JP2008202127A - 二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムおよびそれからなる積層体 - Google Patents

二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムおよびそれからなる積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】 高温における寸法安定性に優れ、かつ、金属系酸化物の耐クラック性に優れた高品質の複合フィルムを提供することにあり、特にモーター、トランスなどの電気絶縁材料や成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料などに好適である複合フィルムを提供すること。
【解決手段】 少なくとも片面に金属系酸化物を含む層(M層)を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムであって、M層表面の表面抵抗率が1×103〜1×1013Ωであり、長手方向および幅方向の温度60〜160℃における熱膨張係数がいずれも0〜40ppm/%RHの範囲内である二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐熱性、耐湿熱性、電気特性、耐薬品性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムと金属系酸化物からなる複合フィルムに関し、高温における熱膨張を抑制した寸法安定性に優れており、かつ、金属系酸化物からなる層のクラックなどの発生が少ない複合フィルムに関するものである。当該複合フィルムは、モーター、トランスなどの電気絶縁材料や成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料などに用いられる。特に、回路基板材料を構成するベースフィルムや加工工程中に用いる工程フィルムなどに好適に使用できる複合フィルムに関するものである。
電気、電子部品分野において、機器の小型化や高機能化の観点から、耐屈曲性、ハンダ耐熱性、熱および湿度に対する高寸法安定性、低吸水性および高周波特性などの諸特性が高次元でバランス化した絶縁基材の要求が増加している。
従来より、電気・電子機器の部品として用いられる回路基板(配線基板)としては、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸した基材(以下、便宜上「ガラエポ基材」と略称する)、ポリイミドフィルム、アラミド繊維にエポキシ樹脂を含浸した基材、さらに、回路基板としては、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある)を基材としたものが提案されている。具体的に、PPSを基材とした回路基板としては、繊維状物にPPSを含浸させた繊維シート(特許文献1など)などが知られている。
しかしながら、従来のこれらの基材はそれぞれ下記のような問題点を有している。
ガラエポ基材は、高周波特性に劣り、また吸湿特性に問題があるため周波数が高くなれば誘電特性がさらに悪化するという問題点があり、さらにスルーホール加工としてレーザー法が適用できずファイン化に限界がある。また、ポリイミドフィルムは、屈曲性、耐熱性に優れているが、高周波特性と吸湿寸法安定性に劣る。またアラミド繊維基材は、吸湿特性に問題があるため、波数が高くなれば誘電特性がさらに悪化するという問題点があり、スルーホール加工としてレーザーが適用できるものの、その加工面(穴の内壁や切断面など)は炭化、分解などのため表面が荒れた状態になるという問題がある。
また、PPSフィルム単体では、未延伸シートの場合、低吸湿性、難燃性および高周波特性などの特性は満足しているが、二軸配向フィルムに比べると屈曲性、耐熱性が十分ではなく、加工工程が増加する程結晶化が進み脆くなる。結晶サイズなどをコントロールした場合には耐熱性と脆さの点ではかなり改良されるが満足できるレベルではなく、多層回路基板として用いた場合寸法安定性、脆さの点で問題を有している。さらにPPSフィルムは、熱膨張係数が大きく、例えば、回路基板の製造工程で銅箔と貼り合わせる際に熱が加わると、銅箔とPPSフィルムの熱膨張係数の隔たりが大きいために銅貼りフィルム基盤が変形し、反り返ったり、回路のズレが生じ易いなど成形加工性に問題があった。
上記問題を解決するため、PPSに無機粒子を高充填することで熱膨張係数が低減でき、耐熱性、寸法安定性に優れ回路基板に適した基材(特許文献2など)、PPSに液晶性樹脂を複合することで、温度・湿度膨張係数を低減させた回路基盤に適した基材(特許文献3など)などが提案されている。しかしながら、これら基材は熱膨張係数は優れるが、引張破断伸度が十分ではなく屈曲性が不足し、折り曲げなどの力が加わるとクラックが発生するなどの問題が生じていた。
一方、金属層と積層した二軸配向PPSフィルム(特許文献4または特許文献5など)が開示されているが、電気回路を形成する導電性を有する金属からなる層を設けたものであるので、寸法安定性は十分ではなかった。
特開平5−310957号公報 特開2003−213013号公報 特開2004−244630号公報 特開平1−95585号公報 特開平6−45714号公報
本発明の目的は、上記の問題を解決し、高温における寸法安定性に優れており、かつ、金属系酸化物の耐クラック性に優れた高品質の複合フィルムを提供することにあり、特にモーター、トランスなどの電気絶縁材料や成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料などに好適である複合フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、少なくとも片面に金属系酸化物を含む層(M層)を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムであって、M層表面の表面抵抗率が1×103〜1×1013Ωであり、長手方向および幅方向の温度60〜160℃における熱膨張係数がそれぞれ0〜40ppm/%RHの範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムは、次のような好ましい態様を含んでいる。
(1)金属系酸化物を含む層(M層)の厚みが30〜200nmであること。
(2)ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであること。
(3)二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムの少なくとも片面に金属が積層された積層体であること。
(4)上記(3)の積層体を用いてなる電子回路基板。
(5)上記(3)の積層体を用いてなる通信回路のシールド基板。
(6)上記(3)の積層体を用いてなる放熱基板。
本発明によれば、寸法安定性に優れクラックも発生しにくい二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムであって、モーター、トランスなどの電気絶縁材料や成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料などの工業材料用途において、好適に使用できる二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムを得ることができる。特に、電子回路用材料とした際に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化が小さく、かつクラック発生が少なくすることができる二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムを得ることができる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム(以下、単に複合フィルムということがある)は、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの少なくとも片面の表面上に金属系酸化物を含む層(M層)が形成されてなる。金属系酸化物とは、例えば、Cu、Zn、Al、Si、Fe、Ag、Ti、Mg、Sn、Zr、In、Cr、Mn、V、Ni、Mo、Ce、Ga、Hf、Nb、Ta、Y、Wなどの金属成分を酸化させたものであって、組成分析を行った場合の平均組成における酸素原子含有量が10at.%以上となっているものをいう。なお、at.%とは、atomic%の略である。atomic%とは原子数100個当たりの該原子数の個数を示したものである。
