JP2001337472A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

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JP2001337472A JP2000153639A JP2000153639A JP2001337472A JP 2001337472 A JP2001337472 A JP 2001337472A JP 2000153639 A JP2000153639 A JP 2000153639A JP 2000153639 A JP2000153639 A JP 2000153639A JP 2001337472 A JP2001337472 A JP 2001337472A
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博明 新納
Makoto Aoki
誠 青木
Satoshi Furushima
聡 古島
Nobufumi Tsuchida
伸史 土田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 帯電能、感度、光メモリー等の電子写真特性
を改善し、画像流れを抑制する。 【解決手段】 支持体101と、シリコン原子を母体と
して水素原子及び/又はハロゲン原子を含有するアモル
ファス材料からなる光導電層103とを備えた電子写真
感光体において、光導電層103は、電荷を輸送する層
領域111と、光スペクトルから得られる指数関数裾の
特性エネルギーが50〜60meVであってバンドギャ
ップの異なる二つの層領域からなる層領域112を有す
る。層領域112は、層領域111側に位置し且つ光学
的バンドギャップが1.55〜1.75eVである層領
域113と、表面層側104に位置し且つ光学的バンド
ギャップが1.8〜1.9eVであって周期律表第III
b族に属する少なくとも1つの元素を膜厚方向に不均一
な分布状態で含有する層領域114と、からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子写真感光体、プ
ロセスカートリッジ及び電子写真装置に係わり、特に光
(ここでは広義の光であって、紫外線、可視光線、赤外
線、X線、γ線などを意味する。)のような電磁波に対
して感受性のある感光体およびそれを用いたプロセスカ
ートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】像形成分野において、感光体における光
受容層を形成する光導電材料としては、高感度で、SN
比〔光電流(Ip)/暗電流(Id)〕が高く、照射す
る電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクトルを
有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有する
こと、使用時において人体に対して無害であること、等
の特性が要求される。特に、事務機としてオフィスで使
用される電子写真装置内に組み込まれる感光体の場合に
は、上記の使用時における無公害性は重要な点である。
【0003】この様な点に優れた性質を示す光導電材料
に水素化アモルファスシリコン(以下、「a−Si:
H」と表記する)があり、例えば、特公昭60−350
59号公報には電子写真感光体としての応用が記載され
ている。
【0004】このような感光体は、一般的には、導電性
支持体を50〜350℃に加熱し、該支持体上に真空蒸
着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱
CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法に
よりa−Siからなる光導電層を形成する。なかでもプ
ラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周波あるいは
マイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa−
Si堆積膜を形成する方法が好適なものとして実用に付
されている。
【0005】また、特開平6−194855号公報に
は、ある波長より長波長の光に対しては光導電性を示さ
ない15μm以上の電荷輸送層と長波長の光に対しても
光導電性を示す1〜10μmの光導電層とを組み合わせ
ることにより帯電電荷と結合するキャリアの移動距離を
短くしてトラップによる残像発生を抑止する技術が開示
され、特公平7−89232号公報には、電荷発生層を
2層構成とし、表面側の電荷発生層のバンドギャップを
大きくし、各層の価電子帯のバンド端からフェルミレベ
ルまでのエネルギーを実質的に等しくすることにより、
広い波長範囲に亘って感度を向上させる技術が開示され
ている。
【0006】さらに、特許第2772685号公報に
は、光導電層上にシリコン原子と炭素原子と周期律表第
