JP4784692B2 - 洗浄装置および洗浄方法 - Google Patents

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Description

本発明は、医療器具の他、電子部品や機械部品などを洗浄する洗浄装置と洗浄方法とに関するものである。
従来、下記特許文献1に開示されるように、洗浄槽内に貯留した洗浄液に被洗浄物を浸漬して、所定圧力までの減圧と、この減圧停止後の大気圧までの復圧とを、複数回繰り返して、被洗浄物の洗浄を図る洗浄方法が知られている。
具体的には、特許文献1の[表1]および[0020]に記載のとおり、洗浄槽(1)内は、減圧後に大気圧まで復圧する操作が3回繰り返される。これは、弁(5−1)の開/閉と、弁(9−1)の閉/開とを、同時に行うことを3回繰り返すことによって行われる。この際、[0022]に記載のとおり、洗浄槽(1)内の減圧を行うための弁操作は1回当たり30秒、大気圧に戻すための弁操作は10秒とされる。その結果、洗浄槽(1)内は、60mmHgの真空と大気圧との間で、変動が繰り返される。
特許文献1に記載の洗浄方法は、その[0009]に記載のとおり、被洗浄物に下方へのみ開口する凹部があっても、洗浄槽内を減圧することで、前記凹部内の空気を膨張させて排出し、その後、洗浄槽内を復圧することで、前記凹部内へ液体を流入させて、前記凹部内の洗浄を図ることを意図している。
また、特許文献1に記載の洗浄方法は、その[0009]に記載のとおり、洗浄槽内の減圧時、前記凹部内を洗浄液の蒸気に置換し、洗浄槽内の復圧時、その蒸気を凝縮させることで、前記凹部内へ液体を流入させて、前記凹部内の洗浄を図ることを意図している。
さらに、特許文献1に記載の洗浄方法は、その[0010]から[0011]に記載のとおり、減圧沸騰による蒸気泡の発生とその浮上、およびそれによる液体の流動によっても、前記凹部内の洗浄を図ることを意図している。
特開平7−136604号公報(請求項1、段落番号0009−0011、0020−0022、表1、図1)
発明者は、減圧沸騰による洗浄について鋭意研究に努めた結果、減圧による沸騰で洗浄液中に生じた気泡を、瞬時の復圧により一気に凝縮させることも、洗浄効果に大きく寄与することを突き止めた。この効果を得るためには、洗浄液の沸騰中に復圧すること、瞬時に復圧することが重要となる。そのためには、単に同じ圧力までの減圧と、大気圧までの復圧とを繰り返しただけでは、沸騰の発生やその消滅との関係で不十分であることは明らかである。
また、洗浄液の沸騰中に瞬時に復圧することによる洗浄の回数を増すには、洗浄槽内の圧力を徐々に下げながら、この減圧の過程でパルス状に復圧することが不可欠となる。従って、従来の洗浄方法のように、洗浄槽内を所定圧力まで減圧し、その減圧終了後に大気圧まで復圧し、さらに前回と同じ所定圧力まで減圧することを繰り返すだけでは不十分である。
以下、若干補足的に説明すると、特許文献1に記載の発明では、沸騰中に復圧を開始するとは限らないものである。また、10秒もかけて復圧するため、瞬時で且つ一時的な復圧とも言えない。
また、特許文献1に記載の発明は、洗浄槽内の減圧とその後の復圧とを複数回繰り返すものではあるが、洗浄液の温度管理はなされていない上、減圧レベルおよび復圧レベルは常に一定とされている。
減圧レベルが一定であると、洗浄効果に影響を与える沸騰の有無との関係で、洗浄槽内を無駄に減圧したり、逆に減圧が足りなかったりする。なお、洗浄槽内を無駄に減圧することは、洗浄液を速く冷やすことになり、それは次回以降の減圧時の沸騰の有無に影響を与えることになる。逆に、洗浄槽内の減圧が足りないと、洗浄液の沸騰がなされず、十分な洗浄効果を得られないことになる。
また、減圧レベルが一定であると、洗浄液の温度との関係で、洗浄液が沸騰したりしなかったりするので、同じように減圧および復圧の操作を実施しても、洗浄効果に大きな差を生じることになる。減圧レベルを一定(たとえば60mmHg)としつつも減圧の度に洗浄液を沸騰させようとすれば、洗浄液の温度を一定(たとえば40℃)に保つ必要が出てくる。この場合、ヒータなどで洗浄液を加熱することになろうが、被洗浄物がチューブなどで中空部を有する場合、被洗浄物内の洗浄液の温度は、被洗浄物外の洗浄液の温度よりも、温度上昇が遅れることになる。その結果、洗浄液を加熱しても、被洗浄物内では沸騰が起こらないおそれがある。このような不都合を防止しようとすれば、洗浄液の加熱時間を長くとる必要が生じる。
一方、復圧レベルが大気圧までの一定であると、洗浄効果に影響を与える沸騰の解消との関係で無駄に復圧することになり、しかもその分だけ次回の減圧時に無駄な減圧を強いられることになる。
ところで、無駄な減圧や復圧は、単に洗浄時間を長くするだけでなく、減圧手段に用いる水(水封式真空ポンプの封水、蒸気凝縮用熱交換器の冷却用水)や電力(真空ポンプ駆動用の電力)にも無駄を生じることになる。
本発明が解決しようとする課題は、洗浄液中への蒸気泡の発生とその瞬時の消滅とを利用することで、洗浄効果を増大させることにある。また、洗浄液の温度、洗浄槽内の減圧レベルおよび復圧レベルを管理して、洗浄液の沸騰の有無を管理して、迅速で確実な洗浄を実現することを課題とする。さらに、無駄な減圧や復圧を抑制することで、洗浄槽内の減圧手段に用いる水や電力の使用量の削減を図ることを課題とする。
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記洗浄槽内の気相部へ外気を導入して、前記洗浄槽内を復圧する復圧手段と、前記洗浄槽内の洗浄液を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段により洗浄液を設定温度まで加熱した後、前記減圧手段による前記洗浄槽内からの排気を継続して前記洗浄槽内の圧力を低下させる過程で、この減圧による洗浄液の沸騰中に前記復圧手段により前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返すことを特徴とする洗浄装置である。