M層の金属元素濃度は10〜70at.%であることが好ましい。金属元素濃度が10at.%より少ないと、金属原子に対して酸素原子が多すぎるため、不完全な構造(金属原子や酸素原子が未結合で存在する)を取りやすく、補強する効果が小さくなり寸法安定性が低下してしまう。70at.%より多い場合、ほぼ金属の特性を持つため、導電性によるショートの問題や強度が低く寸法安定性が低いなどの問題がある。より好ましくは20〜60at.%であり、さらに好ましくは30〜50at.%である。金属元素濃度は金属蒸発量と酸素ガス導入量から制御することができる。金属元素濃度を小さくするには、金属蒸発量を少なくし、酸素ガス導入量を多くすればよく、金属元素濃度を大きくするにはその逆にすればよい。
また、M層の金属結合している金属原子の存在比は1〜20at.%であることが好ましい。金属結合の存在比が1at.%より小さいと、たとえ上述するような金属元素濃度であっても靭性のある金属結合が少ないためクラックが起こりやすい。20at.%より大きいと、たとえ上述するような金属元素濃度であっても金属の特性を持つため導電性によるショートの問題が起こりやすくなる。金属結合している金属原子は吸湿しないため、構造欠陥を作りにくく寸法安定性の悪化を防ぐことができる。より好ましくは2〜15at.%、さらに好ましくは3〜10at.%である。金属結合の存在比は金属の蒸発量と酸素ガス導入量から制御することができるが金属元素濃度よりもさらにミクロな構造を示した組成であり、酸化反応の制御が重要となる。金属結合の存在比は金属と酸素ガスの反応効率が影響するため、酸素ガス導入の方法が重要となる。酸素ガス導入方法は蒸着源の真横から金属蒸気の流れる方向と同じ方向に供給することが好ましい。これは、金属蒸気と酸素ガスの反応が促進され、酸化反応が完了した状態でポリアリーレンスルフィドフィルムに到達するため、過剰な酸素ガスを取り込んで金属結合存在比が小さくなったり、酸素ガスと反応できずに金属原子同士が結合し、金属結合存在比が大きくなってしまったりすることがなくなる。また、金属蒸気や酸素ガスを高エネルギー化することで反応が促進されるため、電子ビーム蒸着法により金属蒸気を高エネルギー化し、プラズマ処理などで酸素ガスを高エネルギー化することが好ましい。
M層の金属成分は上述にあるようにアルミニウム元素が好ましく、M層は酸化アルミニウムであることが好ましい。さらに酸化アルミニウム中のアルミニウムの結合状態は、水酸基と結合しているアルミニウム原子の存在比が0〜60at.%であることが好ましい。一般的に酸化アルミニウムは水蒸気を吸湿して水和物(Al(OH))を形成する。本願では水和物も酸化アルミニウムとして考える。水酸基と結合しているとはアルミニウム原子が吸湿して水和物になっていることを表し、光電子分光法(XPS)にてアルミニウムの結合状態を分析することで存在比を測定することができる。水和物の形成により部分的に体積変化が起こりM層内にひずみができ構造欠陥が発生する。水和物形成は寸法安定性を悪化させる要因となるため、60at.%以下であることが好ましい。より好ましくは50at.%以下、さらに好ましくは40at.%以下である。水酸基と結合しているアルミニウム原子の存在比を小さくさせるには、水和物を形成させないこと、すなわち水分を吸湿させないことが好ましい。アルミニウム原子と酸素原子がしっかり結合していて、未結合のアルミニウム原子や酸素原子を減らし、不完全な構造をなくすように形成することで水分の吸湿を防ぐことができる。不完全な構造はないことが好ましいが、形成時に生成してしまった場合は強制的に一気に吸湿させ、M層全体から未結合のアルミニウムや酸素原子をなくすことが好ましい。つまり、M層形成後は未結合原子をなくすための強制加湿処理を行うことが好ましい。加湿処理を行わず、未結合原子が残存していると、部分的に吸湿が起こり、その吸湿による体積変化などでM層に構造欠陥を作りやすくなる。構造欠陥はさらなる吸湿を発生させる原因ともなり、加湿処理を行わない場合より、水酸基と結合しているアルミニウム原子の存在比が高くなってしまう場合もある。
また、M層を形成する時にポリアリーレンスルフィドフィルムが吸湿していると、形成時の熱負荷などによりポリエステルフィルムから水分が放出され、M層の中に水分を取り込むこととなり、水和物を形成してしまうことがある。M層を形成する前にポリアリーレンスルフィドフィルム内の水分量を減らしておくことが好ましい。
上記のM層は、二軸配向アリーレンスルフィドフィルムの両面にあると、複合フィルムの反りなどが低減できるために好ましい。その場合、上記の金属系酸化物は、両表面で異なる金属成分を含んでいてもよく、また、複数種の金属成分を混合して含んでいても構わないが、より好ましくは両表面で同一種の金属成分を含む方が良い。
上記のM層は、金属系酸化物を主成分とすることが好ましく、例えば、蒸着、スパッタなどによる薄膜形成方法を用いて、金属成分を二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム表面に付着させながら、同時に酸化反応を施して形成された膜であることが好ましい。
M層に含まれる金属系酸化物は、酸化度の制御性、寸法安定性、生産性、環境性の観点から、アルミニウム、銅、亜鉛、銀、珪素元素の少なくとも一種を含んでいることが好ましく、より好ましくはアルミニウム元素が主成分となっていることが好ましい。
M層の厚みは、30〜200nmであることが好ましい。M層の厚みが30nmより小さい場合、補強効果が小さく、温度・湿度による環境変化や荷重が付加された場合の寸法変化が大きくなりやすい。M層の厚みの下限は、好ましくは50nm、より好ましくは70nmである。一方、M層の厚みが200nmより大きい場合は、クラックを生じやすく、張力が加えられたり、折り曲げられたりすることで剥離や脱落が発生しやすい。また、真空製膜装置を使って200nmより大きい厚みのM層を形成しようとすると、減圧度が低下してしまい金属蒸気が蒸発しにくく不安定になる。その結果、M層が不完全な構造になり、寸法安定性や耐久性が不足しやすい。また、スパッタ法では酸素導入量が多いとターゲットの表面を酸化させてしまい、スパッタによる金属原子の飛び出しが不安定となる。その結果、真空蒸着法と同様、不完全な構造になってしまい、寸法安定性や耐久性の悪い複合フィルムとなり易い。M層の厚みの上限は、好ましくは180nm、より好ましくは150nmである。好ましい範囲としては、50〜180nm、より好ましい範囲としては、70〜150nmである。
また、本発明の複合フィルムは、M層の設けられた表面の表面抵抗率が1.0×10〜1×1013Ωである。表面抵抗率とは、表面比抵抗(Ω/□)とも表記される特性値であり、純粋な表面抵抗(面積によって変わる抵抗値)や線抵抗(導線などの抵抗)とは異なるものである。表面抵抗率が1.0×10Ωより低い場合、M層による補強効果が不十分であることがある。表面抵抗率の下限は、より好ましくは1.0×10Ωであり、さらに好ましくは1.0×10Ωである。一方、表面抵抗率が1×1013Ωより高い場合、酸化が進みすぎているために、クラックの発生や寸法安定性の低下の傾向がある。すなわち、表面抵抗率を上記範囲に制御することで、M層の構造が安定化して水蒸気や水分に対するバリア効果が発現され、かつ、補強効果も高まりやすい。表面抵抗率の上限は、より好ましくは1×1012Ω、さらに好ましくは1×1010Ωである。より好ましい範囲としては、1.0×10〜1×1012Ω、さらに好ましい範囲としては、1.0×10〜1×1010Ωである。
表面抵抗率は、表面抵抗率の範囲によって、測定可能な装置が異なるため、まずi)の方法で支持体の測定を行い、表面抵抗率が測定不可能なサンプルをii)の方法で測定する。5回の測定結果の平均値を本発明における表面抵抗率とする。つまり、i)低抵抗率測定をJIS−K7194(1994年)に準拠した方法で最初に実施する。5回測定した平均値を表面抵抗率とする。しかし、表面抵抗率が比較的高い場合、上記i)の方法では測定不能となることがある。その場合、ii)高抵抗率測定をJIS−C2151(1990年)に準拠して測定する。同様に5回測定して平均値を表面抵抗率とする。
本発明の複合フィルムは、長手方向および幅方向の温度60℃から160℃における熱膨張係数が0〜40ppm/℃の範囲である。熱膨張係数が上記範囲内であることは、回路材料加工における寸法安定性の観点から好ましい。熱膨張係数の上限値は、好ましくは35ppm/℃、さらに好ましくは30ppm/℃であり、下限値は、好ましくは5ppm/℃、さらに好ましくは10ppm/℃である。より好ましい範囲としては、5〜35ppm/℃、さらに好ましい範囲としては10〜30ppm/℃である。また、長手方向と幅方向の温度膨張係数の差が5ppm/℃以下であることが、高温加工時におけるツイストカールなどを避ける観点から好ましい。
本発明の複合フィルムは、長手方向および幅方向の温度150℃における熱収縮率が0〜1.0%であることが好ましい。熱収縮率が上記範囲内であることは、回路材料加工における寸法安定性の観点から好ましい。熱収縮率の上限値は、好ましくは0.5%、さらに好ましくは0.3%である。より好ましい範囲としては、0〜0.5%であり、さらに好ましい範囲としては0〜0.3%である。また、長手方向と幅方向の熱収縮率の差が0.5%以下であることが、高温加工時におけるツイストカールなどを避ける観点から好ましい。