IIIb族に属する原子を含む潜像保持層とシリコン原子
と炭素原子とを含む顕像保持層を順次設けて絶縁性トナ
ーを用いることにより安定で良好な画像を長期にわたっ
て得る技術が開示されている。
【0007】そして、特開平6−83090号公報に
は、高湿時でも充分な帯電を行うために、光導電層上に
ドーピングしたa−Siからなる電荷トラップ層および
電荷注入層を設けて接触帯電する負帯電用感光体が開示
されている。さらに、特開平6−242623号公報に
は、アモルファスシリコン感光体の光導電層と表面層の
間に50ppm未満のホウ素を含有するかまたは伝導性
を支配する元素を含まない正孔捕獲層を設けることによ
り帯電性や画像流れの良好な負帯電用感光体を得る技術
が開示され、特開平6−273954号公報には、表面
層に周期律表第III 族元素を含有させた負帯電用のアモ
ルファスシリコン感光体についての技術が開示されてい
る。
【0008】これらの技術により、電子写真感光体の電
気的、光学的、光導電的特性および使用環境特性が向上
し、それに伴って画像品質も向上してきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
a−Si系材料で構成された光導電層を有する電子写真
感光体は、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、光
学的、光導電特性、および使用環境特性の点、さらには
経時安定性および耐久性の点において、各々個々には特
性の向上が図られてはいるが、総合的な特性向上を図る
上でさらに改良される余地が存在するのが実情である。
【0010】電子写真装置の高画質、高速化、高耐久化
は急速に進んでおり、電子写真感光体においては電気的
特性や光導電特性の更なる向上とともに、帯電能、感度
を維持しつつあらゆる環境下で大幅に性能を延ばすこと
が求められている。
【0011】このような状況下において、前述した従来
技術により上記課題についてある程度の特性向上が可能
になってはきたが、更なる画像品質の向上に関しては未
だ充分とはいえない。
【0012】したがって、電子写真感光体を設計する際
に、上記したような問題が解決されるように電子写真感
光体の層構成、各層の化学的組成など総合的な観点から
の改良を図るとともに、a−Si材料そのものの一段の
特性改良を図ることが必要とされている。
【0013】特に、コンピューターの普及とオフィスの
ネットワーク化が進んだことにより、電子写真装置も従
来の複写機としてだけでなく、ファクシミリやプリンタ
ーの役目を担うためにデジタル化することが求められる
ようになってきた。そのための露光光源として用いられ
る半導体レーザーやLEDは、発光強度や価格の点か
ら、赤色可視光領域から近赤外領域までの比較的長波長
のものが主流である。
【0014】このような比較的長波長光に対して感度を
向上させるために、a−SiGe光導電層やμc−Si
光導電層を用いることが提案されている。しかしなが
ら、a−SiGeの場合にはGeを含有しているために
欠陥を充分に低減することが困難であり、そのために帯
電能向上や光メモリー低減の点で不充分である。またμ
c−Siの場合は、作成時に非常に高い電力を必要とす
るために構造欠陥が発生しやすく、また、その作成条件
が通常のa−Siとはあまりにかけ離れているために、
連続して層形成をする場合の条件変化が大きくなって界
面部分での膜特性が不充分になってしまうことがあっ
た。
【0015】また、阻止能向上のために表面層との界面
領域にバンドギャップの大きな層を設ける場合、その層
には窒素および/または酸素および/または炭素を含有
させてバンドギャップを拡大しているために、構造欠陥
を充分に低減することが難しく、特に光メモリーを劇的
に低減することが困難である。
【0016】かかる観点から、本発明者らは先に特開平
9−311495号公報ならびに特開平11−9546
8号公報において、光導電層に光学的バンドギャップの
異なる層領域を設け、光の入射側に光学的バンドギャッ
プが小さくかつ欠陥の少ない層領域を配設することによ
って、半導体レーザーやLEDを光源に用いた場合に帯
電能や感度を向上させる技術を提案している。
【0017】しかし、電子写真装置が高速化あるいは小
型化するにつれ帯電能への要求はますます高まり、露光
光源の波長領域に対して充分な光吸収により電荷を生成
するとともに、表面側からの電荷の注入阻止を効果的に
行うような層設計をすることが求められる。
【0018】一方、デジタル化された情報の大量のフル
カラー出力のためにアモルファスシリコン感光体を用い
たカラーシステムが要望されるとともに、有機感光体と
のシステムの共用による本体コストの低減を図るため
に、負帯電用アモルファスシリコン感光体への要望も強
まってきている。
【0019】しかしながら、従来の負帯電用アモルファ
スシリコン感光体をデジタルシステムで用いた場合に
は、以下のような現象が生じることがあった。
【0020】すなわち、表面からの電荷注入を阻止する
ために、表面層とは別に不純物を含有する表面電荷注入
