JP2008201926A - 二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することであり、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサーを形成しうるポリアリーレンスルフィドフィルム、この金属化フィルムおよびこれを用いたコンデンサーを提供すること。
【解決手段】ポリアリーレンスルフィドと、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aを含有し、熱可塑性樹脂Aが相溶化剤により分散相を形成し、該分散相の平均分散径が100〜900nmであり、粒径が1μm以上の不活性粒子の数が1mmに100個未満であることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面特性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム、およびそれを用いたコンデンサーに関するものである。
詳しくは、耐電圧等の電気特性に優れており、特にコンデンサー用として用いると、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサーを形成しうるポリアリーレンスルフィドフィルム、金属化フィルムおよびこれを用いたコンデンサーに関するものである。
二軸延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムが開示されているが(特許文献1)、これまでのフィルムは、その製造工程や加工工程において、巻き取る時にシワ等が入ったり、フィルム表面にキズが付き易くなるなどの理由から、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナやジルコニアなどの無機粒子やシリコン粒子、架橋アクリル粒子や架橋ポリスチレン粒子などの有機粒子などの不活性粒子をフィルムに添加し、フィルムに滑り性を付与している。また、有機または無機の不活性粒子を添加し、フィルムの表面粗さを制御するための技術が開示されている(特許文献2〜6)。しかし、フィルムの厚みが薄くなると、有機または無機の不活性粒子がフィルム厚みよりも大きくなり、有機または無機の不活性粒子の脱落が発生したり、不活性粒子の凝集物が発生し易かった。その結果、コンデンサー用フィルムとして用いた場合、絶縁破壊が起こりやすくなり、機能を低下させていた。また、有機または無機の不活性粒子を含有している場合、二軸延伸製膜時にはボイド(空隙)が形成され、コンデンサー製造工程時の熱プレスや熱処理等によりボイドがさらに拡大することととなり、コンデンサー誘電体として使用した場合に、フィルムに絶縁欠陥を作ってしまい、コンデンサー製造の耐電圧不良率が大きくなるなどの欠点があった。
また、ポリマーブレンドもしくはアロイにより、ポリフェニレンスルフィドフィルムの特性を改良しようとする提案もあった(特許文献7〜9)。PPSとポリエーテルイミド、PPSとポリアリレートとのブレンドが提案されている。しかしながら、単にPPSとポリエーテルイミドを二軸押出機でブレンドすることによりフィルムの耐引き裂き性を向上させるとしているが、単に2種のポリマーをブレンドしたことにより、ポリエーテルイミドの分散長径が30μm以下となるよう制御したことに留まり、電気特性やコンデンサー特性の改善については言及されていない。また、PPSとポリアリレートの単純ブレンドによりフィルムの滑り性を改善することを目的としており、分散径制御については言及されておらず電気特性やコンデンサー特性の改善については言及されていない。一方、PPSにポリエーテルイミドを相溶化させることによって、PPSフィルムのガラス転移温度を95℃以上と向上させることにより耐電圧を向上させることが提案されているが、SH性については言及されておらず、また、不活性粒子も添加しているため、チップコンデンサーのような小型の低圧コンデンサーの性能向上はガラス転移温度の上昇分耐熱温度が向上することにより図れたとしても、例えばハイブリッドカーのインバーター用コンデンサーのような高温・高電圧下で使用される大容量の捲回コンデンサーに用いる場合には性能が不十分な場合があった。
特開昭54−142275号公報 特開昭55−34968号公報 特開昭60−257510号公報 特開昭63−245442号公報 特表平2−808677号公報 特開平9−39073号公報 特開昭62−158312号公報 特開2001−261959号公報 特開平1−266146号公報
本発明の課題は、上記問題を解決するために、滑り性が良好で粗大突起や粒子脱落が無く、ボイドの発生を抑えることにより、フィルムとしたときの絶縁耐圧が高く絶縁欠陥が少なく、コンデンサー製造工程におけるフィルムの成形加工性および耐圧性に優れた信頼性の高いコンデンサーを形成しうる二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム、この金属化フィルムおよびこれを用いたコンデンサーを提供することである。より具体的には、従来PPSフィルムが多く用いられてきたチップコンデンサーのような小型コンデンサー用途だけでなく、高温・高電圧での高い信頼性が求められる高速鉄道やハイブリッドカーのインバーター用コンデンサーのような高温・高電圧下で使用される大容量の捲回コンデンサー用としても使用しうるコンデンサー用フィルム、この金属化フィルムおよびそれを用いたコンデンサーを提供することである。
上記課題を解決するため本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは主として次の構成を有する。すなわち、ポリアリーレンスルフィドと、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aを含有し、熱可塑性樹脂Aが相溶化剤により分散相を形成し、該分散相の平均分散径が100〜900nmであり、粒径が1μm以上の無機粒子または有機粒子などの不活性粒子の数が1mmに100個未満であることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。また、本発明のコンデンサーは、主として次の構成を有する。すなわち、上記二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの片側あるいは両側に金属層を蒸着してなる金属化ポリアリーレンスルフィドフィルムを巻回あるいは積層してなることを特徴とするコンデンサーである。
本発明によれば、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムが得られ、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサー用フィルムとして好適に使用することができる。さらに本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムをフィルムとして使用したコンデンサーは小型・高容量の高性能コンデンサーとして好適に使用することができる。
以下、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムおよびこれらを用いたコンデンサーについて説明する。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、かかる特性を発現させるために、ポリアリーレンスルフィドと、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aを含有し、熱可塑性樹脂Aが相溶化剤により分散相を形成し、該分散相の平均分散径が100〜900nmであり、粒径が1μm以上の無機粒子または有機粒子などの不活性粒子の数が1mmに100個未満であることを必須とする。
本発明では、ポリアリーレンスルフィドが連続相(海相あるいはマトリックス)を形成し、他の熱可塑性樹脂Aが分散相(島相あるいはドメイン)を形成し、その分散相の平均分散径の平均値は100〜900nmであることが必要である。平均分散径の平均値の好ましい範囲は150〜800nmであり、さらに好ましくは200〜700nmである。ポリアリーレンスルフィドが連続相を形成することによりポリアリーレンスルフィドの耐熱性、耐薬品性、機械特性の優れた特性がフィルムに大きく反映され、平均分散径を上記の範囲にすることにより、コンデンサーの誘電体として用いた場合に優れた耐圧性をフィルムに付与することが可能となる。
分散相の平均分散径の平均値が100nm未満であると、本発明のコンデンサーの誘電体として用いた場合にフィルムの滑り性が十分でなく、コンデンサー素子加工時にシワが生じたりして耐電圧の低下や、フィルム特性の低下が生じやすく不十分となる。また、平均分散径の平均値が900nmより大きいと粗大突起となり、コンデンサー素子作製時に層間の密着性が悪くなり、フィルムの耐圧性が悪化したり、延伸時にフィルム破れが発生しやすくなる。
