JP2023142607A - ポリアリーレンスルフィドフィルム、および回路基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱処理などの高温の状態を経た後も透明性に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供する。【解決手段】ポリアリーレンスルフィド(PAS)を主たる構成成分とする層を有し、ヘイズが10%以下であり、酸素透過率が60cc/m2・day・atm以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドフィルム、および回路基板に関する。
近年、透明性が必要な回路基板材料には、ガラスの適用検討が進められている。しかし、ガラス基材は、割れやすい、重い、薄型化困難などの欠点があり、また、車のフロントガラスや屋内外での曲面に接する部分へのフレキシブル化に関して十分な性能を有していなかった。
ポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。電気、電子部品分野において高速・大容量化の流れから、伝送損失の小さい材料が求められており、ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドフィルムは、その低伝送損失性や低吸湿性の高さを活かし、回路材料への適用が進められている。しかしながら、PPSフィルムはヘイズに示される透明性が低いため、例えば、透明回路基板として用いた場合、PPSのフィルムによって視認性の悪化が生じやすく、回路基板として使用されるフィルム厚さにおける透明性の向上が望まれている。
これまで、PPSフィルムにおいては、透明性と滑り性を向上させたものとして、PPSフィルムにラビング処理を施す技術が開示されている(特許文献1)。また、粒子径と分散性を制御した酸化亜鉛粒子を含有させることで透明性と滑り性を向上させた技術が開示されている。(特許文献2)
一方、ポリフェニレンサルファイドを使用したシートの結晶サイズを大きくなるように制御し熱的特性、機械的特性を改善する技術が開示されている(特許文献3)。
特開2013-67748号公報 特開平5-320380号公報 特開平7-205373号公報
しかしながら、これらの技術は、透明性を向上する技術が開示されているものの、回路基板の製造工程で行われる熱処理によりヘイズが上昇し透明性が損なわれるという課題があることがみつかった。
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、熱処理などの高温の状態を経た後も透明性に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することにある。
筆者らは上記課題を解決すべく検討した結果、ポリアリーレンスルフィドフィルムの酸素透過率を小さくすることにより熱処理後も透明性を維持させうることを見いだし、耐熱性が高く透明性の高いポリアリーレンスルフィドフィルムを提供ことができることに至った。すなわち、本発明の好ましい一態様は以下の通りである。
(1)ポリアリーレンスルフィド(PAS)を主たる構成成分とする層を有し、ヘイズが10%以下であり、酸素透過率が60cc/m・day・atm以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルム。
(2)厚さが30μm以上である(1)に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
(3)ポリアリーレンスルフィドを主たる構成成分とする層(A層)の少なくとも一方の面に、ポリアリーレンスルフィドとは異なる成分からなる層(B層)を有する(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
(4)全光線透過率が80%以上である(1)~(3)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
(5)空気中で240℃の環境下1時間加熱した前後のヘイズの変化量ΔHが5%以下である(1)~(4)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
(6)透明回路基材に用いられる(1)~(5)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
(7)透明アンテナ基材に用いられる(6)に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
(8)(1)~(5)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いた回路基板。
本発明によれば、熱処理などの高温の状態を経た後も透明性に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、ポリアリーレンスルフィド(以下、PAS)系樹脂を主たる構成成分とする樹脂組成物からなる。
本発明において、PAS系樹脂を主たる構成成分とするとは、PAS系樹脂を50質量%以上含むことをいう。好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含むことである。PAS系樹脂の含有量が50質量%未満では、PASフィルムの特徴である、耐熱性、寸法安定性、機械的特性を損なう場合がある。
