JP2013006377A - 複合フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電気絶縁性、モーター加工性、界面接着性を損なうことなく、外観や物理特性に優れた複合フィルムを提供する。
【解決手段】 最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A)を有する二軸配向フィルム(フィルムA)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A’)を有し、その反対の最外層に層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリフェニレンサルファイドで構成された層(層B)を有する二軸配向フィルム(フィルムB)とがフィルムAの層AとフィルムBの層B間で接着剤を用いずに接合された構成を含む、厚みが120μm以上500μm以下、破断伸度が60%以上の複合フィルムであって、前記層Aと層B間の接着強度が70g/15mm以上であり、かつ、該複合フィルムの表面において長径100μm以上、深さが0.5μm以上の表面凹みが1個/100cm以下であることを特徴とする複合フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンサルファイドを用いた複合フィルムに関し、さらに詳しくは、モーターの電気絶縁に用いるに好適な複合フィルムに関するものである。
ポリフェニレンサルファイドフィルムは、優れた耐熱性、耐加水分解性、耐薬品性、難燃性、電気絶縁性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、ポリフェニレンサルファイドフィルムは、その電気絶縁性や耐熱性の高さを活かし、電気絶縁材料への適用が進められている。また、電気絶縁性を高めるためにポリフェニレンサルファイドフィルムを複合したポリフェニレンサルファイド/共重合ポリフェニレンサルファイド/ポリフェニレンサルファイドからなる複合フィルムが開示されている(特許文献1、2参照)。これは、電気絶縁用途においては一定の厚みが求められるところ、ポリフェニレンサルファイド樹脂はポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂に比べて結晶化速度が早いため、厚みの厚いポリフェニレンサルファイドフィルムを一軸もしくは二軸延伸するとフィルムに破れが生じ、生産効率が悪化するので、共重合ポリフェニレンサルファイドフィルムをポリフェニレンサルファイドフィルムに介在させ、熱融着することで厚みを得るものである。しかし、上記の従来の複合フィルムは、短時間で熱融着を果たすために加熱ロールでの加熱温度は高く設定されるが、冷却ロールや搬送ロール上でフィルム表面に凹みが発生したり、フィルム破れが発生したり、伸度などの物性が低下することがあった。係る凹みはモーター絶縁用途に用いようとすると品質欠陥となりうる。また、係る凹みを無くそうと熱融着温度を下げると層間の接着力が十分でなくなってモーター絶縁といった厳しい条件の用途では電気絶縁材との使用に限界があった。
特開2007−98941号公報 特開2010−110898号公報
そこで本発明は、電気絶縁性、モーター加工性、層間の界面接着性を損なうことなく、この問題点を解消し、外観や物理特性に優れた複合フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明の複合フィルムは、上記の課題を解決するために次の手段を有する。
(1)最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層Aと称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムAと称する)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層A’と称する)を有し、その反対の最外層に層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドで構成された層(便宜的に層Bと称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムBと称する)とがフィルムAの層AとフィルムBの層B間で接着剤を用いずに接合された構成を含む、厚みが120μm以上500μm以下、破断伸度が60%以上の複合フィルムであって、前記層Aと層B間の接着強度が70g/15mm以上であり、かつ、該複合フィルムの表面において長径100μm以上、深さが0.5μm以上の表面凹みが1個/100cm以下であることを特徴とする複合フィルム。
(2)前記層Bの厚みが10μm以上30μm以下であり、前記層Bを構成する共重合ポリフェニレンサルファイドの融点が230〜265℃であることを特徴とする請求項1に記載の複合フィルム。
(3)最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層Aとも称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムAとも称する)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層A’とも称する)を有し、その反対の最外層に層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドで構成された層(便宜的に層Bとも称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムBとも称する)のフィルムAの層AとフィルムBの層Bとを加熱圧着する熱融着工程と、熱融着後のフィルムを冷却する工程と、冷却されたフィルムを少なくとも1本以上の搬送ロールを経由して巻き取る工程とを有し、かつ前記熱融着工程と冷却工程が下記(1)〜(2)を満たすことを特徴とする複合フィルムの製造方法。
(a)熱融着工程の前記層Aと層Bを加熱圧着せしめる加熱ロールと圧着ロールにおいて、加熱ロールの表面温度が、(Tmb−10)(℃)以上(Tma−20)(℃)以下であり、かつ、圧着された点から90°以上270°以下の角度の範囲で加熱ロールの外周に沿わせて後に該熱融着体を該加熱ロールから剥離すること。ここで、
Tma:層Aを構成する樹脂の融点(℃)
Tmb:層Bを構成する樹脂の融点(℃)
(b)熱融着後のフィルムを冷却する工程において、加熱ロールから最初の搬送ロール間、熱融着された複合フィルムを気体雰囲気中で15℃/s以上30℃/s以下の速度で実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A)のガラス転移温度以下にまで冷却すること。
本発明によれば、電気絶縁性、モーター加工性、界面接着性、外観に優れた複合フィルムを提供することができる。
本発明は、最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A)を有する二軸配向フィルム(フィルムA)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A’)を有し、その反対の最外層に層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドで構成された層(層B)を有する二軸配向フィルム(B)が用いられる。
ここで、実質的にポリパラフェニレンサルファイド(以下、ポリパラフェニレンサルファイドをPPSと略することがある)からなるとは、ポリマーの主要繰り返し単位として下記構造式で示されるパラフェニレンサルファイド単位を85モル%以上含む高分子をいい、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは98モル%以上がパラフェニレンサルファイド単位である。かかる成分が85モル%未満ではポリマーの結晶性、軟化点などが低下し、耐熱性、寸法安定性、機械特性などが損なわれる場合がある。
Figure 2013006377
上記実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる高分子において、パラフェニレンサルファイド以外の繰り返し単位はパラフェニレンサルファイド構造以外のフェニレンサルファイド構造を含む繰り返し単位であることが望ましいが、本発明の目的を阻害しない限り、他の繰り返し単位が用いられても差し支えない。共重合の態様はランダム共重合であってもブロック共重合であっても良い。
層Bを構成する、層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドとは、フェニレンサルファイド単位を主たる繰り返し単位とするポリアリーレンサルファイドであって、前記層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いものである。主たるの意味するところは、係るポリアリーレンサルファイドは100モル%がフェニレンサルファイド構造を含む繰り返し単位であることが望ましいが、本発明の目的を阻害しない限りにおいては他の繰り返し単位が10モル%程度以下含まれたものであっても良いとの意味である。この層Bを構成するポリアリーレンサルファイドの融点はパラフェニレンサルファイド単位以外の繰り返し単位を共重合せしめることで調整することができる。層Bを構成するポリアリーレンサルファイドは前記層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低ければ良いが、余りに融点差がありすぎるとフィルムの耐熱性が損なわれることがあるので、係る融点差は90℃以内、望ましくは60℃以内、更に望ましくは40℃以内、とすることが望ましい。一方、係る融点差が20℃未満であるときは層Aと層Bの界面接着性を十分高めることができないし、また、複合フィルムの表面に凹みが発生することがある。
