JP2020050870A - フィルムおよびそれを用いてなる回路、ケーブル、電気絶縁シート、回転機 - Google Patents

フィルムおよびそれを用いてなる回路、ケーブル、電気絶縁シート、回転機 Download PDF

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一直 松井
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Abstract

【課題】本発明は、高周波伝送特性、高部分放電電圧、厚み変化の少ないフィルム、およびそれを用いてなる、回路、ケーブル、電気絶縁シート、回転機を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂(A)を主成分とし、無機粒子(B)を含有するフィルムであって、フィルムの誘電率εf、熱可塑性樹脂(A)の誘電率εa、無機粒子(B)の誘電率εbとした場合、εf<εaおよびεf<εbであり、かつフィルムの空隙率が7体積%以下であるフィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、高周波伝送特性、高部分放電電圧、厚み変化の少ないフィルム、およびそれを用いてなる、回路、ケーブル、電気絶縁シート、回転機に関する。
電気、電子部品分野において高速・大容量化の流れから、伝送損失の小さい材料が求められている。従来より、電気・電子機器の部品として用いられる回路基板(配線基板)としては、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸した基材(以下、ガラエポ基材と略称する)、ポリイミドフィルム、フッ素系フィルムおよびガラスクロスにフッ素系樹脂を含浸した基材などが用いられている。
また、モーターや発電機などでは、出力アップに伴い、より高い部分放電電圧とするために低誘電材料が求められている。
しかしながら、これらの基材は、それぞれ下記のような問題点を有している。ガラエポ基材は、高周波領域での伝送特性に劣り、また吸湿により誘電率が変化して伝送特性が変化する問題がある、さらにスルーホール加工としてレーザー法が適用できずファイン化に限界がある。また、ポリイミドフィルムは、耐熱性に優れているが、高周波特性領域での伝送特性に劣る。また、フッ素系フィルムやガラスクロスにフッ素樹脂を含浸した基材は、回路形成時の印刷や金属箔の積層加工や、スルーホール加工時のペースト、メッキが乗りにくいという問題がある。
そこで近年では、低伝送損失材料として液晶ポリマーフィルムなどの低誘電性のフィルムを用いた回路基板が知られている(特許文献1)。しかし、液晶ポリマーを用いた場合には、分子鎖が極度に配向している構造を有し伸度が低いため割れ易く耐屈曲性が十分ではなく、またスルーホール加工時にバリが発生する課題がある。
また、モーターや発電機などでは、出力アップに伴い、より高い部分放電電圧とするために低誘電材料が求められている。
ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドフィルムは、その伝送損失性や低吸湿性の高さを活かし、電気絶縁材料への適用が進められている。例えば、回路基板用途としてPPSフィルムの寸法安定性を向上する技術が開示されているが(特許文献2)、
また、ポリエステル樹脂(特にポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン−2、6−ナフタレンジカルボキシレートなど)は機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルを延伸配向させてフィルム化した配向ポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械特性、電気的特性などから、銅貼り積層板、太陽電池用バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、フラットケーブル、回転機用の電気絶縁材料、磁気記録材料、コンデンサ用材料、包装材料、自動車用材料、建築材料、写真用材料、グラフィック用材料途、感熱転写用材料、電池用材料などの各種工業材料として使用されている。しかし、誘電率が高く、高速伝送用途への適用は難しく、また回転機に用いる場合には厚みを厚くする必要があった。
フィルムを低誘電化したりする技術としては、フィルムの中に空気層を多数含有させる方法がある(特許文献3、4)。しかし、本方法で得られるフィルムは回路用途の場合、プレスの加工で厚みが変化し、設計値とのかい離が生じる。また回転機の絶縁に用いる場合には、挿入当の作業の際にフィルムが破れたり、折り曲げ部分で厚みが変わるという課題がある。
特開2011−60449号公報 特開2002−47360号公報 特開2015−98577号公報 特開2005−193657号公報
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、高周波伝送特性、耐屈曲性、高部分放電電圧、厚み変化の少ないフィルム、およびそれを用いてなる、回路、ケーブル、電気絶縁シート、回転機を提供することにある。
本発明のフィルムは、上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、
[I]熱可塑性樹脂(A)を主成分とし、無機粒子(B)を含有するフィルムであって、フィルムの誘電率をεf、熱可塑性樹脂(A)の誘電率をεa、無機粒子(B)の誘電率をεbとした場合、εf<εaおよびεf<εbであり、かつフィルムの空隙率が7体積%以下であるフィルム。
[II] フィルムの誘電率εfと熱可塑性樹脂(A)の誘電率εaの差(εf−εa)が0.2以上であり、フィルムの誘電率εfと無機粒子(A)の誘電率εbの差(εf−εb)が0.2以上である[I]記載のフィルム。
[III]前記無機粒子(B)の含有量がフィルム全体に対して2質量%以上である、[I]または[II]記載のフィルム。
[IV]マイクロ波方式配向測定により求められる共振性パラメータ(Q値)が2000以上である[I]〜[III]いずれかに記載のフィルム。
[V]フィルムの誘電率εfが2.8以下である[I]〜[IV]のいずれかに記載のフィルム。
[VI]MIT試験での耐屈曲回数が50回以上である[I]〜[V]のいずれかに記載のフィルム。
[VII]前記無機粒子(B)の誘電率が5.0以下である、[I]〜[VI]のいずれかに記載のフィルム。
[VIII]前記無機粒子(B)が非晶性である[I]〜[VII]のいずれかに記載のフィルム。
[IX]熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂であり 、周波数1Hzでの動的粘弾性測定により得られるβ分散ピークが0.040以下である[I]〜[VIII]のいずれかに記載のフィルム。
[X]前記ポリエステル樹脂が、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分を主たる構成成分とするポリエステル樹脂であり、前記ジオール成分が、主鎖炭素数が偶数のジオール(A)と、主鎖炭素数が奇数のジオール(B)を含み、前記ジオール(A)とジオール(B)のモル比(A)/(B)が30/70〜97/3である[IX]に記載のフィルム。
[XI]熱可塑性樹脂(A)がポリアリーレンスルフィド系樹脂を主成分とする[I]〜[VIII]のいずれかに記載のフィルム。
[XII]フィルムの試料量5mg、昇温速度20℃/minで得られる示差走査熱量(DSC)測定の1stRunにおいて結晶融解ピークが2つ以上有り、前記結晶融解ピークの最も高いピークトップ温度と最も低いピークトップ温度の差が10℃以上50℃以下である[I]〜[XI]のいずれかに記載のフィルム。
[XIII][I]〜[XII]いずれかに記載のフィルムを用いた回路。
[XIV][I]〜[XII]いずれかに記載のフィルムを用いたケーブル。
[XV][I]〜[XII]いずれかに記載のフィルムを用いた電気絶縁シート。
[XVI][XV]に記載の電気絶縁シートを用いた回転機。
本発明のフィルムは、高周波伝送特性、高部分放電電圧で厚み変化が少ないことから、各種電気・電子回路や特に高周波用回路材や、電気絶縁シートとして好適に用いることができる。また、本発明の電気絶縁シートは回転機などの各種絶縁性が必要とされる用途に使用することができる。
積層体の耐屈曲試験を評価する際のパターンの概略図である。
以下に具体例を挙げつつ、本発明のフィルムについて詳細に説明する。
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂(A)を主成分とし、無機粒子(B)を含有するフィルムであって、フィルムの誘電率をεf、熱可塑性樹脂(A)の誘電率をεa、無機粒子(B)の誘電率をεbとした場合、εf<εaおよびεf<εbであり、かつフィルムの空隙率が7体積%以下であるフィルムであることが必要である。ここで主成分とは、当該フィルムを構成する原料の50質量%以上を占めることをいう。上記する構成とすることで、フィルムの誘電率が低くなるだけでなく、無機粒子の形状安定性効果と、ボイドが少ないことが合わさり、より厚み変化の少ないフィルムとすることができる。εf<εa、εf<εbを達成するための方法は、特に限られるものでは無いが、無機粒子を含有したうえで、ボイドの形成させることなく延伸し、熱可塑性樹脂(A)の分子鎖を緊張させる方法が挙げられる。その結果、外部からの電場に対する分子鎖の回転を抑制することが可能となり、フィルム中に含む熱可塑性樹脂(A)、無機粒子(B)の誘電率よりも、フィルムの誘電率を低くすることが可能となる。詳しくは後述する。