本発明で用いるPAS系樹脂とは、-(Ar-S)-の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)~式(K)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 2023142607000001
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
繰り返し単位としては、上記の式の中でもp-アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp-アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p-フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、主要構成単位として下記構造式で示されるp-アリーレンスルフィド単位を全繰り返し単位の97モル%以上で構成されていることが好ましい。より好ましくは、98モル%以上である。かかる主成分を97モル%以上とすることで、結晶性やガラス転移温度などが高くなり、優れた耐熱性、電気特性、耐薬品性を発現せしめることができる。
Figure 2023142607000002
また、繰り返し単位の3モル%未満に共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていてもよい。このような繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基等の置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位などがあげられ、このうち1つまたは2つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれの形態でもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂は既知の合成方法を用いることが出来、ポリフェニレンスルフィドの場合は後述する参考例1が例示できる。しかし、これに限定されるものではない。
本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムを構成するPAS系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤やブロッキング防止剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムのヘイズは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。ポリアリーレンスルフィドフィルムのヘイズを上記範囲とすることで、フィルム内部での光拡散を抑制し、光を効率よく透過・利用でき、透明な回路基板として利用が可能になったり、該フィルムを使用した製品の生産工程中で欠点検出や位置合わせが可能となったり、光学用フィルムとして利用が可能となる。ポリアリーレンスルフィドフィルムのヘイズが10%より大きいと、欠点検出性が不十分となったり、透明回路用途、光学用途で不具合が起こる場合がある。本発明でいうヘイズとはJIS-K7136(2000)に準拠し測定した値をいう。ヘイズを上記範囲とする方法としては、ポリアリーレンスルフィド中の結晶サイズを小さくすることにより得ることができる。具体的にはポリアリーレンスルフィドフィルムの製造工程において、二軸方向に延伸した後に、(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点-10℃)以上(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+10℃)以下の温度で長手方向および/または幅方向に1.01倍乃至1.80倍以下に延伸した後に同じ温度で熱処理を施す後高温延伸工程を経ることが好ましく例示できる。延伸温度をポリアリーレンスルフィド樹脂の融点付近で行う事によって結晶が部分融解しながら変形し結晶サイズを小さくすることができる。
また、フィルムの巻取り特性を発現するために粒子を含有したり、樹脂のアロイとする場合は、ヘイズを上記範囲とする方法として粒子やアロイによりできる島の屈折率を1.70~1.85とする方法が好ましく挙げられる。上記範囲の屈折率を持つ粒子の例としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪酸ジルコニウムを好ましく挙げることができ、上記範囲の屈折率を持つ樹脂をアロイする例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)スルフィドが挙げられる。
さらに、PAS樹脂との親和性が良い熱可塑性樹脂のアロイとしその島成分の分散径を50nm以上400nm以下とすることでヘイズを上記範囲とする方法も好ましく挙げられる。上記PAS樹脂との親和性が良い熱可塑性樹脂としてはポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホンが好ましく挙げられ、分散径をより小さくしヘイズを低減するために、ポリアリーレンスルフィドが海成分、ポリエーテルスルホンが島成分となるようにすることをより好ましく挙げることができる。
上記のなかでも親和性の良い熱可塑性樹脂をアロイする方法が好ましく用いられる。粒子を含有させる方法は二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する延伸工程で粒子とポリアリーレンスルフィドの間にボイドが生じヘイズが上記範囲外となる場合がある。その場合、m-PPSのような融点の低いポリアリーレンスルフィドを用い二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの製造中に溶融させボイドを消失させる方法によりヘイズを上記範囲とすることもできるが、回路基板の製造工程で行われる熱処理により低融点のポリアリーレンスルフィドが再結晶化しヘイズが上昇する場合がある。