ここでいう分散相の平均分散径とは、(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断した面に対して観察される分散粒子径を数平均したものである。(ア)の切断面に現れる分散相のフィルム厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)、(イ)の切断面に現れる分散相のフィルム厚さ方向の最大長さ(lc)と幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる分散相のフィルム長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求め、分散相の形状指数I=(lbの数平均値+leの数平均値)/2、形状指数J=(ldの数平均値+lfの数平均値)/2、形状指数K=(laの数平均値+lcの数平均値)/2とし、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とする。
測定は、サンプルを超薄切片法で作製し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、必要に応じて、画像処理を行うことにより、任意の100個の分散粒子の平均分散径を計算する。
熱可塑性樹脂Aの分散相の形状は、球状もしくは細長い島状、小判状、あるいは繊維状であることが好ましい。分散相のアスペクト比は、1〜20の範囲であることが好ましい。さらに好ましい分散相のアスペクト比の範囲は1〜10であり、より好ましい範囲は1〜5である。これら島成分のアスペクト比を上記範囲にすることにより、引張伸度の向上した二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを得やすいので好ましい。ここで、アスペクト比は、分散相の平均長径/平均短径の比を意味するものである。該アスペクト比は、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの手法を用いて測定することができる。例えば、サンプルを超薄切片法で作製し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影して、得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、画像処理を行うことにより、アスペクト比を計算することができる。
本発明では、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム中において、粒径が1μm以上の無機粒子または有機粒子などの不活性粒子の数が1mmに100個未満であることが必要である。無機粒子または有機粒子などの不活性粒子の数の好ましい範囲は1mmに80個以下であり、さらに好ましくは1mmに50個以下である。
フィルムに滑り性を付与したり、加工適性を向上させるために、通常、粒子として、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナやジルコニアなどの無機粒子やシリコン粒子、架橋アクリル粒子や架橋ポリスチレン粒子などの有機粒子などの不活性粒子を含有させているが、無機粒子または有機粒子などの不活性粒子は、粗大突起となったり、フィルム厚みが薄いと粒子が脱落しやすくなり、耐圧性が不十分となることから、本発明では、無機粒子または有機粒子などの不活性粒子を含まないことが必要である。また、1mmに100個以上であると、製膜の安定性に劣る場合があったり、コンデンサー使用中にフィルムから粒子脱落が起こり、絶縁欠点が生じコンデンサーとしての信頼性を損なう場合がある。
そのため、実質的に無機粒子または有機粒子などの不活性粒子を添加せず、1μmカットのフィルターを用いて粗大異物を除去し、熱可塑性樹脂Aの分散状態を制御したり、添加量により表面に微細な突起構造を形成し製膜することが、フィルムの耐圧性を向上させ、かつ滑り性を付与するために重要である。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、レーザーラマン分光により得られる長手方向と幅方向の配向度がそれぞれ1.0〜3.0の範囲であることが好ましい。ポリアリーレンスルフィドフィルムが二軸配向であることは、このようにレーザーラマン分光により得られる長手方向と幅方向の配向度がそれぞれ上記範囲にあることなどにより判別できる。配向度のより好ましい範囲は1.0〜2.5であり、さらに好ましい範囲は1.0〜2.3である。レーザーラマン分光による配向度は、分子配向や結晶量を反映する。配向度が3.0を超えると、分子鎖配向が進み過ぎたり、結晶化が進行しすぎたりして、引張破断伸度が小さくなり、フィルムの加工時や使用時に破損したり、実用上使用に耐えないことがあったりすることがある。ポリアリーレンスルフィドフィルムのレーザーラマン分光による配向度は、例えば、縦延伸における延伸温度や延伸倍率、横延伸前の予熱温度、横延伸における延伸温度や延伸倍率、さらに、延伸後の熱固定温度を本発明の好ましい範囲にすることにより、本発明の範囲にすることができる。
二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムにおいて、ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aの含有量の和を100重量部としたときにポリアリーレンスルフィドの含有量が70〜99重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が1〜30重量部であることが好ましく、ポリアリーレンスルフィドの含有量が80〜98重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が2〜20重量部であることがより好ましく、ポリアリーレンスルフィドの含有量が90〜97重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が3〜10重量部であることがさらに好ましい。ポリアリーレンスルフィドとは異なる熱可塑性樹脂Aの含有量が30重量部を越えると、二軸配向ポリアリーレンスルフィドの耐熱性、機械特性、電気特性が損なわれる場合があり、また延伸性が悪く製膜性に劣る場合がある。熱可塑性樹脂Aの含有量が1重量部未満であると、優れた平面特性やコンデンサーの誘電体として用いた場合のSH性を付与することが困難となる。
本発明でいうポリアリーレンスルフィドとは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマ−あるいはコポリマ−である。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される構成単位などが挙げられる。
Figure 2008201926
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示され、ポリマーの主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上含む樹脂である。かかるp−フェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性および誘電特性などを損なうことがある。
Figure 2008201926
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記の構造単位を挙げることができる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
Figure 2008201926
実質的にp−フェニレンスルフィドのみからなるPPS、もしくは3官能成分が1モル%以下添加され99モル%以上がp−フェニレンスルフィドからなるPPSがフィルム原料としてコスト、製膜性、特に高温でのフィルム性能などの観点から最も好ましい。なお、この場合、得られるPPS樹脂の融点は280〜290℃、ガラス転移温度は90〜95℃に観察される。
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度315℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜2000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。
本発明でいうPPSは種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明において、得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
