JP4989828B2 - 水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、透明性、透視性、開口性、滑り性、耐ブロッキング性、耐傷つき性、MDとTDの機械物性バランス、耐衝撃性に優れ、かつ製膜安定性に優れた水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶性ポリプロピレンからなるフィルムは、その優れた剛性などの機械物性、透明性、光沢などの光学的特性を生かして、食品、医療、文具ファイル等の一般雑貨、クリーニング袋等の衣料包装用フィルム等として広く利用されている。なかでも文具ファイルやクリーニング袋等の包装材としては二次加工面からもチューブ状のフィルムが適しており、インフレーション成形が好まれる。また、該分野は安価なため、Tダイ成形よりも設備が安価で簡易的な成形法が求められている。また、該分野は透明性が必要であり、空冷インフレーション成形よりは、冷却効率がよく透明なフィルムが成形可能な水冷インフレーション成形がより好まれ、透明性とブロッキング性(開口性)のバランスが要求される。しかしながら、近年ポリプロピレンの重合法が生産性の高い気相法に転換してきており、従来のスラリー法、バルク法では低分子量ポリプロピレンや非晶性アタクチックポリプロピレンが一部重合溶媒中で除去されていたのに対し、気相法ではそれらの成分がポリマー中に全て取り込まれることになった為、気相法プロセスで製造された樹脂をフィルムにするとフィルム同士のブロッキングが悪いという欠点があった。耐ブロッキング性を良くするため、シリカなどのアンチブロッキング剤を大量に添加すると、ポリプロピレンフィルムの特徴である優れた透明性が得られないという問題があった。
【0003】
そこでこのような欠点を改良するために粒径の異なるシリカを併用する方法(特開平4−39343号公報)が提案されている。しかし、この方法ではブロッキングは解決するものの、粒径の大きなシリカによるフィルム同士が擦れるときの耐傷つき性の悪化を招き、また透明性も十分でないという問題点があった。
そこで、気相法で製造した樹脂をラジカル発生剤の存在下に分子量減成し、ブロッキング、透明性を良化する方法(特開平5−279522号公報)が提案されている。しかし、この方法ではある程度の効果は認められるものの十分な効果を上げるには至っていない。さらに、この方法は分子量減成するためにポリプロピレンをラジカル発生剤処理する工程を含んでおり、ラジカル発生剤によりフィルム巻製品の端面色の悪化、臭気といった問題があった。
そこで、分子量減成を行わなくても分子量分布が狭く、かつ結晶性分布が狭いプロピレン樹脂を用いる水冷インフレーションフィルムが提案されている(特開平11−255825号公報)。しかしながら、フィルムの端面色、臭気の問題は解決したものの、製膜安定性、特にブロー比をアップした場合にはバブルの振れが発生し製膜安定性が十分でなく、またフィルム物性についても十分満足いく結果ではないといった問題があった。
【0004】
【発明が解決すべき課題】
本発明の課題は、製膜安定性、特にブロー比をアップした場合の製膜安定性に優れ、得られたフィルムの物性、特に透明性、透視性、耐ブロッキング性、開口性、滑り性、耐傷つき性、MDとTDの機械物性バランス、耐衝撃性に優れる水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
特定の分子量分布および結晶性分布を有するメタロセン触媒で重合したポリプロピレン系樹脂に、ある特定の性状を有する合成シリカおよび滑剤を配合した組成物よりなるフィルムが上記課題を達成することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記成分(1)、成分(2)及び成分(3)を含有することを特徴とする水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物である。
【0006】
成分(1):下記(a)〜(d)の特性を有するメタロセン触媒で重合された結晶性ポリプロピレン100重量部
(a)メルトフローレート(MFR)が2.0〜20g/10分
(b)示差走査熱量計(DSC)で求めた融点(TP)が110〜150℃
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、20重量%抽出される温度(T20)と80重量%抽出される温度(T80)の差:(T80−T20)が4〜10℃
(d)Q値が2.6〜3.8
成分(2):下記(e)〜(h)の特性を有する合成シリカ0.1〜0.7重量部
(e)コールターカウンター計測による平均粒子径が1.0〜5.0μm
(f)細孔容積が0.9〜1.7ml/g
(g)吸油量が180〜320ml/100g
(h)かさ比重が0.13〜0.30g/ml
成分(3):融点95℃以下の脂肪酸アミド 0.05〜0.7重量部
【0007】
【発明の実施の形態】
成分(1)結晶性ポリプロピレン
メルトフローレート(MFR)は2.0〜20g/10分、好ましくは2.5〜18g/10分、より好ましくは3.0〜15g/10分である。MFRが上記範囲より低い場合表面性状に不良を生じる為好適な生産性が得られず、上記範囲より高い場合、製膜時にバブルの揺れが発生し安定して製膜できない。ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、触媒量、分子量調節剤としての水素の供給量など適宜調節する方法がとられる。
【0008】
示差走査熱量計(DSC)で求めた融点TP(℃)が110〜150℃、好ましくは115〜148℃、より好ましくは120〜146℃である。TPが上記範囲より低い場合、好適な耐ブロッキング性が得られず、上記範囲より高い場合には透明性が悪化する。ポリマーのTPを調節するには、通常コモノマー量を適宜調節する方法がとられる。コモノマーのα―オレフィン含有量が多くなるとTPは低下する方向となる。
【0009】
温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線の20重量%抽出される温度T20と80重量%抽出される温度T80の差(T80−T20)が4〜10℃である必要がある。T80−T20は、好ましくは4.5〜9℃である。T80−T20の差が上記範囲より大きい場合は透明性、透視性が悪化する。上記範囲未満ではブロー比をアップした場合の製膜安定性が悪化する。
ポリマーのT80−T20は、ポリマー中へのコモノマーの挿入の均一性を表す尺度として用いている。これはメタロセン触媒を使用して重合したことに起因しており、チーグラーナッタ触媒ではこのようなポリマーを製造することは困難である。
