JP4713704B2 - 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物 - Google Patents

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関し、特に、銅、銀電極などの各種電極の保護を目的とした活性エネルギー線硬化型の組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子部品等における各種電極の外気(湿気)からの保護剤(保護コート)としては、熱硬化系、紫外線硬化系及び室温硬化系の樹脂組成物が広く知られている。例えば、熱硬化系の樹脂組成物としては特公平1−19834号公報に開示されているようなエポキシ樹脂系樹脂組成物があり、また、紫外線硬化系の樹脂組成物としては特開昭60−103343号公報に開示されているようなアクリル系樹脂組成物がある。
【0003】
ところが、これらの樹脂組成物のうち、熱硬化系の樹脂組成物では、硬化処理に際して長時間の加熱を要するために、作業性が悪く、また他の部材への悪影響が懸念される。
紫外線硬化系の樹脂組成物では、硬化速度が早く、低温で硬化できるという利点があるものの、硬化収縮が大きいために密着性が悪く、硬化物に歪みが残りクラックが発生したり、耐水性が悪いという欠点がある。
室温硬化系の樹脂組成物では、硬化設備が必要でなく、安価であるという利点があるものの、硬化に長時間を要すること、さらには硬化させる場所を確保する必要があり、作業性が悪いという欠点がある。
【0004】
これに対し、上述した各種欠点を克服し得る樹脂組成物として、紫外線硬化系の樹脂組成物の中でも特に低硬化収縮を特徴とする光カチオン触媒を使用した樹脂組成物が提案されている(特公平2−30326号、特開平5−186755号公報参照)。しかしながら、かかる樹脂組成物では、金属電極上で用いると、光カチオン触媒が原因と思われる金属電極の腐食が生じ易いという新たな問題が生じる。
【0005】
一方で、フラットパネルのモジュール等に代表されるように、外部電極のファインパターン化が進行する今日では、その電極は、ガラス基板上にフォトリソ法にて狭ピッチにパターン化された焼成銀ペーストにて作成されている。そのため、かかる狭ピッチにパターン化された金属電極を、上述したような従来の樹脂組成物にて保護しようとしても、充分に保護性能が得られない。
【0006】
また、電子機器の軽薄短小化のために、最近ではPETフィルム上に銀ペーストをスクリーン印刷し、電極を形成する場合(フィルム液晶、タッチパネル)もあるが、このとき保護膜には、保護という機能以外にも、フィルム素材の低そり、寸法安定性、密着性という重要な特性が要求される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、紫外線硬化系の樹脂組成物が有する利点を具えつつ、耐水性や基材に対する密着性に優れ、マイグレーションによる電極間のショートに耐え得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。
ここで、マイグレーションによる電極間のショートに耐え得る性能のことを、以下、単に「耐マイグレーション」という。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その基本的な第一の態様によれば、(A)活性エネルギー線硬化性樹脂及び(B)光ラジカル重合開始剤を含む樹脂組成物であって、上記(A)成分の50質量%以上が(A′)分子内に1つのラジカル重合性のエチレン性不飽和二重結合と、1つ以上の水酸基及び芳香族環を有する活性エネルギー線硬化性樹脂であり、さらに(D)飽和ポリエステル樹脂及び/又は(E)シランカップリング剤を含むことを特徴としており、第二の態様においては、上記成分に加えてさらに(C)エポキシ樹脂を含むことを特徴としている
【0009】
このような本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、上記活性エネルギー線硬化性樹脂(A′)は、下記一般式(1)又は(2)で示される(メタ)アクリレート化合物であるものが好ましい。
【化2】
Figure 0004713704
(式中、Xは水素原子又はメチル基を表わし、Yは−C(CH−、−SO−、−CH−又は直接結合を表わし、R及びRは炭素数1〜12の直鎖状、環状もしくは分岐状のアルキル基を表わし、mは0〜4の整数、nは0〜5の整数を表わす。)
【0010】
また、前記エポキシ樹脂(C)は、軟化点が40℃以上の、室温で半固形もしくは固形状態にあるものが好ましく、さらに好適には、分子中に下記一般式(3)で示される部分構造を有するエポキシ化合物、あるいは下記式(4)又は(5)で示されるいずれかの構造を有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【化3】
Figure 0004713704
(式中、はエポキシ基又は/及びビニル基を表わし、pは1〜100の整数を表わす。但し、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含む。)
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂(A)として分子内に1つのラジカル重合性のエチレン性不飽和二重結合と、1つ以上の水酸基及び芳香族環を有する活性エネルギー線硬化性樹脂(A′)を必須の構成成分とし、かつ(A)成分の50質量%以上含有される点に第1の特徴がある。
