JPH11288622A - 電気絶縁用ポリエステルフィルム - Google Patents

電気絶縁用ポリエステルフィルム

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JPH11288622A
JPH11288622A JP10089799A JP8979998A JPH11288622A JP H11288622 A JPH11288622 A JP H11288622A JP 10089799 A JP10089799 A JP 10089799A JP 8979998 A JP8979998 A JP 8979998A JP H11288622 A JPH11288622 A JP H11288622A
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film
polyester film
dielectric constant
weight
polyethylene terephthalate
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JP10089799A
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Inventor
Takashi Ueda
隆司 上田
Itsuo Nagai
逸夫 永井
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Original Assignee
Toray Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 漏洩電流の低減、電力損失の低減、電子信号
の伝播遅延の抑制と伝播速度の向上、耐熱性の改善、耐
絶縁破壊特性の向上、オリゴマーの低減、組み込み後の
セット安定性の向上、および着色によるセット組み込み
確認の容易性の向上などを図った電子・電気機器用絶縁
材料として好適な電気絶縁用ポリエステルフィルムを提
供する。 【解決手段】 ポリエチレンテレフタレートを主たる構
成成分とする二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
該ポリエステルフィルムの1kHzでの誘電率が1.5
〜3.0の範囲内であり、かつエチルアルコールに浸し
た時の見かけの密度変化率△Wが10%以下であること
を特徴とする電気絶縁用ポリエステルフィルムである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は主として冷凍機や空
調機などのコンプレッサー用モーター絶縁用途や電子機
器などのプリント配線基板に使用される電気絶縁用ポリ
エステルフィルムに関し、さらに詳しくは、漏洩電流の
低減、電力損失の低減、電子信号の伝播遅延の抑制と伝
播速度の向上、耐熱性の改善、耐絶縁破壊特性の向上、
オリゴマーの低減、組み込み後のセット安定性の向上お
よび着色によるセット組み込み確認の容易性の向上など
を図った電気絶縁用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルフィルムは、絶縁特性と耐
熱性、成形加工性の点でバランスのとれた特性を有する
ことから、従来より電気絶縁用フィルムとして広範に使
用されている。
【0003】しかし、近年の電気・電子機器の小型化
や、高性能化などに伴い、例えば冷凍機などに用いられ
るコンプレッサー用モーター絶縁用途に使用される絶縁
フィルムには、高い耐熱性や冷媒に対してオリゴマーの
抽出量が少なく、かつ耐加水分解性が高いという特性が
要求されるようになってきている。
【0004】また、上述した従来の電気絶縁用フィルム
に要求されてきた特性に加えて、最近では大量の情報を
短時間に処理、伝達する目的で、電子・電気機器の高周
波化が進展してきており、この高周波化に伴い電気絶縁
材料には新たな改良が要求されるようになった。
【0005】具体的には、例えばプリント配線基盤に用
いられる絶縁材料においては、電子機器の高周波化によ
って生じる伝播電子信号の遅延を低減することや、高速
に電子信号を伝播すること、さらには絶縁材料による電
力損失を低減することが要求されている。
【0006】一方、電気機器用途においては、例えばモ
ーター用絶縁材料においては、高周波化(インバータ制
御)による漏洩電流の増大や、必要以上の絶縁材料によ
る電力消費によってモーター内の発熱による温度上昇と
いった問題が生じている。
【0007】このような課題に対応して、電気絶縁用フ
ィルムとして有用なポリエチレンテレフタレートフィル
ムとしては、例えば特開昭50−45893号公報、特
開昭50−53480号公報、特開昭50−66534
号公報、特開昭50−144798号公報、特開昭52
−98054号公報、特開昭52−136400号公
報、特開昭54−65777号公報、特開昭54−11
9697号公報、特開昭54−135398号公報、特
開昭54−135399号公報、特開昭58−2095
30号公報、特開昭59−41327号公報、特開平3
−24936号公報、および特開平3−152805号
公報などにより、従来から多くの提案がなされている
が、これらはいずれも高周波化によって増大する漏洩電
流や電力損失を抜本的に低減できるものではなかった。
【0008】漏洩電流を低減する従来例としては、空孔
を有し、かつ誘電率が特定値以下の耐熱性低誘電率プラ
スチック絶縁フィルムが、特開平9−100363号公
報により提案されている。この提案の目的は、機器の高
周波化に伴う絶縁部での漏洩電流を低減させるために、
フィルムの低誘電率化を行うことであるが、この方法に
より得られる絶縁フィルムは、実際に電気絶縁用途に使
用される際に、空孔形成によりコストが上昇するばかり
か、本来素材の持つ成形加工性や耐熱性が失われてしま
うという問題を有するものであり、実用に耐えるもので
はなかった。
【0009】さらには、特定の見かけ密度を有すること
により漏洩電流を低減したポリエチレンテレフタレート
フィルムが、特開平9−286867号公報により提案
されている。この提案によれば、確かにフィルム単独で
の測定では漏洩電流が低減されるものと認められるが、
絶縁油やエポキシ樹脂に浸った状態では、フィルム内部
に絶縁油やエポキシ樹脂が浸透するため、機器で実際に
使用したときには、顕著な漏洩電流の低減効果を得るこ
とができず、実用に耐えるものではないばかりか、室温
から120℃付近までの温度範囲全体における電力損失
を抑えることが困難であるという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、漏洩
電流の低減、電力損失の低減、電子信号の伝播遅延の抑
制と伝播速度の向上、耐熱性の改善、耐絶縁破壊特性の
向上、オリゴマーの低減、組み込み後のセット安定性の
向上、および着色によるセット組み込み確認の容易性の
向上などを図った電子・電気機器用絶縁材料として好適
な電気絶縁用ポリエステルフィルムを提供することにあ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の電気絶縁用ポリエステルフィルムは、ポリエチレン
テレフタレートを主たる構成成分とする二軸延伸ポリエ
ステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムの1
kHzでの誘電率が1.5〜3.0の範囲内であり、か
つエチルアルコールに浸した時の見かけの密度変化率△
Wが10%以下であることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明において、ポリエステルフ
ィルムの主たる構成成分であるポリエチレンテレフタレ
ートとは、エチレンテレフタレート単位が95mol%
以上のポリエステルであり、5mol%以下の割合で共
重合成分が共重合したものであってもよい。
【0013】上記共重合成分としては、例えばナフタレ
ン−2.6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカ
ルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、フタル
酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフ
ェニルエタンジカルボン酸などのジカルボン酸、プロピ
レングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘ
キサンジメタノールなどのグリコール、およびp−オキ
シ安息香酸などのオキシカルボン酸などが挙げられる。
【0014】ポリエチレンテレフタレートとしては、例
えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなど
の一部官能性化合物によって末端の水酸基および/また
はカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであ
ってもよく、あるいはグリセリン、ペンタエリスリトー
ル、トリメリト酸、ピロメリト酸などの3官能以上の成
分を極少量(実質的に線状のポリマーが得られる範囲)
共重合したものであってもよい。
【0015】本発明のポリエステルフィルムを構成する
ポリエチレンテレフタレートは、その固有粘度が0.7
〜1.5dl/gの範囲内にあることが好ましく、より
好ましくは0.8〜1.3dl/g、さらに好ましくは
0.85〜1.2dl/gの範囲内にあることが望まし
い。固有粘度が0.7dl/g未満では、電気絶縁用途
において耐圧性、耐熱性、低オリゴマー化、成形加工
性、セット組み込み後の安定性が低下することがあり、
固有粘度が1.5dl/gを越えると、溶融押出が不安
定となり、生産性が低下する場合があるため好ましくな
い。
【0016】かかるポリエチレンテレフタレートのM/
Pは1.8以下が好ましく、より好ましくは1.4以
下、さらに好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.
