JP4688715B2 - 耐食性および表面性状に優れた表面処理金属板 - Google Patents

耐食性および表面性状に優れた表面処理金属板 Download PDF

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本発明は、耐食性および表面性状に優れた表面処理金属板に関し、詳細には、皮膜中に、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、およびコバルト化合物の金属化合物が多孔質微粒子に内包されたマイクロカプセルを含む表面処理金属板に関するものである。本発明の表面処理金属板は、耐食性および表面性状に優れているので、例えば、家庭用電気製品や建材、自動車部品などの分野に好適に用いられる。
家電製品や自動車などの部品には、耐食性などの向上を目的として、亜鉛系メッキ鋼板の上にクロメート処理やりん酸塩処理などの化成処理が施された表面処理金属板が多く用いられてきた。しかしながら、有害なクロムによる環境汚染の問題を回避するため、最近では、クロメート処理に代替可能な防錆剤を用いたクロムフリーの表面処理技術が提案されている。
このような防錆剤として、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、コバルト化合物の金属化合物が提案されており、例えば、特許文献1には、バナジウム化合物と、ジルコニウム、チタニウム、マンガンなどの特定の金属化合物とを含む表面処理金属板が記載されている。
しかしながら、耐食性に対する要求は益々高くなり、更なる改善が求められている。
また、上記の金属化合物は酸化しやすいため、表面処理皮膜中に金属化合物を含有する表面処理金属板を、恒温恒湿下などに長時間放置すると表面が変色し、黄色いシミ状のムラが発生するといった問題もある。
一方、特許文献2〜4には、防錆剤を芯物質(コア)として内包するマイクロカプセルが記載されているが、バナジウム化合物などの金属化合物については、何も記載されていない。
特開2002−30460号公報 特開昭56−113382号公報 特開昭61−272391号公報 特開2003−286196号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐食性に優れると共に、恒温恒湿下で長時間保存しても変色やムラの発生しない表面性状に優れた表面処理金属板を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐食性および表面性状に優れた表面処理金属板は、表面処理組成物から得られる表面処理皮膜を金属板の少なくとも片面に備えた表面処理金属板であって、前記表面処理組成物は、(a)有機樹脂、有機樹脂とSi系無機化合物、有機樹脂とSi系無機化合物とシランカップリング剤、またはSi系無機化合物とシランカップリング剤の皮膜構成成分と、(b)平均粒径5μm以下の多孔質微粒子に防錆成分が内包されたマイクロカプセルと、を含有し、前記マイクロカプセル(b)に含まれる前記防錆成分は、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、およびコバルト化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の金属化合物であることに要旨を有している。
好ましい実施形態において、前記皮膜構成成分(a)と前記マイクロカプセル(b)との比率は、表面処理組成物の固形分100質量部に対し、60〜95質量部:5〜40質量部の範囲内である。
好ましい実施形態において、前記(a)の有機樹脂は、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、またはこれらの共重合物、またはこれらの変成物である。
好ましい実施形態において、前記(a)のSi系無機化合物は、ケイ酸塩および/またはシリカである。
好ましい実施形態において、前記多孔質微粒子は無機微粒子である。
好ましい実施形態において、前記表面処理組成物は、Crや、表面のエッチングに用いられる酸性物質(例えば、りん酸、硝酸、フッ素化合物など)を含有していない。
好ましい実施形態において、前記表面処理皮膜の付着量は、乾燥重量で0.3〜3g/m2である。
好ましい実施形態において、前記表面処理皮膜は、Crを実質的に含まない。
本発明の表面処理金属板は、防錆剤として有用な特定の金属化合物が多孔質微粒子に内包されてマイクロカプセル化されているため、耐食性に優れていると共に、恒温恒湿下で長時間保存しても黄色いシミ状むらなどが発生せず、表面性状に優れている。
本発明によれば、クロムを用いなくても、クロムと同等またはそれ以上の耐食性を長期間にわたって持続的に発揮し得る金属板が得られる。また、表面のエッチング剤として通常用いられているりん酸などを使用しなくても、表面性状に極めて優れた金属板が得られる。更に、本発明の金属板は、塗装性(必要に応じて表面処理皮膜の上に施される皮膜との密着性)や耐テープ剥離性(表面処理皮膜と金属板との密着性)にも優れている。
本発明者は、表面の着色を防止しつつ、バナジウム化合物に代表される金属化合物による耐食性を最大限に発揮させることが可能な表面処理金属板用の組成物を提供するため、鋭意検討してきた。その結果、金属化合物を所定の多孔質微粒子に充填してマイクロカプセル化を行うと所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