次に、PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では特にこれに限定されない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸もしくは酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10torr以下、好ましくは5torr以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5torr以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマーは、実質的に線状のPPSポリマーであるので、安定した延伸製膜が可能になる。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気や酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は、通常170〜280℃が選択され、より好ましくは200〜270℃であり、また、加熱処理時間は、通常0.5〜100時間が選択され、より好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率よくしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。本発明で用いるPPS樹脂は、引張破断伸度の向上の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理もしくは脱金属成分処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。脱イオン処理もしくは脱金属成分処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、有機溶剤洗浄処理、およびエントレーナー処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであれば特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中で、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムが特に好ましく用いられる。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度について特に制限はなく、常温〜300℃の範囲で任意の温度を選択することができる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱し攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の方が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸やジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸やクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸やサリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸およびフマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸および珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸と塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いられる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。酸水溶液洗浄処理を施すと、PPS樹脂の酸末端成分が増加して、他の熱可塑性樹脂Aと混合する場合に分散混合性が高まり、分散相の平均分散径が小さくなる効果が得られやすくなるので好ましい。また、酸水溶液洗浄処理により、PPS中の金属量が減少し、特に高温・高電圧下での電気絶縁性を向上させることができるので好ましい。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに含有されるポリアリーレンスルフィドとは異なる熱可塑性樹脂Aとしては、例えば、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン等の各種ポリマーおよびこれらのポリマーの少なくとも一種を含むブレンド物を用いることができる。熱可塑性樹脂Aは、そのガラス転移温度Tgが150℃以上かつポリアリーレンスルフィドの融点(Tm)以下の非晶性樹脂であることが好ましく、170℃以上(Tm−20)℃以下の非晶性樹脂であることが更に好ましく、180℃以上(Tm−50)℃以下の非晶性樹脂であることが最も好ましい。熱可塑性樹脂AのTgが150℃未満の場合、本フィルムをコンデンサー誘電体として用いる場合の耐熱性や電気特性向上の効果が得られにくい場合がある。また、熱可塑性樹脂AのTgがポリアリーレンスルフィドの融点(Tm)以上の場合や、熱可塑性樹脂がフィルム中で結晶性を示す場合、コンデンサー誘電体として用いる場合のSH性に劣る場合がある。
熱可塑性樹脂Aは、ポリアリーレンスルフィドの混合性および本発明の効果発現の観点から、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれるポリマーもしくは少なくとも1種を含むブレンド物であることが好ましく、特にポリエーテルイミドの場合にポリアリーレンスルフィドへの分散性に優れ、不純物や金属成分量が少ないためか二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムとした場合に電気特性に優れており好ましい。
ポリエーテルイミドは、特に限定されないが、例えば、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有する構造単位であるポリマーを好ましく挙げることができる。
Figure 2008201926
ただし、上記式中R1は、2〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族基、脂環族基からなる群より選択された2価の有機基であり、R2は、前記Rと同様の2価の有機基である。上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族基
Figure 2008201926
を挙げることができる。
本発明で最も好ましいポリアリーレンスルフィド樹脂は、上記の通りp−フェニレンスルフィドからなるPPS、もしくは3官能成分が1モル%以下添加され99モル%以上がp−フェニレンスルフィドからなるPPS樹脂であり、通常その融点は280〜290℃であり、本発明では、ガラス転移温度がポリアリーレンスルフィドの融点(Tm)以下であることが好ましいことから280℃以下、より好ましくは260℃以下のポリエーテルイミドを用いると本発明の効果が得やすく、ポリアリーレンスルフィドとの相溶性、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
Figure 2008201926
この構造単位を有するポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。例えば、m−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(前者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム1000”および“ウルテム1010”が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(後者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテムCRS5000”が挙げられる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに含まれる熱可塑性樹脂Aとして用いられる他の例として、分子骨格にスルホン基を含むポリスルホンやポリエーテルスルホンが挙げられる。ポリスルホンやポリエーテルスルホンは、公知のものを種々使用することができる。ポリアリーレンスルフィドとの混合性の観点から、ポリエーテルスルホンの末端基として、塩素原子、アルコキシ基あるいはフェノール性水酸基が挙げられる。また、熱可塑性樹脂Aとして、ポリアリーレンスルフィドと分子構造が近似するポリフェニレンエーテルやポリアリレートなども好ましく例示される。
