JP2007301784A - 積層ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents

積層ポリアリーレンスルフィドフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】熱成型性に優れる積層ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも一方の最外層(A層)の平均表面粗さ(Ra)が60nm以上500nm以下である積層フィルムであり、最外層(A層)以外の層においてポリマーの合計に対し、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂(X)を1〜40重量%含有する層(B層)を少なくとも1層積層した積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱成型性に優れた積層ポリアリーレンスルフィドフィルムに関するものである。
積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、優れた耐熱性、難燃性、機械特性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの特長を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、その耐熱性や機械特性の高さを活かし音響機器振動板としてのポリフェニレンスルフィドフィルム(以下PPSと略称することがある)の適用が進められている。従来、プラスチックからなる音響機器振動板としてはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、またPETよりも耐熱性、剛性に優れたポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエーテルイミド(PEI)を用いた音響機器振動板が使用されている(特許文献1、2および3参照)。
しかしながら、PETを用いた音響機器振動板は、小口径のスピーカー、例えば、携帯電話用などに使用した場合、65℃以上の雰囲気下で熱変形を生じ易く、耐熱性が十分ではなかった。一方、PENの音響振動板は、PET製の振動板よりも、耐熱性に優れているが十分ではなく、また、PEIの音響振動板においては、スピーカー振動板の形状によってはローリングやビビリが発生しやすく音響特性が悪化したり、外部出力が大きくなるとフィルムが耐えられず破れを生じるなどの問題があった。
そこで、耐熱性、機械特性に優れたポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる音響振動板用フィルムの提案がなされている(特許文献4)が、成型性が不十分であり、熱成型加工においてフィルム破れを生じる問題があった。
特開平1−67099号公報 特開昭62−263797号公報 特公平4−68839号公報 特開平6−305019号公報
本発明は、これらの問題点を改善することができる耐熱性、機械特性に優れた音響機器振動板用フィルムを見出したものであり、詳しくは、熱成型性に優れた積層ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供するものである。
上記課題を解決するため本発明は、以下の構成を有する。すなわち、少なくとも一方の最外層(A層)の平均表面粗さ(Ra)が60nm以上500nm以下である積層フィルムであり、最外層(A層)以外の層においてポリマーの合計に対し、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂(X)を1〜40重量%含有する層(B層)を少なくとも1層積層した積層ポリアリーレンスルフィドフィルムである。
本発明によれば、以下に説明するとおり、熱成型性に優れた積層ポリアリーレンスルフィドフィルムを得ることができる。本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、特に音響機器振動板用フィルムとして好適である。
以下、本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムについて説明する。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、積層フィルムの少なくとも一方の最外層(A層)の平均表面粗さ(Ra)が60nm以上500nm以下であることが本発明の熱成型性を得るために重要である。本発明の熱成型性とは、熱成型時にフィルム破れを発生することなくフィルムを成型加工することができ、また、成型加工後、金型からの離型性に優れ、取り出しフィルムの形状持性が優れていることを意味するものである。平均表面粗さ(Ra)が60nm未満の場合、熱成型時のフィルム破れは発生しにくいが、金型からの離型性および形状保持性が悪化する場合がある。平均表面粗さ(Ra)が500nmを超えると、フィルムの破断伸度が低下する場合があり、熱成型時にフィルム破れが発生する場合がある。積層フィルムの少なくとも一方の表面の平均表面粗さ(Ra)は100〜400nmが好ましく、さらに好ましくは150〜250nmである。
本発明の最外層(A層)を構成する層の不活性粒子の含有量は、A層を構成するポリマーの合計100重量部に対して不活性粒子を0.6〜30重量部含有することが好ましく、より好ましくは3〜20重量部であり、さらに好ましくは5〜10重量部である。不活性粒子の含有量がA層を構成するポリマー100重量部に対して、0.6重量部未満の場合、熱成型時のフィルム破れは発生しにくいが、金型からの離型性および形状保持性が悪化する場合がある。不活性粒子の含有量がA層を構成するポリマー100重量部に対して、30重量部を超えると、フィルムの破断伸度が低下する場合があり、熱成型時にフィルム破れが発生する場合がある。
本発明に用いる不活性粒子としては、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、カオリン、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、酸化亜鉛などの無機粒子や架橋スチレン系粒子のような300℃までは溶融しない有機粒子があげられる。好ましくは、炭酸カルシウム、シリカであり、これらの粒子は、ポリマーとの親和性が良好で製膜延伸時に粒子周辺にボイドを生成しにくいために好ましい。
本発明に用いる不活性粒子の粒径は0.1μm以上、3μm以下が好ましく、より好ましくは、0.5〜1.5μmである。粒径が0.1μm未満の場合、本発明の熱成型後の金型からの離型性および形状保持性が悪化する場合がある。3μmを超えると、フィルムの破断伸度が低下する場合があり、熱成型時にフィルム破れが発生する場合がある。
本発明において、積層ポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィドと不活性粒子を混合する時期は、特に限定されないが、溶融押出前に、ポリアリーレンスルフィドと不活性粒子の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法を好ましく用いることができる。中でも、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましい。また、スクリュー回転数は100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、粒子の分散性を向上することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムの最外層(A層)の厚みは、全積層フィルム厚みに対して5%以上35%以下が好ましく、より好ましくは15〜20%であり、さらに好ましくは10〜20%である。A層の厚みが全積層フィルム厚みに対して35%を超えると、フィルムの破断伸度が低下する場合があり、熱成型時にフィルム破れが発生する場合がある。