本発明のフィルムはフィルムの誘電率εfが2.8以下であることが好ましい。より好ましくは2.6以下、さらに好ましくは、2.5以下である。上記範囲とすることによって、より低誘電損失の回路とできたり、高部分放電電圧の絶縁材料とすることが可能となる。また、好ましくは、フィルムの誘電率εfと熱可塑性樹脂(A)の誘電率εaの差(εf−εa)が0.2以上であるのが好ましく、さらに好ましくは0.4以上である。また、フィルムの誘電率εfと無機粒子(A)の誘電率εbの差(εf−εb)は0.2以上が好ましく、さらに好ましくは0.4以上である。上記範囲とすることによって、より伝送損失の低いフィルムとすることができる。また、フィルムの空隙率はより好ましくは、6体積%以下、さらに好ましくは5体積%以下である。空隙率を本範囲とすることによって、より厚み変化の少ないフィルムとすることができる。
本発明のフィルムは熱可塑性樹脂(A)を主成分とし、無機粒子(B)を含むものである。ここで、熱可塑性樹脂(A)は、特に限定されないが、好ましい例として、(i)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂、(ii)脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル、多糖類、デンプンを含むポリマーなどの生分解性樹脂、(iii)ポリ(メタ)アクリレートなどアクリル系樹脂、(iv)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリイソプレン、エポキシ変性ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、(v)ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリアリーレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマーなどのその他の樹脂、vi)エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの硬化性樹脂を硬化して得られるもの、およびこれらを成分とする共重合体、またはこれらの混合物などが挙げられる。
本発明のフィルムにおいて、耐熱性、寸法安定性等の観点から構成する熱可塑性樹脂(A)は、ポリエステル樹脂、または、ポリアリーレンサルファイド系樹脂を主成分とすることが好ましい。以下、ポリエステル樹脂の場合について詳細を記載する。ポリエステル樹脂とは、主たる構成成分がジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなる樹脂をあらわす。本発明に用いられるポリエステルとしては、JIS K−7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/minで樹脂を25℃から350℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度25℃から20℃/minの昇温速度で350℃まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークのピーク面積から求められる結晶融解熱量ΔHmが、15J/g以上である樹脂であることが好ましい。より好ましくは結晶融解熱量ΔHmが20J/g以上、さらに好ましくは25J/g以上、特に好ましくは30J/g以上の樹脂を用いるのがよい。このようなポリエステルを用いることで、後述する製造方法において、配向・結晶化が容易となり、高耐熱のフィルムとすることができる。なお、本明細書において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸などの芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。また、上述した各種カルボン酸構成成分のカルボキシル基末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体や、オキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、本発明のフィルムにおいて、ポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸構成成分中のうち、芳香族ジカルボン酸構成成分が占める割合は、90モル%以上100モル%以下が好ましい。より好ましくは95モル%以上100モル%が好ましい。更に好ましくは98モル%以上100モル%以下、特に好ましくは99モル%以上100モル%以下、最も好ましくは100モル%、すなわちジカルボン酸構成成分の全てが芳香族カルボン酸構成成分であるのがよい。90モル%に満たないと、耐熱性が低下したりする場合がある。本発明のフィルムにおいて、ポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸構成成分のうち、芳香族ジカルボン酸構成成分が占める割合を90モル%以上100モル%以下とすることで、後述する製造方法において、高耐熱なフィルムを得ることができる。
また、かかるポリエステル樹脂を構成するジオール構成成分としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの脂肪族ジオール類が好ましい。これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、かかるポリエステル樹脂を構成するジオール構成成分としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの脂肪族ジオール類が好ましい。これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
本発明のフィルムは、ポリエステル樹脂を構成するジオール成分が、主鎖炭素数が偶数のジオール(a)と、主鎖炭素数が奇数のジオール(b)の両方を含むことが好ましい。
主鎖炭素数が偶数のジオール(a)とは、2つのヒドロキシ基が結合している2つの炭素間にある、一続きの炭素鎖について、ヒドロキシ基が結合している炭素を含めて炭素数を数えた場合に、炭素数が偶数となるものである。主鎖炭素数が偶数のジオール(a)としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられるが、製膜性の観点から1,2−エタンジオールや、1,4−ブタンジオールといった側鎖や環状骨格をもたない直鎖状のジオールが好ましく、1,2−エタンジオールがより好ましい。
主鎖炭素数が奇数のジオール(b)とは、2つのヒドロキシ基が結合している2つの炭素間にある、一続きの炭素鎖について、ヒドロキシ基が結合している炭素を含めて炭素数を数えた場合に、炭素数が奇数となるものである。主鎖炭素数が奇数のジオール(b)としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどが挙げられるが、製膜性の観点から1,3−プロパンジオールや、1,5−ペンタンジオールといった側鎖や環状骨格をもたない直鎖状のジオールが好ましく、1,3−プロパンジオールがより好ましい。
本発明のフィルムは、ポリエステル樹脂に上記ジオール(a)とジオール(b)の両方を含むことにより、延伸時の分子鎖の配向挙動を変化させることができ、分子鎖の過度な配向に起因する無機粒子(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面でのボイド形成を抑制することができ、より空隙率の低いフィルムとなる。
また、上記ジオール(a)とジオール(b)のモル比(a)/(b)は、30/70〜97/3であることが好ましい。モル比(a)/(b)を上記の範囲とすることで、ジオール(a)とジオール(b)を共存させることにより延伸時の分子鎖の配向挙動を変化させ、ボイド形成を抑制させることが容易となる。また、モル比が30/70よりもジオール(a)が少ない場合には、絶縁材料としての耐熱性が損なわれる場合がある。モル比(a)/(b)は、好ましくは40/60〜90/10、より好ましくは70/30〜85/15である。
上述の構成成分(ジカルボン酸とジオール)を適宜組み合わせて、重縮合させることでポリエステル樹脂を得ることができるが、カルボキシル基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分が共重合されていることも好ましい。その場合は、カルボキシル基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分の割合が、ポリエステル樹脂の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%以下であることが好ましい。
本発明のフィルムの熱可塑性樹脂(A)がポリアリーレンスルフィド系樹脂の場合、ポリアリーレンスルフィド系樹脂とは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 2020050870
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明のフィルムに用いるポリアリーレンスルフィド系樹脂の繰り返し単位としては、上記の式(A)で表されるp−アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp−アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p−フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
本発明のフィルムに用いるポリアリーレンスルフィド系樹脂は、下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位が全繰り返し単位の75〜100モル%、より好ましくは75〜98モル%、さらに好ましくは85〜98モル%を占めることが好ましい。かかる主成分が75モル%未満では、耐久性が低下する場合がある。