本発明において、ポリアリーレンスルフィドと他の熱可塑性樹脂Aを混合する時期は、特に限定されないが、溶融押出前に、ポリアリーレンスルフィドとその他の熱可塑性樹脂Aの混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。中でも、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。特に、溶融押出前に、それぞれの樹脂の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示され、その場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの重量分率が99/1〜70/30のブレンド原料を作成することが好ましい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく、混練部ではPPS樹脂の融点+5〜55℃の樹脂温度範囲が好ましい。さらに好ましい温度範囲はPPS樹脂の融点+10〜45℃であり、より好ましい温度範囲はPPS樹脂の融点+10〜35℃である。混練部の温度範囲を好ましい範囲にすることは、せん断応力を高めやすく、分散不良物も低減できる効果が高くなり、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることは好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー形状にする。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂のエントレーナー処理の具体的方法としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂もしくはポリアリーレンスルフィドを含む樹脂組成物を溶融押出する際に、樹脂組成物に対して不活性な媒体を押出機にフィードして、溶融混練後に該押出機のベントから吸引することにより、媒体と合わせて金属や金属塩成分などの不純物を回収し、ポリアリーレンスルフィド樹脂中もしくはポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中のイオン・金属成分を削減させる。ポリアリーレンスルフィドに対して不活性な媒体としては前述の有機溶媒洗浄処理での有機溶媒や超臨界炭酸ガスなどが挙げられる。樹脂組成物に対して不活性な媒体としては、熱可塑性樹脂Aを分解するなどの作用を持たない媒体を適宜選ぶことができ、たとえば熱可塑性樹脂Aがポリエーテルイミドの場合は、エチレングリコールやプロピレングリコールなどが挙げられる。本処理に用いる押出機としては樹脂成分と媒体の接触機会を高めイオンもしくは金属成分を媒体中に分散させやすくするため混練能力の高い二軸押出機を用いることが好ましい。
本発明においては、熱可塑性樹脂Aドメインの分散径を制御するために、相溶化剤として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の基を有する化合物をポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの合計100重量部に対し、0.1〜5重量部添加することが好ましい。より好ましくは0.2〜3重量部添加することであり、さらに好ましくは0.3〜2重量部添加することである。相溶化剤の添加量が0.1重量部未満であると、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの相溶性が不良となり、本発明の効果が得られにくかったりすることがある。また、相溶化剤の添加量が5重量部を超えると、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの反応性が高まりすぎて、溶融粘度が増加してフィルム押出成形がしにくくなったりすることがある。
かかる相溶化剤の具体例としては、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2.2.5.5.−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの替わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたもの、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。またその他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノール類としては特に制限はないがフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに用いられる相溶化剤の最も好ましい例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。中でも、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を用いると、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの分散相の平均分散径を本発明の好ましい範囲に制御しやすくなる。
エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランを用いた場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの間にシロキサン結合を形成しやすく、分散相の界面近傍にシロキサン結合が存在しやすい。TEM−EDX法などを用いて分散相の界面近傍にシリコン原子を検出することができる。本発明では、熱可塑性樹脂Aからなる分散相の界面にシロキサン結合に起因するシリコン(Si)原子を含むことが好ましい。
なお、本発明のフィルム中には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤防錆剤などを添加してもかまわない。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、これにポリアリーレンスルフィドやその他のポリマー層、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデンまたはアクリル系ポリマーからなる層を直接、あるいは接着剤などの層を介して、さらに積層させて用いてもよい。
また、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コ−ティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの厚さは、用途等により異なるが500μm以下が好ましい。コンデンサー用途の場合は、0.5〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。
また、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムのTgが85℃未満の場合は、フィルムの耐熱性が低くなる。また、Tgが95℃以上130℃以下に観測される場合は、フィルムをコンデンサーの誘電体として用いる場合にSH性が不十分となる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは摩擦係数が0.2以上0.9以下であることが好ましい。より好ましくは0.3以上0.85以下、さらに好ましくは0.4以上0.8未満である。摩擦係数が0.2未満の場合、フィルムに十分な滑り性を付与することが出来ず、フィルム製膜時に巻き皺が発生したり、捲回コンデンサーを製造する際に皺が発生し、加工が困難となる。他方、摩擦係数が0.9を超える場合、表面の荒れが大きく、フィルムの表面にアルミニウム、亜鉛等の蒸着膜を形成させた際、蒸着膜厚みムラが生じたり、捲回コンデンサーとしたときフィルム間に空気介在が生じ、電気特性の不安定化、耐電圧の低下を招いたり、また使用時に電界集中が発生したり、フィルムおよび金属薄膜層の溶失または焼失が起こり、コンデンサー用フィルムとして使用した場合にコンデンサーの高性能化が困難となる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは中心線平均粗さRaが20nm以上200nm以下であることが好ましい。より好ましくは30nm以上150nm以下、さらに好ましくは40nm以上100nm以下である。また、最大高さRmaxが1000nm以下であることが好ましい。より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。Raが20nm未満の場合、フィルムに十分な滑り性を付与することが出来ず、フィルム製膜時に巻き皺が発生したり、捲回コンデンサーを製造する際に皺が発生し、加工が困難となる。他方、Raが200nmより大きい場合やRmaxが1000nmより大きい場合、表面の荒れが大きく、フィルムの表面にアルミニウム、亜鉛等の蒸着膜を形成させた際、蒸着膜厚みムラが生じたり、捲回コンデンサーとしたときフィルム間に空気介在が生じ、電気特性の不安定化、耐電圧の低下を招いたり、また使用時に電界集中が発生したり、フィルムおよび金属薄膜層の溶失または焼失が起こり、コンデンサー用フィルムとして使用した場合にコンデンサーの高性能化が困難となる場合がある。Rmaxの下限は特に制限されないが、適度な滑り性を付与する観点から30nmとするものである。
