JP4034542B2 - 熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルム - Google Patents

熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムに関する。さらに詳しくは加熱収縮率、特に低温収縮率の向上した熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、包装物品の、外観向上のための外装、内容物の直接衝撃を避けるための包装、タイト包装、ガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等を目的として、シュリンクラベルが広汎に使用されている。
これらの目的で使用されるプラスチック素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等が知られている。しかしながら、ポリ塩化ビニルラベルは、シュリンク特性には優れるものの、焼却時に塩素ガスを発生する等の環境汚染の問題を抱えている。また、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレートラベルについては、熱収縮性は良好であるものの、ポリエチレンテレフタレートボトルとの比重差が小さいため、浮遊分離が困難であり、ポリエチレンテレフタレートボトルのリサイクル化を妨げる。さらに、十分な熱収縮性を得るために、耐熱性に劣る樹脂を使用しており、レトルト殺菌を行うと溶融樹脂による印刷インキ流れを生ずるという問題もある。
特開昭60−135233号公報に記載されている様にプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体にポリブテン−1や低融点ポリオレフィン系樹脂を添加する方法も知られているが、加熱収縮率は向上するものの、フィルムの剛性が低下し易くなり、印刷などの二次加工特性が悪化したり、PETボトルにラベルを装着する工程における生産性が低下しやすくなる傾向にある。
【0003】
ポリプロピレンは、ポリエチレンテレフタレートボトルとの比重差が大きく、浮遊分離がし易い上、耐熱性にも優れるが、低温収縮性が不十分である。低温収縮性を改良する目的にて、ポリプロピレンにプロピレン−ブテン−1共重合体を添加する方法および石油樹脂やテルペン樹脂を添加する方法(特開昭62−62846号公報)等が知られているが、収縮性を向上させると比重が大きくなるという問題がある。
シュリンクラベルの比重が大きくなると、PETボトルのリサイクル行程において、ボトルとラベルの比重差による浮遊分離の効率が低下する。従って、ベースとなるポリプロピレン系樹脂の収縮性能のさらなる向上が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、この様な状況下において加熱収縮率、特に低温収縮率を向上させ、尚かつ低比重を達成することにある。そして、シュリンク包装適性とリサイクル効率のバランスが向上したポリプロピレン系熱収縮性シュリンクラベル用フィルムを提供することにある。更には、 二次加工性やラベル装着工程に十分なフィルム剛性を確保することも本発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の研究を重ねた結果、特定の結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体および特定の脂環式炭化水素樹脂を特定の比率で配合した樹脂組成物を用いることにより、低温収縮性が向上した熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明(請求項1)は、メタロセン触媒により重合された、特性(4)〜(6)を満たす結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を主体とするポリプロピレン系樹脂組成物から成るフィルムであって、主収縮方向の収縮率が式(1)〜(3)を満たし、尚かつ比重が0.94以下、40℃、7日間における主収縮方向の収縮率が3%未満であることを特徴とする熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムに存する。
(1)80>251d−215
(2)90>531d−462
(3)100>627d−541
(但し、S80、S90、S100は、フィルムを各々80℃、90℃、100℃の水に10秒間水浴した時の主収縮方向の収縮率(%)を、dはフィルムの比重を表す。)
(4)メルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分
(5)示差走査型熱量計(DSC)で求めた融解ピーク温度(T P )が、100〜130℃
(6)T 50 ≦120℃
(但し、T 50 はDSCで求めた総融解熱量をΔH m としたとき、低温側から起算した融解熱量がΔH m の50%となる時の温度(℃)を表す。)
また、本発明(請求項2)は、メタロセン触媒により重合された、特性(4)〜(6)を満たす結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を主体とするポリプロピレン系樹脂組成物から成るフィルムであって、主収縮方向の収縮率が式(1)〜(3)を満たし、尚かつ比重が0.94以下、40℃、7日間における主収縮方向の収縮率が3%未満で、フィルムの流れ方向(MD)もしくは直交方向(TD)のいずれか低い方の引張弾性率が1000MPa以上であることを特徴とする熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムに存する。
(1)80>251d−215
(2)90>531d−462
(3)100>627d−541
(但し、S80、S90、S100は、フィルムを各々80℃、90℃、100℃の水に10秒間水浴した時の主収縮方向の収縮率(%)を、dはフィルムの比重を表す。)
(4)メルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分
(5)示差走査型熱量計(DSC)で求めた融解ピーク温度(T P )が、100〜130℃
(6)T 50 ≦120℃
(但し、T 50 はDSCで求めた総融解熱量をΔH m としたとき、低温側から起算した融解熱量がΔH m の50%となる時の温度(℃)を表す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムについて詳細に説明する。
【0008】
[I]フィルム特性
本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムは、主収縮方向の収縮率について、式(1)〜(3)を満たすことが必要である。
(1)80>251d−215
(2)90>531d−462
(3)100>627d−541
(但し、S80、S90、S100は、フィルムを各々80℃、90℃、100℃の水に10秒間水浴した時の主収縮方向の収縮率(%)を、dはフィルムの比重を表す。)
(1)〜(3)を満たさないものは、収縮率と比重のバランスが悪く、包装適性、リサイクル適性のいずれかが悪化する。
【0009】
また、本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムの比重は、0.94以下である。0.94より大きいとフィルムに印刷など二次加工を施す際に生じる比重増加によって、水によるPETボトルとの浮遊分離の効率が悪くなる。
更に、40℃、7日間での主収縮方向の収縮率は、3%未満であり、好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満である。3%より大きいと、フィルムの輸送、保管中に収縮を起こしやすくなり、巻き締まり、タルミ等が発生し商品価値が著しく低下する。
更に、本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムは、 フィルムの流れ方向(MD)もしくは直交方向(TD)方向のいずれか低い方の引張弾性率が1000MPa以上であるものが好ましい。 1000MPa未満であると、印刷適性やラベル装着工程での生産性が低下することがある。
【0010】
[II]樹脂組成物
本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムは、ポリプロピレン系樹脂組成物から構成される。好ましくは、結晶性ポリプロピレン樹脂、特に結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(以下、単にランダム共重合体と略称することがある。)を主体とする樹脂組成物から構成される。
ランダム共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を用いることが好ましく、特にエチレンが好ましい。α−オレフィンの含有量は、通常、2.0〜30重量%であり、特にα−オレフィンがエチレンである場合は、2.0〜10重量%、好ましくは2.0〜6.0重量%である。モノマー組成の異なるランダム共重合体を二種類以上を混合して用いてもよい。ランダム共重合体が主体とは、ランダム共重合体それ自体100%で使用してもよく、更にまた他の樹脂もしくは一般の樹脂用添加剤などを少量含有していてもよいことを意味する。脂環式炭化水素樹脂等を併用使用する場合については、後述する。
【0011】
<ランダム共重合体の特性>
かかるランダム共重合体中は、下記特性(4)〜(6)を満たすものである
特性(4):メルトフローレート(MFR)
MFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.5〜10g/10分、好ましくは1.0〜10g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では、押出し特性が悪化し、生産性が低下する場合があり、一方、10g/10分を超えると収縮特性が悪化したり、厚みムラが生じたりする。
【0012】
特性(5):示差走査型熱量計(DSC)で求めた融解ピーク温度(T P )は、100〜130℃、さらに好ましくは100〜125℃である。TPが100℃未満では、未延伸シートが冷却固化しにくく、フィルム成形が困難となり、一方、140℃を超えると収縮特性が不十分となる。
【0013】
特性(6):融解熱量(ΔHm)と温度の関係
DSCで求めたランダム共重合体の総融解熱量をΔHmとしたとき、低温側から起算した融解熱量がΔHmの50%となる時の温度(℃)をT50と定義すると、 50 は、好ましくは120℃以下、さらに好ましくは115℃以下である。T50が125℃を超えると収縮特性が悪化する。
【0014】
<ランダム共重合体の製造>
上記特性(4)〜(6)を満たす結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の製造方法は、メタロセン触媒を用いて重合する。メタロセン触媒としては、次のような系が挙げられるが、特に(i)が好ましい。
(i)成分(A)、成分(B)、並びに、必要に応じて成分(C)からなる系
(ii)成分(A)、成分(D)、並びに、必要に応じて成分(C)からなる系
(iii)成分(A)、成分(E)、並びに、必要に応じて成分(C)からなる系
以下、メタロセン触媒を構成する各成分について説明する。
【0015】
<メタロセン触媒(i)>
成分(A)は、メタロセン系遷移金属化合物であり、次の一般式(1)又は(2)で示される。
Q(C54-a1 a)(C54-b2 b)MeXY (1)
(C54-a1 a)(C54-b2 b)MeXY (2)
[ここで、C54-a1 aおよびC54-b2 bは、それぞれ共役五員環配位子を示し、Qは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であって、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基を示し、Meはジルコニウムまたはハフニウムを示し、XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。
【0016】
1およびR2は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、アルコキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示す。隣接する2個のR1または2個のR2がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。
aおよびbは0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。ただし、R1およびR2を有する2個の五員環配位子は、基Qを介しての相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対称である。]
【0017】
Qは、上記したように、二つの共役五員環配位子C54-a1 aおよびC54-b2 bを架橋する結合性基であって、具体的には、例えば(イ)炭素数1〜20、好ましくは1〜6の2価の炭化水素基、具体的には、例えばアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン等、(ロ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基を有するシリレン基、(ハ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12、の炭化水素基を有するゲルミレン基がある。
【0018】
2価のQ基の両結合手間の距離は、その炭素数の如何に関わらず、Qが鎖状の場合には4原子程度以下、就中3原子以下であることが、Qが環状基を有するものである場合は当該環状基+2原子程度以下、就中当該環状基のみであることが、それぞれ好ましい。従って、アルキレン基の場合はエチレンおよびイソプロピリデン(結合手間の距離は2原子および1原子)が、シクロアルキレン基の場合はシクロヘキシレン(結合手間の距離がシクロヘキシレン基のみ)が、アルキルシリレン基の場合は、ジメチルシリレン(結合手間の距離が1原子)が、それぞれ好ましい。 Meは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、ジルコニウムまたはハフニウムが好ましい。
【0019】
XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよくて、(イ)水素、(ロ)ハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素)、(ハ)炭素数1〜20の炭化水素基、(ニ)炭素数1〜20のアルコキシ基、(ホ)炭素数1〜20のアルキルアミド基、(ヘ)炭素数1〜20のリン含有炭化水素基、(ト)炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基または(チ)トリフルオロメタンスルホン酸基を示す。
【0020】
1およびR2は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数2〜20のリン含有炭化水素基、炭素数2〜20の窒素含有炭化水素基または炭素数2〜20のホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR1同士または2個のR2同士がそれぞれω−端で結合してシクロペンタジエニル基の一部と共に環を形成していてもよい。そのような場合の代表例としてはシクロペンタジエニル基上の隣接する2つのR1(あるいはR2)が当該シクロペンタジエニル基の二重結合を共有して縮合六員環を形成しているもの(すなわちインデニル基およびフルオレニル基)および縮合七員環を形成しているもの(すなわちアズレニル基)がある。aおよびbは0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
【0021】
上記一般式(1)で示されるメタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。なお、これらの化合物は、単に化学的名称のみで示称されているが、その立体構造が本発明で言う非対称性を持つものであることは言うまでもない。Meとしてジルコニウムの場合のみを例示したが、代わりにハフニウムをそのまま置換して指称することができる。
【0022】
シリレン架橋五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、例えば
(1)ジメチルシリレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)メチルフェニルシリレンビス{1−(2,4−ジメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(5)メチルフェニルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
【0023】
(6)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジメチル、
(7)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレニル)}{1−(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(ペンタフルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0024】
アルキレン基で架橋した五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、例えば、
(1)エチレン−1,2−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)エチレン−1,2−ビス{1−(2,4−ジメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(4)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(5)エチレン−1,2−ビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド等が例示される。
【0025】
ゲルマニウム、アルミニウム、ホウ素、リンあるいは窒素を含む炭化水素残基で架橋した五員環配位子を有する遷移金属化合物、例えば、
(1)ジメチルゲルミレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(4)フェニルホスフィノビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)フェニルアミノビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド等が例示される。これらの錯体のなかで特に好ましいものは、アズレン骨格を有する錯体である。
【0026】
一般式(2)で示されるメタロセン系遷移金属化合物としては、次のような