請求項1に記載の発明によれば、洗浄槽内を減圧して洗浄液を沸騰させ、この沸騰中に洗浄槽内を瞬時に復圧して、洗浄液の沸騰を一気に止める。この復圧時、それまでの沸騰により洗浄液中に生じていた水蒸気の気泡は、瞬時に凝縮する。この凝縮時の圧力波や圧力差で、洗浄液が攪拌および移送され、被洗浄物の洗浄が図られる。そして、このような操作が繰り返されるが、減圧に伴い洗浄液は冷却されてしまう。この場合、ヒータなどの加熱で対応してしまうと、被洗浄物がチューブなどで中空部を有する場合、被洗浄物内の洗浄液温度は被洗浄物外の洗浄液温度よりも上昇が遅れるため、加熱後の保持時間を長くとる必要が生じる。そこで、これに対応するために、減圧レベルを徐々に低下させることで、各回における減圧時に洗浄液を確実に沸騰させて、確実で安定した洗浄効果を得るものである。なお、「減圧レベルを低下させる」とは、洗浄槽内の真空度を上げること、つまり洗浄槽内の圧力を下げることをいう。
請求項2に記載の発明は、前記設定温度は、50℃以下で設定されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置である。
請求項3に記載の発明は、前記洗浄槽内の洗浄液の温度を検出する液温センサ、前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサ、および前記洗浄槽内の気相部の温度を検出する温度センサの内、いずれか一以上のセンサを備え、前記加熱手段により洗浄液を前記設定温度としての減復圧パルス開始温度まで加熱し、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液が沸騰し続けるように、前記減圧手段により前記洗浄槽内の減圧を継続し、この減圧中、前記センサによる検出信号を監視して、洗浄液の温度または前記洗浄槽内の圧力もしくは温度に基づく所定タイミングで、洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に復圧し、その後再び減圧することを繰り返すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄装置である。
請求項3に記載の発明によれば、予め洗浄液を減復圧パルス開始温度になるまで加熱してから、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液を沸騰させ続けるように洗浄槽内を減圧すると共に、その減圧中に所定タイミングで一時的に沸騰を中止するように、洗浄槽内を瞬時に復圧することを繰り返すことになる。洗浄液を所定温度範囲に保って制御することで、より確実で安定した洗浄を行うことができる。
請求項4に記載の発明は、洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になると、洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまで再加熱して、再び洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、前記洗浄槽内の減圧とこの減圧中の所定タイミングでの瞬時の復圧とを繰り返し、洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまでの洗浄液の加熱と、洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまでの前記洗浄槽内の減復圧の繰り返しとからなるサイクルを、設定回数行うことを特徴とする請求項3に記載の洗浄装置である。
請求項4に記載の発明によれば、洗浄液が減復圧パルス開始温度になるまでの洗浄液の加熱と、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまでの洗浄槽内の減復圧の繰り返しとからなるサイクルを設定回数行うことになる。一回のサイクルでは、減復圧の繰り返しにより洗浄液温度が次第に低下して、たとえば脂肪分が固まって洗浄効果が薄れる場合があるが、再度洗浄液温度を上昇させてから減復圧の繰り返しを行うことで、より確実で安定した洗浄を行うことができる。
請求項5に記載の発明は、超音波振動子をさらに備え、この超音波振動子は、前記加熱手段により洗浄液を減復圧パルス開始温度まで加熱する際、洗浄液に超音波振動を与えることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の洗浄装置である。
請求項5に記載の発明によれば、洗浄液を加熱中、被洗浄物を超音波洗浄することで、洗浄効果を一層向上することができる。
請求項6に記載の発明は、前記所定タイミングは、洗浄液の温度または前記洗浄槽内の圧力もしくは温度を、所定ずつ下げるように設定されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の洗浄装置である。
請求項6に記載の発明によれば、洗浄液の温度または洗浄槽内の圧力もしくは温度を所定ずつ下げるタイミングで、洗浄槽内の瞬時の復圧を行うことで、簡易な制御で確実な洗浄を行うことができる。
請求項7に記載の発明は、前記瞬時の復圧は、洗浄液の沸騰が止む圧力で且つ大気圧未満の圧力までなされることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄装置である。
請求項7に記載の発明によれば、復圧を大気圧未満として、洗浄液の沸騰を止める制御とした。これにより、洗浄効果に影響を与えない無駄な復圧と、それに伴う次回の無駄な減圧とをなくし、洗浄時間の短縮を図ることができる。しかも、無駄な減圧をなくすことで、洗浄槽内の減圧手段に用いる水や電力の使用量の削減を図ることもできる。
請求項8に記載の発明は、洗浄槽内に貯留した洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄を図る洗浄方法であって、加熱手段により洗浄液を設定温度まで加熱した後、減圧手段による前記洗浄槽内からの排気を継続して前記洗浄槽内の圧力を低下させる過程で、この減圧による洗浄液の沸騰中に復圧手段により前記洗浄槽内の気相部へ外気を導入して前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返すことを特徴とする洗浄方法である。