本発明では、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの150℃の絶縁破壊電圧が300V/μm以上であることが好ましく、より好ましくは400V/μm以上である。150℃の絶縁破壊抵抗が300V/μm未満であると、本フィルムを用いてコンデンサーを製造する場合、フィルムのガラス転移温度以上、即ち95℃以上の高温でのコンデンサーの高温での耐電圧が低くなりコンデンサーの熱安定性が不十分となる場合がある。二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム耐電圧の上限は特に設けないが、1000V/μm以上となる場合には、コンデンサーとした場合にSH性が機能せず貫通破壊に至る場合がある。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、コンデンサー用誘電体、モーター、トランスなどの電気絶縁材料や成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料、振動板などに用いられる。特に、高温での電気絶縁性能に優れているため、コンデンサー、電気絶縁材料、回路基板などに好ましく用いることができる。更にコンデンサー誘電体として用いるとSH性に優れているため、安全性が高く耐熱性に優れたコンデンサーとする事ができ好ましい。
次いで、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィドとしてポリ−p−フェニレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aとしてジーイープラスチック社製のポリエーテルイミド“ウルテム1010”からなる二軸配向ポリフェニレンフィドフィルムの製造を例にとって説明する。もちろん、本発明は、下記の記載に限定されない。
ポリフェニレンスルフィド(PPS)とポリエーテルイミド(PEI)を混合する場合、溶融押出前に、それぞれの樹脂の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示される。
本発明では、まず、上記PPSとPEIを二軸混練押出機に投入し、PPSとPEIの重量分率が99/1〜70/30のブレンド原料を作成することが好ましい。ブレンド原料の樹脂組成物の混合・混錬方法は、特に限定されることはなく各種混合・混錬手段が用いられる。例えば、各々別々に溶融押出機に供給して混合してもよいし、また、予め紛体原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダーあるいはタンブラー等の混合機を利用して乾式予備混合し、その後、溶融混錬機にて溶融混練することでもよい。その後、前記ブレンド原料を必要に応じてPPS、これらの回収原料と共に押出機に投入して、目的とする組成としたものを原料とすることが、フィルムの品質と製膜性の観点で好ましい。また、塵埃または添加物の凝集物など粗大異物を除去する目的で押出機とスリットダイとの間に濾過精度が1μm以下の瀘過装置を設けることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。
瀘過装置として用いるフィルターは、金属繊維および/または金属粉末を焼結したメディアより構成される。特に金属繊維層は多層積層された方が濾過精度、濾過能力の点で好ましい。さらに、濾過時に発生する圧力を受ける層を兼ねて強度的に強い金属粉末焼結層を用いると好ましい。更にメディアを保護するために下流側及び/または上流側に目開きの大きい金網で覆うと好ましいがこの限りでない。
これらメディアの空隙率は、40〜90%であることが好ましい。より好ましくは50〜85%、さらに好ましくは60〜80%である。40%未満では有効な濾過が出来難くなり、また90%を越えるとメディアが濾過圧に耐えきれなくなるので好ましくない。また、各メディアの目付け量は500〜8000g/mが好ましい。500g/m未満では有効な濾過が出来難くなり、8000g/m2 を越えると異物が詰まり易くなり、フィルターの寿命が速くなるので好ましくない。ここで目付け量とはメディアを構成している材料の単位濾過面積当たりの重量である。
また、金属繊維を積層したメディアに、熱可塑性樹脂が通過する下流側および/または上流側に金属粉末を焼結したメディアを積層してもよい。メディアの積層は、単体のメディアをそれぞれ焼結後に積層しても、単体のメディアを構成する金属繊維および/または金属粉末を仮に不織布層として構成した後に一体焼結してもよい。ここで焼結とは、その物質の融点よりも低い温度で粒子を結合させたものであって、その特徴は例えば「金属便覧(社団法人日本金属学会編)」に詳述されている通りである。
濾過精度は金属繊維および/または金属粉末同士の間隙及び熱可塑性樹脂が通過する長さで決まるが、本発明では1μm以下、より好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.5μ以下の濾過精度のフィルターを適宜選択する。ここで濾過精度とは、JIS−B8356に規定された方法によりフィルターメディアを透過する捕集効率95%のコンタミナント粒径のことをいう。
また、本発明で用いるフィルターメディアの金属としては、ステンレス、ブロンズ、銅、ニッケル合金などを用いることができるが、熱可塑性樹脂との活性の問題、再生再使用の観点からステンレス製とするのが好ましい。ステンレスの中でもSUS304、SUS316、SUS316L、SUS410、SUS430等が好適であるがこれに限定しない。
その後、得られた樹脂をスリットダイから溶融吐出させ急冷して非晶シ−トに成形し、次いで、未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。次いで、延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定した後に巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
上記の好ましい二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造法のより具体的な条件を以下に述べる。
まず、PPSのペレットまたは顆粒とPEIのペレットとを、一定の割合で混合して、ベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いることが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、混練部では290〜350℃の樹脂温度範囲であることが好ましく、さらに好ましい温度範囲は295〜330℃である。混練部の樹脂温度範囲を好ましい範囲にすることは、せん断応力を高めやすく、分散不良物も低減できる効果が高くなり、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることは好ましく、その混練部を2箇所以上設けて、各混練部の間を通常のフィードスクリューとしたスクリュー形状にすることはさらに好ましい。
PPSとPEIを混合する上で、PPSとPEIの混合組成物あるいは相溶化剤が添加されると、分散不良物が低減できて相溶性が高まる。
その後、上記ペレタイズ作業により得られた、PPSとPEIからなるブレンドチップ、必要に応じてPPSや製膜後の回収原料や粒子を混合した原料を一定の割合で適宜混合して、180℃で3時間以上10mmHg以下の減圧で乾燥した後、300〜350℃の温度、好ましくは320〜340℃に加熱された押出機に投入する。その後、押出機を経た溶融ポリマーをフィルターに通過させた後、その溶融ポリマーをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
次いで、未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。
未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを加熱ロール群で加熱し、延伸倍率は電気特性向上させる観点から長手方向(MD方向)に2.5〜5倍、好ましくは2.7〜4.5倍、さらに好ましくは3.0〜4.0倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(PPSのガラス転移温度)〜(Tg+50)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+40)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+60)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+10)〜(Tg+40)℃の範囲である。延伸倍率は電気特性向上させる観点から3.5〜5倍、好ましくは3.7〜4.7倍、さらに好ましくは3.9〜4.5倍の範囲である。
次に、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。好ましい熱固定温度は、230〜275℃、より好ましくは240〜270℃、さらに好ましくは245〜265℃の範囲である。熱固定時間は0.2〜30秒の範囲で行うことが好ましい。さらにこのフィルムを40〜180℃の温度ゾーンで幅方向に緊張下または幅方向に弛緩しながら冷却する。弛緩率は、0〜10%であることが好ましく、より好ましくは1〜9%、さらに好ましくは2〜8%の範囲である。
さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
本発明の金属化フィルムは、かかる二軸配向フィルムの少なくとも片面に金属層を形成したものであって、たとえば真空蒸着やスパッタリング法等の方法で金属薄膜を形成せしめたものを使用することができる。かかる金属としては、アルミニウム、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、或いはそれらの合金などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明のフィルムコンデンサーは、捲回法または積層法等の公知の方法で製造することができる。かかるコンデンサーの導電体としては、上記金属化フィルムを使用することができる。
次に本発明のコンデンサーの製造方法について述べる。コンデンサーの内部電極として金属箔が用いられる場合は金属箔と本発明の積層フィルムを箔はみだし捲回法や捲回途中でタブを挿入する方法などによって交互に重ね合わせて巻き取るなどして誘電体と電極を交互に重ね合わされ、かつ外部に電極が引き出せるような構造となるように捲回してコンデンサー素子あるいはコンデンサー母素子を得る。
また、コンデンサーの内部電極として金属薄膜が用いられる場合は、まず上述した本発明のフィルムを金属化する。金属化の方法は蒸着による方法が好ましい。蒸着する金属はアルミニウムを主たる成分とする金属が好ましい。金属化する際、予め金属化する側のフィルム表面にコロナ放電処理、プラズマ処理などの処理によって金属薄膜とフィルムとの密着力を向上させることもできる。金属化する際、あるいは金属化後に対向電極が短絡しないようにテープマスク、オイルマージン、あるいはレーザービーム等により非金属化部分(いわゆるマージン)を設けるのが常法であるが全面に蒸着した後に放電、レーザー光線などを用いて非金属化帯を設けることもできる。その後、一方の端にマージン部分がくるように細幅のテープ状にスリットすることもある。
次にコンデンサー素子を製造する。捲回型コンデンサーを得る場合は、金属化フィルムを一方の端にマージン部分がくるように細幅のテープ状にスリットして2枚重ねて、あるいは両面金属化フィルムと非金属化フィルムを重ねて個々の素子を個別に巻いていくのが常法である。また、両面金属化フィルムにコーテイング法などで第2の誘電体を設けた1枚の複合フィルムを捲回する方法もある。
積層型コンデンサーの場合は大径のドラム、あるいは平板に捲回してコンデンサー母素子を得る。 捲回型コンデンサーを製造する場合は、上記のようにして得たコンデンサー母素子をプレス成形するのが一般的である。このとき、100℃以上フィルムの融点以下の温度に加熱することもできる。その後、外部電極の取り付け工程(金属溶射、導電性樹脂等による)、必要なら樹脂または油含浸工程、リード付きタイプのコンデンサーとするときはリード線の取り付け工程、外装工程を経てコンデンサーを得ることができる。
積層型コンデンサーの場合は、大径のドラム、あるいは平板に捲回した母素子を熱処理する、あるいはリング等で締め付ける、あるいは平行平板等でプレスするなどフィルムの厚さ方向に圧力を加えて成形する。その際の温度範囲は常温からフィルムの融点以下である。この後、外部電極の取り付け工程(金属溶射、導電性樹脂による)、個々の素子切り出し工程、必要なら樹脂または油含浸工程を経てコンデンサーを得ることができる。
また、本発明のコンデンサーの形状は上記いずれであっても良い。また、本発明のコンデンサーは交流および直流のいずれの用途にも展開可能である。
本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)分散相の平均分散径、アスペクト比
フィルムを(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断し、サンプルを超薄切片法で作成した。分散相のコントラストを明確にするために、オスミウム酸やルテニウム酸、リンタングステン酸などで染色してもよい。熱可塑性樹脂Aがポリアミドの場合では、リンタングステン酸による染色を用いる。切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、次に示すようにしてそれぞれの分散相の大きさを求めた。(ア)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)、(イ)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚さ方向の最大長さ(lc)と幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる各分散相のフィルム長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求めた。次いで、分散相の形状指数I=(lbの平均値+leの平均値)/2、形状指数J=(ldの平均値+lfの平均値)/2、形状指数K=(laの平均値+lcの平均値)/2とした場合、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とした。さらに、I、J、Kの中から、最大値を平均長径Lと最小値を平均短径Dを決定し、分散相のアスペクト比をL/Dとした。
(2)フィルム中の無機または有機不活性粒子の形状
フィルムを幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向に切断し、サンプルを超薄切片法で作成した。分散相とのコントラストを明確にするために、オスミウム酸やルテニウム酸、リンタングステン酸などで染色してもよい。熱可塑性樹脂Aがポリアミドの場合では、リンタングステン酸による染色を用いる。切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、3000倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、不活性粒子等があった場合、その最大辺長を求めた。粒子の辺長とは直方体をなす各面の境界をなす辺(稜線)の長さである。粒子の最大辺長が1μm以上の個数をカウントした。幅方向へ300視野を観察し、以下の基準に換算し判断した。×が不合格である。
○:1mmに10個未満
△:1mmに10個以上100個未満
×:1mmに100個以上
(3)フィルムのガラス転移温度および融点
JIS K7121に準じて測定した。示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上350℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。なお、ガラス転移温度(Tg)は下記式により算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(4)フィルムの絶縁破壊電圧
JIS C−2151に規定された方法に準じて、環境温度150℃の条件で測定した。測定は、陰極に厚さ100μm、10cm角のアルミ箔電極、陽極に、径25mm、重さ500gの真鍮製の電極を用い、この間にフィルムを挟み、春日製高電圧直流電源を用いて100V/秒の速度で昇圧し、10mA以上流れたときに絶縁破壊したと見なした。この測定を30回測定した値の平均値をフィルムの耐電圧とした。
(5)中心線平均粗さRa、最大高さRmax、突起個数
原子間力顕微鏡を用いて、下記の条件で場所を変えて20視野測定を行った。得られた画像について、三次元面粗さ(Roughness Analysis)を算出し、中心線平均粗さRa、最大突起高さRmaxを測定した。条件は下記のとおりであり、突起高さのしきい値を、50nmに設定してしきい値以上の高さを有する突起の個数を求め、計測した。
測定装置 :NanoScope III AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :50μm
走査速度 :0.5Hz
Peak Thresh ref(しきい値の基準): ZERO
Peak Threshold(ピーク高さのしきい値):50nm
(6)摩擦係数
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999)に準じて、25℃、65%RHにて測定した。なお、測定はフィルムの異なる面同士を重ねて行った。同じ測定を各サンプル毎に3回行い、得られた値の平均値を算出し、当該サンプルの摩擦係数とした。
(7)レーザーラマン分光による配向度
レーザーラマン散乱法による顕微ラマンの測定条件は、次の通りである。
レーザーラマン装置: PDP320(フォトンデザイン社製)
マイクロプロ−ブ : 対物レンズ x100
クロススリット :1mm
スポット径:1μm
光源 : Nd−YAG(波長1064nm、出力:1W)
回折格子: Spectrograph 300g/mm
スリット: 100μm
検出器 : InGaAs(Roper Scientific512)