【0010】
Q値とは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。本発明においては、結晶性ポリプロピレンのQ値は、2.6〜3.8、好ましくは2.7〜3.7、より好ましくは2.8〜3.6である。メタロセン触媒を使用して重合したポリプロピレン重合体であっても、Q値が上記範囲より低いとブロー比をアップした場合の製膜安定性に劣る。上記範囲より高いと透明性および透視性悪化、フィルム引取方向(MD)とフィルム引取方向に対して直角方向(TD)の機械物性のバランスが悪化、衝撃強度が弱くなる。
【0011】
本発明の結晶性ポリプロピレンは上記要件を満たすものであれば、何ら限定されるものではない。本発明の結晶性ポリプロピレンはプロピレン単独重合体であってもプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であってもあるいはこれらの混合物であってもよい。プロピレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンはプロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。
【0012】
結晶性ポリプロピレンの製造
本発明に用いる樹脂組成物を構成する結晶性ポリプロピレンは、次に示す触媒成分(A)、触媒成分(B)、並びに、必要に応じて用いられる触媒成分(C)からなるメタロセン触媒の存在下でプロピレンを重合またはプロピレンとα−オレフィンとを共重合させることによって製造されるものである。
【0013】
触媒成分(A)は 一般式(1)で示されるメタロセン化合物である。
【0014】
【化1】
【0015】
(ここで、Qは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。Meはジルコニウムまたはハフニウムを示す。XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。R1およびR2は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示す。隣接する2個のR1または2個のR2がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。aおよびbは0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。ただし、R1およびR2を有する2個の五員環配位子は、基Qを介しての相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対称である。)
【0016】
Qは、例えば(イ)炭素数1〜20、好ましくは1〜6のアルキレン基、(ロ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基を有するシリレン基、(ハ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基を有するゲルミレン基がある。なかでもアルキレン基、シリレン基が好ましい。
【0017】
XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよくて、(イ)水素、(ロ)ハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素)、(ハ)炭素数1〜20の炭化水素基、(ニ)炭素数1〜20のアルコキシ基、(ホ)炭素数1〜20のアルキルアミド基、(ヘ)炭素数1〜20のリン含有炭化水素基、(ト)炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基または(チ)トリフルオロメタンスルホン酸基を示す。
【0018】
R1およびR2は、共役五員環配位子上の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数2〜20のリン含有炭化水素基、炭素数2〜20の窒素含有炭化水素基または炭素数2〜20のホウ素含有炭化水素基を示す。これらの置換基は、側鎖にさらに置換基を有していてもよい。また、隣接する2個のR1同士または2個のR2同士が、それぞれω−端で結合して、シクロペンタジエニル基の一部と共に環を形成していてもよい。そのような場合の代表例としてはシクロペンタジエニル基上の隣接する2つのR1(あるいはR2)が当該シクロペンタジエニル基の二重結合を共有して縮合六員環を形成しているもの(すなわちインデニル基および置換インデニル基、およびフルオレニル基および置換フルオレニル基)および縮合七員環を形成しているもの(すなわちアズレニル基および置換アズレニル基)がある。好ましくは、1つあるいは2つのシクロペンタジエニル基上の隣接する2つのR1あるいはR2が縮合七員環を形成していることが望ましい。
【0019】
上記メタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。なお、これらの化合物は、単に化学的名称のみで示称されているが、その立体構造が本発明で言う非対称性を持つものであることはいうまでもない。また、ジルコニウム化合物のみ例示したが、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。
【0020】
(1)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、(2)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(3)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(4)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(5)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(6)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(7)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(8)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(9)