層Bを構成するポリアリーレンサルファイドに用いるパラフェニレンサルファイド単位以外の構造単位として、具体的には、ビフェニレンサルファイド単位、ビフェニレンエーテルサルファイド単位、ビフェニレンスルホンサルファイド単位、ビフェニレンカルボニルサルファイド単位、ナフタレンサルファイド単位等が挙げられるが、特に下記式に示すメタフェニレンサルファイド単位が共重合されていることが好ましい。メタフェニレンサルファイド単位の共重合量は5モル%以上20モル%以下が好ましく、より好ましくは5モル%以上15モル%以下である。メタフェニレンサルファイド単位を5モル%以上用いることによって、高い界面接着性を得ることができ、また、フィルムの柔軟性が良好となるので、モーター加工工程で複合フィルムが割れ難くなる。なお、パラフェニレンサルファイド単位以外の構造単位としては複数種の構造単位が用いられても構わない。また、ブロックコポリマーであってもランダムコポリマーであっても構わない。
Figure 2013006377
実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層Aおよび層A’ならびに前記層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドからなる層Bにおいては、それぞれ、前で説明した実質的なポリパラフェニレンサルファイドあるいはポリアリーレンサルファイドにより構成されていることが望ましいが、本発明の目的を阻害しない範囲で各層の全質量の10質量%未満の範囲で、他の成分、例えばポリアリーレンサルファイド以外のポリマーや無機若しくは有機フィラー、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、相溶化剤などの添加剤を含むことができる。ポリアリーレンサルファイド以外のポリマーとしては、例えば、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトンなどの各種ポリマーおよびこれらのポリマーの少なくとも1種を含むブレンド物を挙げられ、また、無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛などの無機フィラー、有機フィラーとしては、300℃で溶融しない有機の高分子化合物(例えば、架橋ポリスチレン等)のフィラー等を挙げることができる。
また、上記層A及び層Bは、必要に応じて、熱処理、表面処理などの任意の加工を行ってもよい。
層Aあるいは層A’を構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドの融点(Tma)は、260℃以上300℃以下が好ましく、より好ましくは270℃以上300℃ 以下であり、さらに好ましくは280℃以上290℃以下である。Tmaが260℃未満では、複合フィルムとしての耐熱性が十分でない場合があり、300℃を超えると溶融製膜時の押出機の負荷が大きくなる場合がある。
層Bの厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。層Bの厚みが10μm未満の場合、層Bの配向緩和が十分進行せず層Aと層Bの接着強度が十分得られない場合があり、50μmを超えると、複合フィルムの耐熱性が低下することがある。ここで、層Bの厚みとは、複合フィルムに存在する層Bの一層あたりの厚みである。
本発明の複合フィルムの厚みは、120μm以上500μm以下が必要であり、好ましくは150μm以上350μm以下であり、さらに好ましくは200μm以上350μm以下である。厚みが120μm未満の場合、モーター絶縁フィルムとして電気絶縁性が十分ではなく、厚みが500μmを超えると複合フィルムの熱融着加工性が低下し、界面接着性、モーター加工性が低下する。
本発明の複合フィルムの構成は、最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A)を有する二軸配向フィルム(フィルムA)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A’)を有し、その反対の最外層に層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドで構成された層(層B)を有する二軸配向フィルム(フィルムB)とがフィルムAの層AとフィルムBの層B間で接着剤を用いずに接合された構成を含むものである。最も単純な構成の例としては、フィルムAとして実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる単層の二軸配向フィルム(層Aに相当)とフィルムBとして実質的なポリパラフェニレンサルファイドの層(層A’に相当)とフィルムAの実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドの層(層Bに相当)の二層からなる二軸配向フィルム、とを熱融着したフィルムが挙げられる。
他の例としては、フィルムAとして、(実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(A層に相当))/(別なポリフェニレンサルファイドからなる層)の二層フィルムや、実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(A層に相当))/(1層または2層以上の別なポリフェニレンサルファイドからなる層)/(実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(A層に相当))の三層以上のフィルムが挙げられ、フィルムBとしても同様に二層あるいは三層以上のフィルムとすることができる。また、フィルムA/フィルムBの貼り合わせとするほか、この複合フィルムのフィルムB側若しくはフィルムA側にフィルムBを更に熱融着することもできる(被着材である複合フィルムの最外層は層Aであるか層A’であるからである)。
本発明において、実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A(あるいは層A’))と該実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドからなる層(層B)は接着剤を介することなく接合されており、具体的方法は、後述する熱融着法が好ましく用いられる。熱融着の方法は特に限定されないが、プロセス性の点から加熱ロールによる熱融着が好ましい。先述のとおりポリフェニレンサルファイドは一定厚み以上のフィルムを得難い。本発明の複合フィルム程度の厚みを共押出法により得ようとした場合、製膜時のキャスト工程での冷却が不十分なうちに、ポリ(パラ)フェニレンサルファイドは結晶化し、二軸方向へ延伸しようとすると膜が破れてしまう。また一方、延伸が不足すると十分な配向を得られず、破断伸度が低いものとなってしまうのである。このため、本発明は複数の二軸配向フィルム(フィルムAとフィルムB)を接合した複合フィルムとしているのである。
本発明の複合フィルムの破断伸度は、60%以上であることがモーター加工性を得るために必要である。好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。破断伸度が60%未満の場合、モーターの加工工程で複合フィルムが割れる場合がある。また、破断伸度については、特に上限を設けないが、破断伸度を高くするためには後述する製膜時のフィルム長手方向および/または幅方向の延伸倍率を下げることになるため、フィルムAとフィルムBの平面性が悪化し、あるいは、界面接着性が低下する場合がある。このため本発明の複合フィルムの破断伸度は、通常200%以下程度とすることが実用的である。なお、複合フィルムの破断伸度はフィルム長手方向および幅方向の両方向において60%以上であることが良好なモーター加工性を得るためではいっそう好ましい。
本発明の複合フィルムは、前記層Aと層Bの間の接着強度が、70g/15mmであることがモーターの加工工程で複合フィルムが割れないために必要であり、好ましくは100g/15mm以上、さらに好ましくは150g/15mm以上である。接着強度が70g/15mm未満の場合、界面剥離により複合フィルムの破断伸度が低下し、モーターの加工工程で複合フィルムが割れる場合がある。接着強度の上限は特には限定されないが、後述する平面性との関連で一般的には400g/15mm程度である。接着強度を上記範囲とするためには、層Aと層Bの界面接着性を向上することが必要である。界面接着性を向上するためには、熱融着温度を上げることが好ましいが、複合フィルムの平面性が悪化し、モーターに機械で複合フィルムを挿入する際の負荷が増大して挿入性が悪化した結果、複合フィルムに余計な力がかかって座屈が発生し、モーター加工性が低下する場合がある。ここでいう接着強度とは、幅15mmのサンプルの層Aと層Bとの界面をカッターなどで部分的に剥離して掴み代を作製し、この掴み代を引張試験機のチャックで掴み、速度200mm/分で剥離対象の層Aと層Bとがなす角度が180°になるように引っ張って剥離させた際の強度を測定したものである。