Figure 2020050870
また、繰り返し単位の2モル%未満であれば共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていてもよい。このような繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基等の置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位などが具体例としてあげられ、このうち1つまたは2つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれの形態でも差し支えない。
好ましい共重合単位としては、以下が挙げられる。製膜性や加工性の観点から、特に好ましい共重合単位は、m−フェニレンスルフィド単位である。共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
Figure 2020050870
Figure 2020050870
Figure 2020050870
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2020050870
Figure 2020050870
(ここでRはアルキル基、ニトロ基、フェニレン基、アルコキシ基のいずれかを示す。)
本発明のフィルムにおいて、無機粒子(B)を含むことが必要である。本発明において、無機粒子(B)とは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セシウム、酸化アンチモン、酸化スズ、インジウム・スズ酸化物、酸化イットリウム、酸化ランタニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素などの金属酸化物、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、氷晶石などの金属フッ化物、リン酸カルシウムなどの金属リン酸塩、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化炭素などの窒化物、ワラストナイト、セピオライト、ゾノトライト、アルミノシリケートなどのケイ酸塩、等が挙げられる。これらの無機粒子(B)は、1種単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。また、前記無機粒子(B)が非晶質であるのが、より低誘電のフィルムとすることができる点で好ましい。
また、これら無機粒子(B)は、樹脂との親和性を高め、分散性を高める目的で、シランカップリング剤処理、金属蒸着、ポリマーのグラフト化、プラズマ処理、などといった表面処理によって表面改質したものを用いてもよい。
本発明のフィルムにおいて、前記無機粒子(B)の誘電率が5.0以下であるのが好ましい。さらに好ましくは、4.0以下である。本範囲とすることにより、より低誘電率のフィルムとすることができる。
本発明のフィルムにおいて、無機粒子(B)の含有量は、フィルム全体に対して2質量%以上であるのが好ましい。より好ましくは、5質量%以上、60質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下、特に好ましくは12質量%以上、24質量%以下である。無機粒子(B)の含有量が2質量%未満であると、誘電特性が低下する場合がある。無機粒子(B)の含有量が60質量%を超えると、フィルムの製膜性が悪化したり、回路材料として使用する際の加工性が低下したり、絶縁材料として使用する際のハンドリング性や絶縁性が低下したりする場合がある。
本発明のフィルムにおいて、無機粒子(B)の平均径は1.1μm以上40μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上30μm以下、更に好ましくは5μm以上25μm以下である。平均径が1.1μmに満たないと、界面積が多くなりすぎて無機粒子(B)との間に空隙が形成されやすくなり、空隙率が向上する場合がある。一方、40μmを超えるとフィルムの製膜性が低下したり、製膜後のフィルムの機械特性、加工性が低下したりする場合がある
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂(A)と無機粒子(B)を含む層(P1層)のみからなる場合と、他の層(P2層)との積層構成とする場合の、いずれも好ましく用いられる。積層構成とする場合には、P1層の低誘電性や高い耐熱性の効果を発揮するためには、P1層の割合がフィルム全体の50体積%以上とすることが好ましい。より好ましくは60体積%以上、更に好ましくは70体積%以上である。
また、積層構成とする場合はP1層の片側にP2層を設ける構成、両側にP2層を設ける構成、P2層の両側にP1層を設ける構成など、目的とする効果に応じて適宜選択することが可能である。
本発明のフィルムの全体の厚みは5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上400μm以下がより好ましい。更に好ましくは、20μm以上300μm以下である。厚みが5μm未満の場合、フィルムの製膜性が低くなり、製膜が困難となる場合がある。一方、500μmより厚い場合、例えば回路材料として打ち抜き加工する際の加工性や、絶縁材料として断裁や折り曲げなどの加工を行う際のハンドリング性が低下する場合がある。本発明のフィルムにおいて、フィルム全体の厚みを5μm以上500μm以下とすることによって、製膜性と加工性、ハンドリング性を両立することができる。
本発明のフィルムは、耐屈曲試験において耐屈曲回数が100回以上であることが好ましい。ここで、耐屈曲回数とは、後述するMIT(Massachusetts Institute of Technology)屈曲試験機を用いてJIS C6471に沿って、耐屈曲試験を実施した際の積層体の導通回数を測定した値である。本発明における耐屈曲回数の測定条件は、積層体に回路パターン(図1)を形成し、MIT屈曲試験機において曲率半径0.38mm、荷重4.9N、折り曲げ角度135°、曲げ頻度175回/分において試料の導通を測定したものである。また、5回の測定を行い、これらの平均値をフィルムの耐屈曲回数として採用する。より好ましくは、200回以上、さらに好ましくは400回以上である。さらには、本発明のフィルムの熱可塑性樹脂(A)がポリエステルの場合、耐屈曲回数は、より好ましくは1000回以上、さらに好ましくは2000回以上である。フィルムの耐屈曲回数を上記範囲とすることで、回路基板として装置に組み込む際の裁断加工や折り曲げた際に導体の断線を抑制でき、ヒンジ部の繰り返し屈曲部分に使用した場合に信頼性が得られる。また、絶縁材料として用いた場合に挿入する箇所の形状に折り曲げたりすることが可能となる。耐屈曲回数が100回未満であると、回路として挿入した際に断線が発生し導通不良となる場合があったり、電気絶縁材料として用いた場合に曲げ加工等を実施した際に割れたり、破れたりすることがある。本発明において耐屈曲回数を上記範囲とするには後述する製膜条件の中でも樹脂組成、樹脂積層、延伸条件によって制御することができる。
本発明のフィルムはマイクロ波方式配向測定により求められる共振性パラメータ(Q値)が2000以上であるのが好ましい。3000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましい。Q値は次の方法で測定した。フィルムに対して、王子計測機器(株)製マイクロ波方式分子配向計を用いて分子配向測定を行い、ポリエステルフィルムの透過マイクロ波共振曲線を得た。次いで、分子鎖主軸の配向角方向のQ値(Q1)および、分子鎖主軸の配向角方向と直角な方向のQ値(Q2)を得られたポリエステルフィルムの透過マイクロ波共振曲線からそれぞれ算出し、Q1とQ2の平均値((Q1+Q2)/2)の値をポリエステルフィルムの共振性パラメータ(Q値)とした。Q値が高いほど、フィルム全体の延伸配向度が高いことを示し、フィルムの機械的強度が高くなる。Q値が2000未満では、機械的強度が低く加工性が悪くなる場合がある。
本発明のフィルムにおいて、熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合は、周波数1Hzでの動的粘弾性測定により得られるβ分散ピークが0.040以下であるのが好ましい。ここでいうβ分散ピークとは、JIS K−7244に基づいた方法により、引張モード、試料動的振動速さ(駆動周波数)は1Hz、チャック間距離5mm、歪振幅10μm、力振幅初期値100mN、昇温速度2℃/minでの測定条件にて、−120℃からポリエステル樹脂(A)の融点Tm−40℃まで温度依存性(温度分散)を測定した時に、−40〜−90℃近傍でtanδが極大を示すピークを指す。本β分散ピークは、ポリエステル樹脂の末端やエステル基などの局所運動や、主鎖の回転運動等の分子鎖の運動性を示すものであり、このピークが小さいほど分子鎖の局所運動が拘束されていることを示す。β分散ピークが0.040より低いと従来のフィルムよりも分子鎖が拘束される結果、外部電場を受けた際に分子鎖の回転等が抑制される結果、誘電率を低くすることが可能となる。より好ましくは0.039以下でありさらに好ましくは0.038以下であり、さらに好ましくは0.037以下である。
本発明のフィルムは、少なくとも一つの方向の破断伸度が10%以上であるのが好ましい。より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上である。本発明のフィルムにおいて、破断伸度が10%に満たないと製膜時や連続加工での搬送や断裁などの加工時にフィルムが破断しやすくなる。本発明のフィルムにおいて、破断伸度を10%以上とすることによって、製膜性と加工性を両立することができる。