阻止層(以下TBLと略記する)を設けた場合、TBL
による光の吸収により感度の低下や光メモリーの発生を
招くことがあったり、TBLの界面近傍で電荷の横流れ
が生じて、画像流れが観測されることがあった。特に、
高画質化のために露光のドット径が小さくなってきてい
ることから、いっそう画像流れに対して厳しい状況にあ
る。
【0021】また、TBLを設けずに表面層に直接電気
導電性を制御する元素を含有させる場合には、表面層の
役割である保護層としての硬度を確保しつつ電荷の注入
阻止能を向上させることは困難であった。
【0022】また、ハロゲン光を光源とするアナログシ
ステムでは層界面での反射による干渉模様が画像に現れ
ることは少ないが、デジタルシステムの場合にはレーザ
ーに代表される可干渉光を光源として用いるために、T
BL界面での反射によって干渉模様が画像上で観測され
ることがある。
【0023】したがって、本発明は、上述した従来のa
−Siで構成された光受容層を有する電子写真感光体に
おける諸問題を解決することを目的とするものである。
【0024】すなわち、本発明の主たる目的は、充分な
帯電能を確保するとともに感度を向上し、ゴーストに代
表される光メモリーを低減して画像品質を飛躍的に向上
させた、負帯電用アモルファスシリコン感光体を提供す
ることにある。
【0025】さらに、本発明の目的は、画像流れの発生
もなく、可干渉光を用いたシステムであっても干渉縞が
観測されない負帯電用アモルファスシリコン感光体を提
供することにある。
【0026】特に、電気的、光学的、光導電的特性が使
用環境にほとんど依存することなく実質的に常時安定し
ており、耐光疲労に優れ、繰り返し使用に際しては劣化
現象を起こさず耐久性、耐湿性に優れ、残留電位がほと
んど観測されず、更に画像品質の良好な負帯電用アモル
ファスシリコン感光体、及び電子写真感光体を有するプ
ロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することに
ある。
【0027】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは、a−Siのバンドギャップおよび局
在状態密度分布と帯電能や光メモリーとの関係について
鋭意検討した結果、光導電層の厚さ方向において、光学
的バンドギャップやバンドギャップ内の局在状態密度の
分布を制御することにより上記目的を達成できるという
知見を得た。さらに、伝導性を制御する物質である周期
律表第IIIb族に属する元素の含有状態を制御すること
により、より効果的に上記目的を達成できるとともに画
像流れについても改善できるという知見を得た。
【0028】すなわち、シリコン原子を母体とし、水素
原子および/またはハロゲン原子を含有する非単結晶材
料で構成された光導電層を有する感光体において、その
層構造を特定化するように設計されて作成された感光体
は、実用上著しく優れた特性を示すばかりでなく、従来
の感光体と比べてみても多くの点において凌駕している
こと、特にデジタルシステム用の負帯電感光体として優
れた特性を有していることを見いだした。
【0029】このようなことから、本発明はつぎのよう
な特徴を有する発明を提供するものである。
【0030】すなわち、本発明の電子写真感光体は、第
1に、少なくとも支持体と、該支持体上に、水素原子お
よび/またはハロゲン原子を含有し、シリコン原子を母
体とするアモルファス材料からなる光導電層および表面
層を備えた電子写真感光体において、前記光導電層は、
前記支持体側から自由表面側に向けて、実質的に電荷を
輸送する第1の層領域と、実質的に光を吸収して電荷を
生成する第2の層領域とを有し、該第2の層領域は、光
学的バンドギャップが異なる二つの層領域からなり、該
二つの層領域のうちの表面層側に位置する層領域には膜
厚方向に不均一な分布状態で周期律表第IIIb族に属す
る元素を含有することを特徴としている。
【0031】第2に本発明の電子写真感光体の光導電層
の第2の層領域は、該第2の層領域中の前記第1の層領
域側に位置し且つ光学的バンドギャップが1.55〜
1.75eVである第3の層領域と、表面層側に位置し
且つ光学的バンドギャップが1.8〜1.9eVである
第4の層領域と、からなることを特徴としている。
【0032】第3に本発明の電子写真感光体の第4の層
領域は、周期律表第IIIb族に属する元素を10ppm
以上1000ppm以下含有し、該第4の層領域中で含
有量の極大値をもつとともに表面層との界面から0.0
5μmの間においては周期律表第IIIb族に属する元素
を実質的に含有しないことを特徴としている。
【0033】第4に本発明の電子写真感光体の第4の層
領域は、厚さが0.1〜5μmであることを特徴として
いる。
【0034】第5に本発明の電子写真感光体の第2の層
領域は、厚さが0.3〜10μmであって、露光波長の
80%以上を吸収することを特徴としている。
【0035】第6に本発明の電子写真感光体の第2の層
領域は、光子エネルギー(hν)を独立変数とし、光吸
