JP2006189822A - 電子写真感光体 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面層における短波長の像露光の吸収を最小限にとどめつつ、解像力を初めとする電子写真特性を良好に保つ事が可能な電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性基体と、光導電層と、前記光導電層上に積層した周期表13族元素と炭素原子を含有した少なくともシリコン原子と窒素原子を母材とする非単結晶窒化シリコン膜からなる表面領域層を有する電子写真感光体において、
前記表面領域層内に構成原子の総量に対する周期表13族元素の含有率が膜の厚さ方向で極大値を少なくとも2つ持った分布を有し、かつ窒素原子の平均濃度(atm%)が、30atm%≦N/(Si+N)≦70atm%を満たすことを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体に関し、特に波長が380nm以上500nm以下の比較的短い波長の光を露光に用いたプリンタ、ファクシミリ、複写機などに最適な電子写真感光体に関するものである。
像形成分野において、感光体における光導電材料としては、
1.高感度で、SN比(光電流(Ip)/暗電流(Id))が高い。
2.照射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクトルを有する。
3.光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有する。
4.使用時において人体に対して無害である。
等の特性が要求される。
特に、事務機としてオフィスで使用される電子写真装置内に組み込まれる電子写真感光体の場合、使用時における無公害性は重要な点である。
上述の特性を満足する優れた特性を示す光導電材料にアモルファスシリコン(以下、a−Siと略す)があり、電子写真感光体の光受容部材として注目されている。
a−Siからなる光導電層を有する感光体は、一般的には、50℃〜350℃に加熱した導電性基体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法により形成される。なかでも、原料ガスを高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、基体上にa−Si堆積膜を形成するプラズマCVD法が好適なものとして実用に付されている。
例えば、原料ガスにSiH4、H2、N2、B26を用いて、それぞれの原料ガスの流量比を規定する事でp−i−n接合の逆バイアス状態となるようにした、基板、障壁層、光導電層、表面保護層からなるa−Si感光体が特許文献1等に開示されている。
また、導電性基体上にa−Siからなる光導電層とアモルファス窒化ケイ素からなる表面層を有する電子写真感光体の最表面のN/Siの元素組成比が0.8〜1.33の範囲で、O/Siの元素組成比が0〜0.9の範囲である電子写真感光体が特許文献2開示されている。
また、近年の高画質化に対する要求から、トナーの小粒径化と並んで、静電潜像の高精細化がますます求められるようになってきている。そのためには、例えばデジタル複写方式であれば、像露光に用いられるレーザーのスポット径を絞るなどの方法が挙げられ、そのためにレーザーの短波長化が求められてきた。感光層が水素化a−Siを用いて形成され、露光波長が380nm〜450nmに主たる発振波長を有する紫外青紫色レーザー光発振器を用いた画像形成装置が、特許文献3に提案されている。
更に、a−Si系感光体を用い、画像形成光線を露光する際に感光体にかかる電界が150kV/cm以上であり、画像形成光線の波長が500nm以下である電子写真装置が、特許文献4に提案されている。
また、a−Si感光体を帯電する方法は、コロナ帯電を用いたコロナ帯電方式、導電性ローラを用い直接放電で帯電を行うローラ帯電方式などがある。また、磁性粒子等により接触面積を十分にとり、電荷を感光体表面に直接注入することにより帯電を行う注入帯電方式などがある。
中でも、コロナ帯電方式やローラ帯電方式は放電を用いるために感光体表面に放電生成物が付着しやすい。加えてa−Si感光体は有機感光体などに比べてはるかに高硬度な表面層を持っているために表面層が削れにくく、放電生成物が表面に残存しやすい。そこで、高湿環境下などで水分の吸着によって放電生成物と水分が結合して表面を低抵抗化させ、表面の電荷が移動しやすくなって画像流れ現象が発生する場合がある。そのため、表面の摺擦方法や感光体の温度管理方法など、様々な工夫が必要となる場合があった。
これに対して、注入帯電方式は放電を積極的に用いることはせずに、感光体表面に接触した部分から直接電荷を注入する帯電方式であるために前記の画像流れといった現象は発生しにくい。
また、接触帯電である注入帯電方式は、コロナ帯電方式が電流制御型であるのに対し、電圧制御型であるため、帯電電位のムラを比較的小さくしやすいというメリットがある。
特開平5−150532号公報 特開平8−171220号公報 特開2000−258938号公報 特開2002−311693号公報
従来のa−Si系の電子写真感光体は、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、光学的、光導電特性、及び使用環境特性の点、さらには経時安定性および耐久性の点で特性の向上が図られてはいるが、総合的な特性向上を図る上でさらに改良する余地が存在するのが実状である。
特に、近年急速にデジタル化、カラー化へのシフトが進み、電子写真装置への高画質化(高解像であること、高精細であること、濃度ムラがないこと、画像欠陥(白抜けや黒点など)がない等)の要求は以前に増して高まっている。
デジタルフルカラー複写機では、カラートナーとしてネガトナーが、潜像の制御性が高く高画質化に適したイメージ露光法(画像部を露光する方法)と負電荷を帯電させる感光体と合わせて使用されている。負帯電用a−Si系感光体は、表面からの電荷の流入を出来るだけ阻止する機能の如何が特性向上のカギを握っている。
加えて、高速化、高耐久化への要求も急速に増しており、電子写真感光体では、電気的特性や光導電特性の向上および均一性や画像欠陥低減の向上とともに、耐久性や耐環境性(温度・湿度変化追従性)等の性能の大幅な改善が求められている。
画像の解像度を高めるためには、小粒径トナーだけでなく、像形成用のレーザー光のスポット径を小さくすることが有効である。レーザー光のスポット径を小さくする手段としては、レーザー光を光導電層に照射する光学系の精度を向上させたり、結像レンズの開口率を大きくしたりすること等が挙げられる。しかし、このスポット径はレーザー光の波長と結像レンズの開口率で決まる回折限界までしか小さくすることはできない。このため、レーザー光の波長を一定にして、スポット径を小さくすることは、レンズの大型化や機械精度の向上等を行なう必要があり、装置の大型化やコスト上昇が避け難かった。
このため、近年、レーザー光のスポット径の下限がレーザー光の波長に正比例することに着目し、レーザー光の波長を短くすることでスポット径を小さくし、静電潜像の解像度を高めるという技術が注目されている。
従来の電子写真装置においては、画像露光の際に600〜800nmの発振波長を有するレーザー光が一般的に用いられており、この波長をさらに短くすることで画像の解像度を高めることができる。近年、発振波長の短い半導体レーザーの開発が急速に進んでおり、400nm近辺に発振波長を有する半導体レーザーが実用化されている。
この400nm近辺の発振波長の半導体レーザーを画像露光に用いた、2400dpiといった高解像度のa−Si感光体が求められている。
また、高解像度デジタルフルカラーで用いられる小粒径トナーが、感光体表面への転写残や、クリーニング残が生じやすいという課題があり、これに対する改善も求められている。
以上に挙げた手法によって画像の解像度を高めるためには、感光体が400nm近辺の短波長帯の光に対応できるよう、特に表面領域の材質のさらなる改善が要求されている。
例えばa−Si系の感光層は、感度のピークが600〜700nm付近であるため、ピーク感度に比べればやや劣るものの、条件を工夫すれば400〜410nm付近でも感度は有している。このため、例えば、405nmの短波長レーザーを用いた場合でも使用可能である。ただし、感度的にはピークに比べて半分前後となる場合もあり、感光体の表面領域における光の吸収が殆どないことが好ましいことになる。
しかし、従来表面層に好適に用いられてきたアモルファス炭化シリコン(以降a−SiC)系材料やアモルファスカーボン(以降a−C)系材料の場合、400〜410nm近辺では吸収が大きくなりやすい傾向があった。このために、a−SiC系材料では、条件を工夫することで透過率を向上させる、また、ある程度膜厚を薄くすることで対処することも可能である。しかし、表面層は複写機内で摺擦によって徐々に磨耗していくという宿命にあり、ある程度以上の膜厚を確保する必要がある。よって、膜厚増による吸収量増と磨耗ムラによる感度ムラが高解像な画像を安定的に出力する場合には、問題になってくる場合があった。
これに対し、a−C系材料の場合は、条件によっては透過率のよい膜も作成可能であったが、その場合にはポリマーに近い構造となり、硬度が低くなったり、抵抗値が高くなりすぎたりする場合があった。よって、a−C系材料の場合には、透過率と硬度あるいは抵抗とのトレードオフになる場合があった。
これらの材料に対して、アモルファス窒化シリコン(以降a−SiN)系材料を用いると、透過率の低下を抑制できることが判っていたが、そのような膜は感光体の表面層としては使用が難しく、これまでなかなか実用化されていなかった。例えば、特許文献2には、a−SiNの原料ガスの違いによって様々な利点と欠点があることが示されており、表面層として好適な条件を得るためには特定の条件を選択する必要であることを示している。
特許文献2には、感光体の最表面のN/Siの元素の組成比とO/Siの元素の組成比の最適値とその作成条件が開示されている。しかしながら、ここでは、露光に供される波長は550nmまでしか考慮されておらず、更に、表面層の膜厚が0.8μmを超えると感度が低下することが言及されている。即ち、550nmの露光波長でも、0.8μmを越えると感度が低下することから、例えば400nm付近の波長においてはある程度光を吸収する事が予想され、十分な感度が得られない可能性がある。
すなわち、1つ目には、表面領域にて400nm付近の短波長の露光がほとんど吸収されないことが必要である。2つ目には、表面からの負電荷の注入を阻止する機能を十分に持つこと、3つ目として、小スポット径&小粒径トナーを活かせる高解像度を持つことである。
本発明者らは上記の諸問題を解決し、高画質、高耐久、高速の複写プロセスに好適に使用でき、短波長露光に対して実用上十分な感度を持ち、光メモリがなく、帯電能が高く、高コントラストな複写プロセスを実現するために、鋭意検討した。その結果、表面層として窒化シリコン系材料を採用し、作成条件を最適化することで、上記の目的を良好に達成しうることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、光導電層と、光導電層上に積層したシリコン原子と窒素原子を母材とし、少なくとも周期表13族元素と炭素原子を含有した非単結晶窒化シリコン膜からなる表面領域層とを有する電子写真感光体において、表面領域層が、厚さ方向において構成原子の総数に対する周期表13族元素の含有率の極大値を少なくとも2つ持つことを特徴とする電子写真感光体である。
本発明によれば、表面領域層における短波長光の吸収を最小限にとどめ、安定して高解像度で高品質なフルカラー画像を出力できる極めて良好な電子写真特性の電子写真感光体を提供するものである。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を行った結果、特定の条件で作成した表面層を設けることで、短波長の露光をほとんど吸収することなく、且つ解像力に優れ、高精細で良好な電子写真特性を保つことが可能であることを見出し、本発明に至った。
本発明者らはまず特許文献2などにあるような従来の方法により、表面層として好適なa−SiN:H系材料の薄膜を作成した。これらの方法で作成した膜は短波長の光、例えば400〜410nmの光に対する吸収係数が比較的大きく、そのような表面層をもつ感光体では、波長が400〜410nm付近の光に対しては感度が不十分となる場合があることがわかった。その後検討を重ねるうち、限られた製造条件でしか、短波長(例えば405nm)における吸収を抑えられないことが分かった。具体的には、原料ガス種、原料ガスの流量とそれらの比率、投入電力とガス量に対する比などを適切に定める必要があり、これらが特定の範囲に入ったとき、初めて吸収の少ない膜が得られることが判った。ここで、吸収が少ない膜とは、定量的に表すとすれば、例えば405nmにおける吸収係数が5000cm-1以下であることが好ましく、3000cm-1以下であることがより好ましい。
ここで、吸収係数α(cm-1)とは、入射光の光量をT0、透過光の光量をT、膜厚をt(cm)としたとき、(1)式のように表すことができる。
α=−(ln(T/T0))/t ・・(1)
このような条件で作成したシリコンを含む化合物からなる膜の最表面に露出するシリコン原子は、空気中で容易に酸化されるので、シリコンの酸化膜が形成されている。更に、大気中の元素を吸着している可能性があるので、膜中の窒素原子濃度は、測定する前に、およそ10nm、好ましくは20nm程度の厚さだけ、膜の最表面の層を取り除き、膜の最表面の影響を除去した後に行なうことが好ましい。
膜の最表面の層は、ESCA、SIMS、RBSなどを用いて真空中でAr原子などを用いたスパッタを施す事によりの除去することで、最表面の吸着原子や自然酸化膜の影響を実質的に無くすことが可能である。
上記の方法で、膜の最表面の影響を無くした後、XPS(X線光電子分光法)、RBS(ラザフォード後方散乱分光法)、SIMS(二次イオン質量分析法)などを用いて窒素原子濃度の測定を行なった。
この結果、波長405nmの場合、実用膜厚(およそ0.2μm〜2.0μm)で、吸収係数が5000cm-1以下であれば吸収が許容でき、この際の窒素原子濃度(N/(Si+N))の値は、30atm%以上が好ましく、35atm%以上であることがより好ましいことがわかった。
また、上限としては、膜の歩留まりの関係から、70atm%以下が好ましく、60atm%以下であることがより好ましいことがわかった。70atm%以下であれば、膜厚、硬度および抵抗などのムラが発生しにくく、更に、膜の強度が保て、且つ、安定して高歩留まりで製造できるので、表面層として使用するに好ましい特性を備える。70atm%を超えると、膜厚や硬度、抵抗などのムラが発生しやすくなり、歩留まりが大きく低下する場合がある。原因は、窒素が多くなりすぎると膜の結合が非常に不安定になるためではないかと予想される。
次に、スポット径を絞った際の効果について図5を用いて説明する。図5では、横軸にレーザースポット径、縦軸に潜像や画像上のドット径をとり、様々な電子写真プロセスで比較した場合を想定している。具体的には、655nmのレーザー光を用いた場合(図5の(1)に相当)と、例えば405nmのレーザー光を用いた場合(図5の(2)〜(5)に相当)を考える。
図5の(1)では、例えば光学系の開口数などで何とか絞ることが可能でも、ある程度限界があるのに対し、図5の(2)〜(5)では短波長露光を用いているので、更にスポット径を絞ることが可能である。
一方、露光波長の違いは、光導電層における光吸収にも影響する。即ち、短い露光波長では光導電層における光吸収が非常に薄い領域に限られる。光生成キャリアは、表面電荷が形成する電界によって加速され、膜の厚さ方向に移動する。そして、表面電荷と逆極性のキャリアが表面に移動し、電荷をキャンセルすることで、静電潜像が形成される。しかし、キャリア移動の際に、キャリア同士の静電的な反発力によって、膜の面方向(厚さ方向に垂直な方向)にも移動する可能性があり、潜像のぼけにつながる場合がある。従って、露光パターンにより忠実な静電潜像パターンを形成するためには、光生成キャリアが表面電荷をキャンセルするために移動する距離を短くした方が好ましく、即ち、光キャリアの生成領域は、表面に近い方が好ましい。
従来の600〜800nmの露光では、a−Si感光体の光学特性から光導電層の上部数μm〜十数μmまで光が到達してキャリア生成が起こる。一方、例えば405nmの露光では、光導電層最上部の極めて薄い範囲で光吸収が終了し、光生成キャリアが上部に到達するまでに広がる余地が殆どないため、更に高解像が期待できることとなる。このことから、仮に同じスポット径(図5のイに相当)でも、解像力に差がでることが期待される。
SiN系の表面領域層を用いた場合、従来のSiC系の表面領域層を用いた電子写真感光体に比べて、405nmにおける吸収係数が5000cm-1以下であっても、表面領域層起因の残留電位が大きくなることがあった。
そのような場合には、ドット再現性や細線再現性といった解像度が、660nmから405nmに露光レーザーを変更しても、向上しないことがわかった。
そこで本発明者らは、帯電能や残留電位、感度、解像度といった特性に着目しながら表面領域層の最適化を狙って作成条件の様々な見直しを行った。
その結果、微量の炭素原子を添加することで、表面領域層起因の残留電位を低減でき、短波長露光の効果が得られて解像度の向上が可能であることがわかった。
また、十分な帯電能を維持するために、周期表13族元素を表面領域層に含有させる必要があるが、その場合に少なくとも極大値を2個有するように含有させることが効果的であることがわかった。
この理由としてはまだ分かっていないが、炭素原子を微量添加することにより、応力の大きなa−SiN系の膜において結合の緩和が起こり、結果として欠陥が減少したと考えられる。前述したように窒素濃度が高くなるように作成したa−SiN系の膜は吸収係数が小さいので、短波長光を吸収しない表面層として使用するには好適であるが、膜中の応力も大きくなる場合があり膜の結合が不安定になり特性ムラが生じることがあった。本発明の電子写真感光体においてはアモルファス状態であるので、結晶状況とはやや異なるのであるが、Si−Siの原子間隔はおよそ0.24nm、SiCの原子間隔はおよそ0.19nmであることが知られている。
これに対してN−Nの原子間隔はおよそ0.11nmであることから、窒素原子濃度が増えていくと、原子間隔の小さいN−Nの結合が増えるために、膜中に歪が生じて特性ムラになるのではないかと考える。
これに対して、C−Cの原子間隔はおよそ0.15nmであることから、Si原子と窒素原子とを母体とするアモルファス状態の窒化シリコン膜に炭素原子を微量含ませることで、膜中の歪が緩和されるものと考える。