この活性エネルギー線硬化性樹脂(A′)は、光硬化反応に関与する官能基(エチレン性不飽和二重結合)の数を1分子中に1つと限定したことで、光ラジカル重合する際の硬化収縮の影響を最小限に抑え、密着性低下の防止に寄与していると考えられる。そして、水酸基の存在は基材との密着性に大きく寄与し、さらに芳香族環の存在は耐水性に寄与していると考えられる。
【0012】
なお、組成物の特性に悪影響を及ぼさない範囲内、即ち(A)成分全体の50質量%未満の範囲内であれば、(A″)分子内に2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、及び/又は水酸基や芳香族環を有していない活性エネルギー線硬化性樹脂など、上記(A′)成分以外の他の活性エネルギー線硬化性化合物を配合することができる。
【0013】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂(A′)としては、工業的に容易に入手できる単官能エポキシ(メタ)アクリレート類を用いることができ、一般的な製法により単官能エポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリレート化したものである。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、o−ビフェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなどの(メタ)アクリレート化物が挙げられる。
特に、新規な活性エネルギー線硬化性樹脂である、下記一般式(1)又は(2)で示される(メタ)アクリレート化合物、具体的にはo−ビフェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル等の(メタ)アクリレート化物が疎水性の点で優れている。
【化4】
Figure 0004713704
(式中、Xは水素原子又はメチル基を表わし、Yは−C(CH−、−SO−、−CH−又は直接結合を表わし、R及びRは炭素数1〜12の直鎖状、環状もしくは分岐状のアルキル基を表わし、mは0〜4の整数、nは0〜5の整数を表わす。)
【0014】
なお、上記活性エネルギー線硬化性樹脂(A′)の他に加えてもよい化合物(A″)としては、活性エネルギー線の照射によりエチレン性不飽和二重結合がラジカル重合する化合物であれば特に限定されないが、(メタ)アクリレート系化合物が特に好ましい。また、アクリロイル基(メタクリロイル基)以外の官能基を有していてもよい。さらに、単官能で樹脂骨格中に芳香環やシクロ環を有していると密着性、疎水性の点で有利である。
【0015】
具体的には、4−(メタ)アクリロキシトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類などを挙げることができる。
【0016】
光ラジカル重合開始剤(B)は、活性エネルギー線によって前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)をラジカル重合させる化合物であれば特に限定されない。具体的には、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等の(ビス)アシルホスフィンオキサイド類;ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン類;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等アミノアセトフェノン類;ベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、カンファーキノン等のα−ジケトン類などが挙げられる。
【0017】
また、上記光ラジカル重合開始剤(B)は、使用する光源等に応じて数種を併用することも可能であり、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアミノアセトフェノン類とチオキサントン類又はアミノベンゾフェノンとの組み合わせ;ベンゾフェノン類とアミノベンゾフェノン類との組み合わせ;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のα−ヒドロキシケトン類と2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等の(ビス)アシルホスフィンオキサイド類との組み合わせ等が挙げられる。さらにこれら公知慣用の光ラジカル重合開始剤には、トリエタノールアミンなどの第3アミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの光開始助剤を加えることができる。
【0018】
前記したような光ラジカル重合開始剤(B)の中でも、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などのフェニルケトン系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどの(ビス)アシルホスフィンオキサイド類やチタノセン化合物が好ましい。
