JP4769372B2 - ポリプロピレン系無延伸フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系無延伸フィルムに関し、特に、実用物性のバランスを高度に向上させたポリプロピレン系無延伸フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンフィルムは、食品包装をはじめとする種々の物品の包装用素材として広く使用されている。特に、ポリプロピレンフィルムは、機械的な諸特性及び透明性、光沢等の光学的性質、さらには水蒸気遮断性、無臭性等の食品衛生性等が優れていることから、食品包装用分野を中心に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレンフィルム自体は、耐ブロッキング性に劣るために、フィルムを重ねるとフィルムが互いに密着する、いわゆるブロッキングを起こし、包装等の作業性を著しく低下させる欠点を有している。このため、ポリプロピレンフィルムのブロッキングを防止する方法として、フィルム中に二酸化珪素に代表される無機系の微粉末、または架橋高分子などの有機系の微粒子を、いわゆるアンチブロッキング剤として配合する方法等が一般に実施されている。
【0004】
しかしながら、アンチブロッキング剤として二酸化ケイ素粉末等を配合してなるポリプロピレン組成物からのフィルムは、アルミノシリケート等の硬さによりフィルム同士をこすり合わせたとき、フィルム表面に傷が付きやすいという問題がある。このような問題を解消する試みとして、アンチブロッキング剤のシリカ等を柔らかくしたり、分散性を改良したりする方法が試みられてきているが、樹脂からアンチブロッキング剤が脱落しやすくなったり、透明性が劣ったりする問題があり、透明性、ブロッキング性に優れたものが得られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、透明性、滑り性、耐ブロッキング性、耐スクラッチ性、低温ヒートシール性など、フィルムの実用物性のバランスを高度に向上させたフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、硬度において優れた特定のポリプロピレン系樹脂にフィルムを傷つけにくい特定の合成シリカを配合することにより透明性、耐ブロッキング性、滑り性、耐スクラッチ性、低温ヒートシール性のバランスの優れたフィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記触媒成分(A)のメタロセン触媒を用いてプロピレンとα−オレフィンとを共重合することにより得られる下記成分(1)および成分(2)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン系無延伸フィルムが提供される。
成分(1):下記(a)〜(e)の特性を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体100重量部
(a)MFRが、0.5〜50g/10分
(b)DSCで求めた融解ピーク温度[Tp]が、120〜140℃
(c)DSCで求めた融解終了温度[Te]と融点[Tp]との関係が、次式を満たす
[Te]−[Tp]≦8℃
(d)Q値が、2〜4
(e)密度[D](単位:g/cm 3 )と融解ピーク温度[Tp]との関係が、式(III)を満たす
8610>10000[D]−3[Tp]>8580・・・(III)
成分(2):有機酸で処理された、下記(f)〜(j)の特性を有する合成シリカ0.01〜0.7重量部(f)コールターカウンター計測による平均粒子径が、1〜5μm
(g)細孔容積が、0.8〜1.7ml/g
(h)吸油量が、150〜320ml/100g
(i)かさ比重が、0.13〜0.32g/ml
(j)BET法比表面積が、300〜520m2/g
触媒成分(A):Q(C 5 H 4−a R 1 a )(C 5 H 4−b R 2 b )MeXY
(ここで、C 5 H 4−a R 1 a およびC 5 H 4−b R 2 b は、それぞれ共役五員環配位子を示し、Qは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であって、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜12の炭化水素基を有するシリレン基を示し、Meはジルコニウムまたはハフニウムを示し、XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。R 1 およびR 2 は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示し、隣接する2個のR 1 または2個のR 2 はそれぞれ結合してインデニル環、フルオレニル環またはアズレニル環を形成する。aおよびbは0<a≦4、0<b≦4を満足する整数である。ただし、R 1 およびR 2 を有する2個の五員環配位子は、基Qを介しての相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対称である。)で示される化合物
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、成分(1)が、下記の触媒成分(A)および触媒成分(B)からなる触媒を用いてプロピレンとα−オレフィンとを共重合することにより得られるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であることを特徴とする第1の発明に記載のポリプロピレン系無延伸フィルムが提供される。
触媒成分(A):
Q(C5H4−aR1 a)(C5H4−bR2 b)MeXY
(ここで、C5H4−aR1 aおよびC5H4−bR2 bは、それぞれ共役五員環配位子を示し、Qは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であって、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基を示し、Meはジルコニウムまたはハフニウムを示し、XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。R1およびR2は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示す。隣接する2個のR1または2個のR2がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。aおよびbは0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。ただし、R1およびR2を有する2個の五員環配位子は、基Qを介しての相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対称である。)
で示される化合物
触媒成分(B):イオン交換性層状珪酸塩