本発明において、最外層(A層)は不活性粒子を含有することが好ましい態様であり、最外層(A層)の積層厚みは、該不活性粒子を構成する元素濃度を測定することにより得ることができる。元素濃度を測定する方法は、例えば2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いることができる。
本発明でいうポリアリーレンスルフィドとしては、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーを用いることができる。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される単位を挙げることができる。
Figure 2007301784
(R1、R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPSと略称する場合がある)が好ましく例示され、ポリマーの主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む樹脂である。かかるp−フェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性および誘電特性などを損なうことがある。
Figure 2007301784
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記の構造単位を挙げることができる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
Figure 2007301784
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度315℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜10,000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜4,000Pa・sの範囲である。
本発明でいうPPSは種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明において、得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
次に、PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では特にこれに限定されない。
例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマーは、実質的に線状のPPSポリマーであるので、安定した延伸製膜が可能になる。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気や酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は、通常170〜280℃が選択され、より好ましくは200〜270℃であり、また、加熱処理時間は、通常0.5〜100時間が選択され、より好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率よくしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。本発明で用いるPPS樹脂は、引張破断伸度の向上の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。脱イオン処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、および有機溶剤洗浄処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであれば特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中で、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムが特に好ましく用いられる。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合系で使用してもよい。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度について特に制限はなく、常温〜300℃の範囲で任意の温度を選択することができる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱し攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の方が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸やジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸やクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸やサリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸およびフマル酸などのジカルボンン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸および珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸と塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いられる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。酸水溶液洗浄処理を施すと、PPS樹脂の酸末端成分が増加して、他の熱可塑性樹脂と混合する場合に分散混合性が高まる効果が得られやすく好ましい。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムには、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂(X)を1〜40重量%含有するB層が少なくとも1層積層することが本発明の熱成型性を向上するために重要である。熱可塑性樹脂(X)が1重量%未満の場合、本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムの破断伸度を十分に向上することができず、熱成型加工においてフィルム破れを発生する場合がある。また、成型加工後の金型からの離型性、形状保持性が悪化する場合がある。また、熱可塑性樹脂(X)の含有量が40重量%を超えると、本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムの破断伸度が低下する場合があり、熱成型においてフィルム破れが発生する場合がある。本発明においては、熱可塑性樹脂(X)の含有量は3〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%が本発明の効果を得る上でより好ましい態様である。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(X)としては、熱可塑性樹脂(X)のガラス転移温度が150℃以上、ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以下であることが本発明の熱成形性の効果を得るために好ましい。より好ましくはガラス転移温度が170℃以上、ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点−20℃以下であり、さらに好ましくはガラス転移温度が190℃以上、ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点−40℃以下である。熱可塑性樹脂(X)のガラス転移温度が150℃未満の場合、熱成形後の取り出し安定性が悪化する場合があり、ポリアリーレンスルフィドの融点を越えると、溶融押出性が悪化して安定製膜できない場合がある。