【0019】
これら光ラジカル重合開始剤(B)の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100質量部に対して0.5質量部以上、20質量部以下が適当であり、好ましくは0.5〜5質量部である。光ラジカル重合開始剤(C)の配合量が0.5質量部未満では、活性エネルギー線による光硬化が充分に進行せず、一方、20質量部を超えて大量に配合してもその硬化が飽和状態となるため経済的でなく、また逆に組成物の光硬化後に残存して硬化物の特性を低下させるおそれがあるからである。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(C)エポキシ樹脂を加えることでさらに特性の向上が達成される。
このエポキシ樹脂(C)は、光硬化反応に関与しないため、硬化収縮の低減(密着性の改善)に効果がある。
エポキシ樹脂(C)としては、公知慣用の各種エポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化合物、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N,N′,N′−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン化合物などの公知慣用のエポキシ化合物が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物では、これらのエポキシ樹脂の中でも特に、軟化点が40℃以上の、室温で半固形もしくは固形状態にあるエポキシ樹脂を使用することが好ましい。これにより、樹脂組成物の表面硬化性(指触乾燥性)、耐水性が向上する。さらに、疎水性骨格を有するエポキシ樹脂を選択することにより、樹脂組成物の疎水性を向上させ、マイグレーションを効果的に防止することができる。
【0022】
本発明者らは、耐マイグレーションに寄与する樹脂として、エポキシ樹脂を含む数々の疎水性樹脂の中から上記の如き室温で半固形もしくは固形状態にあるエポキシ樹脂を選定したが、さらに検討を重ねた結果、これらのエポキシ樹脂の中でも、エピクロルヒドリンの誘導体よりは、アリル基を過酢酸でエポキシ化した下記構造を有するもの、即ち、分子中に下記一般式(3)で示される部分構造を有するエポキシ化合物、あるいは下記式(4)又は(5)で示されるいずれかの構造を有する脂環式エポキシ化合物が、耐マイグレーション性に優れていることが明らかとなった。これはエピクロルヒドリン誘導体に比べ、下記構造を有するエポキシ化合物は不純物イオン濃度が低いため、電気特性に優れていると考えられる。
【化5】
Figure 0004713704
(式中、はエポキシ基又は/及びビニル基を表わし、pは1〜100の整数を表わす。但し、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含む。)
【0023】
特に、耐マイグレーション性の点では、分子中に上記一般式(3)で示される部分構造を有するエポキシ化合物において、下記式(a)及び(b)で表わされる官能基の数の比(a)/(b)が平均1.0〜4.0であることが好ましい。
【化6】
Figure 0004713704
このようなエポキシ樹脂としては、ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド3150、セロキサイド2085などを挙げることができる。
上記一般式(3)で示される官能基を有するポリエーテル型のエポキシ樹脂は、特公平7−25864号に記載があり、詳しく説明されているので、詳細については上記公報を参照されたい。
【0024】
これらエポキシ樹脂(C)の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100質量部に対して5質量部以上、60質量部以下が適当であり、好ましくは5〜40質量部である。この理由は、エポキシ樹脂(C)の配合量が5質量部未満では、前記したような効果が得られ難く、一方、60質量部を超えて大量に配合しても期待される効果が飽和状態となるために経済的でなく、また逆に組成物の光硬化性を妨げるおそれがあるからである。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上述した各成分に加えてさらに飽和ポリエステル樹脂(D)を配合することが好ましい。この飽和ポリエステル樹脂(D)は、被着体との密着性を向上させる効果があるものであれば特に限定されない。具体的には東洋紡バイロンシリーズ(東洋紡績(株)製)のバイロン200、220、240、245、270、280、290、296、300、500、530、550、560、600、630、650、BX1001、GK110、130、140、150、180、190、250、330、590、640、680、780、810、880、890等が挙げられる。
さらに、このような飽和ポリエステル樹脂は、密着性を向上させる効果の他に、硬化物を基材から剥がす行為が容易になるというリペア性に優れる特性を有する。
【0026】
