JP2011140150A - 積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の少なくとも片方の面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)が接着剤層を介することなく積層された積層体であって、A層の厚さをaμm、B層の厚さをbμmとした時の該積層の構成厚さ比率(a/b)が0.25〜5.00であり、かつA層の広角X線回折法によって測定した相対結晶化指数5〜30、EdgeおよびEndの2方向から各々測定した配向度が何れも0.15〜0.60である積層体。
【選択図】なし
Description
(1)芳香族ポリアミド紙単体を電気絶縁材として用いられてきたことは良く知られている(例えば非特許文献1参照)。
(2)上記の芳香族ポリアミド紙と耐熱フィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリイミドフィルム等)とを接着剤を介して積層した積層体も知られている(例えば特許文献1参照)。ポリイミドフィルム等の耐熱フィルムを絶縁材として用いることもこの分野では公知である。
(3)高耐熱絶縁材である芳香族ポリアミド紙と未延伸ポリフェニレンスルフィドシート(以下、未延伸PPSシートと略称する場合がある。)が接着剤を介することなく熱融着によって積層する積層体も提案されている(例えば特許文献2参照)。
(4)更に、上記芳香族ポリアミド紙と二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムがプラズマ処理によって熱融着積層したものを耐熱絶縁材料に用いることも提案されている(例えば特許文献3参照)。
また、上記融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)は、例えば芳香族ポリアミド系繊維シートからなる。
本発明に係る積層体は、全フェニレンスルフィド単位の80モル%以上がパラフェニレンスルフィド単位であるポリフェニレンスルフィド樹脂を含む樹脂組成物からなる二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の少なくとも片方の面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)が接着剤層を介することなく積層された積層体であって、A層の厚さをaμm、B層の厚さをbμmとした時の該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25〜5.00であり、かつ該二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の広角X線回折法によって測定した相対結晶化指数が5〜30、EdgeおよびEndの2方向から各々測定した配向度が何れも0.15〜0.60であることを特徴とした積層体である。
芳香族カルボン酸と芳香族ジアミンとの縮合によって得られる重合体。例えば、イソフタル酸クロライドとメタフェニレンジアミンを極性溶媒中で縮合して得られるポリメタフェニレンイソフタルアミド。
(2)芳香族アミドカルボン酸を縮合して得られる重合体。
(3)更に下記のものが挙げられる。
(a)上記(1)と(2)の共重合体、(b)芳香族ポリアミドイミド、(c)芳香族ポリイミド、(d)芳香族ポリエステルイミド、(e)芳香族ポリアミドイミダゾールが挙げられ、中でも、(1)の芳香族ポリアミドが、本発明の積層体を形成する二軸配向PPS層(A層)と繊維シート層(B層)の層間の密着性、機械特性(腰の強さ)、絶縁システムへの挿入加工性および電気絶縁性とワニスやオイルとの含浸性の面で特に好ましい。
まず、本発明において用いられるPPSは、硫化アルカリとp−ジクロルベンゼンを極性溶媒中で高温高圧下に反応させる方法を用いる。特に、硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンをN−メチル−ピロリドン等のアミド系高沸点極性溶媒中で反応させるのが好ましい。この場合、重合度を調整するために苛性アルカリ、カルボン酸アルカリ金属塩などのいわゆる重合助剤を添加して、230〜280℃で反応させるのが特に好ましい。重合系内の圧力及び重合時間は使用する助剤の種類や量及び所望する重合度などによって適宜決定される。さらに得られたポリマーを重合中の副生塩、重合助剤の除去を目的に金属イオンを含まない水や有機溶媒で洗浄しておくことが好ましい。次に上記で得られたPPS樹脂に無機粒子等を混合し樹脂組成物を得る。
(1)広角X線回折法
(a)配向度OF