0以下であることが、常温および高温における絶縁抵抗
が向上することから望ましい。ここで、Mは重合触媒を
除くポリマー中の全金属元素量であり、Pはリン元素量
であり、M/Pはそのモル比を示す。
【0017】上記ポリエチレンテレフタレートには、例
えば安定剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を含有さ
せることができる。また、ポリエステルフィルムの滑り
性を改良するため、フィルム表面に凹凸を形成せしめる
添加剤として、ポリエチレンテレフタレート中に不活性
な固体微粒子を配合していもよい。かかる固体微粒子と
しては、例えば二酸化ケイ素、無水ケイ酸、含水ケイ
酸、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム(焼成物、
水和物などを含む)、燐酸1リチウム、燐酸3リチウ
ム、燐酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、安息
香酸リチウム、およびこれらの化合物の複塩(水和物を
含む)、ガラス粉、粘度(カオリン、ベンナイト、白土
などを含む)、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒
子やシリコーン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン
樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの樹脂微粒子を用いる
ことができる。これら固体微粒子は2種類以上の併用系
であってもよい。
【0018】固体微粒子の形状は、球状、塊状あるいは
偏平状などのいずれであってもよく、またその硬度、比
重、色などについても特に制限はないが、平均粒径が等
価球直径で0.1〜10μm、特に0.1〜3μmの範
囲が好ましい。また、配合量はポリエチレンテレフタレ
ートに対して0.001〜5重量%、特に0.004〜
1重量%の範囲内であることが、得られるフィルムの滑
り性が十分に改良されることから好ましい。
【0019】本発明のポリエステルフィルムは、かかる
ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分として用
いることにより得られるフィルムであるが、二軸延伸フ
ィルムであることが、機械的特性、耐熱性、電気的特
性、および成形加工性を全て満足するために必要であ
る。
【0020】また、本発明のポリエステルフィルムは、
漏洩電流の低減、電力損失の低減、電子信号の伝播遅延
の抑制と伝播速度の向上を図るために、フィルムの1k
Hzの誘電率を現行の3.2〜3.3の範囲内から、
1.5〜3.0の範囲内に下げることが必要である。誘
電率が3.0を越えるフィルムでは、目的とする特性の
改良効果が乏しく、また誘電率が1.5未満では、目的
とする特性が理屈的にはさらに良好となるとは考えられ
るが、逆に機械的特性、耐熱性、絶縁破壊特性、および
成形加工性が悪化し、実用に耐えなくなるため好ましく
ない。ポリエステルフィルムの誘電率は、1.7〜2.
8の範囲内であることが好ましく、1.8〜2.6の範
囲内であることが最も好ましい。
【0021】さらに本発明のポリエステルフィルムは、
エチルアルコールに浸した時の見かけの密度変化率△W
が10%以下であることが必要である。エチルアルコー
ルに浸した時の見かけの密度変化率△Wは、次のように
定義する。
【0022】すなわち、23℃の雰囲気下、超音波洗浄
機(日本電機工業(株)製パールクリーン)に100m
lの特級エチルアルコールを加え、さらに5×5mm角
に裁断したフィルムサンプルを、サンプルが完全にエチ
ルアルコール中に漬かる状態にして30分間、超音波洗
浄し、サンプル5個を特にサンプルの表面に付着してい
るエチルアルコール拭き取り作業を行うことなく、臭化
ナトリウム水溶液−エチルアルコール系の密度勾配管
(25℃)に加えることにより、それぞれについての見
かけの密度を求め、5個の平均値として見かけ密度d1
を求める。
【0023】また、超音波洗浄を行わなかった5×5m
m角に裁断したフィルムサンプル5個についても、同様
に臭化ナトリウム水溶液−エチルアルコール系の密度勾
配管(25℃)でそれぞれの見かけ密度を求め、5個の
平均値として見かけ密度d0を求める。そして、下記の
式から見かけの密度変化率△W(%)を求める。 △W(%)=100×(d1 −d0 )/d0
【0024】本発明のポリエステルフィルムにおいて、
エチルアルコールに浸した時の見かけの密度変化率△W
を10%以下にしなければならない理由は、実際にハー
メチックモーター絶縁材料として使用したり、プリント
配線基板として使用する場合に、本発明のポリエステル
フィルムよりも相対的に誘電率の高い絶縁油や冷媒、熱
硬化性樹脂などに浸された状態となるため、フィルム内
部にそれら絶縁油や冷媒、熱硬化性樹脂が進入すると誘
電率の上昇が認められ、期待される漏洩電流の低減、電
力損失の低減、電子信号の伝播遅延の抑制と伝播速度の
向上の効果が低下するからである。また絶縁材料の誘電
率が経時で変化すると、絶縁材料の誘電率のばらつきが
大きくなり、製品品質が安定しないものとなるため、単
にフィルムの誘電率を誘電率の上昇分を見込んで低く設
定するだけでは不適当である。
【0025】このような不都合を改善するためには、使
用する絶縁油や冷媒、熱硬化性樹脂にそれぞれについて
フィルムを浸した時の誘電率の変化を最小限にすること
が必要となるが、本発明においては、ポリエステルフィ
ルムをエチルアルコールに浸したときの見かけの密度変
化率△Wを10%以下に設計することによって、いずれ