この飽和ポリエステル樹脂(D)の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100質量部に対して5質量部以上、50質量部以下が適当であり、好ましくは5〜30質量部である。この理由は、飽和ポリエステル樹脂(D)の配合量が5質量部未満では、前記したような効果が得られ難く、一方、50質量部を超えて大量に配合しても期待される効果が飽和状態になるために経済的でなく、また逆に組成物の光硬化性を阻害したり、硬化物の特性を低下させるおそれがあるからである。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、所望によりシランカップリング剤(E)を加えてもよい。シランカップリング剤(E)を加える目的は、基材、特にガラスとの密着性を向上させるためである。シランカップリング剤(E)としては、基材との密着性が向上するものであれば特に限定されない。
具体的には日本ユニカー(株)製のA−143、A−150、A−151、A−171、A−172、A−174、A−186、A−187、A−189、A−1100、A−1120及びA−1160、東芝シリコーン(株)製のTSL−8310、TSL−8311、TSL−8320、TSL−8395、TSL−8325、TSL−8331、TSL−8340、TSL−8345、TSL−8380、TSL−8350、TSL−8355、TSL−8370及びTSL−8375等が挙げられる。
【0028】
以上説明したような本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、前記したような成分の他に添加剤を適宜配合することが可能である。例えば、硬化収縮率低減、熱膨張率低減、寸法安定性向上、弾性率向上、粘度調整、熱伝導率向上、強度向上、靭性向上等の観点から有機又は無機の充填剤を配合できる。このような充填剤としては、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物、金属塩等を用いることができ、形状については粒子状、繊維状等特に限定されない。なお、上記ポリマーの配合に当っては、充填剤としてではなくポリマーブレンド、ポリマーアロイとして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に溶解、半溶解又はミクロ分散させることも可能である。
【0029】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、添加剤として有機又は無機の顔料、染料等の着色剤を配合せしめ、塗料、インク等の用途に供することもできる。
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物では、その他の添加剤として柔軟性付与剤、可塑剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、分散安定剤、流動性付与剤等を適宜配合することができる。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、公知慣用の方法により基材上に塗布し、形成された塗布層に活性エネルギー線を照射し、エチレン性不飽和結合を有する化合物を光ラジカル重合させることにより硬化する。
活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線、電子線なども露光用活性エネルギー線として利用できる。
【0031】
なお、本発明の樹脂組成物は、液状、ペースト状及びフィルム状のいずれの形態でも使用することができる。液状で用いる場合、樹脂組成物の粘度を調整するために適宜、有機溶剤等の公知の粘度調整剤を用いて粘度を調整することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下の実施例及び比較例で用いた活性エネルギー線硬化性樹脂(A−1)〜(A−3)は下記の化学構造を有するものである。
【化7】
Figure 0004713704
【0033】
実施例1〜
1に示す各成分を所定の割合になるように撹拌装置で混合し、各種成分組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0034】
表1
Figure 0004713704
【0035】
比較例1〜6
に示す各成分を所定の割合になるように撹拌装置で混合し、各種成分組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【表
Figure 0004713704
【0036】
こうして調製した各樹脂組成物について、吸水率、耐マイグレーション性、密着性、反り、及びリペア性について評価した。評価の方法は、以下のとおりである。なお、各樹脂組成物は、紫外線照射装置(オーク製作所(株)メタルハライドランプ)を使用し、照射量2000mJ/cmで硬化した。
【0037】
(1)吸水率:
各樹脂組成物試料を、それぞれ直径150mm、深さ2mmの円形のテフロン製容器に流し込んだ後、硬化させ、測定用ペレットを作成した。この測定用ペレットの質量(a)を測定した後、20℃のイオン交換水に24時間浸漬し、浸漬後の質量(b)を測定した。このときの吸水率は{((b)−(a))/(a)}×100で求めた値(%)となる。
【0038】
(2)耐マイグレーション性試験:
試験用基板として、コーニング1737のガラス板(厚さ0.7mm)上に市販の焼成型銀ペーストでくし型電極(L/S=100/100μm)を作成したものを使用した。
