JP2008110549A - ポリフェニレンスルフィド複合フィルム - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド複合フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】表面欠陥が少なく、表面平滑性、離型性に優れたポリフェニレンスルフィド複合フィルムを提供する。
【解決手段】基材層(B層とする)と基材層を被覆する被覆層(A層とする)の少なくとも2層からなる複合フィルムであり、B層がポリフェニレンスルフィドからなり、B層が粒子を含有し、B層の粒子含有量Wが0.1重量%以上、3.0重量%以下であり、A層がポリフェニレンスルフィドからなり、B層の粒子の平均粒径Dに対するA層の厚さTの比率(T/D)が0.1以上、0.9以下であるポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンスルフィド複合フィルムに関するものであり、特に離型用フィルムとして好適なポリフェニレンスルフィド複合フィルムに関する。
電子機器、情報機器の発展に伴い、それらの表示装置として使用される液晶表示装置に対する高画質化の要求が高まっており、液晶表示装置の視野角拡大、位相差補正等のために使用される高機能膜の薄膜化、均質性、表面性(異物、傷、凹凸の少ないこと)などの要求が厳しくなっている。これらの高機能膜は、原料となる高分子材料を単独でシート状に成形するなどして製造することが困難であり、別の高分子シートやフィルム 、金属板、ガラス板などを離型材として、それらの離型材上に一旦高分子膜を形成したのち剥離して製造する場合が増加している。特に、電子機器や情報機器などの表示装置に使用される場合は、他の機材と貼り合わせたり、高機能膜上に別の樹脂を塗布したりする加工が入り、しかも連続加工される場合が多いため、離型材としては、高分子シートやフィルムが使用されることが多い。なお、離型とは、目的とする樹脂や樹脂組成物を別の基材に一旦塗布やラミネートなどの方法で設けた後、少なくとも一度剥離工程を設けて、目的とする高機能膜を該基材から剥離分離して得ることをいい、このような用途に用いられる基材フィルムを離型フィルムという。
したがって、離型材として用いられるシートやフィルム(以下、離型フィルムと称することがある)に対する要求品質も厳しくなり、高機能膜の品質を阻害しないために、表面平滑性や平面性に優れることはもちろんのこと、加工時の作業性をよくするために、耐熱性、熱寸法安定性、耐薬品性、離型性、機械特性等を備えている必要がある。また生産性の観点からは、製膜安定性に優れ、破れなどを生じることなく連続して製膜できることが求められる。このうち特に、離型フィルムの表面欠陥が製品である高機能膜に転写してその欠陥となるため、離型フィルム表面の欠陥の少ないことが重要である。
従来この分野に用いられていたフィルムやシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと称することがある)、フッ素系樹脂などのフィルムまたはシートが挙げられる。特に、PPSフィルムは、耐熱性、熱寸法安定性、耐薬品性、機械特性、離型性において優れているため、これらの特性を要求する高機能膜では離型フィルムとして用いられる(例えば、特許文献1、2および3参照)。しかし、PPSフィルムには、フィルム表面の粗大突起などの表面欠陥が、高機能膜の欠陥や膜厚の斑を生じさせるという問題がある。
PPSフィルム表面の粗大突起などの表面欠陥を低減するための技術としては、PPSフィルムの厚み、表面粗さおよびフィッシュアイの個数を特定の範囲に規定することが提案されている(特許文献4参照)。ここで、フィッシュアイとは、膜成形時にフィルム中に生じる異物のことである。特許文献4には、PPS樹脂組成物中に含まれる高沸点不純物、塵埃、金属等の微粉、架橋劣化したPPS変性物などを除去することによって、フィッシュアイの発生を抑制し、フィルムの表面欠陥を低減できることが開示されている。しかし、特許文献4に開示の技術のように、高沸点不純物、塵埃、金属等の微粉、架橋劣化したPPS変性物などを除去するだけでは、フィッシュアイの発生を十分に抑えることはできず、フィルムの表面欠陥の低減には不十分であった。
さらに、特許文献5にはPPS複合フィルムの最表面層の粘度保持率を特定の範囲に規定することで、フィッシュアイの発生を抑制し、フィルムの表面欠陥を低減できることが開示されている。ここで、粘度保持率とは、酸化架橋の起こり易さを示す指標である。しかし、特許文献5に開示の技術のように、粘度保持率を特定の範囲に規定するだけでは、フィルムの微小な表面欠陥の低減には不十分であった。
特開平9−300365号公報 特開平9−278912号公報 特開平7−140326号公報 特開2000−34356号公報 特開2006−95824号公報
本発明の目的は上記の問題点を解決すること、すなわち表面欠陥が少なく、表面平滑性、離型性に優れたポリフェニレンスルフィド複合フィルムを提供することである。
上記課題を解決するため本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムは主として次の構成を有する。すなわち、
(1)基材層(B層とする)と基材層を被覆する被覆層(A層とする)の少なくとも2層からなる複合フィルムであって、B層がポリフェニレンスルフィドからなり、B層が粒子を含有し、B層の粒子含有量Wが0.1重量%以上、3.0重量%以下であり、A層がポリフェニレンスルフィドからなり、B層の粒子の平均粒径Dに対するA層の厚さTの比率(T/D)が0.1以上、0.9以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
(2)B層の粒子の平均粒径Dが0.1μm以上、3.0μm以下である(1)に記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
(3)A層の厚さTが0.1μm以上、3.0μm以下である(1)または(2)に記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
(4)A層の粒子含有量Wが0.01重量%以下である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
