JP4683637B2 - 電子写真感光体および電子写真装置 - Google Patents

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本発明は電子写真感光体やこれを用いた電子写真装置に関し、特に380nm以上500nm以下の波長の光を露光に用いたプリンタ、ファクシミリ、複写機などに最適な電子写真感光体や、これを用いた電子写真装置に関する。
プリンター、ファクシミリ、複写機などに用いられる電子写真装置においては、帯電手段により帯電した感光体に光を照射し、画像に相当する部分以外、あるいは画像に相当する部分を露光することにより画像に対応した静電潜像を感光体に形成し、これにトナーを供給して静電潜像を現像し、静電潜像に付着したトナーを転写体へ転写した後、定着し、一方、トナー像を転写体へ転写した感光体表面を除電する工程を経て、画像の形成が行われている。
このような電子写真装置の画像形成に用いられる感光体における光導電材料としては、高感度で、SN比〔光電流(I)/暗電流(I)〕が高く、照射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクトルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有すること、使用時において人体に対して無害であること等の特性が要求される。特に、事務機としてオフィスで使用される電子写真装置内に組み込まれる感光体の場合には、上記の使用時における無公害性は重要な点である。このような点に優れた性質を示す光導電材料にアモルファスシリコン以下、a−Siと略記するがあり、電子写真感光体の光受容部材として多用されている。
アモルファスシリコンを光導電部材として用いた感光体は、一般的には、導電性基体を50℃〜350℃に加熱し、該基体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を形成する。なかでもプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、基体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適なものとして採用され、このように形成した光導電層上に、磨耗や、温度、湿度などの使用環境に対して耐久性を付与する表面層を積層し、実用に適した感光体が製造されている。
かかるアモルファスシリコン堆積膜で構成された光導電層を有する光導電部材の、暗抵抗値、光感度、光応答性等の光導電的特性、耐湿性などの使用環境特性、さらには経時安定性、耐久性などについて改善を図るため、例えば、基板、障壁層、光導電層、表面層からなるa−Si感光体を、SiH 4 2 2 2 6 から作成し、それぞれの流量比を規定することでp−i−n接合の逆バイアス状態となるように構成した感光体が知られている例えば特許文献参照。また、導電性基体上にa−Siからなる光導電層とアモルファス窒化シリコンからなる表面層を有する電子写真感光体において、感光体の最表面におけるN/Siの元素組成比が0.81.33の範囲で、O/Siの元素組成比が0.9の範囲にあることを特徴とする電子写真感光体が知られている例えば特許文献参照
なお、前記a−Si感光体を帯電する方法としては、コロナ帯電を用いたコロナ帯電方式、導電性ローラーを用い直接放電で帯電を行うローラー帯電方式、磁性粒子等により接触面積を十分にとり、感光体表面に直接電荷を付与することにより帯電を行う注入帯電方式などがある。中でも、コロナ帯電方式やローラー帯電方式は放電を用いるために感光体表面に放電生成物が付着しやすい。加えてa−Si感光体は有機感光体などに比べてはるかに高硬度な表面層を持っているために放電生成物が表面に残存しやすく、高湿環境下などで水分の吸着によって放電生成物と水分が結合して表面を低抵抗化させ、表面の電荷が移動しやすくなって画像流れ現象が発生する場合がある。そのため、表面の摺擦方法や感光体の温度管理方法など、様々な工夫が必要となる場合があった。
これに対して、前記注入帯電方式は放電を積極的に用いることはせずに、感光体表面に接触した部分から直接電荷を付与する帯電方式であるために前記の画像流れといった現象は発生しにくい。
また、接触帯電である注入帯電方式は、コロナ帯電方式が電流制御型であるのに対し、電圧制御型であるため、帯電電位のムラを比較的小さくしやすいというメリットがある。
従来のa−Si系電子写真感光体は、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、光学的、光導電特性、及び使用環境特性の点、さらには経時安定性および耐久性の点において、各々個々には特性の向上が図られてはいるが、総合的な特性向上を図る上でさらに改良される余地が存在するのが実状である。
特に、近年急速にデジタル化、カラー化へのシフトが進み、電子写真装置の高画質化への要求は以前に増して高まっている。ここでいう高画質とは、高解像であること、高精細であること、濃度ムラがないこと、画像欠陥白抜けや黒点などがないことを指している。加えて、高速化、高耐久化への要求も急速に増しており、電子写真感光体においては電気的特性や光導電特性の向上、均一性や画像欠陥低減の向上とともに、耐久性や耐環境性温度・湿度変化追従性も含めて大幅に性能を延ばすことが求められている。
例えば、画像の解像度を高めるためには、トナーの小粒径化と並んで、像形成用のレーザー光のスポット径を小さくすることが有効である。レーザー光のスポット径を小さくする手段としては、レーザー光を光導電層に照射する光学系の精度を向上させたり、結像レンズの開口率を大きくしたりすること等が挙げられる。結像レンズの開口率を大きくするにはレンズの大型化や機械精度の向上等の理由により装置の大型化やコスト上昇は避け難い。
そのため、近年、レーザー光の波長を短くしてスポット径を小さくし、静電潜像の解像度を高めるという技術が注目されている。これは、レーザー光のスポット径の最小値がレーザー光の波長に正比例することによる。従来の電子写真装置においては、画像露光の際に600〜800nmの発振波長を有するレーザー光が一般的に用いられており、この波長をさらに短くすることで画像の解像度を高めることができる。近年、発振波長の短い半導体レーザーの開発が急速に進んでおり、400nm近辺に発振波長を有する半導体レーザーが実用化され、そのような短波長帯の光に対応できる感光体が要請されている。
そのような短波長光を用いた際の工夫としては、感光層が水素化a−Siを含有する層であり、露光手段が380nm450nmに主たる発振波長を有する紫外青紫色レーザー光発振器を具備することを特徴とする画像形成装置が知られている例えば特許文献参照。また、a−Si系感光体を用い、画像形成光線を露光する時点に於ける感光体にかかる電界が150kV/cm以上であり、画像形成光線の波長が500nm以下であることを特徴とする電子写真装置が知られている例えば特許文献参照
400nm近辺に発振波長を有する半導体レーザーを画像露光に使用した場合に感光体に要請されることは、第一には、露光波長に対して十分な感度を有すること、第二には、表面層にて露光波長がほとんど吸収されないことである。a−Si系の感光層は感度のピークが600700nm付近であるため、ピーク感度に比べればやや劣るものの、条件を工夫すれば400410nm付近の感度は有しており、例えば、405nmの短波長レーザーを用いた場合でも使用可能である。ただし、感度的にはピークに比べて半分前後となる場合もあり、その場合に表面層における吸収が殆どないことが好ましいことになる。
しかし、従来表面層に好適に用いられてきたアモルファス炭化シリコン以降a−SiC)系材料やアモルファスカーボン以降a−C)系材料の場合、400410nm近辺では吸収が大きくなりやすい傾向があった。即ち、a−SiC系材料では、条件を工夫することで透過率を向上させ、またある程度膜厚を薄くすることで対処することも可能であったが、表面層は複写機内で摺擦によって徐々に削られていくという宿命にあり、長寿命というa−Si系感光体の特性を十分に生かしきるためには、ある程度以上の膜厚が必要である。よって、表面領域における吸収量と寿命とがトレードオフの関係に陥る場合があった。また、a−C系材料の場合、条件によっては透過率のよい膜も作成可能であったが、その場合にはポリマーに近い構造となり、硬度が低くなったり、抵抗値が高くなりすぎたりする場合があった。よって、a−C系材料の場合には、透過率と硬度あるいは抵抗とのトレードオフになる場合があった。
これらの材料に対して、アモルファス窒化シリコン以降a−SiN)系材料を用いた場合、条件を最適化することにより400410nm付近の吸収係数を下げられることが判っていたが、そのような膜は感光体の表面層としては使用が難しく、これまで実用化されていない。特許文献1においても、表面層として好適なa−SiN系の膜の作成条件が開示されているが、この場合でも露光に供される波長は550nmまでしか考慮されていない。その上、550nmの露光波長でも、表面層の膜厚が0.8μを越えると感度が低下する。
特開平5−150532号公報 特開平8−171220号公報 特開2000−258938号公報 特開2002−311693号公報
本発明の課題は、380〜500nm付近の短波長の光に対し吸収が殆ど認められず、耐磨耗性を有する表面層を備え、特に高い画像解像性を有し、暗抵抗値、光感度、光応答性、光メモリがないなどの電気写真特性に優れ、使用環境特性、経時安定性、耐久性など総合的な特性が向上した電子写真感光体や、このような感光体を備えた電子写真装置を提供することにある。
本発明者らは高画質、高速の複写プロセスに好適に使用でき、短波長露光に対して実用上十分な感度を持ち、光メモリがなく、帯電能が高く高コントラストな複写プロセスを実現し、使用環境特性、経時安定性、耐久性など総合的な特性が向上した電子写真感光体を得るために、鋭意研究を行った。
本発明者らはまず特許文献などにあるような従来の方法により、表面層として好適なa−SiN系材料の薄膜を作成したが、これらの公知の方法で作成した膜は短波長の光、例えば400410nmの光に対する吸収係数が比較的大きく、そのような表面層をもつ感光体では、波長が400410nm付近の光に対しては感度が不十分となる場合があることがわかった。
その後検討を重ね、原料ガス種、原料ガスの流量とこれらの比率、投入電力とガス量に対する比などを適切に、これらが限定された特定の範囲において作製したとき、初めて405nmなどの短波長光に対して吸収の少ない表面層が得られることが判った。ここで、吸収が少ない膜とは、定量的に表すとすれば、入射光の光量をTo、透過光の光量をT、膜厚をt(cm)としたとき、下記式
α=−(lnT/To)/t
で表される吸収係数αが、5000cm -1 以下、好ましくは3000cm -1 以下の膜をいう。
このような特定の限定された条件で作成した表面層を、最表面の汚染などを受けた部分を取り除いた上で、XPS(X線光電子分光法)、RBS(ラザフォード後方散乱分光法)、SIMS(二次イオン質量分析法)などで分析したところ、窒素の含有範囲としては、実用膜厚における吸収が許容できる値として、N/(Si+N)(式中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示す。)と表記した場合で0.3以上が好ましく、より好ましくは0.35以上であることが分かった。また、上限としては、歩留まりの関係から、0.7以下が好ましく、より好ましくは0.6以下であることが分かった。この範囲を超えるような条件で作成した場合、膜厚や硬度、抵抗などのムラが発生しやすくなり、歩留まり率が大きく低下する場合があることが分かった。この理由としては、窒素が多くなりすぎると膜の結合が非常に不安定になるためではないかと予想される。また、0.7以下の範囲が、膜の強度が保て、表面層として使用する際にはより望ましいことが判った。
ここで、最表面の汚染などを受けた部分とは、吸着元素や表面に形成された酸化膜の影響を受けた部分のことを指している。この汚染などを受けた部分を除去する方法としては、真空中でAr原子などを用いたスパッタを施すことにより、表面をおよそ10nm、好ましくは20nm程度除去する手段が採られる。例えば、SIMSなどでチャージアップを防ぐための導電膜を蒸着してから測定する場合には、蒸着膜の厚さと、除去膜厚20nm程度とを合計した膜厚相当分をスパッタしてやればよい。