すなわち、本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、及び珪酸ジルコニウムより選ばれる1種以上の粒子を含有することが好ましい。また、本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)スルフィドを含有することが好ましい。また、本発明のポリアリーレンスルフィドはポリスルホン、ポリフェニルスルホン、及びポリエーテルスルホンより選ばれる1種以上の樹脂を含有することが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは酸素透過率が60cc/m・day・atm以下であることが好ましく、10cc/m・day・atm以下がより好ましく、1cc/m・day・atm以下がさらに好ましい。ポリアリーレンスルフィドフィルムの酸素透過率を上記範囲とすることで、高温熱処理加工したときにヘイズ上昇や黄変を抑えることができ、透明性を維持できる。本発明でいう酸素透過率はJIS K7126-2(2006)(等圧法)に準拠し温度20℃で測定した値をいい、測定機器としてMOCON社 酸素透過率計OX-TRAN100などが挙げられる。ある程度の厚みがあり、かつそもそものヘイズが10%以下であるポリアリーレンスルフィドフィルムがあまり知られていないなか、発明者らは上記メカニズムとして、そもそものヘイズが10%以下であるポリアリーレンスルフィドフィルムの高温熱処理加工によるヘイズ上昇は、特に酸素によるものであることを見出し、本発明に至っている。また、特に厚さが30μm以上でヘイズが10%以下であるポリアリーレンスルフィドフィルムにおいて、ヘイズ上昇は酸素と熱による要因が特に顕著であることを見出し、その対策として、酸素透過率が60cc/m・day・atm以下とすることにより、高温熱処理加工したときにヘイズ上昇を顕著に抑えることができることを見出している。
酸素透過率を上記の範囲とする方法として、ポリアリーレンスルフィドフィルムの片面または両面に金属酸化物などの無機物質や有機物などのガスバリア性の高い材料からなるガスバリア層を形成することにより得ることができる。ガスバリア性の高い材料としては、例えば珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、或いはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、ダイヤモンドライクカーボン又はこれらの混合物等が挙げられるが、透明性の点から酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム及び酸化窒化アルミニウム等の無機酸化物、窒化珪素及び窒化アルミニウム等の窒化物、並びにこれらの混合物が好ましい。上記材料を用いて本積層フィルムにガスバリア層を形成する手法としては、蒸着法、コーティング法などの方法をいずれも採用可能である。ガスバリア性の高い均一な薄膜を得ることができるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、プラズマCVD、触媒化学気相成長法(Cat-CVD)等が挙げられる。ガスバリア層の厚さは、安定なガスバリア性の発現と透明性の点から、10~1000nmであることが好ましく、40~800nmがより好ましく、50~600nmがさらに好ましい。厚さを調整する方法としては蒸着する時間をフィルム走行速度などで調節する方法が挙げられる。また、ガスバリア層は単層であっても多層であってもよい。ガスバリア層が多層の場合、各層は同じ材料からなっていても、異なる材料からなっていてもよい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、PAS系樹脂を主たる構成成分とする層(A層)の少なくとも一方の面にPAS系樹脂とは異なる成分からなる層(B層)を有することが好ましい。B層の成分としては前述したガスバリア性の高い材料が好ましく挙げることができ、これらの成分からなるB層を有することで、高温での加工によるヘイズや色調などの透明性を維持することができる。積層構成としては、A/B、B/A/B、B/A/B/A/Bなどの多層構成が挙げられる。本発明において、酸素透過率を効率良く低減させる観点からB/A/Bの3層構成がより好ましい。また、A層とB層の接着性を向上させるために接着層(C層)を設けてもよい。C層の成分としてはアクリル樹脂やポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、積層構成としてはA/C/B、B/C/A/C/Bなどの構成が挙げられる。かかる構成とするためには、PAS系樹脂を主成分とするポリアリーレンスルフィドフィルムを製膜した後に、必要に応じて接着性樹脂層をコーティングし、蒸着法、コーティング法によりガスバリア性の高い材料を成膜することにより得ることが出来る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの、PAS系樹脂を主たる構成成分とするA層は、二軸配向フィルムであることが好ましい。