請求項8に記載の発明によれば、洗浄槽内を減圧して洗浄液を沸騰させ、この沸騰中に洗浄槽内を瞬時に復圧して、洗浄液の沸騰を一気に止める。この復圧時、それまでの沸騰により洗浄液中に生じていた水蒸気の気泡は、瞬時に凝縮する。この凝縮時の圧力波や圧力差で、洗浄液が攪拌および移送され、被洗浄物の洗浄が図られる。そして、このような操作が繰り返されるが、減圧に伴い洗浄液は冷却されてしまう。この場合、ヒータなどの加熱で対応してしまうと、被洗浄物がチューブなどで中空部を有する場合、被洗浄物内の洗浄液温度は被洗浄物外の洗浄液温度よりも上昇が遅れるため、加熱後の保持時間を長くとる必要が生じる。そこで、これに対応するために、減圧レベルを徐々に低下させることで、各回における減圧時に洗浄液を確実に沸騰させて、確実で安定した洗浄効果を得るものである。なお、「減圧レベルを低下させる」とは、洗浄槽内の真空度を上げること、つまり洗浄槽内の圧力を下げることをいう。
請求項9に記載の発明は、前記設定温度は、50℃以下で設定されることを特徴とする請求項8に記載の洗浄方法である。
請求項10に記載の発明は、洗浄液を前記設定温度としての減復圧パルス開始温度まで加熱し、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液が沸騰し続けるように前記洗浄槽内の減圧を継続し、この減圧中、洗浄液の温度または前記洗浄槽内の圧力もしくは温度に基づく所定タイミングで、洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に復圧し、その後再び減圧することを繰り返すことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の洗浄方法である。
請求項10に記載の発明によれば、予め洗浄液を減復圧パルス開始温度になるまで加熱してから、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液を沸騰させ続けるように洗浄槽内を減圧すると共に、その減圧中に所定タイミングで一時的に沸騰を中止するように、洗浄槽内を瞬時に復圧することを繰り返すことになる。洗浄液を所定温度範囲に保って制御することで、より確実で安定した洗浄を行うことができる。
請求項11に記載の発明は、洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になると、洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまで再加熱して、再び洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、前記洗浄槽内の減圧とこの減圧中の所定タイミングでの瞬時の復圧とを繰り返し、洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまでの洗浄液の加熱と、洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまでの前記洗浄槽内の減復圧の繰り返しとからなるサイクルを、設定回数行うことを特徴とする請求項10に記載の洗浄方法である。
請求項11に記載の発明によれば、洗浄液が減復圧パルス開始温度になるまでの洗浄液の加熱と、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまでの洗浄槽内の減復圧の繰り返しとからなるサイクルを設定回数行うことになる。一回のサイクルでは、減復圧の繰り返しにより洗浄液温度が次第に低下して、たとえば脂肪分が固まって洗浄効果が薄れる場合があるが、再度洗浄液温度を上昇させてから減復圧の繰り返しを行うことで、より確実で安定した洗浄を行うことができる。
請求項12に記載の発明は、洗浄液を減復圧パルス開始温度まで加熱する際、洗浄液に超音波振動を与えることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の洗浄方法である。
請求項12に記載の発明によれば、洗浄液を加熱中、被洗浄物を超音波洗浄することで、洗浄効果を一層向上することができる。
さらに、請求項13に記載の発明は、前記瞬時の復圧は、洗浄液の沸騰が止む圧力で且つ大気圧未満の圧力までなされることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の洗浄方法である。
請求項13に記載の発明によれば、復圧を大気圧未満として、洗浄液の沸騰を止める制御とした。これにより、洗浄効果に影響を与えない無駄な復圧と、それに伴う次回の無駄な減圧とをなくし、洗浄時間の短縮を図ることができる。しかも、無駄な減圧をなくすことで、洗浄槽内の減圧手段に用いる水や電力の使用量の削減を図ることもできる。
本発明によれば、洗浄液中への蒸気泡の発生とその瞬時の消滅とを利用することで、洗浄効果を増大させることができる。また、洗浄液の温度、洗浄槽内の減圧レベルおよび復圧レベルを管理して、洗浄液の沸騰の有無を管理して、迅速で確実な洗浄を実現することができる。さらに、無駄な減圧や復圧を抑制することで、洗浄槽内の減圧手段に用いる水や電力の使用量の削減を図ることができる。
本発明の洗浄装置の一実施形態を示す概略図である。 図1の洗浄装置を用いた洗浄方法の一例を示す図であり、洗浄開始からの経過時間と洗浄槽内圧力および洗浄液温度との関係を示している。 図1の洗浄装置を用いた洗浄方法の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の洗浄装置は、洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記洗浄槽内の気相部へ外気を導入して、前記洗浄槽内を復圧する復圧手段とを備え、前記洗浄槽内を減圧して洗浄液を沸騰させ、この沸騰中に前記復圧手段により前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に復圧し、その後再び減圧することを繰り返し、前記瞬時の復圧を一回または所定回数行うごとに、その後の減圧で洗浄液が沸騰するように減圧レベルを低下させることを特徴とする洗浄装置である。
より好ましくは、洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記洗浄槽内の気相部へ外気を導入して、前記洗浄槽内を復圧する復圧手段と、前記洗浄槽内の洗浄液を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段により洗浄液を設定温度まで加熱した後、前記減圧手段による前記洗浄槽内からの排気を継続して前記洗浄槽内の圧力を低下させる過程で、この減圧による洗浄液の沸騰中に前記復圧手段により前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返すことを特徴とする洗浄装置である。
