JP4806855B2 - ポリブチレンテレフタレートの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続直接エステル化とそれに続く重縮合により、副反応を抑制しつつ、品質に優れたポリブチレンテレフタレートを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと称する)は、優れた成形性、耐熱性、機械的性質および耐薬品性などを有しているため、電気部品や自動車部品などの成形材料としてばかりか、ソフト性やストレッチ性を生かした繊維用としても広く用いられている。
【0003】
このようなPBTの製造法の1つとして、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとからPBTオリゴマーを製造するエステル化工程と、生成したPBTオリゴマーを高重合度化する重縮合工程とからなる直接重合法がある。
【0004】
そして、かかるPBTの直接重合法のエステル化工程においては、触媒の存在が不可欠であり、その触媒としては有機チタン化合物が最も一般的に用いられている。
【0005】
しかし、有機チタン化合物(例えばチタン酸エステル)は、エステル化反応触媒としての優れた触媒活性を示す一方、エステル化反応や1,4−ブタンジオールの分解(脱水環化)で副生する水によって加水分解を受け、不溶性異物の生成や、触媒としての活性低下を起こし易いという問題があった。
【0006】
PBTの製造において、連続重合法は、品質の安定したポリマーが得られることから有用な方法であり、特開昭52−51495号公報、特開昭62−195017号公報、特開平10−330468公報、特開平10−330469公報および特表平11−501693公報などには、このようなPBTの直接連続重合法について開示されている。
【0007】
そして、これらの従来方法では、触媒としてチタンアルコキシドが用いられているが、チタンアルコキシドを用いて直接連続重合法によりPBTを製造する際には、回分法と異なり、不溶性の異物が多量に生成する。これは、連続法でPBTオリゴマーを製造する場合には、有機チタン化合物が水と反応するだけでなく、反応系中のテレフタル酸とも反応して金属塩を生成し、不溶化、失活するためと考えられる。
【0008】
このようなエステル化段階での不溶性異物の生成や触媒活性の低下の不具合は、当然ながら反応時間の短縮化にとっての阻害因子となるばかりか、反応生成物の透明性を著しく低下させ、ひいては重合反応性の低下のために所望の重合度が得られず、さらにはポリマーの成形過程での不溶性異物に由来する成形性の低下や成形品の品質低下などの問題の原因となる。
【0009】
このような異物の生成を防ぐためには、テレフタル酸に対する1,4−ブタンジオールのモル比を高くしてエステル化反応を行えばよいが、この場合には、1,4−ブタンジオールの分解により多量のテトラヒドロフランが副生するため好ましくない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、その目的とするところは、連続直接エステル化とそれに続く重縮合により、副反応を抑制しつつ、品質に優れたポリブチレンテレフタレートを効率よく製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のPBTの製造法は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを連続的にエステル化反応し、次いで重縮合反応することによりポリブチレンテレフタレートを製造するに際し、前記エステル化反応を、多価カルボン酸化合物、ペンタエリスリトールおよびヒドロキシカルボン酸化合物またはその塩から選ばれた少なくとも1種のキレート配位子を持つチタン化合物の存在下で行なうことを特徴とする。
【0012】
なお、本発明のPBTの製造法においては、前記キレート配位子を持つチタン化合物として2種以上のキレート配位子と反応させたチタン化合物を用いること、前記エステル化反応時にスズ化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物から選ばれた触媒の少なくとも1種をさらに添加すること、前記キレート配位子の少なくとも一つが乳酸、乳酸アンモニウム、クエン酸、リンゴ酸、およびシュウ酸アンモニウム塩から選ばれた少なくとも1種であること、前記エステル化反応を反応温度220〜240℃、圧力101kPa以下で行なうこと、および得られるPBTの溶液ヘイズが20%以下であることが、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明でいうPBTとは、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、主たるジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いた、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性ポリエステルであるが、その他に酸成分として、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、ドデカジオン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などを、また、その他のジオール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコ−ル、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどを、それぞれ共重合成分として用いることもできる。これらの共重合成分は、テレフタル酸または1,4−ブタンジオールに対して40モル%以下であることが好ましい。