化合物を例示することができる。
(1)ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス[1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス{1−(2,4−ジメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス[1,1'−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド
【0027】
(6)ビス[1,1'−{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド
(7)ビス{1,1'−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド
(8)ビス{1,1'−(2−メチル−4−フェニルヘキサヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド
(9)ビス[1,1'−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)ヘキサヒドロアズレニル}]ジルコニウムジクロリド
(10)ビス[1,1'−{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)ヘキサヒドロアズレニル}]ジルコニウムジクロリド
(11)ビス(1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(12)ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−フルオレニル)}ジルコニウムジクロリド。
ここで、Meとしてジルコニウムの場合のみを例示したが、代わりにハフニウムをそのまま置換して指称することができる。
【0028】
成分(B)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有するイオン交換可能なものを指称する。大部分のイオン交換性層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、イオン交換性層状珪酸塩は特に、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。具体例としては、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
【0029】
これらの中では、モンモリナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。なお、成分Bとして、水銀圧入法を測定した半径が20オングストローム以上の細孔容積が0.1cc/g未満の化合物を用いた場合には、高い重合活性が得難い傾向があるので、0.1cc/g以上、特には0.3〜5cc/gのものが好ましい。また、成分Bは特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、成分Bに化学処理を施すことも好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
【0030】
具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。酸処理は表面の不純物を取り除く他、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと置換することにより、層間が拡大した状態の層状物質を得ることもできる。すなわち、嵩高いイオンが層状構造を支える支柱的な役割を担っており、ピラーと呼ばれる。また層状物質層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。
【0031】
インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3[Rはアルキル、アリール等]等の金属アルコラート、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これらの化合物は、単一で用いても、また2種類以上共存させて用いてもよい。これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコラート等を加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーの例としては上記水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。成分Bはそのまま用いてもよいし、加熱脱水処理した後用いてもよい。また、単独で用いても、上記固体の2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
イオン交換性層状珪酸塩としては、塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な1族金属陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンを含有する化合物であり、好ましくは、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸から成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物であり、更に好ましくは、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、Cl、Br、I、F、PO4、SO4、NO3、CO3、C24、OCOCH3、CH3COCHCOCH3、OCl3、O(NO32、O(ClO42、O(SO4)、OH、O2Cl2、OCl3、OCOH、OCOCH2CH3、C244およびC657から成る群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンとからなる化合物である。
【0033】
具体的には、CaCl2、CaSO4、CaC24、Ca(NO32、Ca3(C6572、MgCl2、Sc(OCOCH32、ScF3、ScBr3、Y(OCOCH33、LaPO4、La2(SO43、Sm(OCOCH33、SmCl3、Yb(NO33、Yb(ClO43、Ti(OCOCH34、Ti(CO32、Ti(SO42、TiF4、TiCl4、Zr(OCOCH34、Zr(CO32、Zr(NO34、ZrOCl2、Hf(SO42、HfBr4、HfI4、V(CH3COCHCOCH33、VOSO4、VCl4、VBr3、Nb(CH3COCHCOCH35、Nb2(CO35、Ta2(CO35、Ta(NO)5、TaCl5、Cr(OOCH32OH、Cr(NO33、Cr(ClO43、MoOCl4、MoCl3、MoCl4、MoCl5、MoF6、WCl4、WBr5、Mn(CH3COCHCOCH32、Mn(NO32、Fe(OCOCH32、Fe(NO33、FeSO4、Co(OCOCH32、Co3(PO42、CoBr2、NiCO3、NiC24、Pb(OCOCH34、Pb(OOCH32、PbCO3、Pb(NO32、CuI2、CuBr2、CuC24、Zn(OOCH32、Zn(CH3COCHCOCH32、Cd(OCOCH2CH32、CdF2、、AlCl3、Al2(C243、Al(CH3COCHCOCH33、GeCl4、GeBr4、Sn(OCOCH34、Sn(SO42等が挙げられる。
【0034】
酸処理は表面の不純物を除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、リン酸、酢酸から選択される。処理に用いる塩類および酸は、2種以上であってもよい。塩類処理と酸処理を組み合わせる場合においては、塩類処理を行った後、酸処理を行う方法、酸処理を行った後、塩類処理を行う方法、および塩類処理と酸処理を同時に行う方法がある。
【0035】
塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜30重量%、処理温度は室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩に含有される少なくとも一種の化合物の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
【0036】
上記塩類処理および/または酸処理に当たり、処理前、処理間、処理後に粉砕や造粒等で形状制御を行ってもよい。また、アルカリ処理や有機物処理などの化学処理を併用してもよい。これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して成分Bとして使用するのが好ましい。
【0037】
ここで吸着水とは、イオン交換性層状珪酸塩の化合物粒子の表面あるいは結晶破面に吸着された水で、層間水は結晶の層間に存在する水である。本発明では、加熱処理によりこれらの吸着水および/または層間水を除去して使用することができる。イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は特に制限されないが、加熱脱水、気体流通下の加熱脱水、減圧下の加熱脱水および有機溶媒との共沸脱水等の方法が用いられる。加熱の際の温度は、イオン交換性層状珪酸塩および層間イオンの種類によるために一概に規定できないが、層間水が残存しないように、100℃以上、好ましくは150℃以上であるが、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが例えば800℃以上)は好ましくない。また、空気流通下での加熱等の架橋構造を形成させるような加熱脱水方法は、触媒の重合活性が低下し、好ましくない。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の成分Bの水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下であることが好ましい。