測定に用いるフィルムは、サンプリングしてエポキシ樹脂に包理後、ミクロトームでフィルム断面を出した。フィルム断面がフィルム長手方向または幅方向に平行なものを調整し、各試料の中央点を測定点として、長手方向および幅方向のそれぞれに対して5個の試料を測定して平均値をとった。測定は、フィルム面に平行な長手方向または幅方向の偏光での1570cm−1のラマンピ−ク強度(I)とフィルム面に垂直方向における偏光での740cm−1のラマンピ−ク強度(IND)の比I/INDを求めて、ポリアリーレンスルフィドフィルムの配向パラメーターとした。
(8)コンデンサー特性
(a)コンデンサーの作成
フィルムの片面に表面抵抗値が10Ωとなるようにアルミニウムを蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着した(蒸着部の幅80mm、マージン部の幅10mmの繰り返し)。この蒸着フィルムの各蒸着部中央とマージン部の中央に刃を入れてスリットし、左もしくは右に5mmマージン部を有する全幅45mmのテープ状にして巻き取った。得られたテープを左マージンおよび右マージンのもの各1枚づつ重ね合わせ捲回し、静電容量5μFの捲回体を得た。その際、幅方向に蒸着部がマージン部より5mmはみ出すように2枚のフィルムをずらして捲回した。これらの捲回体から芯材を抜いて、そのまま200℃、25kg/cm2の温度、圧力で5分間プレスした。さらに両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接してコンデンサー素子を得た。得られた素子を220℃で2時間熱処理した後、粉体エポキシ樹脂による外装を施し(平均外装厚み0.5mm)、コンデンサーを作成した。
(b)直流耐電圧の評価(ステップアップ直流絶縁破壊電圧テスト)
予め150℃に加熱したオーブン(TABAI ESPEC社製PR−4S)にコンデンサー素子を2時間投入しておき、2KV電源(ハイデン研究所製:型式HD2K2P−PS)にコンデンサー素子のリード線を接続し、常温でスタート電圧:400Vで100V毎ステップアップを行い各ステップが終了毎にLCRメーター(安藤電気株式会社製TYPE AG−4311)で1VAC×1kHzを課電し容量を測定した。また、各ステップでの保持時間は10分とした。
フィルム各水準に対しコンデンサー素子12個でテストを行い、電圧印加前の容量に対し、容量が10%以上低下する直前のステップの印加電圧値の平均値を直流耐電圧とした。
(c)セルフヒール性(SH性)の評価
上記直流耐電圧評価において、容量が10%以上低下した直後のステップにおいて絶縁破壊を起こしているコンデンサー素子をSH性不良とし、不良率(%)を以下の基準により判断した。○が合格である。
○:不良率10%未満
△:不良率10%以上50%未満
×:不良率50%以上
(参考例1)ポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS)の重合
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5重量%水硫化ナトリウム8,267.37g(70.00モル)、96重量%水酸化ナトリウム2,957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11,434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2,583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10,500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14,780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10,235.46g(69.63モル)、NMP9,009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1,260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26,300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31,900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56,000gのイオン交換水で3回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70,000gで洗浄、濾別した。70,000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1,000/s)であり、ガラス転移温度が93℃、融点が285℃であった。
(参考例2)無粒子チップの作成
参考例1で作成したPPS樹脂を、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして無粒子チップを作製した。
(参考例3)粒子マスターチップの作製
平均粒径1.0μmの球状のカルサイト型炭酸カルシウムをエチレングリコール中に50重量%微分散させたスラリーを調製した後、表面処理剤としてポリメタクリル酸アンモニウム塩を2.0重量%添加した。このスラリーを5μmカットフィルターで濾過した後、参考例1で作成したPPS樹脂にヘンシェルミキサーを用いて炭酸カルシウムが7.1重量%となるよう混合した。次いで、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機に供給し、溶融混練と同時にベント孔よりエチレングリコールを除去し、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして粒子マスターチップを作製した。
(実施例1)
参考例1で作成したPPS樹脂を180℃で3時間1mmHgの減圧下で乾燥し、熱可塑性樹脂Aとしてポリエーテルイミド(ジーイープラスチックス社製 “ウルテム1010”)(PEI)を120℃で3時間1mmHgの減圧下で別々に乾燥した。上記PPS樹脂65.0重量部とPEI35.0重量部にさらに、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、”KBE9007”)2.8重量部とエントレーナーである水20重量部を添加して窒素気流で酸素が実質上ない、酸素分圧1トール以下の状態で、二軸押出し機ホッパーに供給して、ニーディングパドル混練部を3箇所設けたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、該押出機のベントポートから1トール程度に減圧してエントレーナーのエチレングリコールを除去しながら、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出し、てストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。
得られたPPS/PEI(65.0/35.0重量部)のブレンドチップ原料30重量部と参考例2で作成したPPS樹脂70重量部を180℃で7時間1mmHgの減圧下で乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に供給した。
次いで押出機で溶融押出したポリマーを温度320℃に設定した濾過精度1μmのフィルター濾材(日本精線製、NF−01)を用いて濾過し、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
この未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、フィルム温度102℃でフィルムの縦方向に3.6倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度103℃、延伸倍率3.7倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて温度260℃で8秒間の熱処理を行った後、横方向に6%弛緩処理を行った。その後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、巻き取り、厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性を表1に示す。この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは、耐電圧に優れ、高温での絶縁特性およびコンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例2)
熱可塑性樹脂AのPEIの添加量を表1に示した通り変更し、縦延伸をフィルム温度107℃で3.5倍延伸、横延伸を109℃で3.7倍延伸とした以外は、実施例1と同様にして厚み3.6μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。ガラス転移温度が98℃であった。製膜安定性がやや劣り、破れやすいフィルムであった。また、耐電圧がやや低めであるが、実使用上問題ないレベルであった。