なお、本発明において、複合フィルムの長手方向とは、一般的にMD方向といわれる方向であって、ポリアリーレンスルフィドフィルム製造工程時の長手方向と同じ方向を指し、複合フィルムの幅方向とは、一般的にTD方向といわれる方向であって、ポリアリーレンスルフィドフィルム製造工程時の幅方向と同じ方向を指す。
本発明でいうポリアリーレンスルフィドとは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマ−である。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される構成単位などが挙げられる。
Figure 2008202127
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示され、ポリマーの主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む樹脂である。かかるp−フェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性および誘電特性などを損なうことがある。
Figure 2008202127
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記の構造単位を挙げることができる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
Figure 2008202127
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度315℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜2000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。
本発明でいうPPSは種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明において、得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
次に、PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では特にこれに限定されない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマーは、実質的に線状のPPSポリマーであるので、安定した延伸製膜が可能になる。もちろん必要に応じて、他の高分子化合物や酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルクおよびカオリンなどの無機や有機化合物や熱分解防止剤、熱安定剤および酸化防止剤などを添加してもよい。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気や酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は、通常170〜280℃が選択され、より好ましくは200〜270℃であり、また、加熱処理時間は、通常0.5〜100時間が選択され、より好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率よくしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。本発明で用いるPPS樹脂は、引張破断伸度の向上の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。脱イオン処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、および有機溶剤洗浄処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであれば特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中で、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムが特に好ましく用いられる。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度について特に制限はなく、常温〜300℃の範囲で任意の温度を選択することができる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱し攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の方が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸やジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸やクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸やサリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸およびフマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸および珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸と塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いられる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムには、ポリアリーレンスルフィドとは異なる熱可塑性樹脂Aを含んでいてもよい。熱可塑性樹脂Aとして、例えば、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリカーボネ−ト、ポリオレフィン、ポリエーテルエ−テルケトン等の各種ポリマーおよびこれらのポリマーの少なくとも一種を含むブレンド物を用いることができる。本発明では、熱可塑性樹脂Aは、ポリアリーレンスルフィドの混合性の観点から、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンから少なくとも1種以上選ばれることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドに含まれる熱可塑性樹脂Aは、ポリアミドが好適に用いられる。ポリアミドは公知のポリアミドであれば特に制限はないが、一般にアミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−アミノカプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマまたはコポリマを各々単独または混合物の形で用いることができる。
本発明において、有用なポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)などのホモポリアミド樹脂ないしはこれらの共重合体である共重合ポリアミド(ナイロン6/66、ナイロン6/10、ナイロン6/66/610、66/6T)などが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は混合物として用いることもできる(“/”は共重合を表す。以下同じ)。
上記のなかでもホモポリアミド樹脂としてはナイロン6やナイロン610、ナイロン46がより好ましく用いられる。特に、ナイロン610がポリアリーレンスルフィドと押出するうえで耐熱性が高く、かつ、引張伸度を向上させて靭性発現の効果が高いので、好ましく使用される。また、共重合ポリアミドとしてはナイロン6を他のポリアミド成分を共重合してなる共重合体ナイロン6/66共重合体が引張伸度を向上させて靭性を発現させる上で、より好ましく用いられ、特にナイロン6/66共重合体が引張伸度を向上させて靭性発現の効果が高く、ナイロン6共重合量がナイロン66より多いナイロン6/66共重合体が特に好ましく用いられる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに含まれる熱可塑性樹脂Aとして用いられる他の例として、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。熱可塑性樹脂Aとして、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンを用いる場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの含有量の和を100重量部としたとき、ポリアリーレンスルフィドを70〜95重量部と熱可塑性樹脂Aを5〜30重量部とするのがさらに好ましく、ポリアリーレンスルフィドを80〜95重量部と熱可塑性樹脂Aを5〜20重量部とするのがより好ましく、ポリアリーレンスルフィドを92〜95重量部と熱可塑性樹脂Aを5〜8重量部とするのが最も好ましい。ポリエーテルイミドは、特に限定されないが、例えば、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有する構造単位であるポリマーを好ましく挙げることができる。