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(10)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(11)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、(12)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(13)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(14)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(15)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(16)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(17)ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−フェナンスリル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、(18)ジメチルシリレンビス{1−(2−ジメチルボラノ−4−インドリル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、(19)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4、5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、(20)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0021】
本発明の触媒成分(B)としては、次の(b−1)〜(b−4)から選ばれた成分が望ましい。
(b−1)アルミニウムオキシ化合物、
(b−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体、
(b−3)固体酸微粒子、
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩。
【0022】
(b−1) アルミニウムオキシ化合物としては、メチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等のいわゆるアルモキサンが例示できる。アルミニウムオキシ化合物は、微粒子状担体に担持されていてもよい。微粒子状担体としては、無機または有機の化合物から成る微粒子状担体が例示できる。無機担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ塩化マグネシウム、活性炭、無機珪酸塩等が挙げられる。あるいは、これらの混合物であってもよい。有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ベンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンの重合体、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和炭化水素の重合体等から成る多孔質ポリマーの微粒子担体が挙げられる。あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0023】
(b−2) 成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物のカチオンとの錯化物等が挙げられる。また、ルイス酸、特に成分(A)をカチオンに変換可能なルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等が例示される。あるいは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等の金属ハロゲン化合物等が例示される。微粒子状担体は上述のものを適宜利用できる。
【0024】
(b−3) 固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ等の微粒子が挙げられる。
(b−4) イオン交換性層状珪酸塩は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有するイオン交換が可能なものを示称する。イオン交換性層状珪酸塩の好ましい具体例としては、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族が挙げられる。イオン交換性層状珪酸塩には化学処理を施すことが好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、塩類処理、酸処理、アルカリ処理、有機物処理などが挙げられる。イオン交換性層状珪酸塩として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が1重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
成分Bとしては、(b−4)が好ましい。
【0025】
本発明の触媒成分(C)は、有機アルミニウム化合物であり、下記一般式
(AlR4 nX3-n)m
で示される化合物が適当である。この式中、R4は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。nは1〜3の、mは1〜2の整数である。成分(C)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。
【0026】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク法、溶液法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーを実質的にガス状に保つ気相法を採用することができる。特に気相法によって製造された結晶性ポリプロピレンにおいて顕著な効果を奏するものである。
【0027】
成分(2)合成シリカ
本発明のポリプロピレン樹脂組成物に用いられる成分(2)の合成シリカは、以下に示す(e)〜(h)の特性を満たすものである。
(e)平均粒子径
本発明で用いる合成シリカの平均粒子径は、1.0〜5.0μm、好ましくは1.5〜4μmである。平均粒子径が1.0μm未満では、得られるフィルムの滑り性、ブロッキング性、開口性が劣り好ましくない。一方、5.0μmを越えると、透明性、傷つき性が著しく劣り好ましくない。ここで平均粒子径は、コールターカウンター計測による値である。