炭素原子の量が少ないと、アモルファス状態の窒化シリコン膜中の歪が緩和されないので、残留電位の低下は見られない。また量が多くなってくると、Si−C結合の増加により、電位ムラの感度のムラが大きくなる傾向が見られと共に、やや短波長光の透過性が低下してくる。
十分な帯電能を得るためには、表面から電子が層中に流れ込むことを阻止する必要がある。その機能を十分に発揮するためには、膜中に炭素原子を、5×1018個/cm3以上含有させる必要があるが、表面領域層全体に均一に含有させた場合には、表面領域層の正孔にたいする抵抗が下がりドット再現性や細線再現性が低下する場合があった。
帯電能、感度等、電子写真感光体の良好な電気特性を得るために、周期表13族元素を表面領域層に含有させることが必要であるが、その場合に、表面領域層全体に均一にいれるのではなく、層の厚さ方向において極大値を少なくとも2つ持った分布にすることが重要であることがわかった。
また、均一に含有させた場合だけでなく、層の厚さ方向において極大値を少なくとも2つ持つ場合でも、ドット再現性や細線再現性が低下するのは、極大値が最表面側から、およそ100nm以内という比較的最表面に近いところに位置する場合や、極大値の間隔が100nm未満と近接して含有させた場合に見られることがあった。
これは、露光により生じたフォトキャリアの内、正孔が、帯電電荷の電子と結合するために最表面側にむかって移動するが、その時、周期表13族元素を多く含有し正孔に対する抵抗が下がっている部分が、キャリア移動方向で長くなるほど、層の面内方向への広がりが増すためである。また、比較的最表面に近いところに極大値をもつように含有させた場合も同様で、フォトキャリアを発生する部分から、表面からの電子を阻止する極大値の部分までが長くなるために、層の面内方向への広がりが大きくなっていると考えている。
さらに、本発明者らは、画像品質に着目して、表面層の作成条件の様々な見直しを行ったところ、微量の酸素原子を添加することにより、吸収係数を小さく抑えながら画像品質をより向上させることが可能である事がわかった。
これは、高解像度デジタルフルカラーで用いられる小粒径トナーの転写残や、クリーニング残が減少したために画像品質が向上したと考える。また、ドット再現性や細線再現性といった解像度の低下は見られず、作成条件によってはわずかながら解像度が向上も確認できた。
この理由としてはまだ分かっていないが、酸素原子を微量添加することにより、炭素原子だけを添加したときよりも、応力の大きなa−SiN系の膜において結合の緩和が起こり、結果として欠陥が減少したと考えられる。前述したように窒素濃度の高いa−SiN系の膜は吸収係数が小さく硬度も非常に大きいので、表面層として使用するには好適であるが、硬度が大きいと膜中の応力も大きくなる場合があり、非常に大きな残留応力が膜中に残ってしまう場合がある。このような場合には応力による歪を緩和するために結合が切れたりして、膜堆積後に欠陥が生成されることが考えられる。炭素と異なり、酸素は結合手の数が2本であることから、原子間に効果的に入ることで結合のひずみを緩和する働きが予想でき、欠陥生成を効果的に防止できるのではないかと考えている。
一方、水素終端などは膜形成中に欠陥を修復する効果はあるものの、無理な結合や弱い結合が膜堆積後に欠陥に変わってしまうような場合には効力がない。よって、微量酸素によって結合の緩和が起こり、水素による欠陥修復と並行して、これまで成膜後に生成されていた欠陥を効果的に低減させたことにより、総合的に欠陥低減が実現できたのではないかと考えている。このように、低欠陥化が実現すると、膜中にある浅いトラップが減り、例えば帯電後にトラップに束縛されたキャリアが、現像までの間に再励起して出てくることがなくなる。本来、このような浅いトラップから出てくるキャリアは、潜像形成によって生じた電位差を埋めるようにドリフトすると考えられるので、潜像をなまらせたり、潜像の深さを浅くしたりしてしまうと考えられる。よって、トラップの低減が図れれば、潜像をなまらせる原因が減り、解像度が高まると考えている。以上のことにより、酸素を適量導入することで、解像度が高まったと考えている。
また、a−SiN膜は、作成条件により比較的柱状構造を示しやすい。柱状構造が多い状態では、表面に現れる構造境界が多いと考えられ、そのような状態では転写残やクリーニング残が生じやすかった。
このような柱状構造の低減に対して、炭素原子を均一に含有させるよりも、局所的に極大値を有する分布を持たせることが好ましいことが分かった。
微量の炭素及び酸素の添加により、転写残やクリーニング残が減少したのは、上記のように低欠陥化がすすみ、柱状構造が逓減したために、表面に現れる構造境界が減少したと考えている。
また、酸素の量が少ない場合には価電子制御性の不純物と同様の作用が発生すると思われ、バンド構造の不整合を修正する働きがあると考えている。このようなバンドの不整合は、キャリアの蓄積や横流れを生じる原因となるおそれがあり、結果として解像力を低下させる可能性がある。よって、バンド構造の整合性向上は好ましい。
このように、酸素原子を適度に添加させることでこれらの添加効果が効果的に得られることが判った。一方、添加量が増加すると、添加物的な役割から構造材的な役割に変化することがあり、SiO構造やSiNO構造となり、膜の硬度が下がったり、抵抗値が上昇して残留電位が増大したり、親水性のSiO結合が増加することにより高温高湿下で画像がボケたりする現象が発生する場合があることが判った。
さらに、本発明者らは酸素の添加に関して検討を重ねたところ、膜中で極大値を持つように含有させる方が、上記のような硬度低下や残留電位増大といった弊害が全く見られず、転写残やクリーニング残に効果的で、かつ解像度向上が得られることが判り、本発明に至った。また、このように膜中で極大値を持たせるように添加する元素としては、フッ素も同様の効果が得られることが判った。加えて、酸素とフッ素が共に極大値を持つように添加すると、更に好ましいことがわかった。
このように酸素及び/またはフッ素を一部領域に比較的高濃度に添加することにより、均一に添加した場合よりも、応力の大きなa−SiNなどの膜においては、応力を効果的に緩和する局所的な領域ができ、結果として膜全体の応力緩和が効率的に進むと考えられる。
前述したように、酸素は結合手の数が2本であることから、a−SiN系の膜中で結合のひずみを緩和する働きが予想できる。また、一方、フッ素は欠陥を終端することで膜形成中に欠陥を修復する効果に加え、水素原子に比べて原子半径が大きいために応力集中を緩和でき、無理な結合や弱い結合が膜堆積後に欠陥に変わってしまうような状況を防止できたと思われる。
前述したとおり、酸素が高濃度で入ると膜の硬度が落ちたり、膜の抵抗値が上がり過ぎて残留電位が増えたり、親水性の膜になって感光体を高湿下で使いにくくなる傾向がある。
しかし、酸素を極大値を持つ分布とすることで、部分的には比較的高濃度にした場合でも、上記のような弊害が発現しない。これは、局所的には高濃度であるが構造体として特性を発現するような層領域とはならないためと考える。
またフッ素は終端元素であり、効果的に終端することでネットワークの自由度は上がる方向になる。しかし終端元素を増やしすぎるとやはり膜の硬度が下がったり、吸収が大きくなったりして好ましくない場合が生ずることがある。しかしフッ素の場合も高濃度の極大値を持つ分布とすることで、上記のような硬度や吸収の問題を回避しできることが分かった。これは酸素の場合と同様に比較的高濃度の領域を作ることで、その領域で集中的に応力緩和が行えるためと考えられる。また、フッ素は水素に比べて原子半径がやや大きいので、フッ素が終端原子として終端することでネットワークの構造が水素終端している領域とは異なる(結合距離が増えたりする)状況が作れ、このような膜構造の違いが応力緩和に更に役立っていると考えている。この場合、例えば塩素原子では原子半径が大きくなりすぎ、逆に結合の歪みを大きくする場合がある。以上の点から、フッ素原子の濃度分布がピークを持つように含有させたことで、解像力を向上させることができたと考えられる。
特に、酸素原子とフッ素原子とが各々極大値を持つように含有させた場合には、これら単独で得られる効果に加え、更に光メモリの低減が顕著に得られることが判った。この理由も明らかではないが、酸素による結合の緩和に加え、終端原子としてのフッ素が有効に働いて膜堆積中の欠陥生成抑制と膜堆積後に生成される欠陥防止の両方が高次元で実現される事で、解像力の向上は勿論、局在準位密度の更なる低減により、光メモリ低減も同時に実現できたのではないかと想像している。
ここで、酸素原子、フッ素原子の極大値における最大含有量をそれぞれOmax、Fmax、表面領域層における最小含有量をOmin、Fminとしたとき、最小含有量に対する最大含有量の比率が、2≦Omax/Omin、2≦Fmax/Fminの関係を満たすように制御することが好ましく、5≦Omax/Omin、5≦Fmax/Fminとすることがより好ましい。この範囲とすることで、解像力の改善がより顕著に得られるため、好ましい。
また、酸素原子、フッ素原子のピークの幅としては、含有量極大値の半値幅として、それぞれ10nm以上200nm以下に制御することが好ましい。極大値の半値幅を10nm以上とすることで、極大値の形成による膜特性への影響、即ち応力緩和による欠陥低減が効果的に現れる。また、ピークの半値幅を200nm以下とすることで、極大値近傍領域の膜質を阻害することなく、解像力等を更に向上させることが可能になったものと考えられる。
さらに本発明者らは、本発明の表面領域層を積層させる条件についても検討を行ったところ、画像品質の向上及び安定性のためには、波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)が0%≦Max(%)≦20%かつ0≦(Max−Min)/(100−Max)≦0.15を満たすように、光導電層から表面領域層の間を光学的に連続なるように、積層することが好ましいことが分かった。
次に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明における電子写真感光体の層構成の一例について示した模式図である。
図1(a)に示す電子写真感光体100は、導電性基体101の上に下部注入阻止層105、光導電層103および表面領域層104がこの順に形成されている。
図1(b)に示す電子写真感光体は、導電性基体101の上に下部注入阻止層105、光導電層103、上部注入阻止層106と表面層107とからなる表面領域層104aがこの順に形成されている。上部注入阻止層106は、上部からの電荷の注入を低減し、帯電性を向上させる目的で設けられた層で、この構成は負帯電用電子写真感光体に特に好適である。表面層107と光導電層103との間に上部注入阻止層106を設ける場合、上部注入阻止層106と光導電層103との屈折率差が大きい場合には、上部注入阻止層106と光導電層103との間に屈折率のなだらかに変化する変化領域を設けてもよい。
図1(c)に示す電子写真感光体は、導電性基体101の上に下部注入阻止層105、光導電層103、変化層108と表面層107とからなる表面領域層104bがこの順に形成されている。変化層108は、表面領域層104が光導電層103との間で、屈折率の変化が連続的になるように設けられた層である。変化層108は、上部注入阻止層106の機能を持った層とすることが好ましい。表面層107の屈折率と光導電層103の屈折率とを変化層108を介してなだらかに接続することにより、層界面における光の反射が抑えられ、可干渉光を露光に用いた場合の表面での干渉を防ぐことができる。また、変化層108に上部注入阻止層の機能を持たせると、光導電層103と表面層107の間で組成変化をなだらかに行う事で屈折率の差に起因する層界面を無くすと共に上部からの電荷の注入を低減し、帯電性を向上することができる。
図1(d)に示す電子写真感光体は、導電性基体101の上に光導電層103、第1の上部注入阻止層(TBL-1)106aと中間層109と第2の上部注入阻止層(TBL-2)106bと表面保護層(SL)110からなる表面領域層104cがこの順に形成されている。
尚、導電性基体101上に形成された下部注入阻止層105、光導電層103および表面領域層104を感光層102と称する。
下部注入阻止層105は、必須ではないが、導電性基体側からの電荷の注入を阻止するために設けられていることが好ましいために、図1(d)に示す電子写真感光体に設けてもよい。
次に、前述した本発明における各層について詳細に説明する。
<表面領域層>
表面領域層104〜104cは、主に短波長光透過性、高解像度、連続繰り返し使用耐性、耐湿性、使用環境耐性、良好な電気特性などに関して良好な特性を得るために設けられている。
負帯電用電子写真感光体の場合は、表面領域層に上部注入阻止機能を設け帯電保持層としての役割を持つものであるが、後述する上部注入阻止層を設けて帯電保持の機能を持たせることも有効である。
本発明における表面領域層の材質は、シリコン原子と窒素原子を母体とし周期表13族元素と炭素原子とを含有した非単結晶材料からなる。また、水素原子、酸素原子及び/またはフッ素原子を膜中に適宜含んでいることが好ましい。
このようなa−SiN系材料よりなる表面領域層を、例えば、グロー放電法によって形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、窒素原子(N)を供給し得るN供給用の原料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原料ガスと、周期表13族元素の原子を供給し得る原料ガスとを、内部を減圧し得る反応容器内に所望の比率で導入し、反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置された光導電層などを形成した基体上にa−SiN系材料からなる層を形成すればよい。
このとき、表面領域層に含まれる窒素量は、前述したようにシリコン原子と窒素原子の和に対して30atm%から70atm%の範囲が好ましい。また、炭素原子の含有量に関しては、2.0×1017個/cm3以上5.0×1020個/cm3以下の範囲が好ましい。
本発明における表面領域層は、周期表13族元素の含有率が膜の厚さ方向で極大値を少なくとも2つ持った分布になるようにする必要がある。そのとき、帯電能などの電気特性や、ドット再現性など解像度の向上のためには、周期表13族元素の含有率の隣接する2つの極大値間距離が、膜の厚さ方向で100nm以上1000nm以下の範囲となるようにすることが好ましい。
また、帯電能などの電気特性や、ドット再現性など解像度の向上のためには、周期表13族元素の最も光導電層側に位置する極大値が、5.0×1018個/cm3以上でありの隣接する2つの極大値の間に存在する周期表13族元素の最小値が、2.5×1018個/cm3以下となるように分布させることも好ましい。
図4は、表面領域層の各元素の模式的濃度プロファイルである。
図4に示すように、表面領域層でのボロン(周期表13族原子)、炭素、フッ素および酸素原子は、最表面側にボロン(周期表13族原子)、炭素、フッ素および酸素原子の極大値が、更に深い、光導電層側に近い位置にボロンの極大値が形成されている。つまり、炭素、フッ素および酸素原子の極大値は1ヶ所で観測され、ボロンの極大値は2ヶ所で観測されている。
ここで、図22および図23を用いて本発明の極大値について説明する。
本発明で、周期表13族元素や炭素原子の含有率の分布は、図22に示されるように、極大値に頂部が存在する、一定領域を持たない形状を示すことが好ましいが、図23に示すように一定の幅を持った一定領域の場合も最表面側の元素の含有率が隣接する一定領域の元素の含有率よりも大きい場合には有効である。この一定領域のこと極大領域という。
一定領域を持たない形状の場合、極大値は、頂部の原子の含有率で表され、極大領域の場合、極大値は、極大領域の厚さ方向の1/2の位置(中間点)での原子の含有率で表す。
一定領域を持たない形状の場合、極大値間の距離は頂部の間隔の距離で表され、極大領域を有する場合の極大値間の距離は極大領域の極大値を定義した中間点の間隔の距離で表す。
なお、本発明の電子写真感光体が1つの一定領域を持たない形状と一定領域とを有する場合、極大値間の距離は、各々の領域の極大値の間の距離で表される。
また、本発明において、酸素原子および/またはフッ素原子の含有量の分布も、一定領域を持たない形状を示すことが好ましい。
a−SiNなど材料で構成された応力の大きい膜は、極大値に頂部が存在する、一定領域を持たない形状であるほうが、極大領域を持つ形状よりも応力を効果的に緩和する局所的な領域ができるので、結果として膜全体の応力緩和が効率的に進むと考えられる。更に、一定領域を持たない形状の方が、像露光時のフォトキャリアの移動の際、ドット再現性や細線再現性を低下させるキャリアの拡がりやすい領域が局所的に設けられ、キャリアの拡がりを小さく押さえられると考える。
表面領域層における周期表第13族元素および窒素原子の含有率の厚さ方向における極大値の数は、それぞれ少なくとも2つ以上であればよく、例えば、各2つ、各3つ、あるいは一方が2つ他方が3つ若しくは4つなど、異なる数であってもよい。これらの極大値は表面領域層の厚さ方向におけるいずれに位置していてもよく、例えば、図24の周期表第13族元素および窒素原子の含有量を表すグラフに示すように、それぞれの原子の極大値が厚さ方向において、同じ位置に存在してもよいが、窒素原子、周期表第13族元素の含有量の厚さ方向における極大値が、交互に位置することが好ましい。この場合光導電層側に周期表第13族元素の含有率の極大値を有すると、感光体の帯電能を向上させることができ好ましく、自由表面側に窒素原子の含有率の極大値を有すると、感光体の耐傷性、耐磨耗性の点から特に好ましい。このような極大値を有する表面領域層としては、厚さ方向において周期表第13族元素の含有率の極大値を1つずつ有する2以上の上部注入阻止層と、厚さ方向において窒素原子の含有率の極大値を1つずつ有する1または2以上の中間層とが光導電層上に交互に設けられ、自由表面を有する最外層として、厚さ方向において窒素原子の含有率の極大値を1つ有する表面保護層が設けられた層構成とすることができる。そのような層構成としては、光導電層103の上に、第1の上部注入阻止層、中間層、第2の上部注入阻止層、表面層107の4層をこの順に設けたもの(図1(d))を例示することができる。