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、成分(1)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が、プロピレン・エチレンランダム共重合体またはプロピレン・ブテン−1ランダム共重合体であることを特徴とする第1又は2の発明に記載のポリプロピレン系無延伸フィルムが提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、成分(1)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が、エチレン含有量2〜15モル%のプロピレン・エチレンランダム共重合体であることを特徴とする第3の発明に記載のポリプロピレン系無延伸フィルムが提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、合成シリカが、有機酸で処理されたものであることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明に記載のポリプロピレン系無延伸フィルムが提供される。
【0012】
また、本発明の第6の発明によれば、有機酸がクエン酸であることを特徴とする第5の発明に記載のポリプロピレン系無延伸フィルムが提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のポリプロピレン系無延伸フィルムは、下記の成分(1)と成分(2)と必要に応じて他の成分を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムである。以下にポリプロピレン系樹脂組成物及びフィルムについて詳細に説明する。
【0014】
[1]ポリプロピレン系樹脂組成物
(1)成分(1)プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体
本発明の成分(1)は、以下の(a)〜(e)の特性を満足するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。
【0015】
(a)MFR
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のMFRは、0.5〜50g/10分、好ましくは1〜30g/10分、より好ましくは2〜20g/10分である。MFRが上記範囲より低い場合は、フィルムの表面性状に不良が生じるため好適な生産性が得られず、一方、上記範囲より高い場合は連続的なフィルムの生産が困難となる。
【0016】
(b)融解ピーク温度[Tp]
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のDSCで求めた融点[Tp](℃)は、110〜150℃、好ましくは115〜145℃、より好ましくは120〜140℃である。[Tp]が上記範囲より低い場合は、本発明においても好適な耐ブロッキング性が得られず、一方、上記範囲より高い場合は好適な低温ヒートシール特性が得られない。
【0017】
(c)融解終了温度[Te]と融点[Tp]との関係
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、DSCで求めた融解終了温度[Te](℃)と融点[Tp](℃)との関係が、[Te]−[Tp]≦8℃、好ましくは[Te]−[Tp]≦6℃、より好ましくは[Te]−[Tp]≦5.5℃を満たすものである。[Te]−[Tp]が、8℃を超える場合は、ヒートシール温度が高くなる。
【0018】
(d)Q値
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のQ値は、2〜4、好ましくは2.3〜3.8、より好ましくは2.6〜3.6である。Q値が、上記範囲より小さい場合は、フィルムの成形性が低下し、上記範囲より大きい場合は、フィルムの表面状態が悪くなるとともに耐ブロッキング性が悪化する。
【0019】
(e)密度[D]と融点[Tp]との関係
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、密度[D](g/cm3)と融点[Tp](℃)との関係が、式(I)を満たす必要がある。
8650>10000〔D〕−3[Tp]>8570 …(I)
好ましくは、密度[D]と融点[Tp]との関係が、式(II)を満たす。
8630>10000[D]−3[Tp]>8575 …(II)
より好ましくは、密度[D]と融点[Tp]との関係が、式(III)を満たす。
8610>10000[D]−3[Tp]>8580 …(III)
10000〔D〕−3〔TP〕の値が、上記を下回るとフィルムの耐スクラッチ性が悪くなる。一方、上記の値を超えるとフィルムの衝撃強度が弱くなり好ましくない。
【0020】
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、上記要件を満たすものであれば、何ら限定されるものではなく、一成分であっても二成分以上の混合物であってもよい。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合するα−オレフィンは、一種類でも二種類以上を用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。
【0021】
該α−オレフィンの含有量は、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のプロピレン単位とα−オレフィン単位との総量を100モル%とした場合、好ましくは2.0〜23モル%、より好ましくは2.5〜10モル%である。α−オレフィンがエチレンの場合は、エチレン含有量としては、2〜15モル%が好ましい。
【0022】
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、上記の物性を有するものであれば、どのような方法によって製造されたものであってもよいが、後述する触媒成分(A)、触媒成分(B)、並びに、必要に応じて用いられる触媒成分(C)からなる、いわゆるメタロセン触媒の存在下に、プロピレンと少量成分であるα−オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0023】
触媒成分(A)
Q(C5H4−aR1 a)(C5H4−bR2 b)MeXY
(ここで、C5H4−aR1 aおよびC5H4−bR2 bは、それぞれ共役五員環配位子を示す。Qは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。Meはジルコニウムまたはハフニウムを示す。XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。
R1およびR2は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示す。隣接する2個のR1または2個のR2がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。aおよびbは0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。ただし、R1およびR2を有する2個の五員環配位子は、基Qを介しての相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対称である。)