複合フィルムの破断伸度を上記範囲とする方法としては、フィルムAとフィルムBを後述する製膜延伸条件、および熱処理条件で製膜し、後述する熱融着条件で融着し、複合フィルムを得ることが挙げられる。
本発明の複合フィルムの表面凹みは、1個/100cm以下であることが必要であり、好ましくは実質的に表面凹みがないことである。表面凹みが1個/100cmを越えると複合フィルムの外観を損なうことになり、また、電気絶縁性が悪化する場合がある。ここでいう表面凹みとは、蛍光灯直下で複合フィルムの表面に肉眼で確認できる凹みのうち、ZYGO社製表面構造解析装置(NewView100)を用いて、走査型白色干渉法にて凹みの長径と深さを測定し、長径が100μm以上、深さが0.5μm以上の凹みをいう。
前述した複合フィルムの厚みと表面凹みを該範囲にすることで複合フィルムの部分放電開始電圧を800V以上とすることができ、モーター絶縁用フィルムとして好ましく用いることができる。部分放電開始電圧は、より好ましくは1000V以上、更に好ましくは1300V以上である。
表面凹みを1個/100cm以下とする方法としては、後述する層Aと層Bを熱融着した後の冷却速度を好ましい範囲とすることが挙げられる。係る方法を採れば、表面凹みと平面性の両立が可能となり好ましい。
本発明の複合フィルムの用途は、特に限定されないが、電気絶縁材料、回路基板材料および工程・離型材料などの各種工業材料用などに用いることができ、前述したように、特にハイブリッドカー、電気自動車などに使用される駆動用モーターやカーエアコンコンプレッサーモーターの電気絶縁材に好適に用いられる。
次に、本発明の複合フィルムを製造する方法について、以下に具体例を挙げて詳細を説明する。
ポリパラフェニレンサルファイド樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンを、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称することがある)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230〜280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃の温度で10〜60分間攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃の温度で数回洗浄、乾燥してPPS粒状ポリマーを得る。得られた粒状ポリマーを、酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃の温度のイオン交換水で数回洗浄し、副生塩、重合助剤および未反応モノマ等を分離する。上記に得られたポリマーに必要に応じて、無機または有機の添加剤等を本発明の目的に支障を与えない程度添加し、PPS樹脂を得る。
共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法としては、上記ポリパラフェニレンサルファイド樹脂の製造方法において、p-ジクロロベンゼンに代えてm−ジクロロベンゼンなどのフェニレンサルファイド単位を与えるモノマーを配合し、同様の重合反応を実施する方法がある。フェニレンサルファイド単位以外の単位を導入する場合も同様である。
次いで、得られた樹脂を押出機、好ましくは1段以上のベント孔を有する押出機に供給し、290〜360℃の温度で溶融混練して適当な口金から押し出し、ガット状に溶融成形して、長さ2〜10mm程度にカットし、ペレット状としてもよい。得られた樹脂は、真空下の加熱式ドライヤーで、温度100〜180℃、時間1〜5時間程度の条件で乾燥される。
用いる樹脂に、必要に応じて、他の樹脂や無機または有機フィラー、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、相溶化剤などの添加剤を添加する場合、前記方法で得られた樹脂と共にヘンシェルミキサー等で混合し、前記と同様に押し出し成形または溶融成形し、樹脂組成物として使用することができる。
後述する製膜工程においては、樹脂ペレットを複数種用いることは差し支えない。例えば、粒子が添加されたペレットと無添加のペレットを併用するような態様である。
次に、本発明の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A)を有する二軸配向フィルム(フィルムA)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A’)を有し、その反対の最外層に層Aを構成するポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリアリーレンサルファイドで構成された層(層B)を有する二軸配向フィルム(フィルムB)の製造方法を説明する。
フィルムAは最外層が実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層であれば単層構成でも複層構成でも構わない。フィルムAを得る方法としては、上記のPPS樹脂あるいは樹脂組成物を溶融押出装置に供給し、融点以上に加熱する。加熱により溶融された樹脂組成物は、スリット状の口金出口から押し出される。かかる溶融体を冷却ドラム上でガラス転移点以下に冷却し、未延伸フィルムを得る。溶融押出装置は周知の装置が適用可能であるが、一軸または二軸の押出機が簡便であり好ましく用いられる。
フィルムBは、複合フィルムを得るのに必要な熱融着回数を減らすために、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A’)を有し、その反対の最外層に、接合されるフィルムの実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A)を構成するポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低い共重合ポリアリーレンサルファイドで構成された層(層B)を有する。係るフィルムBを得る方法としては、層Aを構成する樹脂と層Bを構成する樹脂を最外層となるように溶融工程で積層して吐出、冷却する共押出法が好ましく用いられる。それぞれの樹脂は別々の溶融押出装置に供給されて個々の樹脂あるいは樹脂組成物の融点以上に加熱され、加熱により溶融された各樹脂組成物を、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置において溶融状態で二層または三層以上に積層する。積層された樹脂流はスリット状の口金出口から押し出され、得られた溶融複合体を冷却ドラム上で前記層Bを構成する樹脂あるいは樹脂組成物のガラス転移点以下に冷却し、層A’と層Bが最外層に配置された未延伸フィルムを得る。
次に、上記のようにして得られたそれぞれの未延伸フィルムを二軸延伸して二軸配向フィルムを得る。フィルムA及びフィルムBを二軸に配向させることができる未延伸フィルムの延伸方法としては、ロール群とテンターとを用いて長手方向および幅方向の延伸を順次行う逐次二軸延伸法、長手方向および幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸法などが挙げられ、その中でも逐次二軸延伸法が好ましい。
逐次二軸延伸法を用いる場合、長手方向には90〜120℃で3.0〜4.0倍の範囲で延伸することが好ましい。本発明の場合、より好ましい延伸倍率は、3.0〜3.7であり、さらに好ましくは、3.0〜3.5倍である。本発明において、延伸倍率が3.0倍未満の場合、十分なフィルム平面性を有した二軸配向フィルムを得られない場合があり、延伸倍率が4.0倍を超えると本発明の破断伸度、層Aと層Bの接着強度を得られない場合がある。幅方向には、90〜120℃で2.8〜3.5倍に延伸することが好ましい。より好ましくは、2.8〜3.3倍であり、さらに好ましくは、2.8〜3.0倍である。本発明において、延伸倍率が2.8倍未満の場合、十分なフィルム平面性を有した二軸配向フィルムを得られない場合があり、延伸倍率が3.5倍を超えると本発明の破断伸度を得られない場合があるからである。
横延伸後、二軸配向フィルムはさらに熱処理を施すことができる。熱処理を施すことで結晶構造が固定され、モーター絶縁用フィルムとして好ましい強度、耐熱性を得ることができ、また、熱収縮率を低減することで、後述する熱融着工程での幅縮みを抑制する事ができる。熱処理は一段熱処理もしくは二段熱処理が好ましく用いられ、より好ましくは二段熱処理が用いられる。一段熱処理の場合、熱処理温度は240〜280℃であることが好ましく、より好ましくは260〜280℃以下であり、処理時間は1〜60秒が好ましく、より好ましくは5〜30秒である。二段熱処理の場合、一段目の熱処理温度は160〜220℃であることが好ましく、より好ましくは180〜220℃以下であり、処理時間は1〜30秒が好ましく、より好ましくは1〜15秒である。二段目の熱処理温度は240〜280℃であることが好ましく、より好ましくは260〜280℃以下であり、処理時間は1〜30秒が好ましく、より好ましくは1〜15秒である。さらに、熱処理後に長手方向および/または幅方向に各々1〜20%、より好ましくは3〜15%、さらに好ましくは3〜10%の範囲で弛緩処理を施すことができる。こうすることで、層Bの配向緩和が促進でき層Aと層Bの接着強度を向上させることができるため好ましい。