【0038】
また成分Bは、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いるのが好ましい。より好ましくは、平均粒径が10μm以上の球状粒子を用いる。更に好ましくは平均粒径が10μm以上100μm以下の球状粒子を用いる。ここでいう平均粒径は、粒子の光学顕微鏡写真(倍率100倍)を画像処理して算出した数平均の粒径で表す。また成分Bは、粒子の形状が球状であれば天然物あるいは市販品をそのまま使用してもよいし、粒径、分径、分別等により粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。
【0039】
ここで用いられる造粒法は例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられるが成分Bを造粒することが可能な方法であれば特に限定されない。造粒法として好ましくは、攪拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、流動層造粒法が挙げられ、特に好ましくは攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられる。尚、噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。球状粒子が得られる噴霧造粒の原料スラリー液の成分Bの濃度は0.1〜70%、好ましくは1〜50%、特に好ましくは5〜30%である。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入り口の温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。
【0040】
また造粒の際に有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダーを用いてもよい。用いられるバインダーとしては例えば砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、水ガラス、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、アルミナゾル、シリカゲル、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
【0041】
上記のように得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の抑制をするためには0.2MPa以上の圧縮破壊強度を有することが好ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
【0042】
成分A及び成分Bに加えて、任意成分として使用される有機アルミニウム化合物(成分C)としては、次の一般式(3)で示される化合物が適当である。
(AlR3 n3-nm (3)
本発明ではこの式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができる。また、この使用は触媒調製時だけでなく、予備重合あるいは重合時にも可能である。この式中、R3は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。nは1〜3の、mは1〜2の整数である。R3としてはアルキル基が好ましく、またXは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。したがって、好ましい化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R3が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0043】
<メタロセン触媒(ii)>
本発明で使用するメタロセン触媒の他の例として、前記メタロセン系遷移金属化合物(成分A)を、アルミニウムオキシ化合物(成分D)と組み合わせた触媒が挙げられる。この場合も、任意成分として有機アルミニウム化合物(成分C)を併用することができる。
アルミニウムオキシ化合物(成分D)としては、具体的には次の一般式(4)、(5)及び(6)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化1】
Figure 0004034542
【0045】
上記の各式中、R4は、水素原子又は炭化水素残基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素残基を示す。また、複数のR4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
【0046】
一般式(4)及び(5)で表される化合物は、アルモキサンとも呼ばれる化合物であって、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる。具体的には、(a)一種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られる、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、(b)二種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られる、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が例示される。これらの中では、メチルアルモキサン又はメチルイソブチルアルモキサンが好ましい。
【0047】
一般式(6)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと次の一般式(7)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式(7)中、R5は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素残基またはハロゲン化炭化水素基を示す。
5B(OH)2 (7)
具体的には以下の様な反応生成物が例示できる。
(a)トリメチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1の反応物
(b)トリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物
(c)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の1:1:1反応物
(d)トリメチルアルミニウムとエチルボロン酸の2:1反応物
(e)トリエチルアルミニウムとブチルボロン酸の2:1反応物
【0048】
<メタロセン触媒(iii)>
本発明で使用するメタロセン触媒の、もう一つ他の例として、前記メタロセン系遷移金属化合物(成分A)を、成分Aと反応して安定なイオンを形成するような、特定化合物(成分E)と組み合わせた触媒が挙げられる。この場合も、任意成分として有機アルミニウム化合物(成分C)を併用することができる。
【0049】
この特定化合物(E)とは、カチオンとアニオンのイオン対から形成されるイオン性化合物、或いは親電子性化合物であり、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなって重合活性種を形成するものである。
このうち、イオン性化合物は一般式(8)で表される。
[Q’]m+[Y]mー(mは1以上の整数) (8)
式中、Q’はイオン性化合物のカチオン成分であり、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられ、更には、それ自身が還元され易い金属の陽イオンや有機金属の陽イオン等も挙げることができる。
これらのカチオンは、特表平1−501950号公報等に開示されているようなプロトンを与えることができるカチオンだけでなく、プロトンを与えないカチオンでも良い。これらのカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N N ジメチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、また、銀イオン、金イオン、白金イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等が挙げられる。
【0050】
また、Yはイオン性化合物のアニオン成分であり、メタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなる成分であって、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオン等が挙げられる。
具体的には、テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−(tーブチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(tーブチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム、テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン、テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素、テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン、デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレート等が挙げられる。