【0024】
Qは、二つの共役五員環配位子C5H4−aR1 aおよびC5H4−bR2 bを架橋する結合性基である。具体的には、例えば(イ)炭素数1〜20、好ましくは1〜6のアルキレン基、(ロ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基を有するシリレン基、(ハ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基を有するゲルミレン基がある。なかでもアルキレン基、シリレン基が好ましい。
【0025】
Meは、ジルコニウムまたはハフニウムである。
【0026】
XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよくて、(イ)水素、(ロ)ハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素)、(ハ)炭素数1〜20の炭化水素基、(ニ)炭素数1〜20のアルコキシ基、(ホ)炭素数1〜20のアルキルアミド基、(ヘ)炭素数1〜20のリン含有炭化水素基、(ト)炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基または(チ)トリフルオロメタンスルホン酸基を示す。
【0027】
R1およびR2は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数2〜20のリン含有炭化水素基、炭素数2〜20の窒素含有炭化水素基または炭素数2〜20のホウ素含有炭化水素基を示す。これらの置換基は、側鎖にさらに置換基を有していてもよい。また、隣接する2個のR1同士または2個のR2同士がそれぞれω−端で結合してシクロペンタジエニル基の一部と共に環を形成していてもよい。そのような場合の代表例としてはシクロペンタジエニル基上の隣接する2つのR1(あるいはR2)が当該シクロペンタジエニル基の二重結合を共有して縮合六員環を形成しているもの(すなわちインデニル基および置換インデニル基、およびフルオレニル基および置換フルオレニル基)および縮合七員環を形成しているもの(すなわちアズレニル基および置換アズレニル基)がある。好ましくは、1つあるいは2つのシクロペンタジエニル基上の隣接する2つのR1あるいはR2が縮合七員環を形成していることが望ましい。
【0028】
aおよびbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
【0029】
上記メタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。なお、これらの化合物は、単に化学的名称のみで示称されているが、その立体構造が本発明で言う非対称性を持つものであることはいうまでもない。
【0030】
(1)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、(2)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(3)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(4)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(5)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(6)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(7)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(8)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(9)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(10)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(11)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、(12)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(13)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(14)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(15)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(16)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(17)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−フェナンスリル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(18)ジメチルシリレンビス{1−(2−ジメチルボラノ−4−インドリル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、(19)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4、5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、(20)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0031】
触媒成分(B)
本発明において、成分(B)としては、次の(b−1)〜(b−4)から選ばれた成分が望ましい。
(b−1)アルミニウムオキシ化合物、
(b−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体、
(b−3)固体酸微粒子、
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩。
【0032】
(b−1)アルミニウムオキシ化合物:
アルミニウムオキシ化合物としては、メチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等のいわゆるアルモキサンが例示できる。
アルミニウムオキシ化合物は、微粒子状担体に担持されていてもよい。
微粒子状担体としては、無機または有機の化合物から成る微粒子状担体が例示できる。無機担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ塩化マグネシウム、活性炭、無機珪酸塩等が挙げられる。あるいは、これらの混合物であってもよい。