また、本実施形態の洗浄方法は、洗浄槽内に貯留した洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄を図る洗浄方法であって、前記洗浄槽内を減圧して洗浄液を沸騰させ、この沸騰中に前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に復圧し、その後再び減圧することを繰り返し、前記瞬時の復圧を一回または所定回数行うごとに、その後の減圧で洗浄液が沸騰するように減圧レベルを低下させることを特徴とする洗浄方法である。
より好ましくは、洗浄槽内に貯留した洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄を図る洗浄方法であって、加熱手段により洗浄液を設定温度まで加熱した後、減圧手段による前記洗浄槽内からの排気を継続して前記洗浄槽内の圧力を低下させる過程で、この減圧による洗浄液の沸騰中に復圧手段により前記洗浄槽内の気相部へ外気を導入して前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返すことを特徴とする洗浄方法である。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の洗浄装置の一実施形態を示す概略図である。
本実施形態の洗浄装置1は、洗浄液を貯留して被洗浄物2が浸漬される洗浄槽3と、この洗浄槽3内に洗浄液を供給する給水手段4と、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する減圧手段5と、減圧された洗浄槽3内の気相部へ外気を導入して洗浄槽3内を復圧する復圧手段6と、洗浄槽3内の洗浄液を加熱する加熱手段7と、洗浄槽3内の洗浄液を排出する排水手段8と、洗浄槽3内の圧力を検出する圧力センサ9と、洗浄槽3内の洗浄液の温度を検出する液温センサ10と、これらセンサ9,10の検出信号などに基づき前記各手段4〜8を制御する制御手段11とを備える。なお、洗浄槽3内の圧力を検出する圧力センサ9に代えてまたはこれに加えて、洗浄槽3内の温度を検出する温度センサ(図示省略)を備えてもよい。
洗浄装置1は、被洗浄物2の洗浄に限らず、すすぎや消毒を行う装置であってもよい。すなわち、洗浄装置1は、被洗浄物2の洗浄、すすぎおよび消毒の内、いずれか一以上の処理を実行可能とされる。本実施形態では、後述するように、被洗浄物2の洗浄およびすすぎの後、被洗浄物2の乾燥が、一つの洗浄槽3で実行可能とされる。
洗浄液は、減圧手段5による洗浄槽3内の減圧により沸騰可能であれば特に問わないが、たとえば水である。本実施形態では、洗浄液は、洗浄剤を0.5%前後含んだ水である。但し、洗浄液は、洗剤を含む水の他、洗剤を含まない水でもよい。また、洗浄液は、軟水、純水、溶剤など、洗浄に使用できるその他の液体でもよい。
被洗浄物2は、洗浄を図りたい物品であり、たとえば、医療器具、電子部品または機械部品である。
洗浄槽3は、内部空間の減圧に耐える中空容器である。本実施形態の洗浄槽3は、上方へ開口して中空部を有する本体12と、この本体12の開口部を開閉する蓋13とを備える。本体12に蓋13をした状態では、本体12と蓋13との隙間はパッキン14で封止される。これにより、本体12の中空部は密閉され、洗浄槽3内に密閉空間が形成される。
洗浄槽3には、洗浄槽3内に洗浄液を供給する給水手段4が接続される。本実施形態の給水手段4は、原水タンク15の水を、給水路16を介して洗浄槽3に供給する。給水路16には、原水タンク15の側から順に、給水ポンプ17と給水弁19とが設けられる。給水ポンプ17を作動させた状態で給水弁19を開くと、原水タンク15の水が給水路16を介して洗浄槽3に供給される。洗浄槽3へ供給される水には、給水路16の中途において、薬液タンク20からの洗浄剤を薬注ポンプ18により混入することができる。なお、給水弁19の開閉は、給水ポンプ17および薬注ポンプ18の作動の有無と連動する。
洗浄槽3には、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する減圧手段5が接続される。本実施形態の減圧手段5は、洗浄槽3内の気体を、排気路21を介して吸引排出する。排気路21には、洗浄槽3の側から順に、熱交換器22、逆止弁23、および水封式の真空ポンプ24が設けられる。
熱交換器22は、排気路21内の蒸気を冷却し凝縮させる。そのために、熱交換器22には、熱交給水弁25を介して水が供給され排出される。排気路21内の蒸気を予め凝縮させることで、その後の真空ポンプ24の負荷を軽減して、洗浄槽3内の減圧を有効に図ることができる。
水封式の真空ポンプ24は、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されて作動される。そのために、真空ポンプ24には、封水給水弁26を介して水が供給され排出される。真空ポンプ24を作動させる際、封水給水弁26は、真空ポンプ24に連動して開かれる。
洗浄槽3には、減圧下の洗浄槽3内の気相部へ外気を導入して洗浄槽3内を復圧する復圧手段6が接続される。本実施形態の復圧手段6は、減圧下の洗浄槽3内に、給気路27を介して外気を導入する。給気路27には給気弁28が設けられており、洗浄槽3内が減圧された状態で給気弁28を開くと、差圧により外気を洗浄槽3内へ導入して、洗浄槽3内を復圧することができる。
洗浄槽3には、洗浄槽3内の洗浄液を加熱する加熱手段7が設けられる。本実施形態の加熱手段7は、洗浄槽3内の洗浄液中に蒸気を吹き込んで、洗浄液を加熱する。具体的には、洗浄槽3には、ボイラなどの蒸気供給源から給蒸路29を介して蒸気が供給可能とされる。給蒸路29に設けた給蒸弁30を開閉することで、洗浄槽3内への蒸気供給の有無を切り替えることができる。