収スペクトルの吸収係数(α)を従属変数とする式
(A) lnα=(1/Eu)・hν+α1 (A) で表される関数の直線関係部分(指数関数裾)から得ら
れる特性エネルギー(Eu)が50〜60meVである
ことを特徴としている。
【0036】また本発明のプロセスカートリッジは、上
記本発明の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電さ
せる帯電手段、静電潜像の形成された電子写真感光体を
トナーで現像する現像手段、及び転写工程後の電子写真
感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段
からなる群より選ばれた少なくとも一つの手段と共に一
体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを
特徴としている。
【0037】また本発明の電子写真装置は、上記本発明
の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電
手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い静電潜
像を形成する露光手段、静電潜像の形成された電子写真
感光体にトナーで現像する現像手段、及び電子写真感光
体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を有する
ことを特徴としている。
【0038】次に、本発明における「指数関数裾」およ
び「特性エネルギー」について図3を用いて詳しく説明
する。
【0039】図3は、横軸に光子エネルギーhν、縦軸
に吸収係数αを対数軸として示したa−Siのサブギャ
ップ光吸収スペクトルの一例である。このスペクトルは
大きく2つの部分に分けられる。すなわち吸収係数αが
光子エネルギーhνに対して指数関数的、すなわち直線
的に変化する部分B(指数関数裾またはUrbachテイル)
と、吸収係数αが光子エネルギーhνに対しより緩やか
な依存性を示す部分Aである。
【0040】B領域はa−Si中の価電子帯側のテイル
準位から伝導帯への光学遷移による光吸収に対応し、B
領域の吸収係数αの光子エネルギーhνに対する指数関
数的依存性は次式で表される。
【0041】α=α0 exp(hν/Eu) この両辺の対数をとると lnα=(1/Eu)・hν+α1 ただし、α1=lnα0 となり、特性エネルギーEuの逆数(1/Eu)が、B
部分の傾きを表すことになる。Euは価電子帯側のテイ
ル準位の指数関数的エネルギー分布の特性エネルギーに
相当するため、Euが小さければ価電子帯側のテイル準
位が少ないことを意味する。 〔作用〕本発明者らは、光学的バンドギャップ(以下、
「Eg」と略記する)ならびにCPM(Constant Photo
current Method;一定光電流法)によって測定されたサ
ブバンドギャップ光吸収スペクトルから求められる指数
関数裾(アーバックテイル)の特性エネルギー(以下、
「Eu」と略記する)と感光体特性との相関を種々の条
件に渡って調べた結果、Eg、Euとa−Si感光体の
帯電能、感度や光メモリーとが密接な関係にあることを
見いだし、それらの異なる膜を積層し、さらに伝導性を
制御する物質である周期律表第IIIb族に属する元素の
含有量およびその含有パターンを制御することにより良
好な感光体特性を発揮することを見いだし本発明を完成
するに至った。
【0042】すなわち、光導電層を、実質的に露光を吸
収してキャリアを生成する第2の層領域と、生成したキ
ャリアを輸送する第1の層領域とに分割し、第2の層領
域をEgの充分に小さな第3の層領域とEgが大きく周
期律表第IIIb族に属する元素を含有する第4の層領域
の二重構造とすることによって充分な光吸収と表面側か
らの電荷の注入阻止性能が得られ、特に帯電能および感
度の著しい向上が見られる。
【0043】また、本発明においては、第2の層領域を
欠陥の少ないa−Siのみで構成しているので従来のa
−SiGeやμc−Siを用いた場合に比べてキャリア
の生成・輸送の点で優れた効果が見られる。
【0044】すなわち、Egが充分に小さく、キャリア
の局在準位への捕獲率を小さくした層領域を設けること
によって比較的長波長光に対して帯電能と感度の向上が
認められ、ゴーストに代表される光メモリーの発生を実
質的になくすることができることが本発明者の実験によ
り明らかになった。
【0045】また、光学的バンドギャップが大きく、キ
ャリアの局在準位への捕獲率を小さくした層領域を表面
側に設け、含有する周期律表第IIIb族に属する元素の
含有量とその含有パターンを特定範囲に制御することに
より、さらに帯電能を向上させつつ画像流れが向上する
ことが本発明者らの実験により明らかになった。
【0046】これをさらに詳しく説明すると、一般的
に、a−Si:Hのバンドギャップ内には、Si−Si
結合の構造的な乱れにもとづくテイル(裾)準位と、S
iの未結合手(ダングリングボンド)等の構造欠陥に起