本発明は以上の構成としたため、表面欠陥が少なく、表面平滑性、離型性に優れたポリフェニレンスルフィド複合フィルムを提供することができる。
以下に、本発明を、好ましい実施の形態とともに詳細に説明する。本発明の複合フィルムは、基材層(B層とする)と基材層を被覆する被覆層(A層とする)の少なくとも2層以上の積層構造であることが好ましい。2層以上の積層構造にすることによって、フィルムの表面形状を詳細に設計することが可能となり、粗大突起などの表面欠陥を低減することができる。また、A層の押出ポリマの吐出量を低く抑えることができるため、押出時の発熱によるPPS分子間での熱架橋や酸化架橋によるゲル化物起因の表面欠陥を抑制することができる。2層以上であれば、3層でも4層でも構わないが、2層構造または3層構造の場合に本発明の効果がより一層良好となり好ましい。しかし、単層構造のフィルムでは、フィルムの表面形状を詳細に設計することが難しく、粗大突起などの表面欠陥を低減することができない。さらに、A層とB層を別々に製膜してラミネート等の手法により後工程で貼り合わせをした場合は、貼り合わせによる欠陥が増加したり、著しく生産性を損なったり、コストが高くなることがある。
このような積層構造を有する複合フィルムにおいては、B層の表面形状が被覆するA層に影響を及ぼすようにすることができ、B層の表面形状によりA層の表面形状を設計することができる。また、A層はB層をカバーする機能を果たすため、B層の粒子の脱落や粗大突起などの表面欠陥を防止することができる。該複合フィルムを離型フィルムとして使用する場合、離型面としてはA層を使用面とすることが好ましい。
B層を構成するポリマはPPSであることが好ましい。本発明におけるポリフェニレンスルフィドとは、繰り返し単位の85モル%以上(好ましくは90モル%以上)が下記構造式で示される構成単位からなる重合体をいう。かかる成分が85モル%未満ではポリマの結晶性、軟化点等が低下し、耐熱性、寸法安定性、機械特性、離型性等が損なわれる場合がある。
化学式1
Figure 2008110549
上記PPSにおいて、繰り返し単位の15モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が繰り返し単位として含まれていても差し支えない。該重合体の共重合の仕方はランダム、ブロック型を問わない。
B層の粒子含有量Wは0.1重量%以上、3.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2重量%以上、2.0重量%以下である。B層の粒子含有量Wが0.1重量%未満であると、B層からA層への突起数が少なくなり、A層表面のすべり性が悪くなるため、フィルム搬送時や加工時にキズが生じやすく、A層の表面欠陥が増加する。B層の粒子含有量Wが3.0重量%を超えると、粒子の二次凝集による粗粒が多くなり、粗大突起の原因となる。
B層の粒子の平均粒径Dは0.1μm以上、3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2μm以上、2.5μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以上、2.0μm以下である。なお、本発明において、粒子の平均粒径とは、面積円相当径の平均値のことをいう。B層の粒子の平均粒径Dが0.1μm未満であると、B層からA層への突起数が少なくなり、A層表面のすべり性が悪くなるため、フィルム搬送時や加工時にキズが生じやすく、A層の表面欠陥が増加する。また、粒子の二次凝集が起こりやすくなり、粗大突起による表面欠陥も増加する。B層の粒子の平均粒径Dが3.0μmを超えると、B層の粒子がA層で十分に被覆しきれず、A層表面に露出し、粒子の脱落及びボイドが生じる恐れがある。
A層を構成するポリマは特に限定されないが、A層の表面平滑性、離型性の面からPPSであることが好ましい。B層と同様にポリフェニレンスルフィドとは、繰り返し単位の85モル%以上(好ましくは90モル%以上)が化学式1で示される構成単位からなる重合体をいう。
A層の厚さTは0.1μm以上、3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以上、2.5μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上、2.0μm以下である。A層の厚さTが0.1μm未満であると、B層の粒子がA層で十分に被覆しきれず、A層表面に露出し、粒子の脱落及びボイドが生じる恐れがある。A層の厚さTが3.0μmを超えると、B層からA層への突起数が少なくなり、A層表面のすべり性が悪くなるため、フィルム搬送時や加工時にキズが生じやすく、A層の表面欠陥が増加する。
A層にはB層によって形成されるA層の表面形状を阻害しない範囲で粒子が含有されてもかまわないが、少ないほど好ましく、具体的には0.01重量%以下であることがより好ましい。また、粒子の脱落及びボイドの発生による表面欠陥を防止する面から、無粒子であることが最も好ましい。A層の粒子含有量Wが0.01重量%を超えると、A層の表面形状をB層で決定することが困難となり、表面平滑性が低下する恐れがある。
A層の粒子の平均粒径DはB層によって形成されるA層の表面形状を阻害しない観点から、小さいほど好ましく、具体的には0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることがさらに好ましい。A層の粒子の平均粒径Dが0.1μmを超えると、A層の表面形状をB層で決定することが困難となり、表面平滑性が低下する恐れがある。
B層の粒子の平均粒径Dに対するA層の厚さTの比率(T/D)は0.1以上、0.9以下であることが好ましく、より好ましくは0.2以上、0.8以下であり、さらに好ましくは0.3以上、0.7以下である。前記比率(T/D)が0.1未満であると、B層の粒子がA層で十分に被覆しきれず、A層表面に露出し、粒子の脱落及びボイドが生じる恐れがある。前記比率(T/D)が0.9を超えると、B層からA層への突起数が少なくなり、A層表面のすべり性が悪くなるため、フィルム搬送時や加工時にキズが生じやすく、A層の表面欠陥が増加する。
