JP2011140151A - 積層体 - Google Patents

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與倉  三好
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KAWAMURA IND
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Abstract

【課題】長期耐熱性、耐加水分解性に優れ、同時に電気絶縁性、加工特性を満たす信頼性の高い電気絶縁材料を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも片面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シートが接着剤を用いることなく接合された積層体において、ポリフェニレンスルフィドフィルムの厚みをaμm、繊維シートの厚みをbμmとしたときの該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25以上、5.00以下であって、該積層体の長手方向の破断伸度と幅方向の破断伸度の少なくとも一方向の破断伸度が65%以上である積層体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維シート−ポリフェニレンスルフィドフィルム積層体に関し、例えば変圧器やモータ、発電機等に用いられる電気絶縁材料として優れた長期耐熱性、耐加水分解性、電気絶縁性、加工特性を持つ繊維シート−ポリフェニレンスルフィドフィルム積層体に関する。
近年、環境意識の高まりに伴い、HV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)などの“エコカー”と呼ばれる次世代自動車の開発が急速に進展しつつある。それら“エコカー”で使用されるモータは、これまで以上に耐熱性や高温での耐加水分解性が要求されている。モータの電気絶縁材料としては、芳香族ポリアミド紙が良く知られているが、最近では、芳香族ポリアミド紙とポリエステル系フィルムとを接着剤を用いることなく熱接合させた積層体(特許文献1)や、芳香族ポリアミド紙と非加水分解性樹脂フィルムとを接着剤を用いることなく熱接合させた積層体(特許文献2)などが開発されている。
特開2008−7875号公報 特開2009−138312号公報
しかしながら、上記のような電気絶縁材料には以下のような問題点があり、改善が急務となっている。
(1)芳香族ポリアミド紙(デュポン社の商品名「ノーメックス」(登録商標))は、通常の紙のように内部に多くの空隙を有するために厚みあたりの絶縁破壊電圧(絶縁破壊強度)が低いことや、コシが弱いために挿入加工性が悪いという問題がある。
(2)芳香族ポリアミド紙とポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルムとを接着剤を用いることなく熱接合させた積層体は、ポリエステル系フィルムを用いることにより、上記(1)で問題となっている絶縁破壊強度の向上、コシの弱さの改善を図ることができる。しかし、ポリエステル系フィルムの耐熱性や高温での耐加水分解性が劣ることにより、高温多湿の厳しい環境下での電気絶縁材料としての使用には適さない。
(3)芳香族ポリアミド紙とポリフェニレンスルフィド等の非加水分解性樹脂フィルムとを接着剤を用いることなく熱接合させた積層体は、ポリフェニレンスルフィドフィルムを用いることにより、上記(2)で問題となっている耐熱性や高温での耐加水分解性を向上させることができる。しかし、この積層体は電気絶縁材料としての折り曲げ加工による耐久性が悪いこと、加熱処理後の密着性が低下することによりモータ組み立て後の電気絶縁性が悪化するという問題点を有している。
そこで、本発明の課題は、上記の問題点に鑑み、長期耐熱性、耐加水分解性に優れ、同時に電気絶縁性、加工特性を満たす信頼性の高い電気絶縁材料を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る積層体は、ポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも片面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シートが接着剤を用いることなく接合された積層体において、ポリフェニレンスルフィドフィルムの厚みをaμm、繊維シートの厚みをbμmとしたときの該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25以上、5.00以下であって、該積層体の長手方向の破断伸度と幅方向の破断伸度の少なくとも一方向の破断伸度が65%以上であることを特徴とするものからなる。
この積層体においては、上記積層体の長手方向の破断伸度と幅方向の破断伸度の平均値が60%以上であることが好ましい。
また、積層体の長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率の平均値が0.0%以上、1.5%以下であることが好ましい。
本発明に係る積層体は、とくに折り曲げ加工特性に優れるため、電気絶縁材料としての耐久性を備え、モータ組み立て後の電気絶縁性を改善することができる。
以下に、本発明について、実施の形態とともに、詳細に説明する。
本発明において、ポリフェニレンスルフィドとは、繰り返し単位80モル%以上(好ましくは90モル%以上)が次の化学式化1で示される構成単位からなる重合体をいう。
Figure 2011140151
上記化1で示される成分が80モル%未満ではポリマーの結晶性、軟化点が低くなり、得られるフィルムの耐熱性、寸法安定性および機械的特性などを損なう。繰り返し単位の20モル%未満(好ましくは10モル%未満)であれば、共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。該重合体の共重合の仕方はランダム、ブロックを問わない。