本発明の表面処理金属板は、上記の金属化合物がカプセル壁(ここでは、多孔質微粒子)に内包されているため、マイクロカプセル化しない場合に比べ、良好な耐食性が長期間にわたって持続的に発揮されると共に、表面性状(耐変色性)にも優れた表面処理金属板が得られる。
以下では、本発明で対象とする化合物(バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、およびコバルト化合物)を総称して、「金属化合物」と呼ぶ場合がある。
(表面処理組成物)
まず、本発明を特徴付ける表面処理組成物について説明する。
本発明の表面処理組成物は、(a)有機樹脂、有機樹脂とSi系無機化合物、有機樹脂とSi系無機化合物とシランカップリング剤、またはSi系無機化合物とシランカップリング剤の皮膜構成成分と、(b)平均粒径5μm以下の多孔質微粒子に防錆成分が内包されたマイクロカプセルと、を含有している。
(本発明に用いられる皮膜構成成分(a))
皮膜構成成分(a)としては、有機樹脂(a1)、有機樹脂とSi系無機化合物(a2)、有機樹脂とSi系無機化合物とシランカップリング剤(a3)、Si系無機化合物とシランカップリング剤(a4)が挙げられる。
有機樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどのオレフィン系樹脂、ポリアクリル酸などのアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。また、これらの共重合物(例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、オレフィン−アクリル酸共重合体など)や、これらの変成物(例えば、アクリル変成エポキシ樹脂、エステル変成エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、アクリル変成ウレタン樹脂、ウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂など)も含まれる。更に必要に応じて、固体潤滑剤や架橋剤などを組み合わせて用いても良い。上記のうち、後記する実施例に示すように、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂が好ましい。
Si系無機化合物としては、例えば、ケイ酸塩および/またはシリカが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
このうち、ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウムなどが挙げられる。
シリカとしては、代表的には、コロイダルシリカ、鱗片状シリカなどが挙げられる。そのほか、粉砕シリカ、気相法シリカ、シリカゾルやヒュームドシリカなどの乾式シリカなどを用いても良い。
このうち、特に、コロイダルシリカの使用が好ましい。これにより、表面処理皮膜の強度が高められるほか、腐食環境下では表面処理皮膜の疵部にシリカが濃化し、金属の腐食が抑制されて耐食性が一層高められる。コロイダルシリカは、市販品を用いてもよく、例えば、日産化学工業(株)製の「スノーテックス40」、「スノーテックスXS」、「スノーテックスN」、「スノーテックス20」、「スノーテックスC」、「スノーテックスS」、「スノーテックス20L」、「スノーテックスUP」、「スノーテックスZL」などが挙げられる。
なお、有機樹脂として、ポリアクリル酸などの酸性樹脂を用いるときは酸性コロイダルシリカを用いることが好ましく、これにより、処理液調製時のゲル化を防止することができる。酸性コロイダルシリカは、市販品を用いてもよく、例えば、日産化学工業(株)製の「スノーテックス」(商品記号:O、OUP、AK、OLなど)などが挙げられる。具体的には、「スノーテックスST−O」(pH2〜4、粒子径10〜20nm)、「スノーテックスST−OL」(pH2〜4、粒子径40〜50nm)、「スノーテックスST−OUP」(pH2〜4、粒子径40〜100μm、鎖状態)などが例示される。
上記のSi系無機化合物のほか、重りん酸アルミニウムなどのリン酸化合物、アルミナゾルなどのアルミナ化合物などの無機化合物を用いることができる。これらの無機化合物は、前述したSi系無機化合物の代わりに、または、Si系無機化合物と組み合わせて、用いることができる。
シランカップリング剤は、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、アリル基、アリール基などの低級アルコキシ基を有するものが好ましい。具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなどのビニル基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリロキシ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;γ−クロロプロピルメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いも良いし、2種以上を併用してもよい。
上記のうち、グリシドキシ基含有シランカップリング剤は、特に反応性が高く、耐食性および耐アルカリ性に優れているため、好ましく用いられる。
上記の有機樹脂、Si系無機化合物、およびシランカップリング剤は、市販品を用いても良く、例えば、後記する実施例の表2に記載に掲げたものが用いられる。
(マイクロカプセル(b))
図1に、本発明に用いられるマイクロカプセル(b)の一例を模式的に示す。