【0028】
(f)細孔容積
細孔容積は、0.9〜1.7ml/g、好ましくは1.0〜1.5ml/gである。細孔容積が0.9ml/g未満では合成シリカが硬くなり傷つき性が悪く、1.7ml/gを越えるとプロピレン重合体パウダー粒子と混合時にシリカ粒子同士で凝集しやすい。細孔容積は、合成シリカの一次粒子の構造を示すものと考えられ、この値が大きければ一次粒子は高い表面エネルギーを有し、プロピレン重合体との混合時に凝集を生じやすい。ここで、細孔容積は窒素吸着法で測定した値である。
【0029】
(g)吸油量
吸油量は、180〜320ml/100g、好ましくは200〜310ml/100gである。吸油量が180ml/100g未満ではシリカが硬くなり傷つき性が悪く、320ml/100gを越えるとプロピレン重合体パウダー粒子と混合時にシリカ粒子同士で凝集しやすい。吸油量は、細孔容積同様にシリカの構造を示すが、油の吸油量といった性質から、主に三次元凝集構造に起因する性質と考えられる。すなわち、この値が大きければ、合成シリカ単体が凝集体として存在する傾向が大きいことを意味する。ここで、吸油量はJIS−K5101−21に準拠して測定された値である。
【0030】
(h)かさ比重
かさ比重は、0.13〜0.30g/ml、好ましくは0.15〜0.28g/mlである。0.13g/ml未満ではプロピレン重合体パウダー粒子と混合する際に、シリカ粒子同士で凝集しやすいので好ましくない。0.30g/mlを越えると合成シリカが硬くなり傷つき性が悪くなる。ここで、かさ比重は、JIS−K6220−6.8に準拠して測定された値である。
【0031】
上記(e)〜(h)の特性を有する合成シリカの製造法は特に限定されない。例えば、湿式法、乾式法など従来公知のいずれかの方法をとることができる。特に湿式法は物理的な性状の制御が容易であり好ましい。湿式法合成シリカは、高純度珪砂を原料とした珪酸ソーダと硫酸を混合してケイ酸ゾルを生成した後、一次粒子を形成し、ゾル−ゲル重合反応により三次元シリカ凝集体を形成することにより得られる。この過程において、一次粒子の生成条件を変えることにより、所望の性状を有する合成シリカが得られる。天然に産出するシリカは、上記のような性状を得ることが難しく不適である。かかる特定の性状を有する、本発明に用いられる合成シリカは市販品を用いることもできる。
本発明に用いることが出来る合成シリカは、その結晶構造に二酸化ケイ素が40重量%以上、好ましくは50〜100重量%含有するものである。ケイ素以外の元素として、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの成分を、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカルシウムなどの形で含有するものであってもよい。
【0032】
合成シリカは、上記特性(性状)を満たす範囲において、各種表面処理剤、例えば、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッ素樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩、pH調整剤、有機安定剤などによる処理を施すことでができる。特に有機酸処理、なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬等公知の方法を採用することができる。
【0033】
また、合成シリカの微細形状は、いかなる形状であっても良く、球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状など任意の形状とすることができる。好ましくは、球状、不定形状のものが物性バランス、分散性が良い。特に好ましくは不定形状のものが良好である。
【0034】
前記合成シリカの配合量は、結晶性ポリプロピレン100重量部に対して0.1〜0.7重量部、好ましくは0.15〜0.6重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量部である。配合量が上記範囲未満では、フィルムのアンチブロッキング性、滑り性、開口性が劣る。上記範囲を超えるとフィルムの透明性を損なうことになる。
【0035】
本発明において脂肪酸アミドは主に滑剤として作用し、開口性、滑り性、耐ブロッキング性などに寄与する。本発明に効果のある脂肪酸アミドとしては、 融点が95℃以下であれば、特に限定されるものではなく、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミドのいずれも使用することができるが、特に不飽和脂肪酸アミドが好ましい。不飽和脂肪酸アミドとしては、C18〜C22の不飽和脂肪酸アミドを用いることができる。具体的には、例えばオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ブライジン酸アミド、エライジン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、N−(2−ハイドロキシエチル)ラウリン酸アミド等を主成分とするものが例示される。
脂肪酸アミドの融点は95℃以下、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜80℃の範囲のものが用いられる。融点が95℃を越えるものは、水冷インフレフィルムの製膜直後の開口性が悪いため好ましくない。
【0037】
脂肪酸アミドの配合量は、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、0.05〜0.7重量部、好ましくは0.15〜0.5重量部、より好ましくは0.25〜0.4重量部である。上記範囲未満では開口性、アンチブロッキング性、滑り性が劣る。上記範囲を超えると、脂肪酸アミドの浮き出しが過剰となり、透明性が悪化する。
【0038】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えば造核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、エラストマーなどを配合することができる。配合は通常溶融混練機を用いて190〜350℃で加熱溶融混練し、粒状に裁断されたペレット状態で水冷インフレーションフィルム成形材料として提供される。