本発明のフィルムは、JIS K−7122(1987)に準じて、フィルムの試料量5mg、昇温速度20℃/minで25℃から350℃まで昇温して得られる示差走査熱量(DSC)測定の1stRunにおいて結晶融解ピークが2つ以上有り、前記結晶融解ピークの最も高いピークトップ温度と最も低いピークトップ温度の差が10℃以上50℃以下であることが好ましい。ピークトップの温度差を上記範囲とすることで、後述する製膜条件の中で、結晶融解ピークの最も低いピークトップ温度以上、結晶融解ピークの最も高いピークトップ温度未満の温度で熱処理することによって、結晶融解ピークが最も高いピークトップ温度を有する樹脂が機械強度を維持しつつ、結晶融解ピークの最も低いピークトップ温度を有する樹脂が流動することによって効果的にボイドを低減させることができ、無機粒子の形状安定性効果と、ボイドが少ないことが合わさり、より厚み変化の少ないフィルムとすることができる。ピークトップ温度差が50℃を超えると樹脂の耐熱性が低下し、寸法安定性に劣る場合がある。また、10℃未満であるとボイドが多く残存し、厚み変化が大きくなる場合がある。ピークトップ温度差は、より好ましくは15℃以上40℃以下である。
本発明のフィルムは、高周波伝送特性、耐屈曲性、高部分放電電圧、厚み変化の少ないものである。本発明のフィルムはその特長を生かして、銅貼り積層板やフレキシブルフラットケーブル、LED基板などの回路材料、電線被覆材料、太陽電池用バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、回転機用絶縁材料などの電気絶縁シートとして好適に使用することができる。特に、回路材料として用いた場合は、従来のフィルムを用いた場合に比べて、高速で、損失の少ないものとすることができる。また回転機用電気絶縁シートとして用いた場合は、従来の電気絶縁シートを用いた場合と比べて薄くすることが可能となり、占積率を高めることなどにより、出力や効率を高めることが可能となる。
次に、本発明のフィルムの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例に限定して解釈されるものではない。
(工程1)熱可塑性樹脂(A)と、無機粒子(B)とを溶融混練する工程。(以下、溶融混練工程)、
(工程2)熱可塑性樹脂(A)と無機粒子(B)を含む樹脂組成物を溶融させ口金から吐出させてシート状のフィルムを得る工程(以下、溶融押出工程)、
(工程3)シート状のフィルムを二軸延伸する工程(以下、延伸工程)
以下、工程1〜工程3について、詳細を説明する。
(工程1)
本発明のフィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合、上述のジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分からエステル化反応またはエステル交換反応を経て重縮合反応を行い、固有粘度を0.5以上とすることによって得られる。
また、エステル交換反応を行う際には、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マンガン、酢酸コバルトなど公知のエステル交換反応触媒を用いることができるほか、重合触媒である三酸化アンチモンなどを添加してもよい。エステル化反応時には水酸化カリウムなどのアルカリ金属を数ppm添加しておくと耐熱性や耐加水分解性も改善される。また重縮合反応触媒としては、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液、三酸化アンチモン、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物などを用いることができる。その他の添加物としては、例えば、静電印加特性を付与する目的で酢酸マグネシウム、助触媒として酢酸カルシウムなどを挙げることができ、本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。また、フィルムの滑り性を付与するために各種粒子を添加、あるいは触媒を利用した内部析出粒子を含有させてもよい。
また、本発明のフィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂(A)がポリアリーレンスルフィド系樹脂の場合、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンおよびm−ジクロロベンゼンを本発明でいう比率で配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、200〜290℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを30〜100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液や酢酸塩水溶液(たとえば酢酸ナトリウムや酢酸カルシウム)にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30〜80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥して共重合ポリフェニレンスルフィド(以下、共重合PPS)の粒状ポリマーを得る。
また、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンのみを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、200〜290℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを30〜100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液や酢酸塩水溶液(たとえば酢酸ナトリウムや酢酸カルシウム)にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30〜80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥してポリフェニレンスルフィド(PPS)の粒状ポリマーを得る。
本発明のフィルムの製造方法において、無機粒子(B)をシランカップリング剤によって表面処理する場合、i)溶媒中に無機粒子(B)を分散させた後、その分散液を攪拌させながらシランカップリング剤、または表面処理剤を溶解/分散させた溶液/分散液を添加する方法、ii)無機粒子(B)を攪拌しながら、シランカップリング剤を溶解/分散させた溶液/分散液を添加する方法などが挙げられる。
次いで、上記により得られた熱可塑性樹脂(A)に無機粒子(B)を添加する方法は、予め熱可塑性樹脂(A)と無機粒子(B)をベント式二軸混練押出機やタンデム型押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。ここで、熱可塑性樹脂(A)は無機粒子(B)を含有させる際に加熱されるため、少なからず熱可塑性樹脂(A)が劣化する。そのため、フィルム中の無機粒子(B)の含有量に比べて無機粒子(B)の含有量の多い高濃度マスターペレットを作製し、それを、無機粒子(B)の含有量の少ない熱可塑性樹脂(A)のペレットあるいは無機粒子(B)を含まない熱可塑性樹脂(A)のペレットと混合して希釈し、フィルム中の無機粒子(B)の含有量を所定量とするのが、延伸性、機械特性、耐熱性などの観点から好ましい。
このとき、高濃度マスターペレット中の無機粒子(B)の濃度は20質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以上70質量%以下、更に好ましくは30質量%以上60質量%以下である。20質量%に満たない場合、フィルムに添加するマスターペレットの量が多くなり、その結果フィルムに劣化した熱可塑性樹脂(A)の量が多くなって延伸性、機械特性、耐熱性などが低下する場合がある。また80質量%を越える場合は、マスターペレット化が困難となったり、マスターペレットを熱可塑性樹脂(A)に混合した場合に均一に混合するのが難しくなったりする場合がある。
以上のようにして、熱可塑性樹脂(A)と無機粒子(B)を含む樹脂組成物を得る。
(工程2)
次に、上記工程1で得られた、熱可塑性樹脂(A)と無機粒子(B)を含む樹脂組成物をシート状に成形する工程を説明する。
本発明のフィルムがP1層のみからなる単膜構成の場合、P1層用原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、P1層用の原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。この中でも、生産性が高いという点で溶融キャスト法がより好ましい(以下、溶融キャスト法によりシート状に成形する工程を溶融押出工程と称す)。
本発明のフィルムの製造方法において、溶融押出工程において製造する場合、乾燥した熱可塑性樹脂(A)と無機粒子(B)を含む樹脂組成物を、押出機を用いて口金からシート状に溶融押出し、表面温度10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸のシート状フィルムを作製する。
押出機で溶融押出する際は、窒素雰囲気下で溶融させ、押出機へのチップ供給から、口金までに押出される時間は短い程良く、目安としては30分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは5分以下とすることが、劣化抑制の点で好ましい。
(工程3)
