JP2014189718A - 二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents

二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】加熱成形性の優れた二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム及び無機粒子を含有するポリアリーレンスルフィドフィルムとの二層フィルムを提供すること。
【解決手段】実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂のみからなる二軸延伸フィルムであり、200℃破断伸度が150%以上であることを特徴とする二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。さらに、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、m−フェニレンスルフィド単位を5〜15%含むポリアリーレンスルフィドであり、フィルムの融点が260℃以下であることが望ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムに関するものである。
ポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性、耐加水分解性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドフィルムは、耐熱性、電気絶縁性、耐加水分解性、耐薬品性などの特性を活かし、電気絶縁材料、離型材料、テープ材料、音響機器振動板材料などへの適用が進められている。
これら用途に用いられる二軸延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムの成形加工時の割れ改善を目的に、破断伸度を向上したフィルムが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、上記のフィルムは、室温における破断伸度の向上により、室温における加工工程でのフィルム割れは改善できるものの、加熱による破断伸度向上効果は十分ではなく、加熱成形性を満足するものではなかった。
また、ポリフェニレンスルフィド中に他の熱可塑性樹脂を混合したフィルムが提案されている(特許文献2参照)。上記のフィルムは、200℃破断伸度向上による加熱成形性を改善したものであるが、他の熱可塑性樹脂を混合しているため、耐薬品性が悪化する場合があった。
また、実質的にp−フェニレンスルフィド単位とm−フェニレンスルフィド単位からなるブロックコポリマーあるいは、融点の異なる2種のポリフェニレンスルフィドをブレンドする技術(特許文献3、4参照)もあるが、これらのフィルムは、加熱による破断伸度向上についてなんら開示がなく、また、200℃における破断伸度が十分向上するものではなかった。
WO2008/139989号 WO2007/129721号 特開昭62−152828号公報 特開昭63−33427号公報
そこで本発明は、これらの問題点を解消し、熱可塑性樹脂を用いてなる二軸延伸フィルムであって、該熱可塑性樹脂が実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂のみからなり、加熱成形性に優れた二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することを目的とするものである。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、熱可塑性樹脂を用いてなる二軸延伸フィルムであって、該熱可塑性樹脂が実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂のみからなり、200℃破断伸度が150%以上であることを特徴とする二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム、である。
本発明によれば、加熱成形性に優れた二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムを得ることができる。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムに用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、融点が260℃以下であることが好ましく、より好ましくは255℃以下であり、さらに好ましくは250℃以下である。融点の下限は、特に制限は無いがポリアリーレンスルフィドの耐熱性の観点から230℃以上が好ましい態様である。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 2014189718
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示される。PPSは主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を全繰り返し単位の85モル%以上95モル%以下含んで構成されていることが好ましい。より好ましくは85モル%以上、92モル%以下であり、さらに好ましくは85モル%以上、90モル%以下である。かかるp−フェニレンスルフィド単位が85モル%未満では、耐熱性、耐薬品性が低下する場合があり、95モル%を超えると高温破断伸度を十分高められない場合がある。
Figure 2014189718
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の融点を上記の260℃以下とする方法は、たとえば、p−フェニレンスルフィド単位を主たる構成単位とする場合は、繰り返し単位の5モル%以上、15モル%以下、好ましくは8モル%以上、15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上、15モル%以下の範囲の中でp−フェニレンスルフィド単位以外の構成単位を共重合せしめることで融点を所定範囲とすることができる。かかる共重合単位が5モル%未満では、高温破断伸度を十分高められない場合があり、15モル%を超えると、耐熱性、耐薬品性が低下する場合がある。
好ましい共重合単位は、下記式に示す共重合単位、
Figure 2014189718
Figure 2014189718
Figure 2014189718
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2014189718
Figure 2014189718