の場合も誘電率の変化を実用上問題のない範囲に抑える
ことができる。
【0026】すなわち、エチルアルコールに浸したとき
の見かけの密度変化率△Wを10%以下に設定したフィ
ルムとすることにより、絶縁油、冷媒や熱硬化性樹脂に
浸した場合でも、同様に改善することができ、フィルム
をエチルアルコールに浸したときの見かけの密度変化率
△Wが10%を越える場合は、絶縁材料の誘電率のばら
つきが大きくなり、製品の品質が安定しないものとなる
ばかりか、フィルムの誘電率から期待される漏洩電流の
低減、電力損失の低減、電子信号の伝播遅延の抑制と伝
播速度の向上の効果が低下するため好ましくないことが
判明した。
【0027】上述した理由から、エチルアルコールに浸
したときの見かけの密度変化率△Wについては、8%以
下であることがより好ましく、5%以下であることがさ
らに好ましく、3%以下であることが最も好ましい。な
お、下限としては特に限定しないが、エチルアルコール
に浸したときの見かけの密度変化率△Wが限りなく0%
に近いものが、上述の理由からより理想的である。
【0028】さらに、本発明のポリエステルフィルム
は、下記式(1)で表される誘電正接の変化率△Dが−
40〜20%の範囲内にあることが、電力損失の温度特
性を良好とするために好ましい。△Dが20%を越える
フィルムでは、絶縁フィルムを装填した機器を長期に使
用した場合、フィルム内部での発熱と誘電正接の上昇を
繰り返す結果、経時で電力損失が大きくなり機器の故障
の原因となる場合がある。また、△Dが−40%より小
さいフィルムでは、60℃未満での誘電正接が大きいこ
とになり、室温付近での電力損失の低減効果に乏しいも
のとなる場合がある。△Dは−30〜15%の範囲内で
あることがさらに好ましく、最も好ましくは−20〜1
0%の範囲内がよい。
【0029】 △D=100x(D80−D60)/D60 (1) (ここでD80は80℃、1kHzにおけるフィルムの誘
電正接であり、D60は60℃、1kHzにおけるフィル
ムの誘電正接である)。
【0030】さらに、電力損失の低減には、誘電損失の
温度特性(△D)を良好にするのみでは不十分な場合が
あり、使用温度(室温〜130℃)の全範囲で電力損失
の絶対値を低減することが好ましい。その指標として、
二軸延伸したポリエチレンテレフタレートではα分散と
して120℃付近に誘電正接のピークをとるという特異
性があるので、120℃付近での誘電正接が目安とな
る。
【0031】すなわち、本発明のポリエステルフィルム
においては、120℃、1kHzでの誘電正接D120
0.01以下であることが、使用温度(室温〜130
℃)の全範囲での電力損失の低減を図るために好まし
い。誘電正接D120 が0.01を越えるフィルムでは、
機器の高周波化に対応した電力損失の低減が乏しい場合
がある。誘電正接D120 のさらに好ましい範囲は0.0
08以下であり、最も好ましくは0.007である。
【0032】本発明の特定の誘電率を有し、エチルアル
コールに浸したときの見かけの密度変化率△Wが特定値
以下であるポリエステルフィルムとするためには、フィ
ルム内部に誘電率や誘電正接の極めて小さい空気を包み
込む空孔を含有せしめ、フィルム全体での誘電率を低下
させることが好ましい。また、それぞれの空孔が他の空
孔と連結せずに独立して存在するようにすることが、フ
ィルムを絶縁油、冷媒や熱硬化性樹脂に浸したときに、
それぞれがフィルム内部の奥深くまで浸透せず、特定値
以下の見かけの密度変化率△Wに抑えることができるた
め好ましい。
【0033】空孔をフィルム内部に生成する手法は特に
限定しないが、(1)押出時に炭酸ガスなどを溶融した
ポリエチレンテレフタレート中に注入し、発泡押出する
手法、および(2)ポリエチレンテレフタレートに、予
めポリエチレンテレフタレートに対し非相溶な添加剤
(非相溶性添加剤)を添加しておき、溶融押出後、フィ
ルムを二軸延伸する際の延伸張力により、ポリエチレン
テレフタレートと該非相溶性添加剤との間で起こる界面
剥離を利用する手法が、電気絶縁用フィルムとして使用
する場合、経時で余分なガスがフィルムから発生するこ
とを最小限に抑える手法であることから好ましい。
【0034】なお、予めアゾジカルボンアミドに代表さ
れる発泡剤を添加しておき、二軸延伸後にフィルムに熱
を加え、フィルム内部に空孔を形成する手法は、電気絶
縁材料としてフィルムを装置に装填した後、発泡剤の未
発泡物が経時で発泡し、フィルムからガスが発生するこ
とから好ましくなく、さらに発泡残差がフィルムの誘電
正接を悪化させることからも好ましくない。
【0035】装填後にフィルムから経時で発生するガス
は、例えば冷凍機などに用いられるハーメチックモータ
ー絶縁用途に使用される絶縁フィルムにおいて、冷媒に
よる冷却効率の低下を招くことがあるため、これを最小
限に抑えることが好ましく、またプリント基盤に使用さ
れる絶縁フィルムにおいても、基盤の微妙な寸法変化を
招くため、これを最小限に抑えることが好ましい。
【0036】ポリエチレンテレフタレートに添加する非
相溶性添加剤としては、上述した不活性な微粒子やポリ
カーボネート、ポリオレフィン、ポリアミドなどの熱可
塑性樹脂が挙げられる。
【0037】ここで、非相溶性添加剤として不活性な固
体微粒子を用いる場合は、炭酸カルシウム、酸化アルミ
ニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシ
ウム、および二酸化ケイ素が好ましく、特に炭酸カルシ
ウムが効率的に空孔を形成するため好ましく使用され
る。また、炭酸カルシウムの結晶形態の50重量%がカ
ルサイト型であることが、不純物を少なくでき、しかも
不純物が少ないフィルムが得られやすいためさらに好ま