ついで、フィルムAの層AとフィルムBの層B間で接合する。接合する方法としては熱融着法が簡便である。熱融着の方法としては、例えば、加熱ロールと圧着ロールを用いて熱融着(熱圧着)する方法が好ましい。加熱ロールの表面温度は、層Aを構成する樹脂の融点(Tma)と層Bを構成する樹脂の融点(Tmb)に対して、(Tmb−10)℃以上(Tma−20)℃以下であることが好ましく、より好ましくは(Tmb−5)℃以上(Tma−20)℃以下である。加熱ロールの温度が(Tmb−10)℃未満の場合、熱融着に十分な熱量が得られず、界面接着性が低下する場合がある。また、(Tma−20)℃を超える場合は、層Aを構成する樹脂が加熱ロール表面に融着し、表面凹みが発生する場合がある。加熱ロールの表面温度は非接触式温度計あるいは接触式温度計で測定することができる。
また、圧着ロールは、ゴム材質であることが複合フィルムの表面性向上の観点から好ましく、フッ素ゴム、シリコンゴムなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、圧着ロールの表面温度は、好ましくは180℃〜240℃であり、より好ましくは、190℃〜240℃であり、さらに好ましくは、200℃〜240℃である。
圧着時の圧力は、好ましくは線圧が50〜400N/cm、より好ましくは130〜400N/cmであり、さらに好ましくは、180〜400N/cmであることが十分な層Aと層B間の接着強度を得るために好ましい。
上記層Aと層Bを熱融着する際に、あらかじめフィルムAとフィルムBを予熱した後に熱融着することが好ましい。フィルムAとフィルムBを予熱する方法としては、加熱ロールもしくは圧着ロールの外周に抱き角50〜180°、好ましくは60〜180°、さらに好ましくは90〜180°で沿わせた後に圧着し、熱融着することが十分な層Aと層B間の接着強度を得るために好ましい態様である。
圧着後の熱融着体は、圧着ロールにより加熱ロールに圧着された点から90°以上270°以下の角度で加熱ロールの外周に沿わせながら熱融着させることが好ましい。より好ましくは120°以上240°以下、更に好ましくは150°以上210°以下の角度である。圧着された点から複合フィルムを加熱ロールの外周に沿わせる角度が90°未満の場合は、加熱ロールへの抱き角が不足するため、巻き出し側と巻き取り側の張力バランスが不安定になり、圧着点において加熱ロールと加熱ロールに接する二軸配向PPSフィルムの間に空気を噛み込み、複合フィルム表面に表面凹みが発生する場合がある。圧着された点から複合フィルムを加熱ロールの外周に沿わせる角度が270°を越える場合は、巻き出し側と巻き取り側のフィルムが空間的に干渉しやすく、巻きだし後すぐに搬送ロールにて方向を変える必要があり、その際にシワを生じたり平面性が悪化するため好ましくない。
熱融着速度は、0.1〜10m/分、好ましくは0.5〜5m/分、より好ましくは1〜7m/分、さらに好ましくは2〜5m/分であることが、本発明の界面接着性および生産性の観点から好ましい。
熱融着した後の複合フィルムは、直ちに冷却し、1本以上の搬送ロールを経由して巻き取ることが、複合フィルムの平面性と界面接着性の維持の点から好ましい態様である。
複合フィルムを冷却する方法としては、加熱ロールから最初の搬送ロールの間において、ロール冷却やエアー冷却などを用いて冷却する方法があるが、本発明では、エアー冷却を用いて気体雰囲気中で冷却する方法が好ましい態様である。ロール冷却を用いる場合、複合フィルムと冷却ロールの間に空気が噛み込み、複合フィルムの表面に表面凹みが発生する場合がある。また、加熱ロールから最初の搬送ロールの間における複合フィルムの温度は、本発明に用いる実質的なポリパラフェニレンサルファイドのガラス転移温度以下に冷却することが好ましい。複合フィルムの温度が本発明に用いる実質的なポリパラフェニレンサルファイドのガラス転移温度のガラス転移温度より高い場合、複合フィルムと最初の搬送ロールの間の空気により、複合フィルムの表面に表面凹みができる。
また、加熱ロールから最初の搬送ロールの間の冷却速度は15℃/s以上30℃/s以下の範囲とする。好ましくは20℃/s以上25℃/s以下である。冷却速度が15℃/s未満の場合、複合フィルムの熱結晶化が進行し、複合フィルムの界面接着性、破断伸度が低下する場合がある。また、冷却速度が30℃/sを超えると、急激な冷却により複合フィルムに長手方向のシワが発生するため複合フィルムの平面性が悪化し、モーター加工性が悪化する。
本発明で用いられる層Aおよび層Bの接合表面において、より強固な界面接着性を付与するために、コロナ放電処理やプラズマ処理を施すことも本発明の好ましい態様に含まれる。コロナ放電処理時の雰囲気ガスとしては、空気(EC処理)、酸素(OE処理)、窒素(NE処理)、炭酸ガス(CE処理)等から選ばれる少なくとも1種のガスが挙げられる。これらのうち、本発明においては経済性の観点からEC処理で表面処理することがより好ましい。
[物性・特性の測定方法]
(1)融点
示差走査熱量計として、ティーエーインスツルメント社製DSC(Q−100)を用いて、試料10mgをアルミニウム製受皿上で室温から昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点とした。また、複合フィルムを層を分離せずに融点測定した場合については、観察される2つの吸熱ピークのうち、温度が高い方の吸熱ピークを層Aの融点(Tma)、温度が低い方の吸熱ピークの層Bの融点(Tmb)とした。
(2)破断伸度
JIS−C−2151に規定された次の方法に従って、インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック社製AMF/RTA-1210)を用いて、幅10mm、長さ250mmのサンプルフィルムをチャック間長さ100mmとなるようにセットし、23℃の温度で、65%RHの雰囲気条件下で引張速度200mm/分で引張試験を行う。
破断伸度は、フィルム長手方向、幅方向の両方をn=5で測定し平均したものを用いる。
(3)接着強度
インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック社製AMF/RTA-1210)を用いて、幅15mmのサンプルの層Aと層Bとの界面をカッターなどで部分的に剥離して掴み代を作製し、この掴み代を引張試験機のチャックで掴み、速度200mm/分で前記層Aと層Bとがなす角度が180°になるように引っ張って剥離させた際の強度を測定した。
接着強度は複合フィルム中の層Aと層Bとが接合された各界面について、それぞれn=3で測定し平均したものを用いる。
なお、接着強度を測定する際に、接合された界面が剥離する前に層Aもしくは層Bが破断することがあった。この場合、接着強度はフィルムの破断強力以上であるので、接着強度は合格であるとした。
(4)表面凹み
10cm四方のサンプルを照度500lxの蛍光灯の直下2mの位置で、サンプル表面と地面とのなす角度が30°になるようにサンプルを配置する。配置したサンプルを30cmの距離から目視し、凹みが確認できる部分をマーキングする。マーキングした部分を、ZYGO社製表面構造解析装置(NewView100)を用いて、走査型白色干渉法にて凹みの長径と深さを測定し、長径が100μm以上、深さが0.5μm以上の大きさの凹みの数をカウントする。
(5)部分放電電圧
部分放電試験機(菊水電子製KPD2050)を用いて、35℃の温度で、24%RHの雰囲気条件下で周波数50Hz、電圧2.0kVの交流電圧を印加し、開始電圧電荷しきい値を10pCとして測定した。
(6)モーター加工性
モータースロット加工機(小田原エンジニアリング社製)を用い、試料を幅24mm、長さ39mmのスロットに加工速度2ヶ/秒で加工し、目視でフィルム割れもしくはデラミネーションの発生したものを不良品とし、不良品発生率を次の基準で評価した。なお、加工個数は各試料100個ずつとする。
○:不良率が5%以下
△:不良率が6%を超え20%以下
×:不良率が20%を超える。
(7)耐熱性
エスペック製熱風ギアオーブン(GPHH−200)を用いて、幅10mm、長さ250mmのサンプルフィルムについて、260度の雰囲気下で1時間処理し、処理後のサンプルフィルムの破断伸度を(1)に記載の方法で測定する。処理後の破断伸度を処理前の破断伸度で割った数値を破断伸度保持率としたときに、破断伸度保持率を次の基準で評価した。
○:破断伸度保持率が80%以上
△:破断伸度保持率が50%以上80%未満
×:破断伸度保持率が50%未満
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本実施例に限定されるものではない。
(1)ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造