(実施例3)
γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、”KBE9007”)の添加量を5.6重量部とした以外は、実施例1と同様にして厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。フィルム表面は粗かったが、実使用上問題なく、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例4)
熱可塑性樹脂AのPEIの添加量を表1に示した通り変更し、縦延伸をフィルム温度101℃で3.6倍延伸、横延伸を102℃で3.7倍延伸とした以外は、実施例1と同様にして厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。摩擦係数が小さく、巻取時にシワの入りやすいフィルムであった。また、耐電圧がやや低めであるが、実使用上問題ないレベルであった。
(実施例5)
熱可塑性樹脂Aとしてポリフェニレンエーテル(三菱ガス化学社製 YPX−100A)(PPE)を用いる以外は、実施例1と同様にして厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。耐電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例6)
熱可塑性樹脂Aとしてポリエーテルスルホン(アモコ社製 “RADEL”A−200A)(PES)を用いる以外は、実施例1と同様にして厚み3.7μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。耐電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例7)
熱可塑性樹脂Aとしてポリアリレート(ユニチカ社製 “Uポリマー”U100)(PAR)を用いる以外は、実施例1と同様にして厚み3.6μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。耐電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例8)
Tダイ前のフィルターを濾過精度が8μmのフィルターに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。コンデンサー特性として良好なものであった。
(実施例9)
エントレーナーである水を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。フィルム表面は粗く、変ポリなどのあるフィルムであった。
(比較例1)
参考例1で作成したPPS樹脂を、180℃で7時間1mmHgの減圧下で乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給した。
次いで、押出機にて溶融したポリマーを温度320℃に設定した濾過精度8μmのフィルターで濾過した後、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出し、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。得られた未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを、実施例1と同様にして厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムには、1μm以上の異物があり、また、巻き取っている時にシワが入ってしまい巻き取りにくいフィルムであった。
(比較例2)
相溶化剤であるγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、厚み3.6μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。ポリエーテルイミドの分散径が大きく、本コンデンサーの耐電圧は他の実施例・比較例と比較して低かった。
(比較例3)
参考例2で作成したPPS樹脂の代わりに、参考例3で作成した粒子マスターチップ70重量部を添加し、濾過精度8μmのフィルターで濾過した以外は、実施例1と同様にして、厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。炭酸カルシウムの周りにボイドが出来、本コンデンサーの耐電圧は他の実施例・比較例と比較して低かった。
Figure 2008201926
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することであり、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサー用フィルムとして好適に使用することができる。さらに本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムはフィルムを使用したコンデンサーは小型・高容量の高性能コンデンサーとして好適に使用することができる。

Claims (11)

  1. ポリアリーレンスルフィドと、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aを含有し、熱可塑性樹脂Aが相溶化剤により分散相を形成し、該分散相の平均分散径が100〜900nmであり、粒径が1μm以上の不活性粒子の数が1mmに100個未満であることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの含有量の和を100重量部としたときに、ポリアリーレンスルフィドの含有量が70〜99重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が1〜30重量部である請求項1に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  3. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである請求項1または2に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. 熱可塑性樹脂Aがポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  5. 相溶化剤が、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの含有量の和100重量部に対して、0.05〜3重量部含む原材料を混練してなる請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  6. 該フィルムの中心線平均粗さRaが20nm以上200nm以下、最大高さRmaxが1000nm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  7. 該フィルムの摩擦係数が0.2以上0.9以下である請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  8. 該フィルムのガラス転移温度が95℃未満である請求項1〜7のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
  9. 請求項1に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法であって、積層された金属繊維および/または金属粉末を焼結した濾材からなる濾過精度が1.0μm以下の濾過フィルターを用いて濾過した後に製膜することを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの製造方法。
  10. 請求項1に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂と水、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、トリエチレングリコールから選ばれるエントレーナーを二軸ベント式押出機に供給し、エントレーナーを除去した後に、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶融押出することを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの製造方法。
  11. 請求項1に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの片側あるいは両側に金属層を蒸着してなる金属化ポリアリーレンスルフィドフィルムを巻回あるいは積層してなることを特徴とするコンデンサー。
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