B層に含有する熱可塑性樹脂は、上記ガラス転移温度を有する樹脂であれば特に限定されないが、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンを用いることができるが、ポリアリーレンスルフィドとの親和性の観点からポリエーテルイミドが好ましく用いられる。
本発明で用いられる好ましいポリエーテルイミドは、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであり、溶融成形性を有するポリマーであれば、特に限定されない。例えば、米国特許第4141927号、特許第2622678号、特許第2606912号、特許第2606914号、特許第2596565号、特許第2596566号、特許第2598478号のポリエーテルイミド、特許第2598536号、特許第2599171号、特開平9−48852号公報、特許第2565556号、特許第2564636号、特許第2564637号、特許第2563548号、特許第2563547号、特許第2558341号、特許第2558339号、特許第2834580号に記載のポリマーである。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。本発明では、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物が、溶融成型性等の観点から好ましい。このポリエーテルイミドは、“Ultem”(登録商標)の商標名で、General Electric社より入手可能である。
本発明においては、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂(X)の親和性を向上させるために、相溶化剤を添加することが好ましく用いられる。かかる相溶化剤の具体例としては、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2.2.5.5.−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの替わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたもの、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。またその他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノール類としては特に制限はないがフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。エポキシ樹脂の中でも、特にグリシジルエステル型のエポキシ樹脂が好ましく、中でもシクロジカルボン酸型のエポキシ樹脂が好ましく、具体例としては、ジャパンエポキシレジン製のエピコート191Pなどが挙げられる。
またその他エポキシ基を有するオレフィン共重合体も挙げられる。かかるエポキシ基を有するオレフィン共重合体(エポキシ基含有オレフィン共重合体)としては、オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
これらエポキシ基含有成分を導入する方法は特に制限なく、α−オレフィンなどとともに共重合せしめたり、オレフィン(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量はエポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明で特に有用なエポキシ基含有オレフィン共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合成分とするオレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等を共重合することも可能である。
またかかるオレフィン共重合体はランダム、交互、ブロック、グラフトいずれの共重合様式でも良い。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合してなるオレフィン共重合体は、中でも、α−オレフィン60〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を共重合してなるオレフィン共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g―ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
さらに、相溶化剤の具体例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
上記のエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランが本発明の相溶化剤として好ましく、中でも、イソシアネート基を有するアルコキシシランがポリアリーレンスルフィドフィルムと熱可塑性樹脂(X)の親和性を向上させることができるため最も好ましい。
また、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランを用いた場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂(X)の間にシロキサン結合を形成しやすく、分散相の界面近傍にシロキサン結合が存在しやすい。TEM−EDX法などを用いて分散相の界面近傍にシリコン原子を検出することができる。本発明では、熱可塑性樹脂(X)からなる分散相の界面にシロキサン結合に起因するシリコン(Si)原子を含むことが好ましい。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、ポリアリーレンスルフィドが海相(連続相あるいはマトリックス)を形成し、他の熱可塑性樹脂(X)が島相(分散相)を形成することが好ましい。また、分散相を形成する熱可塑性樹脂(X)の平均分散径は、0.01〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.5μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.3μmの範囲である。ポリアリーレンスルフィドが連続相を形成することによりポリアリーレンスルフィドの有する耐熱性、耐薬品性、電気特性の優れた特性をフィルムに大きく反映させることができる。この平均分散径を上記の範囲にすることにより、フィルム破れを発生することなく熱成型加工することができ、また、成型加工後の金型からの離型性、および形状保持性に優れた積層ポリアリーレンスルフィドフィルムを得やすいので好ましい。分散相の平均分散径が0.01μm未満であると、熱成型加工後の金型からの離型性が悪化する場合があり、また、平均分散径が2μmより大きいと、耐熱性が損なわれたり、製膜工程の延伸時にフィルム破れが発生し易くなり、製膜安定性が悪化する場合がある。