ところで、加熱手段7は、洗浄槽3内の洗浄液に直接に蒸気を吹き込む以外に、洗浄槽3内に電気ヒータを設けたり、電気ヒータを装備した容器を別途設けてその容器と洗浄槽3との間を循環ポンプで洗浄液または熱媒を循環させたり、洗浄槽3をジャケット構造(内外二重構造)としてその中空部に蒸気などの熱媒を入れて洗浄槽3内の洗浄液を間接的に加熱したりしてもよい。但し、エネルギー効率および洗浄槽3の構成の簡素化の観点から、本実施形態のように洗浄液中に蒸気を吹き込んで洗浄液を加熱するのが好ましい。
洗浄槽3には、洗浄槽3内の洗浄液を排出する排水手段8が設けられる。本実施形態の排水手段8は、洗浄槽3内の洗浄液を、洗浄槽3の底部から排水路31を介して排出する。排水路31には、排水弁32が設けられており、洗浄槽3内に洗浄液が貯留された状態で排水弁32を開くと、洗浄液を洗浄槽3外へ自然に導出することができる。
洗浄槽3には、洗浄槽3内の圧力を検出する圧力センサ9と、洗浄槽3内の洗浄液の温度を検出する液温センサ10とが設けられる。さらに、前述したように、洗浄槽3には、洗浄槽3内の気相部の温度を検出する温度センサを設けてもよい。本実施形態では、圧力センサ9と液温センサ10とが設けられる。図1において、圧力センサ9は、給気弁28と洗浄槽3との間の給気路27に設けられているが、洗浄槽3に直接に設けてもよい。また、本実施形態では、液温センサ10は、洗浄槽3の側壁に設けられるが、洗浄槽3内の洗浄液の温度を検出可能であれば設置位置は特に問わない。
給水手段4、減圧手段5、復圧手段6、加熱手段7および排水手段8は、制御手段11により制御される。この制御手段11は、前記各センサ9,10の検出信号などに基づき、前記各手段4〜8を制御する制御器33である。具体的には、給水ポンプ17、薬注ポンプ18、給水弁19、熱交給水弁25、封水給水弁26、真空ポンプ24、給気弁28、給蒸弁30、排水弁32、圧力センサ9および液温センサ10は、制御器33に接続されている。そして、制御器33は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、洗浄槽3内の被洗浄物2の洗浄を図る。
以下、本実施形態の洗浄装置1を用いた洗浄方法について具体的に説明する。図2は、本実施形態の洗浄装置1を用いた洗浄方法の一例を示す図であり、線Pは洗浄開始からの経過時間と洗浄槽内の圧力との関係を示し、線Tは洗浄開始からの経過時間と洗浄液の温度との関係を示している。また、図3は、本実施形態の洗浄装置1を用いた洗浄方法の一例を示すフローチャートである。
初期状態において、洗浄槽3内に洗浄液はなく、給気弁28以外の各弁19,25,26,30,32は閉じられ、各ポンプ17,18,24は作動を停止している。この初期状態から、注水工程S1、加熱工程S2、減復圧パルス工程S3および排水工程S4が順次になされる。
注水工程S1に先立って、洗浄槽3内には被洗浄物2が入れられ、洗浄槽3の蓋13は閉じられる。但し、被洗浄物2は、注水工程S1の直後に洗浄槽3内に入れてもよく、その場合も、洗浄槽3内に被洗浄物2を入れた後、洗浄槽3の蓋13は閉じられる。いずれにしても、被洗浄物2は、洗浄槽3内の洗浄液内に浸漬される。
注水工程S1は、給水手段4により洗浄槽3内に洗浄液を入れる工程である。本実施形態では、給水弁19を開けた状態で、給水ポンプ17および薬注ポンプ18を作動させて、洗浄槽3内に洗浄液が入れられる。洗浄槽3内へ供給される水には、薬注ポンプ18の作動により、所望量の洗浄剤が添加される。但し、前述したとおり、洗浄剤の添加は適宜に省略でき、その場合には薬注ポンプ18および薬液タンク20の設置は省略できる。また、原水タンク15内に、洗浄剤を添加した水の他、純水、軟水、その他の洗浄液を貯留して用いてもよい。注水工程S1において、洗浄槽3の蓋13が閉じられている場合、洗浄槽3への注水に伴い、洗浄槽3内の空気は給気路27から排出される。
洗浄槽3に設けた液位センサ(図示省略)により、洗浄槽3内の所定水位まで洗浄液が貯留されたことを検知すると、給水手段4による給水を停止する。具体的には、給水弁19を閉じると共に、給水ポンプ17および薬注ポンプ18を停止して、次工程へ移行する。但し、洗浄槽3内への給水は、洗浄槽3内の所定水位まで行う以外に、洗浄槽3内に所定量だけ洗浄液を入れて行ってもよい。その場合、洗浄槽3内への給水量は、単に所定時間だけ洗浄槽3に給水することで制御してもよい。
加熱工程S2(S21〜S23)は、洗浄槽3内の洗浄液を減復圧パルス開始温度まで加熱する工程である。具体的には、洗浄液が減復圧パルス開始温度になるまで、加熱手段7により洗浄液を加熱する。本実施形態では、給蒸弁30を開いて、洗浄槽3内の洗浄液中に蒸気を吹き込んで、洗浄液を加熱する(S21)。この給蒸中、液温センサ10により洗浄液の温度を監視し、洗浄液が減復圧パルス開始温度になると、給蒸弁30を閉じて次工程へ移行する(S22,S23)。この際、好ましくは、洗浄液が減復圧パルス開始温度になると、その温度を所定時間保持するように、液温センサ10の検出信号に基づき給蒸弁30の開閉を制御した後、給蒸弁30を閉じて次工程へ移行する。洗浄液を減復圧パルス開始温度で所定時間保持することで、被洗浄物2がチューブのような中空部を有する場合でも、被洗浄物2の内外の洗浄液の温度を一定にすることができる。
減復圧パルス開始温度は、特に問わないが、被洗浄物2の汚れが血液汚れの場合、60℃を超えるとタンパク質が熱変形し固着するので、そのような被洗浄物2の場合には、減復圧パルス開始温度は60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。本実施形態では、減復圧パルス開始温度は、たとえば50℃に設定される。
減復圧パルス工程S3(S31〜S35)では、洗浄槽3内の洗浄液が減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液を沸騰させ続けるように洗浄槽3内の減圧が図られる(S31,S32)。この間、洗浄液の沸騰中には、所定タイミングで洗浄槽3内を瞬時に復圧して、洗浄液の沸騰を一時的に中断させる操作が繰り返される(S33,S34)。このようにして、減圧と瞬時の復圧とが繰り返される。減復圧パルス終了温度は、特に問わないが、洗浄温度が低くなると洗浄効果が低下するため、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。