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、高温破断伸度向上の観点からm−フェニレンスルフィド単位が好ましい。
共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、実質的に上記ポリアリーレンスルフィド樹脂のみからなる二軸延伸フィルムである。実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂のみからなるとは、フィルムを構成する熱可塑性樹脂として、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂を含まないことを意味するものである。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、加熱成形性の観点から200℃における破断伸度が150%以上であることが重要である。より好ましくは、200%以上であり、さらに好ましくは250%以上である。ここで、破断伸度は、フィルムの長手方向,幅方向の平均の破断伸度であり、フィルムの長手方向、幅方向が不明なときは、フィルム表面の任意の点を基準に面内360°に亘って屈折率を測定したとき、最も屈折率が高い方向とそれに直交する方向をそれぞれ長手方向、幅方向とみなす。200℃における破断伸度が150%未満の場合、加熱成形性を十分高められない。また、200℃における破断伸度の上限は特に限定されないが、耐熱性の観点から400%以下が好ましい。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、200℃における破断伸度が大幅に向上するものであるが、室温での破断伸度(E)と200℃での破断伸度(E200)の比E200/Eが1.5以上であることが好ましく、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上である。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムの200℃破断伸度および、室温での破断伸度(E)と200℃での破断伸度(E200)の比E200/Eを上記範囲とする方法は、例えば、融点を本発明の範囲とし、後述する無機粒子を含有していない層(A層)を有し、本明細書に記載の特定の面積倍率、熱固定法により、融点直下の微小吸熱ピーク温度(Tmeta)を本発明の範囲とすることにより得ることができる。
本発明においては、200℃における破断伸度を上記範囲とするため、二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムが無機粒子を含有していない層(A層)と無機粒子を含有する層とを有することが好ましい態様である。無機粒子を含有していないA層の厚み比率(積層比)は、フィルムの全厚みに対して、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。
なお、無機粒子を含有していない層(A層)の厚みは、例えば超薄切片法などでフィルム断面を作成し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡などを用いて求めることができる。
無機粒子を含有する層(B層)を有する場合はフィルムの全厚みに対し積層比0.5未満であることが好ましい。かかるB層に含有する粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、カオリン、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、酸化亜鉛などの無機粒子をあげることができるが、ポリアリーレンスルフィド樹脂との親和性、高温破断伸度の観点から炭酸カルシウムが好ましく、粒子の平均粒径としては0.1μm以上、1.5μm以下が好ましく、より好ましくは、0.2μm以上、1μm以下である。ここでいう平均粒径とは、フィルム長手方向の径と幅方向の径と厚さ方向の径の体積平均粒径を算出し、任意の50個の粒子について、該体積平均粒径の平均値を算出することにより得ることが可能となる。
B層中の粒子の含有量は、B層を構成するポリマー重量に対し、0.1重量%以上、1重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.1重量%以上、0.5重量%以下である。粒子の含有量が0.1重量%未満の場合、加工工程でフィルムの滑り性悪化から、フィルムに皺が発生しやすく、また、フィルム同士が密着しやすくなり、取り扱い性の悪化から生産性が低下する場合がある。粒子の含有量が1重量%を超えると、高温破断伸度が低下し、加熱成形性が悪化する場合がある。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、高温破断伸度向上の観点から、融点直下の微小吸熱ピーク温度(Tmeta)が230℃以下であることが好ましい。Tmetaが230℃を超える場合、高温破断伸度が低下し、加熱成形性が悪化する場合がある。ここで、Tmetaは、JIS K7121−1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、室温から350℃まで、昇温速度20℃/分で昇温したとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度(融点)直下の微小吸熱ピークである。
本発明において、融点直下の微小吸熱ピーク温度(Tmeta)を上記範囲とする方法は、後述する本願規定の熱固定方法により得ることが可能となる。つまり、1段目の熱固定温度を140℃〜180℃で行ったのち、2段目の熱固定温度を180〜230℃とすることにより得ることが可能となり、特に2段目の熱固定温度を230℃以下とすることが好ましい態様である。 本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムの厚みは、5μm以上、300μm以下が好ましく、より好ましくは、10μm以上、200μm以下である。フィルム厚みが5μm未満、あるいは300μm以上の場合、高温破断伸度が十分高められない場合がある。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、電気絶縁用、離型材料、テープ材料、音響機器振動板材料など一般工業用として、加熱成形が必要とされる用途において幅広く用いることが可能である。
次いで、本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィド樹脂としてm−フェニレンスルフィド単位を共重合させたポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、共重合PPS樹脂と略記する場合がある。)を用いた場合を例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されないことは無論である。すなわち、適宜用いるモノマーを変えてこの例を参考とすれば過度の試行錯誤を要すること無く本発明を実施できる。