積層体から表層の繊維シートを研磨もしくは剥がして二軸配向PPSフィルムのみを取り出す。該試料の配向方向をそろえて厚さ1mm、幅1mm、長さ10mmの短冊状に切り出しおよび/または成型(成型時の各層の固定はコロジオンの5%酢酸アミン溶液を用いた)し、二軸配向樹脂層の膜面に沿ってX線を入射(EdgeおよびEnd方向)してX線発生装置は理学電機製、4086A2型装置を用い、40KV−20mAでNiフィルターを通したCu−Kα線をX線源とし、スリット系はDivergence slit 1°、R-ecieuing slit 2mm、scattering Slit 1°を採用した。
試料の配向効果を消去するために試料を面内で回転する方法を採用し、反射法で回折パターンを測定した。X線発生装置は理化学電機製40862A型装置を用い、35kV−15mAでフィルターを通したCu−KαをX線源とした。ゴニオメーターは理化学電機製2155D型を用い、スリット系はDivergence slit 1°、R-ecieuing slit 0.15mm、scattering Slit 1°を採用した。(200)回折ピークの半価幅よりSchellerの式を用いて見かけの結晶サイズ(ACS)を算出した。
ACS(Å)=Kλ/β COSθ・β=[B2−(B′)2]1/2
ここで K : Scheller常数(K=1)
λ : X線波長(λ−1.5418Å)
2θ: Bragg angle (°)
β : 補正後の半価幅 (radian)
B : 実測半価幅
B′: 補正用標準試料(Si単結晶)の半価幅
また相対結晶化指数は各試料の回折プロフィルより(200)ピークの最大強度(I200)と2θ=25°での強度(I25)を内部標準値として測定し両者の比を相対結晶化指数(I200/I25)と定義した。
ミクロトームで切り出した積層体の断面を光学顕微鏡(10〜100倍)で観察、写真撮影しその断面写真の寸法を実測し、二軸配向PPSフィルムの層の総厚みをaμmとし、繊維シートの層の総厚みをbμmとして、a/bを積層体の厚さ比率とした。
JIS C2111に準じた下記の方法で測定した。
(a)サンプルを20cm×20cmにカットした。
(b)カットしたサンプルの重量を直示天秤にて測定した。
(c)カットしたサンプルについてランダムに5点選び、厚みを測定し、5点の平均値を厚みとした(押さえ圧3.5Nのシックネスゲージを使用)。
(d)嵩密度(g/cm3)=重量(g)/面積(400cm2)×厚み(cm) を計算した。
H種耐熱性を想定して、210℃のオーブンに1000時間エージング後の引張試験で破断強度(x MPa)を測定し、予め測定したエージング前の破断強度(x0 MPa)から下記の式より強度保持率を求め下記の規準で判定した。引張特性の試験方法は、JIS C2151に準じた。測定は各5個行い、その平均値を下記の式に当てはめて保持率を求めた。
強度保持率(%)=(x−x0)/x0×100
(判定規準)
○:強度保持率50%以上
△:強度保持率40%以上50%未満
×:強度保持率40%未満
121℃×100%RHのオートクレーブに500時間エージング後の破断強度(y MPa)を測定し、予め測定した該エージング前の破断強度(y0 MPa)を用いて、上記(4)項長期耐熱性と同様の方法で強度保持率を測定し、下記の規準で判定した。
○:強度保持率60%以上
△:強度保持率50%以上60%未満
×:強度保持率50%未満
下記の方法で絶縁破壊電圧をN=5個測定し、その電圧を厚さで割った数値:絶縁破壊強度(kV/ mm)を求め市場で要求される実用レベルから下記の規準で判定した。
(i)評価方法
測定機器:6点式AC50kV耐圧試験器(春日電機製)
周波数:60Hz
昇圧速度:1KV/秒
上部電極:φ25mm,R=3mm,500g±50g
下部電極:5cm×5cm
(ii)判定基準
○:40mkV/mmを超える
△:36〜40kV/mm
×:36kV/mm未満
長さ250mm、幅20mm、厚さ5mmの平角銅線を準備する。試料を長さ100mm、幅60mmに切り出し、平角銅線の形状に折り曲げ加工して平角銅線表面に数層重ね合わせられるように調整した。該サンプルの端部を厚さ50μmのポリイミド粘着テープで平角銅線中央部に固定して重ね合わせて上記のポリイミド粘着テープで重ね合わせたサンプルの表層を固定した(絶縁試料1)。次に絶縁試料1を下記のワニスで含浸して絶縁した(絶縁試料2)。
(a)使用した樹脂
エポキシ樹脂:“jER”(登録商標)828(ジャパンエポキシレジン社製) 100部
酸無水物 :“jERキュア”(登録商標)YH306(ジャパンエポキシレジン社製)70部
3級アミン :“jERキュア”(登録商標)3010(ジャパンエポキシレジン社製)3部
上記の組成物を30℃に保温しながら1時間攪拌混合し、該混合溶液を真空に出きるガラス管(直径60mm長さ500mm)に投入した。一方、絶縁試料1を120℃で2時間熱処理した後50℃まで冷却した。この絶縁試料をエポキシワニス入りのガラス管に入れ、真空5分、放圧10分のサイクルを3回繰り返して樹脂を含浸した。このワニスに含浸した試料をガラス管から取りだし80℃で5時間、120℃で2時間、160℃で5時間硬化せしめた。