ここでいう分散相の平均分散径とは、フィルム長手方向の径と幅方向の径と厚さ方向の径の平均値を意味する。該平均分散径は、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの手法を用いて測定することができる。例えば、サンプルを超薄切片法で作成し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、1万倍で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、平均分散径を計算することができる。
熱可塑性樹脂(X)の分散相の形状は、球状もしくは細長い島状、小判状、あるいは繊維状であることが好ましい。分散相のアスペクト比は、1〜30の範囲であることが好ましい。より好ましい分散相のアスペクト比の範囲は2〜20であり、さらに好ましい範囲は2〜10である。これら島成分のアスペクト比を上記範囲にすることにより、本発明の効果を得やすくなる。ここで、アスペクト比は、分散相の平均長径/平均短径の比を意味するものである。該アスペクト比は、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの手法を用いて測定することができる。例えば、サンプルを超薄切片法で作成し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、1万倍で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、アスペクト比を計算することができる。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドの最外層(A層)を構成するポリマーは特に限定はないが、上記記載のB層を構成するポリマーと同じであることが、本発明の効果を発現する点で好ましい態様である。A層中に含有する熱可塑性樹脂(Y)の含有量は、1〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜30重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%である。A層中に熱可塑性樹脂(Y)を含有することで最外層の表面粗さを本願規定の範囲とすることが容易となる。
本発明において、積層ポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂(X)が含まれる混合物を混合する時期は、特に限定されないが、溶融押出前に、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂(X)の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく用いられる。該ポリアリーレンスルフィドは、あらかじめ不活性粒子と混合させたものを使用してもかまわない。マスターチップ化する場合、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて混練する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましい。予備溶融混練においては、溶融押出しされた樹脂の温度は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+20℃〜融点+80℃の範囲が好ましく、より好ましくは、ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+30℃〜融点+60℃の範囲である。該樹脂温度に調整する方法は、押出機のシリンダーの温度を調整することにより調整できる。押出機内の滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数は、100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、分散性を向上させることができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることは好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー形状にする。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルムの破断伸度が80%以上、250%以下であることが本発明の熱成形加工性を向上するために好ましく、より好ましくは110%以上、250%以下、さらに好ましくは120%以上、250%以下である。破断伸度が80%未満の場合、熱成型時にフィルム破れが発生する場合がある。また、破断伸度が250%を超える場合、製膜時の延伸倍率を極めて低倍率にすることが必要となり、フィルムの平面性が悪化し、製膜が困難となる場合がある。フィルムの破断伸度を本発明の範囲とするためには、最外層(A層)の積層厚みを本願規定の範囲とすること、熱可塑性樹脂および不活性粒子を本願規定の範囲添加すること、および、本願規定のフィルム製造方法により得ることができる。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルム厚みが10μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは15μm〜75μm、さらに好ましくは20μm〜60μmである。フィルム厚みが10μmより薄い場合は、フィルムを取り扱うときに容易に変形してしまうため、取扱いが困難となる場合がある。また、フィルム厚みが100μmを超える場合は、熱成型における加工時間が増加する場合があり、生産性が悪化する場合がある。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、熱成型用であることが好ましい。熱成型温度は、ポリフェニレンスルフィドのガラス転移温度以上が好ましく、より好ましくは、ポリフェニレンスルフィドのガラス転移温度+50℃以上であり、さらに好ましくは、ポリフェニレンスルフィドのガラス転移温度+100℃以上である。該範囲で熱成型することにより成型加工におけるフィルム破れを抑制することができる。
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステルおよびワックスなどの有機滑剤など他の成分が添加されてもよい。
また、本発明の音響機器振動板用積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
次いで、本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、不活性粒子として粒径1.2μmの炭酸カルシウムを用い、ポリアリーレンスルフィドとしてポリ−p−フェニレンスルフィド(PPSと略称することがある)と熱可塑性樹脂(Y)としてポリエーテルイミドと相溶化剤としてγ―イソシアネートプロピルトリエトキシシランを含む混合層からなる積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造を例にとって説明する。もちろん、本発明は、下記の記載に限定されない。