ここで、表面領域層における窒素原子、周期表第13族元素、及び、炭素原子の極大値について、更に、説明する。表面領域層において、窒素原子の含有率の厚さ方向における極大値は、図25(a)、図25(c)、図25(d)に示す中間層中の極大値のように、ピーク形状でもよく、図25(b)に示す中間層や図25(a)〜(d)に示す表面層(SL)中の極大値のように、厚さ方向の一定長において一定の値の極大領域を持つ形状でもよい。このような極大領域を持つ場合、極大値は、極大領域の厚さ方向の1/2の位置(中間点)における原子の含有率で表し、極大値と最小値間距離は、中間点を起点とする距離で表す。かかる窒素原子の極大値における窒素原子の含有量は、N/(Si+N)=30atm%以上で、かつ窒素原子の含有率の極大値と含有率の最小値(上部注入阻止層に存在)との比(極大値/最小値)が、1.10であることが感度や、耐摩耗性や耐傷性を向上させる上で好ましい。このような窒素原子含有率の厚さ方向における隣接する極大値のうち光導電層側の極大値と極大値間の最小値との距離は、帯電能向上および短波長光に対する感度の点から40nm以上300nm以下にすることがより好ましい。かかる窒素原子の含有率の極大値と最小値間の距離は上部注入阻止層の厚さを変化させることにより調整することができる。
また、表面領域層において、周期表第13族元素の含有率の厚さ方向における極大値は、図26(a)、図26(c)〜(e)に示すように、ピーク形状でもよく、図26(b)に示すように、厚さ方向の一定長において一定の値を持つ形状(極大領域)でもよい。このような極大領域を持つ場合、極大値としては、極大領域の厚さ方向の1/2の位置(中間点)における原子の含有率で表し、極大値間距離は、中間点を起点とする距離で表す。なお、表面領域層において1つの極大値と1つの極大領域を有する場合には、極大領域の中間点の位置と極大値との距離を極大値間距離とする。このような周期表第13族元素の含有率の極大値または極大領域のうち、最も光導電層側に位置する極大値または極大領域が一番大きいこと(図26(e))が好ましい。具体的には、最も光導電層側に位置する極大値における周期表第13族元素の含有量が5.0×1018個/cm3以上であることが好ましく、隣接する2つの極大値間に存在する周期表第13族元素の含有率の最小値における周期表第13族元素の含有量が、2.5×1018個/cm3以下であることが感度および帯電能、解像度という観点で好ましい。ここで、「最小値」とは極大値間に存在する周期表第13族元素含有率のうち最も小さい値を表し、例えば、極大値が3つ以上存在する場合、極大値間に存在する2つ以上の周期表第13族元素含有率の極小値のうち最も小さいものを表す。中間層と表面層における周期表第13族元素の含有率に関しては、図26中では、ベース値を表したが、これらの層中に周期表第13族元素を含有させない場合においては、ベース値は、含有率分析手段での検出限界値を表す。表面領域層における期表第13族元素含有率の厚さ方向における隣接する極大値間の距離は、ドット再現性や細線再現性の点から100nm以上1000nm以下にすることが好ましい。かかる周期表第13族元素の含有率の極大値間距離は中間層の厚さを変化させることにより調整することができる。
このような表面領域層における上記周期表第13族元素の含有率の極大値と窒素原子の含有率の極大値は、厚さ方向において交互に有していること、及び光導電層から自由表面へ向かって、周期表第13族元素の含有率の極大値と窒素原子の含有率の極大値の順に有していることが感光体の耐傷性、耐磨耗性の点から好ましい。
また、表面領域層において、炭素原子の含有率は、図27(a)〜(d)に示すように極大値を持つことが好ましい。炭素原子の含有率の厚さ方向における極大値は、中間層、上部注入阻止層、表面層のいずれに存在してもよく、その形状としては、図27(b)、図27(c)に示すように、ピーク形状でもよく、図27(a)に示すように、厚さ方向の一定長において一定の値を持つ形状(極大領域)でもよい。このような極大領域を持つ場合、極大値は、極大領域の厚さ方向の1/2の位置(中間点)における原子の含有率で表す。また、表面領域層における炭素原子の含有率に関しては、図27中では、ベース値を表したが、表面領域層の全域に亘って炭素原子を含有させる必要はなく、炭素原子を含有しない層領域が存在してもよい。そのような場合においては、かかるベース値は、含有率分析手段での検出限界値を表す。
また、表面領域層中に水素原子が含有されることが好ましい。水素原子はシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させる。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合、膜中の平均値として5〜70atm%であることが好ましく、8〜60atm%であることがより好ましく、10〜50atm%であることが更に好ましい。
表面領域層の形成において使用されるシリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状物、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられる。更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
窒素供給用ガスとなり得る物質としては、N2、NH3、NO、N2O、NO2、等のガス状物、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH4、C22、CF4、C26、CO、CO2、等のガス状物、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。
中でも、窒素供給用ガスとしては窒素が最も良好な特性が得られるため好ましい。炭素供給用ガスとしては同様にCH4が好ましい。また、酸素供給用ガスとしては同様にNOが好ましい。
また、これらの窒素、炭素、酸素供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。特に酸素を微量添加する場合、例えばNOガスをHeガスで予め希釈して供給することで、流量の正確な制御が可能となる。
また、酸素供給用ガスとなり得る物質としてはO2、CO、CO2、NO、N2O、NO2等のガス状物、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。
酸素供給用ガスとしては最も良好な特性が得られるNOが好ましい。
フッ素原子供給のために、フッ素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物や、SiF4、Si26等のフッ化ケイ素を導入してもよい。
周期表第13族原子導入用の原料物質としては具体的には、ホウ素原子導入用としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化ホウ素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化ホウ素等の他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等を挙げることができる。
表面領域層を形成するには、反応容器のガス圧、放電電力、ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。基体温度は、層設計に従って最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、150℃以上350℃以下であることが好ましく、180℃以上330℃以下であることがより好ましく、200℃以上300℃以下であることが更に好ましい。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2Pa以上1×103Pa以下であることが好ましく、5×10-2Pa以上5×102Pa以下であることがより好ましく、1×10-1Pa以上1×102Pa以下であることが更に好ましい。
本発明においては、表面領域層を形成するための導電性基体の温度、ガス圧の好ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。
また、例えばRF帯の高周波を用いたグロー放電法にて表面領域層を作成する場合には、放電電力としては10W〜5000W、カソード電極面積(cm2)あたりに換算すると2mW/cm2から1.4W/cm2程度の範囲が好適である。中でも、前述した窒素範囲を実現する事で透過率の良好なa−SiN系の膜を得るためには、シリコン含有ガスの流量FSi(単位:mL/min(normal))、窒素含有ガスの流量FN(単位:mL/min(normal))および放電電力W(単位:W)を適切な関係にする必要がある。即ち、単位ガス量あたりの電力、特にシリコン原子含有ガスの単位ガス量に対する電力(W/FSi)と、窒素含有ガスとシリコン含有ガスのガス濃度比(FN/FSi)との積であるW・FN/FSi2が50W・min/mL(normal)以上300W・min/mL(normal)以下であることが好ましく、80W・min/mL(normal)以上200W・min/mL(normal)以下とすることがより好ましいことが分かった。
上記の構成の表面領域層で上記の製造条件で製造することで、短波長の光を効率よく透過できる、表面領域層に好適な膜が作成できる。この表面領域層は、膜の光学的バンドギャップが2.8eV以上程度となり、吸収係数も5000cm-1以下とすることができる。この電力と流量比の積が50W・min/mL(normal)より小さくなると、吸収が大きくなり短波長が透過しにくくなる。また、この値が300W・min/mL(normal)を超えると、膜の硬度が小さくなる傾向にある。この理由としては膜作成中にプラズマからのダメージが導入されるためと考えている。
上記の製造条件の範囲が好適な理由は明らかではないが、次のように考えている。所望の膜を得るためには、プラズマ中に存在する原料物質のラジカルが適切なバランスをとっている必要がある。原料ガスが分解された際のラジカルの濃度は、複数の原料ガスを使用する場合、原料ガス濃度比と電力によって決まると考えられるが、ガス種によって分解効率に差があるため、電力値とガス流量比を適切な範囲にしないと、ラジカルの濃度が適切な範囲にならないと考えている。
さらに本発明においては、表面領域層中に、周期表13族元素の含有量が極大値を持つ(一定形状を持たない)ように制御することが好ましい。更に、炭素原子、酸素原子およびフッ素原子の含有量も極大値を持つように制御することがより好ましい。
極大値を形成するには、表面領域層を形成している途中で、周期表13族元素供給用ガス、炭素原子、酸素原子およびフッ素原子を供給する原料ガスを制御することで達成することができる。極大値を形成するための原料ガスの制御は、例えば、ガス濃度またはガス流量や高周波電力や基体温度といった堆積膜形成条件を適宜制御することを意味している。
酸素原子、フッ素原子の最大含有量をそれぞれOmax、Fmax、酸素原子及びフッ素原子の表面領域層全体の最小含有量をOmin、Fminとしたときに、最小含有量にOmin、Fmin対する最大含有量Omax、Fmaxの比率が、各々2≦Omax/Omin、2≦Fmax/Fminの関係を満たすことが好ましい。ここで定義した最小含有量とは、任意に挿入される変化領域107などを含まない表面領域層での最小含有量の値を指す。図4においては、グラフの右端が表面領域層の堆積開始部分に相当し、この領域での値がOmin、Fminに相当する。
表面領域層中の酸素原子の含有量は、O/(Si+N+O)という形式で表した場合、膜中の平均濃度が0.01atm%以上20atm%以下、好ましくは0.1atm%以上10atm%以下、最適には0.5atm%以上8atm%であることが好ましい。このような範囲で含有量を調整するためには、例えばNOのような酸素原子含有ガスをHeなどのガスで希釈したものを、マスフローコントローラーを介して正確に流量制御して添加すればよい。
表面領域層中のフッ素原子の含有量は、F/(Si+N+F)という形式で表した場合、膜中の平均濃度が0.01atm%以上20atm%以下が好ましく、0.1atm%以上10atm%以下がより好ましく、0.5atm%以上8atm%であることが更に好ましい。
このような範囲で含有量を調整するためには、例えばSiF4、CF4のようなフッ素原子含有ガスをHeなどのガスで希釈したものを、マスフローコントローラーを介して正確に流量制御して添加すればよい。
表面領域層の層厚としては、通常0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmがより好ましく、0.1〜1μmであることが更に好ましいものである。層厚が0.01μmよりも厚ければ光受容部材を使用中に磨耗等の理由により表面側層領域が失われることがなく、5μmを越えなければ残留電位の増加等の電子写真特性の低下が発生することがない。
上記表面領域層を形成するには、基体の温度、反応容器内のガス圧等を所望にしたがって、適宜設定する必要がある。
基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、200〜350℃が好ましく、230〜330℃がより好ましく、250〜300℃が更に好ましい。
反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは1×10-2〜2×103Paが好ましく、5×10-1〜5×102Paがより好ましく、1×101〜1×102Paが更に好ましい。
表面領域層を形成するための基体温度、ガス圧の好ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する電子写真感光体を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。表面領域層内に形成される各層について説明する。
<表面層>
表面層107は、表面領域層のシリコン原子と窒素原子の組成比が略一定な部分であり、主に表面の保護膜として、短波長光透過性、高解像度、連続繰り返し使用耐性、耐湿性、使用環境耐性などに関して良好な特性を得るために設けられている。
<変化層>
変化層108は、表面領域層のシリコン原子と窒素原子の組成比が変化する部分であり、主に表面の保護膜としての表面層107と光導電層103及び/または上部注入阻止層106との間で、光学的に連続するように設けられる層である。変化層を設けることで表面層と光導電層の密着性を向上させ、光キャリアの表面への移動がスムーズになるとともに光導電層と表面層の界面での光の反射による干渉の影響をより少なくすることができる。
本発明の電子写真感光体は、波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)が0%≦Max(%)≦20%かつ0≦(Max−Min)/(100−Max)≦0.15を満たすように、光学的に連続するように設けることが好ましい。
上記の範囲となるように変化層108を設けることで、露光の干渉防止効果だけでなく、電気的な接続性も改善し、感度、ゴーストや、像露光によるフォトキャリアの移動性も改善し、高解像度などに関して良好な特性を効果的にえることができる。
また、変化層108は、周期表13族元素及び炭素原子の含有量が極大値を持つようにすることも有効である。変化層108に周期表13族元素及び炭素原子の含有量が極大値を持つように含有させ、上部注入阻止能を変化層に持たせることが、良好な電気特性として帯電能や残留電位、暗・明減衰電位を得るために好ましい。
<上部注入阻止層>
図1(b)に示すように、表面領域層104内の光導電層103側に上部注入阻止層106を設けることも、有効である。また、図1(d)に示すように、中間層を介して2以上設けることもできる。
上部注入阻止層106、106a、106bの機能は、上部から(即ち表面層側から)の電荷の侵入を阻止し、帯電能を向上させることである。
上部注入阻止層に含有する周期表13族元素としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特に硼素が好適である。
上部注入阻止層に周期表13族元素を含有することで伝導性を制御することができる。周期表13族元素の原子の含有量は、極大値を持つように含有することが好ましいが、一定領域をもつ極大領域であっても有効であり、この場合、極大値は5×1018個/cm3以上とすることが好ましい。
図1(d)に示す表面領域層において2つ以上設けられる第1、第2、・・上部注入層106a、106b、においては、上部注入阻止層の構成原子の総量に対する周期表第13族元素の含有率の極大値が50atm ppm以上3000atm ppm以下とされることが好ましく、より好ましくは100atm ppm以上1500atm ppm以下である。
上部注入阻止層に周期表13族元素を含有することで伝導性を制御することができる。周期表13族元素の原子は、基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で含有されることで面内方向における特性の均一化を図ることができる。
上部注入阻止層は、シリコン原子と窒素原子を母体とし、周期表13族元素と炭素原子を含有した非単結晶材料から構成され、水素原子、酸素原子及び/またはフッ素原子を膜中に適宜含んでいることが好ましい。
上部注入阻止層106に含有される窒素原子の含有量は、構成原子のシリコン原子と窒素原子の総和に対して5atm%以上35atm%以下の範囲とするのが好ましく、10atm%以上30atm%以下がより好ましく、15atm%以上30atm%以下であることが更に好ましい。
また、上部注入阻止層106a、106bに含有される窒素原子、炭素原子、酸素原子の含有率は、中間層や、表面保護層におけるこれらの原子の含有率とも関連し本発明の目的が効果的に達成されるように適宜決定されるが、1種類の場合はその量として、2種類以上の場合はその総和量として、シリコンとの総和に対して10atm%以上70atm%以下の範囲とするのが好ましい。より好ましくは15atm%以上65atm%以下、更に好ましくは20atm%以上60atm%以下である。
また、上部注入阻止層には、水素原子が含有されることが好ましい。水素原子はシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠である。水素原子の含有量は、上部注入阻止層中の構成原子の総量に対して通常の場合30atm%以上70atm%以下が好ましく、35atm%以上65atm%以下がより好ましく、40atm%以上60atm%以下が更に好ましい。
本発明において、上部注入阻止層の層厚は、所望の電子写真特性が得られ、かつ、経済的効果等の点から5nm以上1000nm以下が好ましく、10nm以上800nm以下がより好ましく、15nm以上500nm以下が更に好ましい。層厚が5nm以上であれば、表面側からの電荷の注入阻止能は充分で、充分な帯電能が得られず電子写真特性の低下を招くことはない。また、1000nmを超えなければ電子写真特性の向上し、感度等の特性の低下を招くことはない。