本発明においてポリフェニレンスルフィド樹脂組成物とは、上記ポリフェニレンスルフィド(好ましくはポリ−p−フェニレンスルフィド)を90重量%以上含む樹脂組成物をいう。樹脂組成物中の残りの10重量%未満は、ポリフェニレンスルフィド以外のポリマーおよび/または充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤等の添加物であってもかまわない。また、本発明におけるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の溶融粘度は温度300℃、せん断速度200sec-1のもとで100〜50000ポイズ、さらには500〜12000ポイズの範囲内にあることが製膜性の面で好ましい。
本発明に用いるポリフェニレンスルフィドフィルムとは、電気絶縁用途として用いられる積層体として十分な加工性、電気絶縁性を得るために、無延伸フィルムや一軸配向フィルムではなく、上記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形した二軸配向フィルムであることが好ましい。該フィルムの厚さは9〜500μm、さらには12〜450μmの範囲が本発明の目的を効果的に達成する点で好ましい。層構成としては、単層であっても複数の層からなる積層構成をとっていてもよく、複数の場合には、共押出しによる積層やラミネートなどによる数層熱融着積層とすることもでき本発明の目的を阻害しない範囲であれば差し支えない。
また、ポリフェニレンスルフィドフィルムの長手方向の破断伸度は80〜130%、好ましくは90〜120%であり、幅方向の破断伸度は90〜150%、好ましくは100〜140%である。長手方向の破断伸度が80%未満、もしくは幅方向の破断伸度が90%未満であると、本発明の積層体としたときの電気絶縁材料としての折り曲げ加工による耐久性が悪化し、長手方向の破断伸度が130%より大きい場合、もしくは幅方向の破断伸度が150%より大きい場合にはポリフェニレンスルフィドフィルムの平面性が悪いために本発明の積層体に加工することができなくなる傾向がある。
ポリフェニレンスルフィドフィルムを240℃の条件下で30分間、加熱した際の長手方向の熱収縮率は2.0〜6.0%であり、好ましくは2.0〜4.0%、さらに、幅方向の熱収縮率は−1.0〜2.5%であり、好ましくは−1.0〜2.0%である。ポリフェニレンスルフィドフィルムの長手方向の熱収縮率が2.0%未満、もしくは、幅方向の熱収縮率が−1.0%未満ではフィルムの平面性が悪いために本発明の積層体に加工することができず、長手方向の熱収縮率が6.0%より大きい場合、もしくは、幅方向の熱収縮率が2.5%より大きい場合は積層体が電気絶縁材料として高温で使用された後、積層体の密着性が低下する傾向がある。
次に、本発明の積層体を形成する繊維シートは、融点を有しない芳香族重合体からなることが必要である。ここで融点を有しない芳香族重合体とは、該重合体を構成する主成分の分解点がその理論上融点より低いということを意味する。代表例としては、例えば次のものが挙げられる。
(1)芳香族ポリアミド
芳香族カルボン酸と芳香族ジアミンとの縮合によって得られる重合体。例えば、イソフタル酸クロライドとメタフェニレンジアミンを極性溶媒中で縮合して得られるポリメタフェニレンイソフタルアミド。
(2)芳香族アミドカルボン酸を縮合して得られる重合体。
(3)さらに下記のものが挙げられる。
(a)上記(1)と(2)の共重合体、(b)芳香族ポリアミドイミド、(c)芳香族ポリイミド、(d)芳香族ポリエステルイミド、(e)芳香族ポリアミドイミダゾール。 中でも(1)の芳香族ポリアミドが本発明の積層体を形成するポリフェニレンスルフィドシートと繊維シートとの層間密着性、機械特性、加工性および電気絶縁性の面で特に好ましい。
本発明における繊維シートは、上記重合体の繊維の集合体によって構成された薄葉体であって、通常、紙、不織布、布、フェルトなどと呼ばれるものの総称の形態に形成されるものである。繊維シートの厚さは30〜200μm、さらには40〜100μmの範囲が本発明の積層体の加工性、機械特性、電気絶縁性の面で好ましい。
本発明の積層体は、ポリフェニレンスルフィドフィルムと繊維シートとが接着剤を介することなく積層されることが必要である。接着剤とは基本的に本発明に用いるポリフェニレンスルフィドフィルムと繊維シートをこれら以外の物質で構成され接着を目的に設けられるものをいう。すなわち本発明の積層体は、基本的にポリフェニレンスルフィドフィルムと繊維シート以外の構成物は存在しないということになる。
本発明の積層体を構成するポリフェニレンスルフィドフィルムの厚みをaμm、繊維シートの厚みをbμmとしたときの該積層体の構成厚さ比率(a/b)は0.25以上5.00以下の範囲であり、より好ましくは0.30以上4.50以下である。この構成厚さ比率が0.25未満では、積層体としてコシがなく電気絶縁材料を組み込む際に座屈欠点が発生し、構成厚さ比率が5.00を超えると積層体の長期耐熱性が低下する。
本発明の積層体は、ポリフェニレンスルフィドフィルム(A層)と繊維シート(B層)とがA層/B層、A層/B層/A層、B層/A層/B層となる積層構成を基本構成とするが、A層とA層またはB層とB層を数層積層してもよく(例えば、B層/A層/A層/B層またはA層/B層/B層/A層)、A層とB層が交互にまたはランダムに数層積層されていてもよい。また、本発明の積層体の厚さについては、50〜700μm、さらには80〜500μmの範囲が、積層体の加工性、絶縁材の加工性やモータへの挿入性等の面で好ましい。
本発明の積層体の表面には、別のフィルムや繊維シート、樹脂、金属等を積層することもできる。