オートクレーブに100モル部の硫化ナトリウム9水塩、45モル部の酢酸ナトリウムおよび259モル部のN−メチル−2−ピロリドンを仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマとして101モル部のp−ジクロロベンゼン、副成分として0.2モル部の1,2,4−トリクロロベンゼンを52モル部のNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により5回洗浄した後、減圧下120℃の温度にて乾燥して、融点が280℃、ガラス転移温度が91℃の樹脂を得た。次いで、該樹脂に平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粉末0.7重量%を添加し均一に分散配合して、320℃の温度にて30mmφ2軸押出機によりガット状に押出し、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1を得た。
(2)共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造
〔共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1〕
主成分モノマとして91モル部のp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして10モル部のm−ジクロロベンゼン、および0.2モル部の1,2,4−トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て上記(1)のポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を製造した。なお、樹脂組成物の融点は250℃、ガラス転移温度が86℃であった。
〔共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物2〕
主成分モノマとして95モル部のp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして6モル部のm−ジクロロベンゼン、および0.2部モルの1,2,4−トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て上記(1)のポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物2を製造した。なお、樹脂組成物の融点は260℃、ガラス転移温度が88℃であった。
〔共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物3〕
主成分モノマとして87モル部のp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして15モル部のm−ジクロロベンゼン、および0.2モル部の1,2,4−トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て上記(1)のポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物3を製造した。なお、樹脂組成物の融点は225℃、ガラス転移温度が85℃であった。
〔共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物4〕
主成分モノマとして85モル部のp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして17モル部のm−ジクロロベンゼン、および0.2モル部の1,2,4−トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て上記(1)のポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物4を製造した。なお、樹脂組成物の融点は220℃、ガラス転移温度が84℃であった。
〔共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物5〕
主成分モノマとして97モル部のp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして4モル部のm−ジクロロベンゼン、および0.2モル部の1,2,4−トリクロロベンゼンを用いたこと以外は全て上記(1)のポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の製造と同様に実施して、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物5を製造した。なお、樹脂組成物の融点は265℃、ガラス転移温度が89℃であった。
(3)二軸配向フィルムの製造
〔二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1〕
前記(1)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1を、回転式真空乾燥機を用いて3mmHgの減圧下にて180℃の温度で4時間乾燥させた。乾燥した樹脂組成物を単軸押出機に供給し、310℃で溶融させた。溶融させた樹脂組成物を平均目開き14μmのステンレス繊維焼結フィルターにて濾過した後、940mm幅でリップ間隙3mmのTダイ型口金から吐出させ、シート状に押し出した。次いで、このシートを静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、厚み約1250μmの未延伸フィルムを作製した。
逐次二軸延伸を用い、得られた未延伸フィルムを表面温度97℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる25℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.7倍に延伸した。このようにして得られた一軸延伸フィルムを、テンターを用いて長手方向と直交方向に100℃の温度で3.4倍に延伸し、続いて200℃の温度で10秒間、さらに265℃の温度で10秒間熱処理した後に、フィルム長手方向と直角方向に260℃の温度で10秒間に5.0%の制限収縮処理を行い、さらに115℃の温度で9秒間に1.5%の制限収縮処理を行った後に室温まで冷却して厚みが100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの融点は285℃、ガラス転移温度は91℃、破断伸度は105%であった。
〔二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム2〕
長手方向の延伸倍率を4.3倍にした以外は二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの融点は285℃、ガラス転移温度は93℃、破断伸度は70%であった。
〔二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム3〕
長手方向の延伸倍率を4.1倍にした以外は二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの融点は285℃、ガラス転移温度は92℃、破断伸度は90%であった。
〔二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム4〕
厚みを75μmにした以外は二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの融点は285℃、ガラス転移温度は91℃、破断伸度は102%であった。
〔二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム5〕
厚みを115μmにした以外は二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルム5を得た。得られたフィルムの融点は285℃、ガラス転移温度は91℃、破断伸度は105%であった。
(4)二軸配向積層フィルムの製造
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を、回転式真空乾燥機を用いてそれぞれ3mmHgの減圧下にて180℃の温度で4時間乾燥させた。乾燥したポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1を単軸押出機に供給し、310℃で溶融させた。また、乾燥した共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を別のベント式二軸混練押出機に供給し、280℃で溶融させた。溶融させた2つの樹脂組成物をそれぞれ平均目開き8μmのステンレス繊維焼結フィルターにて濾過した後、矩形複合部を備えた二層合流ブロックにて複合し、940mm幅でリップ間隙3mmのTダイ型口金から、吐出量の比がポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1=85:15になるように吐出させ、シート状に押し出した。次いで、このシートを静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、厚み約1250μmの未延伸二層積層フィルムを作製した。