工程2で得られたシートを、シートのガラス転移温度Tg以上の温度にて二軸延伸する。二軸延伸する方法としては、上述の様に長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。延伸条件の一例は、1)同時二軸延伸の場合は、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度Tg以上Tg+15℃以下の範囲の温度、2)逐次二軸延伸の場合は、第一軸目の延伸を熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度Tg以上Tg+15℃以下(より好ましくはTg+10℃以下)の温度とし、第二軸目の延伸をTg+5℃以上Tg+25℃以下の範囲の温度で延伸することが挙げられる。
延伸倍率は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸共に、長手方向と幅方向それぞれ1.5倍以上4倍以下とする。より好ましくは2.0倍以上、3.5倍以下、更に好ましくは2.0倍以上3.0倍以下である。また縦の延伸倍率と横の延伸倍率を合わせた面積延伸倍率は2倍以上16倍以下、より好ましくは4倍以上12倍以下、更に好ましくは4倍以上8倍以下である。面積倍率が2倍未満であると、得られるフィルムの樹脂の配向性が低く、得られるフィルムの機械強度や耐熱性が低下することがある。また面積延伸倍率が14倍を越えると延伸時に破れを生じ易くなったり、無機粒子(B)の周囲にボイドが多く形成され、空隙率が上昇する結果、厚み変化が大きくなる傾向がある。
延伸速度は、逐次二軸延伸の場合は長手方向が100〜25000%/min、幅方向が50〜5000%/minであることが好ましく、同時二軸延伸の場合は長手方向、幅方向ともに50〜5000%/minであることが好ましい。延伸速度を好ましい範囲とすることによって、延伸時に破れを生じ易くなったり、無機粒子(B)の周囲にボイドが多く形成され、空隙率が低下する結果、厚み変化が大きくなるのを抑制できる場合がある。
次に得られた二軸延伸フィルムに対して平面性と寸法安定性を付与するために、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度Tg以上融点Tm未満の温度Thで1秒間以上30秒間以下の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却する。本発明のフィルムの製造方法において熱処理温度Thは、熱可塑性樹脂(A)の融点Tmとの差Tm−Thが、20℃以上90℃以下、より好ましくは25℃以上70℃以下、更に好ましくは30℃以上60℃以下である。本発明のフィルムにおいて、結晶融解ピークが2つ以上ある場合は、熱処理温度Thは、結晶融解ピークの最も低いピークトップ温度(Tmb)以上最も高いピークトップ温度(Tma)未満であることが好ましい。上記範囲とすることで、延伸でできた微細なボイドを低減することができ空隙率を制御し、厚み変化を小さくすることが可能となる。Tmaを超えると、フィルムが溶融しフィルム破れによって製膜性が低下する場合があり、Tmb未満であるとボイドを低減できず厚み変化が大きくなる場合がある。より好ましくは、Tmb+5℃以上Tma−10℃以下である。また、上記熱処理工程中では、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。続いて必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行っても良い。
なお、本発明のフィルムがP1層と他の層(以下、P2層と称す)を含む積層構造の場合の製造方法は以下の通りである。積層する各層の材料が熱可塑性樹脂を主たる構成材料とする場合は、二つの異なる材料をそれぞれ二台の押出機に投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出す方法(溶融ラミネート法)、P1層と積層するP2層をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、その他、P2層用の材料を溶媒に溶解させ、その溶液をあらかじめ作製していたP1層上に塗布する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等が使用することができる。なかでも、P1層とP2層の積層界面の密着性を高め、絶縁材料としてのハンドリング性を高めるという観点から、共押出法が特に好ましい。
また、P2層が、熱可塑性樹脂でない材料を主たる構成成分とする場合は、P1層と積層するP2層をそれぞれ別々に作製し、接着剤などを介して貼り合わせる方法(接着法)や、硬化性材料の場合はP1層上に塗布した後に電磁波照射、加熱処理などで硬化させる方法等が使用することができる。その他、上述の共押出法、溶融ラミネート法、溶液ラミネート法、熱ラミネート法などの方法の他に、蒸着法、スパッタ法などの乾式法、めっき法などの湿式法、なども好適に用いることが出来る。
コーティング法により異素材からなるP2層を形成する方法としては、フィルムの製膜中に塗設するインラインコーティング法、製膜後のフィルムに塗設するオフラインコーティング法があげられ、どちらでも用いることが出来るが、より好ましくはフィルム製膜と同時にできて効率的であり、層間密着性が高いという理由からインラインコーティング法が好ましく用いられる。また、塗設する際には、塗設の基材であるフィルム表面へコロナ処理などの表面処理を行うことが層間密着性を高めるために好ましい。
本発明のフィルムは、上述の工程により製造することができ、得られたフィルムは、高周波伝送特性、高部分放電電圧、厚み変化の少ないものである。本発明のフィルムはその特長を活かして銅貼り積層板、太陽電池用バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、フラットケーブルなどのケーブル、電気絶縁シート、回転機用の電気絶縁材料、磁気記録材料、コンデンサ用材料、包装材料、自動車用材料、建築材料、写真用材料、グラフィック用材料途、感熱転写用材料、電池用材料などの各種工業材料など、高速伝導性や、絶縁性が重視されるような用途に好適に使用することができる。特に、回路材料として用いた場合は、従来のフィルムを用いた場合に比べて、高速で、損失の少ないものとすることができる。また、本発明のフィルムを回転機用電気絶縁シートとして用いた場合は、従来の電気絶縁シートを用いた場合と比べて薄くすることができ、占積率を高めることが可能となるため、本発明のフィルムを電気絶縁シートとして用いた回転機は、出力や効率を高めることが可能となる。
[特性の測定方法]
A.フィルムの厚みT
先端が平坦で直径4mmのダイヤルゲージ厚み計((株)ミツトヨ製)を用いてフィルムの厚みを測定した。なお、測定は場所を変えて10回実施し、その平均値でもってフィルムの厚みT(μm)とした。
B.熱可塑性樹脂(A)の組成分析
熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合は、フィルムをアルカリにより加水分解し、各成分をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーにより分析し、各成分のピーク面積より組成比を求めた。以下に一例を示す。ジカルボン酸構成成分や、その他構成成分は高速液体クロマトグラフィーにて測定を行った。測定条件は既知の方法で分析することができ、以下に測定条件の一例を示す。なお、測定にあたっては無機粒子(B)を濾過分離した後に実施した。
装置:島津LC−10A
カラム:YMC−Pack ODS−A 150×4.6mm S−5μm 120A
カラム温度:40℃
流量:1.2ml/min
検出器:UV 240nm
ジオール構成成分や、その他構成成分の定量はガスクロマトグラフィーを用いて既知の方法で分析することができる。以下に測定条件の一例を示す。
装置 :島津9A(島津製作所製)
カラム:SUPELCOWAX−10 キャピラリーカラム30m
カラム温度:140℃〜250℃(昇温速度5℃/min)
流量 :窒素 25ml/min
検出器:FID。
熱可塑性樹脂(A)がポリアリーレンスルフィド系樹脂の場合は、赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド骨格を有する化合物であることを確認できる。測定条件は既知の方法で分析することができ、以下に測定条件の一例を示す。
装置:spectorum100(パーキンエルマー製)
手法:ATR法(1回反射)
クリスタル:ダイヤモンド/ZnSe
C.固有粘度(IV)
熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合は、オルトクロロフェノール100mlにフィルム(積層フィルムの場合はポリエステル層(P1層))を溶解させ(溶液中のポリエステル濃度C=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(1)により、[η]を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とした。
ηsp/C=[η]+K[η]・C (1)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である)。なお、測定にあたっては、予め無機粒子(B)を濾過分離した上で実施した。
D.無機粒子(B)の含有量
熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合は,フィルムの無機粒子(B)(積層フィルムでP1層の無機粒子含有率(B)を求める場合は、削りだしたP1層)について、以下(A1)〜(A4)の手順で求めた。
(A1)フィルム(積層フィルムでP1層の無機粒子含有率(B)を求める場合は、削りだしたP1層)の質量w1(g)を測定した。
(A2)(A1)で質量を測定したフィルム(積層フィルムでP1層の無機粒子含有率(B)を求める場合は、削りだしたP1層)をヘキサフルオロ−2−イソプロパノール中に溶解させ、遠心分離により不溶成分として無機粒子(B)を分取した。