上記で得た絶縁試料2の積層体被覆部分の中央部に幅50mmのアルミ箔(厚さ18μm)を完全接触被覆し、銅線とアルミ箔間に交流電圧を印加し(昇圧速度は750V/秒)し絶縁破壊電圧(V2)を求めた。更に樹脂含浸していない絶縁試料1も同様の方法で絶縁破壊電圧(V1)を求め、絶縁破壊電圧の保持率(V2/V1×100%)から下記基準で判定した。
○:保持率120%以上
△:保持率100%以上120%未満
×:保持率100%未満
SUSでコの字型(1辺が4mm)の間隙が調整できるスリット台(スリットの深さは50mmとした)を作成して、(2)項と同様の方法で求めた積層体の総厚さの1.2倍の幅に装置のスリット幅をスケール付きのルーペと隙間ゲージを用いて調整し、コの字型に折り曲げ成型した積層体を約20mm挿入したときの状態で下記の通り判定した。
○:挿入性は全く問題なく、比較的容易に挿入できる。
△:挿入は出来るが、挿入時に少し引っかかったり、腰が弱くて少し座屈する。 ×:挿入時に積層体が引っかかったり、腰が弱くて座屈しやすく、挿入が困難な状態。
試料を同一位置で180度に5回折り曲げ、該折り曲げ部分に真鍮製25mmφの電極をおき、交流電圧を印加し(昇圧速度は750V/秒)し、上記7項ワニス含浸性の評価方法と同様に絶縁破壊電圧(V2)を求めた。また、上記折り曲げなしの試料についても同様の絶縁破壊電圧(V1)を測定し、V2/V1×100(%)の保持率を求め下記の規準で判定した。
○:保持率が100%以上
△:保持率が90〜100%
×:保持率が90%未満
上記密着力は、JIS C6481に準拠し幅10mmの試料を引っ張り試験機で引っ張り速度50mm/分の条件で測定した。密着力の判定は下記の規準で行った。なお該密着力の測定値は、N数5の平均値とした、
○:0.7N/cm以上あれば実用可能レベルと判断した。
△:0.4〜0.7N/cmの範囲は、適用できる用途もあるレベル。
×:0.4N/cm未満で、絶縁材として使用不可範囲。
○:各評価の判定が全て○である積層体
△:各評価の判定で△が3個以内の積層体
×:各評価の判定で△が4個以上あるか、1個でも×がある積層体
(1)二軸配向PPSフィルムの製造
下記の方法により二軸配向PPSフィルムを製造した。
(i)PPS樹脂組成物の製造
オートクレーブに硫化ナトリウム32.6kg(250モル、結晶水40質量%含む)、水酸化ナトリウム100g、 安息香酸ナトリウム36.1kg(250モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略称する場合がある。)79.2kgを仕込み、攪拌しながら徐々に205℃まで昇温し、水6.9kgを含む留出液7.0リットルを除去した。残留混合物に1,4−ジクロルベンゼン37.5kg(255モル)、及びNMP20.0kgを加え、265℃で4時間加熱した。反応生成物を熱湯で8回洗浄し、溶融粘度3100ポイズ、ガラス転移温度91℃、融点285℃の高重合度PPSを得た。このようして得られたPPS樹脂に1μm粒径の炭酸カルシウム粒子を0.2質量%ミキサーでブレンドし、30mm孔径の小型の2軸エクストルーダーに投入して310℃の温度で溶融混練させガット状のPPS樹脂組成物を得た。さらに、該ガットを5mm長にカットしてペレット化した。このようにして得られたPPS樹脂組成物をPPS−1とする。
上記で得られたPPS−1を180℃の温度で3時間真空乾燥(真空度:8mmHg)した後、40mm孔径のエクストルーダーのホッパーに投入する。温度310℃で溶融押出し直線上のリップを有するTダイ(幅300mm、間隙2mm)からシート状に押し出し、表面温度を30℃に保った金属ドラムにキャストして冷却固化した。得られた未延伸、無配向シートの厚さは1.9mmであった(PPS−NO−1とする)。PPS−NO−1を逐次二軸延伸法により、長手方向に延伸温度98℃で4.5倍延伸し、幅方向に延伸温度98℃で4.2倍延伸した。また熱処理は温度270℃で1分間行い、7%の制限収縮でリラックスを施した。得られた二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmであり、配向度OFはEdge方向が0.13、End方向が0.16であった。また相対結晶化指数は25、結晶サイズ(ACS)は80オングストロームであった。このフィルムをPPS−F−1とする。
芳香族ポリアミド繊維シートの代表例として、デュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ410の50μm厚さ(面積係数40g/m2)を準備した。この繊維シートを繊維シート−1とする。