本発明の積層体は、該積層体の長手方向の破断伸度と幅方向の破断伸度の少なくとも一方向の破断伸度が65%以上であることが必要である。積層体の破断伸度が65%以上であることで、折り曲げ加工時の耐久性保持を維持することができる。積層体の破断伸度は高ければ高いほど、折り曲げ加工特性に適するため、破断伸度はより好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは100%以上、最も好ましくは120%以上である。
また、本発明の積層体では、該積層体の長手方向の破断伸度と幅方向の破断伸度の平均値が60%以上であることが好ましい。こうすることで、本発明の積層体の折り曲げ加工による耐久性保持がバランスの取れたものとなり、加工特性に適しているからである。より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは100%以上、最も好ましくは120%以上である。
本発明の積層体においては、積層体の長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率の平均値が0.0%以上、1.5%以下であることが好ましい。より好ましくは0.0%以上、1.0%以下である。0.0%未満では積層体の平面性が悪化し、1.5%を超えると積層体が電気絶縁材料として高温で使用された後、積層体の密着性が低下するためである。
次に、本発明の積層体の好ましい製造方法の例について説明する。ただし、本発明の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
まず、ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造方法について述べる。ポリフェニレンスルフィドの重合方法としては、硫化アルカリとp−ジハロベンゼンを極性溶媒中で高温に反応させる方法を用いる。特に、硫化ナトリウムとジクロロベンゼン(好ましくはp−ジクロロベンゼン)をN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系極性溶媒中で反応させるのが好ましい。この場合、重合度を調節するために、苛性アルカリ、カルボン酸アルカリ金属塩等のいわゆる重合助剤を添加して230〜280℃で反応させるのが最も好ましい。重合系内の圧力および重合時間は、使用する助剤の種類や量をおよび所望する重合度などによって適宜決定される。重合を終わったポリマーを例えばN−メチルピロリドンのようなポリフェニレンスルフィドと親和性のある溶媒で高温洗浄した後に水洗、乾燥することでポリフェニレンスルフィド粉末が得られる。上記で得られたポリフェニレンスルフィド粉末に必要に応じて、無機または有機の添加剤等を本発明の目的に支障を与えない程度添加し、ポリフェニレンスルフィド組成物を得る。
次に、上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィド組成物を用いて二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを製造する。まず、ポリフェニレンスルフィド組成物を押出機に供給して溶融し、口金から吐出する。吐出されたポリフェニレンスルフィド組成物を公知の密着手段である静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法などで、ドラムなどの表面温度が樹脂組成物のガラス転移点以下のキャスティングドラム上で密着冷却固化させ、無配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
次いで、この無配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを長手方向並びに幅方向に延伸する。本発明における破断強度、熱収縮率を達成するために、長手方向、幅方向の延伸、熱処理条件が非常に重要であり、最適な延伸、熱処理条件においてのみ本発明の効果を達成できる。本発明者らは、長手方向の延伸条件は90〜120℃で3.0〜4.0倍、好ましくは3.2〜3.7倍が良いことを見出した。長手方向の延伸倍率が3.0倍未満の場合、十分な平面性を有したフィルムが得られず、積層体に加工することができない。また、4.0倍を超えると本発明における破断伸度が得られない。続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き幅方向に延伸する。幅方向の延伸条件は90〜120℃で3.0〜3.8倍、好ましくは3.2〜3.6倍が良いことを見出した。幅方向の延伸倍率が3.0倍未満の場合、十分な平面性を有したフィルムが得られず、積層体に加工することができない。また、3.8倍を超えるとフィルム破断が発生し、安定的にフィルムを得ることができない。
こうして得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの結晶化を完了させて平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて熱処理を行う。熱処理条件は、例えばテンター内で180〜220℃、好ましくは190〜210℃の範囲で1〜60秒間定長処理(一段目)した後、250〜270℃、好ましくは260〜270℃の範囲で1〜60秒間定長または制限収縮させて処理(二段目)する。一段目の熱処理条件が180℃未満の場合、本発明に用いるポリフェニンレンスルフィドフィルムの熱収縮率が得られず、220℃を超えると十分な平面性を有したフィルムが得られず、積層体に加工することができない。また、二段目の熱処理条件が250℃未満の場合、本発明に用いるポリフェニンレンスルフィドフィルムの熱収縮率が得られず、270℃を超えるとフィルム破断が発生し、安定的にフィルムを得ることができない。