(A3)得られた粒子(B)をヘキサフルオロ−2−イソプロパノールにて洗浄、遠心分離した。なお、洗浄作業は、遠心分離後の洗浄液にエタノールを添加しても白濁しなくなるまで繰り返した。
(A4)(A3)の洗浄液を加熱留去後、24時間自然乾燥させた後、60℃の温度で5時間真空乾燥し、無機粒子(B)を得た。得られた無機粒子(B)の質量w2(g)を求め、下記式(2)から無機粒子(B)の含有量Wf(質量%)を得た。
Wf=(w2/w1)×100 (2)
熱可塑性樹脂(A)がポリアリーレンスルフィド系樹脂の場合は、フィルムの無機粒子(B)(積層フィルムでP1層の無機粒子含有率(B)を求める場合は、削りだしたP1層)について、サンプルを秤量したるつぼに入れた後、再度秤量し、サンプルの加熱前の重量を秤量する。次にサンプルが入ったるつぼをマッフル炉(ヤマト科学社製)にて500℃/6hで加熱しサンプルを灰化させる。るつぼを冷却した後に秤量し、加熱後の重量をはかりとり、加熱前後の重量を下記式に挿入し、フィルムに含まれる粒子濃度を算出した。測定はn=3で実施し、その平均値をそのサンプルの粒子濃度とした。また、試料量は残存物の質量が100〜200mgの範囲となるように調整した。
粒子濃度(質量%)=加熱後の重量(mg)/加熱前の重量(mg)×100。
E.無機粒子(B)の平均粒子径
上記D項の(A4)で得た無機粒子(B)について、レーザー粒度分布計(島津製作所社製、SALD−2100)を用いて数平均粒子径を測定し、無機粒子(B)の平均径とした。
F.フィルムの誘電率εf
フィルムの誘電率は、誘電体材料計測装置(関東電子応用開発(株)製)を用いて周波数10GHzで空洞共振器摂動法により誘電率を測定する。フィルム面内で長さ方向に直角の方向2.7mm×フィルム長さ方向45mmに切り出したサンプルを空洞共振器に挿入し、温度23℃、湿度65%RH環境下にて測定を行った。測定はn=3で行い、その平均値を求めた。
ここで長さ方向およびフィルム面内で長さ方向と垂直な方向とは、熱可塑性樹脂フィルムのいずれかの方向を0°とし、フィルム面内に−90°から90°まで10°毎に方向を変えながら幅10mm、長さ250mmに切削して試験片とし、JIS−C2151に規定された方法に従って、テンシロン引張試験機を用いて、幅10mmのサンプル片をチャック間長さ100mmとなるようセットし、引張速度300mm/minで引張試験を行った。ここで、方向をかえて破断強度を測定した際に、熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂を主成分とする場合は、破断伸度が最も短い方向、またポリアリーレンスルフィド系樹脂を主成分とする場合は、破断強度が最も小さくなった方向をフィルムの長さ方向として定めた。
G.熱可塑性樹脂(A)の誘電率εa
フィルムをヘキサフルオロイソプロパノールにフィルムを溶解させ、無機粒子(B)および、その他不要物をろ過、および遠心分離により取り除いた溶液を乾燥させたものを、180℃で3時間乾燥させ、それを融点+20℃の温度で2分間熱プレスしたのち、水の中に浸漬して急冷してシート化し、得られたシートをF.と同様の方法で誘電率を測定した。
H.無機粒子(B)の誘電率εb
D.で得られた無機粒子を、比誘電率/誘電正接 測定システム(キーコム(株)製、Model No.DPS18)を用いて、温度23℃、湿度65%RH環境下にて周波数10GHzで空洞共振器摂動法により誘電率を測定した。測定はn=3で行い、その平均値を求めた。
I.空隙率V、Va1
1層中の空隙率は以下の(B1)〜(B5)の手順で求めた。なお、測定はフィルム切断箇所を無作為に変更して計10回行い、その相加平均値でもって当該フィルムにおける空隙率V、および当該P1層における空隙率Va1(体積%)とした。また、フィルムにおける空隙率を求める場合は、(B1)において、厚み方向に観察位置を移動させて行い、一方の表面からもう一方の表面まで連続した画像を準備し、(B2)〜(B3)の手順に従って同様に求めた。
(B1)ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に潰すことなく、フィルム面方向に対して垂直に、フィルム長手方向(F.記載と同等の方法によって定義した方向)に対して平行に切断する。
(B2)次いで切断した断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、3000倍に拡大観察した画像を得る。なお、観察場所はP1層内において無作為に定めるものとするが、画像の上下方向がフィルムの厚み方向と、画像の左右方向がフィルムの長手方向と、それぞれ平行になるようにするものとする。
(B3)前記(B2)で得られる画像中におけるP1層の面積(P1層内に存在する空隙や無機粒子の面積も含む全面積)を計測し、これをAとする。なお、画像でP1層と他の層の界面が判別しにくい場合には、別途同じサンプルの断面について微分干渉顕微鏡を用いて偏光観察してP1層の界面位置を割り出し、P1層の面積を見積もる。
(B4)画像中のP1層内に存在する全ての空隙の面積を計測し、総面積をBとする。ここで、計測対象とするのは、空隙の全体が画像内に収まっているものに限られず、画像内に一部のみが現われている気泡も含むものとする。
(B5)BをAで除し(B/A)、それに100を乗じることにより、P1層内における空隙の面積割合を求め、この値でもって空隙率Va1(体積%)とした。
J.β分散ピーク値
JIS K−7244に基づいた方法により、引張モード、試料動的振動速さ(駆動周波数)は1Hz、チャック間距離5mm、歪振幅10μm、力振幅初期値100mN、昇温速度2℃/minでの測定条件にて、−120℃からポリエステル樹脂(A)の融点Tm−40℃まで温度依存性(温度分散)を測定した時に、−40〜−90℃近傍で現れるピークの極大値を求めた。
K.密着性
フィルムの両表面にコロナ処理を行い、回路基板用接着剤AW−32(共同薬品(株)製)を固化厚み10μmで塗布した後、12μmの銅箔(3EC−HTE、三井金属工業(株)製)を170℃に加熱された真空熱プレス装置で、圧力4MPaにて10分間プレスすることで両表面にラミネートし、銅箔/フィルム/銅箔の構成の積層体を作製した。この積層体の片側を横10mm×縦130mmサイズにサンプリングし、片側の銅箔と、フィルムの密着強度を、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分、角度90℃で引張試験を行い、最大接着強度を求めた。測定はn=5で行い、その平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が10N/10mm以上
A:接着強度が5N/10mm以上、10N/10mm未満
B:接着強度が3N/10mm以上、5N/10mm未満
C:接着強度が3N/10mm未満。
L.耐屈曲回数評価
フィルムを幅15mmの短冊型試験片にサンプリングし、株式会社マイズ試験機製MIT屈曲試試験機を使用して、荷重:9.8N、速度:175回/min、曲率半径(R):0.38mm、間隙:0.25mm、折り曲げ角:左右へ135°の条件で測定した。
測定はn=5で行い、その平均値を下記基準で評価した。
AA:破断までの回数が2000回以上
A:破断までの回数が1000回以上、2000回未満
B:破断までの回数が100回以上、1000回未満
C:破断までの回数が100回未満。
M.共振性パラメータ(Q値)
各フィルムに対して、王子計測機器(株)製マイクロ波方式分子配向計を用いて分子配向測定を行い、各フィルムの透過マイクロ波共振曲線を得た。次いで、分子鎖主軸の配向角方向のQ値(Q1)および、分子鎖主軸の配向角方向と直角な方向のQ値(Q2)を得られたフィルムの透過マイクロ波共振曲線からそれぞれ算出し、Q1とQ2の平均値((Q1+Q2)/2)をフィルムの共振性パラメータ(Q値)とした。
N.厚み変化率
I.にて得られたフィルムの断面画像から、フィルムの厚みを、10か所場所を変更して行い、その平均値でもって、フィルム厚みTf1とした。また、K.で得られた積層体の断面画像を、Iと同様の方法で測定し、その断面画像の中の、フィルム部分の厚みを10箇所場所を変えて測定し、その平均値を求めて、加工後のフィルム厚みTf2とした。
得られた、Tf1,Tf2をもとに下記式から厚み変化率を求めた。
厚み変化率(%)=(Tf1−Tf2)/Tf1×100
得られた厚み変化率から以下の通り判定した
AA:厚み変化率が3%以下
A:厚み変化率が3%を超えて5%以下
B:厚み変化率が5%を超えて7%以下
C:厚み変化率が7%を超える。
O.回路の耐屈曲回数評価
K.にて得られた積層体を用いて、片面の銅箔をパターンエッチングすることで、図1に示すパターンを形成する。また、もう一方の面の銅箔は全面をエッチングによって除去する。これを株式会社マイズ試験機製MIT屈曲試験機を使用して、荷重:9.8N、速度:175回/min、曲率半径(R):0.38mm、間隙:0.25mm、折り曲げ角:左右へ135°の条件で測定した。
測定はn=5で行い、その平均値を下記基準で評価した。
AA:破断までの回数が2000回以上
A:破断までの回数が1000回以上、2000回未満
B:破断までの回数が100回以上、1000回未満
C:破断までの回数が100回未満。
P.伝送特性
J.で得られた積層体の銅箔面に回路パターンとして配線幅140μm、長さ100mmのマイクロストリップラインを化学エッチング法により形成し、評価用のサンプルとした。上記のサンプルを温度23℃、湿度65%RH環境下で24時間放置した直後にネットワークアナライザー(Agilent Technology社製「8722ES」)とカスケードマイクロテック製プローブ(ACP40−250)を用いて10〜40GHzの伝送損失(dB/100mm)を測定し、その絶対値(dB/100mm)について下記基準で評価した。
