JP7245096B2 - 紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、電子部品の電気接続部分などの絶縁処理に適した紫外線硬化型のコート剤樹脂組成物に関する。
ガラスエポキシ、紙フェノール、ポリイミド等の基材に代表されるプリント配線板へ半導体等の電子部品を実装する際に、その電気接続部には接続信頼性を高めるため防湿絶縁コート剤が塗布される場合がある。従来このコート剤には熱硬化樹脂の使用、あるいは有機溶剤に溶解した樹脂を塗布後に乾燥する方法が一般的であった。しかし熱硬化樹脂の場合は樹脂硬化に加熱工程が必要で硬化時間がかかるため生産性に問題があり、また有機溶剤を使用する樹脂は塗布時に溶剤を揮発させるため環境への負荷が高いという問題が有った。
こうした問題を解決すべく、短時間で硬化が可能な紫外線硬化性コート剤が開発されてきた。例えば特許文献1では末端がアクリロキシ基またはメタクリロキシ基であるポリブタジエンと、不飽和二重結合を有する単量体と重合開始剤を含有する組成物が開示されている。また更に、透湿度が小さく基板材料に対して充分な接着性を持つコート剤として、特許文献2では水添ポリブタジエンジオールから合成したエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、イソボルニルアクリレートとベンゾフェノンを含む組成物が開示されている。しかしながらこれら組成物は、光源がLED(発光ダイオード)の場合は表面の硬化性が不十分という課題があった。
特開2009‐179655号公報 特許第5162893号公報
本発明の課題は、電子部品の電気接続部分などの絶縁処理に適し、紫外線光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能であると共に基材との密着性が良好で、特に表面硬化性に優れた紫外線硬化型の絶縁コート剤樹脂組成物を提供することにある。
請求項1記載の発明は、水添ポリイソプレン骨格又は水添ポリブタジエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、脂環骨格を有する(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、パラフィンワックス(D)と、を含み、前記(C)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(c1)と、水素引き抜き型光重合開始剤(c2)を含み、(c2)の配合量が光重合性成分100重量部に対し0.15~3重量部であることを特徴とする紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物を提供する。
請求項2記載の発明は、更に3級アミン(E)を含むことを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物を提供する。
上記の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、水添ポリイソプレン骨格又は水添ポリブタジエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、脂環骨格を有する(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、パラフィンワックス(D)と、3級アミン(E)と、を含み、前記(C)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(c1)と、水素引き抜き型光重合開始剤(c2)を含み、(c2)の配合量が光重合性成分100重量部に対し0.15~3重量部であることを特徴とする紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物を提供する。
請求項2記載の発明は、前記(B)がイソボルニルアクリレートであることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物を提供する。
本発明の組成物の構成は、水添ポリイソプレン骨格又は水添ポリブタジエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、脂環骨格を有する(メタ)アクリレート(B)と、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(c1)と、水素引き抜き型光重合開始剤(c2)と、パラフィンワックス(D)である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。
本発明で使用されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、防湿絶縁層を構成するベースオリゴマーであり、例えばポリオールに、複数のイソシアネート基を有する化合物、および水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる。使用するポリオールは、透湿度が低く絶縁性に優れ、また成形皮膜に適度な柔軟性を付与する水添ポリイソプレン系又は水添ポリブタジエン系である。官能基数は反応性と硬化収縮率のバランスから2~4官能が好ましく、2官能が更に好ましい。
前記(A)の重量平均分子量(以下Mw)は、3,000~50,000が好ましく、5,000~30,000が更に好ましい。3,000以上とすることで硬化物の表面粘着性を低くすることができ、50,000以下とすることで作業性が良い粘度にコントロールしやすくなる。なおMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、スチレンジビニルベンゼン基材の充填材を用いたカラムでテトラハイドロフラン溶離液を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定、算出した。