次に、繊維シートの製造方法について述べる。まず、前述の芳香族系重合体を乾式紡糸法、または湿式紡糸法等の方法で紡糸し、必要に応じて延伸、熱処理を施して該重合体の繊維を得る。こうして得られた繊維から繊維シートを得る方法には、乾式法や湿式法を用いることができる。乾式法としては、通常のけん織機械による方法、ニードルパンチ法、スパーンボンド法、長繊維を開繊する方法、短繊維を接着剤で繊維シートにする方法等がある。湿式法では、通常の妙紙機等を用いて水中に分散させた繊維、フィブリッドを熱又は接着剤を用いて接合することによって繊維シートにする。また、目的によっては該繊維シートをカレンダー処理して空隙率を変更する場合がある。繊維シートとして最も好ましい芳香族ポリアミド系紙は、メタフェニレンジアミンイソフタル酸クロライドを極性溶媒中で重合して得られるポリメタフェニレンイソフタルアミドを乾式紡糸法により短繊維化し、湿式妙造してペーパー状とする。
次に、上記で得られたポリフェニレンスルフィドフィルムと繊維シートの積層体を製造する方法について述べる。本発明の積層体は上記ポリフェニレンスルフィドフィルムと繊維シートが接着剤層(ポリフェニレンスルフィドフィルム、繊維シート以外の接着を目的とした組成物)を介することなく積層したものである。
本発明の積層体を熱融着積層するには、ポリフェニレンスルフィドフィルムおよび繊維シートの融着接合面に予め易接着化を目的とする方面処理を施すことが好ましい。好適な表面処理としては、コロナ放電処理(各種ガス雰囲気中のコロナ放電処理も含む)、常圧または低圧、高温、低温各種条件を組み合わせたプラズマ処理、化学薬品や紫外線、電子線等による酸化処理等が挙げられるが、ポリフェニレンスルフィドフィルムの結晶化度や配向度の変化を押さえるためには比較的低温で熱融着加工できる各種ガス下での低温プラズマ処理が特に好ましい。ここで低温プラズマ処理とは、熱融着したいポリフェニレンスルフィドフィルムや繊維シートの表面を、電極間に直流または交流の高電圧を印加することによって開始維持する放電にさらすことによってなされる処理で、該処理時の圧力は特に限定されることなく処理装置、放電形式なども適宜選定すればよい。処理雰囲気はアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、酸素(O2)、空気、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)などが一般的に用いられるが、水蒸気含有雰囲気下が処理効率よく特に好ましい。また水蒸気は、Ar、He、N2、O2、空気、CO2などの他のガスで希釈してもよい。処理圧力は特に限定されないが、0.1〜1330Paの圧力範囲で持続放電するグロー放電処理、いわゆる低温プラズマ処理が処理効率の点で好ましい。さらに好ましくは、1〜266Paの範囲である。
この時、ポリフェニレンスルフィドフィルムの熱融着面における酸素原子(O)と炭素原子(C)との組成比(O/C)が2.5〜20%の範囲で、理論値よりも大きくなっていることにより良好な熱融着性を得ることができる。ここで組成比とは、ポリフェニレンスルフィドフィルムの表面をXPS(X線電子光分光法)で測定した炭素原子数(C)と酸素原子数(O)との比(O/C)をいう。また理論値とは、ポリフェニレンスルフィドフィルムを構成する樹脂組成における組成比で、例えばポリエチレンテレフタレートを二軸に配向させたフィルムの場合は(C1048)nであるから、組成比の理論値は、4/10=0.4000となる。また、ポリエチレンナフタレートを二軸に配向させたフィルムの場合は0.2857となる。ポリフェニレンスルフィドのように酸素原子数(O)を含まないものは0となる。通常は、この種の二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの表面には炭化水素系のものが極微量付着しているため、実測値は理論値より小さくなる。ここで、上記の理論値を100にしたときの(酸素原子数(O)/炭素原子数(C))が2.5〜20%の範囲で、理論値より大きい、言い換えれば理論値の102.5〜120%の範囲にあれば、良好な熱融着性を得ることができる。
また、繊維シートの好適な例であるポリメタフェニレンイソフタルアミド紙の場合は、炭素原子数(C)/酸素原子数(O)/窒素原子数(N)=14/2/2であり、炭素原子数(C)と、酸素原子数(O)との組成比X(O/C)の理論値は、炭素原子数(C)を基準にすると、2/14=0.1430である。通常は、表面に炭化水素系のものが微量付着しているため実測値は理論値よりも小さくなる。上記組成比X(酸素原子数(O)/炭素原子数(C))が、理論値の110%以上、250%以下の範囲、つまり20〜150%の範囲で理論値よりも大きい値であれば、良好な熱融着性を得ることができる。より好ましくは、150%以上、230%以下の範囲である。組成比Xが、理論値の110%未満であれば、良好な熱融着性が得られない。また、理論値の250%を越えた場合でも、熱融着性が得られない。
次いで本発明に用いるポリフェニレンスルフィドフィルムと繊維シートを熱融着(熱圧着)によって積層する。上記で得た低温プラズマ処理したポリフェニレンスルフィドフィルムと繊維シートのプラズマ処理面を重ね合わせ加熱ロールプレス法、熱板プレス、加熱真空プレス等の周知の方法で熱融着することができる。熱融着の条件は、温度100〜250℃(より好ましくは100〜230℃)の範囲がポリフェニレンスルフィドフィルムの相対結晶化度や配向度の変化を小さくできるため好ましい。また、プレス圧力は特に限定されないが、ロールプレス方式であれば100〜1500kg/cm好ましい。また、プレス時間は積層厚さや積層方法によって異なるが、熱融着時の温度で1秒〜10時間の範囲が一般的である。また、上記積層は、上記の種々方法を組み合わせて行ってもよい。また、熱融着後の取り出しは、少なくともポリフェニレンスルフィドフィルムのガラス転移点以下の温度まで冷却してから行う方が積層体の変形を抑えることができるため好ましい。ポリフェニレンスルフィドフィルムおよび繊維シートを2層以上積層(同一の素材同士を2層以上積層する場合も、異種素材を交互に又はランダムに積層する場合も)する場合は、上記同様の方法で同時又は別々に積層工程を分けて積層することができる。
[物性の測定方法]
1.破断伸度
