性に劣る)
C:700μmまで視認可能(欠点検出性に難あり)。
(10)走行性
東洋テスター工業製摩擦測定器を用い、ASTM-D1894(1999年)に準じて、フィルムの一方の面とその裏面とが接触するように重ねてMD方向同士を摩擦させた時の初期の立ち上がり抵抗値を測定し、最大値を静摩擦係数μsとした。ただし、初期の立ち上がりが大きくて測定値上限(5.0)を超えた場合は測定不能とした。サンプルは、幅80mm、長さ200mmの長方形とし、5セット(10枚)切り出した。5回測定を行い、平均値を求めた。求めた静摩擦係数から走行性を以下の基準で判定した。Cを走行性不良と判断した。
AA:μs=0.50以下(欠点検出性優良)
A:μs=0.55以下(走行性良好)
B:μs=0.55を超え、0.6以下(走行性に劣る)
C:μs=0.6を超える(走行性に難あり)。
(11)スリット性
フィルムを幅1mにスリットする際、スリット速度を変更しフィルム端部の切れ味を目視にて以下に示す方法により評価した。Cをスリット性不良と判断した。
AA:速度120m/分でも端部が歪になることなくスリット可能(スリット性優良)
A:速度100m/分以上120m/分未満で端部に歪が発生する(スリット性良好)
B:速度80m/分以上100m/分未満で端部に歪が発生する(スリット性に劣る)
C:速度80m/分未満でフィルム表面にシワが発生し端部が歪になる(スリット性に難あり)。
(12)製膜安定性
実施例および比較例に記載の製膜を10時間連続して行い、フィルム破れ(縦延伸時の破断および横延伸、熱固定処理時のいずれも含む)の発生回数を以下の基準で判定をした。Cを製膜安定性不良と判断した。
AA:破れ発生なし(製膜安定性優良)
A:破れの発生頻度が5回以下(製膜安定性に良好)
B:破れの発生頻度が5回以下(製膜安定性に劣る)
C:破れの発生頻度が5回を超える(製膜安定性に難あり)
(参考例1)共重合PPS樹脂(顆粒)の製造方法
オートクレ-ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマーとして90モルのp-ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして10モルのm-ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により2回洗浄した後、酢酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、蒸留水により1回洗浄し、減圧下120℃の温度にて乾燥して融点が255℃の共重合PPS樹脂(粉体)を得た。共重合PPS樹脂の305℃で測定した溶融粘度は2900ポイズであった。
(参考例2)PPS樹脂(顆粒)の製造方法
主成分モノマーとして100モルのp-ジクロロベンゼンを用い、副成分モノマーを用いないこと、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、270℃の温度にて4時間重合した以外は、参考例1の共重合PPS樹脂(顆粒)の製造と同様にしてPPS樹脂(顆粒)を作製した。なお、該PPS樹脂(顆粒)の330℃で測定した溶融粘度は3300ポイズであった。また、PPS樹脂(顆粒)をGPCによって測定したところ重量平均分子量は60,000であった。
(参考例3)共重合PPSペレットの製造方法
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)を、300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして共重合PPSペレット(PPS-2)を作製した。
(参考例4)PPSペレット1の製造方法
参考例2で作製したPPS樹脂(顆粒)を、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入したこと以外は、参考例3の共重合PPSペレットの製造と同様にしてPPSペレット1(PPS-1)を作製した。
以下の参考例には、粒子のマスターバッチの製造方法を記す。
・使用粒子
・アルミナ―1:平均粒子径1.0μm
・アルミナ―2:平均粒子径0.5μm
・アルミナ―3:平均粒子径6.0μm
・アルミナ―4:平均粒子径11μm
・アルミナ―5:平均粒子径0.05μm
・アルミナ―6:平均粒子径16μm
・酸化マグネシウム:平均粒子径1.0μm
・炭酸カルシウム:平均粒子径1.0μm。
(参考例5~11、13)共重合PPS粒子マスターバッチの製造方法
参考例1で作製した共重合PPS樹脂(顆粒)を90質量%、不活性粒子を10質量%の混合物を溶融する以外は参考例3と同様にして表1の組成で、粒子含有量10質量%の各共重合PPS粒子マスターバッチを作製した。
(参考例12、14)PPS粒子マスターバッチの製造方法
参考例2で作製したPPS樹脂(顆粒)を90質量%、不活性粒子を10質量%の混合物を溶融する以外は参考例4と同様にして表1の組成で、粒子含有量10質量%の各PPS粒子マスターバッチを作製した。
(実施例1~13、比較例2および4)
PPS-2と表2および表3の組成および比率となるように各共重合PPS粒子マスターバッチを均一になるよう混合させ、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300℃に加熱された単軸押出機1(A層)に供給した。また、B層のPPS-1を、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱された単軸押出機2(B層)に供給した。
次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーを繊維焼結ステンレス金属フィルター(20μmカット)に通過させた後、310℃に設定した2層用の合流ブロックを用いて2層積層(A/B)とした。合流ブロックを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの各層厚みが表2および表3に示す比率となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギアポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを2層積層状態にし、温度310℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み350μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを、表2および表3に示す延伸温度条件にて長手方向(MD方向)に3.6倍延伸した(温度条件にこだわった)。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に95℃の温度で3.6倍に延伸し、続いて270℃で1段目熱処理を行い、230℃で2段目熱処理を行った。引き続き、230℃の弛緩処理ゾーンで4秒間横手方向(TD方向)に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。
(実施例14)
A層の樹脂をMB-1のみとして供給した以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
(比較例1および3)
PPS-1と表3の組成および比率となるように各PPS粒子マスターバッチを均一になるよう混合させ、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱された単軸押出機1(A層)に供給した以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
Figure 0007363485000008
Figure 0007363485000009
Figure 0007363485000010
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、欠点検出性、走行性に優れる事から、OLEDの下板保護フィルム等として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂(m1)を主成分とする層(B層)の少なくとも片面に、不活性粒子(p1)を含有し、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂(m2)を主成分とする層(A層)が積層されたフィルムであって、ヘイズが10%以下であることを特徴とする二軸延伸フィルム。
  2. A層の樹脂成分が270℃以下の融解ピーク温度を有する、請求項1に記載のフィルム。
  3. 不活性粒子(p1)がアルミナあるいは酸化マグネシウムである、請求項1または2に記載のフィルム。
  4. 不活性粒子(p1)の平均粒子径が0.1μm以上、15μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のフィルム。
  5. A層の樹脂成分と不活性粒子(p1)の屈折率差が0.1以下である、請求項1~4のいずれかに記載のフィルム。
  6. 一層あたりのA層の厚みが0.1μm以上、8μm未満である、請求項1~5のいずれかに記載のフィルム。
  7. ボイド形成粒子率が10%以下である、請求項1~6のいずれかに記載のフィルム。
  8. 400nm~500nmの平行光線透過率が50%以上であり、700nm~800nmの平行光線透過率が70%以上である、請求項1~7のいずれか記載のフィルム。
  9. 静摩擦係数(μs)が0.6以下である、請求項1~8のいずれかに記載のフィルム。
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