(i)表面処理加工
上記(1)で得られたPPS−F−1の両面に低温プラズマ処理を以下の方法、条件で施した。内部電極方式の低温プラズマ処理装置で、処理ガスにArを用い、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度(印加電圧/(処理速度×電極幅)で計算した値)は500W・min/m2とした。該低温プラズマ処理表面の(O/C)は、理論値比110%の値であった。
内部電極方式の低温プラズマ処置装置で、処理ガスをN2とし、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度は650W・min/m2とした。該低温プラズマ処理表面の(O/C)は、0.31、理論値比206%であった。
上記のプラズマ処理を施したPPS−F−1と繊維シート−1を、繊維シート−1/PPS−F−1/繊維シート−1の順にプラズマ処理面同士を重ね合わせて、180℃に設定された熱板プレス機にて、圧力40kg/cm2、時間10分間の条件で熱融着積層し、常温まで自然冷却した。該積層体はPPS−F−1の熱融着積層温度での熱収縮率が大きくて熱変形、熱皺が少し発生した。このようにして得られた積層体を積層体−1とする。
実施例1と同様にして、PPS樹脂組成物を製造し二軸配向PPSフィルムを製造するが、押出条件や延伸条件倍率を変更した。すなわち、縦延伸は3.7倍、横延伸は3.5倍とした。熱処理条件やリラックス条件は実施例1と同様である。また二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmになるようキャストフィルムの厚さを調整した。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.30、End方向が0.34であった。また相対結晶化指数は17、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−2とする。
実施例1で用いた繊維シート−1を準備し、PPS−F−2の両面および繊維シートの片面に実施例1の条件でプラズマ処理を施し、実施例1の条件で繊維シート−1/PPS−F−2/繊維シート−1の構成の積層体を得た(積層体−2とする)。
縦延伸倍率を3.0倍、横延伸倍率を2.6倍とした。また二軸配向PPSフィルムの厚さが100μmになるようキャストフィルムの厚さで調整した他は実施例1の方法と同様にして2軸配向PPSフィルムを製造し延伸倍率を変更した。このようにして得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.43、End方向が0.47であった。また相対結晶化指数は15、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−3とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−3の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−3/繊維シート−1の積層体を得た。該積層体を積層体−3とする。
延伸倍率を、縦延伸倍率2.0倍、横延伸倍率も2.0倍とし、フィルム厚さは100μmに調整した他は実施例1の方法と同様にして二軸配向PPSフィルムを製造した。得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.53、End方向が0.55であった。また相対結晶化指数は9、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−4とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−4の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−4/繊維シート−1の積層体を得た。得られた積層体は少し熱変形した。該積層体を積層体−4とする。
実施例1と同様の方法で二軸配向PPSフィルムの製造を行った。但し、縦延伸倍率を1.8倍、横延伸倍率を2.0倍とし、横延伸後の熱処理温度を200℃まで低下させた。またフィルムの厚さは100μmになるよう調整した。得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.61、End方向が0.62であった。また相対結晶化指数は6、結晶サイズ(ACS)は70であった。このフィルムをPPS−F−5とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−5の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−5/繊維シート−1の積層体を得た。得られた積層体の熱変形は実施例4の積層体−4に比べてもかなり大きいものとなった。該積層体を積層体−5とする。
