JP3949506B2 - 釣竿 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の竿体を連結してなる釣竿で、特に、もっとも穂先側に位置する竿体が中実の竿体であるような釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
魚釣りに用いる釣竿は、複数の竿体を連結し一本の釣竿として用いるものがある。このような釣竿を構成する竿体の多くは繊維強化樹脂から構成される中空の筒状体である。そして、例えば、ある種の釣竿は、順次各筒状体を振出形式に手元側の竿体内に収納可能になっている。
【0003】
また、従来の釣竿の中には、最も穂先側に位置する小径の竿体が中実の竿体(ソリッド竿)となっている釣竿もある。そして、このような釣竿の中には、このソリッド竿がその竿元側に連結される2番目の竿体に接着固定され一体化されているようなタイプのものもある。
このようなタイプの釣竿は、具体的には、ソリッド竿の竿元側端部に嵌合雄部を形成し、ここに接着剤を塗布しつつ2番目の竿体の穂先側端部に挿入して固定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のこのようなソリッド竿と中空の2番の竿体とを接着した釣竿では、長期間使用していると、相互の接着力が低下してソリッド竿が2番目の竿体から外れてしまうような状況も考えられる。最も穂先側に位置する小径のソリッド竿は釣りを行う際に最も大きく撓る部分であり、ソリッド竿と2番目の竿体との連結力強化が重要である。また、特に、ソリッド竿の穂先側端部に釣糸係止部を設け、ここに釣糸を連結するような釣竿の場合、魚が釣糸を引っ張った最に穂先竿に係る穂先側方向への負荷が大きく、ソリッド竿と2番目の竿体との十分な連結力が要求される。
【0005】
また、ソリッド竿と2番目の竿体とを接着して一体化するようなタイプの釣竿では、外観上、両竿体が別体と見えないように両竿体の周面を一体的に表面塗装している。しかし、繰り返して使用していると、ソリッド竿と2番目の中空の竿体との連結部分に応力が集中し、両竿体を連結した部分の周面からクラックなどが生じてしまうこともある。
【0006】
そこで、これらクラック発生防止、連結力強化のために、両竿体の連結部分の周面に撚糸を巻回しておき、その上から表面塗装を施す技術も考えられている。しかし、このような撚糸の巻回はその工程が煩雑になりコスト高ともなりがちである。また、撚糸を周面に巻回するため、この巻回部分が膨らみ意匠性を損なう。
【0007】
本発明の課題は、十分な連結力を担保しつつ、クラック等の発生も防止できる釣竿を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明1の釣竿は、魚釣りに用いる釣竿であって、竿元側端部に連結部を有する中実竿体と、中実竿体の連結部が挿入される受け部を穂先側端部に有し、連結部が受け部に挿入されて接着固定されている中空竿体と、中実竿体の周面と中空竿体の周面との境界付近に塗布されて形成されているゴム系塗料層と、中実竿体,中空竿体及びゴム系塗料層上に積層される表面塗料層とを備えている。
【0009】
この釣竿では、中実竿体と中空竿体との連結部分の周面をゴム系塗料がコーティングしており、連結部分においてはゴム系塗料上に表面塗料層が形成される。このゴム系塗料が、応力が集中しがちな中実竿体と中空竿体との連結部分、特に、両竿体の連結部分の周面の微妙なズレ等を吸収し、表面塗料層でのクラックの発生を抑えている。
【0010】
発明2の釣竿は、発明1の釣竿であって、連結部の周面に複数の切溝が形成されている。
この釣竿では、連結部の周面に複数の切溝が形成されている。この切溝は、格子状、網目状等種々の態様が考えられ、中実竿体を形成後に連結部の周面を削り掘ることによって形成可能である。このような切溝が「接着剤溜まり」を提供し、連結部と受け部との接着力を高める。特に、格子状、網目状に切溝を形成して、切溝を周方向・軸方向の何れにも形成しておくことで、中実竿体と中空竿体との引っ張り方向の接着力の向上のみではなく、ねじれ方向への接着力の向上も図られる。
【0011】
発明3の釣竿は、発明1又は2の釣竿であって、連結部は竿元側端部から穂先側に向かって軸方向に割りが形成されている。
中実竿体の連結部を中空竿体の受け部に挿入して相互に連結固定すると、この連結部と受け部との範囲においては他の部分に比べて特に素材が2重に配置されることになり、剛性が局部的に大きくなる。この釣竿では、連結部に割りを形成しておくことで、このような局部的な剛性の変化を可及的に抑えられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態を採用した竿体1は、筒状の元竿1と、元竿1の穂先側に順次並継形式で連結される複数の筒状の中竿2と、前記中竿2の穂先側に連結される穂先竿3とを有している。元竿1は炭素繊維強化樹脂,ガラス繊維強化樹脂等からなるプリプレグシートから形成される先細りテーパが施された筒状部材である。そして、竿元側周面上にはグリップ4が設けられ、竿元側端部には尻栓5が脱着自在にはめ込まれている。中竿2も元竿1と同様に炭素繊維強化樹脂,ガラス繊維強化樹脂等からなるプリプレグシートから形成される筒状部材である。また、穂先竿3の穂先側先端には釣糸を係止可能な釣糸係止具6が連結されている。