より具体的に説明すると、減復圧パルス工程S3では、減圧手段5の作動を継続して、洗浄槽3内の圧力を徐々に低下させ、それにより洗浄液の沸騰の継続が図られる(S31,S32)。但し、この間、液温センサ10により洗浄液の温度を監視し、洗浄液の温度が所定ずつ下がるたびに、復圧手段6により洗浄槽3内を一時的に復圧する(S33,S34)。減圧手段5による洗浄槽3内の減圧は、給気弁28を閉じて、熱交給水弁25および封水給水弁26を開いた状態で真空ポンプ24を作動させればよい。また、復圧手段6による設定圧力までの瞬時の復圧は、電磁弁からなる給気弁28を開けばよい。この復圧時にも、減圧手段5は作動させたままでよい。そして、給気弁28を開けて洗浄槽3内を復圧して、洗浄液の沸騰を中断させた後は、給気弁28を再び閉じて、洗浄槽3内の減圧とそれによる洗浄液の沸騰が図られる(S31)。
減復圧パルス工程S3では、洗浄液の沸騰中に復圧がなされる限り、復圧のタイミングは特に問わない。本実施形態では、液温センサ10に基づき洗浄液の温度を監視して、その温度が所定温度ずつ下がるたびに復圧しているが、圧力センサ9に基づき洗浄槽3内の圧力を監視して、その圧力が所定圧力ずつ下がるたびに復圧してもよい。あるいは、洗浄槽3内の気相部に温度センサを設け、この温度センサに基づき洗浄槽3内の気相部の温度を監視して、その温度が所定温度ずつ下がるたびに復圧してもよい。いずれの場合も、所定温度または所定圧力は、減復圧パルス工程S3の中途で変更してもよいし、場合により毎回異なってもよい。また、洗浄液の温度または洗浄槽3内の圧力もしくは温度が所定ずつ下がるたびに復圧する以外に、単にタイマで所定時間ごとに復圧してもよい。
前記所定温度(前記所定圧力もこれに準じて同様に決められる)は、適宜に設定されるが、本実施形態では、たとえば2℃が採用される。従って、加熱工程S2で50℃まで洗浄液を加熱した場合、初回の復圧は洗浄液が48℃になると実行される。なお、順次に低くなるよう毎回設定される温度は、チューブ内や容器内を蒸気で満たすだけの蒸発が見られる温度落差が必要となる。一方、温度落差を大きく設定すると無駄な洗浄液の温度の低下を招く。そのため、順次に低くなるように毎回設定される温度落差は、0.5〜5℃が好ましく、1〜3℃がより好ましい。
一方、瞬時の復圧は、洗浄液の沸騰が止む圧力までなされる。特に、大気圧未満の圧力で、洗浄液の沸騰が止む圧力に近い圧力とするのが好ましい。大気圧までではなく中途まで復圧して、洗浄液の沸騰を止める制御とすることで、洗浄効果に影響を与えない無駄な復圧と、それに伴う次回の無駄な減圧とをなくし、洗浄時間の短縮を図ることができる。しかも、無駄な減圧をなくすことで、洗浄槽3内の減圧手段5に用いる水や電力の使用量の削減を図ることもできる。なお、この復圧レベルは、一定値で足りるが、所望により徐々に下げるなど、途中で変更してもよい。
このように、本実施形態の洗浄方法によれば、洗浄槽3内を減圧して洗浄液を沸騰させ、この沸騰中に、洗浄槽3内を設定圧力まで瞬時に復圧して、洗浄液の沸騰を一気に止めることになる。従って、復圧時、それまでの沸騰により洗浄液中に生じていた水蒸気の気泡は、瞬時に凝縮することになる。この凝縮時の圧力波や圧力差で、洗浄液が攪拌および移送され、被洗浄物2の洗浄が図られる。そして、このような操作が繰り返されるが、減圧に伴い洗浄液は冷却されてしまう。この場合、ヒータなどの加熱で対応してしまうと、被洗浄物2がチューブなどで中空部を有する場合、被洗浄物2内の洗浄液温度は被洗浄物2外の洗浄液温度よりも上昇が遅れるため、加熱後の保持時間を長くとる必要が生じる。そこで、これに対応するために、洗浄槽3内の圧力を徐々に低下させることで、洗浄液を確実に沸騰させて、確実で安定した洗浄効果を得るものである。
ところで、上述したように、減圧により生じた気泡は、瞬時の復圧により凝縮し消失するが、その消失までの極短時間に、気泡の内部と外部にできるだけ大きな圧力差をつくった方が、洗浄液がより攪拌および移送される。たとえば、被洗浄物2がチューブとして、そのチューブ内の気泡が消失する時間は数秒であるので、空気分圧分で20kPa増加させる所要時間は1秒以内が好ましく、0.1秒以内がより好ましい。
また、瞬時の復圧の直前に、洗浄液中にできるだけ蒸気が多く存在している方が、多くの空間で凝縮時の圧力波が生じる。そうさせるために、洗浄液温度をすばやく低下させる必要があり、洗浄液温度を毎分1℃以上の低下させることが好ましく、毎分2℃以上低下させることがより好ましい。
このような減復圧パルス工程S3を洗浄液が減復圧パルス終了温度になるまで行う(S32)。減復圧パルス終了温度は、特に問わないが、たとえば30℃に設定される。その後、洗浄槽3内を大気圧まで復圧して、洗浄を終了してもよいが、図2に示すように、加熱工程S2と減復圧パルス工程S3とのセットを複数回繰り返してもよい(S35)。
すなわち、洗浄液が減復圧パルス終了温度になると、洗浄液が減復圧パルス開始温度になるまで再加熱して、再び洗浄液が減復圧パルス終了温度になるまで、減圧と復圧とを繰り返してもよい。そして、洗浄液が減復圧パルス開始温度になるまでの洗浄液の加熱と、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるまでの洗浄槽3内の減復圧の繰り返しとからなるサイクルを、設定回数(図2では2回)行うのがよい。一回のサイクルでは、減復圧の繰り返しにより洗浄液温度が次第に低下して、たとえば脂肪分が固まって洗浄効果が薄れる場合があるが、再度洗浄液温度を上昇させてから減復圧の繰り返しを行うことで、より確実で安定した洗浄を行うことができる。ところで、洗浄液を減復圧パルス開始温度になるまで加熱後には、図2に示すように、洗浄液を減復圧パルス開始温度にて所定時間保持するのが好ましい。
その後の排水工程S4は、洗浄槽3内を大気圧まで復圧して、洗浄槽3内の洗浄水を排出する工程である。具体的には、給気弁28を開いて洗浄槽3内を大気圧まで復圧した後、排水弁32を開けて洗浄水を排水すればよい。その後は、所望により、被洗浄物2のすすぎがなされる。たとえば、洗浄槽3内に水を入れて所定温度まで加温して適宜洗浄槽3内を減圧および復圧して被洗浄物2のすすぎがなされる。このようなすすぎは、2回おこなってもよく、その場合、2回目のすすぎは1回目のすすぎよりも、洗浄槽3内の水の温度を高めに設定するのがよく、たとえば80〜90℃の水が用いられる。