因する深い準位が存在する。これらの準位は電子、正孔
の捕獲、再結合中心として働き素子の特性を低下させる
原因になることが知られている。
【0047】すなわち、露光波長とa−Siの吸収係数
との関係から、長波長光を含む露光の場合は光導電層の
奥深くにまで侵入し、広い範囲で光キャリアが生成され
る。短波長光に比べて帯電電荷と逆極性の電荷の走行距
離が増えると共に深いトラップへの捕獲確率も高くな
り、帯電器を通過した後に表面へ到達して表面電荷を打
ち消すことによって帯電能の低下を引き起こす。したが
って、Egを小さくして光の吸収領域を極力薄くするこ
とにより帯電電荷と逆極性の電荷の走行距離を短くする
ことが望ましい。もちろん短波長の光あるいは露光の短
波長成分はEgの広い層領域でも吸収されて電荷を生成
するため、この部分の欠陥を制御(低減)することが求
められる。
【0048】さらに、光メモリーはブランク露光や像露
光によって生じた光キャリアがバンドギャップ内の局在
準位に捕獲され、光導電層内にキャリアが残留すること
によって生じる。すなわち、ある複写行程において生じ
た光キャリアのうち光導電層内に残留したキャリアが、
次回の帯電時あるいはそれ以降に表面電荷による電界に
よって掃き出され、光の照射された部分の電位が他の部
分よりも低くなり、その結果画像上に濃淡が生じる。し
たがって、光キャリアが光導電層内に極力残留すること
なく、1回の複写行程で走行するように、キャリアの走
行性を改善することが求められる。
【0049】このようなことから、光導電層を実質的に
露光を吸収してキャリアを生成する領域と生成されたキ
ャリアを輸送する領域とし、第2の層領域を更に二つの
領域に分割して、Egを狭めつつEuを制御(低減)し
た層領域を主に光を吸収してキャリアを生成する領域と
し、さらにその表面側にEgを拡大しつつEuを制御
(低減)した層領域を設けることにより、キャリアの生
成領域を薄くすることができるとともに熱励起キャリア
の生成が抑えられ、なおかつ熱励起キャリアや光キャリ
アが局在準位に捕獲される割合を小さくすることができ
るためにキャリアの走行性が飛躍的に改善される。
【0050】つまり、光導電層の第2の層領域を膜質の
良好であってEgの異なる2つの領域に分割することに
より、特に帯電能、メモリーについて顕著な効果が見ら
れる。
【0051】また、TBLを設けたときに見られる画像
流れに関しては、TBLそのものよりもTBLと表面層
との界面領域における電荷の横流れの影響が大きいこと
から、周期律表第IIIb族に属する元素をEgの広い第
4の層領域に含有し、表面層との界面付近の領域では実
質的に周期律表第IIIb族に属する元素を含有しないよ
うな不均一な分布状態にすることにより、帯電能ならび
に画像流れの点で効果が見られる。
【0052】また、本発明においては、感度低下の要因
となりうるTBLを用いることなく負帯電を実現してい
るので、TBLにおける光の吸収による感度低下を回避
することができる。
【0053】本発明は上記構成によって、負帯電時の帯
電能および感度の向上と光メモリーの低減とを高い次元
で両立させ、なおかつ画像流れを大幅に低減させて、前
記した従来技術における諸問題の全てを解決することが
でき、極めて優れた電気的、光学的、光導電的特性、画
像品質、耐久性および使用環境性を示す感光体を得るこ
とができる。
【0054】
【発明の実施の形態】以下、図面に従って本発明の感光
体について詳細に説明する。
【0055】図1は、本発明の感光体の層構成を説明す
るための模式的構成図である。
【0056】図1(a)に示す感光体100は、感光体
用としての支持体101の上に、光受容層102が設け
られている。光受容層102はa−Si:H,Xからな
り光導電性を有する光導電層103と、アモルファスシ
リコン系表面層104とから構成されている。また、光
導電層103は支持体101側から順に第1の層領域1
11と第2の層領域112とからなり、第2の層領域1
12は第3の層領域113と第4の層領域114とから
なっている。
【0057】図1(b)に示す感光体100は、感光体
用としての支持体101の上に、光受容層102が設け
られている。光受容層102は支持体101側から順に
アモルファスシリコン系電荷注入阻止層105と、a−
Si:H,Xからなり光導電性を有する光導電層103
と、アモルファスシリコン系表面層104とから構成さ
れている。また、光導電層103は電荷注入阻止層10
5側から順に第1の層領域111と第2の層領域112
とからなり、第2の層領域112は第3の層領域113
と第4の層領域114とからなっている。
【0058】また、図2は、本発明の感光体の光導電層
の第4の層領域における周期律表第IIIb族に属する元
素の分布状態を説明するための模式図である。 〈支持体〉本発明において使用される支持体としては、
導電性でも電気絶縁性であってもよい。導電性支持体と
しては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、