しい。
【0038】固体微粒子の形状は、球状、塊状あるいは
偏平状などのいずれであってもよく、またその硬度、比
重、色などについても特に制限はないが、平均粒径が等
価球直径で0.5〜5μm、特に0.8〜2μmの範囲
内であることが、効率的に空孔を形成し、それぞれの空
孔を連結せず独立に存在せしめるようにするために好ま
しく、さらにはフィルムの切断端部からの固体微粒子の
脱落を最小限に抑えることができることからも好まし
い。
【0039】また、配合量はポリエチレンテレフタレー
トに対して5〜30重量%、特に8〜15重量%である
ことが、フィルムの生産性と適度な誘電率と誘電正接D
120とするために好ましい。また、固体微粒子を用いる
場合は、これを重合段階で添加する方法が好ましい。具
体的には、エチレングリコールに添加しておく方法など
が好ましい。また、炭酸カルシウム粒子の場合は、添加
時にリン化合物を添加し、黄化や発泡を防ぐことが好ま
しい。
【0040】非相溶性添加剤として熱可塑性樹脂を用い
る場合は、ポリオレフィンが効率的に空孔を形成するた
めに好ましい。非相溶性添加剤として用いる熱可塑性樹
脂は、溶融押出時に溶融し、スクリューによるせん断に
よりポリエチレンテレフタレート中において粒状に存在
し、これが二軸延伸時に発現する空孔の核となる。この
場合、空孔核の粒径をコントロールすることが、固体微
粒子を添加する場合と同様に効率的に空孔を形成せし
め、それぞれの空孔が連結せず独立に存在せしめるため
に重要である。熱可塑性樹脂の粒径をコントロールする
ためには、使用する熱可塑性樹脂の溶融粘度や界面張力
を適正化することが好ましく、例えば熱可塑性樹脂の溶
融粘度を下げることや、表面張力を下げることにより粒
径は小さくなる傾向となる。
【0041】本発明の場合、ポリエチレンテレフタレー
トと非相溶な熱可塑性樹脂の粒径は小さいことが、効率
的に空孔を形成せしめ、それぞれの空孔が連結せず独立
に存在せしめるために好ましく、さらにフィルムの切断
端部からの固体微粒子の脱落を最小限に抑えることがで
きることからも好ましく、手法として熱可塑性樹脂の溶
融粘度を低く設定することが好ましい。具体的には、2
60℃、5kgにおけるメルトフローレートが50g/
10分以上であることが好ましい。一方、260℃、5
kgにおけるメルトフローレートが500g/10分以
下であることが、ポリマーの溶融押出の安定性の点で好
ましい。
【0042】溶融粘度を適正化する手法として、熱可塑
性樹脂の重合度を調整したり、共重合により調整するこ
とが好ましい。一方、相溶化剤の添加により表面張力を
下げる手法もあるが、例えばポリアルキレングリコール
またはその共重合体など、より具体的にはポリエチレン
グリコールやポリプロピレングリコールなどは、絶縁性
には問題はないが、耐熱性や△Dを悪化する傾向にあ
り、界面活性剤などでは耐熱性には問題はないが、絶縁
性や△Dが悪化する傾向にあるので相溶化剤の種類と配
合量には注意を要し、好ましくは添加しないものがよ
い。
【0043】本発明のポリエステルフィルムは、必ずし
も単膜フィルムである必要はなく、片面または両面にポ
リエチレンテレフタレート(表面粗さを制御するために
添加する固体微粒子の有無を問わない)の単独層が積層
され、外層のポリエステルフィルムの見かけ密度が、内
層の見かけ密度より大きいことが、機械的強度が高く、
しかもフィルム面からの空孔核の脱落を最小限に抑える
ことができることから好ましい。
【0044】すなわち、外層には本発明の範囲外の層を
有していてもよく、トータルのフィルムとして本発明の
誘電率を有すればよい。この場合の被覆層のポリエステ
ルフィルムの全体の厚みに対する比率は、1/20以
上、1/2未満であることが、本発明のポリエステルフ
ィルムの機械的強度の点から好ましい。被覆層のポリエ
ステルフィルムの全体の厚みに対する比率が1/20未
満では、成形加工時にフィルムに割れや亀裂が生じる場
合がある。
【0045】また、本発明のポリエステルフィルムは、
内層および被覆層を構成するポリエチレンテレフタレー
トを融解し、口金より押し出す前に合流させて押し出
し、冷却固化後延伸を行うことが、被覆層と内層の界面
でのフィルムの割れや亀裂を防止するために好ましい。
さらに、内層と被覆層に用いるポリエチレンテレフタレ
ートの固有粘度差を0.1dl/g以下、好ましくは
0.05dl/g以下とすることが、被覆層と内層の界
面でのフィルムの割れや亀裂を防止するために好まし
い。
【0046】本発明のポリエステルフィルムの好ましい
中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.1μm以下であ
り、さらに好ましくは0.08μm以下、最も好ましく
は0.06μm以下である。表面粗さがこの値より大き
いと絶縁破壊特性が低下する場合がある。Raが0.0
1μm未満であるとフィルムの滑り性が悪化し取扱が困
難となる場合がある。
【0047】本発明のポリエステルフィルムは、電気・
電子機器の絶縁材料として、上述したモーター用絶縁材
料やプリント配線基盤として好適に用いられるが、その
優れた誘電特性を利用して、自動車用電装部品などの電
気配線部分または家庭用屋内、屋外配線などのフラット
電線の構成材料として、電線を被覆して絶縁保護するた
めに用いられる絶縁テープの基材にも好適に用いること
ができる。
【0048】次に本発明の電気絶縁性ポリエステルフィ
ルム製造方法の一例について説明する。まず、上述した
ポリエチレンテレフタレートに、非相溶な熱可塑性樹脂
や固体微粒子を添加し、これを押出機に供給し、Tダイ
より押出し、シート状に成形する。このシートをポリエ
ステルのガラス転移温度以上に加熱し、長手方向に延伸
