JP4009482B2 - シ−ト成形用プロピレン系複合樹脂組成物を用いて得られる容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン系重合体と無機フィラ−からなるシ−ト成形用プロピレン系複合樹脂組成物を用いた容器に関するものであり、剛性、耐熱性等に優れ、特にシ−ト成形におけるメヤニの発生が少なく、かつ熱成形性に優れ、成形サイクル短縮が可能となり、さらに臭気の少ない容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロピレン系重合体と無機フィラ−からなるプロピレン系複合樹脂シートは、剛性、耐熱性、耐油性等に優れ、さらに、焼却時の燃焼カロリ−も樹脂単体に比べて低く環境負荷が低いことから、これを二次成形(真空成形、圧空成形等)に供することによって各種容器、カップ、トレーなどの熱成形製品として広く用いられている。
【0003】
しかし、タルク等の無機フィラ−とプロピレン系重合体とを配合してシ−ト成形する場合に、無機フィラ−の触媒作用によって樹脂の劣化が促進され、シ−トの臭気が悪化する、あるいは、ダイス口に劣化物がメヤニや発煙となって発生することが多い。
【0004】
特に、食品向けの容器やトレ−においては、臭気クレ−ムやダイス口に付着して成長したメヤニが脱落して、原反シ−トの表面に付着してコンタミや穴あきのクレ−ムが発生する問題があった。これらの問題に対して現在、酸化防止剤処方を適正にする方法や、無機フィラ−として純度を高めたり、無機フィラ−の表面を安定化処理したものを選定して用いたり、樹脂と無機フィラ−とを、例えば、不活性ガスシ−ル下で混合する等、方法や手順を工夫する方法が取られている。
【0005】
さらにメヤニ対策としては、シ−トを多層化して表面に無機フィラ−を配合していない樹脂でもってスキン層を形成する工夫も採られている。しかし、いずれも設備面の改造や投資を要したり、工程数が増えることになり、コストアップを伴なわずには対応できない問題がある。
【0006】
また、プロピレン系樹脂シートを真空成形等で容器やカップ、トレ−に熱成形する場合には、プロピレン系樹脂自体がポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂等の他の樹脂と比較すると、温度変化に対して軟化・融解挙動が急激に起きることから、予熱時の加熱によるタレ(ドローダウン、垂れ下がり)が大きくなりやすいという問題がある。無機フィラ−を配合することによって多少改善されるものの、今度は成形品にシワや偏肉、或いは、穴が発生しやすいという容器成形性の上での欠点があった。
【0007】
このポリプロピレン樹脂シートのタレを改良する技術として、ポリプロピレン樹脂にポリエチレン樹脂をブレンドする―般的方法(特開昭52−136247号公報、特開昭55−108433号公報、特公昭63−30951号公報)、ポリプロピレン樹脂に無機フィラーと無水マレイン酸変性ポリオレフィン、或いはシラン変性ポリオレフィン等を配合してなる組成物を用いる方法(特開昭51−69553号公報、特開昭52−15542号公報)、ポリオレフィンに繊維状ポリテトラフルオロエチレンを添加する方法(特開平8−165358号公報)、ビスマレイミドを添加する方法(特開平3−52493号公報)等が提案されている。
【0008】
しかし、近年は、プロピレン系樹脂原料にリサイクル材(例えば容器成形後に発生するスケルトンを粉砕後再造粒したもの等)を30〜50重量%程度混合して使用するなど、原料中のリサイクル材の割合が増加する傾向にあり、しかも衛生面やハンドリング性を考慮した嵌合容器などの嵌合品の製造の場合においては、所定の製品形状を高精度で得る必要があるために、従来の加熱時間より2倍以上長く加熱される。
【0009】
このような状況下ではいずれもタレが更に大きくなる傾向があり、上述の提案のように、ポリエチレンを単純にブレンドする方法やビスマレイミドを添加する方法はタレ性の改良が十分とは言えず限界があった。また、ポリオレフィンに繊維状ポリテトラフルオロエチレンを添加する方法は、透明性はあるものの、剛性や耐熱性、あるいは収縮性が劣るため、内容量の大きい容器や定寸法容器等の製造に限界があった。
【0010】
さらに近年、冷凍食品や電子レンジ加熱食品の増加に伴い、残留歪みの少ない真空成形の嵌合容器や深絞り容器が広く求められている。このため、容器生産の現場からは、真空成形等の熱成形における成形性を向上させるために、よりタレにくいシート材、あるいは、より短時間で成形できるシ−ト材が強く望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プロピレン系重合体をフィラ−と複合することによって本来改良される剛性、耐熱性に加えて、シ−ト成形におけるメヤニの発生が少なく、かつ熱成形においてタレ特性に優れ、成形サイクルの短縮が可能となり、さらに臭気の少ない容器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、プロピレン系重合体に含まれる特定成分が、無機フィラーとの作用によってメヤニや臭いの主因となること、分子量分布が広いにも拘わらず、Tm−Tcが小さいプロピレン系重合体と無機フィラーとの樹脂組成物がタレを抑制でき、成形サイクル短縮に効果的であることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の条件(1)〜(4)を満たすプロピレン系重合体と無機フィラ−とからなるシ−ト成形用プロピレン系複合樹脂組成物を成形してなるプロピレン系複合樹脂シートを熱成形して得られる容器を提供するものである。
(1)頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部の、13C−NMRで測定したアイソタクチックトリアッド分率(PPP[mm])が97%以上であること。
(2)Q値が3.0以上であること。
(3)23℃におけるキシレン可溶分量(CXS、重量%)と、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレイト(MFR)とが、下記式(1)を満たすこと。
【0014】
CXS<0.5×[E]+0.2×log(MFR)+0.5 式(1)
(ここで[E]はコモノマー含量(重量%)を表す)
(4)DSCから求めた融解ピーク温度(Tm、℃)、結晶化ピーク温度(Tc、℃)が下記式(2)を満たすこと。
【0015】
Tm−Tc<−2.72[E]+48 式(2)
(ここで[E]はコモノマー含量(重量%)を表す)
また、本発明は、プロピレン系重合体が、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレイト(MFR)とメモリーエフェクト(ME)とが、下記式(3)を満たすものである上記の容器を提供するものである。
【0016】
ME≧−0.26×log(MFR)+1.40 式(3)
さらに、本発明は、プロピレン系重合体がプロピレン単独重合体である上記の容器、プロピレン系重合体20〜95重量%と、無機フィラ−80〜5重量%とからなる上記の容器を提供するものである。
【0017】
さらに、また、本発明は、プロピレン系重合体が、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレイトが0.1〜20g/10分であるものである上記の容器を提供するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のシ−ト成形用プロピレン系複合樹脂組成物の各成分、及び、その複合樹脂組成物を用いて得られる容器の実施の形態を以下に詳述する。
【0019】
<プロピレン系重合体>
本発明に用いるプロピレン系重合体としては、下記の条件(1)〜(4)、好ましくは下記条件(1)〜(5)を満足するものが使用される。
【0020】
条件(1):頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部の、13C−NMRで測定したアイソタクチックトリアッド分率、即ち、ポリマ−鎖中の任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位が頭−尾で結合し、かつ、プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合が97%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上のものである。
【0021】