二軸配向フィルムとすることで、機械強度、平面性を向上させ、厚みムラが減少させることが可能であり、自動車用部材、電池用部材、電気・電子材料の各種部品および工業用包材として使用する際には、二軸配向処理はフィルムの特性を向上させる観点で重要である。ここで本発明のA層が二軸配向フィルムであるとは、分子配向計(王子計測機器製、MOA-6015)を用いて測定される、ポリアリーレンスルフィドフィルムの共振の鋭さを示すパラメータ(Q値)の10回測定の平均値が4300以上であることをいう。二軸配向処理の方法としては後述の製造方法で例示する逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることが挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの厚さは使用される用途により適宜調整することが好ましいが、回路基材用としては30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。上限は特に規定されないが製膜性の観点から200μm以下が好ましい。本発明でいう厚さとはフィルムの断面を走査型電子顕微鏡により観察し計測した値をいう。ポリアリーレンスルフィドフィルムをかかる厚さにする方法としては、PAS系樹脂を主たる成分とするA層厚みを調節することによって得ることができ、具体的にはA層の製造工程において押出機から押し出す樹脂の量、製膜速度と延伸倍率を調整することによって得ることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの全光線透過率は80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上である。本発明でいう全光線透過率とは、JIS-K7361(1997)に準拠し測定された値をいう。全光線透過率を上記範囲とする方法としては、ポリアリーレンスルフィド中の結晶サイズを小さくしヘイズを下げることで得ることができる。具体的にはポリアリーレンスルフィドフィルムの製造工程において、二軸方向に延伸した後に、(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点-10℃)以上(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+10℃)以下の温度で長手方向および/または幅方向に1.01倍乃至1.80倍以下に延伸した後に同じ温度で熱処理を施す後高温延伸工程を経ることが好ましく例示できる。延伸温度をポリアリーレンスルフィド樹脂の融点付近で行う事によって結晶が部分融解しながら変形し結晶サイズを小さくすることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは空気中で240℃の環境下1時間加熱した前後のヘイズの変化量ΔHが5%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。また、空気中で240℃の環境下1時間加熱した前後の色調b値の変化量Δb値が0.1以上8.0以下であることが好ましい。より好ましくは0.1以上5.0下である。上記範囲であることによって、回路基板として使用した際にハンダリフローやキュア工程などの加熱処理においても透明性を維持することができるために好ましい。本発明のヘイズの変化量ΔHは240℃1時間加熱した後のヘイズから加熱前のヘイズを引いた値をいう。また、色調b値の変化量Δb値は、240℃1時間加熱した後のb値から加熱前のb値を引いた値をいう。ここでb値は分光式色差計CM-3600d(KONICA-MINOLTA製)を用い、JIS-K7105(1981)に従って透過法で三刺激値X,Y,Zを測定し、そこから、関係式{b値=7.0×(Y-0.847×Z)/Y1/2}を用いて算出したハンターLab表色系の黄色度(b値)のことをいう。ヘイズの変化量ΔHおよび色調b値の変化量Δb値を上記範囲とする方法としては、ポリアリーレンスルフィドフィルムの酸素透過率を60cc/m・day・atm以下とすることで得ることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、透明性と色調に優れつつ、フィルム表面の走行性、品位にも優れることから、自動車用部材、電池用部材、電気・電子材料として、特に透明性を必要とする各種部品および工業用包材、例えばフレキシブルプリント基板の下板保護材料、また、表面品位を必要とするコンデンサー材料として好適に用いることができる。
また本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、さらに耐候性や接着性の向上や、表面保護などを目的として、インラインまたはオフラインにて、両面または片面に、各種コーティング剤を塗布させてもよい。
このようにして得られたポリアリーレンスルフィドフィルムに導電膜を形成し回路基板を作製する。透明回路として使用する場合は、導電膜は透明または半透明な導電体であることが好ましく、例えば、Ag膜などの金属膜、ITO(酸化インジウム・スズ)膜などの金属酸化膜、導電性微粒子を含む樹脂膜を1種以上積層して作製されたものが挙げられる。また、導電膜として細線の導体をメッシュ状に形成する方法も透明性を向上させるために有効である。導体の形成方法は周知の方法、例えば、スパッタリング、ペースト印刷などが挙げられるが特に限定されない。回路基板のパターニングは周知の方法、例えば、フォトリソグラフィによるエッチング、スクリーン印刷が挙げられる。さらに回路基板は必要に応じてドリル、レーザー、溶融貫通法などでスルーホールを形成し回路基板を得る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いた回路基板は、透明性、色調に優れることから透明アンテナ基板として有用である。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法についてポリアリーレンスルフィド系樹脂としてポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略紀する場合がある)を用いた場合のフィルムの製造方法を例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されない。