【0013】
図2及び図3に示すように、穂先竿3は、穂先側ほど小径化するようなテーパが施された中実の棒状部材である。図2に詳しく示すように、この穂先竿3は、2つの竿体を連結して一本の竿体としたものである。即ち、穂先側に位置する中実竿体10と、中実竿体10の竿元側に位置する中空竿体11とを連結して、穂先竿3が構成されている。
【0014】
中実竿体10は、全体として穂先側ほど小径化するテーパが施された棒状・中実のソリッド体である。例えば、炭素繊維を軸方向に引き揃え熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂を加圧加熱して形成される。そして、この中実竿体10の竿元側端部には他の部分より小径に連結部12が形成されている。この連結部12は、穂先側の逆テーパ部分Xと竿元側のストレートテーパ部分Yとの2段階構造となっている。逆テーパ部分Xは竿元側ほど外径が小さくなるテーパが施され、そのテーパ率は50/1000程度に設定される。軸方向長さは任意に設定可能であるが、10mm程度の長さとするのがよい。ストレートテーパ部分Yは径の変化がない(ゼロテーパ)若しくは殆ど径の変化が認められない部分である。その軸方向長さも上述の逆テーパ部分Xと同様に10mm程度の長さとするのがよい。
【0015】
中空竿体11は、全体として穂先側ほど小径化するテーパが施された先細り筒状部材である。炭素繊維強化樹脂等の素材を焼成して形成されている。穂先側端部の内周が上述の連結部12を受ける受け部13となっている。この受け部13は、上述の連結部12の逆テーパ部分X及びストレートテーパ部分Yに対応するようにその内径が設定され、それぞれ逆テーパ受け部とストレートテーパ受け部との2段テーパ構造となる。なお、これらの中実竿体10と中空竿体11との径の調整は、各竿体を炭素繊強化樹脂等から両竿体を形成した上で、その外周面,内周面を削って行われる。
【0016】
この中実竿体10と中空竿体11とは、連結部12を受け部13に穂先側から挿入した上で接着剤によって接着固定される。その上で、図2に示すように、中日竿体10と中空竿体11との境界面部分から軸方向に一定の範囲で、ゴム系塗料14がその両竿体の周面に塗布される。ゴム系塗料14としては、スチレンゴム系塗料など周知の塗料を利用できる。このゴム系塗料14は、例えば、中実竿体10と中空竿体11との境界面からそれぞれ5〜10mm程度の軸方向範囲に塗布すれば足り、中実竿体10と中空竿体11との段差を埋め得る程度に塗布する。塗布する厚みも任意であるが、30〜100μm程度に、好ましくは50μm程度に塗布するのがよい。係る範囲の厚みに設定することで、その後の表面処理に支障を生じせしめることもない。
【0017】
このように連結される中実竿体10と中空竿体11との周面には、図3に示すように、さらに、表面塗料15が塗布される。表面塗料15は、例えば、エポキシ樹脂等の下地塗料を塗布した上で、主剤,さらにクリア剤を塗布する等、複数の塗料を塗布してもよい。このような中実竿体10と中空竿体11との一体的な表面処理によって、全体として外観上一本の竿体となる。
【0018】
このような穂先竿3を有する釣竿では、連結部12と受け部13とが2段階テーパ構造となっており、2つの態様で相互に接着固定され接着力が高められている。また、中実竿体10と中空竿体11との連結部分の周面をゴム系塗料14がコーティングしており、このゴム系塗料14が、応力が集中しがちな中実竿体10と中空竿体11との連結部分、特に、両竿体の連結部分の周面の微妙なズレ等を吸収する。このようなゴム系塗料14により、その周面にさらに積層される表面塗料15でのクラックの発生が防止される。また、このようなゴム系塗料の塗布工程は比較的簡易であり、生産性・コストの低下も図れることになる。
【0019】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明の第2実施形態を採用する釣竿にあっても、穂先竿は、上記第1実施形態と同様に2本の竿体を連結して一本の竿体としたものを用いている。即ち、図4に示すように、この穂先竿は、穂先側に位置する中実竿体20とその竿元側に位置する中空竿体21との2本の竿体を連結して固定したものである。
【0020】
中実竿体20及び中空竿体21の構成は、原則として上記第1実施形態と同様のものである。即ち、中実竿体20は竿元側端部に連結部22を有し、中空竿体21は穂先側端部内周が受け部23となっている。そして、この連結部22を受け部23に挿入した上で接着剤によって相互に接着固定されている。
