JP4753959B2 - 穂先竿 - Google Patents

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本発明は、先側の中実部材と元側の管状部材とを接着剤を使用して接合した穂先竿に関する。例えば、中実部材を超弾性合金製とし、管状部材を繊維強化樹脂製とした穂先竿でもよい。
釣竿において、先端から20cm程度以下の短い範囲の領域だけ、特に柔らかな調子の撓み剛性にした穂先竿を求めることがある。この場合、この極端に短い長さの穂先竿にすることは、獲物が掛かった際にここが大きく撓むため、結局は下方に向き、その結果、穂持竿から抜け去る虞がある。こうしたことから、通常は、穂先竿の元側領域を繊維強化樹脂製の管状部とし、前側領域を繊維強化樹脂製や超弾性合金等の金属製の中実部とし、両部材を接着接合して構成することが行われている。例えば、下記特許文献1には、中実の第一穂先の基端部にストレート状の嵌合部とその先の大きな角度の前拡がりのテーパ部とを設け、これを元側の管状の第二穂先に挿入して接着剤で接合する構造が開示されている。なお、特許文献2には、内竿と外竿との継ぎ合わせ時の固着防止のために、内竿外周に円周方向に指向した凹溝を設けることが開示されている。
特開平8−332002号公報 実開昭53−39787号公報
然しながら、穂先領域は特に細いため大きく撓むと捩れを伴い、穂先竿を前後の部材を接着接合して構成した場合、前側の部材がその接合部から引き抜かれようとするのみならず、捩られる。従って、接合部の接着剤層には軸長方向の引き抜き力とトルクとの両方が作用し、上記文献1の構造では接着剤溜まり(接着剤層)を有しているが、大きな角度の前拡がりテーパ部では接着剤層が剥離したりして接合が外れる虞が高くなる。
依って解決しようとする課題は、中実部材と繊維強化樹脂製の管状部材とを並継式に接着接合した穂先竿の場合、接合強度の高い穂先竿を提供することである。
上記課題に鑑みて本発明の第1の発明は、中実部材と繊維強化樹脂製の管状部材とが、該中実部材を先側にして並継式に継ぎ合わされて接着接合された穂先竿であって、前記中実部材の雄型継合部には、後端付近の後側部の外周面に対して段差状に形成されていると共に、軸長方向に対して45度〜90度の範囲の概ね円周方向に指向した壁面を有する凹部を有し、前記後側部に隣接する該凹部を有する凹部領域は、前記凹部の底面の存在によって該凹部領域の横断面は断面非円形であり、前記凹部には接着剤が入って中実部材と管状部材とを接合していることを特徴とする穂先竿を提供する。
第2の発明は、第1の発明において、後端から前記凹部領域に隣接する所定範囲の前側部までが前記雄型継合部の領域であり、該前側部と前記後側部の各外周は、テーパ率が2/1000以下の略ストレートであり、前記管状部材の前側の雌型継合部の内面も、テーパ率が2/1000以下の略ストレートであるよう構成する。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記中実部材の前記凹部の位置に対応する前記管状部材の外側を緊締部材で緊締しているよう構成する。
第1の発明では、該凹部の存在により十分な厚さの接着剤層を確保して管状部材内面と凹部の底面とを接着接合する。また、釣糸を介して穂先竿を軸長方向に引く力に対して、後側部の前端面となる段差状の壁面が前記接着剤層に引っ掛かるように作用することで接合部が抜け破損し難い。また、捩る力に対しては、釣糸を介して捩られる中実部材の前記凹部領域の断面非円形を成す凹部底面が、接着剤層に対して円周方向に引っ掛かるように作用するため、接合部が捩れ破損し難い。即ち、接合強度が高い。
第2の発明では、凹部に接着剤を充填して雄型継合部を雌型継合部に挿入して行く際に、雌型継合部の内面も、雄型継合部の前側部と後側部の各外周も、既述の略ストレートであれば、両部材の軸心間の相対傾斜が防止され、管状部材の入口縁によって接着剤が擦り取られ難くなり、接着接合力が充分に確保できる。
第3の発明では、緊締部材で緊締すれば管状部材を凹部内に撓ませた状態にできるため、管状部材と接着剤層との接合において、穂先竿を軸長方向に引く力に対しても捩る力に対しても、管状部材が接着剤層に対して引っ掛かるように作用し、その分、接合強度が向上する。