本発明のPPS複合フィルムの各層中に含有させる粒子としては、有機物および無機物のいずれを用いてもよく、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸アルミニウム、硫酸バリウムなどの鉱物類、金属、金属酸化物、金属塩類、高融点ポリマ、架橋ポリマ等が挙げられる。粒子の形状は特に制限されず、球状、直方体状、単分散状、凝集状などの粒子を用いることができる。これらの粒子は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
本発明においてA層の中心面平均粗さ(SRa)とは触針曲率半径2μmの触針式の3次元粗さ計にて、カットオフ値を0.25mmとし、測定長0.5mm、該測定方向に対して直交する方向に5μm間隔で81回測定したときの中心線平均粗さである。また最大高さ(SRmax)とは該測定における最大高さである。
本発明においてA層の中心面平均粗さ(SRa)は10nm以上、50nm以下であることが好ましく、より好ましくは15nm以上、45nm以下である。A層の中心面平均粗さ(SRa)が10nm未満であると、A層表面のすべり性が悪くなるため、フィルム搬送時や加工時にキズが生じやすく、A層の表面欠陥が増加する。また、高機能膜との密着性が高くなるため剥離時の応力でフィルム表面が削れ、削れ粉が高機能膜の欠陥となる。A層の中心面平均粗さ(SRa)が50nmを超えると、フィルム表面に粗大突起を形成し、高機能膜の欠陥が増加する。
本発明においてA層の最大高さ(SRmax)は1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは900nm以下である。A層の最大高さ(SRmax)が1000nmを超えると、フィルム表面の粗大突起が多くなり、高機能膜の欠陥が増加する。
本発明における中心面平均粗さ(SRa)と最大高さ(SRmax)を上記範囲とするには、粒子の含有量、粒子の平均粒径、製膜時の延伸温度、熱処理温度等により適宜調整できる。
本発明における離型とは、目的とする樹脂や樹脂組成物を別の基材に一旦塗布やラミネートなどの方法で設けた後、少なくとも一度剥離工程を設けて、目的とする被離型膜を該別の基材から剥離分離して得ることをいい、このような用途に用いられる基材フィルムを離型フィルムという。本発明の離型フィルムの厚みは6μm以上、350μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、250μm以下であることが、高機能膜の加工工程での作業性の面でよい。
本発明におけるボイドとは、添加した粒子が二軸延伸製膜時にポリマに追従できないために生じる、粒子に隣接して存在する空隙のことである。
本発明のPPS複合フィルムの各層には、本発明の特性を阻害しない範囲であれば、PPS以外の樹脂(異種ポリマ)をブレンドしてもよく、また酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
本発明のPPS複合フィルムの表面には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、帯電防止剤等の樹脂や化合物が塗布やラミネートされていたり、適度な表面処理たとえばコロナ放電処理やプラズマ処理されていてもよい。
[製造方法]
次に、本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムの製造方法について述べる。
・ ポリフェニレンスルフィド(PPS)
まず、本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムに用いるポリフェニレンスルフィド(PPS)の製造方法について述べる。PPSは、たとえば、アルカリ金属硫化物(硫化アルカリ)とジハロベンゼンとを重合させることによって製造することができる。
〔アルカリ金属硫化物〕
アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムなどが挙げられ、その中でも硫化ナトリウムが好ましい。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。また、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物、たとえば、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とから調製されるアルカリ金属硫化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素とから調製されるアルカリ金属硫化物などを用いることもできる。アルカリ金属硫化物は、1種が単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
〔ジハロベンゼン〕
ジハロベンゼンとしては、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのp−ジハロベンゼン、m−ジクロロベンゼンなどのm−ジハロベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン原子以外の置換基を含むジハロベンゼンなどを挙げることができる。これらの中でも、p−ジハロベンゼンが好ましく、p−ジクロロベンゼンが特に好ましい。ジハロベンゼンは、1種が単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
ジハロベンゼンの使用量(仕込み量)は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり、好ましくは0.9〜2.0モル、より好ましくは1.0〜1.3モルの範囲であることが、高分子量のPPSを得るためには望ましい。この使用割合が0.9モル未満または2.0モル超過の場合には、加工に適した高粘度(高重合度)のPPSを得ることが困難となるので好ましくない。
〔ジハロベンゼン以外のハロゲン化化合物〕
本発明においては、生成PPSの末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、ジハロベンゼンと共に、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を併用することができる。また、分岐または架橋重合体を形成させるために、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼンなどのトリハロ以上のポリハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)、活性水素含有ハロゲン芳香族化合物、ハロゲン芳香族ニトロ化合物などを併用することも可能である。