図1に示すように、金属化合物3は、多孔質微粒子2に内包(充填)されたマイクロカプセル1の形態で存在している。金属化合物3はマイクロカプセル1の芯物質として、多孔質微粒子2はマイクロカプセル壁として、それぞれ、位置付けられる。
(マイクロカプセルに含まれる金属化合物)
金属化合物3としては、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、およびコバルト化合物が挙げられる。これらの金属化合物は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
バナジウム化合物は、防錆剤として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、メタバナジウム酸(メタバナジン酸)などのバナジウム酸、これらの塩類(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)、酢酸バナジウム、バナジウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。耐食性などを考慮すると、メタバナジン酸(好ましくはメタバナジン酸アンモニウム)を少なくとも含んでいることが好ましい。
ジルコニウム化合物は、防錆剤として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、ジルコニウムアセテートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。耐食性などを考慮すると、酢酸ジルコニウムを少なくとも含んでいることが好ましい。
チタン化合物は、防錆剤として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、フッ化チタンアンモニウム、炭酸チタン、チタンラクテート、ジイソプロポキシチタンニウムビスアセチルアセトンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。耐食性などを考慮すると、フッ化チタンアンモニウムを少なくとも含んでいることが好ましい。
モリブデン化合物は、防錆剤として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブドリン酸アンモニウム、モリブドリン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。耐食性などを考慮すると、モリブデン酸アンモニウムを少なくとも含んでいることが好ましい。
マンガン化合物は、防錆剤として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酢酸マンガン、過マンガン酸ナトリウム、炭酸マンガンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。耐食性などを考慮すると、酢酸マンガンを少なくとも含んでいることが好ましい。
コバルト化合物は、防錆剤として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酢酸コバルト、炭酸コバルトなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。耐食性などを考慮すると、酢酸コバルトを少なくとも含んでいることが好ましい。
上記の金属化合物は市販されており、容易に入手することができる。
多孔質微粒子2は、マイクロカプセル1の作製に通常用いられる無機化合物または有機化合物を用いて作製される(作製方法は、後述する)。具体的には、無機化合物として、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化マンガン、アルミナなどの金属酸化物、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化クロムなどの金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、アパタイトなどのリン酸塩などが挙げられる。有機化合物として、完全ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの各種重合体(樹脂)やそれらの共重合体、更にはそれらの各種変性物が挙げられる。耐溶剤性などを考慮すると、無機化合物が好ましく、シリカが最も好ましい。
多孔質微粒子2の平均粒径は、おおむね、5μm以下であることが好ましい。平均粒径が上記の範囲を超えると、多孔質微粒子を前述した酸性樹脂の皮膜で被覆することが困難であり、耐食性および耐テープ剥離性が劣化することを実験により確認している。表面処理皮膜の好ましい付着量(乾燥重量で0.3〜3g/m2の範囲内である。詳細は後述する。)との関係を考慮すると、多孔質微粒子2の平均粒径は小さい程良く、例えば、1.5μm以下であることがより好ましい。なお、多孔質微粒子の平均粒径の下限は、耐食性などの特性との関係からは特に限定されないが、多孔質微粒子の製造しやすさを考慮すると、おおむね、0.5μmであることが好ましい。
多孔質微粒子の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用い、視野中に観察される多孔質微粒子の平均値を算出することによって求められる。あるいは、島津製作所製「SA−P3」を用い、遠心沈降法によって算出することもできる。
このような多孔質微粒子は、例えば、界面重合法または界面反応法を用いて作製することができる。具体的には、例えば、特開平6−234650号公報、特開平7−173452号公報に記載の界面反応法を採用することができる。