硫化ナトリウムとp-ジクロロベンゼンを配合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、m-ジクロロベンゼンやトリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230~290℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、湿潤状態の粒状ポリマーを得る。この粒状ポリマーにアミド系極性溶媒を加えて30~100℃の温度で攪拌処理して洗浄し、イオン交換水にて30~80℃で数回洗浄し、酢酸カルシウムなどの金属塩水溶液で数回洗浄した後、乾燥してポリフェニレンスルフィドのポリマー粉末を得る。
本発明において、ポリマー粉末を洗浄する場合は、得られたポリマー粉末をNMPの溶媒中で、温度100~200℃、6~24時間の洗浄処理を施し、純水にて30~80℃で数回洗浄して、ポリマー粉末(洗浄済み)を得る。このポリマー粉末をベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製しPPSチップとする。
ポリアリーレンスルフィド樹脂として上記で得られたポリマー粉末からPPSチップを、ポリマー粉末(洗浄済み)と無機粒子および/または他の熱可塑性樹脂などを任意の割合で混合しマスターバッチを作製する。マスターバッチ中の無機粒子および/または他の熱可塑性樹脂の濃度は1質量%~25質量%が好ましく、5質量%~10質量%がより好ましい。25質量%より多いと分散性が悪化し分散径が大きくなる場合がある。1質量%未満だと希釈して使用時にマスターバッチの使用量が増える場合がありコストの観点から好ましくない場合がある。本発明においてマスターバッチを作製する方法は、二軸押出機などの剪断応力のかかる装置を用いてマスターバッチ化する方法などが好ましい。この場合、混練部では(PAS系樹脂の融点+5℃)以上(PAS系樹脂の融点+80℃)以下の樹脂温度範囲となる様に混練することが好ましく、より好ましくは(PAS系樹脂の融点+10℃)以上(PAS系樹脂の融点+80℃)以下であり、さらに好ましくは(PAS系樹脂の融点+15℃)以上(PAS系樹脂の融点+70℃)以下の温度範囲である。また、スクリュー回転数を100rpm以上1500rpm以下の範囲とすることが好ましい。樹脂温度やスクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、分散相の分散径をコントロールできる。
必要に応じて180℃で3時間減圧乾燥したPPSチップとマスターバッチを所定の割合で混合した後、単層の場合は溶融部が300℃乃至350℃に設定されたフルフライトの単軸押出機に供給し、フィルターに通過させた後、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度20℃乃至70℃の冷却ドラム上に静電荷を印加させながら密着させて急冷固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
二層以上の積層フィルムとする場合は、上記PPSチップと、PPSチップとマスターバッチを所定の割合で混合したチップを、別々の単軸押出装置に供給し、各樹脂の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置に溶融状態で、(PPSを主たる成分とする層)/(PPSを主成分としPPSとは異なる他の熱可塑性樹脂を少なくとも1種以上含む層)の2層、あるいは(PPSを主成分としPPSとは異なる他の熱可塑性樹脂を少なくとも1種以上含む層)/(PPSを主たる成分とする層)/(PPSを主成分としPPSとは異なる他の熱可塑性樹脂を少なくとも1種以上含む層)の3層、に任意の積層比(例えば0.3:24.4:0.3や0.3:24.7)で積層され、スリット上の口金出口から押出される。このシート状物を表面温度20℃乃至70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の2層積層未延伸フィルムあるいは3層積層未延伸フィルムを得る。
次いで上記で得られた未延伸フィルムを二軸延伸する。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を例示する。
未延伸フィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向(MD方向)に2.0倍~4.5倍、より好ましくは2.8倍~4.2倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は好ましくはTg~Tcc、より好ましくは(Tg+5℃)~(Tcc-10℃)の範囲である。その後20℃~50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg~Tccが好ましく、より好ましくは(Tg+5℃)~(Tcc-10℃)の範囲である。延伸倍率はフィルムの平面性の観点から3.0倍~5.0倍、好ましくは3.0倍~4.5倍が好ましい。なお、Tccとは冷結晶化温度のことをいう。