上部注入阻止層は光導電層103側から表面領域層104に向かって組成を連続的に変化させることも好ましく、密着性の向上や干渉防止等に効果がある。
上記の目的を達成し得る特性を有する上部注入阻止層を形成するには、シリコン原子供給用のガスと窒素原子供給用のガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2Pa以上1×103Pa以下が好ましく、5×10-2Pa以上5×102Pa以下がより好ましく、1×10-1Pa以上1×102Pa以下が更に好ましい。
さらに、基体の温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上330℃以下がよりより好ましく、200℃以上300℃以下が更に好ましい。
〈中間層〉
本発明の表面領域層に設けられる中間層は、シリコン原子と窒素原子を母材とする非単結晶窒化シリコン膜からなり、窒素原子の厚さ方向における含有率の極大値を1つ有する。かかる中間層を第1の上部注入阻止層(TBL-1)と第2の上部注入阻止層の間、第2の上部注入阻止層(TBL-2)と第3の上部注入阻止層(TBL-3)の間に設けることで、表面領域層内に構成原子の総数に対する周期表第13族元素の含有率が、表面領域層の厚さ方向で極大値又は極大領域を少なくとも2つ以上持ち、かかる2つの極大値間に必然的に形成される極小値をもち、更に、後述する表面保護層に有する窒素原子の含有率の極大値と共に、窒素原子の含有率が、表面領域層の厚さ方向において極大値を2つ以上持った分布が形成される。
中間層に含有される窒素原子、炭素原子および/または酸素原子は、好ましくは、1つの中間層を構成する全ての原子総量に対して10atm%以上90atm%以下を含有するのが感度特性や電気的特性の点から好ましい。より好ましくは15atm%以上85atm%以下、更に好ましくは20atm%以上80atm%以下である。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で満遍なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。また、窒素原子については第1又は第2の上部注入阻止層よりは多く含有していることが好ましい。更に、中間層には、周期表第13族元素を含有させてもよいが、含有量を、2.5×1018個/cm3以下にすることが感度特性の点からより好ましい。
かかる中間層を形成するにはグロー放電法などによることができ、かかるグロー放電法による中間層の形成においては、上部注入阻止層の形成と同様の原料ガスなどを使用し、ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することができる。
<表面保護層>
本発明における表面領域層に設けられる表面保護層は自由表面を有し、シリコン原子と窒素原子を母材とする非単結晶窒化シリコン膜からなり、窒素原子の厚さ方向における含有率の極大値を1つ有し、感光体に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性を付与する。窒素原子の含有率の厚さ方向における極大値、その形状、極大値と、上部注入阻止層における窒素原子の含有率の最小値との関係、窒素原子の平均含有量などについては、中間層と同様である。
表面保護層には、上部注入阻止層や中間層との関係から、炭素原子や、必要に応じて酸素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、水素原子などが含有される。表面層に含まれる窒素原子と酸素原子の平均濃度(atm%)は、30atm%≦N/(Si+N)≦70atm%の範囲が感度や歩留まりの点から好ましい。表面層中の水素および/またはハロゲンは、シリコンなどの構成原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させる。このような観点から、水素原子の含有率は、構成原子の総量に対して好ましくは30atm%以上70atm%以下、より好ましくは35atm%以上65atm%以下、更に好ましくは40atm%以上60atm%以下である。また、ハロゲンとしては例えばフッ素原子の含有率は、0.01atm%以上15atm%以下、好適には0.1atm%以上10atm%以下、より好ましくは0.6atm%以上4atm%以下である。
表面保護層の層厚としては、10nm以上3000nm以下、好適には50nm以上2000nm以下、より好ましくは100nm以上1000nm以下である。層厚が10nm以上であると感光体を使用中に摩耗等の理由により表面層が失われることがなく、3000nm以下であると残留電位増加等がなく優れた電子写真特性を得ることができる。
本発明の目的を達成し得る特性を有する表面保護層を形成するには、グロー放電法などによることができ、かかるグロー放電法による表面保護層の形成においては、基体の温度、反応容器内のガス圧を所望により適宜設定することができる。基体温度(Ts)は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば150℃以上350℃以下とすることができ、好ましくは180℃以上330℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下である。反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、1×10-2Pa以上1×103Pa以下、好ましくは5×10-2Pa以上5×102Pa以下、より好ましくは1×10-1Pa以上1×102Pa以下である。表面保護層を形成するための基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。
<基体>
本発明において使用される導電性基体としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fc等の金属、およびこれらの合金、例えばステンレス等を挙げることができる。
また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等の電気絶縁性基体を用いることができる。これらの電気絶縁性基体としては、少なくとも光受容層を形成する側の表面は、導電処理されたものが使用される。
基体の形状は平滑な表面または凹凸状の表面をした円筒状または無端ベルト状であることができる。その厚さは、所望通りの光受容部材を形成し得るように適宜決定するが、光受容部材としての可撓性が要求される場合には、基体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。しかしながら、基体は製造上および取り扱い上、機械的強度等の点から通常は10μm以上とされる。
<光導電層>
基体上に例えばグロー放電法によって光導電層を形成するには、内部を減圧できる反応容器内の所定の位置に基体を設置し、原料ガスを所望のガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させ、基体上にa−Si:H,Xからなる層を形成すればよい。原料ガスとしては、シリコン原子(Si)を供給するSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給するH供給用の原料ガスと、必要に応じてハロゲン原子(X)を供給するX供給用の原料ガスとを使用することができる。
光導電層中の水素原子、更に必要に応じて添加されるハロゲン原子は、シリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させる。
水素原子の含有量は、特に制限はないが、シリコン原子と水素原子の和に対して10〜40atm%とされるのが好ましい。また、その分布形状に関しても、露光系の波長に合わせて含有量を変化させるなど、適宜調整することが好ましい。
特に、水素原子やハロゲン原子の含有量をある程度多くすると、光学的バンドギャップが大きくなり、感度のピークが短波長側にシフトすることが知られている。このような光学的バンドギャップの拡大は、短波長の露光を用いる際には好ましく、その場合には、水素原子をシリコンと水素原子の和に対して15atm%以上とすることが好ましい。
Si供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。なお、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えない。
更に、膜の物性の制御性、ガスの供給の利便性などを考慮し、これらのガスに更に、H2、He及び水素原子を含むケイ素化合物から選ばれる1種以上のガスを所望量混合して層形成することも出来る。ハロゲン原子供給用の原料ガスとしては、具体的には、フッ素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン化合物、SiF4、Si26等のフッ化ケイ素が好ましいものとして挙げることができる。
光導電層中に含有されるハロゲン元素の量を制御するには、例えば、基体の温度、ハロゲン元素を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電空間の圧力、放電電力等を制御すればよい。
加えて、光導電層には伝導性を制御する原子を光導電層の層厚方向に不均一な分布状態で含有することが好ましい。これは、光導電層のキャリアの走行性を調整し、また或は補償して走行性を高次元でバランスさせることにより、帯電能の向上、光メモリ低減、感度の向上のために有効である。
伝導性を制御する原子の含有量は、特に制限されないが、一般には0.05〜5atmppmとするのが好ましい。また、光の到達する範囲においては、伝導性を制御する原子を実質的に含有しないように制御を行う(積極的な添加を行わない)とすることもできる。
この伝導性制御原子の含有量が、膜厚方向に連続的に、又は段階的に変化する領域を含んでいてもよく、含有量が膜厚方向で一定の領域を含んでいてもよい。
伝導性を制御する原子として、周期表13族に属する原子(13族原子とも略記する)、又は周期表15族に属する原子(15族原子とも略記する)を用いることができる。
13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。
そのような13族原子導入用の原料物質としては具体的には、ホウ素原子導入用としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化ホウ素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化ホウ素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。15族原子として、具体的には、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、As、Sbが好適である。
15族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、リン原子導入用としては、PH3、P24等の水素化リン、PH4I、PF3、PF5、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化リンが挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5
BiH3、BiCl3、BiBr3等も15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができる。
また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2および/またはHeにより希釈して使用してもよい。
光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、5〜50μmが好ましく、10〜45μmがより好ましく、20〜40μmが更に好ましい。
層厚が5μmより薄くなければ、帯電能や感度等の電子写真特性が実用上充分であり、50μmより厚くなければ、光導電層の作製時間が長くなって製造コストが高くなることはない。
所望の膜特性を有する光導電層を形成するには、Si供給用、ハロゲン添加用等のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体温度を適宜設定することが好ましい。
希釈ガスとして使用するH2および/またはHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Heの流量は、Si供給用ガスに対し、通常の場合3〜30倍が好ましく、4〜15倍がより好ましく、5〜10倍の範囲に制御することが更に好ましい。
反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×10-2〜1×103Paが好ましく、5×10-2〜5×102Paがより好ましく、1×10-1〜2×102Paが更に好ましい。
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量に対する放電電力の比を、0.5〜8に設定することが好ましく、2〜6の範囲に設定することがより好ましい。
さらに、基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、200〜350℃が好ましく、210〜330℃がより好ましく、220〜300℃とするのが更に好ましい。
光導電層を形成するための基体温度、ガス圧の好ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。
<下部注入阻止層>
導電性基体101の上層には、基体101側からの電荷の注入を阻止する働きのある下部注入阻止層105を設けるのが効果的である。下部注入阻止層105は感光層102が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、基体101側より光導電層103側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有している。
下部注入阻止層105には、シリコン原子を母材として導電性を制御する元素含有させることで得られる。下部注入阻止層105は、光導電層103に比べて導電性を制御する元素を比較的多く含有させることが好ましい。
負帯電用電子写真感光体の場合、下部注入阻止層105に含有される不純物元素としては、周期表15族元素を用いることができる。下部注入阻止層105中に含有される導電性を制御する元素の含有量は、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜決定されるが、下部注入阻止層中の構成原子の総量に対して10atmppm以上10000atmppm以下が好ましく、50atmppm以上7000atmppm以下がより好ましく、100atmppm以上5000atmppm以下が更に好ましい。
更に、下部注入阻止層105には、炭素、窒素及び酸素を含有させることによって、下部注入阻止層105と基体101との間の密着性の向上を図ることが可能となる。また、負帯電用電子写真感光体の場合には、下部注入阻止層105が導電性を制御する元素を含有しなくても窒素および酸素を最適に含有させることで優れた下部注入阻止能を有することも可能となる。
具体的に、下部注入阻止層105の全層領域に窒素原子および酸素原子を含有させることで下部注入阻止能を向上させることができる。この場合、含有される窒素原子および酸素原子の含有量は、窒素および酸素の和を下部注入阻止層中の構成原子の総量に対して、0.1atm%以上40atm%以下が好ましく、1.2atm%以上20atm%以下がより好ましい。
また、本発明における下部注入阻止層105には水素原子を含有させるのが好ましく、
この場合、含有される水素原子は、層内に存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。下部注入阻止層105中に含有される水素原子の含有量は、下部注入阻止層中の構成原子の総量に対して1atm%以上50atm%以下が好ましく、5atm%以上40atm%以下がより好ましく、10atm%以上30atm%以下が更に好ましい。
さらに、本発明における下部注入阻止層105には炭素原子を含有させるのが好ましい。この場合、含有される炭素原子は、層内に存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。下部注入阻止層105中に含有される水素原子の含有量は、下部注入阻止層中の構成原子の総量に対して1atm%以上50atm%以下が好ましく、5atm%以上40atm%以下がより好ましく、10atm%以上30atm%以下が更に好ましい。
本発明において、下部注入阻止層105の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から、100nm以上5000nm以下が好ましく、300nm以上4000nm以下がより好ましく、500nm以上3000nm以下とすることが更に好ましい。
層厚を100nm以上5000nm以下とすることにより、基体101からの電荷の注入阻止能が充分となり、充分な帯電能が得られると共に電子写真特性の向上が期待でき、残留電位の上昇などの弊害が発生しない。
下部注入阻止層105を形成するには、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。導電性基体温度(Ts)は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上330℃以下がより好ましく、200℃以上300℃以下とすることが更に好ましい。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2Pa以上1×103Pa以下が好ましく、5×10-2Pa以上5×102Pa以下がより好ましく、最適には1×10-1Pa以上1×102Pa以下とするのが更に好ましい。
<電子写真感光体の製造装置>
次に、本発明の光受容層102を作製するための装置及び膜形成方法について詳述する。
図2は、電源周波数としてRF帯を用いた高周波プラズマCVD法(RF−PCVDとも略記する)による電子写真感光体の製造装置の一例を示す模式的な構成図である。図2に示す製造装置の構成は以下の通りである。
この装置は大別すると、堆積装置2100、原料ガスの供給装置2200、反応容器2111内を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成されている。堆積装置2100中の反応容器2111内には円筒状基体2112、基体加熱用ヒーター2113、原料ガス導入管2114が設置され、さらに高周波マッチングボックス2115が接続されている。