上記の多孔質微粒子は、市販品を用いてもよい。具体的には、例えば、非中空タイプの無機多孔質シリカ微粒子(鈴木油脂工業(株)製「ゴッドボールE−2C」平均粒径1.0μm)、中空タイプの無機多孔質シリカ微粒子(鈴木油脂工業(株)製「ゴッドボールE−6C」平均粒径2.2μm)、多孔質シリカ微粒子(エネックス株式会社製「SE MCB−FP/2」、平均粒径3.2μm、比表面積242m/g)などを用いることができる。
本発明に用いられる皮膜構成成分(a)とマイクロカプセル(b)との比率は、表面処理組成物100質量部に対し、皮膜構成成分(a):マイクロカプセル(b)=60〜95質量部:5〜40質量部であることが好ましく、70〜90質量部:10〜30質量部であることがより好ましく、75〜85質量部:15〜25質量%であることが更に好ましい。上記の比率を下回る(すなわち、マイクロカプセル(b)の含有量が少ない)と、表面処理皮膜中にマイクロカプセルを均一に分散させることができず、金属化合物による耐食性作用が有効に発揮されない。一方、上記の比率を超える(すなわち、マイクロカプセル(b)の含有量が多い)と、表面処理皮膜の造膜性が低下し、耐食性および耐テープ剥離性が著しく劣化するほか、塗装性も低下する。
本発明の表面処理組成物は、基本的に、上記の皮膜構成成分(a)とマイクロカプセル(b)とからなり、Crを含有していない。このような表面処理組成物は、後記する実施例に示すように、耐食性、耐変色性、塗装性、および耐テープ剥離性のすべてに優れているため、クロムを用いなくても、クロムと同等またはそれ以上の耐食性に優れた表面処理皮膜が得られるからである。
また、本発明の表面処理組成物は、エッチング剤を含有していない。金属板の表面は、酸化皮膜で覆われていることが多いため、通常、りん酸、硝酸、フッ素化合物(HFなど)などの酸性物質(エッチング剤)を用いて酸化皮膜の表面を粗面化し、当該酸化皮膜と表面処理皮膜との密着性を高めている。これに対し、本発明の表面処理組成物は、酸化皮膜との密着性に優れているため、後記する実施例に示すように、エッチング剤の使用は不要である。勿論、酸化皮膜を含む金属板との密着性を更に高める目的で、エッチング剤を含有してもよい。
(他の成分)
本発明の表面処理組成物は、更に、表面処理皮膜に通常添加される成分(例えば、界面活性剤、導電性を付与するための導電性添加剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、乾燥剤、安定剤、皮張り防止剤、防黴剤、防腐剤、凍結防止剤など)を含有してもよい。これらは、本発明の作用を損なわない範囲で含まれる。
前述した「他の成分」の存在形態(マイクロカプセル化するか、しないか)は、所望の特性が有効に発揮される限り、特に限定されない。従って、前述した成分を多孔質微粒子に内包させても良いし、内包させなくても良い。
(マイクロカプセルの作製方法)
多孔質微粒子に金属化合物を内包し、マイクロカプセルを作製する方法は特に限定されず、例えば、下記(1)〜(3)の方法を適宜選択して作製することができる。これらの詳細な方法は、例えば、三共出版株式会社発行の「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」などに記載されている。
(1)化学的製法:a)界面重合法、b)in situ重合法、
(2)物理化学的製法:a)コアセルベーション法、b)液中乾燥法、
(3)機械的・物理的製法:a)オリフィス法、b)スプレードライニング法、
c)気中懸濁被覆法、d)ハイブリダンザー法など。
具体的には、例えば、以下のようにしてマイクロカプセルを作製することができる。
まず、前述した方法によって得た多孔質微粒子と、金属化合物の水溶液とを用意する。
水溶液中の金属化合物の濃度は、おおむね、約50%〜100%の範囲内であることが好ましい。これにより、金属化合物による耐食性が有効に発揮される。溶媒としては、水のほか、水と親水性溶剤(例えば、アルコール、ケトン、エステル、グリコールなど)との混合液、水に水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴムなど)を溶解させた溶液、水に界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤)を添加した溶液、或いは、これらを混合した溶液などが用いられる。
次に、金属化合物の水溶液中に多孔質微粒子を浸漬して撹拌し、多孔質微粒子内に金属化合物を含浸させる。ここでは、金属化合物の充填を容易にするため、水溶液の温度は、おおむね、20〜40℃であることが好ましい。具体的には、例えば、上記の温度で約1〜3時間浸漬することが好ましい。
次いで、上記溶液をろ過し、得られた残渣を、例えば、真空乾燥器などを用いて乾燥して水分を蒸発させる。乾燥条件は、例えば、40〜80℃の温度で約1〜3時間とすることが好ましい。その結果、多孔質微粒子内に金属化合物を内包したマイクロカプセルが得られる。
上記のほか、例えば、前述した特開平6−234650号公報に記載の方法(圧力差を利用する方法)を採用することもできる。具体的には、上記公報の図1に記載の真空チャンバーに多孔質微粒子を入れて減圧を行なった後、これに、常圧状態で金属化合物の水溶液を入れると、真空チャンバー内に導入された金属化合物は、圧力差により、多孔質微粒子内に浸透する。次いで、真空チャンバー内を大気圧に戻した後、ろ過すると、所望のマイクロカプセルが得られる。
なお、多孔質微粒子内に、金属化合物(防錆成分)のほかに、前述した他の成分も内包させたい場合は、上記と同様の方法を採用すれば良い。
(本発明の表面処理金属板)