【0015】
また、酸成分とジオール成分の比については特に限定するものではないが、1,4−ブタンジオールが環化して生じるテトラヒドロフラン(以下、THFと称する)の副生抑制の観点から、ジオール成分の酸成分に対するモル比が1.1〜2.0であることが好ましく、1.1〜1.6であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明においては、エステル化反応を、キレート配位子を持つチタン化合物の存在下で行なうことを必須の要件とする。
【0017】
本発明で用いるキレート配位子を持つチタン化合物とは、チタン化合物の配位子の少なくとも一つが、少なくとも2個以上の原子を介してチタンに配位できる構造を持つ化合物、つまり2配位以上でチタンに配位できる化合物を意味する。
【0018】
上記キレート配位子としては、β−ジケトン化合物、ケトエステル化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物またはその塩、ケトアルコール化合物、エノール性活性水素化合物、多価脂肪族カルボン酸化合物、ペンタエリスリトール、多価フェノール化合物などが挙げられ、中でも、ヒドロキシカルボン酸化合物またはその塩、多価カルボン酸化合物、およびペンタエリスリトールが好ましい。
【0019】
具体的には、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジピバロイルメタン、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アンモニウム塩、サリチル酸、サリチル酸メチル、クエン酸、リンゴ酸、リンゴ酸エチル、酒石酸、酒石酸エチル、シュウ酸、シュウ酸アンモニウム塩、マロン酸ジエチルエステル、サリチルアルデヒド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチルヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン、メチロールアクリルアミド、メチロールメラミン、メチロール尿素、ペンタエリスリトール、1,1−エチレンジアミン四酢酸および2,2’−ビピリジンなどが挙げられる。
【0020】
この中でも、乳酸、乳酸アンモニウム、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸アンモニウム塩が特に好ましい。
【0021】
上記キレート配位子は、単独で用いてもよいが、反応条件に応じて複数の配位子を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0022】
上記キレート配位子は、一つのチタン原子に一つ以上配位していることが望ましく、また、チタン原子にはキレート配位子の他に、一価のアルコールや一価のカルボン酸などが配位していてもよい。
【0023】
本発明におけるキレート配位子を持つチタン化合物の添加量は、生成するPBT100重量部に対して0.005〜0.2重量部が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【0024】
上記キレート配位子を持つチタン化合物の合成方法については、特に限定されるものではないが、例えば、有機溶媒中でチタンアルコキシドと上記化合物とを混合する方法によって合成することができる。この際に用いるチタンアルコキシドの具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどが挙げられる。これらのうちでも、特にテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルなどが好ましい。
【0025】
本発明においては、上記チタン触媒の他に、通常公知の触媒を併用して用いることができる。具体的には、アンチモン化合物、マンガン化合物、スズ化合物、亜鉛化合物、ハフニウム化合物、ガリウム化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物などを用いることができ、その中でもスズ化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。
【0026】
スズ化合物としては、特に限定されるものではなく、通常公知のものを用いることができる。具体的には、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸およびオクチル酸スズなどを挙げることができる。
【0027】
これらのうちでも、特にブチルヒドロキシオキサイドなどのモノアルキルスズ化合物の使用が好ましい。これらの有機スズ化合物は、1種または2種以上を併用することができる。
【0028】
スズ化合物の添加量は、生成するPBT100重量部に対して0.005〜0.2重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部の範囲である。
【0029】
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されるものではないが、周期律表Ia族(アルカリ金属)およびIIa族(アルカリ土類金属)の水酸化物、無機酸塩、有機酸塩、例えば酢酸塩、炭酸塩またはこれらの水和物、錯塩およびアンモニウム塩などが挙げられ、具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウムおよび安息香酸カリウムなどを挙げることができる。これらの内でも、ナトリウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物およびカルシウム化合物が好ましく使用される。なお、これらのアルカリ性化合物は、1種のみを使用してもよく、また2種以上を併用することもできる。