なお、アイソタクチックトリアッド分率を以下、PPP[mm]と記載することがある。このPPP[mm]は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクティックに制御されていることを示す値であり、この場合は高いほど高度に制御されていることを意味する。この値が上記範囲未満であると、本発明の複合樹脂組成物からなるシ−トの剛性や強度、耐熱性が劣るという欠点がある。
【0022】
ここで、PPP[mm]は、下記の13C−NMRスペクトルの測定方法にしたがって測定した値である。すなわち、13C−NMRスペクトルは、10mmφNMR用サンプル管の中で、350〜500mgの試料をo−ジクロロベンゼン約2.0mlにロック溶媒である重水素化ベンゼン約0.5mlを加えた溶媒中で完全に溶解させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法で測定する。
【0023】
測定条件は、フリップアングル65°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン格子緩和時間のうち、最長の値)が選択される。プロピレン系重合体においてメチレン基およびメチン基のT1はメチル基より短いので、この測定条件では全ての炭素の磁化の回復は99%以上となる。ケミカルシフトは頭−尾結合し、メチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基を21.8ppmとして設定し、他の炭素ピ−クのケミカルシフトはこれを基準とする。
【0024】
この基準では、PPP[mm]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピ−クは21.3〜22.2ppmの範囲に、PPP[mr]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピ−クは20.5〜21.3ppmの範囲に、PPP[rr]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピ−クは19.7〜20.5ppmの範囲に現れる。ここで、PPP[mm]、PPP[mr]およびPPP[rr]はそれぞれ下記のように示される。
【0025】
【化1】
【0026】
条件(2):Q値が3.0以上であること。より好ましくは4.0以上〜5.5以下である。なお、Q値とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。Q値が3未満であるとプロピレン系樹脂複合組成物のシ−ト成形時におけるスクリュ−回転数見合いの吐出量低下や樹脂圧力の上昇が大きくなり好ましくない。
【0027】
条件(3):23℃におけるキシレン可溶分量(CXS、重量%)が、下記式(1)を満たすこと。
【0028】
CXS<0.5×[E]+0.2×log(MFR)+0.5 式(1)
さらに、
CXS<0.5×[E]+0.2×log(MFR)+0.3
を満たすことが好ましい(ここで[E]はコモノマー含量(重量%)を表す)。
【0029】
CXSは、ポリプロピレン粉末試料中のキシレン可溶分量として算出される。
【0030】
CXSが式(1)を満たさない場合は、複合樹脂組成物のシ−ト成形において本発明の目的とするメヤニや臭気発生が達成されず好ましくない。
【0031】
なお、本発明においてプロピレン系重合体とプロピレン系複合樹脂組成物のメルトフローレイトMFRは、JIS−K6758「ポリプロピレン試験方法」のメルトフローレイト(温度230℃、荷重21.18N)に従って測定される。
【0032】
条件(4):DSCから求めた融解ピーク温度(Tm、単位℃)、結晶化ピーク温度(Tc、単位℃)が下記式(2)を満たす。
【0033】
Tm−Tc < −2.72[E]+48 式(2)
(ここで[E]はコモノマー含量(重量%)を表す)
融解ピーク温度(Tm)、結晶化ピーク温度(Tc)の温度差が式(2)を満たすことが、シ−トを加熱し、真空ないしは圧空を利用して金型賦形する容器成形において本発明の目的である成形サイクルの短縮に繋がり、かつタレ改善に寄与し、適正な成形品が得られる加熱時間幅も拡大すると言った容器成形性向上を可能にするために必要である。
【0034】
更に、条件(5):MFRとメモリーエフェクト(ME)が、下記の式(3)を満足することが好ましい。
【0035】
ME≧−0.26×log(MFR)+1.40 式(3)
さらに、式(4)を満足することがより好ましい。
【0036】
ME≧−0.26×log(MFR)+1.55 式(4)
本発明において、メモリーエフェクト(ME)は、シリンダー内温度190℃、オリフィス径1.00mmφ、オリフィス長さ8.00mmの装置を用いて、1分間の押出量が0.10±0.03gになる荷重でもって測定された値を意味し、具体的には、MFR測定機を用いて、シリンダー内温度190℃に設定し、オリフィスは長さ8.00mm、径1.00mmφ、L/D=8の条件で行なわれ、オリフィス直下にエチルアルコールを入れたメスシリンダーを置く(オリフィスとエチルアルコール液面との距離は20±2mmにする。)。この状態でサンプルをシリンダー内に投入し、1分間の押出量が0.10±0.03gになるように荷重を調整し、ピストンをのせて6分後から7分後の押出物をエタノール中に落とし、固化してから採取する。採取した押出物のストランド状サンプルの直径を上端から1cm部分、下端から1cm部分、中央部分の3箇所で直径を0.01mmまで測定しその平均値を求める。測定点数は2点×3箇所×2本の計12点とし、ME値=(固体状態の押出物直径)/(ノズル径)の計算式で少数以下2桁まで測定する。メモリーエフェクト(ME)の値が上記の式を満たすと、シ−ト成形時の押出特性、容器成形時のタレ特性が向上し、より好ましい。
【0037】
本発明で用いられるプロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体、プロピレンとコモノマ−であるα−オレフィンとの共重合体が使用される。プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。好ましくはエチレンで、コモノマ−含量[E]は0〜8.0%、好ましくは0〜5.0%である。
【0038】
これらの中では、本発明の複合樹脂組成物からなるシ−トが主に用いられる各種容器、カップ、トレーなどの熱成形製品で剛性、耐熱性、強度が重要な要求性能として求められる観点から、プロピレン単独重合体が特に好ましい。なお、本発明の目的を逸脱しない範囲において、ポリエチレン等のポリオレフィンが含まれてもよい。
【0039】
<プロピレン系重合体の製造>
上記プロピレン系重合体を製造する方法は、本発明の要件である制御された分子量、分子量分布、規則性を満たすために、下記に示すいわゆるメタロセン触媒を用いて製造される。
【0040】
例えば下記に示すような成分(a)、(b)、および必要に応じて使用する成分(c)からなる触媒を用いることができる。
【0041】
成分(a):後述する遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物、
成分(b):イオン交換性層状珪酸塩、
成分(c):有機アルミニウム化合物。
成分(a)メタロセン遷移金属化合物
【0042】
【化2】
【0043】
[ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示し、Mはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、R1、R3は水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を示し、R2はアリール基を示す。]
Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、たとえば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレンあるいはオリゴシリレン基、ゲルミレン基、または炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基、等が例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
【0044】
XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なってもよく、次のものを示す。水素、ハロゲン、炭化水素基、または、酸素、窒素、あるいは、ケイ素を含有する炭化水素基、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基等を例示することができる。
【0045】