図2に、本発明の表面処理金属板の一例を示す。図2に示すように、本発明の表面処理金属板7は、前述した表面処理組成物から得られる表面処理皮膜6を金属板5の片面に備えている。表面処理皮膜6には、マイクロカプセル1が分散されている。なお、図2には、表面処理皮膜6が金属板5の片面に備えた例を示しているが、これに限定されず、金属板5の両面に設けられていてもよい。また、表面処理皮膜6の上には、他の皮膜が更に設けられていてもよい。
表面処理皮膜6に含まれる金属化合物の含有量は、多孔質微粒子の細孔容積などとの関係で変化し得、一義的に決定され難い。ここでは、多孔質微粒子の全細孔容積を0.3〜1.7mL/g、金属化合物の比重を1とし、表面処理組成物中に含まれるマイクロカプセルの含有量(本発明では、約5〜40質量部)と表面処理皮膜の付着量(本発明では、約0.3〜3g/m)とに基づき、金属化合物の好ましい含有量(算出値)を0.005g/m以上2.0g/m以下とした。多孔質微粒子の全細孔容積は、主に、粒子の平均粒径との関係で相違するが、本発明に用いられる多孔質微粒子(平均粒径5μm以下)の場合、おおむね、上記範囲の値をとり得るからである。
例えば、後記する実施例1の表3〜表5では、表面処理皮膜の付着量(乾燥重量)を1g/m、多孔質微粒子の全細孔容積を1.03mL/g、金属化合物の比重を1として、表面処理皮膜中に含まれる金属化合物の含有量を算出した。本発明では、表面処理組成物中に含まれるマイクロカプセルの含有量は5〜40質量部であることが好ましく、これに対応する表面処理皮膜中の好ましい金属化合物の含有量は、上記の算出方法に基づけば、0.052〜0.412g/mの範囲内である。厳密には皮膜構成成分の種類によっても相違するが、表3〜5に示すように、金属化合物の含有量が上限を超えると、耐食性、塗装性、耐テープ剥離性のすべてが低下し、下限を下回ると耐食性が低下する傾向にある。
表面処理皮膜6の付着量は、乾燥重量で0.3〜3g/m2の範囲内であることが好ましい。表面処理皮膜の付着量が上記範囲を下回ると、多孔質微粒子を覆うことができず、耐食性が低下することを、実験により確認している。一方、付着量の上限は、耐食性などとの関係では特に制限されないが、作業性などを考慮すると、おおむね、3g/m2とすることが好ましい。例えば、ロールコーターやスプレーリンガーなどの塗布方式を用いて表面処理皮膜を作製する場合、溶剤系とは異なり、水系組成物は粘度が低いため、塗布が困難となって現実的でないからである。表面処理皮膜の付着量は、乾燥重量で0.5〜1.5g/m2の範囲内であることが好ましい。
上記の表面処理皮膜は、Crを実質的に含有していない。「実質的に含有していない」とは、例えば、表面処理皮膜の作製過程で、金属板中に不可避不純物として含まれ得るCrが皮膜中に侵入する程度の量は許容し得るという意味である。
本発明に用いられる金属板の種類は、特に限定されず、鋼板または非鉄金属板の金属板、これらに単一金属または各種合金のめっきを施しためっき金属板などが含まれる。具体的には、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、ステンレス鋼板などの鋼板;溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気Zn−Ni合金めっき鋼板などのめっき鋼板;アルミニウム、チタン、亜鉛などの非鉄金属板またはこれらにめっきが施されためっき非鉄金属板などが挙げられる。更に、上記の金属板に表面処理が施された表面処理金属板も含まれる。表面処理としては、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、酸洗処理、アルカリ処理、電解還元処理、シランカップリング処理、無機シリケート処理などが挙げられる。
本発明の表面処理金属板は、前述した表面処理皮膜の上に、他の皮膜を更に有していてもよい。他の皮膜としては、有機表面処理皮膜、有機・無機複合皮膜、無機系皮膜、電着塗装膜等の皮膜が挙げられ、用途に応じて適宜選択するとよい。これらの皮膜形成によって、さらに耐食性が向上し、耐指紋性や塗装性等の皮膜特性も付与することができる。
ここで、有機表面処理皮膜としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリエステルあるいはこれらの共重合物や変成物等、塗料用として公知の樹脂に、必要に応じてコロイダルシリカや固体潤滑剤、架橋剤等を組み合わせて形成される皮膜などが挙げられる。
また、有機・無機複合皮膜としては、上記有機樹脂と、ケイ酸ナトリウム等の水ガラス形成成分とを組み合わせて形成される皮膜が代表的に挙げられる。
上記の無機系皮膜としては、水ガラス皮膜や、リチウムシリケートから形成される皮膜が代表的に挙げられる。
(表面処理金属板の作製方法)
次に、本発明の表面処理組成物を用いて表面処理金属板を作製する方法について説明する。
上記の表面処理組成物を金属板上に被覆する方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、表面処理組成物を水系溶媒に溶解・分散して調製した水系塗布剤(表面処理皮膜用処理液)を、ロールコート法、スプレーコート法、ナイフコーター法、バーコート法、浸漬コート法、刷毛塗り法などを用いて金属板の表面に塗布すればよい。その後、加熱、乾燥すると、所望とする表面処理皮膜を備えた表面処理金属板が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、特に断らない限り、「%」は質量%を、「部」は質量部を、それぞれ、意味する。