すすぎ工程後には、洗浄水を排水した後、乾燥工程を行うのがよい。乾燥工程では、洗浄槽3内に蒸気を供給して被洗浄物2の温度を上げた後、洗浄槽3内を減圧する。あるいは、蒸気との熱交換により洗浄槽3内へ暖かい空気を入れつつ、減圧手段5により洗浄槽3内からの真空引きを図ればよい。これにより、洗浄槽3内の被洗浄物2の乾燥が図られる。
本発明の洗浄装置および洗浄方法は、前記実施形態の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、減復圧パルス工程S3において、洗浄槽3内の圧力を徐々に低下させると共に、洗浄槽3内の減圧による洗浄液の沸騰中に瞬時に復圧して洗浄液の沸騰を一時的に中断することを繰り返す工程を含めば、その他は適宜に変更可能である。
また、減圧手段5として、図1では、熱交換器22と真空ポンプ24とを備えたが、熱交換器22を省略して、真空ポンプ24のみとしてもよい。逆に、真空ポンプ24と熱交換器22に代えてまたはそれに加えて、蒸気エゼクタや水エゼクタを備えてもよい。さらに、最初の注水工程S1後で加熱工程S2前に、洗浄槽3内の空気排除工程を実施してもよい。あるいは、注水工程S1において、給気弁28を閉じると共に減圧手段5を作動させることで、洗浄槽3内へ注水中、洗浄槽3内からの空気排除を図ってもよい。
また、前記実施形態では、原水タンク15内の水を給水ポンプ17により洗浄槽3内へ供給したが、洗浄槽3内を減圧手段5で減圧しておくことで、洗浄槽3内外の差圧により、給水ポンプ17を用いることなく、原水タンク15内の水を洗浄槽3内へ供給してもよい。そして、その給水への洗浄剤の混入も、差圧により同様に行うことができる。
また、前記実施形態では、洗浄液が減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄槽内の減圧と復圧とを繰り返したが、洗浄槽3内が減復圧パルス終了圧力になるか、洗浄槽3内が減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄槽内の減圧と復圧とを繰り返してもよい。洗浄槽3内が減復圧パルス終了圧力になるか否かは、圧力センサ9で監視すればよいし、洗浄槽3が減復圧パルス終了温度になるか否かは、洗浄槽3内の気相部に設けた温度センサで監視すればよい。
また、前記実施形態では、瞬時の復圧を一回行うごとに、その後の減圧レベルを低下させたが、瞬時の復圧を複数回行うごとに、その後の減圧レベルを低下させてもよい。その場合も、減圧により洗浄液を沸騰させ、その沸騰中に瞬時に復圧する。
さらに、前記実施形態の洗浄装置および洗浄方法において、超音波振動による洗浄を付加してもよい。すなわち、洗浄槽3にさらに超音波振動子を設置してもよい。そして、たとえば、加熱工程S2において、超音波振動による洗浄を図るのがよい。加熱工程S2は、洗浄液を加熱するだけで洗浄には寄与していないため、この工程において洗浄液に超音波振動を与えることで、被洗浄物2を超音波洗浄して、洗浄効果を一層向上することができる。
最後に、前記実施形態において、洗浄槽3内へ被洗浄物2を収容した直後の状態では、全ての被洗浄物2が必ずしも洗浄液に浸漬されている必要はない。たとえば、被洗浄物2を入れたラックを、洗浄槽3内に上下に複数段にして収容する場合、最上段のラックは浸漬されていなくてもよい。その場合でも、洗浄液の沸騰によって、すべての被洗浄物2に洗浄液を当てて洗浄することができる。このように、被洗浄物2は、洗浄槽3内の洗浄液の沸騰前には洗浄液に浸漬されないが、洗浄槽3内の洗浄液を沸騰させた際には洗浄液に浸かる位置にも配置できる。この場合、被洗浄物2の設置スペースを増すことができ、一度の運転でより多くの被洗浄物2の洗浄が可能となる。また、液位を下げて運転できるので、洗浄液の使用量の抑制になる。
本実施例として、図2の洗浄方法により血液塗布ステンレス片の洗浄を図った後、ステンレス片の残留タンパク質を測定して、洗浄効果を確認した。また、比較例1として、洗浄槽内の減圧と復圧とを単に繰り返し、洗浄液の再加熱をしない場合について、同様に洗浄効果を確認した。さらに、比較例2として、減復圧パルスを行うことなく、洗浄液が沸騰しなくなるまで洗浄槽内を減圧した後、洗浄液を再加熱して再び洗浄液が沸騰しなくなるまで洗浄槽内を減圧した場合について、同様に洗浄効果を確認した。
いずれについても、血液塗布ステンレス片を長さ2mのチューブに入れた場合、長さ4mのチューブに入れた場合、蓋付き容器内に入れた場合、チューブや容器に入れずにそのまま洗浄液に浸漬した場合について、洗浄効果を確認した。
チューブは、内径5mm、外径7mmの管であり、洗浄槽へ沈める際に渦巻き状にした。血液塗布ステンレス片の大きさは、幅5mm、長さ55mm、厚さ1mmである。血液塗布ステンレス片は、チューブの中央(たとえば4mの長さのチューブの場合、一端から2m入った箇所)に配置した。蓋付き容器とは、マイクロ器具滅菌用トレイ(幅394mm、奥行267mm、高さ23mmの耐熱プラスチック製でシリコンマット付き)を用い、容器に敷いたシリコンマットの中央上部に血液塗布ステンレス片を置いて蓋をした。用いた血液塗布ステンレス片は、内腔洗浄評価インジケータ「TOSI−LumCheck」である。
Figure 0004784692
洗浄効果を表1に示すが、この表から分かるように、本実施例が最も洗浄性に優れている。比較例1は、被洗浄物の空気だまりにおける空気の出入りによる洗浄のみのため、洗浄効果に乏しい。また、比較例2では、洗浄液の沸騰によりチューブ内が蒸気で満たされてしまうと、洗浄液の揺動がなく、洗浄が中断することにより、洗浄効果に乏しい。
1 洗浄装置
2 被洗浄物
3 洗浄槽
4 給水手段
5 減圧手段
6 復圧手段
7 加熱手段
8 排水手段
9 圧力センサ
10 液温センサ
11 制御手段

Claims (14)

  1. 洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、
    この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、
    減圧された前記洗浄槽内の気相部へ外気を導入して、前記洗浄槽内を復圧する復圧手段と
    前記洗浄槽内の洗浄液を加熱する加熱手段とを備え、