【0030】
本発明の実施に用いる連続エステル化装置は、特に限定されるものではないが完全混合槽型エステル反応器であることが好ましい。
【0031】
エステル化反応温度は210〜250℃で行うのが好ましく、220〜240℃で行うのがさらに好ましい。エステル化反応を低温で行うと、本発明のキレート配位子が強固にチタンと配位しているために、触媒活性が低くなるため好ましくない。
【0032】
エステル化反応の圧力は、101kPa以下で行うことが好ましく、6.7〜80kPaの減圧下で行うことがさらに好ましい。
【0033】
エステル化反応終了後のジカルボン酸の反応率は、97%以上になるよう実施されることが望ましく、98%以上になるように実施されることがさらに望ましい。
【0034】
完全混合槽型エステル反応器を用いる場合には、各反応器におけるジカルボン酸の反応率が90%以上であること、さらには92%以上であることが、得られる効果が大きい点で好ましい。
【0035】
上記の連続エステル化反応で製造されたPBTオリゴマーを、次いで重縮合反応するが、この重縮合反応方法は特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でも、通常のPBTの製造に用いられる重合条件をそのまま適用することができ、例えば反応温度としては230〜260℃が好ましく、240〜255℃がさらに好ましい。
【0036】
製造したPBT中の異物の指標としては、溶液ヘイズを用いることができる。ここでいう溶液ヘイズとは、試料ポリマー5.4gをフェノールと四塩化エタン(60:40重量%)の混合溶媒40mLに加熱溶解し、この溶液を30mmのセルに入れて積分式ヘーズメーターで測定した値であり、この値が大きいほど異物が多いことを表す。
【0037】
PBTにおいては、溶液ヘイズが20%より大きくなると、ポリマーの靱性が低下するため好ましくないが、本発明の製造法においては、溶液ヘイズが20%以下のPBTを容易に得ることができる。
【0038】
本発明の方法でPBTを製造するに際しては、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、染料および顔料を含む着色剤などの1種または2種以上を添加することができる。特に本発明において、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、リン酸トリアミド、リン酸モノアンモニウム、リン酸トリメチル、リン酸ジメチル、リン酸ジフェニル、リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニルおよびホスホン酸ジメチルフェニルなどのリン化合物を添加することは、ポリマーの耐熱性や色調改善に効果があることから好ましい。
【0039】
本発明のPBTの製造法によれば、副反応を抑制しつつ、従来の方法で製造した場合よりも、品質、特にヘイズ特性や樹脂靱性に優れたPBTを得ることができ、かくして得られるPBTは、各種の自動車部品や電気・電子部品、繊維、フイルムなどに有効に用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0041】
なお、実施例中、得られたオリゴマーの反応率は、反応物の酸価およびケン化価から次式にしたがって求めた。
【0042】
反応率={(ケン化価−酸価)/ケン化価}×100(%)
酸価:反応物をo−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解し、エタノール性水酸化カリウムで滴定して得た値。
【0043】
ケン化価:反応物をアルカリ加水分解し、酸で逆滴定した値。
【0044】
また、副生したテトラヒドロフラン(THF)の量はガスクロマトグラフにより定量した。
【0045】
さらに、生成した異物量の指標である溶液ヘイズは、試料ポリマー5.4gをフェノールと四塩化エタン(60:40重量%)の混合溶媒40mLに加熱溶解し、この溶液を30mmのセルに入れて積分式ヘーズメーター(日本精密光学製)で測定した。この値が大きいほど異物が多いといえる。
【0046】
さらにまた、ポリマーの固有粘度は、o−クロロフェノール中25℃で測定した。
[比較例1]
連続エステル化反応は2槽の完全混合槽型の反応装置を用いて行なった。すなわち、予め反応率90%のPBTオリゴマーを充填した第1エステル化反応槽に、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを、テレフタル酸に対する1,4−ブタンジオールのモル比が1.5になるようにスラリー状にして連続的に供給した。また同時に、チタンテトラブトキサイドとトリエタノールアミンをトルエン中、1:1で混合して調整したキレート配位子を持つチタン化合物触媒を、生成するPBT100重量部に対して0.04重量部になるように、第1エステル化槽に連続的に供給した。第1エステル化槽は反応温度225℃、圧力53.3kPaになるように制御した。
【0047】
第1エステル化槽のPBTオリゴマーは連続的に取り出され、予め反応率98%のPBTオリゴマーを充填した第2エステル化槽に供給した。第2エステル化槽は、反応温度235℃、圧力26.6kPaになるように制御した。第2エステル化槽のPBTオリゴマーは連続的に取り出し、フレーク状に粉砕した。