〔重合助剤〕
本発明においては、重合度を調整するために、重合助剤を添加して反応させることが好ましい。重合助剤としては、一般にPPSの重合助剤として用いられる公知の重合助剤を用いることができ、例えば、アルカリ金属水酸化物(苛性アルカリ)、カルボン酸アルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩などが挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属水酸化物、カルボン酸アルカリ金属塩が好適に用いられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。カルボン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウムなどが挙げられ、その中でも安価で入手し易いことから、酢酸ナトリウムが好適に用いられる。カルボン酸のアルカリ金属塩は、無水物、水和物または水溶液として用いることができる。また、カルボン酸のアルカリ金属塩は、有機アミド溶媒中で、有機酸と、アルカリ金属水酸化物、炭酸アルカリ金属塩及び重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。
重合助剤は、1種が単独で用いられてもよく、また2種以上が組み合わされて用いられてもよい。重合助剤の使用量は、重合助剤そのものの種類、ならびにアルカリ金属硫化物およびジハロベンゼンの種類などに応じて広い範囲から適宜選択することができるけれども、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、0.01モル〜5モルの範囲が好ましく、0.1〜2モルの範囲がより好ましい。
〔重合溶媒〕
溶媒としては、有機アミド溶媒などの極性溶媒を使用することが好ましい。有機アミド溶媒の中でも、反応の安定性が高いことから、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン、テトラアルキル尿素、ヘキサアルキル燐酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機アミド溶媒などのアミド系高沸点極性溶媒が好適に用いられる。これらの中でもN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記する場合もある)が特に好適に用いられる。溶媒の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.2〜10モルの範囲が好ましく、2〜5モルの範囲がより好ましい。
〔重合反応〕
本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムに用いられるPPSは、アルカリ金属硫化物およびジハロベンゼンの適量、ならびに必要に応じてジハロベンゼン以外のハロゲン化化合物および重合助剤の適量を、アミド系高沸点溶媒などの極性溶媒中に加え、高温高圧下に反応させることによって製造することができる。重合系内の圧力は、使用する助剤の種類や量、および所望する重合度等に応じて適宜選択される。また重合系内の温度および重合時間も、使用する助剤の種類や量、および所望する重合度等に応じて適宜選択されるけれども、好ましくは温度200〜300℃において20分〜50時間、より好ましくは温度230〜280℃において1〜10時間である。以上のようにして粉状または粒状のPPSを得る。次いで、得られた粉状または粒状のPPSを、水または/および溶媒で洗浄して、副製塩、重合助剤、未反応モノマ等を分離する。
(2)PPS樹脂組成物
本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムに前述のように粒子を添加する場合、まず、粒子を、上記(1)で得られた粉状または粒状のPPSに混ぜ、ヘンシェル等で均一混合する。また、PPS以外の樹脂(異種ポリマ)をブレンドする場合や酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加する場合にも、同様にしてPPSに混合する。
次いで、得られた混合物を押出機(好ましくは一段以上のベント孔を有する押出機)に供給し、290〜360℃の温度で溶融混練して適当な口金から押し出し、PPS樹脂組成物を得る。またガット状に溶融成形して、長さ2〜10mm程度にカットし、ペレット状のPPS樹脂組成物としてもよい。得られたPPS樹脂組成物は、真空下の加熱式ドライヤで、温度100〜180℃、時間1〜5時間程度の条件で乾燥される。
なお、粒子を添加しない場合には、(1)で得られたPPSに必要に応じてPPS以外の樹脂(異種ポリマ)や酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤などの添加剤を混合し、粒子を含む混合物の場合と同様にして押出し成形または溶融成形し、PPS樹脂組成物として使用することができる。
このようにして製造されるPPS樹脂組成物は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。例えば、粒子が添加されたPPS樹脂ペレット(以後、粒子ペレットとも称する)と、粒子が添加されていないPPS樹脂ペレット(以後、無粒子ペレットとも称する)とを混合して用いることができる。
(3)ポリフェニレンスルフィド複合フィルム
次に、(2)で得られたPPS樹脂ペレットを用いて、本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを製造する。(2)で得られたPPS樹脂ペレットを減圧下(好ましくは真空度が0〜50mmHg)で120〜230℃(好ましくは160℃から200℃)の温度に加熱しながらミキサーで攪拌し、3時間以上(好ましくは5〜10時間)乾燥する。PPS樹脂組成物の乾燥は、前述のようにしてPPS樹脂組成物を乾燥した後、徐冷して室温まで戻し、再度乾燥させるなど、多段階に分けて行ってもよい。ここで、乾燥温度が230℃を越えると、ポリマが熱劣化したり、乾燥原料が固まりフィルムの製膜に支障を来す懸念があり、また該温度が120℃未満では、PPS原料中の不純物、特に250℃程度にまで加熱して揮発するような高沸点化合物が残留し、フィルムの欠陥を引き起こす恐れがある。