本発明者らは、別途の切り口から、露光用レーザーのスポットの小径化を図ることができる表面層の材質を見出すべく、655nmと405nmの波長のレーザー光を用いて、アモルファスシリコン系光導電層と各種アモルファス窒化シリコン系表面層を有する感光体(1)〜(5)に画像露光したときの、スポット径と画像上または感光体の静電潜像上のドット径の関係について検討した。各感光体毎にレーザー光を照射し、横軸にレーザーポット径、縦軸に静電潜像や画像上のドット径をとったグラフ上にプロットすると、図6に示すように、655nmのレーザー光を用いた場合(図6の(1)、以下、感光体(1)という。)では、スポット径は光学系の開口数などで何とか絞ることが可能でも、ある程度限界があるのに対し、405nmのレーザー光を用いた場合(図6の(2)〜(5)、以下、感光体(2)〜(5)という。)では、短波長露光を用いているので、更にスポット径を絞ることが可能であることが分かった。
また、露光波長の違いは、光導電層における光吸収にも影響する。短い露光波長では光導電層における光吸収が非常に薄い領域に限られる。光生成キャリアは、表面電荷が形成する電界によって加速され、膜の厚さ方向に移動する。そして、表面電荷と逆極性のキャリアが表面に移動し、電荷をキャンセルすることで、静電潜像が形成される。しかし、キャリア移動の際に、キャリア同士の静電的な反発力によって、膜の面方向(厚さ方向と垂直方向)にも移動する可能性があり、潜像のぼけにつながるおそれがある。従って、露光パターンにより忠実な静電潜像パターンを形成するためには、光生成キャリアが表面電荷をキャンセルするために移動する距離を短くした方が好ましく、即ち、光キャリアの生成領域は、表面に近い方が好ましい。従来の600〜800nmの露光では、a−Si感光体の光学特性から光導電層の上部数μm〜十数μmまで光が到達してキャリア生成が起こる。一方、例えば405nmの露光では、光導電層最上部の極めて薄い範囲で光吸収が終了し、光生成キャリアが上部に到達するまでに広がる余地が殆どないため、更に高解像が期待できることとなる。このことから、仮に同じスポット径(図6の横軸イの位置における(1)と(2)に相当)でも、解像力に差がでることが期待できる。
一方、感光体の実力から、ある程度以上スポット径を絞ってもそれ以上ドット径が小さくならない場合が発生する。例えば、レーザー光として同じ405nm波長光を用い最小スポット径は同じような大きさであっても、感光体(5)においては感光体(2)〜(4)と比較して画像上または感光体の静電潜像上のドット径が小さくならない。同じ短波長のレーザー光を用いて画像露光を行っても、スポット径を小さくしたことによるメリットが得られない場合があることが示された。これとは逆に、感光体(3)、(4)では、スポット径を最小まで絞った場合、同じ最小径のスポット径を有する感光体()における画像上または潜像上のドット径より小さいドット径とすることができる。このように、作成条件を工夫して短波長レーザー光の透過性のよいアモルファス窒化シリコン系膜を作成したとしても、解像力の向上には直結しない場合があることがわかった。感光体(5)では、表面層などの膜中の欠陥などに起因して潜像がぼけてしまうのではないかと思われ、感光体(3)、(4)では、表面層の最適化により更に解像力を向上させることが予測できた。
そこで本発明者らは、表面層の実力の最適化を狙って作成条件の様々な見直しを行ったところ、微量の酸素原子を添加することにより、380〜500nm光に対する吸収係数を小さく抑えながら解像力をより向上させることが可能であることがわかった。
この理由としてはまだ分かっていないが、酸素原子及び/又は炭素原子を少量添加することにより、応力の大きなa−SiN系の膜において結合の緩和が起こり、結果として欠陥が減少したと考えられる。前述したように窒素濃度の高いa−SiN系の膜は吸収係数が小さく硬度も非常に大きいので、表面層として使用するには好適であるが、硬度が大きいと膜中の応力も大きくなる場合があり、非常に大きな残留応力が膜中に残ってしまう場合がある。このような場合には応力による歪を緩和するために結合が切れたりして、膜堆積後に欠陥が生成されることが考えられる。酸素は結合手の数が本であることから、原子間に効果的に入り結合のひずみを緩和する働きが予想でき、欠陥生成を効果的に防止できるのではないかと考えられる。また炭素を添加することでも、Si−C結合の他にもC−N結合、C=N結合などといった、柔軟な結合形態を導入するができるため、結合緩和を起こすものと考えられる。
しかし、a−SiN系の膜を改善するために、酸素単独で十分な応力緩和を行おうとすると、透過性は変わらないものの高抵抗になりやすい傾向があり、また炭素単独で十分な応力緩和を行おうとすると、抵抗は変わらないものの短波長光に対する透過性が減少しやすい傾向があった。本発明者らは、酸素と炭素とを適量混在させることで、これらの欠点を顕在化させずに結合緩和のみを促進することが可能であることの知見を得た。
ここで、アモルファス窒化シリコン系膜に水素を添加した表面層を有する感光体において、解像度の顕著な向上が認められない場合があるのは、水素終端などは膜形成中に欠陥を修復する効果はあるものの、無理な結合や弱い結合が膜堆積後に熱応力によって切れ、欠陥に変わってしまうためではないかと考えられる。少量の酸素や炭素によって結合の緩和が起こり、水素による欠陥修復と並行して、これまで成膜後に生成されていた欠陥を効果的に低減させ、総合的に欠陥低減が実現できたのではないかと考えられる。このように、低欠陥化が実現すると、膜中にある浅いトラップが減り、例えば帯電後にトラップに束縛されたキャリアが、現像までの間に再励起して出てくることがなくなる。従来の感光体の表面層において、このような浅いトラップから出てくるキャリアは、潜像形成によって生じた電位差を埋めるようにドリフトすると考えられるので、潜像をなまらせたり、潜像の深さを浅くしたりしてしまうと考えられる。このように、トラップの低減が図れれば、潜像をなまらせる原因が減り、解像度が高まると考えられる。
また、酸素や炭素の量が少ない場合には価電子制御性の不純物と同様の作用が発生すると思われ、バンド構造の不整合を修正する働きがあると考えられる。バンドの不整合は、キャリアの蓄積や横流れを生じる原因となるおそれがあり、感光体の解像力を低下させる可能性がある。膜中に少量含有される酸素や炭素はバンド構造の整合性の向上を図ることができると考えられる。一方、あまり多く添加すると、添加物的な役割から構造材的な役割に変化することがあり、膜の硬度が下がったり、高抵抗化して残留電位が増加したり、SiCに近づくことで膜の透過性が下がったり、親水性のSiO結合が増加し、高温高湿下で画像のボケが発生する場合があることが判った。酸素の含有量としては、最表面の汚染などを受けた部分を除いた上で、O/(Si+N+O+C)の形で、膜中の平均濃度が0.01atm%以上20atm%以下、更に好ましくは0.5atm%以上10atm%以下であることが判った。また、炭素に関しても同様に最表面の汚染などを受けた部分を取り除いた上で、C/(Si+N+O+C)の形で、膜中の平均濃度が0.01atm%以上10atm%以下、更に好ましくは0.5atm%以上5atm%以下であり、この範囲であると解像度が更に向上することが判った。
また、表面層中において酸素原子が開放表面へ向かって濃度が高くなるような傾斜組成を有するように含有されることにより、更に電子写真特性の向上を図ることができることがわかった。
酸素の濃度分布と特性向上の関係に関しては、明らかにはなっていないが、前述したように酸素濃度をあまり高めすぎると高抵抗化により電子写真特性に影響が出てしまうため、表面に向かって徐々に酸素濃度を漸増させることで、電子写真特性のバランスをとりつつ、結合の緩和によって欠陥の発生を抑制できると考えられる。また、この酸素の傾斜分布により、光メモリーの更なる低減が実現される。この理由についても明らかではないが、酸素の傾斜分布によってバンド構造の傾斜が起こり、キャリアの流れがよりスムーズになるためと考えられる。
また、表面層中の窒素の分布に関しても、開放表面に向かって濃度が高くなるような膜厚方向分布を持たせることで、電子写真特性の向上と歩留まりの向上を図ることができることがわかった。この理由に関しては以下のように考えている。前述したように窒素量が多くなると特性的には有利な面もあるものの、歩留まりが低下する場合があった。しかし傾斜分布とすることで、徐々に組成が変化し、不安定な結合状態が解消され、結果として特性の向上と歩留まりの改善を図ることができると考えられる。また、酸素と同様にバンド構造の傾斜によるキャリアのスムーズな流れが実現されるため、解像力やゴースト特性などが向上したと考えられる。
加えて、表面層において、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数をN、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される酸素原子の数をOとしたとき、O/Nを、開放表面に向かって増加させることにより、解像力やゴースト特性がより向上することが判った。これは、窒素原子の数Nが一定であれば、酸素原子の数Oは開放表面に向かって増加することが好ましく、窒素原子の数Nが漸増している場合は、窒素原子の数Nの増加率よりも酸素原子の数Oの増加率の方が常に大きくなることが好ましいことを示している。この理由に関しても推測であるが、窒素原子が増えることで結合のひずみが増すところ酸素原子がこれを緩和し、酸素原子が常に窒素原子に比べて多いことでひずみの緩和が理想的になされるのではないかと考えられる。
また、本発明の表面層は、高精細、高画質を実現するために最適であることから、印刷画質を意識した高画質機、特にフルカラー機に使用することで、最大限の効果が得られる。ところでカラートナーは特にネガ帯電トナーの方が特性的にも有利であり、画像形成上もイメージ露光法(IAE)と、露光で電位が減衰した部分を現像する方式反転現像との組合せの方が高画質が得やすいことから、これらの組合せを考えると、感光体は負帯電感光体が好ましいこととなる。その際には、上部からの電子の侵入を抑えるために、光導電層と前記表面層との間に、シリコン原子と窒素原子を母体とし、周期表第13族元素を含むアモルファス材料からなる上部電荷注入阻止層を含むことがより好ましい。上部電荷注入阻止層もa−SiN系の材料とすることで、この層における吸収も非常に小さくすることが可能となり、380〜500nm波長露光を用いた際に特に有利であることは言うまでもない。
また、光導電層と上部電荷注入阻止層との間にシリコン原子と窒素原子を母体とし、厚さ方向の単位長さ当たりに含有されるシリコン原子の数Siに対する、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数Nの比N/Siの値が、上部電荷注入阻止層に向かって増加するようにシリコン原子および窒素原子を含有するアモルファス材料を含む傾斜組成層や、上部電荷注入阻止層と表面層との間に、シリコン原子と窒素原子と炭素原子を母体とし、厚さ方向の単位長さ当たりに含有されるシリコン原子の数と、窒素原子の数と、炭素原子の数との組成比が連続的に変化するようにシリコン原子、窒素原子および炭素原子を含有するアモルファス材料を含む変化層を有するものは、光学的に明確な反射面を持たないため、表面の微小な膜厚ムラや微小な削れムラによって引き起こされる感度ムラを防止できるため、より好ましいことがわかった。
本発明の電子写真感光体が、380nm500nm波長の光に対し、実用的に十分な感度を有することを以下により確認した。
図4は、本発明の電子写真感光体の分光感度を示した模式図である。感光体における分光感度とは、感光体の表面を一定電位、例えば450Vに帯電させ、その後さまざまな波長の光を照射して一定電位まで光減衰させるのに要した光量を測定し、光量の逆数、即ち、単位面積の光の単位エネルギー量当たりの電位減衰量(V・cm 2 /μJ)を各波長毎に求め、その最大値を有する波長における電位減衰量を100としたときの各波長における電位減衰量を換算し、換算値を各波長における感度として求めることができる。
図4は、横軸に波長、縦軸に換算した電位減衰分、即ち感度を取り、さまざまな波長における本発明の電子写真感光体における電位減衰分をプロットしたものであり、380nm以上500nm以下の波長光において、感光体として実用上使用可能な感度を持っていることが確認できた。
電子写真感光体として、像露光による単位エネルギー量あたりの電位減衰分が、300Vcm 2 μ以上であることが好ましい。この単位エネルギー量あたりの電位減衰分が300Vcm 2 μよりも低い場合でも電子写真における画像形成は可能であるが、実際には露光光量を大きくしなければならず、露光装置の大型化や高コスト化、短低寿命化につながるため、好ましくは300Vcm 2 μ以上、さらに好ましくは400Vcm 2 μ以上である。