次に、(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点-10℃)以上(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+10℃)以下の温度で長手方向および/または幅方向に1.01倍乃至1.80倍以下に延伸した後に同じ温度で熱処理を施す後高温延伸工程を経ることが好ましい。より好ましい温度は(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点)以上(ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+5℃)以下であり、より好ましい倍率は幅方向に1.3倍~1.5倍である。本工程により結晶が部分融解しながら変形するため結晶サイズを所望の大きさまで小さく制御することができ、ヘイズが小さく全光線透過率の大きなフィルムを得ることができる。延伸倍率が1.01倍未満では十分な効果を得ることができず、1.8倍より大きいと延伸中に破れが生じることがある。また、熱処理中に長手および/または幅方向に弛緩処理を施してもよい。
次に、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および/または幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを得る。ここで押出機から押し出す樹脂の量、製膜速度と延伸倍率を調整することで所望の厚さを得ることができる。
得られた二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムをA層とし、これを真空蒸着機やスパッタリング装置を用いて透明なバリア層(B層)を成膜する。例えば、酸化アルミニウムの蒸着膜の成膜の場合は、蒸着装置のチャンバー内を真空にした後に、ターゲットは高純度のアルミニウムを使用し、酸素ガスを導入し、電子ビームでターゲットを加熱蒸発させ、膜厚10~1000nmとなるよう、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(A層)上に酸化アルミニウム膜の成膜を行う。必要に応じてポリアリーレンスルフィドフィルムを反転し反対の面にも同様にバリア層(B層)を形成し、ポリアリーレンスルフィドフィルムを得ることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いた回路基板はポリアリーレンスルフィドフィルムが透明であると同時に高温での透明維持性に優れることから回路の視認性が良く、欠点の検出が容易であり品質の向上が期待できる。
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(1)全光線透過率・ヘイズ
フィルム全体の全光線透過率およびヘイズは下記装置を用いて測定した。任意の5か所を測定しその平均値を全光線透過率及びヘイズとした。
装置:濁度計NDH5000(日本電色工業社製)
光源:白色LED5V3W(定格)
受光素子:V(λ)フィルタ付Siフォトダイオード
測定光束:φ14mm(入射開口φ25mm)
光学条件:ヘイズ:JIS-K7136(2000)に準拠
全光線透過率:JIS-K7361-1(1997)に準拠。
(2)酸素透過率
MOCON社製酸素透過率測定装置OX-TRAN100を用いてJIS K7126-2(2006)(等圧法)に準拠し、20℃、0%RHの条件にて酸素透過率を測定した。
(3)フィルム厚み、A層の厚みおよびB層の厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋後、ミクロト-ムでフィルム長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向でフィルム断面を厚み方向につぶすことなく切断した。次に切断したフィルムの断面に対し、熱による材料変質が起こらない条件で、走査型電子顕微鏡の試料台に固定し、(株)日立ハイテクノロジーズ製イオンミリング装置IM4000PLUSを用いて断面イオンリミング処理、続いてPt蒸着を行った。そして、得られたフィルム断面に対し、日本電子(株)製電解放射走査型電子顕微鏡JSM-6700Fを用いて、加速電圧3.0kV、ワーキングディスタンス8.0mmの条件で観察し、画像を得た。
A層の積層厚みおよびB層の積層厚みは観察倍率5000倍および20000倍の条件で観察し、得られた画像の解析からフィルムのA層の厚み及びB層の厚みについて、任意の5カ所を測定し、その平均値をA層の厚み及びB層の厚みとした。
また、フィルム全体の厚みは観察倍率3000倍の条件で観察し、フィルムの厚み方向全体が観察できる画像を採取する。観察により得られた画像よりフィルム全体の厚みを計測した。上記の倍率でフィルムの厚み方向が全体を確認できない場合は厚み方向に数点の画像を撮影し、画像をつなぎ合わせることで全体像を確認する。厚みの測定に用いるサンプルは任意の場所の合計5箇所を選定し、5サンプルの計測値の平均をそのサンプルのフィルム厚みとした。
(4)加熱後のヘイズの変化量ΔH
下記条件にて加熱前のヘイズHS(%)を測定した後に240℃に加熱した熱風オーブンで1時間加熱した後室温に冷却し、加熱後のヘイズHE(%)を測定する。下記式より求めた値を変化量ΔH(%)とした。
ΔH(%)=(加熱後のヘイズHE(%))-(加熱前のヘイズHS(%))