共重合PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンおよびm−ジクロロベンゼンを上記の好ましい比率で配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を用いることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230〜280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これをNMPで希釈後、溶剤と粒状ポリマーを濾別し、得られた粒状ポリマーを温水で数回洗浄、濾別、乾燥して共重合PPS粒状ポリマーを得る。上記で得られたポリマーには必要に応じて、無機粒子を本発明でいう比率で添加することができる。
次いで、押出機を経た溶融ポリマーをフィルターに通過させた後、その溶融ポリマーをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。シート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸ポリフェニレンスルフィドシートを得る。積層フィルムは、無機粒子を添加した共重合PPS樹脂と、無機粒子を添加していない共重合PPS樹脂を別々の溶融押出装置に供給し、共重合PPS樹脂の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置に溶融状態で無機粒子を添加した共重合PPS樹脂層が最外層となるように無機粒子添加共重合PPS層/無粒子共重合PPS層/無機粒子添加共重合PPS層の3層に積層され、スリット状の口金出口から押し出される。かかる溶融積層体を冷却ドラム上で共重合PPS樹脂のガラス転移温度以下に冷却し、実質的に非晶状態の3層積層シートを得る。
次いで、このようにして得られた非晶状態の単層または積層シートを共重合PPS樹脂のガラス転移温度以上、冷結晶化温度以下の範囲で、従来公知の逐次二軸延伸機や同時二軸延伸機により二軸延伸した後、150〜230℃の範囲の温度で多段熱処理を行い二軸延伸フィルムを得る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる方法を説明する。まず、非晶状態の単層または積層シートを加熱ロール群で加熱し、長手方向(MD方向)に2.5〜3.4倍、好ましくは2.8〜3.2倍、1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(共重合PPSのガラス転移温度)〜(Tg+40)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg(共重合PPSのガラス転移温度)〜(Tg+40)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲であり、高温破断伸度の観点から2.5〜3.4倍、好ましくは2.8〜3.2倍で延伸する(TD延伸)。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する。熱固定は、以下の異なる2段の熱固定が、本発明の高温破断伸度を達成する観点から好ましく、1段目の好ましい熱固定温度は140℃〜180℃であり、より好ましくは150℃〜170℃である。1段目の熱固定温度を前記範囲とすることで、本願規定の低倍率延伸時に発生する熱固定工程でのフィルム破れ、平面性の悪化を抑制することが可能となり、本願発明の高温破断伸度を達成することが可能となる。2段目の熱固定温度は、180〜230℃が好ましい。ここで、2段目熱固定温度が180℃未満の場合、フィルムの耐熱性が悪化する場合があり、230℃を超えるとフィルムの結晶化度が増加し、高温破断伸度が低下し、加熱成形性が悪化する場合がある。さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸延伸フィルムを得る。
[特性の測定方法]
(1)ポリマーの溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフC1(ダイス長10mm、ダイス穴直径1mm)を用い、300℃または320℃の条件で測定を行い、せん断速度200/sの溶融粘度を測定した。
(2)融点(Tm)
JIS K7121−1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温する。同試料を取り出し急冷したのち、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とする。
(3)微小吸熱ピーク温度(Tmeta)
JIS K7121−1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、室温から350℃まで、昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度(融点)直下の微小吸熱ピークをTmetaとした。
(4)無粒子層(A層)の厚み比率
日本ミクロトーム研究所製電動ミクロトームST−201を用いて断面切断したフィルムのスライス片を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、実質的に無機粒子を含有していない厚みを測定し、下式で無粒子層(A層)の厚み比率を算出した。
無粒子層(A層)の厚み比率=A層の厚み/総厚み。
(5)破断伸度(室温、200℃)
ASTM−D882(1999)に規定された次の方法に従って、インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック社製AMF/RTA-100)を用いて、幅10mmのサンプルフィルムをチャック間長さ50mmとなるようにセットし、室温または200℃の温度で引張速度300mm/分で引張試験を行った。
破断伸度は、フィルム長手方向および幅方向についてそれぞれ5試料測定を行い、下記式で求めた。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×長さ150mm
引張り速度:300mm/分
測定環境:室温(55%RH)または200℃
破断伸度(%)=(長手方向について求めたフィルムの破断伸度の総和(5試料分)+幅方向について求めたフィルムの破断伸度の総和(5試料分))/10。
(6)高温成形性