この表面電位減衰分の測定については、梶田ら電子写真学会誌、第22巻、第号、1983)の方法に準じた方法により行った。簡単に説明すると、複写機内での挙動を再現するため、感光体表面にITO電極など透明な電極を密着させ、複写機内のシーケンスを模して露光や電圧印加を行い、表面の電位変化を測定する。表面の電位を測定する場合には、感光体をコンデンサーと見なし、既知の容量と直列接続して電位を印加して、感光体の帯電能の情報を得ることもできる。梶田らの方法では透明絶縁膜を感光体とITO電極の間に挟む方法を用いているが、電気回路を工夫することで固定コンデンサーを用いることができる。
具体的には、除電光例えば50mW/cm 2 を一定時間例えば0.1照射したあと、一定時間例えば0.01経過後、電圧を印加例えば20msec程度して表面を帯電させる。電圧付与をなくしてから一定時間(0.10.5秒程度、例えば0.25経てから、ITO電極につないだ導電体の表面を電位計で測定する。この時間は複写機内で感光体の電位を付与した部分が現像器に到達するタイミングに相当するので、現像器位置における電位に相当する。次に、同様のシーケンスで電圧付与と電位測定の間に様々な波長の光を露光例えば電圧付与から0.1秒後し、同様に現像器位置に相当するタイミングの電位を測定し、光を当てる場合と当てない場合との差分を計算する。これは、現像器位置での、露光光による電位減衰分を測定していることに相当する。
本発明者らは上記知見に基づき、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は、基体と、該基体上に設けられた光導電層と、該光導電層上に設けられた表面層とを有する電子写真感光体において、
表面層が、シリコン原子と窒素原子を母体とし、酸素原子および炭素原子を含有するアモルファス材料を含み、
該アモルファス材料が、下記式(1)、(2a)および(3)
0.0001≦O/(Si+N+O+C)≦0.2 (1)
0.00C/(Si+N+O+C)≦0.05 (2
0.3≦N/(Si+N+O+C)≦0.6 (3)
(式(1)、(2a)および(3)中、Siはシリコン原子の数を示し、Nは窒素原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子の数を示す。)
でそれぞれ表される平均濃度で、酸素原子、炭素原子および窒素原子を含有する
ことを特徴とする電子写真感光体である。
また、本発明は、上記電子写真感光体を備える電子写真装置である。
本発明の電子写真感光体は、表面層の膜の硬度を維持し、抵抗値の上昇を抑制することで残留電位の上昇を抑制し、表面層における画像露光の吸収を顕著に抑制し、高温高湿下でも画像ボケの発生を抑制することができる。また、本発明の電子写真装置は、380〜500nmの波長光に対して、充分な感度を得ることができ、青色発光半導体レーザーを画像露光として用い、レーザースポット径を小径化して高解像度を初めとする優れた電子写真特性を備え、耐環境性、耐使用環境性、容易に製造することができる次世代超高画質電子写真装置を狙うことができる。
次に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明における電子写真感光体の層構成の一例について示した模式図である。図1(a)に示すように、電子写真感光体10は、基体101の上に光導電層102、表面層103が順次積層された構成であり、表面層が、シリコン原子と窒素原子を母体とし、酸素原子および炭素原子を含有するアモルファス材料を含み、該アモルファス材料が、式(1)、(2a)および(3)
0.0001≦O/(Si+N+O+C)≦0.2 (1)
0.00C/(Si+N+O+C)≦0.05 (2
0.3≦N/(Si+N+O+C)≦0.6 (3)
(式(1)、(2a)および(3)中、Siはシリコン原子の数を示し、Nは窒素原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子の数を示す。)でそれぞれ表される平均濃度で、酸素原子、炭素原子および窒素原子を含有するものであれば、特に制限されるものではない。
また、本発明の電子写真感光体は、図1(b)に示すように、基体101が導電性の場合その上に導電性基体側からの電荷の注入を阻止するために下部電荷注入阻止層104を設けることが好ましく、また、図1(c)に示すように、上部からの電荷注入を低減し、帯電性を向上させる目的で上部注入阻止層105を設けることが好ましい。このような構成は負帯電用電子写真感光体に特に好適である。
また、本発明の電子写真感光体は、図(d)に示すように、表面層103と上部電荷注入阻止層105との間で、屈折率の変化が連続的になるような変化層106を設けてもよい。このように、表面層の屈折率と上部電荷注入阻止層の屈折率とをなだらかに接続することにより、この層界面における光の反射が抑えられ、可干渉光を露光に用いた場合の表面での干渉を防ぐことができる。露光に可干渉光以外の光例えばLEDなどを用いた場合でも、このような界面における干渉が生じると削れによる感度の変動が起こりやすく、ほんの少しの削れムラによっても画像濃度の顕著なムラが表れてしまう可能性があるところ、このような界面における反射を抑制することができ好ましい。また、上部電荷注入阻止層と光導電層の屈折率差が大きい場合には、上部注入阻止層105と光導電層102との間にも屈折率のなだらかに変化する傾斜組成層107を設けてもよい。
以下、各層について詳細に説明する。
[基体]
本発明において使用される基体としては、その上に光導電層を設けることができるものであれば、特に制限されるものではなく、導電性でも電気絶縁性であってもよい。かかる基体の導電性の材質としては、Al、Cr、Mo、In、Nb、Te、V、Ti、Pd、F等の金属、およびこれらの合金、例えばステンレス等を挙げることができる。
また、電気絶縁性の材質としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等を挙げることができる。これらの電気絶縁性基体の場合は、少なくとも光導電層を形成する側の表面は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、無電解メッキ法、プラズマスプレー法などの方法により導電性物質を堆積させ導電性処理されたものが好ましい。
基体の形状は円筒状または無端ベルト状であることが、搭載される電子写真装置の構造上好ましく、その表面は平滑表面または凹凸表面であってもよい。その厚さは、所望通りの光導電層を形成し得るように適宜決定するが、光導電層が可撓性を要求される場合には、基体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることが好ましいが、製造上および取り扱い上、機械的強度等の点から通常は10μm以上とされる。
[光導電層]
本発明の電子写真感光体における光導電層は、特に制限されるものではないが、380〜500nmの波長の光に感度を有するものが好ましく、アモルファスの状態、即ち、非晶質の状態の部分を主体として構成され、目的とする特性が得られる範囲内で多結晶や微結晶の部分を含んでいてもよい。
光導電層のかかる波長の光に感度を有する材質として、シリコン原子を母体とするアモルファス材料を含むことが好ましい。また、光導電層には、光導電性および電荷保持特性を向上させるため、水素原子や、必要に応じてハロゲン原子を含有していてもよい。
光導電層中の水素原子やハロゲン原子は、シリコン原子の未結合手に結合し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させ得る。水素原子の含有量は、特に制限はなく、露光系の波長に合わせて適宜変化させることができ、例えばシリコン原子と水素原子の和に対して10〜40atm%などとすることができる。また、その分布形状に関しても、露光系の波長に合わせて適宜調整することが好ましい。特に、水素原子やハロゲン原子の含有量をある程度多くすると、光学的バンドギャップが大きくなり、感度のピークが短波長側にシフトすることが知られている。380〜500nmの波長の露光に対する感度を向上させるためには、かかる光学的バンドギャップの拡大のためにシリコンと水素原子の和に対して15atm%以上とすることが好ましい。
加えて、光導電層には伝導性を制御する原子を光導電層の層厚方向に不均一な分布状態で含有させることが好ましい。これは、光導電層のキャリアの走行性を調整し、あるいは補償して走行性を高次元でバランスさせることにより、帯電能の向上、光メモリー低減、感度の向上を図ることができる。
この伝導性制御原子は、光導電層の膜厚方向の単位長さ当たりの含有量が連続的に、または段階的に変化するように含有されてもよく、また、膜厚方向の単位長さ当たりの含有量が変化する状態において厚さ方向の一定長に亘り含有量が変化しない状態で含有されてもよい。伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、周期表第13族に属する原子(第13族原子とも略記する)、または周期表第15族に属する原子(第15族原子とも略記する)を用いることができる。第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。第15族原子として、具体的には、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、As、Sbが好適である。伝導性を制御する原子の光導電層中の含有量は、特に制限されないが、一般には0.05〜5atmppmとすることができる。また、画像露光の到達する範囲においては、伝導性を制御する原子を実質的に含有しないものであってもよい。
また、光導電層は、その他、物性の制御性、作製上などの点から、ヘリウム原子、水素原子など適宜含有していてもよい。
光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得られること及び製造上の効率や経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、例えば5〜50μmとすることができ、好ましくは10〜45μm、より好ましくは20〜40μmである。層厚が5μm以上であれば、帯電能や感度等の電子写真特性が実用上充分となり、50μm以下であれば、光導電層を効率よく製造することができる。
このような光導電層を作製するには、基体上に例えばグロー放電法により作製することができる。かかるグロー放電法としては、後述する高周波プラズマCVD装置を用いた方法を挙げることができる。例えば、シリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素原子()を供給し得る供給用の原料ガスと、必要に応じてハロゲン原子()を供給し得る供給用の原料ガスとを、内部を減圧できる反応容器内に所望のガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定の基体上にa−Si:H,Xからなる膜を形成する方法などを挙げることができる。
Si供給用ガスとなり得る物質としては、SiH 4 、Si 2 6 、Si 3 8 、Si 4 10 等のガス状態の、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH 4 、Si 2 6 が好ましいものとして挙げられる。なお、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合してもよい。
そして、膜の物性の制御性、ガスの供給の利便性などを考慮し、これらのガスに更に、H 2 、He及び水素原子を含むケイ素化合物から選ばれる1種以上のガスを所望量混合して層形成することもできる。
上記ハロゲン原子供給用の原料ガスとしては、具体的には、フッ素ガス(F 2 )、BrF、ClF、ClF 3 、BrF 3 、BrF 5 、IF 3 、IF 7 等のハロゲン間化合物、SiF 4 、Si 2 6 等のフッ化ケイ素を好ましいものとして挙げることができる。光導電層中に含有されるハロゲン元素の量を制御するには、例えば、基体の温度、ハロゲン元素を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電空間の圧力、放電電力等を制御すればよい。
また、光導電層の伝導性を制御する原子を導入するための原料物質として、第13族原子導入用の原料物質としては具体的には、ホウ素原子導入用としては、B 2 6 、B 4 10 、B 5 9 、B 5 11 、B 6 10 、B 6 12 、B 6 14 等の水素化ホウ素、BF 3 、BCl 3 、BBr 3 等のハロゲン化ホウ素等が挙げられる。この他、AlCl 3 、GaCl 3 、Ga(CH 3 3 、InCl 3 、TlCl 3 等も挙げることができる。第15族原子導入用の原料物質として、リン原子導入用としては、PH 3 、P 2 4 等の水素化リン、PH 4 I、PF 3 、PF 5 、PC 5 、PBr 3 、PBr 5 、PI 3 等のハロゲン化リンが挙げられる。この他、AsH 3 、AsF 3 、AsCl 3 、AsBr 3 、AsF 5 、SbH 3 、SbF 3 、SbF 5 、SbCl 3 、SbCl 5 、BiH 3 、BiCl 3 、BiBr 3 等も第15族原子導入用の出発物質として挙げることができる。これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH 2 および/またはHeにより希釈して使用してもよい。