【0051】
また、親電子性化合物としては、ルイス酸化合物として知られているもののうち、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなって重合活性種を形成するものであり、種々のハロゲン化金属化合物や個体酸として知られている金属酸化物等が挙げられる。具体的には、ハロゲン化マグネシウムやルイス酸性無機化合物等が例示される。
これらの触媒成分は、適宜、無機固体担体、有機固体担体等に担持して使用することもできる。担持の例としては、特開昭61−296008、特開平1−101315、特開平5−301917等の各公報に記載されている方法が挙げられる。
【0052】
<触媒の形成>
成分A、成分B、並びに、必要に応じて用いられる成分Cからなるメタロセン触媒を、重合槽内であるいは重合槽外で、重合させるべきモノマーの存在下あるいは不存在下に接触させることにより調製することができる。成分Aと、成分D又は成分Eを組み合わせる場合も同様にして触媒を調製できる。
また、上記触媒は、オレフィンの存在下で予備重合を行ったものであっても良い。予備重合に用いられるオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン等が用いられる。
【0053】
<重合>
本発明に用いる結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の重合は、上記のように調製された触媒と、プロピレンとエチレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィンとを混合接触させることにより行われる。反応系中の各モノマーの量比は経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0054】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク法、溶液法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーを実質的にガス状に保つ気相法を採用することができる。
また、連続重合、回分式重合のいずれを用いてもよい。スラリー重合の場合には、重合溶媒としてヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素の単独あるいは混合物を用いることができる。
【0055】
重合条件としては重合温度が−78〜160℃、好ましくは0〜150℃であり、そのときの分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。また、重合圧力は0〜90kg/cm2・G、好ましくは0〜60kg/cm2・G、特に好ましくは1〜50kg/cm2・Gである。
【0056】
[III]ランダム共重合体と他の樹脂との併用
結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体に配合して使用される好ましい樹脂として、脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。例えば、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、並びにそれらの水素添加誘導体等は好適である。これらの中で、極性基を有さないものや、あるいは、水素を添加して95%以上の水添率とした樹脂が好ましい。さらに好ましい樹脂は、石油樹脂または石油樹脂の水素添加誘導体であり、該石油樹脂としては、例えば、荒川化学工業(株)製のアルコンまたはトーネックス(株)製のエスコレッツ等の市販品が挙げられる。
【0057】
該脂環式炭化水素樹脂の軟化点は、通常110℃以上、好ましくは115℃以上、さらに好ましくは、125℃以上である。軟化点がこれよりも低いとフィルムがべたついたり、経時変化により白濁するおそれがある。。
【0058】
脂環式炭化水素樹脂の配合割合は、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が50〜100重量%、好ましくは60〜90重量%、脂環式炭化水素樹脂が0〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。フィルムのベタツキ、成形性など考慮して適宜決定される。
【0059】
その他の成分として、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種の配合態様がある。例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、造核剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤等を添加することができる。また、より一層の収縮特性向上を目的として、プロピレン−ブテン−1共重合体、ポリブテン−1、線状低密度ポリエチレン等、公知の収縮特性向上成分を添加してもよい。
【0060】
[IV]シュリンクラベル用フィルムの成形方法
本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムは、上記のポリプロピレン系樹脂組成物をインフレ―ション法、フラット状延伸法等の公知の成形方法を用いて成形することができるが、本発明においては、フラット状延伸法、特にテンター式一軸延伸法を用いることが好ましい。
【0061】
上記の成形方法により溶融押出し後、公知の方法により少なくとも一軸方向以上に2倍以上延伸して、本発明のシュリンクラベル用フィルムを製造する。
延伸方向は、一軸方向以上であればよいが、ラベルの流れ方向に対して直角である方向へのみ一軸延伸することが好ましい。また、延伸倍率が2倍未満であると、十分な収縮率が得られない。
また、収縮率を向上させる目的より、でき得る限り低温で延伸することが好ましく、特に未延伸シートに予熱をかける工程がある場合は、予熱温度を成形可能な範囲内で、でき得る限り低くすることが収縮率向上の観点から好ましい。
【0062】
本発明のシュリンクラベル用フィルムの厚みは、特に限定されないが、100μm以下であり、好ましくは30〜80μmである。
さらに、本発明のシュリンクラベル用フィルムは、単層ラベル用フィルムとしても、あるいは2層以上の多層ラベル用フィルムとしても用いることができる。多層ラベル用フィルムの場合は、本発明の樹脂組成物からのラベル用フィルムが少なくとも1層以上あればよい。
積層方法としては、多層共押出法やドライラミネート法等が挙げられるが、特に多層共押出法が好ましく、その場合の各層の厚み構成は、本発明の樹脂組成物からなる基材層(I)の厚みが全フィルム厚みの50〜99%であり、表面層(II)を基材層(I)の片面又は両面に全フィルム厚みの1〜50%積層することが好ましい。表面層(II)の厚みが全フィルム厚みの50%を超えるとフィルムの剛性が低くなる場合がある。
積層化に際しては、目的に応じて表面層(II)に積層する樹脂組成物を選択することが望ましい。例えば積層化により透明性とアンチブロッキング性のバランス向上を目的とする場合には、プロピレン・エチレンランダム共重合体又はプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダム共重合体又はプロピレン単独重合体を主体とし、アンチブロッキング剤を添加した樹脂組成物を積層することが望ましい。一層の収縮特性の向上を目的とする場合には下記[A]群の樹脂を主体とする樹脂組成物を積層することが望ましく、「A」群の中でも直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製「カーネル」など)又は非晶質オレフィン系重合体(三井化学社製「アペル」など)が特に望ましい。また、表面層(II)に用いる樹脂組成物にはアンチブロッキング剤を添加することが望ましい。表面層(II)にアンチブロッキング剤を添加した場合は、基材層(I)にはアンチブロッキング剤を添加しないことが透明性向上の観点から望ましい。
[A]群
直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリブテン-1、プロピレン・ブテン-1ランダム共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン-1ランダム共重合体、エチレン・ヘキセン-1ランダム共重合体、非晶質オレフィン系重合体
【0063】
[V]熱収縮性フィルムの用途
本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムは、加熱収縮率が大幅に向上しており、ペットボトル用表示ラベル用材料、瓶容器用表示ラベル用材料等としての実用特性を有している。また、低温収縮率が向上しているため、高速ラベル包装性に優れ、特に予め低温充填されたペットボトルや瓶容器へのラベル包装に好適に用いることができる。尚かつ0.94以下の低比重を達成しているので、シュリンク包装適性とリサイクル効率のバランスが向上したポリプロピレン系熱収縮性シュリンクラベル用フィルムを提供することができる。更には、本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルムは、機械的強度(引張弾性率)が大きいので二次加工性やラベル装着工程に十分なフィルム剛性を発揮することができる。