次いで、乾燥されたPPS樹脂組成物を用いて本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製する。本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムの各層を積層する方法としては、コーティング、ラミネートまたは共押出による方法などを用いることができる。その中でも、被覆層となるA層の厚みを薄く形成するためには、共押出による積層が、本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを構成する各層の厚みコントロールの上で好ましい。
共押出による積層において、本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムの各層を形成するPPS樹脂組成物は、溶融押出装置と口金出口との間のポリマ流路内で合流積層されるが、口金よりもPPS樹脂組成物の流動方向上流側(たとえばマニホールド)で合流積層されることが好ましい。具体的には、2台または3台以上の溶融押出装置、および2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)などの合流装置を用いて以下のようにして積層することが好ましい。
まず、各層を形成するPPS樹脂組成物を溶融押出装置にそれぞれ供給し、各PPS樹脂組成物の融点以上(好ましくは290〜360℃)の温度に加熱して溶融する。次いで、この溶融物を溶融押出装置と口金出口との間に設けられた合流装置において溶融状態で2層以上に積層し、スリット状の口金出口から押出し、キャスティングロールと呼ばれる回転する金属ドラム上で冷却固化させる(キャストする)などの方法で急冷して未延伸フィルムを作製する。このとき、ポリマ流路にギヤポンプ、スタティックミキサー、濾過装置を設置することが好ましい。
各層を二軸に配向させる際には、得られた未延伸フィルムを二軸延伸する。未延伸フィルムの延伸方法としては、ロール群とテンターとを用いて長手方向(縦方向)および幅方向(横方向)の延伸を順次行う逐次二軸延伸法、長手方向および幅方向の延伸を同時に行なう同時二軸延伸法等が挙げられ、その中でも逐次二軸延伸法が好ましい。
逐次二軸延伸法を用いる場合の延伸条件は、PPS樹脂組成物に含まれるPPSの種類、ならびにその他の樹脂や添加物の有無および種類などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができるけれども、温度60〜150℃、好ましくは70〜130℃、より好ましくは80〜110℃で、長手方向(縦方向)および幅方向(横方向)をそれぞれ2〜7倍、好ましくは2〜5倍、より好ましくは3〜5倍の倍率で延伸することが好ましい。
得られた延伸フィルムには、さらに熱処理を施すことが好ましい。このときの熱処理条件は、PPS樹脂組成物に含まれるPPSの種類、ならびにその他の樹脂や添加物の有無および種類などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができるけれども、温度180〜(PPS樹脂組成物の融点)℃、好ましくは200〜(PPS樹脂組成物の融点−5)℃の範囲で、定長または15%以下の制限収縮下に1〜60秒間行うことが、耐熱性、機械特性、熱的寸法安定性の点で好ましい。さらに該フィルムの熱寸法安定性を向上させるために、一方向もしくは二方向にリラックスしてもよい。
[特性の評価方法]
次に本発明の記述に用いた、特性の評価方法および評価の基準を述べる。
(1)粒子含有量
フィルムをα−クロロナフタレンに溶解し、熱時に濾過を行って粒子を分離し、フィルム全重量に対する比率(重量%)で表す。また、必要に応じて赤外分光法または蛍光X線法を利用して定量することもできる。
(2)フィルム中の粒子の平均粒径
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した測定フィルム表面に、スパッタリング装置を用いて真空度10−3Torr、電圧0.25kV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施す。次に、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡にて10000〜30000倍の写真を撮影する。平均粒径(D)は、上記写真からn=200〜1000個の粒子の面積円相当径(Di)を求め、下記式により求める。ここで面積円相当径(Di)は個々の外接円の直径である。
Figure 2008110549
(3)積層厚み
日本ミクロトーム研究所製電動ミクロトームST−201を用いて断面切削したフィルムのスライス片(10μm)を透過光顕微鏡で観察し、各層の厚みを測定した。
(4)A層の中心面平均粗さ(SRa)、最大高さ(SRmax)
小坂研究所製SURF CORDER ET 4000Aを用いて、下記条件にてA層の中心面平均粗さ(SRa)、最大高さ(SRmax)を測定した。
触針曲率半径:2μm
カットオフ:0.25mm
測定長さ:0.5mm
測定間隔:5μm
測定回数:81回
(5)高機能膜の欠陥の評価
フィルムの表面をレーヨン布でラビング処理し、エステル系の液晶ポリマを塗布して乾燥(100℃、5分間)、熱処理(220℃、30分間)した後、塗布膜をフィルム から剥離してガラス板に挟み、偏光板からの距離が10cmで測定した明るさが2000LUXの偏光をかけて剥離膜の色むら欠陥(輝点)を確認した。また、欠陥の大きさについては、Nikon製偏光顕微鏡OPTIPHOT−POLを用いて測定した。評価は次の基準で行い、△以上を合格範囲とした。なお、評価サンプルは300mm×200mmとした。
◎:高機能膜に100μm以上の欠陥がない。
○:高機能膜の100μm以上の欠陥が2箇所以下。
△:高機能膜の100μm以上の欠陥が3〜5箇所。
×:高機能膜の100μm以上の欠陥が6箇所以上。
××:高機能膜のほぼ全面に欠陥がある。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例および比較例では、以下のようにして作製した粒子ペレットおよび無粒子ペレットを用いてPPSフィルムを作製した。