JIS−C2151に規定された方法に従って、テンシロン引張試験機を用いて、幅10mmのサンプル片をチャック間長さ100mmとなるようセットし、引張速度200mm/minで引張試験を行う。この条件で5回測定し、その平均値を求めた。
2.熱収縮率
JIS−C2151に規定された方法に従って、幅10mm、長さ100mmのサンプル片を240℃の温度に設定した熱風オーブン中に入れて30分間の加熱処理を行い、そのサンプル片の寸法変化から熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=(X0−X)/X0×100
0:加熱処理前のサンプル片の寸法(mm)
X:加熱処理後のサンプル片の寸法(mm)
3.厚み構成
ミクロトームで切り出した積層体の断面を光学顕微鏡(10〜100倍)で観察、写真撮影し、その断面写真の寸法を実測した。ポリフェニレンスルフィドフィルム層の厚みをaμm、繊維シート層の厚みをbμmとして、a/bを積層体の厚み比率とした。
4.折り曲げ加工耐久性
スコット耐摩耗試験機を用いて、幅10mm、長さ200mmのサンプル片を荷重4.5kg、チャック間距離30mm、ストローク距離50mm、速度120回/分で測定を行い、積層体が破断するまでの回数を求めた。
(判定基準)
○:破断するまでの回数;50回以上
△:破断するまでの回数;30回以上、50回未満
×:破断するまでの回数;30回未満
5.長期耐熱性(強度保持率)
幅10mm、長さ250mmのサンプル片を210℃の温度に設定した熱風オーブン中に入れて1000時間の加熱処理を行い、加熱処理前後での破断強度を測定し、下記の式から強度保持率を算出した。その結果について下記の判定基準で判定を行った。破断強度は、JIS−C2151に規定された方法に従って、テンシロン引張試験機を用いて、幅10mmのサンプル片をチャック間長さ100mmとなるようセットし、引張速度200mm/minで引張試験を行う。この条件で5回測定し、その平均値を求めた。
強度保持率(%)=(Y0−Y)/Y0×100
0:加熱処理前の破断強度(MPa)
Y:加熱処理後の破断強度(MPa)
(判定基準)
○:強度保持率;50%以上
△:強度保持率;40%以上、50%未満
×:強度保持率;40%未満
6.絶縁材挿入加工性
SUSでコの字型(一辺が4mm)の間隙が調整できるスリット台(スリットの深さは50mmとした)を作製して、積層体の厚みの1.2倍の幅に装置のスリット幅をスケール付きのルーペと隙間ゲージを用いて調整し、コの字型に折り曲げ成型した積層体を約20mm挿入したときの状態で下記の通り判定した。
(判定基準)
○:挿入性は全く問題なく、比較的容易に挿入できる。
△:挿入はできるが、挿入時に少し引っ掛かる、または腰が弱くて少し座屈する。
×:挿入時に積層体が引っ掛かる、または腰が弱くて座屈しやすく、挿入が困難な状態。
7.加熱処理後の密着性
幅15mm、長さ250mmのサンプル片を240℃の温度に設定した熱風オーブン中に入れて1時間の加熱処理を行った後、常温まで冷却し、加熱処理前後での積層体の密着力を測定し、下記の式から密着力保持率を算出した。その結果について下記の判定基準で判定を行った。密着力は、テンシロン引張試験機を用いて、サンプル片を剥離速度50mm/minで90°剥離させる。この条件で5回測定し、その平均値を求めた。
密着力保持率(%)=(Z0−Z)/Z0×100
0:加熱処理前の密着力(N/15mm)
Z:加熱処理後の密着力(N/15mm)
(判定基準)
○:密着力保持率;70%以上
△:密着力保持率;50%以上、70%未満
×:密着力保持率;50%未満
以下に、本発明をより理解しやすくするために実施例、比較例を示す。
(実施例1)
(1)ポリフェニレンスルフィドの作製
50Lオートクレーブ(SUS316製)に水硫化ナトリウム(NaSH)56.25モル、水酸化ナトリウム54.8モル、酢酸ナトリウム16モル、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)170モルを仕込む。次に、窒素ガス気流下に攪拌しながら内温を220℃まで昇温させ脱水を行った。脱水終了後、系を170℃まで冷却した後、55モルのp−ジクロロベンゼン(p−DCB)と0.055モルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)を2.5LのNMPとともに添加し、窒素気流下に系を2.0kg/cm2まで加圧封入した。235℃にて1時間、さらに270℃にて2〜5時間攪拌下にて加熱後、系を室温まで冷却、得られたポリマーのスラリーを水200モル中に投入し、70℃で30分間攪拌後、ポリマーを分離する。このポリマーをさらに約70℃のイオン交換水(ポリマー重量の9倍)で攪拌しながら5回洗浄後、約70℃の酢酸リチウムの5重量%水溶液にて窒素気流下にて約1時間攪拌した。さらに、約70℃のイオン交換水で3回洗浄後、分離し、120℃、0.8〜1.0torrの雰囲気下で20時間乾燥することによって白色のポリフェニレンスルフィド粉末が得られた。
次に、このポリフェニレンスルフィド粉末を市販の窒素ガス雰囲気下20〜90℃のNMP(ポリフェニレンスルフィドポリマー重量の3倍量)にて5分間〜1時間の攪拌処理を1〜5回行った。このポリフェニレンスルフィド粉末をさらに約70℃のイオン交換水で4回洗浄した後分離し、上記のようにして乾燥することによって白色のポリフェニレンスルフィド粉末を得た。このようにして得られたポリフェニレンスルフィド粉末に平均粒径1μmの炭酸カルシウム粒子を0.2重量%添加してヘンシェルミキサでブレンドし、30mm径の二軸押出機に投入して320℃の温度で溶融混練させ、ガット状のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得た。さらに該組成物を約3mm長に裁断してペレット化した。
(2)ポリフェニレンスルフィドフィルムの作製