【0064】
【実施例】
本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例、比較例で使用したプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の製造法、ラベル用フィルムの製造法、及び同フィルムの評価方法は、以下に示す通りである。
【0065】
[I]プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の製造法
(1)固体触媒成分の調製
(i)ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリドのラセミ体の合成
(a)ラセミ・メソ混合物の合成
1−ブロモ−4−クロロベンゼン1.84g(9.6mmol)のn−ヘキサン(10ml)とジエチルエーテル(10ml)との溶液に−78℃でt−ブチルリチウムのペンタン溶液(1.64M)11.7ml(19.2mmol)を滴下した。得られた溶液を−5℃で1.5時間攪拌後、この溶液に2−メチルアズレン1.2g(8.6mmol)を添加して反応を行った。この反応溶液を徐々に室温まで戻しながら1.5時間攪拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、1−メチルイミダゾール15μl(0.19mmol)を添加し、さらに、ジクロロジメチルシラン0.52ml(4.3mmol)を添加した。反応溶液を室温で1.5時間攪拌後、希塩酸を添加して反応を停止し、分液した有機相を減圧下に濃縮し、ジクロロメタンを添加した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、アモルファス状の固体2.1gを得た。
次に、上記の反応生成物1.27gをジエチルエーテル15mlに溶解し、これに−78℃でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.66M)2.8ml(4.5mmol)を滴下した。滴下終了後、反応溶液を徐々に室温まで戻しながら12時間攪拌した。減圧下に溶媒を留去した後、トルエンとジエチルエーテルの混合溶媒(40:1)5mlを添加して−78℃に冷却し、これに四塩化ジルコニウム0.53g(2.3mmol)を添加した。その後、直ちに室温まで戻し、室温で4時間攪拌して反応を行った。得られた反応液をセライト上で濾過し、濾別された固体をトルエン3mlで洗浄して回収した。回収した固体をジクロロメタンで抽出し、抽出液から溶媒を留去し、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリドのラセミ・メソ混合物906mg(収率56%)を得た。
(b)ラセミ体の精製
さらに、ジクロロメタン20mlに上記のラセミ・メソ混合物900mgを溶解し、100Wの高圧水銀灯を40分照射することによりラセミ体の比率を高め、その後、不溶分を濾別し、回収した濾液を濃縮乾固した。次いで、得られた固体成分をトルエン22mlと共に攪拌し、静置後に上澄み液を除去した、かかる精製操作を4回繰り返し、残った固体成分を乾燥し、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリドのラセミ体275mgを得た。
(ii)粘土鉱物の化学処理
硫酸(96%)218.1gと硫酸マグネシウム130.4gを脱塩水909mlと混合した水溶液に市販のモンモリロナイト(クニミネ工業製、クニピアF)200.03gを分散させ、100℃で2時間攪拌した。このモンモリロナイトの水スラリー液を固形分濃度12%に調製し、スプレードライヤーにより噴霧造粒を行って、粒子を得た。その後、この粒子を200℃で2時間減圧乾燥した。
(iii)触媒成分の調製
内容積1lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分に置換した後、脱水・脱酸素したヘプタン230mlを導入し、系内温度を40℃に維持した。ここに、トルエンにてスラリー化した化学処理粘土10gを添加した。さらに別容器にてトルエン下で混合したジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリドのラセミ体0.15mmolとトリイソブチルアルミニウム1.5mmolを添加した。ここでプロピレンを10g/hの速度で120分導入し、その後120分重合を継続した。さらに、窒素下で溶媒を除去・乾燥し、固体触媒成分を得た。この固体触媒成分は、固体成分1gあたり1.9gのポリプロピレンを含有していた。
【0066】
(2)重合
内容積200lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これにトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液500ml(0.12mol)、エチレン2.0kg、水素3.5l(標準状態の体積として)を加え、内温を30℃に維持した。次いで、上記固体触媒成分1.45gをアルゴンで圧入して重合を開始させ、30分かけて70℃に昇温し、1時間その温度を維持した。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、プロピレン・エチレンランダム共重合体(PP−1)13.7kgを得た。同様の方法によりプロピレン−エチレンランダム共重合体を必要量得て試料とした。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体は、下記の物性を有するものであった。MFR:2.58g/10分、エチレン含量:3.42重量%、Tp:122.7℃、T50:113℃。
【0067】
[II]ラベル用フィルムの製造法
(i)未延伸シートの成形
75ミリ単軸押出機から、基材層(I)用樹脂組成物を、30ミリ単軸押出機および20ミリ単軸押出機から各々、両表面層(II)用樹脂組成物を、240℃にて、Tダイ法により各々所定の厚みになるように溶融共押出しし、15℃の冷却ロールにて冷却固化させ、厚さ300μmの未延伸シートを得た。
(ii)延伸フィルムの成形
上記で得た未延伸シートをテンター炉に導入し、成形可能な最低である温度にて30秒間予熱をかけ、該予熱温度と同等の温度雰囲気下、幅方向に30秒かけて6.5倍延伸し、引き続き同テンター炉内にて幅方向に7.5%弛緩させつつ、87℃にて30秒間アニールし、延伸倍率6倍で、厚さが50μmの熱収縮性シュリンクラベル用フィルムを得た。
【0068】
[III]ラベル用フィルムの評価方法
(1)包装適性
ラベル用フィルムを主収縮方向に長さ22.5cm、主収縮方向に直角方向に20cm切り出した。主収縮方向が円周方向となるよう、円周長21.5cmとなるよう筒状に丸め、重なり合う部分をヒートシールすることにより筒状のラベルを得た。得られたラベルの一端と市販のペットボトル(500ml、キリンビバレッジ Supli用)の下端が揃うようにかぶせた。ラベルを装着したペットボトルに500mlの水(25℃)を入れ、キャップをした後、90℃に調整した水槽に5秒間浸けた。5秒経過後直ちに90℃の水槽から取り出し、別途用意した25℃の水槽に1分以上浸けることにより、ラベル包装を実施した。ラベル包装後のペットボトルの下端から15.7cmの部分(市販ペットボトルのラベル上端位置。周長18.0cm、収縮率16.3%)のラベルの密着状態を調べ、下端から15.7cmの部分が完全に密着しているものを良好、密着が不十分のものを不良とした。
【0069】
(2)比重
JIS K−7112−1980に準拠して、ペットボトルへのラベル包装した後のサンプルを対象として、密度勾配管法により測定した。
(3)分離性
ペットボトルへラベル包装した後のラベル用フィルムを一辺10cmの正方形に切り出し、更に一辺1cmの正方形に裁断し、フィルム片を得た。得られたフィルム片を、予め25℃の蒸留水800ミリリットルが入った1リットルビーカーに入れた。ビーカーに長さ3cmの回転子を入れ、マグネチックスターラーにてフィルム片がビーカー内全体に分散するように撹拌した。20秒間マグネチックスターラーを回転させた後、回転を停止させ、停止後、全てのフィルム片が水面近傍まで浮き上がるまでの時間を測定した。この操作を1試料につき10回繰り返し、最大値、最小値を除いた8点の平均値をもって分離性の尺度とした。フィルム片が水面近傍まで浮き上がる時間が短いほど分離性に優れる。30秒以内ならば問題ないレベルといえる。
【0070】
(4)メルトフローレート(MFR)
プロピレン系樹脂についてはJIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重2.16kgにて、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂についてはJISK−7210−1995に準拠し、190℃、荷重2.16kgにて測定した。
(5)示差走査型熱量計(DSC)
セイコー社製DSCを用い、サンプル(プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体)5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで冷却し、更に10℃/分の昇温スピードで融解させて融解熱量曲線を得た。得られた融解熱量曲線によりTpおよびT50を求めた。
(6)軟化点温度
JIS K−2207に準拠して測定した。
【0071】
(7)加熱収縮率