【0039】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなるフィルムは、上述のポリプロピレン樹脂組成物を押出機及び円形ダイスを用いて溶融押し出し、溶融チューブ内にに空気を入れ膨張させつつ水槽に導入し、急冷する水冷インフレーション成形法により製膜される。尚、水冷インフレーション法の条件は特に限定しないが、下向きにブローし、内部に閉じこめた水で冷却したり、サイジングリンクや水槽式の水冷リングなどを用いて水冷する方式が挙げられる。円形ダイスの溶融押し出し部のクリアランスは(以下リップ幅と称する)は、0.5〜1.5mmの範囲が好ましく、0.7〜1.2mmの範囲が特に好ましい。成形温度は190〜280℃、好ましくは200〜230℃で、水冷する水温は10〜60℃、好ましくは15〜40℃である。ブロー比は1.0〜2.0の範囲、好ましくは1.0〜1.5の範囲である。製膜速度は5〜50m/分、好ましくは10〜40m/分である。
該フィルムの厚みは通常5〜500μm程度である。またフィルムは単層での使用だけでなく、共押出製膜法による複層フィルムにも好適に使用できる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例における、樹脂物性の試験法、フィルム物性の試験法は下記の通りである。また、実施例・比較例で使用したポリプロピレン樹脂原料の物性を表1に、合成シリカの物性を表2に、脂肪酸アミド(滑剤)の物性を表3にまとめた。
【0041】
<ポリプロピレン樹脂物性の試験法>
(1)メルトフローレート(MFR)の測定法
温度230℃、荷重21.18Nの条件下でJIS−K6921−2付随書に準拠し測定した。
(2)示差走査熱量計(DSC)で求めたTPの測定法
セイコー社製DSCを用い、サンプル量5mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線の主ピーク位置を、DSCで求めた融点TPとした。
【0042】
(3)温度上昇溶離分別(TREF)測定
不活性担体を充填したカラムに、ポリマーを溶媒に完全溶解させて供給した後に所定の冷却速度で0℃まで冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を形成させ、保冷した後に、温度を所定の条件で昇温して、その温度までに溶出したポリマー量を連続的に測定し、その溶出量と溶出温度との関係を表す曲線を得た。全溶出量に対する、低温側からの積算溶出量が20重量%となる温度をT20、80重量%となる温度をT80とした。測定条件は次の通り。
【0043】
(4)Q値の測定法
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)をQ値とした。測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
カラム:昭和電工社製AD80M/S 3本
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0044】
(5)製膜性
後述する方法でインフレーションフィルムを成形する際、各ブローアップ比での製膜安定性を目視で評価した。評価基準は以下の通り。
○:バブルの振れがなく安定製膜可能
△:バブルがわずかに振れるが製膜は問題ない
×:バブルが振れて安定製膜できない
【0045】
<フィルム物性の試験法>
(1)開口性
フィルム製膜直後および10分後のフィルムの開口性を下記の判定基準で評価した。
◎:軽く振れるだけで開く
○:普通に指でひねって1回で開く
△:強く指でひねれば1回で開く
×:強く指でひねってもほとんど開かない
【0046】
(2)ヘイズ(Haze)
JIS−K7136−2000に準拠してへーズメータにて測定した(単位%)。この値が小さいほど透明性が優れていることを意味する。
(3)狭角拡散透過光値(LSI)
東洋精機製作所社製の視覚透明度試験機を用いて測定した。
LSIとは小角度の光散乱量を測定したもので、包装内容物をより鮮明に見せるための透視性の目安として用いる。この値が小さいほど透視性がよい、つまり内容物が鮮明に見える。
【0047】
(4)耐ブロッキング性
フィルムより2cm(幅)×15cm(長)の試料フィルムを採り、内面同士をそれぞれ長さ5cmにわたり重ね(接触面積10cm2)、50g/cm2の荷重下で温度40℃の雰囲気下に24時間状態調整した後、荷重を除き、23℃の温度に十分調整した後ショッパー型引張試験器を用いて500mm/分の速度で試料のせん断剥離に要する力を求めた(単位:g/10cm2)。この値が小さいほど耐ブロッキング性が良いことを意味する。
【0048】
(5)静摩擦係数
フィルムを温度40℃の雰囲気下に24時間状態調整した試料フィルムをASTM−ZD1894−90に準拠して、試料フィルムの内面同士の摩擦をスリップテスター法にて静摩擦係数で評価した。この値が小さいほど滑り性が優れていることを意味する。
【0049】
(6)傷つき性
一辺7.5cmの正方形のスリップテスター用そり(200g)に冷却ロール面が外側になるよう樹脂フィルムを巻き付け、また別の樹脂フィルムを、上が冷却ロール面になるようにスリップテスターに設置した。そして、スッリプテスター上の樹脂フィルムの上に樹脂フィルムを巻き付けたスッリプテスター用そりを載せ、そり上に3kgの荷重を載せた。そしてスリップテスター上で、荷重をかけた状態でそりを長さ30cm、往復30回滑らした(フィルムの冷却ロール間で滑らせる)。同操作を4回行い、そりに巻き付けた試料フィルムを4枚採取し、その4枚を重ね合わせ、滑らせる前および滑らせた後の4枚重ね合わせたHazeの変化量を測定し、傷つき性の尺度とした(単位%)。この値が小さいほど耐傷つき性が優れていることを意味する。
【0050】
(7)衝撃強度
東洋精機製作所社製フィルムインパクトテスターを用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で測定を行った。貫通部は25.4mmφの半球型金属製のものを用いた。
【0051】
(8)1%引張弾性率
ISO−R1184に準拠して、MDおよびTD方向の1%引張弾性率を測定した。
【0052】
(9)フィッシュアイ(FE)
アンチブロッキング剤の凝集物による0.1mm径以上のブツ(固形物)を目視にて数えた(単位:個/m2)。FEの数が少ない方が、アンチブロッキング剤の分散が良いことを意味する。
【0053】
<結晶性ポリプロピレンの製造例1>
(1)メタロセン化合物の合成