R1、R3は、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基等が例示される。ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基、等を典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。
【0046】
R2はそれぞれアリール基を示す。それらの中でも炭素数が6〜16のアリール基が好ましい。具体的にはフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニルなどである。
【0047】
また、これらのアリール基は、さらに、ハロゲン、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基で置換されたものであってもよい。これらのうち、好ましいのは、フェニル、ナフチルである。
【0048】
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属であり、好ましくはハフニウムである。
【0049】
上記遷移金属化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
【0050】
1.エチレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
2.エチレンビス(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
3.エチレンビス(2−メチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
4.エチレンビス(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
5.エチレンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル−4H−アズレニル))ハフニウムジクロリド
6.エチレンビス(2−エチル−4−ビフェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
7.エチレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
8.イソプロピリデンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
9.イソプロピリデンビス(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
10.イソプロピリデンビス(2−メチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
11.イソプロピリデンビス(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
12.イソプロピリデンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル−4H−アズレニル))ハフニウムジクロリド
13.イソプロピリデンビス(2−エチル−4−ビフェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
14.イソプロピリデンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド。
【0051】
15.ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
16.ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
17.ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
18.ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
19.ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル−4H−アズレニル))ハフニウムジクロリド
20.ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−ビフェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
21.ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
22.ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
23.ジフェニルシリレンビス(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
24.ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
25.ジフェニルシリレンビス(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
26.ジフェニルシリレンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル−4H−アズレニル))ハフニウムジクロリド
27.ジフェニルシリレンビス(2−エチル−4−ビフェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
28.ジフェニルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
29.ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
30.ジメチルゲルミレンビス(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
31.ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
32.ジメチルゲルミレンビス(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
33.ジメチルゲルミレンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル−4H−アズレニル))ハフニウムジクロリド
34.ジメチルゲルミレンビス(2−エチル−4−ビフェニル−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
35.ジメチルゲルミレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド
等が例示される。
【0052】
これらの中では特に、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル−4H−アズレニル))ハフニウムジクロリドが好ましい。
【0053】
また、これらの例示化合物のクロリドの一方あるいは両方が臭素、ヨウ素、水素、メチルフェニル、ベンジル、アルコキシ、ジメチルアミド、ジエチルアミド等に代わった化合物も例示することができる。さらに、上記のハフニウムの代わりに、チタン、ジルコニウム等が結合した化合物も例示することができる。
【0054】
なお、命名法は、前記一般式(1)に示す2位および4位が置換された2,4−置換アズレン骨格を有する遷移金属化合物の錯化前の化合物の構造に基づいて、有機化学生命化学命名法(上)平山健三、平山和雄編(南江堂)により行った。
【0055】
また、上記に示すヒドロアズレン骨格を有する遷移金属化合物は、1,4−ジヒドロアズレン、2,4−ジヒドロアズレン、3,4−ジヒドロアズレン、3a,4−ジヒドロアズレン、4,8a−ジヒドロアズレン骨格を有する錯化前の化合物から得られる遷移金属化合物、またはこれらの骨格を有する錯化前の化合物の混合物から得られる遷移金属化合物であるか、1,6−ジヒドロアズレン、2,6−ジヒドロアズレン、3,6−ジヒドロアズレン、3a,6−ジヒドロアズレン、6,8a−ジヒドロアズレン骨格を有する錯化前の化合物から得られる遷移金属化合物、またはこれらの骨格を有する錯化前の化合物の混合物から得られる遷移金属化合物であるか、1,8−ジヒドロアズレン、2,8−ジヒドロアズレン、3,8−ジヒドロアズレン、3a,8−ジヒドロアズレン、8,8a−ジヒドロアズレン骨格を有する錯化前の化合物から得られる遷移金属化合物、またはこれらの骨格を有する錯化前の化合物の混合物から得られる遷移金属化合物であることを意味する。
【0056】
成分(b)イオン交換性層状珪酸塩