延伸フィルムを40℃で24時間エージングした後、10cm×10cmの正方形状に、その一辺がフィルムの流れ方向と平行になるよう切り出し、これを所定の温度(80℃、90℃又は100℃)に加熱した水槽に10秒間浸漬した。10秒経過後直ちに別途用意した25℃の水槽に20秒間浸漬したのちフィルムの流れ方向、直交方向各々の長さを測定した。
(8)自然収縮率
延伸フィルムを40℃で24時間エージングした後、10cm×10cmの正方形状に、その一辺がフィルムの流れ方向と平行になるよう切り出し、これを40℃のギヤオーブンに入れ7日間放置した。7日間放置したフィルムの流れ方向、直交方向各々の長さを測定した。
(9)引張弾性率(単位 MPa)
下記の条件にて、フィルムの流れ方向(MD)および直交方向(TD)各々について測定した。引張弾性率の計算方法は、JIS K−7127−1989に準拠した。サンプル長さ:150mm、サンプル幅:15mm、チャック間距離:100mm、クロスヘッド速度:1mm/min
(10)腰感
包装適性評価の際、作成した筒状のラベルを手で握ったときの腰感を次の基準で評価した。キリン製「生茶」500mlペットボトルに装着されたラベルに比べて、腰感ほぼ同等:○ 腰感やや弱い:△ 腰感弱い:×
腰感はラベルをペットボトルに装着する際の生産性の代用特性として評価したものである。
【0072】
[実施例1]
PP−1パウダー80重量部と脂環式炭化水素樹脂(荒川化学工業(株)製アルコンP125、軟化点温度125℃)20重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、フェノール系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir1010)0.1重量部、リン系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir168 )0.1重量部、アンチブロッキング剤として平均粒径2.5μmの合成シリカ0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を原料として、前述の方法にてラベル用フィルムに成形した。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたラベル用フィルムの評価結果を表1に示した。
【0073】
[実施例2]
実施例1のアルコンP125を脂環式炭化水素樹脂(トーネックス(株)製エスコレッツE5320、軟化点温度125℃)に代えた以外は実施例1と同様にしてラベル用フィルムを得た。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は60℃であった。
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0074】
[実施例3]
PP−1パウダー75重量部と脂環式炭化水素樹脂(荒川化学工業(株)製アルコンP140、軟化点温度140℃)25重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、フェノール系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir1010)0.1重量部、リン系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir168 )、アンチブロッキング剤として平均粒径2.5μmの合成シリカ0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を原料として、前述の前述の方法にてラベル用フィルムに成形した。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0075】
[比較例1]
通常のチーグラー触媒を用いて、プロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−2)を製造した。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体は、下記の物性を有するものであった。MFR:2.30g/10分、エチレン含量:3.60重量%、Tp:138.3℃、T50:130℃。PP−2パウダー80重量部と脂環式炭化水素樹脂(荒川化学工業(株)製アルコンP140、軟化点温度140℃)20重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、フェノール系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir1010)0.1重量部、リン系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir168 )、アンチブロッキング剤として平均粒径2.5μmの合成シリカ0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を原料として、前述の方法にてラベル用フィルムに成形した。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は80℃であった。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。分離性は良好であったが、実施例1〜3に比べ、包装適性に劣るものであった。
【0076】
[比較例2]
PP−2パウダー60重量部と脂環式炭化水素樹脂(荒川化学工業(株)製アルコンP140、軟化点温度140℃)40重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、フェノール系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir1010)0.1重量部、リン系酸化防止剤(チバガイギー社、商品名Ir168 )、アンチブロッキング剤として平均粒径2.5μmの合成シリカ0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を原料として、前述の方法にてラベル用フィルムに成形した。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。包装適性は良好であったが、実施例1〜3に比べ分離性が悪化した。
【0077】
[実施例4]
PP−1パウダー75重量部、トーネックス(株)製エスコレッツE5320(軟化点温度125℃) 25重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対してステアリン酸カルシウム0.05重量部、Ir1010 0.1重量部、Ir168 0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して基材層(I)用樹脂組成物を得た。PP−1パウダー100重量部に対してステアリン酸カルシウム0.05重量部、Ir1010 0.1重量部、Ir168 0.1重量部、アンチブロッキング剤として重量平均粒径2.5μmの合成シリカ0.2重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して表面層(II)用樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を前述の方法にてラベル用フィルムに成形した。得られたフィルムの全厚みは50μm、基材層(I)の厚みは44μm、表面層(II)の厚みは、両面それぞれ3μmであった。該フィルムの成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0078】
[実施例5]
(i)直鎖状低密度ポリエチレンの製造
錯体エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド2.0ミリモルに、東洋ストファー社製メチルアルモキサンを上記錯体に対して1,000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液とした。内容積1.5リットルの攪拌式オートクレーブ型連続反応器に、エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が83重量%となるように供給し、反応器内の圧力を1,100kg/cm2に保ち、反応温度が140℃となるように触媒溶液の供給量を調整し反応を行った。
MFRが3.5g/10分、密度が0.898g/cm3、Q値が2.1、1−ヘキセン含量が19重量%であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(LLDPE−1)を得た。
(ii)多層フィルムの製造
実施例4と同様にして基材層(I)用樹脂組成物を得た。
次に、LLDPE−1パウダー100重量部に対してシリカ(セライト コーポレーション製スーパーファインスーパーフロス)1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、イルガノックス1076 0.13重量部、イルガフォス168 0.07重量部、テトラキス(2,4―ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスフォナイト(PEPQ)0.07重量部を加え、ヘンシェルミキサーで混合した後50mm単軸押出機で造粒して表面層(II)用樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を前述の方法にてラベル用フィルムに成形した。得られたフィルムの全厚みは50μm、基材層(I)の厚みは44μm、表面層(II)の厚みは、両面それぞれ3μmであった。該フィルムの成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0079】