(ヘイズ)
装置:濁度計NDH5000(日本電色工業社製)
光源:白色LED5V3W(定格)
受光素子:V(λ)フィルタ付Siフォトダイオード
測定光束:φ14mm(入射開口φ25mm)
光学条件:ヘイズ:JIS-K7136(2000)に準拠
測定値:任意の5点の平均値を測定値とする。
(5)加熱後の色調b値の変化量Δb値
下記条件にて加熱前の色調b値を測定した後に240℃に加熱した熱風オーブンで1時間加熱した後室温に冷却し、加熱後の色調b値を測定する。下記式より求めた値を変化量Δb値とした。
Δb値=(加熱後のb値)-(加熱前のb値)
(色調b値)
下記装置を用いて三刺激値X,Y,Zを測定し、次の関係式{b値=7.0×(Y-0.847×Z)/Y1/2}を用いてハンターLab表色系の黄色度(b値)を算出した。
装置:分光式色差計CM-3600d(KONICA-MINOLTA製)
測定モード:透過法
光学条件:JIS-K7105(1981)
測定値:任意の5点の平均値を測定値とする。
(参考例1)PPS樹脂(顆粒)の製造方法
工程撹拌機付きの1リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム1.00モル、96%水酸化ナトリウム1.03モル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)1.65モル、酢酸ナトリウム0.45モル、及びイオン交換水150gを仕込み、240rpm で撹拌しながら常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水211gおよびNMP4gを留出したのち、反応容器を160℃ に冷却した。
次に、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)1.00モル、NMP1.31モルを加えた。続いて反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、200℃~235℃ まで0.6℃/分の速度で昇温して、235℃ 到達後、235℃で反応を95分間継続した。その後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温して100分保持した。270℃到達後水1モルを15分かけて系内に注入した。270℃で100分経過後、200℃まで1.0℃/分の速度で冷却し、その後室温近傍まで急速冷却した。内容物を取り出し、0.4リットルのNMPで希釈後、85℃で30分撹拌した後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。後処理工程についで、得られた固形物に、0.5リットルのNMPを加えて85℃で30分撹拌し、濾別した。得られた固形物を0.9リットルの温水で3回洗浄、濾別した。更に、得られた粒子に1リットルの温水を加えて2回洗浄、濾別しポリマー粒子を得た。これを、80℃ で熱風乾燥した後、120℃で減圧乾燥し、融点が280℃、質量平均分子量70,000のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂の顆粒(PPS顆粒)を得た。
(参考例2)PPSペレット(PPS-1)の製造方法
参考例1で作製したPPS樹脂(顆粒)を、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPPSペレット(PPS-1)を作製した。
(参考例3)PPS顆粒と熱可塑性樹脂のマスターペレット(MBー1)の作製
ニーディングパドル混練部を1箇所設けた同方向回転タイプのベント式二軸混練押出機を320℃に加熱し、フィード口から参考例1で得たPPS顆粒を90質量部、ポリエーテルスルホン(PESU:ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社、“ベラデル”(登録商標)3600)を10質量部となるように供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練後、ストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして、PESUを10質量部含有するマスターペレット(MBー1)を作製した。
(実施例1)
参考例2で作成したPPSペレット(PPS-1)を99.94質量部と参考例3で作成したPPSマスターペレット(MB-1)を0.06質量部となるよう混合させ、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が315℃に加熱された単軸押出機に供給した。
次いで、溶融したポリマーを繊維焼結ステンレス金属フィルター(20μmカット)に通過させ温度310℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み650μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して延伸温度105℃でフィルムの長手方向に3.6倍の倍率で延伸した。その後、フィルムの両端部をクリップで担持して、テンターに導き延伸温度100℃でフィルムの幅方向に3.6倍の倍率で延伸した。引き続いて後高温延伸工程として285℃で幅方向に1.4倍延伸し、285℃で熱処理を行った後、2%弛緩処理を行い、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚み50μmの二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを真空蒸着装置にセットし、1.5×10-3Paの減圧度にした後に、純度99.99質量%のアルミニウムを電子ビーム(出力5.1kW)で加熱蒸発させ、さらに蒸発源であるるつぼの真横に設置した酸素供給ノズルから酸素ガスを6.0L/minで金属蒸気と同じ方向に供給し、厚さ100nmの酸化アルミニウムの蒸着薄膜層(B層)を二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの片面上に形成した。次いでフィルムを反転し反対面にも同様に厚さ100nmの酸化アルミニウムの蒸着薄膜層(B層)を設けたポリアリーレンスルフィドフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び特性を表1に示す。