これらの原料ガスを用いて所望の膜特性を有する光導電層を形成するには、Si供給用、ハロゲン添加用等のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体温度を適宜設定することができる。希釈ガスとして使用するH 2 および/またはHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用ガスに対し、例えば3〜30倍、好ましくは4〜15倍、より好ましくは5〜10倍の範囲である。反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、例えば1×10 -2 〜1×10 3 Paとすることができ、好ましくは5×10 -2 〜5×10 2 Pa、より好ましくは1×10 -1 〜2×10 2 Paである。放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量に対する放電電力の比を、0.5〜8、好ましくは2〜6の範囲に設定することができる。さらに、基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、例えば200〜350℃とすることができ、好ましくは210〜330℃、より好ましくは220〜300℃である。光導電層を形成するための基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光導電層を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。
[表面層]
本発明の電子写真感光体における表面層は、主に380〜500nm波長光など短波長光に対して透過性が高く、連続繰り返し使用耐性、耐湿性などの使用環境耐性を有し、感光体において高解像度などの電気特性などに関して良好な特性を得るために設けられる。本発明における表面層は正帯電方式の電子装置用感光体の場合には帯電保持層としての役割も有し、負帯電用電子写真感光体の場合、それ自体が帯電保持層としての役割を持ってもよいが、後述する上部電荷注入阻止層に帯電保持の機能を持たせ、表面層の組成設計の自由度を確保するようにしてもよい。
本発明における表面層の材質としては、シリコン原子と窒素原子を母体とし、酸素原子及びまたは炭素原子を含むアモルファス材料を含むものであり、アモルファス材料が、式(1)、(2a)および(3)
0.0001≦O/(Si+N+O+C)≦0.2 (1)
0.00C/(Si+N+O+C)≦0.05 (2
0.3≦N/(Si+N+O+C)≦0.6 (3)
(式(1)、(2a)および(3)中、Siはシリコン原子の数を示し、Nは窒素原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子の数を示す。)でそれぞれ表される平均濃度で、酸素原子、炭素原子および窒素原子を含有するものであり、かかるアモルファスの状態、即ち、非晶質の状態の部分を主体として構成され、目的とする特性が得られる範囲内で多結晶や微結晶の部分を含んでいてもよい。表面層に含まれるアモスファス材料におけるシリコン原子と窒素原子を母体とするとは、シリコン原子と窒素原子を本体とするものであればよく、酸素原子および炭素原子を除いた総ての部分がシリコン原子と窒素原子であってもよい。かかるアモルファス材料中の窒素原子の含有量としては平均濃度として式(3)で表される範囲であると、均一な表面層を作製することが容易であり製造上歩留まりがよく、画像露光の吸収が殆どないが、窒素原子の平均濃度が、0.35≦N/(Si+N+O+C)≦0.55で表される範囲であれば、上記効果を更に顕著に得ることができるため好ましい。
また、表面層における酸素原子含有量としては、表面層に含まれるアモルファス材料中、平均濃度として、式(1)
0.0001≦O/(Si+N+O+C)≦0.2 (1)
(式(1)中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子の数を示す。)で表される範囲であると、380〜500nm波長の画像露光を吸収しないが、酸素原子の含有量が0.005≦O/(Si+N+O+C)≦0.1で表される範囲であれば、上記効果を顕著に得ることができる。酸素原子を上記範囲で含有する表面層を持った電子写真感光体は、短波長の透過性を充分に保ちつつ、電子写真特性に優れた特性を有する。すなわち、一般にa−SiN:Hなどのワイドバンドギャップ半導体は、ギャップ中に多くの欠陥準位をもちやすく、欠陥を低減することが難しくなりやすいと言われている。表面層内に存在するダングリングボンドによる欠陥は電子写真装置用感光体としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。このダングリングボンドによる悪影響としては、前記表面層内の欠陥に電荷がトラップされることにより、繰返し使用時の残像現象光メモリー)の発生や、電荷の横流れによる解像度の低下等が挙げられるが、かかる含有量の酸素原子の存在によりこれらの悪影響を解消することが可能となる。
また、表面層における炭素原子含有量としては、表面層に含まれるアモルファス材料中、平均濃度として、式(2
0.00C/(Si+N+O+C)≦0.05 (2
(式(2a)中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子を示す。)で表される範囲であると、380〜500nm波長の画像露光の吸収を抑えながら、構造緩和などを促進でき、炭素原子の含有量が0.005≦C/(Si+N+O+C)≦0.05で表される範囲であれば、上記効果を顕著に得ることができる。炭素原子を上記範囲で含有する表面層を持った電子写真装置用感光体は、短波長の透過性を充分に保ちつつ、電子写真特性に優れた特性を有する。
また、窒素原子や、酸素原子は表面層中に均一に存在してもよいが、表面側の濃度が高く、光導電層側に行くにしたがって濃度が減少するような傾斜組成分布をもって含有されることがより好ましい。その分布状態の変化としては、直線的であってもよいし、指数関数的であってもよく、あるいは段階的に変化する組成であってもよいが、全体として表面側に向かって増加している状態が好ましい。中でも指数関数的な変化をさせた場合、スムーズな電荷移動や結合の緩和などが起こると考えられ、最も電子写真特性がよく、好ましい。更に、表面層が、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数Nに対する、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される酸素原子の数Oの比O/Nの値が、開放表面に向かって増加するように窒素原子および酸素原子を含有することが好ましい。厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数Nが漸増している場合は、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数Nの増加率よりも酸素原子の数Oの増加率の方が常に大きくなることが好ましい。厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数が増えることで結合の歪が増すところ、酸素原子の数が窒素原子の数に比べて常に多いことで、酸素原子が結合の歪を緩和し、歪の緩和が理想的に行われているのではないかと考えられる。
このような表面層には、他の原子を含有させることができ、かかる原子として、水素原子及び又はハロゲン原子はシリコン原子の未結合手と結合し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させることができるため好ましい。水素含有量は、構成原子の総量に対して膜中の平均値として例えば70atm%、好適には60atm%、より好ましくは1050atm%である。
さらに、表面層には必要に応じて、第13族原子および第15族原子などの伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、表面層中に万遍なく均一に分布した状態で含有されてもよいし、あるいは層厚方向の単位長さ当たりに含有される原子の数として不均一な状態で含有している部分があってもよい。表面層中の伝導性を制御する原子の含有量としては、例えば1×10 -3 〜1×10 3 atmppmとすることができ、好ましくは1×10 -2 〜5×10 2 atmppm、より好ましくは1×10 -1 〜10 2 atmppmである。
表面層の層厚としては、例えば0.01〜3μmとすることができ、好適には0.05〜2μm、より好ましくは0.1〜1μmである。層厚が0.01μm以上であれば磨耗等の理由により表面層が失われることがなく、3μm以下であれば残留電位の増加等の電子写真特性の低下が抑制される。
また、表面層および光導電層の間には、窒素原子の含有量が光導電層に向かって減少するように変化する領域を設けてもよい。これにより表面層と光導電層の密着性を向上させ、光キャリアの表面への移動がスムーズになるとともに光導電層と表面層の界面での光の反射による干渉の影響をより少なくすることができる。
このような表面層を作製するには、上記光導電層上に例えばグロー放電法などにより作製することができる。かかるグロー放電法によってこのようなa−SiN系材料よりなる表面層を形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、炭素原子()を供給し得る供給用の原料ガスと、酸素原子を供給しうる供給用の原料ガスと、炭素原子を供給し得る供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガス及び/又はハロゲン原子()を供給し得る原料ガスを、内部を減圧し得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置された基体上の光導電層上にアモルファスシリコン、窒素原子、酸素原子、炭素原子などを含む膜を形成することができる。
表面層の作製において使用されるシリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、SiH 4 、Si 2 6 、Si 3 8 、Si 4 10 等のガス状物、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の等の点でSiH 4 、Si 2 6 が好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH 2 、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
窒素、酸素、炭素供給用ガスとなり得る物質としては、N 2 、NH 3 、NO、N 2 O、NO 2 、O 2 、CO、CO 2 CH 4 2 2 2 4 2 6 3 8 4 10 等のガス状物、またはガス化し得る化合物が挙げられる。中でも、窒素供給用ガスとしては窒素が最も良好な特性が得られるため、好ましい。また、酸素供給用ガスとしてはNO、炭素供給用としてはCH 4 が好ましい。また、酸素と炭素とを同時に供給できる点からCOCO 2 も好適である。また、これらの窒素、酸素供給用の原料ガスを必要に応じてH 2 、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。特に酸素や炭素を微量添加する場合、例えばNOガスやCO 2 ガスをH 2 ガスやHeガスで予め希釈して供給することは、流量の正確な制御が可能となるのに加え、これらの酸素添加ガス、炭素添加ガスは微量でも膜中に取り込まれやすく、制御性を容易にするために非常に重要である。
また、ハロゲン供給用の原料ガスとしては、フッ素原子供給の原料ガスとしては、フッ素ガス(F 2 )、BrF、ClF、ClF 3 、BrF 3 、BrF 5 、IF 3 、IF 7 等のハロゲン間化合物や、SiF 4 、Si 2 6 等のフッ化ケイ素を挙げることができる。