〔試験方法〕
下記実施例で用いた試験方法は下記の通りである。
(1)平板耐食性
JIS Z2371に基づいて塩水噴霧試験を実施し、白錆が5%発生するまでの時間を測定した。ここでは、96時間以上を合格とした。
(2)クロスカットの耐食性
疵部の耐食性を調べるため、供試材にカッターナイフでクロスカットを入れ、JIS Z2371に基づいて塩水噴霧試験を実施し、白錆が10%発生するまでの時間を測定した。ここでは、48時間以上を合格とした。
(3)塗装性(塗膜密着性)
供試材にアクリル系塗料(関西ペイント社製「マジクロン1000」)をバーコート塗装した(塗膜厚20μm)後、160℃の温度で20分間焼き付け、後塗装を行った。次に、この供試材を沸騰水に1時間浸漬した後、取り出して1時間放置し、カッターナイフで1mm升目の碁盤目を100升刻んだ。この供試材にテープを貼り付けた後、テープ剥離試験を実施し、塗膜の残存升目数の比率(塗膜残存率)に基づいて下記基準で塗装性を評価した。ここでは、評価基準が◎または○のものを合格(本発明例)とした。
◎:塗膜残存率100%
○:99%以下〜90%以上
△:89%以下〜80%以上
×:79%以下〜70%以上
××:69%以下
(4)耐テープ剥離性
供試材の表面にフィラメントテープ(スリオンティック社製#9510)を貼り付け、40℃×RH98%の雰囲気下で168時間保管した後、フィラメントテープを剥がし、皮膜の残存している面積の割合(残存率)を測定した。ここでは、下記基準に基づいて耐テープ剥離性を評価し、◎または○のものを合格(本発明例)とした。
◎:残存率100%
○:残存率90%以上100%未満
△:残存率80%以上90%未満
×:残存率80未満
(5)耐変色性
供試材を恒温恒湿試験機に入れ、温度50℃、相対湿度98%の雰囲気下で186時間放置し、試験前後の色調(色差ΔE)を色差計(日本電色(株)製SZS−Σ90)を用いて測定した。ΔEが小さいほど色調が変化し難い、すなわち、耐変色性に優れていることを意味する。例えば、ΔEが2以上になると、供試材の色調変化が肉眼でも容易に観察される。ここでは、下記基準に基づいて耐変色性を評価し、◎または○のものを合格(本発明例)とした。
◎:ΔE=1未満 (極めて良好)
○:ΔE=1以上2未満(良好)
△:ΔE=2以上3未満(悪い)
×:ΔE=3以上 (極めて悪い)
(6)表面処理皮膜中に含まれる金属化合物の量の測定
ここでは、表面処理皮膜中のV、Zr、Mn、Co、Mo、Tiの各元素を、島津製作所製の蛍光X線装置「MXF−2100」を用いて測定し、各元素の蛍光X線強度から、対応する金属化合物を間接的に算出した。例えば、バナジン酸アンモニウム(NHVO)の場合、上記の蛍光X線装置を用いて測定されたV元素の含有量W2から、下式に基づいて皮膜中のバナジン酸アンモニウムの含有量W1を算出した。
W1(g/m)=[W2(mg/m)×(M1/M2)]/1000・・(1)
式中、
M1=バナジン酸アンモニウムの分子量、
M2=Vの分子量、
を意味する。
実施例1(表面処理組成物の組成比の検討)
ここでは、表面処理組成物中の皮膜構成成分(a)とマイクロカプセル(b)(金属化合物内包多孔質微粒子)との含有比率が耐食性などの特性に及ぼす影響を調べた。本実施例では、表1に示す金属化合物A〜Fと、表2に示す皮膜構成成分[(a1)〜(a4)]を用いた。
(マイクロカプセルの作製)
多孔質微粒子として、非中空タイプの無機多孔質シリカ微粒子(鈴木油脂工業(株)製「ゴッドボールE−2C」、平均粒径1.0μm)を用い、以下のようにして、表1の金属化合物(A〜F)内包シリカ微粒子のマイクロカプセルを作製した。
50℃に加温した飽和金属化合物溶液中に上記のシリカ微粒子を加え、約50%のシリカ微粒子含有溶液を調製し、これを1時間撹拌した。撹拌後、ろ過して得られた残渣を、真空乾燥機を用いて50℃で2時間乾燥し、マイクロカプセルを得た。
(表面処理皮膜処理液の作製)
まず、表2に示す種々の皮膜構成成分を用い、以下のようにして、有機樹脂(a1)の処理液5種類(a1−1〜a1−5)、有機樹脂とSi系無機化合物(a2)の処理液2種類(a2−1〜a2−2)、有機樹脂とSi系無機化合物とシランカップリング剤(a3)の処理液1種類(a3−1)、及びSi系無機化合物とシランカップリング剤(a4)の処理液2種類(a4−1〜a4−2)を、それぞれ、作製した。
(i)有機樹脂処理液(a1−1)の作製
水分散ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製「スーパーフレックス150」)95%と、ポリイソシアネート系架橋剤(第一工業製薬社製「エラストロンBN77」)5%とを純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(ii)有機樹脂処理液(a1−2)の作製
水分散ウレタン変性アクリルスチレン共重合体樹脂(大日本インキ化学社製「ボンコートHY−364」)90%と、ブロック化イソシアネート(大日本インキ化学社製「ウオーターゾルHA−NS」)10%とを純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(iii)有機樹脂処理液(a1−3)の作製
水分散ポリオレフィン樹脂(三井化学社製「ケミパールS−120」)95%と、架橋剤としてグリシジル基含有化合物(大日本インキ化学工業社製「エピクロンCR5L」)5%とを純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(iv)有機樹脂処理液(a1−4)の作製