ポリフェニレンスルフィド、炭酸カルシウムおよびポリエーテルイミドを混合する場合、溶融押出前に、それぞれの樹脂の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示される。
本発明では、まず、PPSと炭酸カルシウムのマスター原料を作成する。PPSと炭酸カルシウムを二軸混練押出機に投入し、重量分率が95/5〜70/30となるマスター原料を作成する。混合・混練方法は、特に限定されることはなく各種混合・混練手段が用いられる。例えば、ヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダーあるいはタンブラー等の混合機を利用して混合し、その後、溶融混練機にて溶融混練することでもよい。
次いで、PPSとポリエーテルイミドのブレンド原料を作成する。PPSとポリエーテルイミドを二軸混練押出機に投入し、PPSとポリエーテルイミドの重量分率が99/1〜50/50のブレンド原料を作成することが好ましい。ブレンド原料の樹脂組成物の混合・混練方法は、特に限定されることはなく各種混合・混練手段が用いられる。例えば、各々別々に溶融押出機に供給して混合してもよいし、また、予め紛体原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダーあるいはタンブラー等の混合機を利用して乾式予備混合し、その後、溶融混練機にて溶融混練することでもよい。
PPSと炭酸カルシウムあるいはPPSとポリエーテルイミドの混練は、それぞれをベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いることが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、混練部を220〜320℃の温度範囲とすることが好ましく、さらに好ましい温度範囲は220〜280℃である。混練部の温度範囲を好ましい範囲にすることは、せん断応力を高めやすく、分散不良物も低減できる効果が高くなり、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることは好ましく、その混練部を2箇所以上設けて、各混練部の間を通常のフィードスクリューとしたスクリュー形状にすることはさらに好ましい。
PPSとポリエーテルイミドを混合する上で、相溶化剤が添加されると、分散不良物が低減できて相溶性が高まることがある。
相溶化剤を添加する時期は特に限定されないが、PPSとポリエーテルイミドを二軸押出機に投入する際、添加することができる。相溶化剤の添加方法は特に限定されないが、予めヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダーあるいはタンブラー等の混合機を用いてPPSと混合してから添加する方法や,PPSとPEIを一端、二軸押出機に投入して溶融し、水分を真空ベントした後、サイドポートより相溶化剤のみを添加する方法などを用いることができる。ポリエーテルイミドの分散性の観点から、相溶化剤をサイドポートから添加する方法が好ましい。
次いで、上記ペレタイズ作業により得られた、PPSと炭酸カルシウムのマスター原料およびPPSとポリエーテルイミドを混合したブレンド原料を、必要に応じてPPSや製膜後の回収原料を一定の割合で適宜混合して樹脂Aとし、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、300〜350℃の温度、好ましくは320〜340℃に加熱された押出機1に投入する。一方、押出機2には、PPSとポリエーテルイミドを混合したブレンド原料とPPSや製膜後の回収原料を一定の割合で適宜混合して樹脂Bとし、同様に乾燥した上で投入する。その後、押出機1,2を経た溶融ポリマーをフィルター内を通過させた後、その溶融体をピノールを用いて合流させて3層積層(A/B/A)し、その後、Tダイを用いてシート状に吐出し、このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
次に、この未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。延伸温度については、フィルムを構成するPPSやポリエーテルイミドの混同組成により異なるが、例えば、PPSが80重量%、炭酸カルシウムが10重量%、ポリエーテルイミドが10重量%からなる樹脂組成物を例にとって以下説明する。
未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向(MD方向)に2.4〜4倍、より好ましくは2.6〜3.6倍、さらに好ましくは、2.6〜3.4倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(PPSのガラス転移温度)〜(Tg+50)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+40)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+60)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+10)〜(Tg+40)℃の範囲である。延伸倍率は2.4〜4倍、より好ましくは2.6〜3.6倍、さらに好ましくは2.6〜3.4倍の範囲である。
次に、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。好ましい熱固定温度は、200〜275℃、より好ましくは220〜270℃、さらに好ましくは240〜265℃の範囲である。熱固定時間は0.2〜30秒の範囲で行うことが好ましい。さらにこのフィルムを40〜180℃の温度ゾーンで幅方向に弛緩しながら冷却する。弛緩率は、引張破断伸度を向上させる観点から1〜10%であることが好ましく、より好ましくは1〜8%、さらに好ましくは1〜5%の範囲である。
さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)破断伸度、ヤング率
フィルム長手方向および幅方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して用いた。破断伸度はJIS K7127に規定された方法に従って、ヤング率はJIS Z1702に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行い、試料数10にて、MD方向、TD方向について測定を行い平均値をとった。
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:100mm/分
測定環境:温度120℃。
(2)フィルム厚み
23℃65%RHの雰囲気下でフィルム厚みを測定した。
測定装置:アンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)
測定条件:針圧30g
(3)熱成型性、成型後の離型性および形状保持性
フィルムが180度折り曲げられる深絞り部を有する190℃から230℃に加温された金型にて、圧力0.4MPa、時間15秒成型プレスして、100℃まで冷却した後、室温に取り出す。熱成型性および成型後の離型性、形状保持性を下記の基準で判断した。
〈熱成型性〉
○:フィルムが破れることなく成型できる。
×:成型時にフィルムが破れて、所望の形状の 振動板が得られない。
〈離形性および形状保持性〉