上記のペレットを180℃、0.5kPaの減圧下で10時間乾燥した後、押出機に供給し溶融温度330℃で押出し、口金から吐出させた。吐出したポリマーを表面温度25℃に冷却したドラム上に、静電印加させながら冷却・固化し、厚み約1200μmの無配向フィルムを得た。得られた無配向フィルムを表面温度100℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、フィルムの長手方向に3.5倍に延伸した。次いで、テンターで100℃の熱風が循環する室内でフィルムの長手方向と直行方向に3.5倍延伸した。引き続いて200℃の熱風が循環する室内で10秒間定長熱処理(一段目)し、その後260℃の熱風が循環する室内で10秒間定長熱処理(二段目)した後にフィルムの長手方向と直行方向に7%制限収縮(リラックス)処理をして厚さ100μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。
この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの長手方向の破断伸度は100%、幅方向の破断伸度は115%、240℃×30分の長手方向の熱収縮率は5.0%、幅方向の熱収縮率は1.0%であった。この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムをPPSフィルム−1とする。
(3)繊維シートの準備
芳香族ポリアミド繊維シートの代表例として、デュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ410の50μm厚みのものを準備した。この繊維シートを繊維シート−1とする。
(4)積層体の作製
上記(2)で得られたPPSフィルム−1の両面に低温プラズマ処理を以下の方法、条件で実施した。内部電極方式の低温プラズマ処理装置で、処理ガスにArを用い、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度(印加電圧/(処理速度×電極幅)で計算した値)は500W・min/m2とした。該低温プラズマ処理表面の(O/C)は、理論値比110%であった。
次に、上記(3)の繊維シート−1の片面に低温プラズマ処理を以下の方法、条件で実施した。内部電極方式の低温プラズマ処理装置で、処理ガスにN2を用い、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度は650W・min/m2とした。該低温プラズマ処理表面の(O/C)は0.31、理論値比206%であった。
上記プラズマ処理を施したPPSフィルム−1と繊維シート−1を、繊維シート−1/PPSフィルム−1/繊維シート−1の順にプラズマ処理面同士を重ね合わせて、180℃に設定された熱板プレス機にて圧力40kg/cm2、時間10分の条件で熱融着積層し、常温まで自然冷却することにより、積層体を得た。
この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:70%、幅方向の破断伸度:80%、破断伸度の平均値:75%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.8%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性ともに良好な結果となった。
(実施例2)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を3.2倍、横延伸倍率を3.2倍に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:90%、幅方向の破断伸度:115%、破断伸度の平均値:103%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.6%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性ともに良好な結果となった。
(実施例3)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を3.0倍、横延伸倍率を3.0倍に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:115%、幅方向の破断伸度:120%、破断伸度の平均値:118%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.3%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性ともに良好な結果となった。
(実施例4)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を3.5倍、横延伸倍率を3.8倍に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:71%、幅方向の破断伸度:59%、破断伸度の平均値:65%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.2%であり、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性は良好であり、折り曲げ加工耐久性も問題ない結果となった。
(実施例5)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を3.8倍、横延伸倍率を3.8倍に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:65%、幅方向の破断伸度:55%、破断伸度の平均値:60%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.2%であり、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性は良好であり、折り曲げ加工耐久性も問題ない結果となった。