Figure 2008202127
ただし、上記式中R1は、2〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族基、脂環族基からなる群より選択された2価の有機基であり、R2は、前記Rと同様の2価の有機基である。
上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族基
Figure 2008202127
を挙げることができる。
本発明では、ガラス転移温度が350℃以下、より好ましくは250℃以下のポリエーテルイミドを用いると本発明の効果が得やすく、ポリアリーレンスルフィドとの相溶性、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
Figure 2008202127
この構造単位を有するポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。例えば、m−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(前者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテム1000”および“ウルテム1010”が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(後者の式)を有するポリエーテルイミドとして、“ウルテムCRS5000”が挙げられる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに含まれる熱可塑性樹脂Aとして用いられる他の例として、分子骨格にスルホン基を含むポリスルホンやポリエーテルスルホンが挙げられる。ポリスルホンやポリエーテルスルホンは、種々のものを種々使用することができる。ポリアリーレンスルフィドとの混合性の観点から、ポリエーテルスルホンの末端基として、塩素原子、アルコキシ基あるいはフェノール性水酸基が挙げられる。また、熱可塑性樹脂Aとして、ポリアリーレンスルフィドと分子構造が近似するポリフェニレンエーテルなども好ましく例示される。
ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aを混合する場合、相溶化剤として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の基を有する化合物をポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの合計100重量部に対し、0.1〜5重量部添加することが好ましい。より好ましくは0.2〜3重量部添加することであり、さらに好ましくは0.3〜2重量部添加することである。相溶化剤の添加量が0.1重量部未満であると、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの相溶性が不良となり、本発明の効果が得られにくかったりすることがある。また、相溶化剤の添加量が5重量部を超えると、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの反応性が高まりすぎて、溶融粘度が増加してフィルム押出成形がしにくくなったりすることがある。
かかる相溶化剤の具体例としては、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2.2.5.5.−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの替わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたもの、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。またその他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノール類としては特に制限はないがフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。
またその他エポキシ基を有するオレフィン共重合体も挙げられる。かかるエポキシ基を有するオレフィン共重合体(エポキシ基含有オレフィン共重合体)としては、オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
これらエポキシ基含有成分を導入する方法は特に制限なく、α−オレフィンなどとともに共重合せしめたり、オレフィン(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量はエポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明で特に有用なエポキシ基含有オレフィン共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合成分とするオレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等を共重合することも可能である。
またかかるオレフィン共重合体はランダム、交互、ブロック、グラフトいずれの共重合様式でも良い。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合してなるオレフィン共重合体は、中でも、α−オレフィン60〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を共重合してなるオレフィン共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
さらに、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに用いられる相溶化剤の最も好ましい例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。中でも、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を用いると、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの分散相の平均分散径を本発明の好ましい範囲に制御しやすくなる。
エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランを用いた場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの間にシロキサン結合を形成しやすく、分散相の界面近傍にシロキサン結合が存在しやすい。TEM−EDX法などを用いて分散相の界面近傍にシリコン原子を検出することができる。本発明では、熱可塑性樹脂Aからなる分散相の界面にシロキサン結合に起因するシリコン(Si)原子を含むことが好ましい。