逐次二軸延伸を用い、得られた未延伸フィルムを表面温度92℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる25℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.7倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交方向に100℃の温度で3.4倍に延伸し、続いて200℃の温度で10秒間、さらに250℃の温度で10秒間熱処理した後に、フィルム長手方向と直角方向に245℃の温度で10秒間に4.5%の制限収縮処理を行い、115℃の温度で9秒間中間冷却したのち室温まで冷却してポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みが85μm、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みが15μm、合計厚みが100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの破断伸度は100%、各層における、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は255℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム2〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物2を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの破断伸度は100%、各層における、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物2の融点は265℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム3〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の吐出量の比をポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1=91:9とした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルムフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みは91μm、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みは9μm、合計厚みは100μm、破断伸度は100%、各層における、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は255℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム4〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の吐出量の比をポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1=60:40とした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムのポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みは60μm、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みは40μm、合計厚みは100μm、破断伸度は100%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は255℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム5〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の吐出量の比をポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1=45:55とした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルム5を得た。得られたフィルムのポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みは45μm、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みは55μm、合計厚みは100μm、破断伸度は100%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は255℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム6〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物3を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの破断伸度は100%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物3の融点は230℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム7〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物4を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの破断伸度は100%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物4の融点は225℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム8〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の吐出量の比をポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1=80:20とし、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みを60μm、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みを15μm、合計厚みを75μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルム8を得た。得られたフィルムの破断伸度は100%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は255℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム9〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の吐出量の比をポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1=87:13とし、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みを100μm、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1による層の厚みを15μm、合計厚みを115μmとした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にして二フィルムを得た。得られたフィルムの破断伸度は100%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は255℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム10〕
前記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物5を用いた以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの破断伸度は100%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物5の融点は270℃であった。
〔二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム11〕
長手方向の延伸倍率を4.1倍にした以外は二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの破断伸度は85%、各層において、ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は285℃、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1の融点は255℃であった。
(実施例1)