(実施例2~5)
二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(A層)の厚さ、酸化アルミニウムの蒸着層(B層)の厚さを表1となるようにした以外は実施例1と同様にしてポリアリーレンスルフィドフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び特性を表1に示す。
(実施例6)
参考例2で作成したPPSペレット(PPS-1)を99質量部と参考例3で作成したPPSマスターペレット(MB-1)を1質量部となるよう混合させ、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が315℃に加熱された単軸押出機に供給した以外は実施例1と同様にしてポリアリーレンスルフィドフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び特性を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にして二軸配向ポリアリーレンスルフィド(A層)のみを得た。得られたフィルムの物性及び特性を表1に示す。
(比較例2)
二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(A層)の厚さ、酸化アルミニウムの蒸着層(B層)の厚さを表1となるようにした以外は実施例1と同様にしてポリアリーレンスルフィドフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び特性を表1に示す。
(比較例3)
参考例2で作成したPPSペレット(PPS-1)を90質量部と参考例3で作成したPPSマスターペレット(MB-1)を10質量部となるよう混合させ、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が315℃に加熱された単軸押出機に供給し、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(A層)の厚さ、酸化アルミニウムの蒸着層(B層)の厚さを表1となるようにした以外は実施例1と同様にしてポリアリーレンスルフィドフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び特性を表1に示す。
Figure 2023142607000003
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは透明性であると同時に高温での透明維持性に優れる。そのため、かかる特性を活かして、自動車用部材、電池用部材、ディスプレイ用部材、工業用包材、意匠用材料、電気・電子材料の特に透明性を必要とする各種部品、例えば透明回路基板、透明アンテナ基板、高周波用透明回路基板、高周波用透明アンテナ基板として好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. ポリアリーレンスルフィド(PAS)を主たる構成成分とする層を有し、ヘイズが10%以下であり、酸素透過率が60cc/m・day・atm以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. 厚さが30μm以上である請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  3. ポリアリーレンスルフィドを主たる構成成分とする層(A層)の少なくとも一方の面に、ポリアリーレンスルフィドとは異なる成分からなる層(B層)を有する請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. 全光線透過率が80%以上である請求項1~3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  5. 空気中で240℃の環境下1時間加熱した前後のヘイズの変化量ΔHが5%以下である請求項1~4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  6. 透明回路基材に用いられる請求項1~5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  7. 透明アンテナ基材に用いられる請求項6に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  8. 請求項1~5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いた回路基板。
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