○:フィルムの金型からの取り出しが可能であり、取り出し後も所望の形状が保持されている。
×:フィルムの金型からの取り出しが困難であり、取り出し後に形状が変形している。
(4)表面粗さ(Ra)
測定は下記の条件で行い、JIS B0601に準じて中心線平均表面粗さ(Ra)を求めた。
測定装置:(株)小坂研究所製高精度薄膜段差計ET−10
測定条件:触針先端半径0.5μm
針圧5mg
測定長1mm
カットオフ0.08mm
(5)フィルム積層厚み
2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層から深さ3μmの範囲のフィルム中の粒子の内もっとも高濃度の粒子に起因する元素とポリフェニレンスルフィドの炭素元素の濃度比(M/C)を粒子濃度とし、表面から深さ3μmまで厚さ方向の分析を行った。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明フィルムの場合は一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始めた。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の1/2となる深さ(この深さは極大値となる深さよりも深い)を求め、これを積層厚さとした。条件は下記の通りである。
測定装置:2次イオン質量分析装置(SIMS)
西独、ATOMIKA社製 A-DIDA3000
測定条件:1次イオン種 ;O
1次イオン加速電圧;12KV
1次イオン電流 ;200nA
ラスター領域 ;400μm
分析領域 ;ゲート30%
測定真空度 ;5.0×10−9Torr
E−GUN ;0.5KV−3.0A
(参考例1)
ポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS)の重合
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5重量%水硫化ナトリウム8,267.37g(70.00モル)、96重量%水酸化ナトリウム2,957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11,434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2,583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10,500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14,780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10,235.46g(69.63モル)、NMP9,009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1,260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26,300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた顆粒を31,900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56,000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70,000gで洗浄、濾別した。70,000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS顆粒を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1,000/s)であり、ガラス転移温度が90℃、融点が285℃であった。
(実施例1)
参考例1で作成したPPS樹脂80重量部と不活性粒子として粒径1.2μmの炭酸カルシウムを20重量部となるように配合し、230℃に加熱された、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして20重量%粒子マスターチップを作製した。
次いで、参考例1で作成したPPS樹脂80重量部と熱可塑性樹脂(X)としてポリエーテルイミド20重量部(ジーイープラスチックス社製 “ウルテム1010”)(PEI)を用い、相溶化剤としてγ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、”KBE9007”)を全ポリマーに対し1重量%を配合し、230℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPPS/PEI(20重量%)ブレンドチップを作製した。
得られた粒子マスターチップ、ブレンドチップ、および参考例1で作製したPPS樹脂を150℃、3時間減圧乾燥し、PPS/PEI(20重量%)マスターチップ50重量部と20%粒子マスターチップ50重量部を配合して、溶融部が320℃に加熱された最外層を構成する押出機1(A)に供給した。また、PPS/PEI(20重量%)マスターチップ50重量部と、参考例1で作製したPPS樹脂50重量部を配合して、溶融部が320℃に加熱された押出機2(B)に供給した。次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーをそれぞれフィルターで濾過した後、3層用の矩形の合流ブロック(フィードブロック)を使用して、A/B/Aの3層積層とした。合流ブロックを通過させるポリマー流量は、二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比がA/B/A=6/88/6となるように、各層の厚さをそれぞれのラインに設置されたギヤポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを3層積層状態にして溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
この未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、110℃の温度でフィルムの縦方向に2.8倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度110℃、延伸倍率3.0倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて温度265℃で5秒間の熱処理を行った後、150℃にコントロールされた冷却ゾーンで横方向に3%弛緩処理を行い室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、積層厚み1.5μm/22μm/1.5μm、合計厚み25μmの二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを作製した。
得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は表1に示したとおりであり、この二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムは、熱成型加工性に優れたものであった。
(実施例2,3)
二軸延伸・熱処理後の最終フィルムの積層比を表1に示した通り変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示した。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムは、成型後の取り出し、形状保持性は良好であった。