V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、およびこれらの
合金、例えばステンレス等が挙げられる。また、ポリエ
ステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロース
アセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリス
チレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシー
ト、ガラス、セラミック等の電気絶縁性支持体の少なく
とも光受容層を形成する側の表面を導電処理した支持体
も用いることができる。
【0059】本発明において使用される支持体101の
形状は平滑表面あるいは凹凸表面の円筒状または無端ベ
ルト状であることができ、その厚さは、所望通りの感光
体100を形成し得るように適宜決定するが、感光体1
00としての可撓性が要求される場合には、支持体10
1としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄
くすることができる。しかしながら、支持体101は製
造上および取り扱い上、機械的強度等の点から通常は1
0μm以上とされる。 〈光導電層〉本発明において、その目的を効果的に達成
するために支持体101上に形成され、光受容層102
の1部を構成する光導電層103は真空堆積膜形成方法
によって、所望特性が得られるように適宜成膜パラメー
ターの数値条件が設定されて作成される。具体的には、
例えばグロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法
またはマイクロ波CVD法等の交流放電CVD法、ある
いは直流放電CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸
着法、イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD
法などの数々の薄膜堆積法によって形成することができ
る。これらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下
の負荷程度、製造規模、作成される感光体に所望される
特性等の要因によって適宜選択されて採用されるが、所
望の特性を有する感光体を製造するに当たっての条件の
制御が比較的容易であることからグロー放電法、特にR
F帯の電源周波数を用いた高周波グロー放電法が好適で
ある。
【0060】グロー放電法によって光導電層103を形
成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し
得るSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し
得るH供給用の原料ガスまたは/およびハロゲン原子
(X)を供給し得るX供給用の原料ガスを、内部を減圧
にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、該反
応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位
置に設置されてある所定の支持体101上にa−Si:
H,Xからなる層を形成すればよい。
【0061】また、本発明において光導電層103中に
水素原子または/およびハロゲン原子が含有されるが、
これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向
上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させるため
に求められるからである。
【0062】よって水素原子またはハロゲン原子の含有
量、または水素原子とハロゲン原子の和の量は、第1の
層領域の場合、シリコン原子と水素原子または/および
ハロゲン原子の和に対して15〜30原子%とされるの
が望ましい。また、第3の層領域の場合、シリコン原子
と水素原子または/およびハロゲン原子の和に対して5
〜15原子%とされるのが望ましく、第4の層領域の場
合、シリコン原子と水素原子または/およびハロゲン原
子の和に対して25〜40原子%とされるのが望まし
い。
【0063】本発明において使用されるSi供給用ガス
となり得る物質としては、SiH4、Si2 6 、Si
3 8 、Si4 10等のガス状態の、またはガス化し得
る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとし
て挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効
率の良さ等の点でSiH4 、Si2 6 が好ましいもの
として挙げられる。
【0064】そして、形成される光導電層103中に水
素原子を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御が
いっそう容易になるように図り、本発明の目的を達成す