(1)ポリフェニレンスルフィドの作製
撹拌機付きの70Lのオートクレーブに、48重量%水硫化ナトリウム水溶液8.181kg(70.00モル)、純度96%の水酸化ナトリウム2.943kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.5モル)、無水酢酸ナトリウム2.239kg(27.30モル)、及びイオン交換水4.900kg(272.2モル)を仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.12kgおよびNMP0.14kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なおこの反応における撹拌速度は毎分240回転(240rpm)とした。
仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて72.0モルであった。また、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.020モルの硫化水素が反応系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.29kg(69.97モル)、NMP9.090kg(91.70モル)を反応系に加えた。反応容器を窒素ガス下に密封した後、400rpmで撹拌しながら、200℃から227℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、次いで227℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、270℃で140分保持した。その後、イオン交換水2.346kg(130.3モル)を15分かけて系内に添加しながら、250℃まで徐々に反応系を冷却した。次いで250℃から200℃まで1.0℃/分の速度で徐々に反応系を冷却し、その後室温近傍まで急冷した。
得られたポリマを乾燥PPS1kg当たり、15kgのN−メチル−2−ピロリドン溶剤(浴比15)で90℃、1.5時間洗浄し、濾過を行った。得られたケークをイオン交換水(浴比15)、70℃、1.5時間で2回洗浄/濾過を行った後、酢酸カルシウムを1重量%含有するイオン交換水(浴比15)、70℃、1.5時間で洗浄/濾過し、再度イオン交換水(浴比15)、70℃、1.5時間で2回洗浄/濾過を行った。得られたポリマを温度150℃にて、真空下で4日間乾燥して、ポリフェニレンスルフィド粉末を得た。
(2)ペレットの作製
〔粒子ペレット1〕
平均粒径2.0μmの炭酸カルシウム粒子をエチレングリコール中に50重量%分散させたスラリーを調製した。このスラリーをフィルタで濾過した後、ヘンシェルミキサーを用いて、(1)で得られたポリマに炭酸カルシウムの含有量が5.0重量%となるよう混合した。得られた混合物を、30mm径の二軸のスクリューを有するベント押出機に供給し、温度320℃で溶融した。この溶融物を金属繊維からなる95%カット孔径10μmのフィルタに通して瀘過した後、2mm孔径ダイから押し出し、ガット状の樹脂組成物を得た。さらに該組成物を約3mm長に裁断し、粒子含有量5.0重量%の粒子ペレット1を得た。
〔粒子ペレット2〕
平均粒径2.0μmの炭酸カルシウム粒子に代えて、平均粒径1.3μmの球形シリカ粒子を用いる以外は、粒子ペレット1と同様にして、粒子ペレット2を得た。
〔粒子ペレット3〕
平均粒径2.0μmの炭酸カルシウム粒子に代えて、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粒子を用いる以外は、粒子ペレット1と同様にして、粒子ペレット3を得た。
〔粒子ペレット4〕
平均粒径2.0μmの炭酸カルシウム粒子に代えて、平均粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を用いる以外は、粒子ペレット1と同様にして、粒子ペレット4を得た。
〔粒子ペレット5〕
平均粒径2.0μmの炭酸カルシウム粒子に代えて、平均粒径2.2μmの炭酸カルシウム粒子を用いる以外は、粒子ペレット1と同様にして、粒子ペレット5を得た。
〔粒子ペレット6〕
平均粒径2.0μmの炭酸カルシウム粒子に代えて、平均粒径0.05μmの炭酸カルシウム粒子を用いる以外は、粒子ペレット1と同様にして、粒子ペレット6を得た。
〔粒子ペレット7〕
平均粒径2.0μmの炭酸カルシウム粒子に代えて、平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム粒子を用いる以外は、粒子ペレット1と同様にして、粒子ペレット7を得た。
〔無粒子ペレット〕
(1)で得られたポリマのみを粒子ペレットと同様にして溶融押出し、粒子を含有しない無粒子ペレットを得た。
(実施例1)
上述のようにして得られた粒子ペレットおよび無粒子ペレットを炭酸カルシウムの含有量が0.5重量%となるよう混合した後、回転式真空乾燥機を用いて、3mmHgの減圧下にて温度180℃で4時間乾燥させてPPSペレット−1を得た。また、無粒子ペレットをPPSペレット−1と同様にして乾燥させてPPSペレット−2を得た。
得られたPPSペレット−2を単軸押出機に供給し、310℃で溶融させた(ポリマI)。また、PPSペレット−1を別のベント式二軸混練押出機に供給し、310℃で溶融させた(ポリマII)。この2つのポリマをそれぞれ高精度瀘過した後、矩形積層部を備えた3層合流ブロックにて、ポリマIIが基材層であるB層となり、基材層の両面被覆層にA層としてポリマIがくるように積層し、940mm幅でリップ間隙3mmの口金よりシート状にして押し出した。次いで、このシートを、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、厚み約740μmの未延伸フィルムを作製した。
逐次二軸延伸法を用い、得られた未延伸フィルムを温度98℃で長手方向に4.2倍延伸し、さらに幅方向に延伸するためにテンターを通して、温度100℃で幅方向に3.5倍延伸した。さらに幅方向に延伸するために用いたテンターに後続する熱処理室にて、温度260℃で10秒間熱処理し、5%の制限収縮下で幅方向にリラックスした。