【0048】
スラリーの供給、オリゴマーの取り出しの速度は、第1エステル化槽の滞留時間が180分、第2エステル化槽の滞留時間が120分になるように調整した。
【0049】
反応が定常状態に達した後、6時間にわたってPBTオリゴマー、留出液のサンプリングを行ない、反応率、副生THF量の測定を行った。その結果、第1エステル化槽での反応率は89%、第2エステル化槽での反応率は98%、副生THF量は1kgの生成オリゴマー当たり51gであった。
【0050】
さらに、第2エステル化槽から取出したオリゴマーに対し、テトラブトキシチタネートを、生成ポリマーに対して0.03重量%の量で添加し、250℃、減圧下(133Pa以下)で3時間回分法で重縮合反応を行なうことにより、PBTポリマーを得て、その溶液ヘイズを測定したところ18%であり、固有粘度は0.87であった。
[実施例1]
トリエタノールアミンの代わりに、乳酸アンモニウムを1,4−ブタンジオール中1:1で混合して調整したキレート配位子を持つチタン化合物触媒を用いた以外は、比較例1と同様に連続エステル化、重縮合を行った。その結果、第1エステル化槽での反応率は89%、第2エステル化槽での反応率は98%、副生THF量は1kgの生成オリゴマー当たり50gであり、得られたPBTの溶液ヘイズは17%、固有粘度は0.91であった。
[実施例2]
チタンテトラブトキサイドとペンタエリスリトールとクエン酸とを、トルエン中、1:0.3:1の重量比で混合して調整したキレート配位子を持つチタン化合物触媒を用いた以外は、比較例1と同様に連続エステル化、重縮合を行った。その結果、第1エステル化槽での反応率は91%、第2エステル化槽での反応率は99%、副生THF量は1kgの生成オリゴマー当たり47gであり、得られたPBTの溶液ヘイズは9%、固有粘度は0.89であった。
[実施例3]
キレート配位子を持つチタン化合物触媒に加えて、モノブチルヒドロキシスズオキサイドを、生成するPBT100重量部に対して0.02重量部になるように第1エステル化槽に連続的に供給した以外は、実施例2と同様に連続エステル化、重縮合を行った。その結果、第1エステル化槽での反応率は93%、第2エステル化槽での反応率は99%、副生THF量は1kgの生成オリゴマー当たり45gであり、得られたPBTの溶液ヘイズは5%、固有粘度は0.90であった。
[比較例2]
キレート配位子を持つチタン化合物触媒の代りに、テトラブトキシチタネートを、生成するPBTに対して0.04重量部になるように、第1エステル化槽に添加した以外は、比較例1と同様に連続エステル化、重縮合を行なった。その結果、第1エステル化槽の反応率は85%、第2エステル化槽の反応率は96%であり、副生THF量は1kgの生成オリゴマー当たり71g、得られたPBTの溶液ヘイズは48%、固有粘度は0.82であった。
[比較例3]
触媒として、テトラブトキシチタネートに加えて、モノブチルヒドロキシスズオキサイドを生成するPBT100重量部に対して0.02重量部になるように、第1エステル化槽に連続的に供給した以外は、比較例2と同様に連続エステル化、重縮合を行った。その結果、第1エステル化槽での反応率は87%、第2エステル化槽での反応率は97%、副生THF量は1kgの生成オリゴマー当たり65gであり、得られたPBTのポリマーの溶液ヘイズは35%、固有粘度は0.84であった。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のPBTの製造法によれば、副生物の生成を抑制しつつ異物の生成を抑制できるので、異物生成が少なく品質の優れたPBTを効率よく製造することができる。
Claims (6)
- テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを連続的にエステル化反応し、次いで重縮合反応することによりポリブチレンテレフタレートを製造するに際し、前記エステル化反応を、多価カルボン酸化合物、ペンタエリスリトールおよびヒドロキシカルボン酸化合物またはその塩から選ばれた少なくとも1種のキレート配位子を持つチタン化合物の存在下で行なうことを特徴とするポリブチレンテレフタレートの製造法。
- 前記キレート配位子を持つチタン化合物として、2種以上のキレート配位子と反応させたチタン化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載のポリブチレンテレフタレートの製造法。
- 前記エステル化反応時に、スズ化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物から選ばれた触媒の少なくとも1種をさらに添加することを特徴とする請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレートの製造法。
- 前記キレート配位子の少なくとも一つが、乳酸、乳酸アンモニウム、クエン酸、リンゴ酸、およびシュウ酸アンモニウム塩から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレートの製造法。
- 前記エステル化反応を、反応温度220〜240℃、圧力101kPa以下で行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレートの製造法。
- 得られるポリブチレンテレフタレートの溶液ヘイズが20%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレートの製造法。
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