原料ガス供給装置2200は、SiH4、GeH4、H2、CH4、B26、PH3等の原料ガスのボンベ2221〜2226とバルブ2231〜2236、2241〜2246、2251〜2256及びマスフローコントローラー2211〜2216から構成され、各原料ガスのボンベは補助バルブ2260を介して反応容器2111内のガス導入管2114に接続されている。
この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば以下のように行なうことができる。
先ず、反応容器2111内に円筒状基体2112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器2111内を排気する。続いて、基体加熱用ヒーター2113により円筒状基体2112の温度を150℃乃至350℃の所定の温度に制御する。
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器2111に流入させるには、ガスボンベのバルブ2231〜2236、反応容器のリークバルブ2117が閉じられていることおよびガス流入バルブ2241〜2246、流出バルブ2251〜2256、補助バルブ2260が開かれていることを確認して、まずメインバルブ2118を開いて反応容器2111及び原料ガス配管内2116を排気する。
次に、真空計2119の読みが約0.1Pa以下になった時点で補助バルブ2260、ガス流出バルブ2251〜2256を閉じる。その後、ガスボンベ2221〜2226より各ガスを原料ガスボンベバルブ2231〜2236を開いて導入し、圧力調整器2261〜2266により各ガス圧を0.2MPaに調整する。次に、ガス流入バルブ2241〜2246を徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー2211〜2216内に導入する。
以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下の手順で各層の形成を行う。
円筒状基体2112が所定の温度になったところで流出バルブ2251〜2256のうちの必要なもの及び補助バルブ2260を徐々に開き、ガスボンベ2221〜22266から所定のガスを、原料ガス導入管2114を介して反応容器2111内に導入する。次にマスフローコントローラー2211〜2216によって各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器2111内の圧力が1×102Pa以下の所定の圧力になるように真空計2119を見ながらメインバルブ2118の開口を調整する。内圧が安定したところで、周波数13.56MHzのRF電源(不図示)を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス2115を通じて反応容器2111内にRF電力を導入し、グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状基体2112上に所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うまでもなく、また、それぞれのガスが反応容器2111内、流出バルブ2251〜2256から反応容器2111に至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブ2251〜2256を閉じ、補助バルブ2260を開き、さらにメインバルブ2118を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
また、膜形成の均一化を図るために、層形成を行なっている間は、円筒状基体2112を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効である。
さらに、上述のガス種及びバルブ操作は各々の層の作製条件に従って変更が加えられることは言うまでもない。
基体の加熱方法は、真空仕様である発熱体であればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とした熱交換手段による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。
それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で基体を搬送する方法が用いられる。
<電子写真装置>
図3は、フィルム状の誘電体ベルトからなる中間転写ベルト305を用いて転写を行う電子写真プロセスを利用したカラー画像形成装置(複写機またはレーザービームプリンター)の模式図である。
この画像形成装置は、表面に静電潜像が形成され、この静電潜像上にトナーが付着されてトナー像が形成される第1の画像担持体が、繰り返し使用される回転ドラム型の電子写真感光体からなる感光体ドラム301から構成されている。
感光体ドラム301の周りには、感光体ドラム301の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる1次帯電器302と、帯電された感光体ドラム301の表面に画像露光303を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置される。更に、形成された静電潜像上にブラック(B)を付着させて現像する第1現像器304a、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各トナーを付着させて現像する回転型の第2の現像器304bとが配置されている。さらに、中間転写ベルト305にトナー像を転写した後、感光体ドラム301上をクリーニングする感光体クリーナ306、及び、感光体ドラム301の除電を行う除電露光307が設けられている。
中間転写ベルト305は、感光体ドラム301に当接ニップ部を介して駆動するように配置されており、内側には感光体ドラム301上に形成されたトナー像を中間転写ベルト305に転写するための一次転写ローラ308が配備されている。一次転写ローラ308には、感光体ドラム301上のトナー像を中間転写ベルト305に転写するための一次転写バイアスを印加するバイアス電源(不図示)が接続されている。中間転写ベルト305の周りには、中間転写ベルト305に転写されたトナー像を記録材313にさらに転写するための二次転写ローラ309が、中間転写ベルト305の下面部に接触するように設けられている。
二次転写ローラ309には、中間転写ベルト305上のトナー像を記録材313に転写するための二次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。また、中間転写ベルト305上のトナー像を記録材313に転写した後、中間転写ベルト305の表面上に残留した転写残トナーをクリーニングするための中間転写ベルトクリーナ310が設けられている。
また、この画像形成装置は、画像が形成される複数の記録材313を保持する給紙カセット314と、記録材313を給紙カセット314から中間転写ベルト305と二次転写ローラ309との当接ニップ部を介して搬送する搬送機構とが設けられている。記録材313の搬送経路上には、記録材313上に転写されたトナー像を記録材313上に定着させる定着器315が配置されている。
一次帯電器302としては磁気ブラシ方式の帯電器などが用いられる。画像露光装置としては、カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系や、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系などが用いられる。
次に、この画像形成装置の動作について説明する。
まず、図3に矢印で示すように、感光体ドラム301が、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、中間転写ベルト305が、反時計方向に、感光体ドラム301と同じ周速度で回転駆動される。
感光体ドラム301は回転過程で、一次帯電器302により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、画像露光303を受け、表面上には、目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像が形成される。次いで、第2現像器が回転し、マゼンタトナー(M)を付着させる現像器が所定の位置にセットされ、その静電潜像が第1色であるマゼンタトナー(M)により現像される。この時、第1現像器304aは、作動オフになっていて感光体ドラム301には作用せず、第1色のマゼンタトナー像に影響を与えることはない。
このようにして、感光体ドラム301上に形成担持された第1色のマゼンタトナー像は、感光体ドラム301と中間転写ベルト305とのニップ部を通過する過程で、一次転写バイアスがバイアス電源(不図示)から一次転写ローラ308に印加される。これにより形成される電界により、中間転写ベルト305外周面に順次中間転写される。
中間転写ベルト305に第1色のマゼンタトナー像を転写し終えた感光体ドラム301の表面は、感光体クリーナ306によりクリーニングされる。次に、感光体ドラム301の清掃された表面上に、第1色のトナー像の形成と同様に、第2色のトナー像(例えばシアントナー像)が形成され、この第2色のトナー像が、第1色のトナー像が転写された中間転写ベルト305の表面上に重畳転写される。以下同様に、第3色のトナー像(例えばイエロートナー像)、第4色のトナー像(例えばブラックトナー像)が中間転写ベルト305上に順次重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
次に、給紙カセット314から中間転写ベルト305と二次転写ローラ309との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材313が給送され、二次転写ローラ309が中間転写ベルト305に当接される。そして、二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ309に印加されることにより、中間転写ベルト305上に重畳転写された合成カラートナー像が、第2の画像担持体である記録材313に転写される。記録材313へのトナー像の転写終了後、中間転写ベルト305上の転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ310によりクリーニングされる。トナー像が転写された記録材313は定着器315に導かれ、ここで記録材313上にトナー像が加熱定着される。
本画像形成装置の動作において、感光体ドラム301から中間転写ベルト305への第1〜第4色のトナー像の順次転写実行時には、二次転写ローラ309および中間転写ベルトクリーナ310は中間転写ベルト305から離間させるようにてもよい。
このような中間転写ベルトを用いた電子写真によるカラー画像形成装置は、以下に示す特徴を有している。
第一に、重ね合わせ時に各色のトナー像の形成位置がずれる色ズレが少ない。また、図3に示すように、記録材313をなんら加工、制御(例えばグリッパーに把持する、吸着する、曲率を持たせるなど)する必要なしに、中間転写ベルト305からトナー像を転写させることができ、記録材313として多種多様なものを用いることができる。例えば、薄い紙(40g/m2紙)から厚い紙(200g/m2紙)までの種々の厚みのものを選択して記録材313として使用可能である。また、幅の広狭または長さの長短によらず種々の大きさのものを記録材313として使用可能である。さらには、封筒、ハガキ、ラベル紙などを記録材313として使用可能である。
また、中間転写ベルト305は、柔軟性に優れており、感光体ドラム301や記録材313とのニップを自由に設定することができるため、設計の自由度が高く、転写効率などを最適化しやすいといった特徴がある。
このように、中間転写ベルト305を用いた画像形成装置には種々の利点がある。
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表1に示した条件で堆積膜を順次積層し、上部注入阻止層、表面層からなる感光体を作製した。下部注入阻止層と光導電層は、共通条件としてすべて表1に示した条件で作製した。表面層は、SiH4のガス流量、SiH4とN2の混合比、SiH4ガス量あたりの電力量を表2に示す条件で、それ以外は表1に示す条件で作製し、表面層中における窒素原子濃度が異なる感光体A〜Hを作製した。
このようにして製作した感光体A〜Hは以下の評価を行った。
電子写真特性の評価には、電子写真方式の画像形成装置(キヤノン製電子写真装置iRC6800)を実験用に改造した機械(以下、iRC6800−405nm改造機という。))を用いた。帯電器を磁気ブラシ方式に改造し、帯電極性を変更可能に改造し、画像露光方式をIAE方式に改造し、画像露光の光源を発振波長405nmの青色発光半導体レーザーに改造し、ドラム面照射スポット径が調整可能に画像露光の光学系を改造した。これに感光体をセットし、以下に示す評価項目について評価を行った。測定結果は表2に示した。
(1)表面層中における実際の窒素原子濃度
最表面をおよそ20nm程度除去し最表面の環境の影響を受けた部分を取り除いた上でSIMS(二次イオン質量分析法)[CAMECA社製:IMS−4F]により分析した。
(2)表面層膜厚
干渉膜厚計(大塚電子製:MCPD−2000)によって軸方向10点、周方向6点の60点に対して測定し、最大値−最小値の値を平均膜厚で割った値を膜厚ムラ(単位%)として表示した。
膜厚ムラが30%を超えてくると、硬度や抵抗のムラも大きくなってくるが、実用上は問題なかった。さらに膜厚ムラが40%を超えると硬度、抵抗ムラも大きく、連続使用で部分的にスジ上に削れる現象が起こり、好ましくない。
(3)405nm光の透過性
405nm光の透過性は、405nm光に対する分光感度によって評価を行った。すなわち、製作した感光体A〜Hに対して分光感度特性を測定し、分光感度が最大になる波長の分光感度(分光感度のピーク値)を基準として、405nm光の分光感度を規格化した値によって、それぞれの感光体について、405nm光の透過性の評価を行った。
ここでいう分光感度とは、感光体の表面を一定電位、例えば450Vに帯電させ、その後さまざまな波長の光を当てたとき、単位光量(単位面積)あたりの表面電位減衰分(単位はV・cm2/μJ)を指している。この表面電位減衰分の測定は、梶田ら(電子写真学会誌、第22巻、第1号、1983)の方法に準じた方法により行った。簡単に説明すると、複写機内での挙動を再現するため、感光体表面にITO電極など透明な電極を密着させ、複写機内のシーケンスを模して露光や電圧印加を行い、表面の電位変化を測定する。表面の電位を測定する場合には、感光体をコンデンサーと見なし、既知の容量と直列接続して電位を印加することで、感光体の帯電能の情報を得ることも可能となるので、好ましい。梶田らの方法では透明絶縁膜を感光体とITO電極の間に挟む方法を用いているが、電気回路を工夫する事で固定コンデンサーを用いても良い。具体的には、まず除電光(例えば50mW/cm2)を一定時間(例えば0.1秒)照射したあと、一定時間(例えば0.01秒)経過後、電圧を印加(例えば20msec程度)して表面を帯電させる。電圧付与をなくしてから一定時間(0.1〜0.5秒程度、例えば0.25秒)経てから、ITO電極につないだ導電体の表面を電位計で測定する。この時間は複写機内で感光体の電位を付与した部分が現像器に到達するタイミングに相当するので、現像器位置における電位に相当する。次に、同様のシーケンスで電圧付与と電位測定の間に様々な波長の光を露光(例えば電圧付与から0.1秒後)し、同様に現像器位置に相当するタイミングの電位を測定し、光を当てる場合と当てない場合との差分を計算して求める。これは、現像器位置での、露光光による電位減衰分を測定していることに相当する。このような感光体の感度は波長によって異なるものとなる。図6は、横軸に波長、縦軸に分光感度を、その値が最大となる波長における分光感度を基準として規格化した値として、プロットしたグラフである。更に、図7に、表面層中における窒素原子濃度と405nmの光に対する分光感度との関係についてプロットしたグラフを示す。図7から明らかなように、窒素原子濃度と405nmの光に対する分光感度との間には、明確な相関が見られ、概ね窒素原子濃度が高くなるにつれて、405nmの光に対する分光感度が良くる傾向を示すことがわかる。
電子写真プロセスにおいて必要とされる感度の評価に関しては、使用するレーザー素子や光学系の性能に依存するものであり、一概に、その絶対値を言及することは難しいが、感光体Bを、評価用の画像形成装置に設置し、現像器位置における表面電位が−450V(暗電位)になるように帯電器を調整した後、405nmの像露光を照射し、像露光光源の光量を調整して、表面電位が−100V(明電位)となるようにし、そのときの露光量を基準露光量とした。その他の感光体については、同様に評価用の画像形成装置に設置し、405nmの像露光を基準露光量で照射たときの電位が−100V以下にならない場合は、感度不足と判断した。
このようにして、感度について本発明者らのさまざまな検討の結果、図6に示したような分光感度のピーク値で規格化した指標で、30%以上の感度を有することが好ましく、好ましくは40%以上の感度を有することがより好ましいことがわかった。
従って、そのような感度を有する感光体としては、表面層中の窒素原子濃度は、30atm%以上、より好ましくは35atm%以上である。このような窒素原子濃度とすることによって、青色発光半導体レーザーのような405nm付近の短波長レーザー光に対する感度を有するという更なる効果を有することが明らかとなった。
その一方、表2から明らかなように、感光体Gでは膜厚ムラが大きく、表面層として使用する際には窒素濃度が高すぎないことが望ましいことが分かった。このような観点において、表面層中の窒素原子濃度は、好ましくは70atm%以下、より好ましくは60atm%以下が好適であることがわかった。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
<実施例2>
図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表3に示した条件で、下部注入阻止層、光導電層、及び、上部注入阻止層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。下部注入阻止層と光導電層は、共通条件としてすべて表1に示した条件で成膜し、表面層に関しては、表4に挙げたようにCH4のガス流量をさまざまに変化させて成膜し、表面層中における炭素原子濃度が異なる感光体2A〜2Hを製作した。