前記(A)の配合量は、硬化物の透湿度と組成物の特性バランスから全固形分に対し15~75重量%が好ましく、18~70重量%が更に好ましく、20~65重量%が特に好ましい。15重量%以上とすることで充分な剥離強度を確保することができ、75重量%以下とすることで作業性に適した粘度にコントロールしやすくなる。市販の水添ポリイソプレン骨格を持つウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしてはRX71-38(商品名:亜細亜工業社製、Mw16,800、2官能)が、水添ポリブタジエン骨格を持つウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしてはCN9014NS(商品名:アルケマ社製、Mw10,000、2官能)がある。
本発明で使用される脂環骨格を有する(メタ)アクリレート(B)は、(A)を希釈すると同時に(A)と反応して皮膜硬度を向上させるために配合される。脂肪族環式骨格をもつ(メタ)アクリレートとしては、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレートなどがあげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、硬化収縮を低く抑えられる点で単官能が好ましく、特にそれらの中では低粘度で皮膚刺激性や臭気が低いイソボルニルアクリレートが好ましい。
前記(B)の配合量は、皮膜強度と粘度等の特性バランスから全固形分に対し20~80重量%が好ましく、25~75重量部が更に好ましく、30~72重量%がとりわけ好ましい。20重量%以上とすることで充分な反応性と皮膜強度を確保でき、80重量%以下とすることで硬化皮膜に充分な柔軟性を確保できる。
更に前記(B)以外の(メタ)アクリレートとして、直鎖アルキル基含有、水酸基含有、アミノ基含有の(メタ)アクリレートを配合しても良い。特に直鎖アルキル基は低極性であるため、配合することで組成物全体の極性を下げ、絶縁性を向上させることが可能である。Cの数は4以下では臭気や揮発性が高く、13以上では硬化性が低下する傾向があるため、C5~12が好ましく、C8~10が更に好ましい。例えばn-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では希釈性が高く低臭気で低アウトガスのn-オクチルアクリレートが好ましい。全固形分に対する配合量は5重量%以下が好ましい。
本発明で使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの吸収でラジカル種を生成する開始剤で、例えばベンジルケタール、α-ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイドに代表される分子内開裂型開始剤と、ベンゾフェノン、チオキサントンに代表される水素引き抜き型開始剤などを挙げられが、特にアシルフォスフィンオキサイド(c1)と、水素引き抜き型開始剤(c2)を含むことを特徴としている。
前記(C)のアシルフォスフィンオキサイド(c1)は長波長に吸収があるためLED光源に対する感応性が高く、又フォトブリーチング効果で内部硬化性に優れる光重合開始剤である。例えば2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられ、市販品としてはOmnirad TPO及び819(商品名:IGM社製)、UV-cureAPO(商品名:大同化成工業社製)などがある。
前記(C)の水素引き抜き型開始剤(c2)は紫外線や電子線などの吸収で近傍の水素供与体と反応しラジカル種を生成する開始剤で、前記(c1)との併用で、LED光源に対し効率的に光開始剤の吸収を起こすことができ、硬化性を向上させることが可能となる。特にチオキサントンは波長域が380~420nmで吸収極大を有しており、発光波長域が365~420nmであるLED光源と重なるため好ましい。更に水素供与体として第三級アミン(E)を用いることで硬化速度を非常に早くすることができ、又表面硬化性の向上や密着性の改善が可能となる。
前記(c2)としては、2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4‐ジクロロチオキサントン、2‐イソプロピルチオキサントンなどが挙げられ、市販品としてはKYACUREDETX-S(商品名:日本化薬社製)、SpeedCureDETX(商品名:LAMBSON社製)などがある。
前記(C)の配合量は、光重合性成分100重量部に対し0.5~10重量部が好ましく、1~5重量部が更に好ましい。0.5重量部以上とすることで充分な硬化性が確保でき、10重量部以下とすることで過剰添加とならず充分な保存安定性を確保することができる。
前記(c2)の配合量は、光重合性成分100重量部に対し0.15~3重量部であり、0.2~2重量部が好ましい。0.15重量部以上とすることで光源がLEDでも充分な表面硬化が確保でき、3重量部以下とすることで過剰添加とならず充分な保存安定性を確保することができる。前記(c1)と(c2)の配合比率としては、(c1):(c2)=1:0.1~1:1が好ましい。
本発明で使用されるパラフィン(D)は、LED光源に対する硬化特性を向上させ、硬化皮膜表面のべとつきを抑える効果が有り、光重合開始剤の配合量を抑えることができる。特に揮発性が低い点で、常温で液体よりも固体であることが好ましい。前記(F)の配合量は、全固形分に対し0.1~5重量%以下が好ましく、0.2~3重量%が更に好ましく、0.3~1重量%が特に好ましい。
本発明の組成物には、更に3級アミン(E)を配合することで、前記(c2)との反応により水素引き抜き反応を起こしラジカル種を発生させ、組成物の光反応性を向上させることができる。例えば安息香酸誘導体アミンとして4‐ジメチルアミノ安息香酸エチル、5‐ジメチルアミノ安息香酸‐2‐エチルへキシルが、脂肪族誘導体アミンとしてトリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンが、フェノール誘導体アミンとしてトリス‐2、4、6‐(ジメチルアミノメチル)フェノール、ビス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどが挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、硬化性に優れる点で、4‐ジメチルアミノ安息香酸エチル、トリエチルアミン、トリス‐2、4、6‐(ジメチルアミノメチル)フェノールが好ましい。