本発明において、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aを混合する時期は、特に限定されないが、溶融押出前に、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。中でも、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。特に、溶融押出前に、それぞれの樹脂の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示され、その場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの重量分率が99/1〜60/40のブレンド原料を作成することが好ましい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく、混練部ではポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+5〜55℃の温度範囲が好ましい。さらに好ましい温度範囲はポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+10〜45℃であり、より好ましい温度範囲はポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+10〜35℃である。混練部の温度範囲を好ましい範囲にすることは、せん断応力を高めやすく、分散不良物も低減できる効果が高くなり、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることは好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー形状にする。この際、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステルおよびワックスなどの有機滑剤など他の成分が添加されてもよい。また、フィルム表面に易滑性や耐磨耗性や耐スクラッチ性等を付与するために、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムに、無機粒子や有機粒子などを添加することもできる。そのような添加物としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリアリーレンスルフィドの重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子や、界面活性剤などが挙げられる。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの厚さは、用途等により異なるが500μm以下が好ましく、薄膜用途や作業性などの観点からは、より好ましくは10〜300μmの範囲であり、さらに好ましくは20〜200μmの範囲である。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、これにポリアリーレンスルフィドやその他のポリマー層、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデンまたはアクリル系ポリマーからなる層を直接、あるいは接着剤などの層を介して、さらに積層させて用いてもよい。
また、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、モーター、トランスなどの電気絶縁材料や成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料、振動板などに用いられる。特に、給湯器モ−タ−用電気絶縁材料や、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料や携帯電話用などのスピーカー振動板などに好適に使用できる。
上記したような本発明の複合フィルムは、たとえば次のように製造される。
次いで、本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムを製造する方法について、説明する。ポリアリーレンスルフィドのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンドおよび金網などの素材からなるフィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物、異物や変質ポリマーを除去するために好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。積層フィルムを作製する場合には、2台以上の押出機、マニホールドまたは合流ブロックを用いて、溶融状態のポリアリーレンスルフィドをそれぞれ積層させる。溶融シートをスリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを作る。また、ポリアリーレンスルフィドフィルムの表面に易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性などを付与するため、無機粒子、有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン、イミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、ポリアリーレンスルフィド重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などを添加することも好ましい。さらに、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
上記の好ましい二軸配向ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムの製造法のより具体的な条件は、以下のとおりである。
PPSや製膜後の回収原料を一定の割合で適宜混合して、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、押出機の溶融部を300〜350℃の温度、好ましくは320〜340℃に加熱された押出機に投入する。その後、押出機を経た溶融ポリマーをフィルター内を通過させ、その溶融ポリマーをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。
未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを加熱ロ−ル群で加熱し、長手方向に2〜5倍、好ましくは3〜4.5倍、さらに好ましくは3.5〜4.2倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、(Tg(PPSのガラス転移温度)+10)〜(Tg+50)℃、好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40)℃、さらに好ましくは(Tg+15)〜(Tg+30)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+50)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+40)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲である。特に、TD延伸には、MD延伸の延伸温度より3〜15℃だけ低温で延伸することが好ましく、さらに好ましくは5〜10℃低温に設定する。TD延伸の延伸温度を好ましい範囲に設定することで、ポリアリーレンスルフィドの結晶化を過度に進行させずに配向を制御しやすく、本発明の効果を得やすくなる。さらに、TD延伸の延伸ゾーンの前の予熱ゾーンにおいて、予熱温度をTD延伸の温度より3〜10℃だけ低温で実施することが好ましく、さらに好ましくは5〜7℃だけ低温に設定する。TD延伸前の予熱温度を好ましい範囲に設定することで、ポリアリーレンスルフィドの結晶化を過度に進行させずに分子鎖配向を制御しやすい。また、TD延伸の延伸倍率は、3.5〜5倍が好ましく、より好ましくは3.7〜4.8倍、さらに好ましくは4〜4.5倍の範囲である。
次に、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。好ましい熱固定温度は、200〜270℃の範囲である。熱固定時間は0.2〜30秒の範囲で行うことが好ましい。さらにこのフィルムを40〜180℃の温度ゾーンで幅方向に弛緩しながら冷却することが好ましい。弛緩率は、本発明の破断伸度向上の効果を得て、幅方向の熱収縮率を低下させる観点から1〜10%であることが好ましく、より好ましくは2〜7%、さらに好ましくは3〜5%の範囲である。熱固定は温度を変更して2段で実施するのも好ましい。2段で実施する場合、1段目の熱処理温度を好ましくは230〜270℃、さらに好ましくは240〜260℃に設定して、2段目の熱処理温度を200〜250℃の範囲で1段目より低温に設定することが好ましい。さらに、2段目の熱処理工程のみを幅方向に1〜5%の弛緩率で弛緩処理するとさらに好ましい。上述の多段階の熱処理工程によると、熱膨張に関する寸法安定性を高めつつ、熱処理の低減に有効な分子鎖緩和が進行するので、本発明の効果である熱膨張と熱収縮の低減を両立した寸法変化を高めやすくなる。
さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
次に、上記のようにして熱処理が行われたポリアリーレンスルフィドフィルムの両面に金属系酸化物を含む層(M層)を設ける。このとき、支持体としての表面抵抗率の値および熱膨張係数の値を上述のとおりとするために、好ましくは支持体としての全光線透過率の値も上述のとおりとするために、金属系酸化物の酸化状態を制御する。
M層の形成方法としては物理蒸着法や化学蒸着法を用いることができる。ポリアリーレンスルフィドフィルムへの物理蒸着法には真空蒸着法、スパッタリング法があり、特に酸化度の制御しやすさから真空蒸着法が好ましく、さらに電子ビーム蒸着法が好ましい。