このようにして製作した感光体2A〜2Hは、実施例1と同様に(1)窒素原子濃度、(3)405nmの透過性に加えて以下の評価を行った。
(4)表面層中における実際の炭素原子濃度
最表面をおよそ20nm程度除去する事で最表面の影響を取り除いた上でSIMS(二次イオン質量分析法)[CAMECA社製:IMS−4F]により分析した。
(5)残留電位
作製した電子写真感光体を、現像器位置における表面電位が−450V(暗電位)になるように帯電器を調整した。その後、像露光光源の光量を最大になるように調整して、像露光を照射し、現像器位置に設置した表面電位計により電子写真感光体の表面電位を測定し残留電位とした。得られた結果は、感光体2Aをリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
☆:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常に良いレベル
◎:リファレンスに比べて5%以上向上し、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
(6)電位ムラ
作製した電子写真感光体を、現像器位置における暗部電位が−450Vになるように帯電器を調整し、現像器位置における明部電位が−100Vになるように像露光光源の光量を調整した状態において、暗部電位と明部電位の面内分布を測定し、その最大値と最小値の差を電位ムラとした。得られた結果は、感光体2Aをリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
☆:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常に良いレベル
◎:リファレンスに比べて5%以上向上し、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
評価結果を、表4に示す。
評価結果より、炭素原子を微量含有させることで、残留電位および電位ムラに関する特性が改善されることがわかる。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
<実施例3>
図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表5に示した条件で、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、表5に示すように、表面領域層の形成途中でCH4ガスとB26ガスの導入量を変化させる事で炭素原子濃度と周期表13族元素のホウ素原子濃度が極大値を持つようにした。表3の表面領域層に極大値を形成するためのガスの導入方法としては、変化層と表面層との形成時に、表5に示すように、CH4ガスとB26ガスとを、所定時間を掛けて一定値から直線的に増加させ、その後同じ速度で再び初期の一定値まで直線的に減少させた。さらに,NOガス、SiF4ガスの導入量を変化させて同様に、極大値を持つようにした。
このようにすることで炭素原子と硼素原子の含有量が図10にあるような極大値を持つ分布であることがSIMS測定によって確かめられた。
なお、炭素原子の、極大値は、1.0×1020個/cm3であり、硼素原子の極大値は、光導電層側から、2.1×1018個/cm3、6.5×1018個/cm3であった。硼素原子の極大値間隔は、250nmであった。
また、表面層の窒素の量はN/(Si+N)の表記で43atm%であった。
Figure 2006189822
得られた感光体を、電子写真方式の画像形成装置(iRC6800−405nm改造機)にセットして、以下の評価を行った。評価結果は、後述の比較例1および実施例4とともに表8に示されている。
(1)解像度
パソコンで、2ポイントサイズ、及び、3ポイントサイズのアルファベット(A〜Z)及び複雑な漢字(電、驚など)を1200dpiの解像度で配列したテストチャートを作成しそのテストチャートをプリントアウトした画像により感光体の解像度の評価を行った。具体的には、出力画像をスキャナー(キヤノン製CanoScan9900F)を使って1600dpiの解像度で読み取り、読み取った画像データとテストチャートの元データを比較して、テスト原稿の文字からのズレ部分(太り、細り)の面積を算出した。その数値によって感光体の解像度の評価を行った。得られた結果は、後述する比較例1に示す層構成の感光体の値をリファレンス、即ち、100%とした場合の相対評価でランク判定を行った。
☆:80%未満で、リファレンスに比べて、非常に良いレベル
◎:80%以上、95%未満で、リファレンスに比べて、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
(2)帯電能
作製した電子写真感光体を電子写真装置に設置して帯電を行ない、現像器位置に設置した表面電位計により電子写真感光体の暗部表面電位を測定し帯電能とした。このとき、比較のために帯電条件(帯電器へのDC印加電圧、重畳AC振幅、周波数など)は一定とした。得られた結果は、後述する比較例1に示す層構成の感光体をリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
☆:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常に良いレベル
◎:リファレンスに比べて5%以上向上し、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
(3)残留電位
作製した電子写真感光体を、現像器位置における表面電位が−450V(暗電位)になるように帯電器を調整した。その後、像露光光源の光量を最大になるように調整して、像露光を照射し、現像器位置に設置した表面電位計により電子写真感光体の表面電位を測定し残留電位とした。得られた結果は、後述する比較例1に示す層構成の感光体をリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
☆:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常に良いレベル
◎:リファレンスに比べて5%以上向上し、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
(4)感度
作製した電子写真感光体を、現像器位置における表面電位が−450V(暗電位)になるように帯電器を調整した。その後、像露光を照射し、像露光光源の光量を調整して、表面電位が−100V(明電位)となるようにし、そのときの露光量を感度とした。得られた結果は、後述する比較例1に示す層構成の感光体をリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
☆:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常に良いレベル
◎:リファレンスに比べて5%以上向上し、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
(5)電位ムラ
作製した電子写真感光体を、現像器位置における暗部電位が−450Vになるように帯電器を調整し、現像器位置における明部電位が−100Vになるように像露光光源の光量を調整した状態において、暗部電位と明部電位の面内分布を測定した。その最大値と最小値の差を電位ムラとした。得られた結果は、後述する比較例1に示す層構成の感光体をリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
☆:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常に良いレベル
◎:リファレンスに比べて5%以上向上し、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
(6)光メモリ
光メモリ電位は、現像器位置における暗部電位が−450Vになるように帯電器を調整した。現像器位置における明部電位が−100Vになるように像露光光源の光量を調整した状態において、同様の電位センサーにより非像露光状態での表面電位と一旦像露光した後に再度帯電した時との電位差を測定し、光メモリとした。得られた結果は、後述する比較例1に示す層構成の感光体をリファレンスとし、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
☆:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常に良いレベル
◎:リファレンスに比べて5%以上向上し、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
(7)405nm光の透過性
分光感度特性は、一定暗部電位から一定明部電位まで光減衰させるのに必要な光量の逆数、即ち、光の単位エネルギー量当たりの電位減衰量をその露光波長に対する分光感度とし、露光波長を変化させた時の各波長における分光感度を測定した。分光感度が最大になる波長の分光感度(分光感度のピーク値)によって規格化した数値によって評価を行った。より具体的には、405nm光の透過性を評価するために、405nm光の分光感度によって透過性の評価を行った。
(8)クリーニング性(CLN性と略記)
CLN性は、クリーニング残トナーが発生し始めるクリーニングブレード圧力によって評価を行った。具体的には、A4コピー紙1000枚の通紙耐久を行った後の、感光体表面を観察し、クリーニング残トナーの有無を判定する実験を、クリーニングブレード圧力を徐々に低くしながら繰り返して、クリーニング残トナーが発生し始めるクリーニングブレード圧力を調べた。得られた結果は、後述する比較例1に示す層構成の感光体の値をリファレンス、即ち、100%とした場合の相対評価でランク付けを行った。クリーニング残トナーが発生し始めるクリーニングブレード圧力は、低い方がクリーニングのラチチュードが広く、CLN性に優れると解釈することができる。
☆:80%未満で、リファレンスに比べて、非常に良いレベル
◎:80%以上、95%未満で、リファレンスに比べて、良いレベル
○:リファレンスと同等レベル
<比較例1>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表6に示した条件で、下部注入阻止層、光導電層、及び、上部注入阻止層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
評価結果は、表8に示す。
含有量は図11に示すような極大値、分布となるようにした。
Figure 2006189822
<実施例4>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表7に示した条件で、図1(b)に示した層構成となるように、下部注入阻止層、光導電層、及び、上部注入阻止層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、表7に示したように、表面領域層にNOガス、SiF4ガスを用いなかった。それ以外は、同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
評価結果は、実施例3、比較例1を合わせて表8に示す。
含有量は図12に示すような極大値、分布となるようにした。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
表8から明らかなように、青色半導体レーザー(405nm)で、1200dpiの解像度で配列したテストチャートの画像では、解像度が向上した。これは、表面領域層の硼素原子の分布が2箇所に極大値を持つようにし、かつ炭素原子、酸素原子及びフッ素原子の分布が1箇所の極大値を持つように作成された実施例3および表面領域層の硼素原子の分布が2箇所に極大値を持つようにし、かつ炭素原子の分布が1箇所の極大値を持つように作成された実施例4のような表面領域層を用いると、ドット再現性を向上させることが出来、本来のスポット径を絞った効果が十分に発揮される事がわかった。
実施例3および4のように、表面領域層の硼素原子の分布が2箇所に極大値を持つような感光体は、評価した全項目で特性の改善が見られた。実施例4では炭素元素の分布が1箇所に極大値を持っていたが、実施例3のように炭素、酸素およびフッ素原子の分布が、1箇所に極大値を持った構成とすることで更に解像度、残留電位、光メモリ及びCLN性が向上することが分かる。
<実施例5>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表9に示した条件で、図1(c)に示した層構成となるように、下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、表9に示したように、表面領域層に導入する、SiH4およびB26ガスの流量を変化させて、含有量及び極大値を変化させて、数種の感光体を作成した。その時の含有量及び極大値は表13に示す。それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
評価結果は、表14に示す。
含有量は図13に示すような極大値、分布が得られた。
Figure 2006189822
<実施例6>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表10に示した条件で、図1(c)に示した層構成となるように、下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、表10に示したように、表面領域層に導入する、B26ガスの流量を変化させて、表面側の極大値>光導電層側の極大値となるように作成した。その時の含有量及び極大値は表13に示す。それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
評価結果は、表14に示す。
含有量は図14に示すような極大値、分布が得られた。
Figure 2006189822
<実施例7>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表11に示した条件で、図1(c)に示した層構成となるように、下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、表11に示したように、表面領域層に導入する、B26ガスの流量が最大値の時に、一定時間変化させずに、極大領域となるようにして作成した。その時の含有量及び極大値は表13に示す。それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
評価結果は、表14に示す。
含有量は図15に示すような極大値、分布が得られた。
Figure 2006189822
<実施例8>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表12に示した条件で、図1(c)に示した層構成となるように、下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、表12に示したように、表面領域層に導入する、B26ガスの流量を変化させて、極大値と極大値の間隔を変えて作成した。その時の含有量及び極大値は表13に示す。それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
評価結果は、表14に示す。
含有量は図16に示すような極大値、分布となるようにした。
Figure 2006189822
表13は、実施例5〜8で作成した感光体の表面領域層の、ボロン原子の含有量の表面側の極大値、光導電層側の極大値、極大値間のボロンの含有量の最小値、極大値間隔、N/(Si+N)で現される表面層の窒素の量および炭素原子の含有量の極大値を示している。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
表14の実施例5の評価結果から、光導電層側の極大値を5×1018個/cm3以上にすることで、帯電能が向上し、極大値間の含有量を2.5×1018個/cm3以下にすることで、解像度の向上が図れることがわかる。極大値間の含有量の最小値が2.5×1018個/cm3よりも多くなると、極大値が実質的に1個と同じになり解像度改善の効果が見られない。
また、実施例6の結果から、周期表13族元素を極大領域となる形で含有させても、本発明の効果は得られて、すべての項目で比較例よりも向上することがわかる。さらに、極大値を持つように含有させた方が、より解像度が向上することがわかる。
実施例7の結果から、表面側の極大値よりも光導電層側の極大値を大きくして、かつ光導電層側の極大値を5×1018個/cm3以上にすることで、解像度、帯電能が改善することがわかる。
実施例8の結果から、極大値間隔が100nmよりも小さくなると、極大値が実質的に1個と同じになり、そのために解像度、帯電能、残留電位の改善が、ほとんど見られなくなる。さらに、1000nmよりも大きくなると、解像度や残留電位、感度に改善効果がやや低下してくることがわかる。
以上から、周期表13族元素の極大値を少なくとも2個有するようにすることで、解像度が向上し、さらに光導電層側の極大値を5×1018個/cm3よりも大きくし、極大値間隔を100nm以上1000nm以下にすることで、帯電能や残留電位、感度といった電気特性を改善することができる。
<実施例9>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表15に示した条件で、下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、変化層のSiH4ガス流量は漸減させる変化パターンで、N2ガス流量は漸増させる変化パターンでの組み合わせを種種変えて、表面層と光導電層を光学的に連続するように作成した。それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光ドラムは、分光反射スペクトルを測定し、光学的な連続性を評価した。
分光反射スペクトルは、入射光波長に対する反射率であり、分光光度計(大塚電子社製MCPD−2000)を用いて測定した反射率(百分率)の値をさす。具体的には、分光器の光源の分光発光強度I(o)をとり、次いで感光体の分光反射光度I(D)をとり、反射率R=I(D)/I(o)を求めたものである。
分光反射スペクトルの測定結果を図8(a)、図8(b)に示す。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