有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ベンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンの重合体、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和炭化水素の重合体等から成る多孔質ポリマーの微粒子担体が挙げられる。あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0033】
(b−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子担体:
成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物のカチオンとの錯化物等が挙げられる。
また、ルイス酸、特に成分(A)をカチオンに変換可能なルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等が例示される。あるいは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等の金属ハロゲン化合物等が例示される。
微粒子状担体は上述のものを適宜利用できる。
【0034】
(b−3)固体酸:
固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ等が挙げられる。
【0035】
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩:
成分(b−4)としては、イオン交換性層状珪酸塩が用いられる。イオン交換性層状珪酸塩は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有するイオン交換が可能なものを示称する。イオン交換性層状珪酸塩の好ましい具体例としては、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族が挙げられる。
【0036】
成分(B)は特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、成分(B)に化学処理を施すことが好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
【0037】
具体的には、塩類処理、酸処理、アルカリ処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は表面の不純物を取り除く他、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0038】
本発明において使用されるイオン交換性層状珪酸塩は、塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な1族金属陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換して用いることが好ましい。このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、2〜14族原子からなる群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸からなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなる化合物である。
【0039】
陽イオンとしては、Ca、Mg、Sc、Y、La、Sm、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pb、Cu、Zn、Cd、Al、Ge、Snなどの陽イオンが挙げられる。
【0040】
陰イオンとしては、Cl、Br、I、F、PO4、SO4、NO3、CO3、C2O4、OCOCH3、CH3COCHCOCH3、OCl3、O(NO3)2、O(ClO4)2、O(SO4)、OH、O2Cl2、OCl3、OCOH、OCOCH2CH3、C2H4O4およびC6H5O7などの陰イオンが挙げられる。
【0041】
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、リン酸、酢酸から選択される。処理に用いる塩類および酸は、それぞれ2種以上であってもよい。
【0042】
塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜30重量%、処理温度は室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩に含有される少なくとも一種の化合物の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
【0043】
成分(b−4)として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が1重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
【0044】
成分Bとしては、(b−4)が好ましい。
【0045】
触媒成分(C)
成分(C)は、有機アルミニウム化合物である。本発明で成分(C)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式(AlR4 nX3−n)mで示される化合物が適当である。この式中、R4は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。nは1〜3の、mは1〜2の整数である。成分(C)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。
【0046】
触媒の形成
本発明に用いる結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を製造する際に用いる触媒としては、上記の成分(A)、成分(B)並びに、必要に応じて用いられる成分(C)からなる触媒を、重合槽内であるいは重合槽外で、重合させるべきモノマーの存在下あるいは不存在下に接触させることにより調製することができる。
また、上記触媒は、オレフィンの存在下で予備重合を行ったものであってもよい。予備重合に用いられるオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼンなどが用いられるが、これらと他のオレフィンとの混合物であってもよい。
上記触媒の調製において使用される成分(A)、成分(B)、成分(C)の量は任意の比で使用することができる。
【0047】
重合
本発明に用いる結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の重合は、成分(A)、成分(B)、並びに、必要に応じて成分(C)からなる触媒とプロピレンとエチレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとを混合接触させることにより行われる。Tp、Teは、用いる触媒の組合わせや重合条件に応じて変化するものであるが、共重合するα−オレフィンの種類や量などによって調整することが可能である。
【0048】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク法、溶液法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーを実質的にガス状に保つ気相法を採用することができる。