AA:伝送損失の絶対値が10dB/100mm以下
A:伝送損失の絶対値が10dB/100mmより大きく、15dB/100mm以下
B:伝送損失の絶対値が15dB/100mmより大きく25dB/100mm以下
C:伝送損失の絶対値が25dB/100mmより大きい。
Q:結晶融解ピーク温度
JIS K−7122(1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用い、フィルムの試料量5mg、昇温速度20℃/minで25℃から350℃まで昇温して得られる示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)において、吸熱ピークである結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を求めた。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(原料)
・熱可塑性樹脂(A):
ポリエステル−1:酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分として1,2−エタンジオールを用いて重縮合反応を行い、固有粘度0.7のポリエチレンテレフタレートペレット(ジオール成分の主鎖炭素数が2)を得た。
ポリエステル−2:DFG1(ベルポリエステルプロダクツ社製)を使用した。固有粘度が1.1のポリエチレンテレフタレート(ジオール成分の主鎖炭素数が2)である。
ポリエステル−3:“Sorona(登録商標)” Bright(デュポン社製)を使用した。固有粘度が1.1のポリトリメチレンテレフタレート(ジオール成分の主鎖炭素数が3)である。
PPS−1:主成分モノマとして100モル部のp−ジクロロベンゼンを用いて重合を行い、融点が280℃のポリフェニレンサルファイド顆粒を得た。得られたポリフェニレンサルファイド顆粒を330℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、ストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてポリフェニレンサルファイドペレットを得た。
PPS−2:主成分モノマとして90モル部のp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして10モル部のm−ジクロロベンゼンを用いて重合を行い、融点が250℃のポリフェニレンサルファイド顆粒を得た。得られたポリフェニレンサルファイド顆粒を300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、ストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてポリフェニレンサルファイドペレットを得た。
・無機粒子(B)
粒子−1:平均粒径20μmの表面処理されたガラスビーズ(ユニチカ(株)ユニビーズ(登録商標)、UBS−0020EG)を用いた。非晶性の粒子であり、誘電率は3.0であった。
粒子−2:平均径16μmの表面処理されたアルミノシリケート(Quarzwerke社製、SILATHERM T 1360−012 EST)を用いた。結晶性の粒子であり、誘電率は6.0であった
粒子−3:平均径14μmのワラストナイト(キンセイマテック社製、FPW#400)を、ヘンシェルミキサーに入れ攪拌し、その状態でワラストナイト100質量%に対してシランカップリング剤(信越化学社製、KBM−403)が1質量%となるようにシランカップリング剤をスプレー噴霧して添加し、70℃で2時間加熱攪拌後、取り出すことで、表面処理されたワラストナイトを得た。結晶性の粒子であり、誘電率は6.0であった。
粒子―4:平均径10μmの酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ製、RF−10C)を用いた。結晶性の粒子であり、誘電率は10.0であった。
・マスターペレット
MB−1:同方向回転タイプのベント式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)を275℃に加熱し、ポリエステル−1を54質量部、ポリエステル−3を36質量部、無機粒子−1を10質量部、供給し、溶融混練後、ストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして無機粒子−1を10質量%含有するマスターペレット(MB−1)を作製した。
MB−2〜10:ポリエステル、無機粒子を表1の通りとした以外はMB−1と同じ方法で無機粒子を含有するマスターペレット(MB−2〜10)を作製した。
MB−11:同方向回転タイプのベント式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)を300℃に加熱し、PPS−2を60質量部、粒子―1を40質量部、供給し、溶融混練後、ストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして粒子−1を40質量%含有するマスターペレット(MB−11)を作製した。
MB−12〜MB−18: PPS−1、無機粒子を表1の通りとした以外はMB−11と同じ方法で無機粒子を含有するマスターペレット(MB−12〜18)を作製した。
(実施例1−1)
マスターペレット(MB−1)を50質量部、ポリエステル−2を50質量部の割合で2種類の原料を混合し、180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機に供給し、窒素雰囲気下、280℃の温度で溶融させ、Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸のシート状フィルムを得た。
続いて、該未延伸フィルムを90℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、95℃の温度の加熱ロールを用いて7000%/minの速度で長手方向(縦方向)に1.9倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで200%/minの速度で長手方向に直角な方向(幅方向)に3.0倍延伸した。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーン1で220℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに熱処理ゾーン2で150℃の熱処理を行った。なお、熱処理に際し、熱処理ゾーン1−熱処理ゾーン2間で4%の弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚み125μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を評価した結果を表2−1に示す。低誘電率で機械特性、密着性に優れるフィルムであることが分かった。また得られたフィルムを用いて作製した回路の評価結果を表2−1に示す。設計値との厚みの乖離が少なく、機械特性、伝送特性に優れたものであった。
(実施例1−2〜1−8)
製膜に用いる原料を表2−1の通りとした以外は、実施例1と同様にして、厚み125μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表2−1に示す。
(比較例1−1、1−2)
製膜に用いる原料を表2−1の通りとした以外は、実施例1と同様にして、厚み125μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性、および回路の特性を評価した結果を表2−1に示す。比較例1−1では伝送特性に劣り、比較例1−2は設計値との厚みの乖離が大きい結果であった。
(比較例1−3)
製膜に用いる原料を表2−1の通りとし、延伸、熱処理をしない以外は、実施例1−1と同様にして、厚み125μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性、および回路の特性を評価した結果を表2−1に示す。厚みの乖離、機械特性、伝送特性に劣るものであった。
(実施例2−1)
2台の押出機(押出機Aおよび押出機B)を用意し、押出機Aにはマスターペレット(MB−1)を50質量部、ポリエステル−2を50質量部の割合で2種類の原料を混合したものを180℃の温度で3時間真空乾燥した後に供給し、押出機Bには、ポリエステル−1のみを180℃の温度で3時間真空乾燥した後に供給した。供給された樹脂は、それぞれの押出機によって窒素雰囲気下、280℃の温度で溶融された後、押出機Bの樹脂が押出機Aの樹脂の両表層に来るように3層に積層し、Tダイ口金に導入した。この時、3層の積層厚みの比が、1:12:1になるように積層した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸のシート状フィルムを得た。
続いて、該未延伸フィルムを90℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、95℃の温度の加熱ロールを用いて7000%/minの速度で長手方向(縦方向)に1.8倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで200%/minの速度で長手方向に直角な方向(幅方向)に3.0倍延伸した。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーン1で220℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに熱処理ゾーン2で150℃の熱処理を行った。なお、熱処理に際し、熱処理ゾーン1−熱処理ゾーン2間で4%の弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表2−2に示す。低誘電率で機械特性、密着性に優れるフィルムであることが分かった。また得られたフィルムを用いて作製した回路の評価結果を表2−2に示す。設計値との厚みの乖離が少なく、機械特性、伝送特性に優れたものであった。