M層を構成する金属系酸化物の酸化度を制御するには、基本的には金属蒸発量と酸素ガス導入量を制御する必要がある。金属蒸発量が一定であれば、酸素ガス導入量を減らせば酸化度が低くなり、酸素ガス導入量を増やせば酸化度が高くなる。逆に酸素ガス導入量が一定であれば、金属蒸発量を減らせば酸化度が高くなり、金属蒸発量を増やせば酸化度が低くなる。このとき、酸素ガスは、蒸着源の真横から金属蒸気の流れる方向と同じ方向に供給することが好ましい。
複合フィルムの表面抵抗率は、M層の酸化度が高いほど高くなるため、蒸着時の酸素ガス導入量や酸素ガス供給ノズルの位置、金属成分の蒸発量、フィルム搬送速度を調整することで制御することができる。特に金属の蒸発量やフィルム搬送速度の影響が大きい。
例えば、金属蒸発量が一定であれば、酸素ガス導入量を減らせば表面抵抗率が低くなり、酸素ガス導入量を増やせば表面抵抗率が高くなる。逆に酸素ガス導入量が一定であれば、金属蒸発量を減らしたり、フィルム搬送速度を小さくすると、酸化反応が進行しやすくなるため表面抵抗率が大きくなり、一方、金属蒸発量を増やしたり、フィルム搬送速度を大きくすると、供給された金属に対して酸化反応が完全には進行しにくくなるため表面抵抗率が小さくなる。
また、本願における酸化度は、金属系酸化物を含む層(M層)の組成分析により得られる酸素濃度とは異なる。組成分析における酸素濃度とは、酸素元素の比率を表しているが、酸化度は金属元素の結合状態を表しており、酸化度が高いことは金属元素が酸素元素と結合する割合が高いことを意味する。
そして、複合フィルムの熱膨張係数は、蒸着前のポリアリーレンスルフィドフィルムのヤング率などに反映されるフィルムの配向状態や、蒸着時の金属蒸発量と酸素ガス導入量などで制御することができる。また、複合フィルムの温度膨張係数は、M層の金属成分や厚みを制御することで本発明の範囲内とすることが可能である。
例えば、M層が酸化アルミニウムなどの硬い金属系酸化物からなる場合、温度膨張係数を低下しやすく、また、M層の厚みを増加させる場合も温度膨張係数を低下させやすい。
全光線透過率は、酸化度が高いほど高くなるため、表面抵抗率と同様に、蒸着時の酸素ガス導入量や酸素ガス供給ノズルの位置、金属成分の蒸発量、フィルム搬送速度を調整することで制御することができる。具体的には、酸化度を高くして全光線透過率を高める場合は、酸素ガス導入量を増やし反応できる酸素ガスを増やしたり、酸素ガス供給ノズルの位置を反応しやすい位置に設置し反応を進め易くしたり、金属成分の蒸発量を減らし酸素濃度を高めたり、フィルム搬送速度を遅くして反応時間を長くしたりすることで制御する。特に酸素ガス導入量の影響が大きい。
なお、本発明においては、ポリアリーレンスルフィドフィルムやそのポリアリーレンスルフィドフィルムを用いて得られた支持体に、必要に応じて、熱処理、マイクロ波加熱、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチング、などの任意の加工を行ってもよい。
ポリアリーレンスルフィドフィルム表面にM層を形成するには、たとえば図1に示すような真空蒸着装置を用いる。この真空蒸着装置11においては、真空チャンバ12の内部をポリエステルフィルムが巻出しロール部13から冷却ドラム16を経て巻取りロール部18へと走行する。そのときに、るつぼ23内の金属材料19を、電子銃20から照射した電子ビーム21で加熱蒸発させるとともに、酸素供給ノズル24から酸素ガスを導入し、蒸発した金属を酸化反応させながら冷却ドラム16上のポリアリーレンスルフィドフィルムに蒸着する。本発明は両面にM層が必要なため、片方の表面(1面目)に金属系酸化物を蒸着した後巻取りロール部18から片面蒸着ポリアリーレンスルフィドフィルムを取り外し、それを巻出しロール部13にセットし同じように反対側の表面(2面目)に金属系酸化物を蒸着する。なお、この真空蒸着装置11は、酸化度を容易に制御できるように、酸素供給ノズル24を蒸着源であるるつぼ23の真横に設置し、かつ、金属蒸気と酸素ガスとが同じ方向に流れるようにしている。その結果、金属蒸気と酸素ガスとの反応空間も大きくなっている。
ここで、真空チャンバ12の内部は1.0×10−8〜1.0×10Paに減圧することが好ましい。さらに緻密で劣化部分の少ないM層を形成させるためには、1.0×10−6〜1.0×10−1Paに減圧することが好ましい。
冷却ドラム16は、その表面温度を−40〜60℃の範囲内にすることが好ましい。より好ましくは−35〜30℃、さらに好ましくは−30〜0℃である。
電子ビーム21は、その出力が2.0〜8.0kWの範囲内のもので行うのが好ましい。より好ましくは3.0〜7.0kW、さらに好ましくは4.0〜6.0kWの範囲内である。なお、直接ルツボを加熱することで金属材料19を加熱蒸発させてもよい。
酸素ガスは、ガス流量制御装置26を用いて0.5〜10L/minの流量で真空チャンバ12内部に導入する。より好ましくは1.5〜8L/min、さらに好ましくは2.0〜5L/minである。
真空チャンバ12の内部におけるポリアリーレンスルフィドフィルムの搬送速度は20〜200m/minが好ましい。より好ましくは30〜100m/min、さらに好ましくは40〜80m/minである。搬送速度が20m/minより遅い場合、上記のようなM層厚みに制御するためには金属の蒸発量をかなり小さくする必要がある。そのため、酸素ガス導入量も減らす必要がでてくるために、酸化度の制御が非常に難しくなる。搬送速度が200m/minより速くなると、冷却ドラムとの接触時間が短くなるため熱による破れやシワが発生し、生産性が低下する傾向がある。また、金属蒸気と酸素ガスとが不充分な反応状態で成膜されやすく、酸化度の制御が難しくなる場合がある。
真空チャンバ12の内部におけるポリアリーレンスルフィドフィルムの搬送張力は50〜150N/mが好ましい。より好ましくは70〜120N/m、さらに好ましくは80〜100N/mである。ただし、2面目の蒸着時には搬送張力を1面目より弱めることが好ましい。2面目の搬送張力は1面目の搬送張力より5〜30N/m低いことが好ましく、より好ましくは7〜25N/m低く、さらに好ましくは10〜20N/m低いことが好ましい。これは、1面目の蒸着時にポリアリーレンスルフィドフィルムが熱負荷を受け収縮しようとする力を失うため、2面目の蒸着時に1面目と同様の搬送張力で走行させると、熱による破れやシワが発生し、生産性が損なわれる傾向があるからである。さらに、ポリアリーレンスルフィドフィルムの表面粗さが面によって異なる場合は、先に粗い方の面を蒸着することが好ましい。これは2面目蒸着時に冷却ドラムへの密着性を高めるためである。蒸着は片面ずつ行っても良いし、両面を1工程で行っても良い。
蒸着後、M層を安定化させ、緻密性を高めるためには、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返すことが好ましい。特に、加湿巻き返しを行うことが水蒸気とM層が接触する機会が長くなるため好ましい。20〜50℃の温度で1〜3日間エージングすることが好ましく、さらに好ましくは湿度60%以上の結露しない程度の環境下でエージングすることが好ましい。
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)熱膨張係数
熱機械測定装置TMA/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mm、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷した。室温から175℃(設定185℃)まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持した。その後、40℃まで10℃/分で降温させ、20分間保持した。このときの降温部分160℃から60℃までの寸法変化量から、下記式により熱膨張係数を求めた。
温度膨張係数α(1/℃)={(L160−L60)/L0}/△T
L0:23℃におけるフィルム長さ
L160:降温時の160℃におけるフィルム長さ
L60:降温時の60℃におけるフィルム長さ
△T:温度変化量(160−60=100)
(2)熱収縮率
JIS C−2318(1997年)に従って、次の条件で測定した。試料数10にて、それぞれについてその測定をして、平均値をとった。
試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件 :温度150℃、処理時間30分、無荷重状態
150℃熱収縮率を次式より求めた。
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
L0:加熱処理前の標線間隔
L :加熱処理後の標線間隔。
(3)M層の厚み
下記条件にて断面観察を行い、得られた合計9点の厚み(nm)の平均値を算出し、M層の厚み(nm)とする。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM) 日立製H−7100FA型