以上のようにして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを得た。得られたフィルムは、A層の厚みが1.0μm、B層の厚みが48.0μm、全体の厚みが50μmであった。また、A層の中心面平均粗さ(SRa)が38.6nm、最大高さ(SRmax)が896nmであった。
このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粒子の脱落や粗大突起などによる欠陥は認められず、高機能膜の欠陥の評価は◎であった。評価結果を表1にまとめて示した。
(実施例2)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、球形シリカの含有量が0.5重量%となるように粒子ペレット2および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−3を用い、延伸後のA層の厚みが0.5μm、B層の厚みが49.0μmとなるようにポリマIおよびIIの吐出条件を調整する以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が29.4nm、最大高さ(SRmax)が536nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粒子の脱落や粗大突起などによる欠陥は認められず、高機能膜の欠陥の評価は◎であった。評価結果を表1にまとめて示した。
(実施例3)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が1.0重量%となるように粒子ペレット3および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−4を用い、A層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−2に代えて、炭酸カルシウムの含有量が0.007重量%となるように粒子ペレット6および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−5を用いる以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が28.8nm、最大高さ(SRmax)が491nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粒子の脱落や粗大突起などによる欠陥は認められず、高機能膜の欠陥の評価は◎であった。評価結果を表1にまとめて示した。
(実施例4)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が1.0重量%となるように粒子ペレット4および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−6を用い、また、押出成形の際、3層合流ブロックに代えて2層合流ブロックを用いて積層し、延伸後のA層の厚みが0.2μm、B層の厚みが49.8μmとなるようにポリマIおよびIIの吐出条件を調整する以外は、実施例1と同様にして、A層、B層の順に積層された2層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が23.5nm、最大高さ(SRmax)が602nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粒子の脱落や粗大突起などによる欠陥は認められず、高機能膜の欠陥の評価は◎であった。評価結果を表1にまとめて示した。
(実施例5)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が0.2重量%となるように粒子ペレット1および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−7を用い、延伸後のA層の厚みが1.5μm、B層の厚みが47.0μmとなるようにポリマIおよびIIの吐出条件を調整する以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が13.1nm、最大高さ(SRmax)が475nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、微小キズによる100μm程度の欠陥が2箇所認められたが、実用上問題とならないレベルであった(評価○)。評価結果を表1にまとめて示した。
(実施例6)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が2.0重量%となるように粒子ペレット1および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−8を用いる以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が60.9nm、最大高さ(SRmax)が920nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粗大突起による100μm程度の欠陥が5箇所認められたが、実用上問題とならないレベルであった(評価△)。評価結果を表1にまとめて示した。
(実施例7)
A層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−2に代えて、炭酸カルシウムの含有量が0.05重量%となるように粒子ペレット7および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−9を用いる以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が44.5nm、最大高さ(SRmax)が853nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粒子の脱落と粗大突起による100μm程度の欠陥が4箇所認められたが、実用上問題とならないレベルであった(評価△)。評価結果を表1にまとめて示した。