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1は本発明に係る第1形態例穂先竿の前側部材である中実部材の雄型継合部付近の各図、図2は図1の中実部材に接着剤を塗布した模式図、図3は図1の中実部材を使用した第1形態例穂先竿の部分縦断面図である。図1の(a)を側面図とすれば、(b)は平面図、(c)は矢視線A−Aによる横断面図、(d)は矢視線B−Bによる横断面図、(e)は矢視線C−Cによる横断面図である。穂先竿は、その前側部材として超弾性金属等の金属又はエポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製中実部材10を有し、後側部材としては、同様な繊維強化樹脂製の管状部材12を有している。
前記超弾性金属としては、ニッケル・チタン系合金、ニッケル・チタン・鉄系合金、ニッケル・チタン・銅系合金、ニッケル・チタン・クロム系合金がある。この中実部材の後部を雄型継合部10Tとし、管状部材の前部を雌型継合部12Tとしている。この雄型継合部は、後端側から順に、後側部10A、中間部(凹部領域)10B、前側部10Cとされている。この中実部材10はこの形態例では17cmの長さであり、20cm以下という短さである。接合部の位置が先端からの距離の短い位置であるため径が細く、本来的に接着面積が小さくて接着力が弱いという本質的問題があるが、本発明接合構造によって接着力の不足をカバーする。
中実部材の後側部10Aと前側部10Cとは、夫々、図1の(c),(e)に図示するように断面円形であり、中間部10Bは(d)に図示するように断面非円形である。即ち、中間部には、後側部10Aの外周面に対して段差状に形成され、この例では、軸長方向に対して90度の円周方向に指向すると共に、垂直段差の壁面S0を有する凹部10Kが設けられている。この凹部の底面S1は、この例では軸長方向に対して平行な平面であり、前記垂直段差壁面S0と接続されている。また、この凹部10Kとは径方向反対側には、同様な垂直段差壁面S0’を有する凹部10K’が設けられている。その凹部底面S1’も、この例では軸長方向に対して平行な平面であり、前記垂直段差壁面S0’と接続されている。
前記中間部10Bの非円形な断面形状は、後側部と前側部の各外周面と滑らかに連続している外周面10Sと、前記各凹部の平面状底面S1,S1’とで構成されている。
この中実部材10を並継式に継ぎ合わせる関係となる管状部材12は、その先部を雌型継合部12Tとしており、中実部材の雄型継合部10Tを並継式に継ぎ合わせ、エポキシ系接着剤や、アクリル系接着剤や、ウレタン系接着剤や、ゴム系の接着剤等で接合させる。図2はその接着剤14’を中実部材10の凹部10K,10K’に充填した図であり、この状態で、管状部材12に挿入する。この挿入結果を図3に図示している。
接着剤が硬化すれば穂先竿が完成する。こうして管状部材12の内面12Sと中実部材各凹部の底面S1,S1’との間に接着剤層14を有して、接着剤が管状部材12の内面12Sと凹部の底面S1,S1’とに接着することで中実部材と管状部材とが接着接合された穂先竿となる。釣りの際に釣糸を介して穂先竿を軸長方向に引く力に対しては、後側部10Aの前端面となる垂直段差壁面S0,S0’が前記接着剤層14に引っ掛かるように作用することで接合部が抜け破損し難い。また、捩る力に対しては、釣糸を介して捩られる中実部材10の中間部10Bの断面非円形を成す底面S1,S1’が、接着剤層14に対して円周方向に引っ掛かるように作用するため、接合部が捩れ破損し難い。
上記第1形態例では、凹部は2箇所10K,10K’であるが、1箇所でもよく、3箇所以上でもよい。また、実施形態例の凹部の壁面S0,S0’は垂直段差壁面であるが、垂直でなくても段差状であればよい。更には、この壁面S0,S0’は軸長方向に対して90度の厳密な円周方向であるが、45度以上であればよい。また、接着剤は凹部以外の中実部材外周面にも塗布することが通常である。また、底面S1,S1’は平面でなくてもよく、軸長方向に対して平行でなくてもよい。更には、中実部材の長さは20cmを越える長さでもよい。
図2の中実部材10を管状部材に挿入開始して接合位置にまで押し込む際に、両部材の軸心が傾斜すれば、中実部材の凹部に充填させた接着剤14’が、管状部材の入口の縁によって擦り取られる。これを防止すべく、管状部材12の雌型継合部12Tの内面12Sを、テーパ率が2/1000以下の略ストレートにすると共に、中実部材の後側部10Aと前側部10Cの各外周面も、テーパ率が2/1000以下の略ストレートに構成している。これによって中実部材を管状部材に挿入して行く際に互いの軸心が傾斜することを防止でき、接着剤が擦り取られ難くなると共に、中実部材の円周方向位置(角度位置)による接着剤層の偏りが防止されて層厚が均一化し、このため接着接合力が充分に確保できる。また、雄型も雌型も共にストレート、又は同じテーパ率とすることで、円周方向位置の相違による接着剤層の厚さの偏りを防止でき、接着力が安定する。