これらの原料ガスを用いて表面層を作製するには、基体の温度、反応容器内のガス圧等を所望にしたがって、適宜設定することができる。基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、例えば、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃、更に好ましくは250〜300℃である。反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、例えば、1×10 -2 〜2×10 3 Paとすることができ、好ましくは5×10 -1 〜5×10 2 Pa、より好ましくは1×10 1 〜1×10 2 Paである。
また、放電電力としては10W5000W、カソード電極面積あたりに換算すると2mW/cm 2 から1.4W/cm 2 程度の範囲が好適である。中でも、前述した窒素範囲を実現することで透過率の良好なa−SiN系の膜を得るためには、シリコン含有ガスの流量FSi(単位:ml/min(normal))、窒素含有ガスの流量FN(単位:ml/min(normal))、放電電力PW(単位:W)を適切な関係にすることが好ましい。即ち、単位ガス量あたりの電力、特にシリコン原子含有ガスの単位ガス量に対する電力(PW/FSi)と、窒素含有ガスとシリコン含有ガスのガス濃度比(FN/FSi)との積であるPFN/Fsi 2 50以上300Wmin/ml(normal)以下、より好ましくは80以上200Wmin/ml(normal)以下とすることが好ましい。この範囲に設定することで、膜の光学的バンドギャップとしては2.8eV以上程度となり、吸収係数も3000cm -1 以下とすることができる。この電力と流量比の積が50以上であれば、380〜500nmの波長に対する吸収が抑制され、かかる波長の透過率が上昇される。また、この値が300以下であれば、膜の硬度の低下が抑制される。この理由としては膜作成中にプラズマからのダメージの導入が低減されるためと考えられる。上記範囲が好適な理由としては明らかではないが、次のように考えられる。所望の膜を得るためには、プラズマ中に存在する原料物質のラジカルが適切なバランスをとっている必要がある。原料ガスが分解された際のラジカルの濃度は、複数の原料ガスを使用する場合、原料ガス濃度比と電力によって決まると考えられるが、ガス種によって分解効率に差があるため、シリコン原子含有ガスの単位ガス量に対する電力(P/FSi)と、窒素原子含有ガスとシリコン原子含有ガスのガス濃度比(F/FSi)との積がこの範囲であると、ラジカル濃度が適切な範囲となると考えられる。
表面層中に酸素原子や炭素原子を上記のように開放表面に向かって高くなるように傾斜組成を有して含有させるために、O供給用原料ガスやC供給用原料ガスを供給しアモルファス膜を作製中において、例えば、ガス濃度や、高周波電力や基体温度などの堆積膜形成条件を適宜制御してO供給用原料ガスやC供給用原料ガスを供給することができる。その量が極微量の場合は、原料ガスをHeガスなどで希釈し、マスフローコントローラーを介して正確に流量制御して反応容器内へ供給することができる。酸素原子や炭素原子は原料ガスを微量添加しただけで、膜中に容易に取り込まれるため、希釈ガスで適宜希釈し、例えば、100ppm20%程度に希釈したボンベを使用することで制御性が向上する。
本発明においては、表面層を形成するための基体の温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めることが好ましい。
[上部注入阻止層]
本発明の電子写真感光体に設けられる上部電荷注入阻止層105は、感光体の帯電がマイナス帯電の場合、上部から即ち表面層側からの電荷の侵入を阻止し、表面層の帯電能を向上させる。
上部電荷注入阻止層の材質としては、シリコン原子と窒素原子を母体としたアモルファス材料であり、シリコン原子と窒素原子を母体とするとは、シリコン原子と窒素原子を本体とするものであればよく、周期表第13族元素を除いた総ての部分がシリコン原子と窒素原子であってもよい。
上部電荷注入阻止層に含まれるアモルファス材料中の窒素原子は、式(4)
0.05≦N/(Si+N)≦0.35 (4)
(式(4)中、Siはシリコン原子の数を示し、Nは窒素原子の数を示す。)で表される平均濃度含有されることが、380〜500nmの波長の吸収を抑制できるため好ましく、より好ましくは0.1≦N/(Si+N)≦0.3、更に好ましくは0.15≦N/(Si+N)≦0.3である。上部電荷注入阻止層に含有されるシリコン原子および窒素原子は、該層中に万偏なく均一に分布されていてもよく、あるいは層厚方向に不均一に分布されていてもよく、例えば、密着性の向上や干渉抑制を図るため、光導電層側から表面層に向かって傾斜組成を有して分布されていてもよい。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内における特性の均一化を図る点からも好ましい。
上部電荷注入阻止層を構成するシリコン原子と窒素原子を母体とするアモルファス材料には、表面層の帯電保持のため、型の伝導性を付与するために周期表第13族元素を含有させることが好ましい。前記周期表第13族元素としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられ、特にホウ素が好適である。
上部電荷注入阻止層を構成するアモルファス材料に含有される周期表第13族元素は、上部電荷注入阻止層に万偏なく均一に分布されていてもよく、あるいは層厚方向に不均一に分布されていてもよい。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内における特性の均一化を図る点からも好ましい。
上部電荷注入阻止層を構成するアモルファス材料に含有される周期表第13族元素の含有量は、構成原子の総量に対して50atmppm以上3000atmppm以下、好適には100atmppm以上2000atmppm以下の範囲とするのが好ましい。
また、本発明においては上部電荷注入阻止層を構成するアモルファス材料には、水素原子が含有されることが好ましい。水素原子はシリコン原子の未結合手と結合し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させることができる。水素原子の含有量は、上部電荷注入阻止層中の構成原子の総量に対して通常の場合30atm%以上70atm%以下、好適には35atm%以上65atm%以下、より好ましくは40atm%以上60atm%以下である。
本発明において、上部電荷注入阻止層の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から例えば5nm以上1000nm以下とすることができ、好ましくは10nm以上800nm以下、より好ましくは15nm以上500nm以下である。層厚がnm以上であれば、表面側からの電荷の注入阻止能が充分となり、1000nm以下であれば電子写真特性の向上を図ることができる。
上部電荷注入阻止層106光導電層103側から表面層104に向かって組成を連続的に変化させることも好ましく、密着性の向上や干渉防止等に効果がある。
本発明の目的を達成し得る特性を有する上部電荷注入阻止層を形成するには、シリコン原子供給用のガスと窒素原子供給用のガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することが好ましい。反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば1×10 -2 Pa以上1×10 3 Pa以下とすることができ、好ましくは5×10 -2 Pa以上5×10 2 Pa以下、より好ましくは1×10 -1 Pa以上1×10 2 Pa以下である。さらに、基体の温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば、好ましくは150℃以上350℃以下、より好ましくは180℃以上330℃以下、更に好ましくは200℃以上300℃以下である。
[下部電荷注入阻止層]
本発明の電子写真感光体において、図(b)から図(d)に示すように、導電性基体101の上層には、基体101側からの電荷の注入を阻止する働きのある下部電荷注入阻止層104を設けることが好ましい。下部電荷注入阻止層は光導電層102が一定極性の帯電処理をその開放表面に受けた際、基体101側より光導電層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有している。
下部電荷注入阻止層の材質としては、シリコン原子を母体とするアモルファス材料が好ましく、かかるアモルファス材料には、導電性を制御する不純物を、光導電層に比べて比較的多く含有させることが好ましい。正帯電用電子写真感光体の場合、下部電荷注入阻止層に含有される不純物元素としては、周期表第13族元素を用いることができる。また、負帯電用電子写真装置用感光体の場合、下部電荷注入阻止層に含有される不純物元素としては、周期表第15族元素を用いることができる。下部電荷注入阻止層中に含有される不純物元素の含有量は、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜決定されるが、好ましくは下部電荷注入阻止層中の構成原子の総量に対して10atmppm以上10000atmppm以下、好適には50atmppm以上7000atmppm以下、より好ましくは100atmppm以上5000atmppm以下である。
更に、下部電荷注入阻止層には、窒素及び酸素を含有させることによって、該下部電荷注入阻止層と基体101との間の密着性の向上を図ることが可能となる。また、負帯電用電子写真感光体の場合には、下部電荷注入阻止層に不純物元素をドープしなくても窒素および酸素を最適に含有させることで優れた電荷注入阻止能を有することも可能となる。電荷注入阻止能を向上させるためには、具体的に、下部電荷注入阻止層の全層領域に含有される窒素原子および酸素原子の含有量は、窒素原子および酸素原子の数の和として下部電荷注入阻止層中の構成原子の原子の総量に対して、好ましくは0atm%以上40atm%以下、より好ましくは1atm%以上20atm%以下である。
また、下部電荷注入阻止層には水素原子を含有させるのが好ましく、この場合、含有される水素原子は、層内に存在する未結合手に結合し膜質の向上に効果を奏する。下部電荷注入阻止層中に含有される水素原子の含有量は、下部電荷注入阻止層中の構成原子の総量に対して1atm%以上50atm%以下が好ましく、5atm%以上40atm%以下がより好ましく、10atm%以上30atm%以下が更に好ましい。
下部電荷注入阻止層の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から好ましくは100nm以上5000nm以下、より好ましくは300nm以上4000nm以下、更に好ましくは500nm以上3000nm以下である。層厚を100nm以上5000nm以下とすることにより、基体101からの電荷の注入阻止能が充分となり、充分な帯電能が得られると共に電子写真特性の向上が期待でき、残留電位の上昇などの弊害が発生しない。
下部電荷注入阻止層を形成するには、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。導電性基体温度(Ts)は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、好ましくは150℃以上350℃以下、より好ましくは180℃以上330℃以下、更に好ましくは200℃以上300℃以下である。反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば×10 -2 Pa以上×10 3 Pa以下とすることができ、好ましくは×10 -2 Pa以上5×10 2 Pa以下、より好ましくは×10 -1 Pa以上×10 2 Pa以下である。
[電子写真感光体の製造装置]
次に、本発明の電子写真感光体を作製するための装置及び製造方法について以下に説明する。
本発明の電子写真感光体は、高周波プラズマCVD装置を用いて基体上に光導電層、表面層を作製することができる。本発明の電子写真感光体の製造に用いる一例として電源周波数としてRF帯を用いた高周波プラズマCVD法(RF−PCVDとも略記する)による電子写真感光体の製造装置は、図に示すように、大別すると、堆積装置(2100)、原料ガスの供給装置(2200)、反応容器(2111)内を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成されている。堆積装置(2100)中の反応容器(2111)内には円筒状基体(2110)を載置する載置台(2112)、基体加熱用ヒーター(2113)、原料ガス導入管(2114)が設置され、さらに高周波マッチングボックス(2115)が接続されている。