熱処理温度を278℃とし、熱処理時間を3倍の3分間とした他は実施例1の方法と同様に二軸配向PPSフィルムを製造した。このようにして得られた二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmになるよう調整され、配向度OFはEdge方向が0.17、End方向が0.18であった。また相対結晶化指数は31、結晶サイズ(ACS)は85であった。このフィルムをPPS−F−6とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−6の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−6/繊維シート−1の積層体を得た。該積層体を積層体−6とする。
縦横の延伸温度を105℃とし、二軸延伸後の熱処理温度を250℃とした他は実施例2の方法と同様に二軸配向PPSフィルムを製造した。このようにして得られた二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmに調整されたものである。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.50、End方向が0.54であった。また相対結晶化指数は4で結晶サイズ(ACS)は68であった。このフィルムをPPS−F−7とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−7の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−7/繊維シート−1の積層体を得た。得られた積層体は少し熱変形した。該積層体を積層体−7とする。
実施例2の方法と同様の方法、条件で60μm厚さのニ軸配向PPSフィルムを製造した。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.29、End方向が0.32であった。また相対結晶化指数は17、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−8とする。
また繊維シートは、デュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ410の130μm厚さ(面積係数64g/m2)を準備した。この繊維シートを繊維シート−2とする。PPS−F−8の両面および繊維シートの片面に実施例1の条件でプラズマ処理を施し、実施例1の条件で繊維シート−2/PPS−F−8/繊維シート−2の構成の積層体を得た(積層体−8とする)。
実施例2の方法と同様の方法、条件で70μm厚さの二軸配向PPSフィルムを製造した。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.30、End方向が0.32であった。また相対結晶化指数は17、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−9とする。
また、繊維シート−2を用い、PPS−F−9の両面および繊維シートの片面に実施例1の条件でプラズマ処理を施し、実施例1の条件で繊維シート−2/PPS−F−9/繊維シート−2の構成の積層体を得た(積層体−9とする)。
実施例2の方法と同様の方法、条件で、キャストフィルム厚さを変更して150μm厚さの二軸配向PPSフィルムを製造した。得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.40、End方向が0.44であった。また相対結晶化指数は19、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−10とする。
繊維シートは繊維シート−1を用い、実施例1の方法でプラズマ処理および熱融着積層を行い、繊維シート−1/PPS−F−10/PPS−F−10/PPS−F−10/繊維シート−1の構成体とし、層厚み550μmの積層体(積層体−10とする)を得た。
実施例6の方法と同様の方法、条件で170μmの二軸配向PPSフィルム(PPS−F−11とする)を得て、繊維シート−1、PPS−F−11を用いて、実施例1の方法でプラズマ処理を施して熱融着積層し繊維シート−1/PPS−F−11/PPS−F−11/PPS−F−11/繊維シート−1の5層積層体(積層体−11)を製造した。積層体の厚さは610μmであった。