する。すなわち、このフィルムの両端をクリップで把持
しながらテンターに導きガラス転移温度以上に加熱し、
長手に垂直な方向(幅方向)に延伸し、引続き熱処理
(必要により、幅方向、長手方向に弛緩を加えてもよ
い)を行うことにより得られる。
【0049】熱処理を行う際の温度は、JIS−C23
18に記載のフィルムの加熱収縮率を保持する必要性か
ら200〜250℃とすることが好ましい。このことか
ら上記非相溶性添加剤としての熱可塑性樹脂の融点が2
00〜300℃であることが、本発明の誘電率を達成す
るために好ましい。上記非相溶な熱可塑性樹脂の融点が
200℃未満では、フィルムの熱処理において溶融し、
空孔の形態が厚み方向につぶれるため、空孔による誘電
率の低減効果が得られにくくなる場合があり、また融点
が300℃を越えると、ポリエチレンテレフタレートと
混合して溶融押出することが困難となる場合がある。
【0050】したがって、上記非相溶な熱可塑性樹脂と
しては、空孔形成効果の高いポリオレフィンの中でも、
ポリメチルペンテン(融点が約240℃)や結晶性ポリ
スチレン(メタロセン触媒を用いて重合した立体規則性
の高いポリスチレンであり、立体構造がシンジオタクチ
ックなホモポリスチレンで融点が約270℃、立体構造
がアイソタクチックなホモポリスチレンで融点が約24
0℃である)を主構成成分とし、必要により共重合する
ことで融点を調整することが好ましい。
【0051】
【実施例】以下に説明する実施例において、物性および
評価の測定方法は、以下に述べる手法により行った。 (1)フィルム誘電率 JIS−C2318に準じ測定した。
【0052】(2)見かけの密度変化率△W 23℃の雰囲気下、超音波洗浄機(日本電機工業(株)
製パールクリーン)に100mlの特級エチルアルコー
ルを加え、さらに5×5mm角に裁断したフィルムサン
プルをサンプルが完全にエチルアルコール中に漬かる状
態にし30分間、超音波洗浄した。次に、洗浄したサン
プル5個を特にサンプルの表面に付着しているエチルア
ルコール拭き取り作業を行うことなく、臭化ナトリウム
水溶液−エチルアルコール系の密度勾配管(25℃)に
加え、それぞれの見かけの密度を求め、5個の平均値と
して見かけ密度d1 を求めた。
【0053】また、超音波洗浄を行わなかった5×5m
m角に裁断したフィルムサンプル5個についても、臭化
ナトリウム水溶液−エチルアルコール系の密度勾配管
(25℃)でそれぞれの見かけの密度を求め、5個の平
均値として見かけ密度d0 を求め、以下の式から見かけ
の密度変化率△W(%)を求めた。 △(%)=100×(d1 −d0 )/d0 (3)誘電正接D60、D80、D120
【0054】直径18mmの円状にアルミニウムを両面
に蒸着したフィルムサンプルを誘電率分析装置(TAイ
ンストルメント社製 DEA2970)にセットし、空
気雰囲気中、昇温速度2℃/minで誘電正接の各温度
(60℃、80℃、120℃)に対する値(D60
80、D120 )を求めた。
【0055】(4)融点 示差走査熱量計としてセイコー電子工業(株)製DSC
(RDC220)、データ解析装置として同社製ディス
クステーション(SSC/5200)を用いて、サンプ
ル約5mgを室温から昇温速度20℃/minで昇温し
た。このとき観測される融解の吸熱ピークを示す温度を
融点とした。
【0056】(5)中心線平均表面粗さ(Ra) JIS−B0601に準じて、触針式表面粗さ計(小坂
研究所製 SE−3AK)で測定した。 (6)絶縁破壊強度 JIS−C2151に準じて交流破壊電圧を気中にて測
定した。
【0057】(7)固有粘度 試料を105℃で20分乾燥した後、6.8±0.00
5gを秤量し、o−クロロフェノール中で160℃で1
5分間撹拌して溶解した。冷却後、ヤマトラボテック
(株)AVM−10S型自動粘度測定機により25℃に
おける粘度を測定した。
【0058】(8)オリゴマー量 50mm角に切断したフィルムサンプル16枚を、14
0℃の熱風オーブン中で2時間乾燥し、重量(抽出前重
量)を測定した。次に、ソックスレー抽出器用いて沸騰
キシレン(500ml)で24時間抽出した。抽出した
サンプルを取り出し、水の入った超音波洗浄機で6分間
洗浄するのを3回繰り返し、ガーゼで表面に付着してい
るキシレンを軽く拭き取った。最後に抽出したサンプル
を160℃の熱風オーブン中で8時間乾燥し、重量(抽
出後重量)を測定して、下記の式でオリゴマー量を求め
た。
【0059】オリゴマー量(%)=100×(抽出前重
量−抽出後重量)/抽出前重量 (9)耐熱性 フィルムサンプルを、180℃の窒素置換したオーブン
中で曝露し、50時間ごとに試料を取り出し、引張伸び
率を測定し、初期値の1/2になるまでの時間で示し
た。引張伸び率の測定はASTM D882−61Tに
より測定した。この値が大きいほど耐熱性は良好であ
る。
【0060】(10)成形加工性 モーター用のウェッジやスロットライナーとしてフィル
ムを用いる場合、機器への挿入時に受ける衝撃でフィル
ムが折れ曲がらないことが必要となることから、成形加
工性(自動挿入性)として、ASTM D747に準
じ、フィルムサンプルの長手方向(フィルム製膜時の巻
き取り方向)の曲げ弾性率を求め、以下の判断基準で評
価した。
【0061】 ○:曲げ弾性率が3GPa以上であり、成形加工性が良
好 △:曲げ弾性率が1.5〜3GPaであり、成形加工時
に若干折れ曲がりが認められるが実用上問題なし ×:曲げ弾性率が1.5GPa未満であり、実用上問題
となる。 (11)フィルム厚さ JIS−C2318に準じて測定した。
【0062】(12)メルトフローレート ASTM−D1238に準じ、260℃、5kgの条件