(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムの合成は特開平11−240909号公報に記載の方法で合成した。
1−ブロモ−4−クロロベンゼン1.84g(9.6mmol)のn−ヘキサン(10ml)とジエチルエーテル(10ml)との溶液に−78℃でt−ブチルリチウムのペンタン溶液(1.64M)11.7ml(19.2mmol)を滴下した。得られた溶液を−5℃で1.5時間攪拌後、この溶液に2−メチルアズレン1.2g(8.6mmol)を添加して反応を行った。この反応溶液を徐々に室温まで戻しながら1.5時間攪拌した。その後、反応溶液を0℃に冷却し、1−メチルイミダゾール15μl(0.19mmol)を添加し、更に、ジクロロジメチルシラン0.52ml(4.3mmol)を添加した。反応溶液を室温で1.5時間攪拌後、希塩酸を添加して反応を停止し、分液した有機相を減圧下に濃縮し、ジクロロメタンを添加した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、アモルファス状の固体2.1gを得た。
次に、上記の反応生成物1.27gをジエチルエーテル15mlに溶解し、これに−78℃でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.66M)2.8ml(4.5mmol)を滴下した。滴下終了後、反応溶液を徐々に室温まで戻しながら12時間攪拌した。減圧下に溶媒を留去した後、トルエンとジエチルエーテルの混合溶媒(40:1)5mlを添加して−78℃に冷却し、これに四塩化ジルコニウム0.53g(2.3mmol)を添加した。その後、直ちに室温まで戻し、室温で4時間攪拌して反応を行った。得られた反応液をセライト上で濾過し、濾別された固体をトルエン3mlで洗浄して回収した。回収した固体をジクロロメタンで抽出し、抽出液から溶媒を留去し、ラセミ・メソ混合物906mg(収率56%)を得た。
ジクロロメタン20mlに上記のラセミ・メソ混合物900mgを溶解し、100Wの高圧水銀灯を40分照射することによりラセミ体の比率を高め、その後、不溶分を濾別し、回収した濾液を濃縮乾固した。次いで、得られた固体成分をトルエン22mlと共に攪拌し、静置後に上澄み液を除去した。斯かる精製操作を4回繰り返し、残った固体成分を乾燥し、(r)−ジクロロジメチルシリレンビス[{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ジルコニウム275mgを得た。
【0054】
(2)化学処理イオン交換性層状珪酸塩の調製
10リットルの攪拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を、洗浄液(ろ液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は、705gであった。得られたイオン交換性層状ケイ酸塩の組成(モル)比は、Al/Si=0.129、Mg/Si=0.018、Fe/Si=0.013であった。
さらに、10リットルの攪拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水1.72リットル、続いて硫酸リチウム1水和物(700g)を加えて溶液とした後、上記で得たイオン交換性層状ケイ酸塩を加えた。このスラリーを室温で240分攪拌した。このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この操作を3回繰り返した。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は、695gであった。得られたイオン交換性層状ケイ酸塩の組成(モル)比は、Al/Si=0.127、Mg/Si=0.020、Fe/Si=0.013、Li/Si=0.018であった。
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機によりさらに乾燥を実施した。乾燥機の仕様、条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加湿帯550mm(電気炉)、かき上げ翼付き回転数:2rpm、傾斜角;20/520、珪酸塩の供給速度;2.5g/分、ガス流速;窒素、96リットル/時間、向流
乾燥温度:200℃(粉体温度)
【0055】
(3) 固体触媒の調整
内容積13リットルの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.20kgとトルエンを含むヘプタン(以下、混合ヘプタンという。)0.74リットルの混合物を導入し、さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.04M)1.26リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、混合ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。
(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2.18g(3.30mmol)にトルエンを0.80リットル加え、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ミリリットル加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5.0リットルに調整した。
続いて、温度40℃にて、プロピレンを100g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合した。
予備重合終了後、残モノマーをパージした後、触媒を混合ヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液0.17L添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥した予備重合触媒0.60kgを得た。
【0056】
(4)重合
内容積200lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これにトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液500ml(0.12mol)、エチレン1.22kg、水素5.2NLを加え、内温を30℃に維持した。次いで、上記予備重合触媒成分1.2gをアルゴンで圧入して重合を開始させ、30分かけて70℃に昇温し、温度を一定に保ちながらさらに1時間重合を行った。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、表1の物性を有するプロピレン・エチレンランダム共重合体(PP1)を得た。