    前記加熱手段により洗浄液を設定温度まで加熱した後、前記減圧手段による前記洗浄槽内からの排気を継続して前記洗浄槽内の圧力を低下させる過程で、この減圧による洗浄液の沸騰中前記復圧手段により前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返す
    ことを特徴とする洗浄装置。
  2. 前記設定温度は、50℃以下で設定される
    ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
  3. 記洗浄槽内の洗浄液の温度を検出する液温センサ、前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサ、および前記洗浄槽内の気相部の温度を検出する温度センサの内、いずれか一以上のセンサを備え、
    前記加熱手段により洗浄液を前記設定温度としての減復圧パルス開始温度まで加熱し、
    洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液が沸騰し続けるように、前記減圧手段により前記洗浄槽内の減圧を継続し、
    この減圧中、前記センサによる検出信号を監視して、洗浄液の温度または前記洗浄槽内の圧力もしくは温度に基づく所定タイミングで、洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に復圧し、その後再び減圧することを繰り返す
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
  4. 洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になると、洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまで再加熱して、再び洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、前記洗浄槽内の減圧とこの減圧中の所定タイミングでの瞬時の復圧とを繰り返し、
    洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまでの洗浄液の加熱と、洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまでの前記洗浄槽内の減復圧の繰り返しとからなるサイクルを、設定回数行う
    ことを特徴とする請求項3に記載の洗浄装置。
  5. 超音波振動子をさらに備え、
    この超音波振動子は、前記加熱手段により洗浄液を減復圧パルス開始温度まで加熱する際、洗浄液に超音波振動を与える
    ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の洗浄装置。
  6. 前記所定タイミングは、洗浄液の温度または前記洗浄槽内の圧力もしくは温度を、所定ずつ下げるように設定される
    ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の洗浄装置。
  7. 前記瞬時の復圧は、洗浄液の沸騰が止む圧力で且つ大気圧未満の圧力までなされる
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄装置。
  8. 洗浄槽内に貯留した洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄を図る洗浄方法であって、
    加熱手段により洗浄液を設定温度まで加熱した後、減圧手段による前記洗浄槽内からの排気を継続して前記洗浄槽内の圧力を低下させる過程で、この減圧による洗浄液の沸騰中に復圧手段により前記洗浄槽内の気相部へ外気を導入して前記洗浄槽内を洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返す
    ことを特徴とする洗浄方法。
  9. 前記設定温度は、50℃以下で設定される
    ことを特徴とする請求項8に記載の洗浄方法。
  10. 洗浄液を前記設定温度としての減復圧パルス開始温度まで加熱し、
    洗浄液が減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液が沸騰し続けるように前記洗浄槽内の減圧を継続し、
    この減圧中、洗浄液の温度または前記洗浄槽内の圧力もしくは温度に基づく所定タイミングで、洗浄液の沸騰が止むまで瞬時に復圧し、その後再び減圧することを繰り返す
    ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の洗浄方法。
  11. 洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になると、洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまで再加熱して、再び洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまで、前記洗浄槽内の減圧とこの減圧中の所定タイミングでの瞬時の復圧とを繰り返し、
    洗浄液が前記減復圧パルス開始温度になるまでの洗浄液の加熱と、洗浄液が前記減復圧パルス終了温度になるか前記洗浄槽内が前記減復圧パルス終了圧力または減復圧パルス終了温度になるまでの前記洗浄槽内の減復圧の繰り返しとからなるサイクルを、設定回数行う
    ことを特徴とする請求項10に記載の洗浄方法。
  12. 洗浄液を減復圧パルス開始温度まで加熱する際、洗浄液に超音波振動を与える
    ことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の洗浄方法。
  13. 前記瞬時の復圧は、洗浄液の沸騰が止む圧力で且つ大気圧未満の圧力までなされる
    ことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の洗浄方法。
  14. 前記減圧手段による前記洗浄槽内の減圧は、前記洗浄槽内の洗浄液温度を毎分1℃以上低下させる速度で行う
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の洗浄装置。
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