で測定した。 (13)プリント配線基盤の作成および配線基盤の誘電
率と誘電正接、吸水率の測定
【0063】フィルムサンプル2枚に難燃性エポキシ樹
脂を介して35kg/m2 の銅箔を両面に貼り合わせ、
熱圧プレスをすることによって0.6mmのプリント配
線基盤を作成した。作成した配線基盤の誘電率、誘電正
接および吸水率は、JIS−C6481に準じて測定し
た。得られた値からプリント配線基盤の絶縁材料とし
て、次の判断基準で評価した。
【0064】 ◎:電力損失、電子信号の伝播と伝播速度のいずれの改
良効果も顕著なもの ○:現在用いられている絶縁材料と比べ、電力損失、電
子信号の伝播と伝播速度がいずれも同等以上であるも
の。 △:電力損失、電子信号の伝播と伝播速度のいずれか
が、現在用いられている絶縁材料と比べ改良されている
と認められるもの ×:現在用いられている絶縁材料と比べ、同等以下で改
良効果が認められない。
【0065】(14)モーター絶縁用フィルムの漏洩電
流実用特性 オートクレーブにフィルムサンプル、真空乾燥した絶縁
油(ポリオールエステル油)および冷媒(R410A)
を、絶縁油と冷媒の添加重量比が3:1になるように充
填し、140℃でオートクレーブ内が30kg/cm2
の圧力になる条件下で500時間放置した。次に、50
0時間放置したフィルムサンプルをオートクレーブより
取り出し、誘電率ε1 を測定し、オートクレーブに入れ
る前のフィルムサンプルの誘電率ε0 との変化率△ε
(%)の関係を下記の式により求めて、以下に示す判断
基準で誘電率の経時変化について実用特性を評価した。
【0066】 △ε(%)=100x(ε1 −ε0 )/ε0 ◎:△εが5%以下であり、漏洩電流の経時変化が確認
されず良好 ○:△εが5〜10%であり、漏洩電流の経時変化がほ
とんど認められない △:△εが10〜15%であり、漏洩電流の経時変化が
認められるが実用上は問題ない ×:△εが15%を越えるものであり、漏洩電流の経時
変化が認められ、品質の安定性に欠け、実用に耐えな
い。
【0067】また、漏洩電流の低減効果について、実装
後の誘電率から以下の判断基準で評価した。 ○:効果が顕著に認められる △:効果が若干認められ、置き換えて使用するに値する
もの ×:現在用いられている絶縁材料と比べ、改良効果が認
められない。
【0068】比較例1 ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコー
ル60重量部および触媒としての酢酸カルシウム0.0
9重量部を、常法に従いエステル交換反応せしめ、さら
に平均粒径0.6μmの真球状シリカ粒子0.3重量部
をエチレングリコールスラリーとして添加し、次いで三
酸化アンチモン0.03重量部を触媒として重縮合反応
を行い固有粘度0.90のポリエチレンテレフタレート
を得た。
【0069】このポリエチレンテレフタレートを真空乾
燥したのち、295℃に加熱した押出機に供給し、Tダ
イより押し出し30℃の冷却ドラムで冷却固化し、未延
伸フィルムを得た。さらにこのフィルムを100℃に加
熱し、長手方向に3.2倍延伸し、引き続き120℃に
加熱したテンターで幅方向に3.5倍延伸し、220℃
で熱処理を行い、室温まで均一に冷却後巻取り、250
μmのフィルムを得た。
【0070】評価したフィルムの特性を表1に示した
が、誘電率は通常のポリエチレンテレフタレートの誘電
率の3.3と同等であり、漏洩電流の低減の目的には使
用できない。絶縁材料としての実用特性は、表2に示し
たように実用に耐えないものであった。
【0071】比較例2 ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコー
ル60重量部および触媒としての酢酸カルシウム0.0
9重量部を、常法に従いエステル交換反応せしめ、次い
で三酸化アンチモン0.03重量部を触媒として重縮合
反応を行うことにより、固有粘度0.90のポリエチレ
ンテレフタレートを得た。
【0072】このポリエチレンテレフタレートに、非相
溶性添加剤としてポリメチルペンテン(三井石油化学工
業(株)製“TPX”DX820、融点:240℃、メ
ルトフローレート:180g/10分)を0.5重量%
添加し、295℃に加熱した押出機に供給した。
【0073】また、別の押出機に、フィルム両面の外層
として、比較例1で用いたポリエチレンテレフタレート
を真空乾燥したのち、295℃に加熱した押出機に供給
し、Tダイより3層複合シートを押出し、表面温度30
℃の冷却ドラムで冷却固化し、未延伸フィルムを得た。
【0074】さらに、このフィルムを100℃に加熱
し、長手方向に3.2倍延伸し、引き続き120℃に加
熱したテンターで幅方向に3.5倍延伸し、220℃で
熱処理を行い、室温まで均一に冷却後巻取り、250μ
mのフィルムを得た(被覆層の厚みは両面とも25μm
であった)。
【0075】評価したフィルムの特性を表1に示した。
表1から明らかなように、比較例2のフィルムの誘電率
は3.1で、ポリエチレン−2、6−ナフタレートフィ
ルムと同等であり、漏洩電流や電力損失を低減できるフ
ィルムとしては不十分であった。絶縁材料としての実用
特性も、表2に示したように実用に耐えないものであっ
た。
【0076】実施例1 ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコー
ル60重量部および触媒としての酢酸カルシウム0.0
9重量部を、常法に従いエステル交換反応せしめ、トリ
メチルホスフェート含有量0.20重量%含有したエチ
レングリコール溶液を添加し、さらに平均粒径1.4μ
mの炭酸カルシウムを11重量%含有したエチレングリ
コールスラリーを添加し、次いで三酸化アンチモン0.