る膜特性を得るために、これらのガスに更にH2 および
/またはHeあるいは水素原子を含む珪素化合物のガス
も所望量混合して層形成することが望ましい。また、各
ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合して
も差し支えないものである。
【0065】また本発明において使用されるハロゲン原
子供給用の原料ガスとして有効なのは、例えばハロゲン
ガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合
物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状のま
たはガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられ
る。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構
成要素とするガス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原
子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げるこ
とができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン
化合物としては、具体的には弗素ガス(F2 )、Br
F、ClF、ClF3、BrF3 、BrF5 、IF3
IF7 等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハ
ロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で
置換されたシラン誘導体としては、具体的には、例えば
SiF4 、Si2 6 等の弗化珪素が好ましいものとし
て挙げることができる。
【0066】光導電層103中に含有される水素原子ま
たは/およびハロゲン原子の量を制御するには、例えば
支持体101の温度、水素原子または/およびハロゲン
原子を含有させるために使用される原料物質の反応容器
内へ導入する量、放電電力等を制御すればよい。
【0067】本発明において、光導電層の第4の層領域
114には周期律表第IIIb族に属する元素を層厚方向
に不均一な分布状態で含有することが好ましい。これ
は、負帯電時の電荷注入阻止能の調整と画像流れを高次
でバランスさせるために求められるものである。特に層
中に含有量の極大値を有し、表面層側から0.05μm
の間では周期律表第IIIb族に属する元素を含有しない
ような分布状態にすることが好ましい。
【0068】周期律表第IIIb族に属する元素の含有量
は、層中平均として、10〜1000ppmとするのが
望ましく、極大値としては30〜3000ppmとする
のが好ましい。
【0069】このような第IIIb族原子としては、具体
的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム
(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が
あり、特にB、Al、Gaが好適である。
【0070】第IIIb族原子を構造的に導入するには、
層形成の際に、第IIIb族原子導入用の原料物質をガス
状態で反応容器中に、光導電層103を形成するための
他のガスとともに導入してやればよい。第IIIb族原子
導入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧で
ガス状の、または少なくとも層形成条件下で容易にガス
化しうるものが採用されるのが望ましい。
【0071】そのような第IIIb族原子導入用の原料物
質として具体的には、硼素原子導入用としては、B2
6 、B4 10、B5 9 、B5 11、B6 10、B6
12、B6 14等の水素化硼素、BF3 、BCl3 、BB
3 等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、Al
Cl3 、GaCl3 、Ga(CH3 3 、InCl3
TlCl3 等も挙げることができる。
【0072】また、これらの伝導性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2 および/またはHeに
より希釈して使用してもよい。
【0073】本発明において、光導電層103の層厚は
所望の電子写真特性が得られることおよび経済的効果等
の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは2
0〜50μm、より好ましくは23〜45μm、最適に
は25〜40μmとされるのが望ましい。層厚が20μ
mより薄くなると、帯電能や感度等の電子写真特性が実
用上不充分となり、50μmより厚くなると、光導電層
の作製時間が長くなって製造コストが高くなる。
【0074】また、本発明において、第2の層領域の膜