(比較例1)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が0.5重量%となるように粒子ペレット5および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−10を用い、延伸後のA層の厚みが0.2μm、B層の厚みが49.6μmとなるようにポリマIおよびIIの吐出条件を調整する以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が51.1nm、最大高さ(SRmax)が1809nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粗大突起による欠陥がほぼ全面認められ、高機能膜として使用できるレベルではなかった(評価××)。評価結果を表1にまとめて示した。
(比較例2)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が0.5重量%となるように粒子ペレット3および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−11を用い、延伸後のA層の厚みが2.0μm、B層の厚みが46.0μmとなるようにポリマIおよびIIの吐出条件を調整する以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が6.8nm、最大高さ(SRmax)が285nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、微小キズによる100μm程度の欠陥が11箇所認められ、高機能膜として使用できるレベルではなかった(評価×)。評価結果を表1にまとめて示した。
(比較例3)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が0.05重量%となるように粒子ペレット1および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−12を用いる以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が8.1nm、最大高さ(SRmax)が736nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、微小キズによる100μm程度の欠陥が8箇所認められ、高機能膜として使用できるレベルではなかった(評価×)。評価結果を表1にまとめて示した。
(比較例4)
B層を形成するためのペレットとして、PPSペレット−1に代えて、炭酸カルシウムの含有量が3.5重量%となるように粒子ペレット1および無粒子ペレットを混合して得たPPSペレット−13を用いる以外は、実施例1と同様にして、A層、B層、A層の順に積層された3層構造のポリフェニレンスルフィド複合フィルムを作製した。
得られたフィルムは、A層の中心面平均粗さ(SRa)が71.4nm、最大高さ(SRmax)が1205nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粗大突起による欠陥がほぼ全面認められ、高機能膜として使用できるレベルではなかった(評価××)。評価結果を表1にまとめて示した。
(比較例5)
粒子ペレット4および無粒子ペレットを炭酸カルシウムの含有量が0.5重量%となるよう混合した後、回転式真空乾燥機を用いて、3mmHgの減圧下にて温度180℃で4時間乾燥させてPPSペレット−14を得た。
得られたPPSペレット−14を単軸押出機に供給し、310℃で溶融させた。このポリマを高精度濾過した後、940mm幅でリップ間隙3mmの口金よりシート状にして押し出した。このシートを実施例1と同様にして冷却固化し、厚み約740μmの未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを実施例1と同様にして延伸した後、熱処理し、厚み50.0μmの単層フィルムを得た。
得られたフィルムの中心面平均粗さ(SRa)は37.4nm、最大高さ(SRmax)が754nmであった。このフィルムを離型フィルムとして高機能膜を作製し、欠陥の発生状態を評価したところ、粒子脱落と粗大突起による100μm程度の欠陥が6箇所認められ、高機能膜として使用できるレベルではなかった(評価×)。評価結果を表1にまとめて示した。
Figure 2008110549
本発明のポリフェニレンスルフィド複合フィルムは、自動車、産業機器、電子部品機器等のシールド基材、放熱回路基板、絶縁保護基板等として使用することができ、特に、液晶膜、セラミック膜や高機能高分子膜等の微小な表面欠陥を嫌う膜を製造する際の離型基材として最適である。

Claims (7)

  1. 基材層(B層とする)と基材層を被覆する被覆層(A層とする)の少なくとも2層からなる複合フィルムであって、B層がポリフェニレンスルフィドからなり、B層が粒子を含有し、B層の粒子含有量Wが0.1重量%以上、3.0重量%以下であり、A層がポリフェニレンスルフィドからなり、B層の粒子の平均粒径Dに対するA層の厚さTの比率(T/D)が0.1以上、0.9以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
  2. B層の粒子の平均粒径Dが0.1μm以上、3.0μm以下である請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
  3. A層の厚さTが0.1μm以上、3.0μm以下である請求項1または2に記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
  4. A層の粒子含有量Wが0.01重量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
  5. A層が実質的に無粒子である請求項4に記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
  6. A層の中心面平均粗さ(SRa)が10nm以上、50nm以下、最大高さ(SRmax)が1000nm以下である請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
  7. 複合フィルムがA層を離型層とした離型用基材フィルムである請求項1〜6のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド複合フィルム。
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