【0057】
<結晶性ポリプロピレンの製造例2>
PP1の製造例において、エチレン2.25kg、水素8.0NLとする以外は、同様の操作で重合を行なった。表1の物性を有するプロピレン・エチレンランダム共重合体(PP2)を得た。
【0058】
<結晶性ポリプロピレンの製造例3>
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブをプロピレンで十分に置換した後、脱水・脱酸素したノルマルヘプタン60Lを導入し、ジエチルアルミニウムクロリド16g、三塩化チタン触媒(エム・アンド・エム社製)4.1gを50℃でプロピレン雰囲気下で導入した。更に気相水素濃度を6.0容量%に保ちながら、50℃の温度で、プロピレン5.7kg/時及びエチレン0.28kg/時の速度で4時間フィードした後、更に1時間重合を継続した。その後、残ガスをパージし、生成物を濾過・乾燥して、表1に示す様なプロピレン・エチレン共重合体(PP3)12kgを得た。
【0059】
<結晶性ポリプロピレンの製造例4>
(1)固体触媒の調製
十分に窒素置換したフラスコに脱水及び脱酸素したn−ヘプタン200ミリリットルを導入し、ついでMgCl2を0.4モル、Ti(O−n−C4H9)4を0.8モル導入し、95℃に保ちながら2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークス)を48ミリリットル導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、十分に窒素置換したフラスコに生成したn−ヘプタンを50ミリリットル導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.24モル導入した。さらに、n−ヘプタン25ミリリットルSiCl4を0.4モルを混合して30℃に保ちながら60分間かけてフラスコへ導入し、90℃で3時間反応させた。これに、さらにn−ヘプタン25ミリリットルにフタル酸クロライド0.016モルを混合して、90℃に保ちながら30分間かけてフラスコに導入し、90℃で1時間反応させた。
反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでこれらにSiCl4を0.24ミリモルを導入して、100℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで十分洗浄した。十分に窒素置換したフラスコに十分精製したn−ヘプタン50ミリリットルを導入し、次いで上記で得た固体成分を5グラム導入し、さらに(CH3)3CSi(CH3)(OCH3)2を0.81ミリリットル、30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで洗浄した。さらに、プロピレンをフローさせて予備重合を実施し、固体触媒を得た。
【0060】
(2)重合
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、精製したn−ヘプタン60リットルを導入し、これにトリエチルアルミニウム15g、上述の固体触媒2.0g(予備重合ポリマーを除いた量として)を55℃でプロピレン雰囲気下に導入した。その後、60℃に昇温し、ここで気相部水素濃度を5.8容量%に保ちながらプロピレンを5.8kg/時間のフィード速度で導入した。さらに10分後、エチレンを240g/時間の速度で導入して6時間重合を実施した。その後、全モノマーの供給を停止し1時間重合を継続した。その後、ブタノールにより触媒を分解し、生成物のろ過、乾燥を行って、エチレン含量が4.1重量%、MFRが8.3dg/min、融点が137.9℃のプロピレン−エチレンランダム共重合体(PP4)29.6kgを得た。
【0061】
<結晶性ポリプロピレンの製造例5>
(1)担持メタロセン触媒の調製
シリカゲル担持メチルアルミノキサン(MAO on SiO2、ウイットコ社製、25重量%−Al品)10gにrac−ジメチルシリレンビス−1−(2−メチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液100ml(0.005mmol/mlトルエン溶液)を加え、室温で30分間撹拌した。次にその反応混合物を濾過し、得られた固体をトルエン50mlで2回洗浄後、減圧下乾燥させることによりシリカゲルに担持されたメタロセン触媒を得た。触媒1g当たり0.045mmolのメタロセン化合物が担持されていた。
【0062】
(2)重合
内容積200リットルの重合槽にプロピレンを60kg装入し、トリイソブチルアルミニウム61.2mmolを導入した。水素ガスを導入後、重合槽の内温を55℃に昇温した。次いでエチレンを導入し、前記のシリカゲルに担持されたメタロセン触媒2gを装入した。続いてオートクレーブの内温を60℃まで昇温し、エチレンガスおよび水素ガスの濃度を一定に保つように供給しながら2時間重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、70℃で1時間乾燥を行うことによりプロピレン−エチレンランダム共重合体(PP5)15kgを得た。
【0063】
以上の<結晶性ポリプロピレンの製造例1>ないし<結晶性ポリプロピレンの製造例5>で得られた各重合体について、各物性値を表1にまとめた。
【0064】
【表1】
【0065】
以下の実施例・比較例で使用した合成シリカの物性を表2にまとめた。
なお、表2で使用した略号の意味は次の通りである。
SB45 :グレースデビソン社製、クエン酸処理シリカ(サイブロック45)
P707 :水澤化学工業社製(ミズカシルP707)
P73 :水澤化学工業社製(ミズカシルP73)
SY550:富士シリシア化学社製(サイシリア550)
BZ200:日本シリカ工業社製(ニップジェルBZ−200)
P705 :水澤化学工業社製(ミズカシルP705)
P50 :水澤化学工業社製(ミズカシルP50)
【0066】
【表2】
【0067】
以下の実施例・比較例で使用した脂肪酸アミド(滑剤)の銘柄・物性を表3にまとめた。
【0068】
【表3】
【0069】
<実施例1>