成分(b)として用いられるイオン交換性層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有するイオンが交換可能なものをいう。大部分のイオン交換性層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、イオン交換性層状珪酸塩は特に、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0057】
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチ−ブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バ−ミキュライト族、雲母族等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
【0058】
イオン交換性層状珪酸塩は、表面に付着している不純物を除去したり、イオン交換など結晶構造に影響を与える目的で、化学処理が施されていることが好ましい。化学処理としては、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
【0059】
酸処理に用いることができる酸としては、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。処理に用いる塩類および酸は、2種以上であってもよい。
【0060】
塩類処理に用いることができる塩類としては、更に好ましくは、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンとCl、Br、I、F、PO4、SO4、NO3、CO3、C2O4、ClO4、OOCCH3、CH3COCHCOCH3、OCl2、O(NO3)2、O(ClO4)2、O(SO4)、OH、O2Cl2、OCl3、OOCH、OOCCH2CH3、C2H4O4およびC5H5O7から成る群から選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物である。具体的には、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO4、Li(OOCCH3)、Li(C6H5O7)、LiOOCH、LiC2O4、LiClO4、LiPO4、CaCl2、CaSO4、CaC2O4、Ca(NO3)2、Ca3(C6H5O7)2、MgCl2、MgBr2、MgSO4、Mg(PO4)2、Mg(ClO4)2、MgC2O4、Mg(NO3)2、Mg(OOCCH3)2、MgC4H4O4、などが挙げられる。
【0061】
成分(c)有機アルミニウム化合物
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
一般式 AlRaP3-a
(式中、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン類等も使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0062】
成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時、またはオレフィンの重合時に行ってもよい。
【0063】
1)成分(a)と成分(b)を接触させる
2)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する
3)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(b)を添加する
4)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する
そのほか、三成分を同時に接触させてもよい。
【0064】
本発明で使用する成分(a)、成分(b)の使用量は任意であるが、成分(b)1gあたり成分(a)0.001〜10mmol、好ましくは0.001〜5mmolであり、成分(c)が0.01〜10000mmol、好ましくは0.1〜100mmolである。また、成分(a)中の遷移金属と成分(c)中のアルミニウム原子比が1:0.01〜1000000、好ましくは0.1〜100000である。
【0065】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、あるいは不存在下に行われる。温度は−50℃〜250℃であり、圧力は特に制限されないが、好ましくは常圧〜約196MPaの範囲である。
【0066】
また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させることにより、分子量および分子量分布を制御して所望の重合体を得ることができる。
【0067】
本発明においては、上述した特定のメタロセン錯体と成分Bを組み合わせた場合、通常のメタロセン活性点、いわゆるシングルサイトとは異なり、水素応答性が異なる複数の活性点が形成するなかで、水素応答性が極めて低い活性点も生成し、高分子量成分が生成する。水素応答性が極めて低い活性点は水素濃度依存性が小さく分子量調節剤である水素が存在しても、高分子量成分の存在量をほとんど維持したまま、重量平均分子量を調節することができる。これにより樹脂加工成形性に適したME値の範囲に収めることができる。
【0068】
さらにメモリーエフェクト(ME)値は重合温度や重合圧力にも依存することから、これらの条件を最適化することによってもメモリーエフェクト(ME)値を所望の値に収めることができる。
【0069】
重合系内の水素濃度の経時変化は生成ポリマーの分子量だけでなくその分布にまで大きな影響を与える。例えば水素一括フィードの場合、所望のメルトフローレイト(MFR)を得るためには、水素の経時消費にともなう生成ポリマーの分子量のズレを織り込んで水素フィード量の初期条件を決定する必要があるが、このような場合、メルトフローレイト(MFR)を調節することはできても、低分子量ポリマーが大量に生成し、製品物性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0070】
したがって、本発明においては、水素濃度が重合中一定濃度になるように、連続的に導入することが好ましい。
【0071】
このとき水素に関しては、回分法によりバルク重合を行った場合も気相重合を行う場合にも、オートクレーブ中の気相部の水素濃度が重合中一定濃度になるように、連続的に導入することが好ましい。制御範囲としては、濃度1ppmから10000ppmの任意の値に設定することができる。
【0072】
また連続重合法を用いるときにも同様の手法を用いることが好ましい。濃度設定の範囲も水素濃度1ppmから10000ppmの範囲で任意に設定できる。これら手法により、本発明の物性を有する所望の重合体を得ることができる。
【0073】
<無機フィラー>
無機フィラ−としては、シリカ、タルク、マイカ、クレー等の天然系、及び炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、珪酸ナトリウム、珪酸カルシウム等の珪酸塩、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、ゼオライト等の酸化物、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。好ましくは天然系の無機フィラ−、とりわけタルク、マイカが好ましい。無機フィラ−の粒径は特に限定されないが、好ましくは0.1〜50μmである。
【0074】
これらの無機フィラーは樹脂成分との親和性を向上させて、無機フィラ−の分散性や機械的強度を改良したり、無機フィラーの表面を化学的に安定化させて、変色や樹脂劣化を防ぐ目的で、表面処理されたものが望ましい。表面処理剤としては、界面活性剤、カップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、及び、高級脂肪酸金属塩、高級アルコール、各種ワックス、極性ポリオレフィン等を用いることができる。中でも、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン、エポキシシラン、イソプロピルトリ(N−アミドエチル、アミノエチル)チタネ−トが好ましい。
【0075】
<プロピレン系複合樹脂組成物>