繊維シートとして、カレンダー処理されていないデュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ411の130μm厚さ(面積係数:39g/m2)を準備し、200℃の温度で200kg/cmの圧力でプレスロールによるカレンダー処理を行い、厚さ97μmにした。この繊維シートに実施例1の条件でプラズマ処理を施し、該繊維シートを繊維シート−3とした。
二軸配向PPSフィルムは実施例2で用いたPPS−F−2を準備し、繊維シート−3/PPS−F−2/繊維シート−3の構成になるよう重ね合わせ、実施例1の条件で熱融着積層した。得られた積層体を積層体−12とする。
実施例7で用いた130μm厚さのデュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ411を250℃の温度、1t/cmの圧力のプレスロールでカレンダー処理を行い、40μmの繊維シートを得た(繊維シート−4)。次いで、実施例7の方法の方法と同様の方法で、繊維シート−4/PPS−F−2/繊維シート−4の構成の積層体を得た(積層体−13)
実施例2のPPS−F−2と繊維シート−1を用いて、PPS−F−2/繊維シート−1の構成(2層体)で熱融着積層した。積層の条件は実施例2の条件を適用した。得られた積層体を積層体−14とした。
各実施例および比較例の評価の結果を表1、2に比較して示す。
本発明に係る積層体は、従来技術の高耐熱性、耐環境性(幅広い環境条件の下でも本積層体の有する耐熱性を設計上見積もれる)、機械強度(加工性)、接着剤の悪影響(接着剤の耐熱性や耐加水分解性等の低下が積層体全体の耐性を低下させたり、接着剤が劣化し分解したときに発生する分解成分が積層体を構成するフィルムや繊維シートをアタックして劣化させてしまうこと)が無視できる特徴に加えて、従来の課題であった層間密着力の向上と耐熱クラスH種レベルの高い耐熱性と耐環境性を両立でき、絶縁性、加工性、ワニス含浸性を具備した高機能電気絶縁材である。特に本発明の特徴である層間密着力と耐熱性、耐加水分解性の両立は、実施例1〜4、比較例1〜3の積層体−1〜7の評価結果から、積層体として形成される積層後の二軸配向PPSフィルム層(A層)の広角X線回折法による配向度OFがEdgeおよびEndの2方向から各々測定した値が何れも0.15〜0.60であり、かつ相対結晶化指数が5〜30の範囲でないと達成できないことが判る。すなわち、上記を満足している積層体−1〜4は層間密着力、耐熱性および耐加水分解性を両立しているが、比較例1(積層体−5)は配向度OFが本発明の範囲の上限を越えており、かつ相対結晶化指数が下限に近いために積層体の耐熱性、耐加水分解性の保持が困難となり本発明の目的が達成できない。また、比較例3(積層体−7)は、配向度OFが本発明の範囲に入っていても相対結晶化指数が下限を越えており上記と同様に耐熱性や耐加水分解性が低下してしまい本発明の目的を達成できない。一方、比較例2(積層体−6)は相対結晶化指数が本発明の上限を越えており、該値が大きくなると層間密着力が低下し本発明の目的が達成できなくなる。また、該配向度OFが小さくなると二軸配向PPSフィルム層(A層)の熱収縮率が大きくなる方向で熱融着積層時に積層体が熱変形や熱皺を発生しやすくなる。逆に該配向度OFが大きくなると二軸配向PPSフィルム層(A層)が熱により軟化しやすく積層体が熱変形しやすくなる。この面でも本発明の配向度OFの最適範囲は重要である。
Claims (3)
- 全フェニレンスルフィド単位の80モル%以上がパラフェニレンスルフィド単位であるポリフェニレンスルフィド樹脂を含む樹脂組成物からなる二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の少なくとも片方の面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)が接着剤層を介することなく積層された積層体であって、A層の総厚みをaμm、B層の総厚みをbμmとした時の該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25〜5.00であり、かつ該二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の広角X線回折法によって測定した相対結晶化指数が5〜30、EdgeおよびEndの2方向から各々測定した配向度OFが何れも0.15〜0.60であることを特徴とする積層体。
- 前記繊維シート層(B層)の嵩密度が0.6〜1.0であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 前記繊維シート層(B層)が芳香族ポリアミド系繊維シートからなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
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