また、連続重合、回分式重合のいずれを用いてもよい。
【0049】
重合条件としては重合温度が−78℃〜160℃であり、また、重合圧力は0〜90kg/cm2・Gである。そのときの分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。
【0050】
(2)成分(2)合成シリカ
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分(2)の合成シリカは、以下に示す(f)〜(j)の特性を満たすものである。
【0051】
(f)平均粒子径
本発明で用いる合成シリカの平均粒子径は、1〜5μm、好ましくは1.5〜4μmである。平均粒子径が1μm未満であると、得られるフィルムの滑り性、ブロッキング性が劣り好ましくない。一方、5μmを超えると、透明性、傷つき性が著しく劣り好ましくない。ここで、平均粒子径は、コールカウンター計測による値である。
【0052】
(g)細孔容積
本発明で用いる合成シリカの細孔容積は、0.8〜1.7ml/g、好ましくは0.9〜1.5ml/gである。細孔容積が0.8ml/g未満ではシリカが硬くなり傷つき性が悪く、1.7ml/gを超えるとプロピレン重合体粒子と混合時にシリカ粒子同士で凝集しやすい。細孔容積は、合成シリカの一次粒子の構造を示すものと考えられ、この値が大きければ一次粒子は高い表面エネルギーを有し、プロピレン重合体粒子との混合時に凝集を生じやすい。ここで、細孔容積は、N2吸着法で測定した値である。
【0053】
(c)吸油量
本発明で用いる合成シリカの吸油量は、150〜320ml/100g、好ましくは160〜280ml/100gである。吸油量が150ml/100g未満ではシリカが硬くなり傷つき性が悪く、320ml/100gを超えるとプロピレン重合体粒子と混合時にシリカ粒子同士で凝集しやすい。吸油量は、細孔容積同様にシリカの構造を示すが、油の吸着量といった性質から、主に三次元凝集体構造に起因する性質と考えられる。すなわち、この値が大きければ、合成シリカ単体が凝集体として存在する傾向が大きいことを意味する。ここで、吸油量は、JIS−K5101−21に準拠して測定された値である。
【0054】
(d)かさ比重
本発明で用いる合成シリカのかさ比重は、0.13〜0.32g/cm3、好ましくは0.15〜0.32g/cm3である。0.13g/cm3未満では、プロピレン重合体粒子との混合時にシリカ同士で凝集しやすく、0.32g/cm3を超えると合成シリカが硬くなり傷つき性が悪くなる。ここで、かさ比重は、JIS−K6220−6.8に準拠して測定された値である。
【0055】
(j)BET法比表面積
本発明で用いる合成シリカの比表面積は、300〜520m2/g、好ましくは330〜500m2/gである。表面積は、シリカの一次構造を表し、表面積が大きいということは非常に微細な穴が数多くあることを示し、その結果硬くなる。表面積が小さいということは比較的大きな穴があることを示す。ここで、比表面積は、BET法に準拠して測定された値である。
【0056】
かかる特定の性状を有する本発明で用いられる合成シリカの製造法は、湿式法、乾式法など従来公知のいずれかの方法をとることができる。特に湿式法は物理的な性状の制御が容易であり好ましい。湿式法合成シリカは、高純度珪砂を原料としたケイ酸ソーダと硫酸を混合してケイ酸ゾルを生成した後、一次粒子を形成し、ゾル−ゲル重合反応により三次元シリカ凝集体を形成することにより得られる。この過程において、一次粒子の生成条件を変えることにより、所望の性状を有する合成シリカが得られる。天然に産出するシリカは、上記のような性状を得ることが難しく不適である。かかる特定の性状を有する本発明に用いられる合成シリカは市販品を用いることもできる。本発明に用いることのできる合成シリカは、その結晶構造に二酸化ケイ素が40重量%以上含まれていればよく、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカルシウムであってもよい。
【0057】
前記合成シリカは、上記性状を満たす範囲において、各種表面処理剤、例えば、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッ素樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩、pH調整剤、有機安定剤などを用いることができ、特に有機酸処理、なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬等公知の方法を採用することができる。
【0058】
また、合成シリカのアンチブロッキング剤は、いかなる形状であっても良く、球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状など任意の形状とすることができる。
【0059】
前記合成シリカの配合量は、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体100重量部に対し0.01〜0.7重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部である。より好ましくは、Tダイフィルムにおいては0.05〜0.4重量部であり、インフレーションフィルムにおいては0.25〜0.7重量部である。配合量が上記範囲未満では、フィルムのアンチブロッキング性が劣ることとなるので好ましくない。一方、上記範囲を超えるとフィルムの透明性を損なうこととなるので好ましくない。
【0060】
(3)その他の配合成分
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて添加剤、無機充填剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。配合できる好ましい添加剤としては、例えば分子量が500以上のリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及び滑剤、無機充填剤等を例示することができる。
【0061】
該酸化防止剤としては、例えばテトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアネート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、テトラキス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジフォスファイト等を挙げることができる。これらは単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0062】
これら酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、好ましくはプロピレン重合体粒子100重量部に対し、0.03〜0.5重量部程度配合することができる。これら酸化防止剤の配合は、フィルム成形時及びフィルム使用時の安定性にとって極めて有効である。
【0063】