(実施例2−2〜2−8)
製膜に用いる原料を表2−2の通りとした以外は、実施例2−1と同様にして、厚み125μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表2−2に示す。
(実施例2−9)
製膜に用いる原料を表2−2の通りとし、熱処理ゾーン1の温度を235℃とした以外は実施例2−1と同様にして、厚み125μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムは結晶融解ピークが2つ観察され、最小のピークトップ温度が228℃、最大のピークトップ温度が250℃であった。フィルムの特性を評価した結果を表2−2に示す。
(比較例2−1、2−2)
製膜に用いる原料を表2−2の通りとした以外は、実施例2−1と同様にして、厚み125μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性、および回路の特性を評価した結果を表2−2に示す。比較例2−1では伝送特性に劣り、比較例2−2は設計値との厚みの乖離が大きい結果であった。
(比較例2−3)
製膜に用いる原料を表2−2の通りとし、延伸、熱処理をしない以外は、実施例1−1と同様にして、厚み125μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性、および回路の特性を評価した結果を表2−2に示す。厚みの乖離、機械特性、伝送特性に劣るものであった。
(実施例3−1)
2台の押出機(押出機Aおよび押出機B)を用意し、押出機Aにはマスターペレット(MB−11)を50質量部、PPS−2を50質量部の割合で2種類の原料を混合したものを供給し、押出機Bには、PPS−1のみを供給した。供給された樹脂は、それぞれの押出機によって窒素雰囲気下、3200℃の温度で溶融された後、押出機Bの樹脂が押出機Aの樹脂の両表層に来るように3層に積層し、Tダイ口金に導入した。この時、3層の積層厚みの比が、1:12:1になるように積層した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸のシート状フィルムを得た。
続いて、該未延伸フィルムを95℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、100℃の温度の加熱ロールを用いて7000%/minの速度で長手方向(縦方向)に2.3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の100℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで200%/minの速度で長手方向に直角な方向(幅方向)に3.0倍延伸した。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーン1で263℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに熱処理ゾーン2で230℃の熱処理を行った。なお、熱処理に際し、熱処理ゾーン1−熱処理ゾーン2間で4%の弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚み100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表3に示す。低誘電率で機械特性、密着性に優れるフィルムであることが分かった。また得られたフィルムを用いて作製した回路の評価結果を表3に示す。設計値との厚みの乖離が少なく、機械特性、伝送特性に優れたものであった。
(実施例3−2〜3−5)
製膜に用いる原料を表3の通りとした以外は、実施例3−1と同様にして、厚み100μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表3に示す。
(実施例3−6〜3〜8)
押出機Aのみを用いて、製膜に用いる原料を表3の通りとした以外は実施例3−1と同様にして、厚み100μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表3に示す。
(比較例3−1)
押出機Aのみを用いて、製膜に用いる原料を表3の通りとした以外は実施例3−1と同様にして、厚み100μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性、および回路の特性を評価した結果を表3に示す。設計値との厚みの乖離が大きい結果であった。
(比較例3−2)
製膜に用いる原料を表3の通りとした以外は実施例3−1と同様にして、厚み100μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性、および回路の特性を評価した結果を表3に示す。伝送特性に劣るものであった
(比較例3−2)
熱処理ゾーン1の温度を240℃とした以外は実施例3−1と同様にして、厚み100μmの配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性、および回路の特性を評価した結果を表3に示す。設計値との厚みの乖離が大きい結果であった。
Figure 2020050870
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Figure 2020050870
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本発明の積層体およびそれを用いた回路基板は、高周波伝送特性、耐屈曲性、回路加工性に優れることから、電気・電子機器などに使用される高周波アンテナ基板、高速伝送ケーブルとして好適に用いることができる。
1 回路パターン(回路の銅線の幅L/銅線の間隔S=1mm/1mm)

Claims (16)

  1. 熱可塑性樹脂(A)を主成分とし、無機粒子(B)を含有するフィルムであって、フィルムの誘電率をεf、熱可塑性樹脂(A)の誘電率をεa、無機粒子(B)の誘電率をεbとした場合、εf<εaおよびεf<εbであり、かつフィルムの空隙率が7体積%以下であるフィルム。
  2. フィルムの誘電率εfと熱可塑性樹脂(A)の誘電率εaの差(εf−εa)が0.2以上であり、フィルムの誘電率εfと無機粒子(A)の誘電率εbの差(εf−εb)が0.2以上である請求項1記載のフィルム。
  3. 前記無機粒子(B)の含有量がフィルム全体に対して2質量%以上である、請求項1または2記載のフィルム。
  4. マイクロ波方式配向測定により求められる共振性パラメータ(Q値)が3000以上である請求項1〜3いずれかに記載のフィルム。
  5. フィルムの誘電率εfが2.8以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
  6. MIT試験での耐屈曲回数が100回以上である請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
  7. 前記無機粒子(B)の誘電率が5.0以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
  8. 前記無機粒子(B)が非晶性である請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
  9. 熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂であり、周波数1Hzでの動的粘弾性測定により得られるβ分散ピークが0.040以下である請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム。
  10. 前記ポリエステル樹脂が、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分を主たる構成成分とするポリエステル樹脂であり、前記ジオール成分が、主鎖炭素数が偶数のジオール(a)と、主鎖炭素数が奇数のジオール(b)を含み、前記ジオール(a)とジオール(b)のモル比(a)/(b)が30/70〜97/3である請求項9に記載のフィルム。
  11. 熱可塑性樹脂(A)がポリアリーレンスルフィド系樹脂を主成分とする請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム。
  12. フィルムの試料量5mg、昇温速度20℃/minで得られる示差走査熱量(DSC)測定の1stRunにおいて結晶融解ピークが2つ以上有り、前記結晶融解ピークの最も高いピークトップ温度と最も低いピークトップ温度の差が10℃以上50℃以下である請求項1〜11のいずれかに記載のフィルム。
  13. 請求項1〜12いずれかに記載のフィルムを用いた回路。
  14. 請求項1〜12いずれかに記載のフィルムを用いたケーブル。
  15. 請求項1〜12いずれかに記載のフィルムを用いた電気絶縁シート。
  16. 請求項15に記載の電気絶縁シートを用いた回転機。
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WO2024171641A1 (ja) * 2023-02-14 2024-08-22 ステラケミファ株式会社 低誘電損失樹脂組成物用の無機充填剤、低誘電損失樹脂組成物用のスラリー組成物、低誘電損失樹脂組成物、高周波機器用成形体及び高周波機器

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