03重量部を触媒として重縮合反応を行うことにより、
固有粘度0.90のポリエチレンテレフタレートを得
た。
【0077】このポリエチレンテレフタレートを295
℃に加熱した押出機に供給した。また、別の押出機に、
フィルム両面の外層として、比較例1で用いたポリエチ
レンテレフタレートを真空乾燥したのち、295℃に加
熱した押出機に供給し、Tダイより3層複合シートを押
出し、表面温度30℃の冷却ドラムで冷却固化し、未延
伸フィルムを得た。さらにこのフィルムを100℃に加
熱し、長手方向に3.2倍延伸し、引き続き120℃に
加熱したテンターで幅方向に3.5倍延伸し、220℃
で熱処理を行い、室温まで均一に冷却後巻取り、250
μmのフィルムを得た(被覆層の厚みは両面とも25μ
mであった)。
【0078】評価したフィルムの特性を表1に示した。
また、絶縁材料としての実用特性を表2に示したが、1
MHzの誘電正接においてフィルムの誘電率が同じ実施
例2と比較して高く、電力損失の低減や電子信号の伝播
遅延の抑制と伝播速度の向上の効果でやや劣るものであ
ったが、絶縁材料としての実用特性は、表2に示したよ
うに実用に耐え得るものであった。
【0079】実施例2 ポリメチルペンテン(三井石油化学工業(株)製“TP
X”DX820)の添加量を2重量%にした以外は、比
較例2と同様にして250μmのフィルムを得た(被覆
層の厚みは両面とも25μmであった)。評価したフィ
ルムの特性を表1に示した。また、絶縁材料としての実
用特性を表2に示したが、フィルムの誘電率は比較例2
よりも低く、絶縁材料としての実用特性も実用に耐え得
るものであった。
【0080】実施例3 ポリメチルペンテンの代わりに、ポリプロピレン(三井
東圧化学(株)製“ノーブレン”JS500T)を用
い、添加量を15重量%にした以外は、比較例2と同様
にして250μmのフィルムを得た(被覆層の厚みは両
面とも25μmであった)。
【0081】なお、本フィルムの製膜にあたっては、フ
ィルム破れが頻発し、製膜安定性に劣ったものであっ
た。評価したフィルムの特性は表1に示したように、融
点が160℃のポリプロピレンを使用したため、ポリプ
ロピレンの添加量をポリメチルペンテンなどと比較して
多量にしなければ、誘電率の低減効果が顕著に得られな
かった。しかし、絶縁材料としての実用特性は表2に示
したように十分実用に耐え得るものであった。。
【0082】比較例3 ポリメチルペンテンとして、三井石油化学工業(株)製
“TPX”RT18(融点は240℃、メルトフローレ
ートは26g/10分)を用い、添加量を7重量%に
し、平均分子量が4000のポリエチレングリコール
1.0重量%を内層に添加した以外は、比較例2と同様
にして250μmのフィルムを得た(被覆層の厚みは両
面とも25μmであった)。
【0083】評価したフィルムの特性は表1に示したよ
うに耐熱性に劣り、またモーター用絶縁材料として使用
した場合、フィルム内部の発熱に帰因する電力損失の増
大が認められた。また、絶縁材料としての実用特性は、
表2に示したように実用に耐えないものであった。
【0084】実施例4 ポリメチルペンテンの代わりに、メタロセン触媒により
重合したシンジオタクチックポリスチレン(p−メチル
スチレンが14mol%共重合されており、融点:23
0℃、メルトフローレート:80g/10分)を用い、
添加量を10重量%にした以外は、比較例2と同様にし
て250μmのフィルムを得た(被覆層の厚みは両面と
も25μmであった)。
【0085】評価したフィルムの特性を表1に示し、実
用特性を表2に示したが、フィルムの誘電率は十分に低
く、絶縁材料としての実用特性も実用に十分耐え得るも
のであった。
【0086】実施例5 ポリメチルペンテン(三井石油化学工業(株)製“TP
X”DX820)の添加量を7重量%にした以外は、比
較例2と同様にして250μmのフィルムを得た(被覆
層の厚みは両面とも25μmであった)。
【0087】評価したフィルムの特性を表1に、また絶
縁材料としての実用特性を表2に示したが、フィルムの
誘電率は比較例2よりも十分低く、絶縁材料としての実
用特性も実用に十分耐え得るものであった。
【0088】実施例6 ポリメチルペンテンの添加量を7重量%にし、平均分子
量が4000のポリエチレングリコールを0.7重量%
を内層に添加した以外は、比較例2と同様にして250
μmのフィルムを得た(被覆層の厚みは両面とも25μ
mであった)。
【0089】評価したフィルムの特性は、表1に示した
ように耐熱性が低下し、またモーター用絶縁材料として
使用した場合に、フィルム内部の発熱に帰因する電力損
失の増大ややが認められたが、実用には耐え得るもので
あった。
【0090】実施例7 ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコー
ル60重量部および触媒として酢酸カルシウム0.09
重量部を、常法に従いエステル交換反応せしめ、次いで
三酸化アンチモン0.03重量部を触媒として重縮合反
応を行うことにより、固有粘度0.90のポリエチレン
テレフタレートを得た。
【0091】このポリエチレンテレフタレートに、ポリ
メチルペンテン(三井石油化学工業(株)製“TPX”
DX820)を7重量%添加し、295℃に加熱した押
出機に供給した。
【0092】また、295℃に加熱した別の押出機に、
フィルム両面の外層として、ジメチルテレフタレート8
5重量部、エチレングリコール60重量部および触媒と
して酢酸カルシウム0.09重量部を、常法に従いエス
テル交換反応せしめ、さらに平均粒径0.6μmの真球
状シリカ粒子0.6重量部をエチレングリコールスラリ
ーとして添加し、次いで三酸化アンチモン0.03重量
部を触媒として重縮合反応を行って得た固有粘度0.9
0のポリエチレンテレフタレートを真空乾燥したのち供
給し、Tダイより3層複合シートを押出し、表面温度3
0℃の冷却ドラムで冷却固化することにより、未延伸フ
ィルムを得た。
【0093】さらに、このフィルムを100℃に加熱
し、長手方向に3.2倍延伸し、引き続き120℃に加
熱したテンターで幅方向に3.5倍延伸し、220℃で
熱処理を行い、室温まで均一に冷却後巻取り、250μ
mのフィルムを得た(被覆層の厚みは両面とも25μm
であった)。評価したフィルムの特性を表1に、また絶
縁材料としての実用特性を表2に示したが、フィルムの
誘電率は十分に低く、絶縁材料としての実用特性も実用
に十分耐え得るものであった。
【0094】実施例8 ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコー
ル60重量部および触媒として酢酸カルシウム0.09
重量部を、常法に従いエステル交換反応せしめ、次いで
三酸化アンチモン0.03重量部を触媒として重縮合反
応を行うことにより、固有粘度0.90のポリエチレン
テレフタレートを得た。