(4)ポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法
本発明に使用されるポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法としては、プロピレン重合体粒子に直接合成シリカを加える方法と、当該合成シリカのマスターバッチを加える方法とが挙げられる。
【0064】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体に合成シリカを混合した後、溶融混練することによって得られる。混合は、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スクリューブレンダー、リボンブレンダーなどの公知の方法が適用できる。溶融混練は、例えば溶融押出機、バンバリーミキサーなどを用いたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の融点以上の温度で溶融混練する方法であれば特に限定されない。
【0065】
溶融混練方法は、単軸押出機、二軸押出機のどちらでも容易に実施できるが、合成シリカの分散をより効果的に行うには二軸押出機が好適である。
【0066】
[II]フィルム
本発明の無延伸フィルムは、上記のポリプロピレン系樹脂組成物を、溶融押出して得られる。フィルムの製造方法は、特に限定されないが、好ましくはTダイ法又はチューブラー法により溶融押出成形して得られる無延伸フィルム(Tダイフィルム又はインフレーションフィルム)の製造方法である。Tダイ成形法又はチューブラー法(インフレーション成形法)の成形条件は、ポリプロピレンフィルムの成形条件として従来公知のものを採用することができる。たとえば、Tダイ成形法では、樹脂温度を190〜300℃、インフレーション成形法では、樹脂温度を200〜270℃、ブローアップ比を0.5〜2.0の範囲で行うことが好ましい。
【0067】
また、得られるフィルムの厚みは用途に応じて適宜選択でき、特に制限されないが、好ましくは20〜60μm程度である。かかるフィルムは、食品包装材料、文具・雑貨包装材料等、広範な用途に好適に用いられる。
【0068】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これら実施例によって何ら制約を受けるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた試験方法、使用したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体及び合成シリカを以下に示す。
1.樹脂物性測定法
(1)MFR:JIS−K6758に準拠して、230℃、荷重2.16kgfで測定した。
(2)DSC(示差走査熱量測定)による融点[Tp]および融解終了温度[Te]の測定:セイコー社製DSCを用い、サンプル量5mgを採り、200℃にて5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、DSCで求めた融点[Tp]、ピーク位置を越えベースラインとの接点を、DSCで求めた融解終了温度[Te]とした。
(3)Q値:GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、重量平均分子量と数平均分子量との比をQ値とした。測定条件は次の通りである。
装置;ウオーターズ社製 GPC 150C型
カラム;昭和電工社製 AD80M/S 3本
測定温度;140℃
濃度;20mg/10ml
溶媒;オルソジクロロベンゼン
(4)密度:JIS−K7112に準拠して測定した。
2.フィルム試験法
(1)Haze:ASTM−D1003に準拠して、得られた樹脂フィルムをヘイズメータにて測定した(単位:%)。この値が小さいほど透明性が優れていることを意味する。
(2)光沢(Gloss):JIS−K7105に準拠して、23℃で測定した(単位%)。この値が大きいほど光沢が良いことを意味する。
(3)ブロッキング:得られた樹脂フィルムより2cm(幅)×15cm(長)の試料フィルムを採り、冷却ロール側の面同士をそれぞれ長さ5cmにわたり重ね(接触面積10cm2)、50g/cm2の荷重下で温度40℃の雰囲気下に24時間状態調整した後、荷重を除き、23℃の温度に十分調整した後ショッパー型引張試験機を用いて500mm/分の速度で試料のせん断剥離に要する力を求めた(単位:g/10cm2)。この値が小さいほど耐ブロッキング性が良いことを意味する。
(4)静摩擦係数:得られた樹脂フィルムを温度40℃の雰囲気下に24時間状態調整した試料をASTM−ZD1894に準拠して、試料フィルムの冷却ロール面同士の摩擦をスリップテックス法にて静摩擦係数を求めた。この値が小さいほど滑り性が優れていることを意味する。
(5)ヒートシール温度:5mm×200mmのヒートシールバーを用い、得られた樹脂フィルムの冷却ロール面同士を各温度設定においてヒートシール圧力2kg/cm2、ヒートシール時間1秒の条件下でフィルムの溶融押出した方向(MD)に垂直になるようにシールした試料から15mm幅のサンプルを採り、ショッパー型試験機を用いて引張速度500mm/分にてMD方向に引き離し、その荷重を読みとった。荷重300gになるシール温度をヒートシール温度としてヒートシール性を評価した(単位:℃)。この値が小さいほどヒートシール性が優れていることを意味する。
(6)傷つき性:一辺7.5cmの正方形のスリップテスター用そり(200g)に冷却ロール面が外側になるように樹脂フィルムを巻き付け、また別の樹脂フィルムを、上が冷却ロール面になるようにスリップテスターに設置した。そして、スリップテスター上の樹脂フィルムの上に樹脂フィルムを巻き付けたスリップテスター用そりを載せ、そり上に3kgの荷重を載せた。そして、スリップテスター上で、荷重をかけた状態でそりを長さ30cm、往復30回滑らした(フィルムの冷却ロール間で滑らせる)。同操作を4回行い、そりに巻き付けたフィルムサンプルを4枚採取し、その4枚を重ね合わせ、滑らせる前および滑らせた後の4枚重ね合わせたHazeの変化量を測定し、傷つき性の尺度とした(単位%)。この値が小さいほど耐傷つき性が優れていることを意味する。
(7)フィッシュアイ:シリカ凝集物による0.1mm径以上のブツ(フィッシュアイ)を目視にて数えた(単位:個/m2)。
【0069】
2.プロピレン・エチレンランダム共重合体の合成
(1)触媒成分(A)の合成
(r)−ジクロロ{1,1−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムの合成は、特開平11−240909号公報に記載の方法で合成した。
【0070】
(2)触媒成分(B)の調製
イオン交換性層状珪酸塩の調製
10リットルの攪拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒子径=25μm、粒度分布=10μm〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を、洗浄液(ろ液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。
【0071】