前記(E)の配合量は、前記(c2)100重量部に対し10~200重量部が好ましく、20~150重量部が更に好ましい。10重量部以上とすることで十分な硬化性向上が可能で、200重量部以下とすることで安定した絶縁性を確保できる。
本組成物には、性能を損なわない範囲で、必要に応じシランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、難燃剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、分散剤、チクソ付与剤などの添加剤も併用することができる。
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。また配合量は重量部を示す。
実施例1~9
遮光ビンに、前記(A)としてRX71-38(商品名:亜細亜工業社製、水添ポリイソプレン骨格、Mw16800、2官能)及びCN9014NS(商品名:アルケマ社製、水添ポリブタジエン骨格、Mw10000、2官能)を、(B)としてイソボルニルアクリレートを、(c1)としてOmnidradTPO(商品名:IGM社製)を、(c2)としてDETX-S(商品名:日本化薬社製、2,4ジエチルチオキサントン)を、前記(D)としてパラフィンワックス(粒状、融点60~62℃)を、前記(E)としてEPA(4‐ジメチルアミノ安息香酸エチル)及びトリエチルアミンを、アクリルモノマーとしてNOAA(商品名:共栄社化学社製、n-オクチルアクリレート)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し実施例1~9の紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物を調整した。
比較例1~6
実施例で用いた材料の他、ウレタンアクリレートとしてRX8-22(商品名:亜細亜工業社製、ポリプロピレングリコール骨格、Mw17600、2官能 )をアクリルアクリレートとしてXMAP MM110C(商品名:カネカ社製、2官能)を、光重合開始剤としてOmnidrad184(商品名:IGM社製、分子内開裂型開始剤)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、比較例1~6の紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物を調整した。
表1
Figure 0007245096000001
評価方法は以下の通りとした。
表面硬化性:PETフィルム(A4300、東洋紡製、厚み125μm)上に、幅20mm、厚さ100μmとなるよう樹脂組成物を塗布し、その上からパナソニック製のLED-UV照射装置UD-40を用い、出力1000mW/cm、積算光量が2000mJ/cmの条件で紫外線照射して硬化させる。その後、硬化物の表面を完全に覆うようにしてPTEフィルム(A4300、東洋紡製、厚み50μm)を気泡が入らないようにラミネートし、ラミネートしたPETフィルム端部をプッシュプルゲージで90°方向に引っ張って荷重を測定し、0~0.2Nを◎、0.2超~0.5Nを○、0.5N超を×とした。
剥離強度:コロナ放電したポリイミドフィルム(ユーピレックス、宇部興産製、厚み25μm)上に、幅25mm、厚さ100μmとなるよう樹脂組成物を塗布し、PETフィルム(A4300、東洋紡製、厚み50μm)を気泡が入らないようにラミネートし、その上から前記表面硬化性評価と同じ条件で紫外線照射して硬化させ、当該PETフィルム端部をミネベア製の引張圧縮試験機テクノグラフTGI-1kNを用いて180度方向にクロスヘッドスピード60mm/分で引張った際の剥離強度を測定し、剥離強度が5.0N超を◎、2.0N超~5.0Nを○、2.0N未満を×とした。
評価結果
表2
Figure 0007245096000002
実施例は表面硬化性、剥離強度の面で問題は無く良好であった。特に(E)を配合した実施例2、5,6,9は表面硬化性、剥離強度が共に◎で非常に良好であった。
一方、DETX-Sが下限未満の比較例1、パラフィンを抜いた比較例2、DETX-Sの替わりにOmnirad184を使用した比較例4は表面硬化性が劣り、OmniradTPOを抜いた比較例3は硬化が不十分、(A)以外のオリゴマーを使用した比較例5及び6は相溶性が劣り未溶解となり、いずれも本願発明に適さないものであった。
本発明の樹脂組成物は、電子部品を搭載する回路基板などの電気接点部を保護することに適した樹脂組成物で、光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能で、特に表面硬化性に優れた紫外線硬化型の防湿絶縁コート剤として有用である。



Claims (2)

  1. 水添ポリイソプレン骨格又は水添ポリブタジエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、脂環骨格を有する(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、パラフィンワックス(D)と、3級アミン(E)と、を含み、前記(C)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(c1)と、水素引き抜き型光重合開始剤(c2)を含み、(c2)の配合量が光重合性成分100重量部に対し0.15~3重量部であることを特徴とする紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物。
  2. 前記(B)がイソボルニルアクリレートであることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型絶縁コート剤樹脂組成物。
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