本発明のプロピレン系複合樹脂組成物は上記のプロピレン系重合体と無機フィラーの各成分を混合して得られる。無機フィラ−の配合比率は、好ましくはプロピレン系重合体:無機フィラー(重量比)=20〜95:80〜5、より好ましくは40〜90:60〜10である。無機フィラー量が80重量%を超えると、樹脂材料中の無機フィラーの分散性が低下し、かつ成形時の押出性や容器等の熱成形品の賦型性、耐寒性、耐衝撃性が劣る傾向にある。一方、プロピレン系重合体が80重量%を超えると、容器等の二次成形品の剛性や耐熱性が劣る傾向にあるため、熱成形品の大きさに限界が生じたり、補強構造の複雑な設計を要することから金型費が高くなったり、形状付与等による容器生産性が劣る等の問題が生じる場合がある。
【0076】
これらの各成分の混合には、例えばゲレーションミキサーやヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の高速撹拌機付混合機、リボンブレンダー、タンブラーなどの通常の混合装置が使用でき、さらに押出機やニーダー、カレンダーロール等も使用できる。これらの装置を単独機或いは2機併用の混合機等で溶融分散させながら混練した後にペレット化することにより、プロピレン系複合樹脂材料とすることができる。
【0077】
本発明のプロピレン系複合樹脂組成物のメルトフロ−レ−ト(230℃、荷重21.18N)は0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分の範囲にある。メルトフロ−レ−トが0.1g/10分未満ではシート成形時に高樹脂圧力を要するためシート成形が困難となり、本発明の目的であるメヤニ、発煙、臭気も改善されない。MFRが20g/10分を超えるとシート成形時にサージングが発生し、タレ改良効果も少ない。
【0078】
また本発明のプロピレン系複合樹脂組成物には本発明の目的を損ねない範囲で必要に応じて添加剤を処方することが可能である。フェノール系酸化防止剤および/または、リン系酸化防止剤、中和剤、耐候剤、紫外線吸収剤、その他添加剤として造核剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤等から少なくとも1種類以上添加剤を配合してプロピレン系重合体組成物とすることができる。
【0079】
<プロピレン系複合樹脂シ−ト>
本発明のプロピレン系複合樹脂シートは、前述のプロピレン系複合樹脂組成物を用いて、公知の成形方法、例えば押出成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法、注型成形法等により製造することができる。好ましくは押出成形法があり、例えばTダイ法、インフレーション法等を用いた押出法が挙げられる。押出されたシ−トはポリッシング法、エアーナイフ法、金属鏡面ベルト法、等の公知の方法で冷却固化される。
【0080】
押出温度はシートの外観、成形性の点で180〜280℃が好ましく、180〜260℃がより好まくい。 押出温度が180℃以上であれば、十分に溶融され、得られるフィラ−充填樹脂シートの表面が鮫肌状にならず良好な外観となり、また280℃を超えると熱劣化が起き易くなり、メヤニや発煙、臭気が悪化して好ましくない。本発明のプロピレン系複合樹脂シートの厚みは特に制限されないが、容器成形サイクルや熱成型時の予熱による臭気発生抑制の観点から、通常0.10〜3.0mm、特に一般の食品用容器では0.15〜2.0mmが好ましい。
【0081】
本発明のプロピレン系複合樹脂シートは、単層に限らず多層シートであってもよい。多層シ−トとしてはプロピレン系樹脂層の片面又は両面に本発明のプロピレン系複合樹脂からなる層を配した積層シ−ト、本発明のプロピレン系複合樹脂からなる基材層の両面にプロピレン系樹脂層を配した積層シ−トが挙げられる。特にプロピレン系複合樹脂層/プロピレン系樹脂層/プロピレン系複合樹脂層の2種3層構成、あるいはプロピレン系樹脂層/プロピレン系複合樹脂層/プロピレ系樹脂層の2種3層構成が好適な層構成として挙げられる。また、ガスバリア性を付加すべく、さらに接着樹脂層/ガスバリア−樹脂層/接着樹脂層の層構成が含まれていてもよい。層構成として例えばプロピレン系複合樹脂層/接着樹脂層/ガスバリア−樹脂層/接着樹脂層/プロピレン系複合樹脂層の3種5層構成が好適な層構成として挙げられる。
【0082】
多層シートの場合、各層を積層する方法は、前記した各層を形成する樹脂材料を溶融状態で積層する方法が層間接着性の点で好ましい。一般的には、各材料をそれぞれの押出機で溶融混練した後にダイス内で積層するマルチマニホールド方式や、ダイスに流入させる前に積層するフィードブロック方式(コンバイニングアダプター方式)等が好ましい。
【0083】
本発明のプロピレン系複合樹脂層と上記の他樹脂を用いた樹脂層との厚み割合は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば特に制限はないが、プロピレン系複合樹脂層が全厚みの50%以上で、主層を形成していることが好ましい。
【0084】
得られたプロピレン系複合樹脂シートは、熱成形により各種容器、カップ、トレ−に賦形される。熱成形は、一般に、プラスチックシートを加熱軟化して所望の型に押し当て、型と材料の間隙にある空気を排除し大気圧により型に密着させて成形する真空成形、及び、大気圧以上の圧縮エアーか、あるいは真空を併用して成形する圧空成形等が用いられ、方法としては、真空あるいは圧空を用い、必要により、更にプラグを併せて用いて金型形状に成形する方法(ストレート法、ドレープ法、エアスリップ法、スナップバック法、プラグアシスト法、プラグアシストリバースドロー成形法、マッチモールド成形法など)があり、また、固相プレス成形、スタンピング成形が挙げられる。これらの熱成形法の組み合わせ等による成形法であれば特に限定されない。熱成形温度や真空度、圧空の圧力または成形速度等の各種条件は、プラグ形状や金型形状または原料シートの性質等により適宜設定される。
【0085】
本発明のプロピレン系複合樹脂シートは、臭気に優れ、かつ加熱時のタレが小さいことから、これを加熱して真空成形、圧空成形等の二次成形に供することにより、剛性、耐寒性、耐熱性等において格段に優れた容器や容器蓋などの成形品を得ることができる。特に、プロピレン系樹脂原料中のリサイクル材の割合を多くしてもタレが小さいため、リサイクル材を配合した材料で成形品を得る場合に有用である。また、タレが著しく改良されていることから、広幅(例えば幅1m以上)のシートであっても二次成形を問題なく行うことができる。このため、成形品の生産性が向上する。
【0086】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の各項目の測定値は、以下の方法で測定した。
【0087】
(1)メルトフローレイト(MFR)
プロピレン系重合体とプロピレン系複合樹脂組成物のMFRは、JIS−K6758「ポリプロピレン試験方法」のメルトフローレイト(温度230℃、荷重21.18N)に従って測定した。
【0088】
(2)アイソタクチックトリアッド分率(PPP[mm])
13C−NMRスペクトルは、10mmφNMR用サンプル管を用いて、350〜500mgの試料をo−ジクロロベンゼン約2.0mlにロック溶媒である重水素化ベンゼン0.5mlを加えた溶媒中で完全に溶解させた後、日本電子社製NMR測定装置を用いて130℃でプロトン完全デカップリング法で測定した。
【0089】
測定条件は、フリップアングル65°、パルス間隔5T1以上を選択した。メチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基を21.8ppmとして設定し、他の炭素ピ−クのケミカルシフトはこれを基準として、PPP[mm]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピ−クは21.3〜22.2ppm、PPP[mr]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピ−クは20.5〜21.3ppm、PPP[rr]で示されるプロピレン単位3連鎖中の第2単位目のメチル基に基づくピ−クは19.7〜20.5ppmの範囲に現れるものとして測定した。
【0090】
(3)Q値
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として定義され、その測定条件は次の通りである。
【0091】
・装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
・検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本
カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288)の各0.5mg/ml溶液で測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logM=−3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logM=−3.616である。)