水性アクリル樹脂(中央理化学工業社製「リカボンドSA−513」)90%と、架橋剤としてエポキシ樹脂(中央理化学工業社製「EX−8」)10%を純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(v)有機樹脂処理液(a1−5)の作製
酸性水溶性樹脂としてポリアクリル酸(日本純薬株式会社製「AC10S」、分子量5000〜6000、pH2.5〜3.5)を純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(vi)有機樹脂とSi系無機化合物の処理液(a2−1)の作製
水分散ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製「スーパーフレックス150」)75%、ポリイソシアネート系架橋剤(第一工業製薬社製「エラストロンBN77)5質量%、およびコロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックス40」)20%を純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(vii)有機樹脂とSi系無機化合物の処理液(a2−2)の作製
水分散ポリオレフィン樹脂(三井化学社製「ケミパールS−120」)75%、架橋剤としてグリシジル基含有化合物(大日本インキ化学工業社製「エピクロンCR5L」)5%、およびコロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックス40」)20%を純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(viii)有機樹脂とSi系無機化合物とシランカップリング剤の処理液(a3−1)の作製
コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックス40」)60%、水分散ポリオレフィン樹脂(三井化学社製「ケミパールS−120」)30%、およびシランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製「KBM403」)10%を純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(ix)Si系無機化合物とシランカップリング剤の処理液(a4−1)の作製
珪酸ソーダ3号(日本化学工業社製)55%、コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックス40」)35%、およびシランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製「KBM403」)10%を純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理液を作製した。
(x)Si系無機化合物とシランカップリング剤の処理液(a4−2)の作製
リチウムシリケート(日産化学社製「リチウムシリケート45」)60%、コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックス40」)25%、およびシランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製「KBM403」)15%を純水で混合し、樹脂固形分濃度15%の処理組液を作製した。
次に、上記のようにして作製した(i)〜(x)の処理液と、前述のようにして作製した種々の金属化合物(A〜F)内包多孔質微粒子(マイクロカプセル)とを用い、これらの含有比率を表3〜5に示す比率で添加し、ホモジナイザーで撹拌し、分散させることにより、各表面処理組成物を得た。この表面処理組成物を純水で希釈し、金属化合物の固形分濃度約15%の表面処理皮膜用処理液を得た。
(供試材の作製)
溶融亜鉛めっき鋼板(Zn付着量45g/m2)の表面に上記の表面処理皮膜処理液をバーコート法(#3)で塗布し、板温90℃で1分間乾燥することにより、付着量1g/m2の表面処理皮膜を備えた表3〜表5の表面処理金属板を得た。表3〜5には、各表面処理皮膜中の金属化合物の量を併記している。この量は、多孔質微粒子の全細孔容積を1.03mL/g、金属化合物の比重を1として算出した値である。
比較のため、表面処理皮膜中に表1に示すA〜Fの金属化合物(金属化合物はマイクロカプセル化されていない。)を含有する従来の表面処理金属板を作製し、種々の特性を調べた。具体的には、表1に示す皮膜構成成分(a)の固形分100部に対し、各金属化合物を3部添加した処理液を調製し、上記と同様にして表面処理金属板を作製した(表面処理皮膜の付着量1g/m2)。
更に、金属化合物の添加による影響を調べるため、比較例として、表面処理皮膜中に各金属化合物を含有しない表面処理金属板を作製し、種々の特性を調べた。
これらの供試材について、前述した種々の特性を調べた。これらの結果を表3〜表5に併記する。表3〜表5は、皮膜構成成分(a)の種類ごとに分けて整理したものであり、表3には、有機樹脂(a1)を用いた結果を、表4には、有機樹脂とSi系無機化合物(a2)、および有機樹脂とSi系無機化合物とシランカップリング剤(a3)を用いた結果を、表5には、Si系無機化合物とシランカップリング剤(a4)を用いた結果を、それぞれ、まとめて記載している。これらの表において、本発明の要件を満足しないものには下線を付している。
Figure 0004688715
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Figure 0004688715
