JP5265902B2 - ポリエステル組成物 - Google Patents
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Description
本発明のポリエステル組成物を形成するポリエステルは、酸成分が前述の構造式(I)と構造式(II)からなり、グリコール成分が前述の構造式(III)からなる。
前述の構造式(I)で示される具体的な酸成分としては、R1の部分が炭素数1〜10のアルキレン基であるものであり、好ましくは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などが挙げられ、これらの中でも本発明の効果の点からは、上記一般式(I)におけるR1の炭素数が偶数のものが好ましく、特にR1の炭素数が2である6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が好ましい。
本発明のポリエステル組成物は、溶融製膜して、シート状に押出すことでフィルムとすることができる。磁気テープなどのベースフィルムとして用いる場合、ベースフィルムがフィルムにかかる応力などによって伸びないようにフィルム面方向における少なくとも一方向は、ヤング率が6.0GPa以上という高いヤング率を有することが好ましい。また、このように高いヤング率を得られるフィルムに具備させることで、湿度膨張係数や温度膨張係数の低減を図ることができる。好ましいヤング率は、フィルムの長手方向が5.1〜11GPa、さらに5.2〜10GPa、特に5.5〜9GPaの範囲であり、フィルムの幅方向が5.0〜11GPa、さらに6〜10GPa、特に7〜10GPaの範囲である。
つぎに、本発明におけるポリエステル組成物の製造方法について、詳述する。
まず、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはそのエステル形成性誘導体と例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、例えばエチレングリコールとをエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、ポリエステル前駆体を製造する。そして、このようにして得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合し、必要に応じて固相重合などを施しても良い。このようにして得られるポリエステルのP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度は、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.3dl/gの範囲にあることが取扱い性や機械的特性などの点から好ましい。なお、前述の構造式(I)と(II)の割合が異なる2種類のポリマーを作り、前述の構造式(I)と(II)の割合が目的となるようにそれらを溶融混練してもよい。
本発明のポリエステル組成物を原料とし、これを乾燥後、該ポリエステル組成物の融点(Tm:℃)ないし(Tm+50)℃の温度に加熱された押出機に供給して、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出す。なお、使用する本発明のポリエステル組成物は、1種類に限られず、例えば前述の構造式(I)の割合が多いポリマーと、前述の構造式(II)の多いポリマーとを作り、前述の構造式(I)と(II)の割合が目的の範囲となるようにそれらを溶融混練して用いてもよく、そのような方法を採用することで、前述の構造式(I)と(II)の割合を任意に且つ簡便に変更することができる。この押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化して未延伸フィルムとし、さらに該未延伸フィルムを二軸延伸することで二軸配向フィルムとすることができる。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸はポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒熱固定処理するのが好ましい。なお、熱固定の時間はさらに1〜15秒が好ましい。
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
グリコール成分については、試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解し、イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後に600Mの1H−NMR(日立電子製 JEOL A600)にて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を測定した。
また、芳香族ジカルボン酸成分については、試料50mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、400M 13C−NMR(日立電子 JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、60℃で30分前処理し、その後室温まで降温させる。その後25℃から70℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5は石英ガラスの温度膨張係数(×10−6/℃)である。
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度30%RHと湿度70%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L70−L30)/(L30×△H)
ここで、上記式中のL30は30%RHのときのサンプル長(mm)、L70は70%RHのときのサンプル長(mm)、△H:40(=70−30)%RHである。
粒子を含有するポリエステル組成物をチップ状に成形し、チップの長軸方向に直交する方向にウルトラミクロトームでスライスする。スライスした超薄切片の厚みは200nmとする。そして、それぞれの方向にスライスした超薄切片の断面を透過型電子顕微鏡で20万倍に拡大して、分離できない最小単位の粒子を一次粒子とし、各断面方向について一次粒子300個の個々の面積円相当径を求め、3つの断面方向の個々の面積円相当径、すなわち900個の面積円相当径の平均値を一次粒子の面積円相当平均径とした。
ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択し、ポリエステル組成物を溶解処理した後、粒子をポリエステルから遠心分離し、ポリエステル組成物の全体重量に対する粒子重量の比率(重量%)をもって粒子の含有量とする。なお、複数種の粒子が併用されている場合は、前記一次粒子の面積円相当平均径の測定から粒度分布を作成してそれぞれの粒子の存在量の比を求める。そして、前述の遠心分離によって求められる粒子の含有量と前述の粒子存在量の比とから、それぞれの粒子の含有量を求めればよい。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.66dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分であるポリエステルを得た。なお、該ポリエステルには、重縮合反応の前に表1に示すように針状ベーマイト粒子を含有させた。このポリエステルの融点は240℃、ガラス転移温度は117℃であった。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例1において、含有させる粒子を表1に示すように変更した以外は同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例1において、粒子を含有させないように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例1において、含有させる粒子を表1に示すように変更した以外は同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.72dl/gで、酸成分の94モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の6モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の99モル%がエチレングリコール成分、1モル%がジエチレングリコール成分であるポリエステルを得た。なお、該ポリエステルには、重縮合反応の前に表1に示すように針状ベーマイト粒子を含有させた。このポリエステルの融点は255℃、ガラス転移温度は119℃であった。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.77dl/gで、酸成分の80モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の20モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の99モル%がエチレングリコール成分、1モル%がジエチレングリコール成分であるポリエステルを得た。なお、該ポリエステルには、重縮合反応の前に表1に示すように針状ベーマイト粒子を含有させた。このポリエステルの融点は252℃、ガラス転移温度は116℃であった。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.75dl/gで、酸成分の65モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の35モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分であるポリエステルを得た。なお、該ポリエステルには、重縮合反応の前に表1に示すように針状ベーマイト粒子を含有させた。このポリエステルの融点は247℃、ガラス転移温度は116℃であった。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.70dl/gで、酸成分の30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の70モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分であるポリエステルを得た。なお、該ポリエステルには、重縮合反応の前に表1に示すように針状ベーマイト粒子を含有させた。このポリエステルの融点は268℃、ガラス転移温度は101℃であった。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例1において、針状ベーマイト粒子の含有量を表1に示すように変更した以外は同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
テレフタル酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.68dl/gで、酸成分の80モル%がテレフタル酸成分、酸成分の20モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分であるポリエステルを得た。なお、該ポリエステルには、重縮合反応の前に表1に示すように針状ベーマイト粒子を含有させた。このポリエステルの融点は230℃、ガラス転移温度は85℃であった。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例4において、粒子を含有させないように変更した以外は、実施例4と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例5において、粒子を含有させないように変更した以外は、実施例5と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例6において、粒子を含有させないように変更した以外は、実施例6と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例7において、粒子を含有させないように変更した以外は、実施例7と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例10において、粒子を含有させないように変更した以外は、実施例10と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物および二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。なお、該ポリエチレン−2,6−ナフタレートには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。このポリエチレン−2,6−ナフタレートの融点は270℃、ガラス転移温度は120℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
比較例8において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.0倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を4.0倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
比較例8において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.5倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を3.4倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
Claims (3)
- 粒子の含有量が、組成物の重量を基準として、0.05〜5重量%である請求項1記載のポリエステル組成物。
- 粒子がベーマイト、アルミナ、シリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子である請求項1記載のポリエステル組成物。
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