【0095】このポリエチレンテレフタレートにポリメ
チルペンテン(三井石油化学工業(株)製“TPX”D
X820)を7重量%添加し、295℃に加熱した押出
機に供給した。
【0096】また、295℃に加熱した別の押出機に、
フィルム両面の外層として、ジメチルテレフタレート8
5重量部、エチレングリコール60重量部および触媒と
して酢酸カルシウム0.09重量部を、常法に従いエス
テル交換反応せしめ、さらに平均粒径0.6μmの真球
状シリカ粒子2.5重量部をエチレングリコールスラリ
ーとして添加し、次いで三酸化アンチモン0.03重量
部を触媒として重縮合反応を行って得た固有粘度0.9
0のポリエチレンテレフタレートを真空乾燥したのち供
給し、Tダイより3層複合シートを押出し、表面温度3
0℃の冷却ドラムで冷却固化し、未延伸フィルムを得
た。
【0097】さらに、このフィルムを100℃に加熱
し、長手方向に3.2倍延伸し、引き続き120℃に加
熱したテンターで幅方向に3.5倍延伸し、220℃で
熱処理を行い、室温まで均一に冷却後巻取り、250μ
mのフィルムを得た(被覆層の厚みは両面とも25μm
であった)。評価したフィルムの特性を表1に、また絶
縁材料としての実用特性を表2に示したが、フィルムの
誘電率は十分に低く、絶縁材料としての実用特性も実用
に十分耐え得るものであった。
【0098】比較例4 ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコー
ル60重量部および触媒として酢酸カルシウム0.09
重量部を、常法に従いエステル交換反応せしめ、次いで
三酸化アンチモン0.03重量部を触媒として重縮合反
応を行うことにより、固有粘度0.90のポリエチレン
テレフタレートを得た。
【0099】このポリエチレンテレフタレートにポリメ
チルペンテン(三井石油化学工業(株)製“TPX”D
X820)を7重量%添加し、295℃に加熱した押出
機に供給し、Tダイより単膜シートを押出し、表面温度
30℃の冷却ドラムで冷却固化し、未延伸フィルムを得
た。さらに、このフィルムを120℃に加熱し、長手方
向に3.2倍延伸し、引き続き130℃に加熱したテン
ターで幅方向に3.5倍延伸し、230℃で熱処理を行
い、室温まで均一に冷却後巻取り、250μmのフィル
ムを得た。
【0100】評価したフィルムの特性は、表1に示した
ようにオリゴマー量や絶縁破壊強度に劣るものであっ
た。また、絶縁材料としての実用特性は表2に示したよ
うに実用に耐えないものであった。 実施例9 ポリメチルペンテンの添加量を12重量%にした以外
は、比較例2と同様にして250μmのフィルムを得た
(被覆層の厚みは両面とも25μmであった)。
【0101】評価したフィルムの特性を表1に、また絶
縁材料としての実用特性を表2に示したが、フィルムの
誘電率は比較例2よりも十分に低く、絶縁材料としての
実用特性も実用に十分耐え得るものであった。 比較例5 ポリメチルペンテンの添加量を20重量%にした以外
は、比較例2と同様にして250μmのフィルムを得た
(被覆層の厚みは両面とも25μmであった)。
【0102】評価したフィルムの特性は、表1に示した
ように絶縁破壊強度に劣ったものであり、またフィルム
が柔らかいために、モーター用絶縁材料の1つであるス
ロットライナーとしてモーターに自動挿入することが困
難なものであった。実用特性については、成形加工性が
×であることから表2から除外した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電気絶縁
用ポリエステルフィルムによれば、漏洩電流の低減、電
力損失の低減、電子信号の伝播遅延の抑制と伝播速度の
向上、耐熱性の改善、耐絶縁破壊特性の向上、オリゴマ
ーの低減、組み込み後のセット安定性の向上、および着
色によるセット組み込み確認の容易性の向上などのすぐ
れた特性を実現したものであるので、冷凍機や空調機な
どのコンプレッサー用モーター絶縁用途や電子機器など
のプリント配線基板などに使用した場合に格別の効果を
発揮することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 67/02 C08L 67/02 // B29K 67:00 B29L 7:00

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエチレンテレフタレートを主たる構
    成成分とする二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
    該ポリエステルフィルムの1kHzでの誘電率が1.5
    〜3.0の範囲内であり、かつエチルアルコールに浸し
    た時の見かけの密度変化率△Wが10%以下である電気
    絶縁用ポリエステルフィルム。
  2. 【請求項2】 下記式(1)で表される誘電正接の変化
    率△Dが−40〜20%の範囲内である請求項1に記載
    の電気絶縁用ポリエステルフィルム。 △D=100x(D80−D60)/D60 (1) (ここでD80は80℃、1kHzにおけるフィルムの誘
    電正接であり、D60は60℃、1kHzにおけるフィル
    ムの誘電正接である)。
  3. 【請求項3】 120℃、1kHzでの誘電正接D120
    が0.01以下である請求項1または2に記載の電気絶
    縁用ポリエステルフィルム。
  4. 【請求項4】 フィルムを構成するポリエチレンテレフ
    タレートの固有粘度が0.7〜1.5dl/gの範囲内
    である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気絶縁用
    ポリエステルフィルム。
  5. 【請求項5】 フィルムを構成するポリエチレンテレフ
    タレートが非相溶性添加剤を含有する請求項1〜4のい
    ずれか1項に記載の電気絶縁用ポリエステルフィルム。
  6. 【請求項6】 前記非相溶性添加剤がポリオレフィンか
    らなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気絶縁用
    ポリエステルフィルム。
  7. 【請求項7】 前記ポリオレフィンの融点が200〜3
    00℃の範囲内である請求項6に記載の電気絶縁用ポリ
    エステルフィルム。
  8. 【請求項8】 前記ポリオレフィンがポリメチルペンテ
    ンまたは結晶性ポリスチレンである請求項6または7に
    記載の電気絶縁用ポリエステルフィルム。
  9. 【請求項9】 前記ポリオレフィンの260℃、5kg
    におけるメルトフローレートが50〜500g/10分
    の範囲内である請求項6〜8のいずれか1項に記載の電
    気絶縁用ポリエステルフィルム。
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