原料ガス供給装置(2200)は、原料ガスのボンベ(22212226)とバルブ(223122362241224622512256)及びマスフローコントローラー(22112216)から構成され、各原料ガスのボンベは補助バルブ(2260)を介して反応容器(2111)内のガス導入管(2114)に接続されている。
この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば以下のように行なうことができる。
先ず、反応容器(2111)内の載置台(2112)に円筒状基体(2110)を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器(2111)内を排気する。続いて、基体加熱用ヒーター(2113)により円筒状基体(2112)の温度を150℃乃至350℃の所定の温度に制御する。
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器(2111)に流入させるには、ガスボンベのバルブ(22312236)、反応容器のリークバルブ(2117)が閉じられていることを確認し、又、ガス流入バルブ(22412246)、流出バルブ(22512256)、補助バルブ(2260)が開かれていることを確認して、まずメインバルブ(2118)を開いて反応容器(2111)及び原料ガス配管内(2116)を排気する。
次に、真空計(2119)の読みが約0.1Pa以下になった時点で補助バルブ(2260)、ガス流出バルブ(22512256)を閉じる。その後、ガスボンベ(22212226)より各ガスを原料ガスボンベバルブ(22312236)を開いて導入し、圧力調整器(22612266)により各ガス圧を0.2MPaに調整する。次に、ガス流入バルブ(22412246)を徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー(22112216)内に導入する。
以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下の手順で各層の形成を行う。
円筒状基体(2110)が所定の温度になったところで流出バルブ(22512256)のうちの必要なもの及び補助バルブ(2260)を徐々に開き、ガスボンベ(222122266)から所定のガスを原料ガス導入管(2114)を介して反応容器(2111)内に導入する。次にマスフローコントローラー(22112216)によって各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器(2111)内の圧力が1×10 2 Pa以下の所定の圧力になるように真空計(2119)を見ながらメインバルブ(2118)の開口を調整する。内圧が安定したところで、周波数13.56MHzのRF電源(不図示)を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス(2115)を通じて反応容器(2111)内にRF電力を導入し、グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状基体(2112)上に所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光導電層が形成される。それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うまでもなく、また、それぞれのガスが反応容器(2111)内、流出バルブ(22512256)から反応容器(2111)に至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブ(22512256)を閉じ、補助バルブ(2260)を開き、さらにメインバルブ(2118)を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
また、膜形成の均一化を図るために、層形成を行なっている間は、円筒状基体(2110)を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効である。
さらに、上述のガス種及びバルブ操作は各々の層の作製条件に従って変更が加えられることは言うまでもない。
基体の加熱方法は、真空仕様である発熱体であればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とした熱交換手段による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。
それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で基体を搬送する方法が用いられる。
[電子写真装置]
本発明の電子写真装置は、本発明の電子写真感光体を搭載したものであれば特に制限されるものではない。
本発明の電子写真装置を適用したカラー電子写真装置について、図の概略構成図を参照して説明する。
に示すカラー電子写真装置には、上述の基体上に光導電層と上部電荷注入阻止層と表面層とが順次積層され、回転機構(図示せず)により回転される電子写真感光体である感光体ドラム301が備えられ、感光体ドラム301の周りには、感光体ドラム301の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる磁気ブラシを備えた1次帯電器302と、帯電された感光体ドラム301の表面に画像露光303を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置されている。更に、感光体301の周りには、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する現像器として、ブラックトナーBを付着させる第1現像器304aと、イエロートナーYを付着させる現像器とマゼンタトナーMを付着させる現像器とシアントナーCを付着させる現像器とを内蔵した回転型の第2の現像器304bと、感光体301上に現像されたトナー像を転写させるフィルム状の誘電体ベルトからなる中間転写ベルト305と、トナー像を転写した後の感光体ドラム301上をクリーニングする感光体クリーナ306、及び、感光体ドラム301の除電を行う除電露光307が設けられている。
中間転写ベルト305は、感光体ドラム301に当接ニップ部を介して駆動するように配置されており、内側には感光体ドラム301上に形成されたトナー像を中間転写ベルト305に転写するための一次転写ローラ308が配備されている。一次転写ローラ308には、感光体ドラム301上のトナー像を中間転写ベルト305に転写するための一次転写バイアスを印加するバイアス電源(不図示)が接続されている。中間転写ベルト305の周りには、中間転写ベルト305に転写されたトナー像を記録材313にさらに転写するための二次転写ローラ309が、中間転写ベルト305の下面部に接触するように設けられている。二次転写ローラ309には、中間転写ベルト305上のトナー像を記録材313に転写するための二次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。また、中間転写ベルト305上のトナー像を記録材313に転写した後、中間転写ベルト305の表面上に残留した転写残トナーをクリーニングするための中間転写ベルトクリーナ310が設けられている。
また、この画像形成装置は、画像が形成される複数の記録材313を保持する給紙カセット314と、記録材313を給紙カセット314から中間転写ベルト305と二次転写ローラ309との当接ニップ部を介して搬送する搬送機構とが設けられている。記録材313の搬送経路上には、記録材313上に転写されたトナー像を記録材313上に定着させる定着器315が配置されている。
次に、この電子写真装置の動作について説明する。
まず、図3に矢印で示すように、感光体ドラム301が、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、中間転写ベルト305が、反時計方向に、感光体ドラム301と同じ周速度で回転駆動される。感光体ドラム301は、回転過程で、一次帯電器302により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、画像露光303を受け、これにより感光体ドラム301の表面上には、目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像が形成される。次いで、第2現像器が回転し、マゼンタトナーMを付着させる現像器が所定の位置にセットされ、その静電潜像が第1色であるマゼンタトナーMにより現像される。このとき、第1現像器304aは、作動オフになっていて感光体ドラム301には作用せず、第1色のマゼンタトナー像に影響を与えることはない。
このようにして、感光体ドラム301上に形成担持された第1色のマゼンタトナー像は、感光体ドラム301と中間転写ベルト305とのニップ部を通過する過程で、一次転写バイアスがバイアス電源(不図示)から一次転写ローラ308に印加されることによって形成される電界により、中間転写ベルト305外周面に順次中間転写される。
中間転写ベルト305に第1色のマゼンタトナー像を転写し終えた感光体ドラム301の表面は、感光体クリーナ306によりクリーニングされる。次に、感光体ドラム301の清掃された表面上に、第1色のトナー像の形成と同様に、第2色のトナー像(例えばシアントナー像)が形成され、この第2色のトナー像が、第1色のトナー像が転写された中間転写ベルト305の表面上に重畳転写される。以下同様に、第3色のトナー像(例えばイエロートナー像)、第4色のトナー像(例えばブラックトナー像)が中間転写ベルト305上に順次重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
次に、給紙カセット314から中間転写ベルト305と二次転写ローラ309との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材313が給送され、二次転写ローラ309が中間転写ベルト305に当接されると共に、二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ309に印加されることにより、中間転写ベルト305上に重畳転写された合成カラートナー像が、第2の画像担持体である記録材313に転写される。記録材313へのトナー像の転写終了後、中間転写ベルト305上の転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ310によりクリーニングされる。トナー像が転写された記録材313は定着器315に導かれ、ここで記録材313上にトナー像が加熱定着される。
本画像形成装置の動作において、感光体ドラム301から中間転写ベルト305への第1〜第4色のトナー像の順次転写実行時には、二次転写ローラ309および中間転写ベルトクリーナ310は中間転写ベルト305から離間させるようにしてもよい。
このような中間転写ベルトを用いた電子写真によるカラー画像形成装置は、以下に示す特徴を有している。
第一に、重ね合わせ時に各色のトナー像の形成位置がずれる色ズレが少ない。また、図3に示すように、記録材313をなんら加工、制御(例えばグリッパーに把持する、吸着する、曲率を持たせるなど)する必要なしに、中間転写ベルト305からトナー像を転写させることができ、記録材313として多種多様なものを用いることができる。例えば、薄い紙(40g/m 2 紙)から厚い紙(200g/m 2 紙)までの種々の厚みのものを選択して記録材313として使用可能である。また、幅の広狭または長さの長短によらず種々の大きさのものを記録材313として使用可能である。さらには、封筒、ハガキ、ラベル紙などを記録材313として使用可能である。また、中間転写ベルト305は、柔軟性に優れており、感光体ドラム301や記録材313とのニップを自由に設定することができるため、設計の自由度が高く、転写効率などを最適化しやすいといった特徴がある。
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表1に示した条件で堆積膜を順次積層し、図1(c)に示す下部電荷注入阻止層、光導電層、上部電荷注入阻止層、及び、表面層からなる感光体を製作した。下部阻止層、光導電層、上部電荷注入阻止層については、共通条件としてすべて表1に示した条件で成膜した。表面層に関しては、SiH 4 2 ガスの流量、電力量を、表2に示すように各感光体毎に変化させ、SiH 4 とN 2 の混合比、SiH 4 ガス量あたりの電力量を変えた。その他の条件は表1に示した条件で成膜し、表面層中における窒素原子濃度が異なる感光体を製作した。NOガス、CO 2 ガスや、場合によってはCH 4 ガスは、流量が少ない場合には、希釈ボンベを用いた。具体的には、NOCO 2 10He希釈ボンベ、CH 4 10 2 希釈ボンベを、流量に応じて適宜切り替えて使用した。希釈ボンベを使用した際にも、表中の流量や濃度に関しては、それぞれのガス成分に換算した流量ないしSiH 4 に対する濃度を示している。