PP1のパウダー100重量部に対して、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名イルガノックス1010)を0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名イルガフォス168)を0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(耕正製、商品名Ca−St)を0.05重量部、及び表4に示す添加剤(合成シリカ及び滑剤)を配合して、ヘンシェルミキサーにて750rpm、2分間混合した。次いで得られた混合物を、池貝製作所社製の二軸押出機(PCM、スクリュー径30mm)を用い、押出温度230℃にて造粒を行った。
得られたペレットを使用し、山口製作所社製水冷インフレーション成形機(スクリュー径40mm、ダイス径100mm、リップ幅1.0mm)で製膜した。製膜条件は、押出温度200℃、水温22℃、水冷マンドレルの径120mm、ブロー比1.2、製膜速度23m/分として、厚み30μmのチューブ状単層フイルムを得た。
各成分の配合処方、ブロー比及び製膜性を表4に、得られたフィルム物性を表5に示した。製膜性、開口性に優れ、フィルム物性は各項目ともバランスよく満足すべきものであった。
【0070】
<実施例2>
実施例1において、水冷マンドレルの径を150mm(ブロー比1.5)とした以外は同様にして厚み30μmのチューブ状単層フイルムを得た。得られたフィルム物性を表5に示した。製膜性、開口性に優れ、フィルム物性は各項目ともバランスよく満足すべきものであった。
【0071】
<実施例3〜11>
ポリプロピレン樹脂パウダー及び各種配合剤の種類、ブロー比などを表4の通りとして、実施例1と同様にして製膜した。得られたフィルム物性を表5に示した。製膜性、開口性に優れ、フィルム物性は各項目ともバランスよく満足すべきものであった。
【0072】
<比較例1〜11>
ポリプロピレン樹脂パウダー及び各種配合剤の種類、ブロー比などを表6の通りとして、実施例1と同様にして製膜した。得られたフィルム物性を表7に示した。
比較例1及び2においては、使用したポリプロピレン樹脂の分子量分布・結晶性分布が広いため、フィルムの透明性と透視性が悪い。また、分子量分布が広いためMD/TDの剛性のバランスが悪く、かつ耐衝撃強度が低い。
比較例3及び4においては、使用したポリプロピレン樹脂の結晶性分布が広いため、フィルムの透明性と透視性が悪い。
比較例5及び6においては、使用したポリプロピレン樹脂の分子量分布が狭いため、ブロー比を上げた際にバブルが安定せず製膜できない。
比較例7においては、合成シリカの細孔容積及び吸油量が共に小さく、フィルムの傷つき性に劣る。
比較例8においては、合成シリカの細孔容積及び吸油量が共に大きく、フィルムの開口性に劣る。また、シリカの樹脂への分散性が悪く(FEが多い)、ブロッキング性、滑り性に劣る。
比較例9においては、合成シリカのかさ比重が小さいので、フィルムの開口性に劣る。また、シリカの樹脂への分散性が悪く(FEが多い)、ブロッキング性、滑り性に劣る。
比較例10においては、合成シリカの平均粒子径が大きいため、フィルムのヘイズ(透明性)に劣り、傷つき性に劣る。
比較例11においては、融点の高い飽和脂肪酸であるため、フィルム表面への移行がしにくく、開口性が劣る。特に製膜直後の開口性が劣る。
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は水冷インフレーションフィルム用に好適である。製膜安定性に優れ、かつ得られたフィルムは、透明性、透視性、開口性、滑り性、耐ブロッキング性、耐傷つき性、MDとTDの機械物性バランス、耐衝撃性に優れている。食品や一般雑貨の包装用フィルム等として有用である。
Claims (6)
- 下記成分(1)、成分(2)及び成分(3)を含有することを特徴とする水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
成分(1):下記(a)〜(d)の特性を有するメタロセン触媒で重合された結晶性ポリプロピレン100重量部
(a)メルトフローレート(MFR)が2.0〜20g/10分
(b)示差走査熱量計(DSC)で求めた融点(TP)が110〜150℃
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、20重量%抽出される温度(T20)と80重量%抽出される温度(T80)の差:(T80−T20)が4〜10℃
(d)Q値が2.6〜3.8
成分(2):有機酸で処理されたものであり、下記(e)〜(h)の特性を有する合成シリカ0.1〜0.7重量部
(e)コールターカウンター計測による平均粒子径が1.5〜4μm
(f)細孔容積が0.9〜1.7ml/g
(g)吸油量が180〜320ml/100g
(h)かさ比重が0.13〜0.30g/ml
成分(3):融点95℃以下の脂肪酸アミド 0.05〜0.7重量部 - 成分(1)のメタロセン触媒が下記成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて成分(C)で構成されることを特徴とする請求項1記載の水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
成分(A):メタロセン化合物
成分(B):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種
(b−1)アルミニウムオキシ化合物
(b−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物 - 有機酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1記載の水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
- 成分(3)の脂肪酸アミドが、不飽和脂肪酸アミドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
- 脂肪酸アミドの融点が、30〜90℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物を水冷インフレーション法で製膜して成るフィルム。
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JP2001278831A JP4989828B2 (ja) | 2001-09-13 | 2001-09-13 | 水冷インフレーションフィルム用ポリプロピレン樹脂組成物 |
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