この試験用基板のくし型電極上に、各樹脂組成物を厚さ2mmとなるように塗布した後、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽内で1500時間放置した。このときのくし型電極の印加電圧はDC100Vとし、随時、恒温恒湿槽内で絶縁抵抗値を測定した。
耐マイグレーション性の評価は、前記測定で絶縁抵抗値が1.0×10Ω以下の値を示した時点を短絡とみなし、試験開始から短絡までの時間で評価した。
【0039】
(3)密着性試験(対ガラス基板):
上記耐マイグレーション性試験(2)において、温度85℃、相対湿度85%、DC100V下で1500時間後のガラス及び銀電極とペーストの密着性を目視で確認した。評価は以下の通りである。
◎:1500時間以上でも、浮きと剥がれが見られなかった。
○:1500時間後に電極上に若干の浮きが見られた。
△:1500時間以内にガラスから剥離した。
×:硬化直後に剥離した。
【0040】
(4)密着性試験(対PETフィルム):
100ミクロン厚のPETフィルムに各樹脂組成物を膜厚25ミクロンになるようアプリケーターを用いて塗布し、硬化後、2cmx5cmに切り出したフィルムを試験片とした。これを温度40℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽に投入し、剥離の状態を評価した。
◎:1000時間以上でも、浮きと剥離が生じない。
○:1000時間まで浮きと剥離が生じない。
△:1000時間内に剥離した。
×:硬化直後又は試験片作製時に剥離が生じた。
【0041】
(5)反り:
前記密着性試験(4)で作製した試験片の反り量を測定した。
◎:反り量が1mm以下で殆ど反っていない。
○:反り量が2mm以下。
×:反り量が2mm以上。
【0042】
(6)リペア性:
各樹脂組成物をガラス基板上に適量ポッティングし硬化させたサンプルをメチルエチルケトンに浸漬し、きれいに剥離できるまでの時間を測定した。
【0043】
前記各試験の結果を表1〜表にそれぞれ示す。
1に示す結果から明らかなように、本発明によれば、光ラジカル重合性の樹脂組成物中に水酸基と芳香族環を有する単官能アクリレートを使用することにより、ファインピッチの銀電極に対しても充分な電極保護の効果を示すと共に、ガラスやフィルム基材等への密着性、さらには基材の反り低減を実現することができる。
また、(1)エポキシ樹脂を添加することにより一層のマイグレーション防止効果が得られること、(2)エポキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、シランカップリング剤の添加により被着体に対する密着性を一段と高めることができること、(3)エポキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂の添加により一層の反りの低減を実現できること、(4)飽和ポリエステル樹脂の添加によりリペア性を向上し得ること、が明らかとなった。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、紫外線硬化系の樹脂組成物が有する利点を具えつつその欠点が解消され、疎水性や基材に対する密着性、耐マイグレーション性にも優れた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することができる。
従って、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、従来の熱硬化系や室温硬化系の樹脂組成物に比べて作業性が良好で、各種被着体に対する密着性、各種電極のマイグレーション防止効果に優れた活性エネルギー線硬化型の接着剤及びコーティング剤として極めて有用なものである。

Claims (4)

  1. (A)活性エネルギー線硬化性樹脂及び(B)光ラジカル重合開始剤を含む樹脂組成物であって、上記(A)成分の50質量%以上が(A′)分子内に1つのラジカル重合性のエチレン性不飽和二重結合と、1つ以上の水酸基及び芳香族環を有する活性エネルギー線硬化性樹脂であり、さらに(D)飽和ポリエステル樹脂及び/又は(E)シランカップリング剤を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
  2. さらに(C)エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
  3. 前記エポキシ樹脂(C)は、軟化点が40℃以上の、室温で半固形もしくは固形状態にある請求項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
  4. 前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A′)は、下記一般式(1)又は(2)で示される(メタ)アクリレート化合物である請求項1〜のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
    Figure 0004713704
    (式中、Xは水素原子又はメチル基を表わし、Yは−C(CH−、−SO−、−CH−又は直接結合を表わし、R及びRは炭素数1〜12の直鎖状、環状もしくは分岐状のアルキル基を表わし、mは0〜4の整数、nは0〜5の整数を表わす。)
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