[比較例1]
SiH 4 2 ガスの流量、電力量を表2に示す条件とし、SiH 4 とN 2 の混合比、SiH 4 ガス量あたりの電力量を変えたこと以外は実施例と同様にして、表面層中における窒素原子濃度が異なる感光体(比較例11)、(比較例12)を製作した。
Figure 0004683637
このようにして製作した感光体の表面層中における実際の窒素原子濃度を、表面をおよそ20nm程度除去することで最表面の影響を取り除いた上でESCA(X線光電子分光法分析器アルバック・ファイ社製QUANTUM2000)とSIMS(2次イオン質量分析分析器CAMECA社製IMS−を用いて分析した。結果について表に示した。また、同様に酸素、炭素についても測定した。Siの比率が異なるため多少のばらつきはあるが、酸素に関しては2.73.0atm%の範囲、炭素に関しては2.13.5atm%の範囲であった。また、感光体の表面層膜厚を干渉膜厚計(大塚電子製:MCPD−2000)によって軸方向10点、周方向点の60点に対して測定し、最大値−最小値の値を平均膜厚で除した値(較差)を膜厚ムラ単位%として求めた。この膜厚ムラの値も表に合わせて示した。
また、感光体の分光感度特性を測定した。ここで分光感度特性とは、一定暗部電位から一定明部電位まで光減衰させるのに必要な光量の逆数、即ち、光の単位エネルギー量当たりの電位減衰量を、各波長について求め、最大の電位減衰量を100として各波長についての電位減衰量の換算値を感度として示した。図4に感光体について求めた分光感度特性の一例を示す。405nmの光に対する感度を、表面層の窒素原子の含有量が異なる感光体の各々について求め、表に合わせて示した。更に、図5に、表面層中における窒素原子濃度と405nmの光に対する感度との相関についてプロットしたグラフを示す。
Figure 0004683637
結果から明らかなように、窒素原子濃度と405nmの光に対する感度との間には、明確な相関が見られ、概ね窒素原子濃度が高くなるにつれて、405nmの光に対する感度がよくなり、即ち、青色発光半導体レーザー光に対する適応性が向上する傾向を示すことがわかった。表面層の窒素原子濃度が低い感光体に関しては、波長405nmの光に対する感度が足りず、電子写真装置に用いるのに十分な電位コントラストを得ることが困難であった。電子写真プロセスにおいて必要とされる感度の値に関しては、使用するレーザー素子や光学系の性能に依存するものであり、一概に、その絶対値を言及することは難しいが、本発明者らの検討によれば、表面層を設けない場合で分光感度を測定したところ、図5に示したような分光感度で500550Vcm 2 μ程度であった。表面層での吸収を考慮すれば、300Vcm 2 μ以上の感度を有することが好ましく、望ましくは400Vcm 2 μ以上の感度を有することがより好ましいと考えられる。従って、青色発光半導体レーザーのような405nm付近の短波長レーザー光に対してそのような感度を得るためには、表面層中の窒素原子濃度は、30atm%以上、より好ましくは35atm%以上とすればよいことが分かった。
その一方、感光体では膜厚ムラが30%以上と大きく、表面層においては窒素濃度が60atm%以下、より好ましくは55atm%以下が好適であることがわかった。
[実施例2]
に示した条件とする他は、実施例1と同様に、堆積膜を順次積層し、図1(c)に示す下部電荷注入阻止層、光導電層、上部電荷注入阻止層、表面層からなる感光体を製作した。表に示すように、表面層の作成時にはCH 4 ガスとCO 2 ガスを導入し、酸素原子濃度と炭素原子濃度が適切な値になるようにした。
[比較例2]
比較例として、表面層を表3に示す条件にした他は実施例2と同様にして表面層としてa−SiC:Hを堆積させた感光体(比較例21)と、酸素や炭素を導入しない感光体(比較例22)を製作した。
Figure 0004683637
製作した感光体Gの表面層中の窒素原子、酸素原子、炭素原子の濃度を、実施例1と同様にして測定した。窒素原子の濃度は式(3)(N/(Si+N+O+C))で示すと0.42、酸素原子の濃度は式(1)(O/(Si+N+O+C))で示すと0.021、炭素量原子の濃度は式(2a)(C/(Si+N+O+C))で示すと0.039であった。
得られた感光体、H、Iを、電子写真装置(キヤノン製電子写真装置iRC6800を用い、実験用に帯電器をマイナス帯電の磁気ブラシ方式にし、画像露光方式はIAE、画像露光の光源を発振波長660nmの赤色発光半導体レーザーもしくは405nmの青色発光半導体レーザーに交換可能とし、ドラム面照射スポット径が調整可能にした改造機械)(以下、iRC−6800改造機という。)にセットし、次の評価を行った。
まず、感光体を用い、青色(405nm)半導体レーザーを露光光源とした。パソコンで、3ポイントサイズ、及び、5ポイントサイズのアルファベット(A〜Z)、及び、複雑な漢字(電、驚など)を1200dpiの解像度で配列したテストチャートを作成し、そのテストチャートをプリンタモードでプリントアウトした画像によって感光体の解像度の評価を行った。具体的には、出力画像をスキャナー(キヤノン製CanoScan9900F)を使って1600dpiの解像度で読み取り、読み取った画像データとテストチャートの元データを比較して、テスト原稿の文字からのズレ部分(太り、細り)の面積を算出し、その数値によって感光体の解像度の評価を行った。露光波長が短いため、特殊な光学系を用いずともレーザースポット径を30μまで容易に絞ることができた。スポット径30μ1200dpiとした場合の、文字のズレ部分の面積を測定した。ただし、感光体Hに関しては赤色(660nm)半導体レーザーのスポット径60μmのビームを用い600dpiによる画像形成をし、感光体に関しては赤色(660nm)半導体レーザーのスポット径60μmのビームを用い600dpiによる画像形成をした場合、青色(405nm)半導体レーザーのスポット径60μmのビームを用い600dpiによる画像形成をした場合、青色(405nm)半導体レーザーのスポット径30μmのビームを用い1200dpiによる画像形成をした場合、の計種類で比較を行った。得られた結果を表4に示す。表中、解像度は感光体に赤色(660nm)半導体レーザーのスポット径を60μのビームを用いた場合の解像度を基準(REF)として、下記に示す判断基準によって各々の感光体について評価した結果がしめされている。
☆:REFに比べて20%以上向上し、非常に良いレベル
◎:REFに比べて10%以上向上し、かなり良いレベル
○:REFに比べて5%以上向上し、良いレベル
△:REFに比べて5%未満の向上であり、ほぼREF同等レベル
Figure 0004683637
結果から明らかなように、同じ波長(660nm)、同じスポット径(60μm)を用いた場合には、解像度は表面層の材質によらなかった。表4中ではランクは同じではあるが、同じスポット径(60μm)でも赤色(660nm)半導体レーザーを用いた場合より青色(405nm)半導体レーザーを用いた方が、ドット再現性が若干向上した。これは光導電層中のキャリアのドリフト距離が異なるためであると考えられる。更に、青色(405nm)半導体レーザーを用いた場合、同じ光学系部品を用いた場合でも、スポット径を30μまで容易に絞ることができ、そのためにドット再現性は大きく向上したが、スポット径を半分にしたことでドットの大きさは半分にはならず、表面層が酸素原子、炭素原子を含まないアモルファス窒化シリコン材質では解像度に限界があるが、表面層が酸素や炭素を含むアモルファス窒化シリコン材質ではドット再現性を向上させることができ、スポット径を絞った効果が十分に発揮されることがわかった。
[実施例3]
表5に示した条件とする他は、実施例1と同様に、図1(c)に示す下部電荷注入阻止層、光導電層、上部電荷注入阻止層、表面層からなる種類の感光体を製作した。下部電荷注入阻止層、光導電層および上部電荷注入阻止層は表5に示した一定条件で成膜し、表面層はNOガス流量を、表6に示すように各感光体毎に変化させ、その他の条件は表5に示した条件で成膜し、表面層の酸素原子濃度の異なる感光体を作製した。
[比較例3]
比較例として、表面層の作製時にNOガス流量を表6に示すように変化させたもの、また、NOガスを添加しない他は、実施例と同様に感光体O(比較例31)、P(比較例32)、Q(比較例33)を製作した。
Figure 0004683637
製作した感光体J〜Nの表面層中の酸素原子、窒素原子、および、炭素原子の濃度を、実施例1と同様にして測定した。酸素原子の濃度は式(1)で示すと0.00012〜0.197、窒素原子の濃度は式(3)で示すと0.41〜0.51、炭素原子の濃度は式(2)で示すと0.0051であり、酸素原子の増量分が窒素原子の減量分となり、炭素原子はほぼ一定であった。また、感光体O、Pの表面層の酸素原子の濃度は式(1)で示すと0.00004、0.21、窒素原子の濃度は式(3)で示すと0.39、0.51、炭素原子の濃度は式(2)で示すと0.0051であり、酸素原子の増量が窒素原子の減量となり、炭素原子はほぼ一定であった。
作製した負帯電用電子写真感光体J〜N、O〜Qを、iRC−6800改造機に搭載して、405nmの画像露光に対する解像度、耐環境性、残留電位について評価を行った。その評価結果を表6に示す。
(1)解像度(ドット再現性)
実施例2と同様にして、感光体の解像度の評価を行った。
感光体における解像度を基準(REF)として、下記に示す判断によってランク付けを行った。
◎・・・85%未満。非常に優れている
○・・・85%以上、95%未満。優れている
△・・・95%以上、105%未満。基準並。
(2)耐環境特性
次に、感光体の耐環境特性を評価するため、室温30℃、湿度80%の高温高湿環境実験室に、上記実験用電子写真装置を設置し、A4コピー紙50万枚の通紙耐久試験を行いながら、所定の間隔にて、画像特性の評価を行った。
(1)画素密度が0%〜100%まで段階的に変化している画像
5ポイントサイズの文字を配列した画像
の2種類の画像を用いて評価を行った。具体的には、(1)を用いてドットレベルでのミクロな画像流れの有無を、ハーフトーンの階調性、即ち、画素密度と画像濃度とのリニアリティによって評価し、(2)を用いて文字レベルにおいて確認できる画像流れの有無を評価した。そして更に、以上に説明した高温高湿環境における画像特性評価を、露光光学系を600dpi、1200dpi、2400dpiに調整してそれぞれ行った。以上の測定により得られた結果は、下記に示す基準によって、各々の感光体に対して判定を行った。
◎:耐久期間にわたって、画像流れがまったく発生せず、非常に良い。
○:耐久が進んだ時に、朝一の機械立上げ直後において、ハーフトーン階調性が低下する場合があったが、数枚の通紙で完全に回復し、良い。
△:耐久が進んだ時に、朝一の機械立上げ直後において、文字レベルで確認できる画像流れが発生する場合があったが、数枚の通紙で完全に回復し、実用は問題なし。
(3)残留電位
作製した電子写真感光体を、現像器位置における表面電位が−450V(暗電位)になるように帯電器を調整した後、像露光(波長405nmの半導体レーザー)を実用光量の実際には例えばμJ/cm 2 程度照射して表面電位を落としきり、その値が露光光量に対して十分飽和しているときの表面電位を残留電位とした。
得られた結果は、感光体での値を100%としてランク付けを行った。
◎ …85%未満。非常に優れている
○ …85%以上、95%未満。優れている
△ …95%以上、105%未満。基準並
(4)光メモリー
光メモリー電位は、「感度」評価条件下において同様の電位センサーにより非像露光状態で測定した表面電位と一旦像露光した後に再度帯電して測定した表面電位との電位差を求めた。得られた結果は、感光体での値を100%としてランク付けを行った。
◎ …85%未満。非常に優れている
○ …85%以上、95%未満。優れている
△ …95%以上、105%未満。基準並
Figure 0004683637
比較例の感光体を基準とすると、表面層における酸素含有量がある程度以上の場合に解像度が良好になることが判る。また、その他の特性においても、酸素が適当な量含有されている場合に最適な値を示していることが判る。特に、酸素が0.5以上10atm%以下のときに、総ての特性が極めて優れていることが判った。一方、酸素含有量が20atm%を超えると、画像流れ評価、残留電位評価では基準並となることが判った。よって、酸素含有量は0.01atm%以上20atm%以下、より好ましくは0.5atm%以上10atm%以下であることがわかった。