・測定温度:140℃
・濃度:20mg/10mL
・注入量:0.2ml
・溶媒:オルソジクロロベンゼン
・流速:1.0ml/分。
【0092】
(4)キシレン可溶分量(CXS)
プロピレン重合体粉末試料約1gをナス型フラスコ中に精秤し、これに200mlのキシレンを加え、加熱沸騰させ完全に溶解した。その後、これを23℃の水浴中で急冷し、析出した固体部分をろ過し、ろ液のうち50mlを白金皿中で蒸発乾固、さらに減圧乾燥して重量を秤量した。CXSは、プロピレン重合体粉末試料中のキシレン可溶分量(重量%)として算出した。
【0093】
(5)エチレンコモノマ−含量
エチレンコモノマー由来のポリマー中のエチレン単位含有量(単位:重量%)は、得られたポリマーをプレスし、シート状にしたものをIR法により測定した。具体的には730cm-1付近に観測されるメチレン鎖由来ピーク高さから算出した。
【0094】
(6)融解ピ−ク温度(Tm)、結晶化ピ−ク温度(Tc)セイコー社製示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、JIS−K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠した。サンプル5mgを採り、200℃で10分間保持した後、40℃まで10℃/分の冷却速度で結晶化させ、このとき得られたDSC曲線の最大発熱ピ−ク温度を結晶化ピ−ク温度とした。続いて、10℃/分の昇温速度で融解させたときのDSC曲線の最大吸熱ピ−ク温度を融解ピーク温度とした。
【0095】
(7)メモリ−エフェクト(ME)
メモリ−エフェクトMEの測定は、MFR測定機を用いて、シリンダー内温度190℃に設定し、オリフィスは長さ8.00mm、径1.00mmφ、L/D=8の条件で行った。また、オリフィス直下にエチルアルコールを入れたメスシリンダーを置いた(オリフィスとエチルアルコール液面との距離は20±2mmにする。)。この状態でサンプルをシリンダー内に投入し、1分間の押出量が0.10±0.03gになるように荷重を調整し、6分後から7分後の押出物をエタノール中に落とし、固化してから採取する。採取した押出物のストランド状サンプルの直径を上端から1cm部分下端から1cm部分、中央部分の3箇所で最大値、最小値を測定し、計6箇所測定した直径の平均値をもってMEとした。
【0096】
(8)シ−ト成形時のメヤニ発生評価
複合樹脂組成物のペレットを30mmφ、L/D=33の単軸押出機を用いて、樹脂温度260℃、スクリュ−回転数100rpm、押出量7.5kg/hrの条件でダイよりストランドを引き、3個のダイ穴出口廻りに付着成長してくるメヤニの状態を目視観察した。評価結果は下記の評価基準にて判定した。
【0097】
◎:スタ−ト後、120分経過してもメヤニが確認されない
○:スタ−ト後、120分経過した段階でメヤニ発生が確認された
×:スタ−ト後、60分経過した段階でメヤニ発生が確認された。
【0098】
(9)曲げ弾性率及び最大曲げ強さ
JIS−K6758「ポリプロピレン試験法」に従って測定した。(単位:MPa)、なお、MD方向測定値およびTD方向測定値の平均とした。
【0099】
(10)デュポン衝撃強度
ASTM−D2794に準拠して0℃において測定した。(単位:J)
(11)容器成形性
得られたシートを、間接加熱式圧空成形機((株)浅野研究所製、コスミック成形機)を使用して、シートから20cm離れた位置にある上下ヒータを450℃に保持して加熱した。シートは、加熱時間を15〜35秒の間で変化させてそれぞれ、圧空圧力5kg/cm2の条件で、口径15cm、深さ8cmの丸形カップ容器を成形した。得られた容器を目視によって形状および外観(透明性、光沢性)を観察し、下記の評価基準にて判定した。
【0100】
◎:成形品の表面のばたつき、曇り等が確認されず、光沢が良好で、細部にわたり賦形が完了している
○:成形品の表面に若干のばたつきがあるが、光沢が良好で、細部にわたり賦形が完了している
×:成形品の表面のばたつき、曇り等があり、光沢が損なわれている又は、細部にわたり賦形が完了していない。
【0101】
容器成形性は、得られた容器の外観が○〜◎となる加熱時間の短さ及び加熱時間の巾により判断した。加熱時間が短くて済むものは成形サイクル短縮に繋がり、巾が広いほど成形安定性に繋がる。本発明においては加熱時間が20秒以内で良品が採れ始め、巾が5秒以上あることを成形性判断の目安とした。
【0102】
(12)容器臭気評価
熱成形によって得られた丸形カップ容器に料理用アルミホイルで口部を覆うことで容器内部の空気を密閉し、80℃に加温した東洋精機製ギアオーブンに2時間入れ加熱する。加熱後取り出し、10分以内に料理用アルミホイルの被覆を外し容器内部の臭いを嗅ぎ、次の臭いの基準に従い、5人のパネラ−の平均値を評価結果とした。
【0103】
臭いの基準
0級:感じない
1級:やっと感じる
2級:感じられる
3級:楽に感じる
4級:強く臭う。
【0104】
実施例1
<重合体(PP1)の製造>
[イオン交換性層状珪酸塩の化学処理]
攪拌翼、還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、イオン交換水500gを投入し、更に水酸化リチウム一水和物249g(5.93mol)を投入して攪拌する。
【0105】
別に、硫酸581g(5.93mol)をイオン交換水500gで希釈し、滴下ロートを用いて上記水酸化リチウム水溶液に滴下する。このとき硫酸の一部は中和反応に消費され系中で硫酸リチウム塩が生成し、さらに硫酸過剰になることにより酸性溶液となる。
【0106】
そこへ、更に市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:28.0μm)を350g添加後攪拌する。その後30分かけて108℃まで昇温し150分維持する。その後、1時間かけて50℃まで冷却した。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、減圧ろ過を実施した。ケーキを回収し、純水を5.0l加え再スラリー化し、ろ過を行った。この操作をさらに4回繰り返した。ろ過は、いずれも数分かからずに終了した。最終の洗浄液(ろ液)のpHは、5であった。
【0107】
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。その結果、275gの化学処理モンモリロナイトを得た。
【0108】
[触媒の調製/予備重合]
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
【0109】
先に製造した化学処理モンモリロナイトを減圧下、200℃、4時間乾燥した。内容積10Lのオートクレーブに化学処理モンモリロナイト200gを導入し、ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.6mmol/ml)840ml(0.5mol)を30分かけて投入し、25℃で1時間攪拌した。その後、スラリーを静止沈降させ、上澄み1300mlを抜き出した後に2600mlのヘプタンにて2回洗浄し最終的にヘプタン全量が1200mlになるようにヘプタンを加えた。
【0110】
次に、2Lフラスコにジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド5.93g(6mol)とヘプタン516mlを投入しよく攪拌した後にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/ml)を84ml(11.8g)を室温にて加え、60分間攪拌した。
【0111】
続いて、先にオートクレーブ中に調製した化学処理モンモリロナイトスラリーに上記溶液を導入し、60分間攪拌した。続いて、更にヘプタンを全容積が5Lになるまで導入して、30℃に保持した。そこにプロピレンを100g/hrの定速で、40℃で4時間導入し、引き続き50℃で2時間維持した。サイホンにて予備重合触媒スラリーを回収し、上澄み除去後、40℃にて減圧下乾燥した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレンが2.0gを含む予備重合触媒が得られた。
【0112】
[重合]