・測定条件:加速電圧 100kV
・測定倍率:20万倍
・試料調整:超薄膜切片法
・観察面 :TD(フィルム幅方向)−ZD(フィルム厚み方向)断面
・測定回数:1視野につき3点、3視野を測定する。
(4)組成分析
下記条件にて、深さ方向の組成分析を行う。炭素濃度が50at.%を越える深さをM層とポリアリーレンスルフィドフィルムとの界面とし、表層から界面までを等分に5分割し、それぞれの区間の中央点を測定点として組成分析を行う。得られた各測定点の組成から平均値を算出し、本発明における平均組成とする。
・測定装置:X線光電子分光機 Quantera−SXM 米国PHI社製
・励起X線:monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)
・X線径 :100(μm)
・光電子脱出角度:45°
・ラスター領域:2×2(mm)
・Arイオンエッチング: 2.0(kV) 1.5×10−7(Torr)
・スパッタ速度:3.68nm/min(SiO換算値)
・データ処理:9−point smoothing
ピークの結合エネルギー値から元素情報が得られ、各ピークの面積比を用いて組成を定量化(at.%)する。その中で酸素元素の比率を酸素濃度とする。
(5)表面抵抗率
表面抵抗率の範囲によって、測定可能な装置が異なるため、まずi)の方法で支持体の測定を行い、表面抵抗率が低すぎて測定不可能なサンプルをii)の方法で測定する。5回の測定結果の平均値を本発明における表面抵抗率とする。
i)低抵抗率測定
JIS−K7194(1994年)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
・測定装置:ロレスターEP MCP−T360 三菱化学製
・測定環境:温度23℃湿度65%RH
・測定回数:5回測定する。
ii)高抵抗率測定 JIS−C2151(1990年)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
・測定装置:デジタル超高抵抗/微小電流計R8340 アドバンテスト(株)製
・印加電圧:100V
・印加時間:10秒間
・測定単位:Ω
・測定環境:温度23℃湿度65%RH
・測定回数:5回測定する。
(6)ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121(1987年)に従って決定する。
・装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
・測定条件:
・加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
・温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
・温度変調振幅:±1K
・温度変調周期:60秒
・昇温ステップ:5K
・試料重量 :5mg
・試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
・参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度は下記式により算出する。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(7)融点(Tm)
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、サンプル約5mgをアルミニウム製受皿上350℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温する。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とする。
また、融点の直前に観測される微小なピークをベースフィルムの微小融解ピーク温度とする。
(8)フィルムの寸法安定性
JIS C−6472(1995年)に記載の銅貼りポリイミドフィルムのフィルム側に、測定対象のフィルムを汎用塩化ビニル系樹脂と可塑剤とからなる接着剤により貼り合わせて、温度160℃、圧力2.9MPa(30kg/cm)、時間30分の条件でロールを用いて圧着した。得られた圧着フィルムからMD方向25cm×TD方向25cmの試料を切り出して定盤上に置き、その状態で4隅のカール状態を観測し、4隅の反り量(mm)の平均値を求めて、下記の基準に従って評価した。
◎:反り量が5mm未満である。
○:反り量が5mm以上、10mm未満である。
△:反り量が10mm以上、15mm未満である。
×:反り量が15mm以上である。
(9)耐クラック性
引張試験機を使用し、複合フィルムをある特定の伸び量で引っ張った後、微分干渉顕微鏡にて表面状態を観察する。条件は下記のとおりとする。
(引張試験機)
・測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
・試料サイズ:支持体幅方向12.6mm×支持体長手方向100mm、
・引張り速度:10%/分
・引張り伸度:0.5%〜5%の範囲で0.5%刻みで10点測定
・測定環境:温度23℃、湿度65%RH
(微分干渉顕微鏡)
・測定装置:ライカDMLB HC ライカマイクロシステムズ(株)製
・観察倍率:1,000倍
各伸度で引っ張ったサンプルを10個作製し、おのおののサンプルについて無作為に10視野を観察し、クラックが合計8カ所以上観察される場合をクラック有りとする。そして、次の基準で耐クラック性を評価する。×を不合格とする。
◎:伸度5%でクラックが発生しない場合
○:伸度2%以上5%未満でクラックが発生した場合
△:伸度1%以上2%未満でクラックが発生した場合
×:伸度1%未満でクラックが発生した場合
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリフェニレンスルフィドをPPSと表記する。また、本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考例1)PPSの重合(PPS−1)
撹拌機付きの70リットルオ−トクレ−ブに、47.5%水硫化ナトリウム8,267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2,957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11,434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2,583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10,500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14,780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10,235.46g(69.63モル)、NMP9,009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1,260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26,300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31,900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56,000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70,000gで洗浄、濾別した。70,000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1,000/s)であり、ガラス転移温度が90℃、融点が285℃であった。
(実施例1)
参考例1で作製したPPS樹脂を180℃で3時間減圧乾燥して、さらに平均粒径1.2μmの炭酸カルシウム粉末0.3重量%、ステアリン酸カルシウム0.05重量%となるように添加し均一に分散配合させた原料を180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給した。押出機で溶融したポリマーを温度320℃に設定したフィルターで濾過した後、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出して表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製した。