上記(3)および(4)の製膜方法で得られた二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1および二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1を、共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1が接合面側にくるようにして熱融着した。熱融着速度は2.5m/分の条件で行った。加熱ロールとして表面温度が250℃の温度になるように加熱したハードクロムロールを用い、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1が直接加熱ロールに接触するように配置し、圧着点までの抱き角が90度になるように加熱ロールの外周に沿わせて予熱する。また、圧着ロールとして表面温度が200℃の温度になるように加熱したフッ素ゴムロールを用い、二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1を圧着点までの抱き角が180度になるように圧着ロールの外周に沿わせて予熱した。上記の方法で予熱した二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1を加熱ロールと圧着ロールの間で230N/cmの圧力で圧着した。圧着した複合フィルムは圧着点からの角度が180度になるように加熱ロールの外周に沿わせて熱融着した後に、複合フィルムを加熱ロールから引き離す。直後に加熱ロールと最初の搬送ロールの間で複合フィルムに速度5m/秒で25℃の冷却エアーを吹き付け、23℃/秒の速度で冷却し、複合フィルムの温度を60℃まで冷却した。その後、搬送ロールを経由して巻き取り、複合フィルムを得た。
(実施例2)
上記(3)および(4)の製膜方法で得られた二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1および二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1を、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1/二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1/二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルムで重ね合わせ、但し共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1が接合面側にくるようにして熱融着した。熱融着速度は2.5m/分の条件で行った。加熱ロールとして表面温度が250℃の温度になるように加熱したハードクロムロールを用い、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1を直接加熱ロールに接触するように配置し、圧着点までの抱き角が90度になるように加熱ロールの外周に沿わせて予熱する。また、圧着ロールとして表面温度が200℃の温度になるように加熱したフッ素ゴムロールを用い、もう1つの二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1を直接圧着ロールに接触するように配置し、圧着点までの抱き角が180度になるように圧着ロールの外周に沿わせて予熱した。上記の方法で予熱した加熱ロール側の二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1と圧着ロール側の二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1の間に二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1を配置し、加熱ロールと圧着ロールの間で230N/cmの圧力で圧着した。圧着した複合フィルムは圧着点からの角度が180度になるように加熱ロールの外周に沿わせて熱融着した後に、複合フィルムを加熱ロールから引き離す。直後に加熱ロールと最初の搬送ロールの間で複合フィルムに速度5m/秒で25℃の冷却エアーを吹き付け、23℃/秒の速度で、複合フィルムの温度を80℃まで冷却した。その後、搬送ロールを経由して巻き取り、複合フィルムを得た。
(実施例3)
圧着点から複合フィルムを加熱ロールの外周に沿わせる角度を90°とした以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例4)
圧着点から複合フィルムを加熱ロールの外周に沿わせる角度を270°とした以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例5)
冷却速度を15℃/秒とした以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例6)
冷却速度を30℃/秒にする以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例7)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム2を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例8)
二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム2を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例9)
二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム3を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例10)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム3を用い、加熱ロールの表面温度を260℃とした以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例11)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム4を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例12)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム5を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例13)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム6を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例14)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム7を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例15)
二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム4を、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム8を用いた以外は実施例1と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例16)
二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム5を、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム9を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(実施例17)
加熱ロールから引き離した直後の複合フィルムを加熱ロールと最初の搬送ロールの間で85℃まで冷却した以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例1)
加熱ロールの表面温度を270℃とした以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例2)
加熱ロールの表面温度を240℃とした以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例3)
圧着点から複合フィルムを加熱ロールの外周に沿わせる角度を85°にする以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例4)
圧着点から複合フィルムを加熱ロールの外周に沿わせる角度を275°にする以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例5)
冷却速度を35℃/秒にする以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例6)