内容積0.4m3の攪拌装置付き液相重合槽に、液化プロピレン、水素、トリイソブチルアルミニウムを連続的にフィードした。なお、液化プロピレン、トリイソブチルアルミニウムのフィード量は、それぞれ、90kg/hr、21.2g/hrであり、水素は、モル濃度[H2]が30ppmになるようにフィードした。さらに、上記で得られた予備重合ポリプロピレンを除く固体成分として、2.16g/hrとなるようにフィードした。また、重合温度が65℃となるように、重合槽を冷却した。プロピレン重合体(PP1)の収量は、10.8kg/hrであった。全く同様にこの重合操作をさらに2回繰り返し約30kgのプロピレン重合体(PP1)を得た。このプロピレン重合体の分析値は、アイソタクチックトリアッド分率が99%、Q値が4.4、Tmが157℃、Tcが114℃、CXSが0.25wt%、MFRは0.5g/10分、MEは1.59であった。
【0113】
<プロピレン系複合樹脂組成物>
前記プロピレン重合体(PP1)70wt%とタルク30wt%(富士タルク社製、粒径10μm)合計量100部に対して中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.05部、酸化防止剤としてテトラキス―[メチレン―3―(3′,5′―ジ―t―ブチル―4′―ヒドロキシフエニル)プロピオネート]メタンを0.1部、酸化防止剤としてトリス―(2,4―ジ―t―ブチルフエニル)フオスフアイトを0.1部を配合したものを温度170℃のゲレーションミキサーで溶融分散させ、該溶融分散された混合物を口径60mmφの単軸押出機で温度230℃で押し出し、MFRが0.6g/10分、密度が1.15g/cm3の複合樹脂組成物のペレットを得た。
【0114】
<複合樹脂シ−トの成形および評価>
前述の方法により得られた樹脂組成物ペレットを口径40mmφの押出機から、樹脂温度240℃、幅400mmのシート状に溶融押し出しした。次いで、前記溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:上50℃、中80℃、下50℃)に導いて冷却固化し、厚みが0.5mm、幅350mmの複合樹脂シートを作製した。このようにして得られた各複合樹脂シートについて、曲げ弾性率、最大曲げ強さ、及びデュポン衝撃強度、容器成形性、容器臭気をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0115】
実施例2
実施例1で用いたプロピレン重合体(PP1)33wt%とタルク77wt%に、同様に添加剤を配合したものに、エチレン重合体(日本ポリケム(株)製、商品名ノバテックHD「HB420R」、JISK6922によるメルトフロ−レ−ト(190℃、21.18N)0.25g/10分、密度0.957g/cm3 )10部配合した以外は同様にして、MFRが0.7g/10分、密度が1.58g/cm3の複合樹脂組成物のペレットを得た。以下、実施例1と同様にシ−ト成形、および評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0116】
実施例3
<重合体(PP2)の製造>
実施例1での重合触媒を用いて、水素は、モル濃度[H2]が40ppmになるようにフィードとすること以外は実施例1と同様の重合をおこない、プロピレン重合体(PP2)を得た。
【0117】
<プロピレン系複合樹脂組成物>
実施例1と同様に、プロピレン重合体(PP2)に添加剤を配合し、タルク重量を30wt%を配合して、MFRが0.9g/10分、密度が1.15g/cm3の複合樹脂組成物のペレットを得た。以下、実施例1と同様にシ−ト成形、および評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0118】
実施例4
<重合体(PP3)の製造>
[錯体の製造]
(1)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4H−アズレニル]}ハフニウムのラセミ体の合成:2−ブロム−4−クロロナフタレン(2.50g、10.30mmol)をジエチルエーテル(50mL)とヘキサン(7.5 mL)の混合溶媒に溶かし、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(6.8mL、10.4mmol、1.53N)を19℃で滴下した。20℃で1時間撹拌し、この溶液に2−エチルアズレン(1.47g、9.41mmol)を5℃で加え、室温で1時間撹拌した。 途中ジエチルエーテル(5.0mL)を加えた。静置後、上澄み溶液を取り除き、沈殿物をヘキサン(20mL)で洗浄した。そこにヘキサン(25mL)を加え、0℃に冷却しテトラヒドロフラン(25mL)を加えた。N−メチルイミダゾール(30μL)とジメチルジクロロシラン(0.51mL、4.20mmol)を加え、0℃で1.5時間撹拌した。この後、塩化アンモニア飽和水溶液(50mL)を加え、分液した後有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去すると、粗精製物として、ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−1、4−ジヒドロアズレン](3.11g)が得られた。
【0119】
次に、上記で得られた反応生成物(3.09g、4.21mmol)をジエチルエーテル(44mL)に溶かし、−70℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(5.5mL、8.41mmol、1.53mol/L)を滴下し、徐々に昇温して室温で2時間撹拌した。溶媒を留去し、トルエン(11mL)とジエチルエーテル(99mL)を加えた。−70℃に冷却し、四塩化ハフニウム(1.375g、4.29mmol)を加え、徐々に昇温し室温で一晩撹拌した。得られたスラリー溶液を3分の1まで濃縮した後セライトを用いて濾過し、トルエン(15mL)で洗浄し、濾液を濃縮した。粗生成物をジエチルエーテル(10 mL)で5回洗浄すると、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4H−アズレニル]}ハフニウムのラセミ体(1.20g、収率27%)が得られた。
【0120】
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ1.00(s,6H,SiMe2)、1.00(t,J=7.8Hz,6H,2−CH3CH2)、2.40−2.59(m,2H,2−CH3CHH)、2.59−2.75(m,2H,2−CH3CHH)、5.22(d,J=4.2Hz,2H,4−H)、5.83−5.93(m,6H)、6.04−6.08(m,2H)、6.80(d,J=12Hz,2H)、7.50−7.60(m,4H,arom)、7.59(d,J=1.5Hz,2H,arom)、7.73(d,J=0.6Hz,2H,arom)、7.81−7.84(m,2H,arom)、8.22−8.25(m,2H,arom)。
【0121】
[イオン交換性層状珪酸塩の化学処理]
500ml丸底フラスコにバキュームスターラをセットし、イオン交換水196.5gを投入し、次いで硫酸51.25g(525mmol)を投入して攪拌した。さらに水酸化リチウム12.45g(520mmol)を投入後溶解した。更に市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:16.2μm)を51.65g添加後攪拌した。その後10minかけて100℃まで昇温し280min維持する。その後、1時間かけて50℃まで冷却した。このスラリーを直径11.5センチメートルのヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、減圧ろ過を実施した。ケーキを回収し、純水を1.6l加え再スラリー化し、ろ過を行った。この操作をさらに3回繰り返した。ろ過は、いずれも数分かからずに終了した。最終の洗浄液(ろ液)のpHは、5であった。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。その結果、41.6gの化学処理体を得た。
【0122】
蛍光X線により組成分析を行ったところ、主成分であるケイ素に対する構成元素のモル比は、Al/Si=0.223、Mg/Si=0.048、Fe/Si=0.028であった。
【0123】
[触媒の調製/予備重合]
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。先に製造した化学処理されたイオン交換性層状珪酸塩造粒体を減圧下、200℃、4時間乾燥した。
【0124】
内容積1000mlのナスフラスコに上記で得た化学処理モンモリロナイト10gを導入し、ヘプタン58ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.6mmol/ml)42ml(2.5mmol/g担体)を加え、室温で攪拌した。1時間後、ヘプタンにて3回洗浄し最終的に上澄み液を除去した。