[実施例4]
表7に示した条件とする他は、実施例1と同様に、図1(c)に示す下部電荷注入阻止層、光導電層、上部電荷注入阻止層、表面層からなる種類の感光体を製作した。下部電荷注入阻止層、光導電層および上部電荷注入阻止層は表7に示した一定条件で成膜し、表面層はCH 4 ガス流量を表8に示すように各感光体毎に変化させ、その他の条件は表7に示した条件で成膜し、表面層の炭素原子濃度が異なる感光体S、T、U、及び、参考例として、感光体R、Vを製作した。CH 4 ガス量を少なくする場合、水素で希釈し流量を正確に調整した。なお、表8に示す水素量は希釈水素も含んだ値として表示している。
[比較例4]
比較例として、表面層のCH 4 ガス流量を表8に示すように変化させた以外は、実施例4と同様にして感光体W(比較例41)、X(比較例42)を製作した。
Figure 0004683637
製作した感光体R〜Vの表面層中の原子の炭素原子濃度、窒素原子濃度、酸素原子濃度を、実施例1と同様にして測定した。炭素原子の濃度は式(2)で示すと0.00014〜0.096、窒素原子の濃度は式(3)で示すと0.46〜0.52、酸素原子の濃度は式(2)で示すと0.0053であり、炭素原子の増量分が窒素原子の減量分に相当し、酸素原子はほぼ一定であった。また、感光体W、Xの表面層の炭素原子の濃度は式(2)で示すと0.00004〜0.13、窒素原子の濃度は式(3)で示すと0.45〜0.52であり、炭素原子の増量分が窒素原子の減量分となり、酸素原子の濃度は式(1)で示すと0.0053でほぼ一定であった。
作製した負帯電用電子写真感光体S〜U、R、V、W、Xを、実施例で用いた電子写真装置に搭載して、実施例と同様に解像度、残留電位の評価を行った。ただし、実施例で行った画像流れ評価に代え、以下のような方法で感度評価を行った。
(5)感度
作製した電子写真感光体を、現像器位置における表面電位が−450V(暗電位)になるように帯電器を調整した後、像露光(波長405nmの半導体レーザー)を照射し、像露光光源の光量を調整して、表面電位が−100V(明電位)となるようにし、そのときの露光量を感度とした。得られた結果は、感光体での値を100%としてランク付けを行った。結果を表8に示す。
◎ …85%未満。非常に優れている
○ …85%以上、95%未満。優れている
△ …95%以上、105%未満。基準並
× …105%以上。基準に比べやや劣る。
Figure 0004683637
結果から、炭素含有量がある程度以上の場合に解像度が良好になることが判った。また、その他の特性においても、炭素が適当な量含有されている場合に最適な値を示していることが判る。特に、炭素が0.5以上5atm%以下のときに、総ての特性が極めて優れていることが判った。一方、炭素含有量が10atm%を超えると、組成としてSiCに近づくために、感度が急激に低下することがわかった。また、残留電位評価も基準並となることが判った。よって、炭素含有量は0.01atm%以上10atm%以下、より好ましくは0.5atm%以上5atm%以下であることがわかった。
[実施例5]
表9に示した条件とする他は、実施例1と同様に、図1(c)に示す下部電荷注入阻止層、光導電層、上部電荷注入阻止層、表面層からなる種類の感光体を製作した。下部電荷注入阻止層、光導電層および上部電荷注入阻止層は表9に示した一定条件で成膜し、表面層は表10に示すように、 2 ガス、CO 2 ガスの流量を可変して導入することで、窒素原子濃度と酸素原子濃度が膜厚方向の単位長さ当たりに含有される原子の数において変化しながら含有するようにした。
種類の感光体はそれぞれ、窒素量が膜厚方向表面側に向かって増加する感光体AA、酸素量が膜厚方向表面側に向かって増加する感光体BB、酸素、炭素とも表面側に向かって増大するが、常に酸素の増大割合が炭素の増大割合をしのぐ、即ち層厚方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数N、層厚方向の単位長さ当たりに含有される酸素原子の数O、その比O/Nの値が表面側に向かって増大する感光体AB、酸素濃度、窒素濃度いずれも一定である感光体CC種類を作成した。
Figure 0004683637
製作した感光体の表面層中の酸素原子、窒素原子の含有量を、実施例1と同様に測定した。結果を表10に示す。また、解像度と光メモリの評価を行った後、傾斜組成分布をSIMSによって確認した。また、膜中の平均濃度はESCAを用いてスパッタを行いながら深さ方向の平均値を求めた。
得られた感光体について、実施例3と同様に解像度と光メモリを、感光体CCを基準として、以下の判断によりの評価を行なった。結果を表10に合わせて示す。
◎ …85%未満。非常に優れている
○ …85%以上、95%未満。優れている
△ …95%以上、105%未満。基準並
Figure 0004683637
窒素濃度、酸素濃度を一定とした感光体CCに対し、AABBABの総てにおいて解像度、光メモリ特性が向上しているが、AA、BB、ABの順に良好になっており、特に窒素、酸素の両方を傾斜分布とし、更に酸素の傾斜をより強くした感光体ABが更に良好な特性を示すことが判った。このことから、窒素原子および酸素原子の平均濃度をほぼ同様とした場合、傾斜分布とすることで更に解像度や光メモリ特性が向上することが判り、窒素原子の数Nと酸素原子の数Oの比、O/Nが増大するように分布させることで最適な特性が得られることが判った。
[実施例6]
図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表11に示した条件で堆積膜を順次成膜し、図1(d)に示す下部電荷注入阻止層、光導電層、傾斜組成層、上部電荷注入阻止層、変化層、表面層からなる感光体DDを製作した。光導電層と上部電荷注入阻止層の間、上部電荷注入阻止層と表面層との間において、作成ガスを滑らかに変化させて導入することにより、光学的な界面をなくし、屈折率がなだらかに変化するようにした。
Figure 0004683637
製作した感光体DDの表面層中の窒素原子、酸素原子、および、炭素原子の濃度を、実施例1と同様にして測定した。窒素原子の濃度は式(3)で示すと0.48、酸素原子の濃度は式(1)で示すと0.02、炭素原子の濃度は式(2)で示すと0.0072であった。
得られた感光体DDは、実施例と同様に、解像度、耐環境性、残留電位、光メモリを感光体Qを基準として評価し、実施例と同様に感度を感光体Qを基準として評価を行った。結果を表12に示す。
Figure 0004683637
結果から、感光体DDは総ての項目において、感光体に比べて非常に優れた特性を示していることが判った。また、干渉が少なくなることで、削れムラが生じた場合の感度ムラが出にくいことが明らかとなっている。よって、光導電層と上部注入阻止層の間、上部注入阻止層と表面層の間において、光学的界面を作らないように組成比を滑らかに結ぶことで、更に好ましい感光体が得られることが明らかとなった。
(a)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。(b)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。(c)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。(d)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。 本発明の電子写真感光体の製造に使用するRF帯の高周波を用いたプラズマCVD堆積装置の一例を示す概略構成図である。 本発明の電子写真装置を示す概略構成図である。 本発明の電子写真感光体の分光感度を示した模式図である。 本発明の電子写真感光体の表面層中における窒素原子濃度と波長405nmの光に対する感度との関係を示す関係図である。 本発明の電子写真感光体における露光用レーザーのスポット径と、出力画像上のドット径との関係を説明する模式図である。
10、11、12、13、301 電子写真感光体
101 基体
102 光導電層
103 表面層
105 上部電荷注入阻止層
106 変化層
107 傾斜組成層

Claims (11)

  1. 基体と、該基体上に設けられた光導電層と、該光導電層上に設けられた表面層とを有する電子写真感光体において、
    表面層が、シリコン原子と窒素原子を母体とし、酸素原子および炭素原子を含有するアモルファス材料を含み、
    該アモルファス材料が、下記式(1)、(2a)および(3)
    0.0001≦O/(Si+N+O+C)≦0.2 (1)
    0.00C/(Si+N+O+C)≦0.05 (2
    0.3≦N/(Si+N+O+C)≦0.6 (3)
    (式(1)、(2a)および(3)中、Siはシリコン原子の数を示し、Nは窒素原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子の数を示す。)
    でそれぞれ表される平均濃度で、酸素原子、炭素原子および窒素原子を含有する
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 記アモルファス材料が、下記式(1a
    0.005≦O/(Si+N+O+C)≦0.1 (1a)
    (式(1a)中、Siはシリコン原子の数を示し、Nは窒素原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子の数を示す。)
    で表される平均濃度で、酸素原子を含有する請求項に記載の電子写真感光体。
  3. 前記アモルファス材料が、下記式(3a)
    0.035≦N/(Si+N+O+C)≦0.55 (3a)
    (式(3a)中、Siはシリコン原子の数を示し、Nは窒素原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示し、Cは炭素原子の数を示す。)
    で表される平均濃度で、窒素原子を含有する請求項1又は2記載の電子写真感光体。
  4. 前記表面層が、開放表面に向かって濃度が高くなるような傾斜組成を有するように酸素原子を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記表面層が、開放表面に向かって濃度が高くなるような傾斜組成を有するように窒素原子を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記表面層が、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数Nに対する、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される酸素原子の数Oの比O/Nの値が、開放表面に向かって増加するように窒素原子および酸素原子を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  7. 前記光導電層が、シリコン原子を母体し、水素原子を含有するアモルファス材料を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  8. 前記光導電層と前記表面層との間に、シリコン原子と窒素原子を母体とし、周期表第13族元素を含有するアモルファス材料を含む上部注入阻止層を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  9. 前記光導電層と前記上部電荷注入阻止層との間に、シリコン原子と窒素原子を母体とし、厚さ方向の単位長さ当たりに含有されるシリコン原子の数Siに対する、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数Nの比N/Siの値が、上部電荷注入阻止層に向かって増加するようにシリコン原子および窒素原子を含有するアモルファス材料を含む傾斜組成層、および/または、前記上部電荷注入阻止層と前記表面層との間に、シリコン原子と窒素原子と炭素原子を母体とし、厚さ方向の単位長さ当たりに含有されるシリコン原子の数と、窒素原子の数と、炭素原子の数との組成比が連続的に変化するようにシリコン原子、窒素原子および炭素原子を含有するアモルファス材料を含む変化層を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  10. 405nm波長レーザー光の単位エネルギー量あたりの電位減衰分が、300V・cm 2 /μJ以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備える電子写真装置。
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