この連結部22には、図4に示すように、複数の切溝22aが網目状に形成されている。この切溝22aは、中実竿体20を形成した後に周面を削って径を調整して連結部22とした上で、さらに、その周面を削り掘って形成される。この切溝22aが接着剤の「溜まり」となる。「溜まり」としての機能を十分に果たすためには切溝22aの深さは凡そ0.1〜0.5mm程度に設定するのが好ましい。なお、この実施形態にあっては、中実竿体20の連結部22の2段テーパ(図2のX,Y参照)の双方に切溝22aを形成しているが、何れか一方の範囲のみに切溝22aを形成してもよい。
【0021】
また、図4においては網目状に切溝22aを形成しているが、これに代えて、図5に示すように、中実竿体の軸方向・周方向に格子状の切溝を形成してもよい。この場合、中実竿体の連結部のみではなく、中空竿体の受け部側の内周面にも同様の切溝を形成してもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様であり説明を省略する。
【0022】
このような穂先竿を有する釣竿でも、上記第1実施形態と同様の作用効果を得られることになる。さらに、この釣竿の穂先竿では、連結部22の周面の切溝22aが、接着剤の「溜まり」を提供し、連結部22と受け部23との接着剤による相互の接着力を高めている。特に、格子状、網目状に切溝22aを形成して、切溝を周方向・軸方向の何れにも形成しておくことで、中実竿体20と中空竿体21との引っ張り方向(軸方向)の接着力の向上のみではなく、ねじれ方向(周方向)への接着力の向上も図られている。このような接着力の向上により中実竿体20と中空竿体21とのズレがさらに抑えられ、相互の竿体の連結部分に於けるクラックの発生もさらに少なくなる。
【0023】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明の第3実施形態を採用する釣竿にあっても、穂先竿は、上記第1実施形態と同様に2本の竿体を連結して一本の竿体としたものを用いている。即ち、図6及び図7に示すように、この穂先竿は、穂先側に位置する中実竿体30とその竿元側に位置する中空竿体31との2本の竿体を連結して固定したものである。
【0024】
中実竿体30及び中空竿体31の構成も上記第1実施形態と同様のものであり、中実竿体30は竿元側端部に連結部32を有し、中空竿体31は穂先側端部内周が受け部33となっている。そして、この連結部32を受け部33に挿入した上で接着剤によって相互に接着固定されている。
この連結部32には、竿元側端部から穂先側に向かって割り32aが形成されている。この割り32aの軸方向の範囲は、連結部32の2段階テーパ(図2のX,Y参照)にあって、ストレートテーパ部分Yのみではなく逆テーパ部分Xに至るように形成されている。
【0025】
なお、その他の構成については第1実施形態と同様である。
このような穂先竿を有する釣竿でも、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。さらに、連結部32に割り32aを形成しておくことで、中実竿体30と中空竿体31とが2重に配置されることで生じがちな局部的な剛性の変化を可及的に抑えている。また、この割り32aが接着剤の「溜まり」となって相互の接着力の向上にも資する。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係る釣竿では、中実竿体と中空竿体との十分な連結力を担保しつつ、これらの竿体の連結部分で生じがちなクラック等の発生も効果的に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を採用した釣竿の全体図。
【図2】図1の穂先竿3の中実竿体10と中空竿体11との連結部分の断面参考図。
【図3】図1の穂先竿3の中実竿体10と中空竿体11との連結部分の断面図。
【図4】本発明の第2実施形態を採用した穂先竿の図2に相当する図。
【図5】本発明の第2実施形態の変形例を示した図。
【図6】本発明の第3実施形態を採用した穂先竿の図2に相当する図。
【図7】図6の穂先竿の参考図。
【符号の説明】
1 元竿
2 中竿
3 穂先竿
10,20,30 中実竿体
11,21,31 中空竿体
12,22,32 連結部
13,23,33 受け部

Claims (3)

  1. 魚釣りに用いる釣竿であって、
    竿元側端部に連結部を有する中実竿体と、
    前記中実竿体の連結部が挿入される受け部を穂先側端部に有し、前記連結部が前記受け部に挿入されて接着固定されている中空竿体と、
    前記中実竿体の周面と前記中空竿体の周面との境界付近に塗布されて形成されているゴム系塗料層と、
    前記中実竿体,中空竿体及びゴム系塗料層上に積層される表面塗料層と
    を備える釣竿。
  2. 前記連結部の周面に複数の切溝が形成されている、請求項1に記載の釣竿。
  3. 前記連結部は竿元側端部から穂先側に向かって軸方向に割りが形成されている、請求項1又は2に記載の釣竿。
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