【0125】
次に、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチルジヒドロアズレニル)ハフニウムジクロリドとトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液の接触溶液120ml(M=280.2μmol、Al/Hf=10)を準備し室温にて加え、60分攪拌した。続いて、先に調製したモンモリロナイトスラリーに上記溶液を導入し、60分攪拌した。
【0126】
続いて、窒素で十分置換を行った内容積1.0リットルの攪拌式オートクレーブに先に調製したモンモリロナイトスラリーとジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチルジヒドロアズレニル)ハフニウムジクロリドの混合溶液を導入し、更にヘプタンを全容積が500mlになるまで導入して、30℃に保持した。
【0127】
そこにプロピレンを5g/hrの定速で、40℃で4時間導入し、引き続き50℃で2時間維持した。サイホンにて予備重合触媒スラリーを回収し、40℃にて減圧下乾燥した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレンが4.6gを含む予備重合触媒が得られた。
【0128】
[重合]
内容積200リットルのオートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、十分に脱水した液化プロピレン4500gを導入し30℃に保持した。これに、トリイソブチルアルミニウム・ノルマルヘプタン溶液(50g/l)470mlを加えた。水素を1.5NL、エチレン0.675kg、実施例1で合成した固体触媒成分を0.5gをアルゴンで圧入して重合を開始させ75℃まで40minかけて昇温し75℃で3時間反応させた。またこの間水素を0.10g/hrの定速で導入した。その後、エタノール100mlを圧入して反応を停止し、残ガスをパ−ジしたところ13.3kgのポリマーが得られた。
【0129】
全く同様にこの重合操作までをさらに3回繰り返し約30kgのプロピレン重合体(PP3)を得た。
【0130】
このポリマーの分析値は、アイソタクチックトリアッド分率が99.4%、MFRが3.1g/10分、GPCによる重量平均分子量が315500、Q値が3.20、融点Tmが149.2℃、エチレン含有量が1.22重量%、CXSが0.50重量%、MEが1.44であった。
<プロピレン系複合樹脂組成物>
実施例1と同様に、プロピレン重合体(PP3)に添加剤を配合し、タルク重量を30wt%を配合して、MFRが3.9g/10分、密度が1.15g/cm3の複合樹脂組成物のペレットを得た。以下、実施例1と同様にシ−ト成形、および評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0131】
比較例1
実施例1で用いたプロピレン重合体の代わりに、チ−グラ−系Mg担時触媒によって重合されたプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製、商品名;ノバテックPP「EA9」、メルトフロ−レ−ト0.5g/10分)を(PP4)として用いた以外は実施例1と同様にして、MFRが0.8g/10分、密度が1.15g/cm3の複合ペレットを得た。以下、実施例1と同様にシ−ト成形、および評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0132】
比較例2
実施例2で用いたプロピレン重合体の代わりに、チ−グラ−系Mg担時触媒によって重合されたプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製、商品名;ノバテックPP「EA9」、メルトフロ−レ−ト0.5g/10分)を(PP4)として用いた以外は実施例2と同様にして、MFRが0.8g/10分、密度が1.58g/cm3の複合樹脂組成物のペレットを得た。以下、実施例1と同様にシ−ト成形、および評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0133】
比較例3
<重合体(PP5)の製造>
[触媒の調製/予備重合]
内容積0.5lの撹拌翼のついたガラス製反応器に、WITCO社製MAO ON SiO2 2.4g(20.7mmol−Al)を添加し、n−ヘプタン50mlを導入し、あらかじめトルエンに希釈した(r)−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド溶液20.0ml(0.0637mmol)を加え、続いてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)・n−ヘプタン溶液4.14ml(3.03mmol)を加えた。室温にて2時間反応した後、プロピレンをフローさせ、予備重合を実施した。
【0134】
[重合]
内容積200Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分置換した後、n−ヘプタンで希釈したトリエチルアルミニウムを3g、液化プロピレン45kgを添加して、内温を30℃に維持した。次いで先に合成した固体触媒(予備重合ポリマーを除いた重量として)1.1gを加えた。その後、65℃に昇温して重合を開始させ3時間その温度を維持した。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、ポリマーの乾燥をした。その結果7.0kgのポリマーが得られた。全く同様にこの重合操作までをさらに4回繰り返し約28kgのプロピレン重合体(PP5)を得た。
【0135】
<プロピレン系複合樹脂組成物>
実施例1と同様に、プロピレン重合体(PP5)に添加剤を配合し、タルク重量を30wt%を配合して、MFRが0.6g/10分、密度が1.15g/cm3の複合樹脂組成物のペレットを得た。
【0136】
<複合樹脂シ−トの成形および評価>
実施例1と同様にシ−ト成形、および評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【発明の効果】
本発明のプロピレン系重合体と無機フィラ−からなるプロピレン系複合樹脂組成物はシ−ト成形におけるメヤニ発生が少なく、剛性、耐熱性、耐油性等に優れており、かつ熱成形においても容器成形性や成形サイクル、臭気に優れていることから各種容器、カップ、トレーなどの熱成形製品に好適である。
Claims (5)
- 下記の条件(1)〜(4)を満たすプロピレン系重合体と無機フィラ−とからなるシ−ト成形用プロピレン系複合樹脂組成物を成形してなるプロピレン系複合樹脂シートを熱成形して得られる容器。
(1)頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部の、13C−NMRで測定したアイソタクチックトリアッド分率(PPP[mm])が97%以上であること。
(2)Q値が3.0以上であること。
(3)23℃におけるキシレン可溶分量(CXS、重量%)と、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレイト(MFR)とが、下記式(1)を満たすこと。
CXS<0.5×[E]+0.2×log(MFR)+0.5 式(1)
(ここで[E]はコモノマー含量(重量%)を表す)
(4)DSCから求めた融解ピーク温度(Tm、℃)、結晶化ピーク温度(Tc、℃)が下記式(2)を満たすこと。
Tm−Tc<−2.72[E]+48 式(2)
(ここで[E]はコモノマー含量(重量%)を表す) - プロピレン系重合体が、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレイト(MFR)と、メモリーエフェクト(ME)とが、下記式(3)を満たすものである請求項1に記載の容器。
ME≧−0.26×log(MFR)+1.40 式(3) - プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体である請求項1又は2に記載の容器。
- プロピレン系重合体20〜95重量%と、無機フィラ−80〜5重量%とからなる請求項1〜3のいずれかに記載の容器。
- プロピレン系重合体が、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレイト(MFR)が0.1〜20g/10分であるものである請求項1〜4のいずれかに記載の容器。
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