この未延伸フィルムに対して、加熱された複数のロ−ル群からなる縦延伸機を用いロールの周速差を利用して107℃の温度でフィルムの縦方向に3.8倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、予熱温度95℃、延伸温度100℃、延伸倍率4.5倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて温度260℃で5秒間の熱処理と220℃で5秒間の熱処理を行った後、150℃にコントロールされた冷却ゾーンで横方向に4%弛緩処理を行い室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚さ100μmの二軸配向PPSフィルムを作製した。二軸延伸PPSフィルムのガラス転移温度(Tg)は90℃であり、融点(Tm)は285℃であった。
次に、図1に示す真空蒸着装置11の巻出しロール部13に得られたポリアリーレンスルフィドフィルムをセットし、1.5×10−3Paの減圧度にした後に、−20℃の冷却ドラム16を介してフィルムを搬送速度60m/min、搬送張力100N/mで走行させた。このとき、純度99.99重量%のアルミニウムを電子ビーム(出力5.1kW)で加熱蒸発させ、さらに蒸発源であるるつぼ23の真横に設置した酸素供給ノズル24から酸素ガスを2.0L/minで金属蒸気と同じ方向に供給し、酸化アルミの蒸着薄膜層(厚み100nm)をフィルムのB面側の層の上に形成して巻取った。次に搬送張力を80N/mにしたこと以外は同様にしてフィルムのA面側の層の上に酸化アルミの蒸着薄膜層を設けて複合フィルムを得た。
得られた複合フィルムを評価したところ、表1、表2に示すように、寸法変化率が小さく優れた特性を有していた。
(実施例2)
蒸着工程での搬送速度を120m/min、酸素ガス導入量を2.0L/min、電子ビーム出力を5.1kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(実施例3)
蒸着工程での搬送速度を25m/min、酸素ガス導入量を2.0L/min、電子ビーム出力を5.1kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(実施例4)
蒸着工程での搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を3.2L/min、電子ビーム出力を6.1kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(実施例5)
蒸着工程での搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を6.0L/min、電子ビーム出力を6.1kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(実施例6)
熱処理工程を1段だけで温度260℃で10秒間実施する以外は、実施例と同様にして二軸配向PPSフィルムを得た。その後は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(実施例7)
参考例1で作製したPPS樹脂95重量部を180℃で3時間減圧乾燥し、一方、ナイロン610(東レ製 “アミラン”CM2001)5重量部を120℃で3時間減圧乾燥し、さらにPPS樹脂とナイロン610の合計100重量部に対して、相溶化剤としてγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、”KBE9007”)0.25重量部を配合後、310℃に加熱された、ニーディングパドル混練部を3箇所設けたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップXを作製した。PPS/ナイロン610(95/5重量%)のブレンドチップXに平均粒径1.2μmの炭酸カルシウム粉末0.3重量%、ステアリン酸カルシウム0.05重量%となるように添加し均一に分散配合させた原料を180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給した。押出機で溶融したポリマ−を温度320℃に設定したフィルターで濾過した後、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出して表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製した。
得られた未延伸フィルムを実施例1と同様にして二軸配向PPSフィルムを得た。その後は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(実施例8)
実施例7において、ナイロン610をポリエーテルイミド(ジーイープラスチックス社製 ウルテム1010)(PEI)とする以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPSフィルムを得た。その後は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(実施例9)
蒸着工程での金属材料を純度99.9999重量%の亜鉛へ変更し、搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を2.5L/min、電子ビーム出力を5.8kWとしたこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは表1、表2に示すように優れた特性を有していた。
(比較例1)
実施例1で得られた厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムに対して、蒸着薄膜層を設けない以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは、酸化金属層(M層)を有しておらず、表1、表2に示すような特性となった。
(比較例2)
蒸着工程で酸素ガスを供給しないこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは酸化アルミ層を有しておらず、また、表1、表2に示すように寸法安定性に不十分な特性であった。
(比較例3)
蒸着工程での搬送速度を60m/min、酸素ガス導入量を10.0L/min、電子ビーム出力を8.0kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは、表1、表2に示すように、寸法安定性に不十分な特性であった。
(比較例4)
蒸着工程での搬送速度を250m/min、酸素ガス導入量を4.0L/min、電子ビーム出力を1.3kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは、表1、表2に示すように、寸法安定性に不十分な特性であった。
(比較例5)
蒸着工程での搬送速度を15m/min、酸素ガス導入量を3.0L/min、電子ビーム出力を3.3kWと変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて複合フィルムを得た。得られた複合フィルムは、表1、表2に示すように、寸法安定性に不十分な特性であった。
Figure 2008202127
Figure 2008202127
本発明の支持体を製造する際に好適に用いられる真空蒸着装置の模式図である。
符号の説明
1:真空蒸着装置
2:真空チャンバ
3:巻出しロール部
4:ポリエステルフィルム
5:ガイドロール
6:冷却ドラム
7:蒸着チャンバ
8:巻取りロール部
9:金属材料
10:電子銃
11:電子ビーム
12:酸素ガスボンベ
13:るつぼ
14:酸素供給ノズル
15:マスク
16:ガス流量制御装置

Claims (7)

  1. 少なくとも片面に金属系酸化物を含む層(M層)を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムであって、M層表面の表面抵抗率が1×103〜1×1013Ωであり、長手方向および幅方向の温度60〜160℃における熱膨張係数がいずれも0〜40ppm/%RHの範囲内である二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
  2. 金属系酸化物を含む層(M層)の厚みが30〜200nmである、請求項1に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
  3. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである、請求項1または2に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムの少なくとも片面に金属が積層された積層体。
  5. 請求項4に記載の積層体を用いてなる電子回路基板。
  6. 請求項4に記載の積層体を用いてなる通信回路のシールド基板。
  7. 請求項4に記載の積層体を用いてなる放熱基板。
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