冷却速度を10℃/秒にする以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例7)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム10を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例8)
二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向ポリパラフェニレンサルファイドフィルム2を、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム11を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例9)
二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム1に代えて、二軸配向積層ポリフェニレンサルファイドフィルム3を用いた以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例10)
加熱ロールから引き離した直後の複合フィルムを加熱ロールと最初の搬送ロールの間で100℃まで冷却した以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例11)
加熱ロールから引き離した直後の複合フィルムを加熱ロールと最初の搬送ロールの間で表面温度が25℃の冷却ロールに沿わせて冷却した以外は実施例2と同様にして複合フィルムを得た。
(比較例12)
上記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を、回転式真空乾燥機を用いてそれぞれ3mmHgの減圧下にて180℃の温度で4時間乾燥させた。乾燥したポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1を単軸押出機に供給し、310℃で溶融させた。また、乾燥した共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を別のベント式二軸混練押出機に供給し、280℃で溶融させた。溶融させた2つの樹脂組成物をそれぞれ平均目開き8μmのステンレス繊維焼結フィルターにて高精度濾過した後、矩形複合部を備えた三層合流ブロックにて複合し、940mm幅でリップ間隙3mmのTダイ型口金から、吐出量の比がポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1:ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1=44:12:44になるように吐出させ、シート状に押し出した。次いで、このシートを静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、厚み約1570μmの未延伸三層積層フィルムを作製した。逐次二軸延伸を用い、得られた未延伸フィルムを表面温度97℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる25℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.7倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交方向に100℃の温度で3.4倍に延伸したが、膜が破れ、複合フィルムを得ることができなかった。
(比較例13)
上記(1)および(2)で得られたポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1および共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を、回転式真空乾燥機を用いてそれぞれ3mmHgの減圧下にて180℃の温度で4時間乾燥させた。乾燥したポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1を単軸押出機に供給し、310℃で溶融させた。また、乾燥した共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1を別のベント式二軸混練押出機に供給し、280℃で溶融させた。溶融させた2つの樹脂組成物をそれぞれ平均目開き8μmのステンレス繊維焼結フィルターにて高精度濾過した後、矩形複合部を備えた三層合流ブロックにて複合し、940mm幅でリップ間隙3mmのTダイ型口金から、吐出量の比がポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1:共重合ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物1:ポリパラフェニレンサルファイド樹脂組成物1=43:14:43になるように吐出させ、シート状に押し出した。次いで、このシートを静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し、厚み約1450μmの未延伸三層積層フィルムを作製した。逐次二軸延伸を用い、得られた未延伸フィルムを表面温度97℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる25℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.7倍延伸した。このようにして得られた一軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交方向に100℃の温度で3.4倍に延伸し、続いて200℃の温度で10秒間、さらに265℃の温度で10秒間熱処理した後に、フィルム長手方向と直角方向に260℃の温度で10秒間に5.0%の制限収縮処理を行い、さらに115℃の温度で9秒間に1.5%の制限収縮処理を行った後に室温まで冷却して、層Aの厚みが各50μm、層Bの厚みが15μm、合計厚みが115μmの複合フィルムを得た。
Figure 2013006377
本発明に係るフィルムは、モーター絶縁用のフィルムとして好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層Aと称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムAとも称する)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層A’とも称する)を有しその反対の最外層に層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリフェニレンサルファイドで構成された層(便宜的に層Bとも称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムBとも称する)とがフィルムAの層AとフィルムBの層B間で接着剤を用いずに接合された構成を含む、厚みが120μm以上500μm以下、破断伸度が60%以上の複合フィルムであって、前記層Aと層B間の接着強度が70g/15mm以上であり、かつ、該複合フィルムの表面において長径100μm以上、深さが0.5μm以上の表面凹みが1個/100cm以下であることを特徴とする複合フィルム。
  2. 前記層Bの厚みが10μm以上30μm以下であり、前記層Bを構成する共重合ポリフェニレンサルファイドの融点が230〜265℃であることを特徴とする請求項1に記載の複合フィルム。
  3. 最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層Aと称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムAとも称する)と、一方の最外層に実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(便宜的に層A’とも称する)を有し、その反対の最外層に層Aを構成する実質的なポリパラフェニレンサルファイドよりも融点が20℃以上低いポリフェニレンサルファイドで構成された層(便宜的に層Bとも称する)を有する二軸配向フィルム(便宜的にフィルムBとも称する)のフィルムAの層AとフィルムBの層Bとを加熱圧着する熱融着工程と、熱融着後のフィルムを冷却する工程と、冷却されたフィルムを少なくとも1本以上の搬送ロールを経由して巻き取る工程とを有し、かつ前記熱融着工程と冷却工程が下記(1)〜(2)を満たすことを特徴とする複合フィルムの製造方法。
    (1)熱融着工程の前記層Aと層Bを加熱圧着せしめる加熱ロールと圧着ロールにおいて、加熱ロールの表面温度が、(Tmb−10)(℃)以上(Tma−20)(℃)以下であり、かつ、圧着された点から90°以上270°以下の角度の範囲で加熱ロールの外周に沿わせて後に該熱融着体を該加熱ロールから剥離すること。ここで、
    Tma:層Aを構成する樹脂の融点(℃)
    Tmb:層Bを構成する樹脂の融点(℃)
    (2)熱融着後のフィルムを冷却する工程において、加熱ロールから最初の搬送ロール間、熱融着された複合フィルムを気体雰囲気中で15℃/s以上30℃/s以下の速度で実質的にポリパラフェニレンサルファイドからなる層(層A)のガラス転移温度以下にまで冷却すること。
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