Figure 0004688715
Figure 0004688715
まず、バナジウム化合物の代表例として、バナジン酸アンモニウム(表1のA)を用いた供試材に着目して検討する。
皮膜構成成分(a)とマイクロカプセル(b)との含有比率が本発明の範囲を満足する供試材は、皮膜構成成分の種類にかかわらず、マイクロカプセル化されていない従来の供試材(表3のNo.18、表4のNo.20および26、表5のNo.5)に比べ、平板耐食性、クロスカット耐食性、塗装性、耐テープ剥離性、および耐変色性のすべてが高められた。特に、マイクロカプセル化されていない供試材は、塗装性、耐テープ剥離性、および耐変色性が劣化するのに対し、本発明のようにマイクロカプセル化を行なうことにより、これらの特性が著しく向上した。
なお、表3〜表5には、本実施例に用いた全種類の皮膜構成成分(合計10種類)についての非マイクロカプセル化の実験データを示さず、各皮膜構成成分(a1)〜(a4)の代表例の実験データのみを示しているが、他の皮膜構成成分を用いた場合にも、上記と同様の傾向が見られることを確認している。
これに対し、マイクロカプセルの添加量が多く、表面処理皮膜中のバナジン酸アンモニウム含有量が多くなる(表3のNo.1、4、7、19)と、クロスカット耐食性が低下し、平板耐食性も低下する傾向が見られた。また、塗装性および耐テープ剥離性も低下した。一方、マイクロカプセルの添加量が少なく、表面処理皮膜中のバナジン酸アンモニウムが少なくなる(表3のNo.16、21)と、皮膜構成成分の種類によっても相違するが、上記特性の少なくともいずれかが低下した。
また、バナジン酸アンモニウムを含有しない供試材では、いずれの皮膜構成成分を用いたときでも、平板耐食性およびクロスカット耐食性が低下し、他の特性も低下する傾向が見られた(表3のNo.3、6、17、22、24、表4のNo.2、6、10、表5のNo.4、9を参照)。
上記の実験結果は、他の金属化合物、すなわち、ジルコニウム化合物の代表例として表1のBを、チタン化合物の代表例として表1のCを、モリブデン化合物の代表例として表1のDを、マンガン化合物の代表例として表1のEを、コバルト化合物の代表例として表1のFを、それぞれ、用いたときも、ほぼ同様に認められた。
本発明に用いられるマイクロカプセルの一例を示す概略断面図である。 本発明の表面処理金属板の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 マイクロカプセル
2 多孔質微粒子(マイクロカプセル壁)
3 金属化合物(芯物質)
4 有機樹脂/Si系無機化合物層
5 金属板
6 表面処理皮膜
7 表面処理金属板

Claims (9)

  1. 表面処理組成物から得られる表面処理皮膜を金属板の少なくとも片面に備えた表面処理金属板であって、
    前記表面処理組成物は、
    (a)有機樹脂、有機樹脂とSi系無機化合物、有機樹脂とSi系無機化合物とシランカップリング剤、またはSi系無機化合物とシランカップリング剤の皮膜構成成分と、
    (b)平均粒径5μm以下の多孔質微粒子に防錆成分が内包されたマイクロカプセルと、を含有し、
    前記マイクロカプセル(b)に含まれる前記防錆成分は、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、およびコバルト化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の金属化合物であり、
    前記皮膜構成成分(a)と前記マイクロカプセル(b)との比率は、表面処理組成物の固形分100質量部に対し、60〜95質量部:5〜40質量部の範囲内であることを特徴とする耐食性および表面性状に優れた表面処理金属板。
  2. 前記表面処理皮膜に含まれる金属化合物の含有量が0.005g/m 2 以上、2.0g/m 2 以下である請求項1に記載の表面処理金属板。
  3. 前記(a)の有機樹脂は、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、またはこれらの共重合物、またはこれらの変成物である請求項1または2に記載の表面処理金属板。
  4. 前記(a)のSi系無機化合物は、ケイ酸塩および/またはシリカである請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理金属板。
  5. 前記多孔質微粒子は無機微粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理金属板。
  6. 前記表面処理組成物は、Crを含まない請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
  7. 前記皮膜構成成分(a)が、有機樹脂とSi系無機化合物とからなり、前記有機樹脂がポリオレフィン系樹脂、Si系無機化合物がコロイダルシリカである請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理金属板。
  8. 前記表面処理皮膜の付着量は、乾燥重量で0.3〜3g/ 2 ある請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理金属板。
  9. 前記表面処理皮膜は、Crを実質的に含まない請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理金属板。
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