図4は、第1実施形態例穂先竿の接合部領域の外周、即ち、管状部材12の雌型継合部12Tの外周に緊締部材16を巻回固定した第2実施形態例穂先竿の要部縦断面図である。更に詳しく言えば、少なくとも凹部10K,10K’の領域である中間部10Bに対応する領域に巻回している。接着剤14’がエポキシ樹脂のように時間経過して硬くなる接着剤の場合は、硬い定常状態になる前に所定力で巻回し、雌型継合部12Tの内面12Sが、底面S1,S1’の方に凸状になる(近づく)ように緊締する。ウレタン系接着剤やゴム系の接着剤等のように、時間経過して定常状態になった後も、柔軟性を有する接着剤では、定常状態になった後に緊締してもよい。
これにより、穂先竿を軸長方向に引く力に対しても、捩る力に対しても、管状部材が接着剤層に対して引っ掛かるように作用し、その分、接合強度が向上する。緊締部材としては、綿糸、ナイロン糸、炭素繊維、ガラス繊維等の糸部材、ナイロン、ウレタン、PVC、不織布等のテープ部材、凹部10K,10K’の幅(軸長方向長さ)に近い幅を有する布等がある。これらは、管状部材12を形成するプリプレグと同様な繊維強化樹脂材でもよい。
また、本発明に係る穂先竿を使用する釣竿が外付けの釣糸ガイドを有する場合は、この釣糸ガイドの1つを、中間部10Bに対応する位置領域の管状部材12の外周に設け、この釣糸ガイドの脚部を固定する緊締部材を巻回することで同様な効果を得ることもできる。緊締部材は中間部10Bの前後の前側部10Aや後側部10Cにも巻回されていてもよい。
図5は第1実施形態例穂先竿の中実部材の凹部10K,10K’の形状の異なる第3実施形態例穂先竿の中実部材要部の構造を図示しており、各図は図1の場合の各図と同様である。凹部10Kは垂直段差壁面S0と、2等辺三角形状の底面S1とで区画形成されている。この底面S1は中実部材の軸長方向に対して平行ではなく、その前側が前側部10Cの外周面に近づくように傾斜した平面である。他方の凹部10K’も同様である。作用効果は第1実施形態例の場合と同様である。要は、本発明では、前方への抜け方向においては、凹部の元側に段差壁面S0(,S0’)が存在することが重要である。
雄型と雌型が厳密にストレート同士の場合、中実部材10が管状部材12の中に侵入する方向に接合が外れる場合も有り得るが、図3の第1実施形態例の場合は、凹部の段差状壁面S0,S0’とは軸長方向反対側の壁面の存在が、凹部の接着剤層に対して上記侵入方向の接合外れを防止するように作用する。また、図5の第3実施形態例の場合は、後方に向かって下がっている凹部の底面S1,S1’の存在が、凹部の接着剤層に対して上記侵入方向の接合外れを防止するように作用する。
本発明は、釣竿の穂先竿に利用できる。
図1は本発明に係る第1形態例穂先竿の前側部材である中実部材の雄型継合部付近の各図である。 図2は図1の中実部材に接着剤を塗布した模式図である。 図3は図1の中実部材を使用した第1形態例穂先竿の部分縦段面図である。 図4は第2実施形態例穂先竿の要部縦断面図である。 図5は第3実施形態例穂先竿の前側部材である中実部材の雄型継合部付近の各図である。
符号の説明
10 中実部材
10A 前側部
10B 中間部(凹部領域)
10C 後側部
10K,10K’ 凹部
10T 雄型継合部
12 管状部材
12T 雌型継合部
14 接着剤層
16 緊締部材
S0,S0’ 段差状の壁面
S1,S1’ 凹部の底面

Claims (3)

  1. 中実部材と繊維強化樹脂製の管状部材とが、該中実部材を先側にして並継式に継ぎ合わされて接着接合された穂先竿であって、
    前記中実部材の雄型継合部には、後端付近の後側部の外周面に対して段差状に形成されていると共に、軸長方向に対して45度〜90度の範囲の概ね円周方向に指向した壁面を有する凹部を有し、前記後側部に隣接する該凹部を有する凹部領域は、前記凹部の底面の存在によって該凹部領域の横断面は断面非円形であり、
    前記凹部には接着剤が入って中実部材と管状部材とを接合している
    ことを特徴とする穂先竿。
  2. 後端から前記凹部領域に隣接する所定範囲の前側部までが前記雄型継合部の領域であり、該前側部と前記後側部の各外周は、テーパ率が2/1000以下の略ストレートであり、前記管状部材の前側の雌型継合部の内面も、テーパ率が2/1000以下の略ストレートである請求項1記載の穂先竿。
  3. 前記中実部材の前記凹部の位置に対応する前記管状部材の外側を緊締部材で緊締している請求項1又は2記載の穂先竿。
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