[実施例6]
PP−1パウダー75重量部、トーネックス(株)製エスコレッツE5320(軟化点温度125℃) 20重量部、ポリブテン( シェルジャパン社製ポリブテン−1、商品名:PB8340)5重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対してステアリン酸カルシウム0.05重量部、Ir1010 0.1重量部、Ir1680.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して基材層(I)用樹脂組成物を得た。それ以外は実施例4と同様な操作を行った。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。なお、表2中、上記ポリブテンを「PB−1」と略記した。
【0080】
[比較例3]
PP−1パウダー75重量部、トーネックス(株)製エスコレッツE5320(軟化点温度125℃) 10重量部、PB−1 15重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対してステアリン酸カルシウム0.05重量部、Ir1010 0.1重量部、Ir168 0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して基材層(I)用樹脂組成物を得た。それ以外は実施例4と同様な操作を行った。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたフィルムの評価結果を表3に示した。分離性と包装適性は問題無かったが、引張弾性率が本発明の範囲外となったため、腰感が劣るものとなった。
【0081】
[比較例4]
PP−1パウダー75重量部、トーネックス(株)製エスコレッツE5320(軟化点温度125℃)10重量部、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(ジェイエスアール社製、商品名:EP961SP)15重量部よりなる樹脂混合物100重量部に対してステアリン酸カルシウム0.05重量部、Ir1010 0.1重量部、Ir168 0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、50ミリ単軸押出機で造粒して基材層(I)用樹脂組成物を得た。それ以外は実施例4と同様な操作を行った。フィルム成形時の成形可能最低予熱温度は60℃であった。得られたフィルムの評価結果を表3に示した。加熱収縮率と比重の関係が本発明の範囲外となったため、分離性は問題無かったが、包装適性が劣るものとなった。また、引張弾性率が本発明の範囲外となったため、腰感が劣るものとなった。なお、表3中、上記エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴムを「EPR−1」と略記した。
【0082】
[比較例5]
実施例5において、基材層(I)の厚みを20μm、表面層(II)の厚みは、両面それぞれ15μmに代えた以外は実施例4と同様な操作を行った。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。シュリンクラベル用フィルムの厚み構成が不適切であり、引張弾性率が本発明の範囲外となり、腰感が低下した。
【0083】
[比較例6]
実施例4の基材層(I)用樹脂組成物の製造において、PP−1パウダーをPP−2パウダーに変更した以外は実施例4と同様にシュリンクラベル用フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。プロピレン・エチレンランダム共重合体の特性が不適切であり、加熱収縮率と比重の関係が本発明の範囲外となり、分離性は問題無かったが、包装適性が劣るものとなった。腰感は問題無かった。
【0084】
【表1】
Figure 0004034542
【0085】
【表2】
Figure 0004034542
【0086】
【表3】
Figure 0004034542
【0087】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用樹脂組成物およびそれを用いたフィルムは、従来の他のフィルムに比べ、低比重であり、加熱収縮率が大幅に向上し、また、低温収縮率及び引張弾性率も向上しているため、シュリンクラベルとしての使用に好適である。

Claims (7)

  1. メタロセン触媒により重合された、特性(4)〜(6)を満たす結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を主体とするポリプロピレン系樹脂組成物から成るフィルムであって、主収縮方向の収縮率が式(1)〜(3)を満たし、尚かつ比重が0.94以下、40℃、7日間における主収縮方向の収縮率が3%未満であることを特徴とする熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルム。
    (1)80>251d−215
    (2)90>531d−462
    (3)100>627d−541
    (但し、S80、S90、S100は、フィルムを各々80℃、90℃、100℃の水に10秒間水浴した時の主収縮方向の収縮率(%)を、dはフィルムの比重を表す。)
    (4)メルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分
    (5)示差走査型熱量計(DSC)で求めた融解ピーク温度(T P )が、100〜130℃
    (6)T 50 ≦120℃
    (但し、T 50 はDSCで求めた総融解熱量をΔH m としたとき、低温側から起算した融解熱量がΔH m の50%となる時の温度(℃)を表す。)
  2. メタロセン触媒により重合された、特性(4)〜(6)を満たす結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を主体とするポリプロピレン系樹脂組成物から成るフィルムであって、主収縮方向の収縮率が式(1)〜(3)を満たし、尚かつ比重が0.94以下、40℃、7日間における主収縮方向の収縮率が3%未満で、フィルムの流れ方向(MD)もしくは直交方向(TD)のいずれか低い方の引張弾性率が1000MPa以上であることを特徴とする熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルム。
    (1)80>251d−215
    (2)90>531d−462
    (3)100>627d−541
    (但し、S80、S90、S100は、フィルムを各々80℃、90℃、100℃の水に10秒間水浴した時の主収縮方向の収縮率(%)を、dはフィルムの比重を表す。)
    (4)メルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分
    (5)示差走査型熱量計(DSC)で求めた融解ピーク温度(T P )が、100〜130℃
    (6)T 50 ≦120℃
    (但し、T 50 はDSCで求めた総融解熱量をΔH m としたとき、低温側から起算した融解熱量がΔH m の50%となる時の温度(℃)を表す。)
  3. 結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体がプロピレン・エチレンランダム共重合体である請求項1または2記載の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルム。
  4. ポリプロピレン系樹脂組成物が、結晶性プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体50〜100重量%と、軟化点が110℃以上である脂環式炭化水素樹脂0〜50重量%とからなる請求項1〜3いずれか1項記載の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルム。
  5. ポリプロピレン系樹脂組成物が、結晶性プロピレン・α - オレフィンランダム共重合体60〜90重量%と、軟化点が110℃以上である脂環式炭化水素樹脂10〜40重量%とからなる請求項1〜3いずれか1項記載の熱収縮性ポリプロピレン系シュリンクラベル用フィルム。
  6. 熱収縮性ポリオレフィン系シュリンクラベル用フィルムが2層以上の多層フィルムである請求項1〜5いずれか1項記載の熱収縮性ポリオレフィン系シュリンクラベル用フィルム。
  7. 請求項4または5記載のポリオレフィン系樹脂組成物よりなる基材層(I)および下記[A]群から選ばれる一種類以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物よりなる表面層(II)から構成され、且つ基材層(I)の厚みが全フィルム厚みの50〜99%である請求項1〜いずれか1項記載の熱収縮性ポリオレフィン系シュリンクラベル用フィルム
    [A]群
    プロピレン−エチレンランダム共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリブテン-1、プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体ゴム、エチレン-ブテン-1ランダム共重合体、非晶質オレフィン系重合体
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