(実施例4)
参考例1で作成したPPS樹脂50重量部と20%粒子マスターチップ50重量部を押出機1(A)に供給する以外は、実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示した通りであり、成型後の取り出し、形状保持性は良好であった。
(実施例5)
参考例1で作成したPPS樹脂90重量部と熱可塑性樹脂(X)としてポリエーテルイミド10重量部を用い、相溶化剤としてγ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシランを全ポリマーに対し0.7重量%を配合してPPS/PEI(10重量%)ブレンドチップを作製した。このブレンドチップ50重量部と20%粒子マスターチップ50重量部を押出機1(A)に供給した。また、PPS/PEI(10重量%)ブレンドチップ50重量部と参考例1で作製したPPS樹脂50重量部を押出機2(B)に供給する以外は実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示した通りであり、成型後の取り出し、形状保持性は良好であった。
(実施例6)
参考例1で作成したPPS樹脂94重量部と熱可塑性樹脂(X)としてポリエーテルイミド6重量部を用い、相溶化剤としてγ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシランを全ポリマーに対し0.7重量%を配合してPPS/PEI(6重量%)ブレンドチップを作製した。このブレンドチップ50重量部と20%粒子マスターチップ50重量部を押出機1(A)に供給した。また、PPS/PEI(6重量%)ブレンドチップ50重量部と参考例1で作製したPPS樹脂50重量部を押出機2(B)に供給する以外は実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示した通りであり、成型後の取り出し、形状保持性は良好であった。
(実施例7)
不活性粒子として炭酸カルシウムの含有量をA層を構成する全ポリマー100重量に対し、4重量部とする以外は、実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、熱成形性に優れたものであった。
(実施例8)
不活性粒子として炭酸カルシウムの含有量をA層を構成する全ポリマー100重量に対し0.8重量部とする以外は、実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、熱成形性に優れたものであった。
(実施例9)
不活性粒子として0.5μmのシリカを用いる以外は実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示した通りであり、熱成形性に優れたものであった
(実施例10)
不活性粒子として0.3μmの炭酸カルシウムを用いる以外は実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、熱成型性に優れたものであった。
(比較例1)
実施例1でA層を構成するポリマー中に不活性粒子を添加しない以外は、実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示した通りであり、熱成型するとフィルム破れは発生しなかったが、熱成型後の取り出し性が不良であった。
(比較例2)
参考例1で作成したPPS樹脂100重量部とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、破断伸度が低いため熱成型するとフィルム破れが発生し、熱成型後の取り出し性が不良であった。
(比較例3)
不活性粒子として炭酸カルシウムの含有量を参考例1で作成したPPS樹脂99.4重量部に対して0.6重量部とする以外は、実施例1と同様にして二軸配向積層ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、熱成型するとフィルム破れは発生しなかったが、熱成型後の取り出し性が不良であった。
Figure 2007301784
本発明の積層ポリアリーレンスルフィドフィルムは、熱成型性にすぐれたフィルムであり、特に、音響機器振動板用フィルムとして好適に使用することができる。

Claims (12)

  1. 少なくとも一方の最外層(A層)の平均表面粗さ(Ra)が60nm以上500nm以下である積層フィルムであり、最外層(A層)以外の層においてポリマーの合計に対し、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂(X)を1〜40重量%含有する層(B層)を少なくとも1層積層した積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. A層の厚みが全積層フィルム厚みに対し、5%以上35%以下である請求項1に記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  3. A層を構成する層が不活性粒子を0.6〜30重量部含有する請求項1または2に記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. 不活性粒子の粒径が0.1μm以上3μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  5. 不活性粒子が炭酸カルシウム、シリカからなる群から選ばれる1種である請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  6. B層に含有する熱可塑性樹脂(X)のガラス転移温度が150℃以上かつポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以下である請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  7. B層に含有する熱可塑性樹脂(X)がポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項1〜6のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  8. B層に含有する熱可塑性樹脂(X)の平均分散径が0.01〜2μmである請求項1〜7のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  9. A層を構成するポリマーが、B層を構成するポリマーと同じである請求項1〜8のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  10. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである請求項1〜9のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  11. 積層ポリアリーレンスルフィドフィルムが熱成型用フィルムである請求項1〜10のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  12. 積層ポリアリーレンスルフィドフィルムが音響機器振動板用フィルムである請求項1〜10のいずれかに記載の積層ポリアリーレンスルフィドフィルム。
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