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は、705gであった。得られたイオン交換性層状ケイ酸塩の組成(モル)比は、Al/Si=0.129、Mg/Si=0.018、Fe/Si=0.013であった。
【0072】
さらに、10リットルの攪拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水1.72リットル、続いて硫酸リチウム1水和物(700g)を加えて溶液とした後、上記で得たイオン交換性層状ケイ酸塩を加えた。このスラリーを室温で240分攪拌した。このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この操作を3回繰り返した。
【0073】
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は、695gであった。得られたイオン交換性層状ケイ酸塩の組成(モル)比は、Al/Si=0.127、Mg/Si=0.020、Fe/Si=0.013、Li/Si=0.018であった。
【0074】
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機によりさらに乾燥を実施した。乾燥機の仕様、条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加湿帯550mm(電気炉)、かき上げ翼付き
回転数:2rpm、傾斜角;20/520、珪酸塩の供給速度;2.5g/分、ガス流速;窒素、96リットル/時間、向流
乾燥温度:200℃(粉体温度)
【0075】
(3)触媒の調製
内容積13リットルの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.20kgとトルエンを含むヘプタン(以下、混合ヘプタンという。)0.74リットルの混合物を導入し、さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.04M)1.26リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、混合ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。
平行して、先に合成した(r)−ジクロロ{1,1−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムを2.18g(3.30mmol)にトルエンを0.80リットル加え、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ミリリットル加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5.0リットルに調整した。
続いて、内温を40℃まで昇温し、安定したところで、プロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージした後、触媒を混合ヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液0.17L添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥した予備重合触媒0.60kgを得た。
【0076】
(4)プロピレン・α−オレフィン共重合体の重合
重合例(i)
内容積200lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これにトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液500ml(0.12mol)、エチレン1.22kg、水素5.2NLを加え、内温を30℃に維持した。次いで、上記予備重合触媒成分1.2gをアルゴンで圧入して重合を開始させ、30分かけて70℃に昇温し、1時間その温度を維持した。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、表1の物性を有するプロピレン・エチレンランダム共重合体(樹脂A)を得た。
【0077】
重合例(ii)
重合例(i)において、エチレン2.25kg、水素8.0NLとする以外は、同様の操作で表1の物性を有するプロピレン・エチレンランダム共重合体(樹脂B)を得た。
【0078】
重合例(iii)
触媒の合成
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgCl2を、0.4mol、Ti(O−nC4H9)4を、0.8mol導入し、95℃に保ちながら2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、メチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.24mol導入した。その後、n−ヘプタン25mlにSiCl40.4molを混合したものを、30℃に保ちながら60分間かけてフラスコへ導入し、90℃で3時間反応させた。さらに、n−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.016molを混合したものを、90℃に保ちながら30分間かけてフラスコに導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、これにSiCl40.24mmolを導入して、100℃にて3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分洗浄した。充分に窒素置換したフラスコに、精製したn−ヘプタン50mlを導入し、上記で得た固体成分を5g導入し、さらに(CH3)3CSi(CH3)(OCH3)2を0.81ml導入し、30℃で2時間接触させた。接触終了後n−ヘプタンで充分に洗浄した。さらに、プロピレンを流通させて予備重合を実施し、固体触媒を得た。
【0079】
重合
内容積200lの攪拌式オートクレーブをプロピレンで充分に置換した後、精製したn−ヘプタン60lを導入し、トリエチルアルミニウム15g、前述の固体触媒(予備重合ポリマーを除いた量として)1.8gを55℃にてプロピレン雰囲気下で導入した。さらに、気相部水素濃度を6.0容量%に保ちながら、プロピレンを5.8kg/時間のフィード速度で導入し重合を開始した。15分後、温度を60℃に昇温し、さらにエチレンを155g/時間のフィード速度で導入し、さらに1−ブテンを重合開始270分後まで570g/時間のフィード速度で導入して6時間重合を実施した。その後、全モノマーの供給を停止し1時間重合を継続した。その後、ブタノールにより触媒を分解し、生成物の濾過、乾燥を行って、表1に示すようなプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(樹脂C)29.8kgを得た。
【0080】
重合例(iv)