なお、炭素原子の極大値は、1.7×1020個/cm3であり、硼素原子の極大値は、光導電層側から、7.3×1018個/cm3、6.4×1018個/cm3であった。硼素原子の極大値間隔は、400nmであった。また、表面層の窒素の量はN/(Si+N)の表記で69atm%であった。
評価結果は、表16に示す。
含有量は図17に示すような極大値、分布が得られた。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
図8aに、実施例9−Aから実施例9−Dの分光反射スペクトルを示す。
この4本の感光体の分光反射スペクトルは、波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)が0%≦Max(%)≦20%かつ0≦(Max−Min)/(100−Max)≦0.15を満たしている。
また、図8bには、実施例9−Eから実施例9−Hの分光反射スペクトルが示されているが、上記条件範囲外となった感光体である。
表16の結果から、分光反射スペクトルを上記条件範囲内になるように、光導電層から表面層を光学的に連続するように作成することで、電位ムラが向上する事がわかった。電位ムラの中でも特に、露光ムラが向上することが分かった。
また、実施例9以外の実施例は、図9に示すように、反射率の関係が条件範囲内になるように作成している。
<実施例10>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表17に示した条件で、図1(c)に示した層構成となるように、下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、CH4ガスの流量を変えて、炭素原子の極大値の異なる感光体を作成した。
それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
含有量は図18に示すような極大値、分布となるようにした。
なお、炭素原子の極大値は、9.8×1019個/cm3であり、硼素原子の極大値は、光導電層側から、7.3×1018個/cm3、6.4×1018個/cm3であった。硼素原子の極大値間隔は、300nmであった。また、表面層の窒素の量はN/(Si+N)の表記で48atm%であった。
評価結果は、表18に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
表18と表8の実施例3を比較すると、炭素原子の含有量が1.0×1020個/cm3よりも少なくなると、CLN性の改善がみられなくなるとが、解像度、帯電能等は実施例3と同様に良好な結果が得られた。
<実施例11>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表19に示した条件で、図1(c)に示した層構成となるように、下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、変化層部分でCH4ガスの流量を変えて、炭素原子の極大値を持つように作成した。それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
なお、炭素原子の極大値は、光導電層側から、1.1×1020個/cm3、1.5×1020個/cm3であり、硼素原子の極大値は、光導電層側から、7.1×1018個/cm3、6.5×1018個/cm3であった。硼素原子の極大値間隔は、280nmであった。また、表面層の窒素の量はN/(Si+N)の表記で48atm%であった。
評価結果は、表20に示す。
含有量は図19に示すような極大値、分布となるようにした。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
表20から、変化層部分と表面層部分に、炭素原子の含有量が1.0×1020個/cm3以上のピークを2個もつようにしても、実施例3と同様に全ての特性で良好な結果が得られた。
<実施例12>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表21に示した条件で、図1(c)に示した下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる層構成となるように、堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
表21に示したように、変化層でのSiH4ガスの流量とN2ガスの流量をほぼ一定として、その部分でCH4ガスの流量を変えて、炭素原子の極大値を持つように作成した。それ以外の条件は、実施例3と同じ条件で製作した。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
なお、炭素原子の極大値は、光導電層側から、1.0×1020個/cm3、2.2×1020個/cm3であり、硼素原子の極大値は、光導電層側から、7.1×1018個/cm3、6.5×1018個/cm3であった。硼素原子の極大値間隔は、400nmであった。また、表面層の窒素の量はN/(Si+N)の表記で48atm%であった。
評価結果は、表22に示す。
含有量は図20に示すような極大値、分布となるようにした。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
表22から、変化層を一定層としても、周期表13族元素の含有率が膜の厚さ方向で極大値を少なくとも2つ持ち、かつ炭素原子と酸素原子、フッ素元素の含有率が極大値を持つようにすることによって、実施例3と同様に全ての特性で良好な結果が得られた。
<実施例13>
実施例3と同様に、図2に示したプラズマCVD装置を用いた。直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表23に示した条件で、図1(c)に示した下部注入阻止層、光導電層、及び、変化層、表面層からなる層構成となるように、堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。
このとき、下部注入阻止層を実施例3のSi系からSiN系に変えて作成した以外の層構成は実施例3と同じ構成とした。
変化層の窒素、ボロン、フッ素、酸素および炭素の含有量の分布が、図21に示すような極大値、分布となるようにガス流量を制御し、図21に示す分布が得られた。
ここで、炭素原子の極大値は、2.8×1020個/cm3であり、硼素原子の極大値は、光導電層側から、9.4×1018個/cm3、5.2×1018個/cm3であった。硼素原子の極大値間隔は、480nmであった。また、表面層の窒素の量はN/(Si+N)の表記で58atm%であった。
作成した感光体を、実施例3と同様の評価を行った。
評価結果は、表24に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
表24から、下部注入阻止層をSiN系にしても、実施例3と同様に全ての特性で良好な結果が得られた。
[実施例14]
図2示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表25に示した条件で堆積膜を順次積層し、上部注入阻止層、中間層、表面保護層からなる感光体を作製した。下部注入阻止層と光導電層は、共通条件としてすべて表25に示した条件で作製し、表面保護層は、SiH4のガス流量、SiH4とN2の混合比、SiH4ガス量あたりの電力量を表26に示す条件で、それ以外は表25に示す条件で作製し、表面保護層中における窒素原子濃度が異なる感光体14A〜14Hを作製した。
このようにして製作した感光体14A〜14Hは実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を表26に示した。
本実施例においても、実施例1と同様の結果がえられた。即ち、図6に示したような分光感度のピーク値で規格化した指標で、30%以上の感度を有することが好ましく、望ましくは40%以上の感度を有することがより好ましいことがわかった。
従って、そのような感度を有する感光体としては、表面保護層中の窒素原子濃度は、30atm%以上、より好ましくは35atm%以上とすることによって、青色発光半導体レーザーのような405nm付近の短波長レーザー光に対する感度を有するという更なる効果を有することが明らかとなった。
その一方、表26から明らかなように、感光体14Gでは膜厚ムラが大きく、表面保護層として使用する際には窒素濃度が高すぎないことが望ましいことが分かった。このような観点において、表面保護層中の窒素原子濃度は、好ましくは70atm%以下、より好ましくは60atm%以下が好適であることがわかった。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
[実施例15]
図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表27に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、上部注入阻止層、中間層、表面保護層からなる感光体を作製した。下部注入阻止層と光導電層は、共通条件としてすべて表27に示した条件で作製し、表面保護層は、CH4のガス流量を表28に示す条件で、それ以外は表27に示す条件で作製し、表面保護層中における炭素原子濃度が異なる感光体15A〜15Hを作製した。このようにして製作した感光体15A〜15Hは、実施例2と同様に評価を行った。このときレファレンスは感光体15Aとした。測定結果は、表28に示す。
結果から明らかなように、炭素原子を微量含有させることで、表面領域層起因の残留電位を低減できることがわかった。この結果、短波長露光の効果が得られて解像度の向上が達成される。その一方で、含有させた炭素原子の量が多くなると、電位ムラの感度のムラが大きくなる傾向が見られ、また、やや短波長光の透過性が低下する傾向が見られる結果となった。これは、Si-C結合の増加したためと推測される。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
[実施例16]
図2に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mm、長さ381mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表29に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表5に示すように、表面領域層は第1の上部注入阻止層(TBL-1)、中間層、第2の上部注入阻止層(TBL-2)および表面保護層(SL)とした。また、表面領域層の形成途中でN2ガス、B2H6ガス、CH4ガスの導入量を変化させた。
作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子、ホウ素原子、炭素原子の含有量について、図25(b)、図26(e)、図27(b)に示すピークを持つことが分かった。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
Figure 2006189822
得られた感光体を、iRC6800−405nm改造機にセットして、実施例3と同様以の評価を行った。このときレファレンスは後述の比較例2の感光体とした。評価結果は、表32に示す。
[比較例2]
実施例16と同様にして、表30に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、上部注入阻止層、表面からなる感光体を作製した。作製した感光体を、実施例1と同様にSIMS測定を行った。窒素原子、ホウ素原子の含有量について、図25(e)、図26(f)に示すピークを持つことが分かった。
製作した感光体について、実施例16と同様の評価を行った。その結果を、表32に示す。
Figure 2006189822
[実施例17]
実施例16と同様にして、表31に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を製作した。表面領域層にNOガス、SiF4ガスを用いなかった他は、実施例16と同様にして感光体を製作した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子、ホウ素原子、炭素原子の含有量について、図25(b)、図26(e)、図27(b)に示すピークを持つことが分かった。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様の光電特性の評価を行った。評価結果を、実施例16、比較例2合わせて表32に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、青色半導体レーザー(405nm)で、1200dpiの画像では、解像度が向上した。表面側層領域にホウ素原子、及び、窒素原子の極大値を2個持つようにし、且つ、炭素原子、酸素原子及びフッ素原子の極大値を持つ実施例3のような表面領域層を用いると、ドット再現性を向上させることができ、本来のスポット径を絞った効果が十分に発揮されることがわかった。また、実施例16の表面領域層を持つ感光体は優れた光導電特性を有することが分かった。
さらに、酸素原子及びフッ素原子の極大値を持つように作成したほうが、解像度、残留電位、光メモリー及びCLN性が向上することが分かった。
[実施例18]
実施例16と同様にして、表33に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表面領域層に導入する、B2H6ガスの流量を変化させた他は実施例3と同様にして、6種の感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子、ホウ素原子、炭素原子の含有量について、図25(b)、図26(c)または(b)、図27(a)に示すピークを持つことが分かった。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、175nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、350nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表35に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、最も光導電層側に位置する周期表第13族元素の極大値が、5.0×1018個/cm3以上であると、解像度や帯電能に於いて、更なる特性の向上が図られ、周期表第13族元素の隣接する2つの極大値の間に存在する周期表第13族元素の最小値が、2.5×1018個/cm3以下であると、帯電能について、更なる特性の向上が認められた。また、周期表第13族元素が、極大領域として含まれていても、ピークとして含まれている場合と同様の光電特性の効果が得られることが分かった。
[実施例19]
実施例16と同様にして、表36に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表面領域層に導入する、B2H6ガスの流量を変化た他は実施例1と同様にして感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。ホウ素原子の含有量について、図26(d)に示すピークを持つことが分かった。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、4.0×1018個/cm3、6.0×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、90nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、180nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表37に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、表面領域層に含まれる2つの周期表第13族元素極大値のうち、自由表面側の極大値が大きくなるように含有させた場合においても、特性の改善が見られ特に、電位ムラ、光メモリー、透過性、CLN性、画像欠陥の点において、特性の改善が見られることがわかった。
[実施例20]
実施例16と同様にして、表38に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表面領域層のうち中間層の成膜時間を変化させ、表面領域層に含まれる2つの周期表第13族元素極大値の極大値間距離を変化させた他は実施例16と同様にして5種の感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であった。
作製した感光体について、実施例3と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表40に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、表面領域層に含まれる2つの周期表第13族元素極大値の極大値間距離は、膜の厚さ方向で100nm以上1000nm以下の範囲にあることが、解像度や帯電能、残留電位、感度の点からより好ましいことが分かる。
[実施例21]
実施例16と同様にして、表41に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表面領域層の中間層に導入する、N2ガスの流量を変化させ、表42にしめしたように表面領域層に含まれる窒素原子含有率の極大値と最小値との比(極大地/最小値)、及び、窒素原子含有率の分布を変化させた他は実施例16と同様にして、5種の感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表43に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、表面領域層に含まれる窒素原子含有率の極大値と最小値との比は、1.10以上であることが、画像欠陥の点からより好ましいことが分かる。また、窒素原子は、一定部を持つような極大領域として含まれていても、ピークとして含まれている場合と同様の効果を得られることが分かった。
[実施例22]