真空圧空成型機(浅野製作所社製)を用い、試料を幅22cm、長さ30cm(A4版サイズ)に切断し、シート温度200℃になるよう予熱し、φ20mm、高さ10mmの円柱金型で加熱成形し、目視でフィルム割れの発生の有無を下記基準により判定した。なお、加工個数は各試料100枚成型を行った。
◎:不良率が5%未満
○:不良率が5%を超え10%以下
△:不良率が10%を超え20%以下
×:不良率が20%を超える。
(参考例1)共重合PPS樹脂の製造
オートクレ−ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPという。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマーとして90モルのp−ジクロロベンゼン、副成分モノマーとして10モルのm−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により5回洗浄した後、減圧下120℃の温度にて乾燥して、300℃の溶融粘度が2800ポイズであり、融点が250℃の共重合PPS樹脂1を作製した。
(参考例2)粒子ペレット1の作製
平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粒子をエチレングリコール中に50重量%分散させたスラリーを調製した。このスラリーをフィルターで濾過した後、ヘンシェルミキサーを用いて、参考例1で得られた共重合PPS樹脂に炭酸カルシウムの含有量が5重量%となるよう混合した。得られた混合物を、30mm径の二軸のスクリューを有するベント押出機に供給し、温度300℃で溶融した。この溶融物を金属繊維からなる95%カット孔径10μmのフィルターに通して瀘過した後、2mm孔径ダイから押し出し、ガット状物を得た。さらに該ガット状物を約3mm長に裁断し、粒子含有量5重量%の粒子ペレット1を得た。
(参考例3)PPS樹脂の製造
主成分モノマーとして100モルのp−ジクロロベンゼンを用い、副成分モノマーを用いないこと、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、270℃の温度にて4時間重合する以外は、参考例1の共重合PPS樹脂の製造と同様にしてPPS樹脂を作製した。なお、該PPS樹脂の320℃の溶融粘度は、3000ポイズであり、融点が280℃であった。
(参考例4)粒子ペレット2の作製
参考例3で得られたPPS樹脂を用い、該PPS樹脂とスラリーの混合物を温度320℃で溶融する以外は、参考例2の粒子ペレット1の製造と同様にしてPPS樹脂からなる粒子含有量5重量%の粒子ペレット2を得た。
(実施例1)
参考例1で得た共重合PPS樹脂を180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が290℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機1(A層)に供給した。また、参考例1で作製した共重合PPS樹脂に、参考例2で作成した粒子ペレット1を粒子含有量が共重合PPS樹脂に対し0.5重量%となるようにブレンドし、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が290℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機2(B層)に供給した。
次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーを繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)に通過させた後、290℃に設定した3層用の合流ブロックを用いて3層積層(B/A/B)とした。合流ブロックを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの厚みがB/A/B=2.5μm/45μm/2.5μmとなるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギアポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを3層積層状態にし、温度290℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸積層シートを作製した。次いで、得られた未延伸積層シートを、表面温度94℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.2倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と幅方向(TD方向)に95℃の温度で3.2倍に延伸し、続いて1段目の熱固定を170℃、2段目の熱固定を225℃で熱処理を行い、厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性に優れたフィルムであった。
(実施例2)
実施例1の最終フィルムの厚みをB/A/B=7.5μm/35μm/7.5μmとする以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性に優れたフィルムであった。
(実施例3)
実施例1の最終フィルムの厚みをB/A/B=12.5μm/25μm/12.5μmとする以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性に優れたフィルムであった。
(実施例4)
参考例1で作製した共重合PPS樹脂に、参考例2で作成した粒子ペレット1を粒子含有量が共重合PPS樹脂に対し0.5重量%となるようにブレンドした樹脂を実施例1と同様に減圧乾燥した後、溶融部が290℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機1に供給し単層とする以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性に優れたフィルムであった。 (実施例5)
実施例1の1段目の熱固定温度を225℃とする以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性に優れたフィルムであった。
(実施例6)
副成分モノマとして6モルのm−ジクロロベンゼンを用いた以外は、参考例1と同様にして共重合PPS樹脂1−1を作製した。また、共重合PPS1−1樹脂に炭酸カルシウム粒子を混合する以外は、参考例2と同様にして粒子含有量5重量%の粒子ペレット1−1を得た。
上記で得られた共重合PPS樹脂1−1、粒子ペレット1−1を用いる以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性に優れたフィルムであった。
(比較例1)