(実施例6)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を4.0倍、横延伸倍率を3.8倍に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:50%、幅方向の破断伸度:67%、破断伸度の平均値:59%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.5%であり、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、は良好であり、折り曲げ加工耐久性、加熱処理後の密着性も問題ない結果となった。
(実施例7)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において一段目の熱処理温度を180℃に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:67%、幅方向の破断伸度:72%、破断伸度の平均値:70%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.5%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性は良好であり、加熱処理後の密着性も問題ない結果となった。
(実施例8)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において二段目の熱処理温度を250℃に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:65%、幅方向の破断伸度:70%、破断伸度の平均値:68%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.4%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性は良好であり、加熱処理後の密着性も問題ない結果となった。
(実施例9)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において一段目の熱処理温度を220℃に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:73%、幅方向の破断伸度:82%、破断伸度の平均値:78%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.6%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性ともに良好な結果となった。
(実施例10)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において二段目の熱処理温度を270℃に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:74%、幅方向の破断伸度:77%、破断伸度の平均値:76%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.3%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性ともに良好な結果となった。
(実施例11)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造においてフィルム厚みを70μmと変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):0.27、長手方向の破断伸度:72%、幅方向の破断伸度:75%、破断伸度の平均値:74%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.7%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、加熱処理後の密着性は良好であり、絶縁材挿入加工性も問題ない結果となった。
(実施例12)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造においてフィルム厚みを150μmと変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):4.50、長手方向の破断伸度:88%、幅方向の破断伸度:110%、破断伸度の平均値:99%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.6%であり、折り曲げ加工耐久性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性は良好であり、長期耐熱性も問題ない結果となった。
(比較例1)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を2.8倍、横延伸倍率を3.5倍に変更した以外は実施例1と同様にしたが、得られたフィルムの平面性が悪く、積層体に加工することができなかった。
(比較例2)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を3.5倍、横延伸倍率を2.8倍に変更した以外は実施例1と同様にしたが、得られたフィルムの平面性が悪く、積層体に加工することができなかった。
(比較例3)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を4.2倍、横延伸倍率を3.5倍に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:50%、幅方向の破断伸度:60%、破断伸度の平均値:55%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.9%であり、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、は良好であったが、折り曲げ加工耐久性、加熱処理後の密着性が悪化する結果となった。