実施例16と同様にして、表44に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表面領域層の中間層および第2の上部阻止層(TBL−2)の成膜時間を変化させ、隣接する2つの窒素原子極大値間の最小値と光導電層側の極大値との距離を変化させた他は実施例16と同様にして、6種の感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表46に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、表面領域層に含まれる隣接する2つの窒素原子極大値の極大値間の最小値と光導電層側の極大値と間距離は、膜の厚さ方向で40nm以上300nm以下の範囲にあることが、画像欠陥の点からより好ましいことが分かる。
[実施例23]
実施例16と同様にして、表47に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を製作した。表面領域層に導入するB26ガスの流量を変化させ、表面領域層の全域にわたって周期表第13族元素を含ませた上で、周期表第13族元素が2つの極大値を持つようにした他は実施例16と同様にして感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。ホウ素原子の含有量について、図26(c)に示すピークを持つことが分かった。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表48に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、表面領域層のすべてに周期表第13族元素を含ませた上で、周期表第13族元素が2つの極大値を持つような場合においても、評価した全項目で光電特性の改善が見られることが分かった。
[実施例24]
実施例16と同様にして、表49に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表面領域層に導入するN2ガスの流量、B26ガスの流量を変化させ、表面領域層において窒素原子の含有率と周期表第13族元素含有率元素の含有率が同位相でピークを持つようにした他は実施例16と同様にして感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子とホウ素原子の含有量について、図24に示すピークを持つことが分かった。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、500nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表50に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、表面領域層において周期表第13族元素含有率と窒素元素の含有率が同位相でピークを持つような場合には、画像欠陥以外で特性の改善が見られることが分かった。
[実施例25]
実施例16と同様にして、表51に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。表面層(SL)側の上部電荷注入阻止層(TBL-2)に導入する、CH4ガスの流量を変化させて、表面領域層における炭素原子含有率の極大値を変化させた他は実施例16と同様にして4種の感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表53に示す。
Figure 2006189822
Figure 2006189822
Figure 2006189822
結果から明らかなように、表面領域層に含まれる2つの炭素原子の極大値が、2.5×1018個/cm3以上であることが、残留電位、CLN性の点からより好ましいことが分かる。
[実施例26]
実施例16と同様にして、表54に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を製作した。表面領域層に導入するCH4ガスの流量や成膜時間を変化させ、2つ極大値を持つようにした他は実施例16と同様にして感光体を作製。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。炭素原子の含有量について、図27(c)に示すピークを持つことが分かった。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、光導電層側から、1.1×1020個/cm3、1.5×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表55に示す。
Figure 2006189822
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結果から明らかなように、表面領域層において炭素原子含有率が、2つ極大値を持つような感光体の場合においても、評価した全項目で特性の改善が見られることが分かった。
[実施例27]
実施例16と同様にして、表56に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を作製した。下部注入阻止層に導入するN2ガスの流量を変化させ、下部注入阻止層に窒素原子を導入した他は実施例16と同様にして感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表57に示す。
Figure 2006189822
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結果から明らかなように、下部注入阻止層に窒素原子を導入した場合においても、評価した全項目で特性の改善が見られることが分かった。
[実施例28]
実施例16と同様にして、表58に示した条件で堆積膜を順次積層し、下部注入阻止層、光導電層、及び、表面領域層からなる感光体を製作した。表面領域層の初めに変化層を導入し、ガス流量を変化させることで光導電層と第1の上部注入阻止層を光学的に連続するように他は実施例16と同様にして感光体を作製した。作製した感光体の表面領域層について、実施例1と同様にして、SIMS測定を行った。窒素原子の極大値は、光導電層側から、N/(Si+N)の表記で38atm%、43atm%であり、ホウ素原子の極大値は、光導電層側から、6.5×1018個/cm3、2.1×1018個/cm3であり、炭素原子の極大値は、1.0×1020個/cm3であり、窒素原子の極大値と最小値との間隔は、150nmであり、ホウ素原子の極大値間隔は、300nmであった。
作製した感光ドラムについて、分光反射スペクトルを測定し、光学的な連続性を評価した。分光反射スペクトルは、入射光波長に対する反射率であり、分光光度計(大塚電子社製MCPD-2000)を用いて測定した反射率(百分率)の値をさす。具体的には、分光器の光源の分光発光強度I(o)をとり、次いで感光体の分光反射光度I(D)をとり、反射率R=I(D)/I(o)を求めたものである。感光体28A〜28Dの分光反射スペクトルの測定結果を図28(a)、(b)に、感光体28E〜28Hの分光射スペクトルの測定結果を図28(c)、(d)に示す。
感光体28A〜28Dは、波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)が0%≦Max(%)≦20%かつ0≦(Max−Min)/(100−Max)≦0.15を満たしており、感光体28E〜28Hは波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)が上記関係を満たしていなかった。
作製した感光体について、実施例16と同様に光電特性の評価を行った。評価結果を、表59に示す。
Figure 2006189822
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結果から、光導電層から上部注入阻止層を光学的に連続とし、波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)が上記関係を満たしている感光体は、電位ムラが向上し、特に、電位ムラの中露光ムラによる電位ムラが向上することが分かった。実施例1〜28の感光体は、波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)が上記関係を満たしていた。
本実施例は、全てアモルファスで行なったが、多結晶膜であっても同様の効果が得られることは明らかである。
本発明の電子写真感光体の一例を示す模式的な断面図である。 本発明の電子写真感光体の製造に使用することが可能な、RF帯の高周波を用いたプラズマCVD堆積装置の好適な構成の一例を模式的に示した図である。 本発明の電子写真感光体を適用したカラー電子写真装置構成の一例を表す模式図である。 本発明の電子写真感光体における表面層中の周期表13族元素(硼素原子)、炭素原子、酸素原子及びフッ素原子含有量の極大値を説明するデプスプロファイルの一例ある。 本発明の電子写真感光体における、露光用レーザーのスポット径と、出力画像上のドット径との関係を説明する模式図である。 電子写真感光体の分光感度特性の測定結果の一例を表すグラフである。 実施例1で作成した電子写真感光体の表面層中における窒素原子濃度と波長405nmの光に対する感度との相関を測定した結果を表すグラフである。 本発明の電子写真感光体における、光学的に連続した変化層を設けた場合の分光反射スペクトルの一例を示すグラフである。 本発明の電子写真感光体における、実施例の分光反射スペクトルを示すグラフである。 本発明の電子写真感光体における、実施例3の表面領域層のデプスプロファイルである。 比較例1の表面領域層のデプスプロファイルである。 本発明の電子写真感光体における、実施例4の表面領域層のデプスプロファイルである。 本発明の電子写真感光体における、実施例5の表面領域層のデプスプロファイルである。 本発明の電子写真感光体における、実施例6の表面領域層のデプスプロファイルである。 本発明の電子写真感光体における、実施例7の表面領域層のデプスプロファイルである。 本発明の電子写真感光体における、実施例8の表面領域層のデプスプロファイルである。 本発明の電子写真感光体における、実施例9の表面領域層のデプスプロファイルである。 本発明の電子写真感光体における、実施例10の表面領域層のデプスプロファイルでる。 本発明の電子写真感光体における、実施例11の表面領域層のデプスプロファイルでる。 本発明の電子写真感光体における、実施例12の表面領域層のデプスプロファイルでる。 本発明の電子写真感光体における、実施例13の表面領域層のデプスプロファイルでる。 本発明の電子写真感光体における、表面領域層の極大値と極大値間距離の関係を説る模式図である。 本発明の電子写真感光体における、表面領域層の極大値領域、極大値および極大値間距離の関係を説明する模式図である。 本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における周期表第13族元素と窒素原子の含有率分布を示す図である。 (a)本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における窒素原子の含有率分布を示す図である。(b)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における窒素原子の含有率分布を示す図である。(c)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における窒素原子の含有率分布を示す図である。(d)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における窒素原子の含有率分布を示す図である。(e)は比較例の電子写真感光体の表面領域層の厚さ方向における窒素原子の含有率分布を示す図である。 (a)本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における周期表第13族元素の含有率分布を示す図である。(b)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における周期表第13族元素の含有率分布を示す図である。(c)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における周期表第13族元素の含有率分布を示す図である。(d)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における周期表第13族元素の含有率分布を示す図である。(e)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における周期表第13族元素の含有率分布を示す図である。(f)は比較例の電子写真感光体の表面領域層の厚さ方向における周期表第13族元素の含有率分布を示す図である。 (a)本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における炭素原子の含有率分布を示す図である。(b)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における炭素原子の含有率分布を示す図である。(c)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における炭素原子の含有率分布を示す図である。(d)は本発明の電子写真感光体の一例の表面領域層の厚さ方向における炭素原子の含有率分布を示す図である。 (a)本発明の電子写真感光体の一例の分光反射スペクトルを示す図である。(b)は本発明の電子写真感光体の一例の分光反射スペクトルを示す図である。(c)本発明の電子写真感光体の一例の分光反射スペクトルを示す図である。(d)本発明の電子写真感光体の一例の分光反射スペクトルを示す図である。
符号の説明
101 基体
103 光導電層(PCL)
104、104a、104b、104c 表面領域層
105 下部注入阻止層
106 上部注入阻止層
106a 第1の上部注入阻止層(TBL-1)
106b 第2の上部注入阻止層(TBL-2)
107 表面層
108 変化層
109 中間層
110 表面保護層(SL)

Claims (15)

  1. 導電性基体上に、少なくともシリコン原子を母材とする非単結晶シリコン膜で構成される光導電層と、前記光導電層上に積層されたシリコン原子と窒素原子を母材とし、少なくとも一部に周期表13族元素と炭素原子を含有した非単結晶窒化シリコン膜からなる表面領域層とを有する電子写真感光体において、前記表面領域層が、厚さ方向において構成原子の総数に対する周期表13族元素の含有率の極大値を少なくとも2つ持つことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記表面領域層が、厚さ方向において構成原子の総数に対する窒素原子の含有率の極大値または極大領域を少なくとも2つ持つことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記表面領域層が、厚さ方向において構成原子の総数に対する炭素原子の含有率の極大値を少なくとも1つ持つことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記表面領域層内において、炭素原子の含有量が前記極大値において、2.0×1017個/cm3以上5.0×1020個/cm3以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 前記表面領域層が、厚さ方向において構成原子の総数に対する窒素原子の含有率の極大値と周期表第13族元素の含有率の極大値を、交互に有することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか記載の電子写真感光体。
  6. 前記表面領域層が、厚さ方向において構成原子の総数に対する窒素原子の含有率の極大値と周期表第13族元素の含有率の厚さ方向における極大値とを、前記光導電層から自由表面側に向かって、周期表第13族元素の含有率の極大値、窒素原子の含有率の極大値の順に有することを特徴とする請求項5記載の電子写真感光体。
  7. 前記周期表13族元素の含有率の隣接する2つの極大値が、厚さ方向において100nm以上1000nm以下の距離範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電子写真感光体。
  8. 前記周期表13族元素の最も光導電層側に位置する極大値が5.0×1018個/cm3以上であり、前記最も光導電層側に位置する極大値と隣接する極大値間の前記周期表13族元素の含有量の最小値が2.5×1018個/cm3以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の電子写真感光体。
  9. 前記周期表13族元素の含有率は、最も光導電層側に位置する極大値が最大であることを特徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
  10. 前記表面領域層の一定領域における窒素原子の平均濃度(atm%)が、30atm%≦N/(Si+N)≦70atm%を満たす請求項1から請求項9のいずれかに記載の電子写真感光体。
  11. 前記表面領域層が、シリコン原子と窒素原子の組成比が変化している変化層と組成比が一定な表面層とからなることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の電子写真感光体。
  12. 前記表面領域層が、厚さ方向において構成原子の総数に対する酸素原子及び/またはフッ素原子の含有率の極大値を少なくとも1つ持つことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の電子写真感光体。
  13. 表面領域層において、構成原子の総数に対する窒素原子の含有率の厚さ方向における隣接する2つの極大値のうち光導電層側の極大値と、2つの極大値間の最小値が、40nm以上300nm以下の距離にあることを特徴とする請求項2から請求項12のいずれかに記載の電子写真感光体。
  14. 前記表面領域層において、窒素原子の含有率の厚さ方向における極大値が、N/(Si+N)≧30atom%の関係式を満足し、かつ極大値間に存在する最小値に対して(極大値/最小値)110%以上であることを特徴とする請求項2から請求項13のいずれか記載の電子写真感光体。
  15. 波長350nmから680nmの範囲の反射率(%)の最小値(Min)と最大値(Max)とが0%≦Max(%)≦20%かつ0≦(Max−Min)/(100−Max)≦0.15を満たすことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子写真感光体。
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