実施例5の1段目の熱固定温度と2段目の熱固定温度を245℃とする以外は、実施例5と同様にして厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性が悪化した。
(比較例2)
参考例3で得たPPS樹脂を溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機1(A層)に供給し、参考例3で作製したPPS樹脂に、参考例4で作成した粒子ペレット2を粒子含有量がPPS樹脂に対し0.5重量%となるようにブレンドし、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機2(B層)に供給した。次いで、320℃に設定した3層用の合流ブロックを用いて3層積層(B/A/B)とし、温度310℃に設定したTダイの口金から溶融押出しする以外は、実施例1と同様にして未延伸積層シートを作製した。次いで、得られた未延伸積層シートを、表面温度95℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.2倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と幅方向(TD方向)に100℃の温度で3.2倍に延伸し、続いて1段目の熱固定を170℃、2段目の熱固定を225℃で熱処理を行い、厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性が悪化した。
(比較例3)
参考例1で得た共重合PPS樹脂50重量%と参考例3で得たPPS樹脂50重量%をブレンドし単軸押出機1(A層)に供給する以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性が悪化した。
(比較例4)
参考例3で得たPPS樹脂を180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機1(A層)に供給した。また、参考例1で作製した共重合PPS樹脂に、参考例2で作成した粒子ペレット1を粒子含有量が共重合PPS樹脂に対し0.5重量%となるようにブレンドし、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が290℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機2(B層)に供給した。
次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーを繊維焼結ステンレス金属フィルター(14μmカット)に通過させた後、300℃に設定した3層用の合流ブロックを用いて3層積層(B/A/B)とした。合流ブロックを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの厚みが実施例1と同様のB/A/B=2.5μm/45μm/2.5μmとなるようにした。このように溶融ポリマーを3層積層状態にし、温度300℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸積層シートを作製した。次いで、得られた未延伸積層シートを、表面温度95℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.2倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と幅方向(TD方向)に100℃の温度で3.2倍に延伸し、続いて1段目の熱固定を170℃、2段目の熱固定を225℃で熱処理を行い、厚み50μmの二軸延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを作製した。
得られた厚み50μmの二軸延伸フィルムの評価結果は表1に示したとおりであり、高温成形性が悪化した。
Figure 2014189718
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、高温成形性に優れることから、モーター、トランス、絶縁ケーブルなどの電気絶縁材料、インサートあるいはインモールド成形材料、金型成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型材料、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料、スピーカー振動板など加熱成型が必要とされる各種工業材料用途において、好適に使用することができる。

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂を用いてなる二軸延伸フィルムであって、該熱可塑性樹脂が実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂のみからなり、200℃破断伸度が150%以上であることを特徴とする二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. 室温破断伸度(E)と200℃破断伸度(E200)が下記式を満足することを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
    1.5≧E200/E
  3. 200℃破断伸度が200%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. フィルムの融点が260℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  5. 前記ポリアリーレンスルフィドがm−フェニレンスルフィド単位を5〜15モル%含むポリアリーレンスルフィドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  6. 前記二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムが無機粒子を含有していない層(A層)と無機粒子を含有する層とを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  7. 無機粒子を含有していない層(A層)の厚みがフィルム全厚みに対して積層比0.5以上であることを特徴とする請求項6に記載の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  8. 融点直下の微小吸熱ピーク温度(Tmeta)が230℃以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルム。
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