(比較例4)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において縦延伸倍率を3.5倍、横延伸倍率を4.0倍に変更した以外は実施例1と同様にしたが、製造時の破断により二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得ることができなかった。
(比較例5)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において一段目の熱処理温度を170℃に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:60%、幅方向の破断伸度:63%、破断伸度の平均値:62%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.7%であり、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、は良好であったが、折り曲げ加工耐久性、加熱処理後の密着性が悪化する結果となった。
(比較例6)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において二段目の熱処理温度を240℃に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:60%、幅方向の破断伸度:60%、破断伸度の平均値:60%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:1.6%であり、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、は良好であったが、折り曲げ加工耐久性、加熱処理後の密着性が悪化する結果となった。
(比較例7)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において一段目の熱処理温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):1.00、長手方向の破断伸度:62%、幅方向の破断伸度:55%、破断伸度の平均値:59%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.5%であり、長期耐熱性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性は良好であったが、折り曲げ加工耐久性が悪化する結果となった。
(比較例8)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造において二段目の熱処理温度を280℃に変更した以外は実施例1と同様にしたが、製造時の破断により二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得ることができなかった。
(比較例9)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造においてフィルム厚みを70μmと変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):0.23、長手方向の破断伸度:70%、幅方向の破断伸度:80%、破断伸度の平均値:75%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.8%であり、折り曲げ加工耐久性、長期耐熱性、加熱処理後の密着性は良好であったが、絶縁材挿入加工性が悪化する結果となった。
(比較例10)
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造においてフィルム厚みを170μmと変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体の製造条件、評価結果を表1、2に示す。構成厚さ比率(a/b):5.10、長手方向の破断伸度:85%、幅方向の破断伸度:104%、破断伸度の平均値:95%、240℃×30分の熱収縮率の平均値:0.8%であり、折り曲げ加工耐久性、絶縁材挿入加工性、加熱処理後の密着性は良好であったが、長期耐熱性が悪化する結果となった。
Figure 2011140151
Figure 2011140151
本発明の積層体は、優れた長期耐熱性、耐加水分解性、電気絶縁性、加工特性を兼ね備えており、とくに変圧器、モータ、発電機等に用いられる電気絶縁材料として好適であり、産業上有用である。

Claims (3)

  1. ポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも片面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シートが接着剤を用いることなく接合された積層体において、ポリフェニレンスルフィドフィルムの厚みをaμm、繊維シートの厚みをbμmとしたときの該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25以上、5.00以下であって、該積層体の長手方向の破断伸度と幅方向の破断伸度の少なくとも一方向の破断伸度が65%以上であることを特徴とする積層体。
  2. 前記積層体の長手方向の破断伸度と幅方向の破断伸度の平均値が60%以上である、請求項1に記載の積層体。
  3. 積層体の長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率の平均値が0.0%以上、1.5%以下である、請求項1または2に記載の積層体。
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