内容積200lの攪拌式オートクレーブをプロピレンで十分に置換した後、脱水および脱酸素したn−ヘプタン60lを導入し、ジエチルアルミニウムクロリド45g、三塩化チタン触媒(エム・アンド・エス社製)16gを55℃にて、プロピレン雰囲気下で導入した。さらに、気相水素濃度を5.5容量%に保ちながら、55℃の温度にて、プロピレン5.8kg/時間およびエチレン0.36kg/時間の速度で4時間フィードした後、さらに1時間重合を継続した。その後、残ガスをパージし、生成物を濾過および乾燥して、表1に示す様なプロピレン・エチレンランダム共重合体(樹脂D)25kgを得た。
【0081】
【表1】
【0082】
3.合成シリカ
表2に示す物性の合成シリカを用いた。
【0083】
【表2】
【0084】
参考例(実施例)1〜参考例(実施例)3、実施例4〜6、参考例(実施例)7及び比較例1〜11
表1に示す種類の樹脂100重量部及び表1に示す種類及び量のシリカ、並びに酸化防止剤としてイルガノックス1010(テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)を0.05重量部、イルガフォス168(トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)を0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.05重量部、エルカ酸アマイドを0.10重量部を添加したものをヘンシェルミキサーで750rpmで1分間室温で高速混合した後、神戸製鋼社製NCM60二軸押出機(二軸ローター部;混練温度180℃、ローター750rpm、オリフィス開度35%、押出機;押出温度180℃、スクリュウ90rpm)により溶融、混練して冷却、カットしてペレット状樹脂組成物を得た。
【0085】
この樹脂組成物を原料として、口径35mmφの押出機、幅330mmTダイを具備したプラコー社製Tダイ法フィルム製造装置を用いて、押出樹脂温度220℃、チルロール設定温度30℃(表面温度35℃)、引き取り速度21m/minで成形して、厚さ25μmの無延伸フィルムを得た。その物性の評価結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3より明らかなように、本発明の樹脂、シリカを用いたフィルムは、HAZE、光沢、ブロッキング、静摩擦係数、ヒートシール温度、傷つき性、フィッシュアイ数に優れていた(実施例4〜6)。一方、低細孔容積、低吸油量、低比表面積の合成シリカを用いた場合は、フィルムが傷つき性が悪く(比較例1)、高細孔容積、高吸油量の合成シリカを用いるとシリカの分散性が悪く、ブロッキング、滑りが悪く(比較例2)、高細孔容積の合成シリカを用いるとシリカの分散性が悪く、ブロッキング、滑りが悪く(比較例3)、高比表面積の合成シリカを用いると傷つき性が悪く(比較例4)、低かさ比重の合成シリカを用いるとシリカの分散性が悪く(比較例5)、高細孔容積、低比表面積の合成シリカを用いた場合はシリカの分散性が悪く、ブロッキング、滑りが悪く(比較例6)、低細孔容積、低吸油量、低かさ比重、大比表面積の合成シリカを用いた場合は傷つき性が悪く(比較例7)、粒径が大きいとHAZE、傷つき性が悪く(比較例8)、密度とTpの関係が範囲外の樹脂を用いると傷つき性が悪い(比較例9〜11)。
【0088】
【発明の効果】
本発明の無延伸フィルムは、特定の硬いポリプロピレン系樹脂と特定の柔らかい合成シリカを含有する樹脂組成物からなるフィルムであるので、透明性、滑り性、耐ブロッキング性、低温ヒートシール性、耐スクラッチ性など、フィルムの実用物性のバランスを高度に向上させたフィルムである。
Claims (5)
- 下記触媒成分(A)のメタロセン触媒を用いてプロピレンとα−オレフィンとを共重合することにより得られる下記成分(1)および成分(2)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン系無延伸フィルム。
成分(1):下記(a)〜(e)の特性を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体100重量部
(a)MFRが、0.5〜50g/10分
(b)DSCで求めた融解ピーク温度[Tp]が、120〜140℃
(c)DSCで求めた融解終了温度[Te]と融点[Tp]との関係が、次式を満たす
[Te]−[Tp]≦8℃
(d)Q値が、2〜4
(e)密度[D](単位:g/cm 3 )と融解ピーク温度[Tp]との関係が、式(III)を満たす
8610>10000[D]−3[Tp]>8580・・・(III)
成分(2):有機酸で処理された、下記(f)〜(j)の特性を有する合成シリカ0.01〜0.7重量部(f)コールターカウンター計測による平均粒子径が、1〜5μm
(g)細孔容積が、0.8〜1.7ml/g
(h)吸油量が、150〜320ml/100g
(i)かさ比重が、0.13〜0.32g/ml
(j)BET法比表面積が、300〜520m2/g
触媒成分(A):Q(C 5 H 4−a R 1 a )(C 5 H 4−b R 2 b )MeXY
(ここで、C 5 H 4−a R 1 a およびC 5 H 4−b R 2 b は、それぞれ共役五員環配位子を示し、Qは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であって、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜12の炭化水素基を有するシリレン基を示し、Meはジルコニウムまたはハフニウムを示し、XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。R 1 およびR 2 は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示し、隣接する2個のR 1 または2個のR 2 はそれぞれ結合してインデニル環、フルオレニル環またはアズレニル環を形成する。aおよびbは0<a≦4、0<b≦4を満足する整数である。ただし、R 1 およびR 2 を有する2個の五員環配位子は、基Qを介しての相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対称である。)で示される化合物 - メタロセン触媒は、触媒成分(B):イオン交換性層状珪酸塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系無延伸フィルム。
- 成分(1)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が、プロピレン・エチレンランダム共重合体またはプロピレン・ブテン−1ランダム共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系無延伸フィルム。
- 成分(1)のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が、エチレン含有量2〜15モル%のプロピレン・エチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン系無延伸フィルム。
- 有機酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系無延伸フィルム。
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