厚は、その光学的バンドギャップと使用する露光(前露
光、像露光)波長との関係から導かれる光の吸収量に応
じて適宜設定することができるが、好ましくは0.3〜
10μmとすることが望ましい。その膜厚が0.3μm
より薄いと光の吸収や電荷の注入阻止性能が不充分とな
ったり、光メモリー低減の効果を充分に発揮することが
できない。10μmを超えると第2の層領域の大部分を
占めるEgの小さい第3の層領域の割合が増えるのでフ
リーキャリアが増加して帯電能低下の要因となりうる。
【0075】そして、第4の層領域の膜厚は、0.1〜
5μmとすることが望ましい。その膜厚が0.1μmよ
り薄いと負帯電時の電荷注入阻止性能が不充分となり、
5μmを超えるとEgが広いために第2の層領域全体と
しての露光の吸収量が少なくなって帯電能や感度を改善
することが困難になる。
【0076】本発明の目的を達成し、所望の膜特性を有
する光導電層103を形成するには、Si供給用のガス
と希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力
ならびに支持体温度を適宜設定する。
【0077】希釈ガスとして使用するH2 および/また
はHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選
択されるが、Si供給用ガスに対しH2 および/または
Heを、通常の場合3〜20倍、好ましくは4〜15
倍、最適には5〜10倍の範囲に制御することが望まし
い。また、特に第3の層領域においては希釈ガスとして
主としてHeを用い、Si供給用ガスに対して20〜1
00倍の希釈率とすることが望ましい。
【0078】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-2〜1×103 Pa、好ましくは5×10-2〜5×1
2Pa、最適には1×10-1〜1×102 Paとする
のが好ましい。また、特に第3の層領域においては、そ
の他の領域よりガス圧を高く設定することが望ましく、
その範囲としては、70〜5×102 Paとするのが好
ましい。
【0079】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量
に対する放電電力の比を、0.5〜8、好ましくは2〜
6の範囲に設定することが望ましい。また、第4の層領
域においては、Si供給用のガスの流量に対する放電電
力の比をその他の層領域に比べて大きくし、いわゆるフ
ローリミット領域で作成することが好ましい。
【0080】さらに、支持体101の温度は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜
330℃、最適には250〜300℃とするのが望まし
い。
【0081】本発明においては、光導電層を形成するた
めの支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記
した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に
決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を
形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を
決めるのが望ましい。 〈表面層〉本発明においては、上述のようにして支持体
101上に形成された光導電層103の上に、更にアモ
ルファスシリコン系の表面層104を形成することが好
ましい。この表面層104は自由表面110を有し、主
に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用
環境特性、耐久性において本発明の目的を達成するため
に設けられる。
【0082】また、本発明においては、光受容層102
を構成する光導電層103と表面層104とを形成する
非晶質材料の各々がシリコン原子という共通の構成要素
を有しているので、積層界面において化学的な安定性の
確保が十分成されている。
【0083】表面層104は、アモルファスシリコン系
の材料であればいずれの材質でも可能であるが、例え
ば、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)
を含有し、更に炭素原子を含有するアモルファスシリコ
ン(以下「a−SiC:H,X」と表記する)、水素原
子(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、
更に酸素原子を含有するアモルファスシリコン(以下
「a−SiO:H,X」と表記する)、水素原子(H)
および/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に窒素
原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−Si
N:H,X」と表記する)、水素原子(H)および/ま
たはハロゲン原子(X)を含有し、更に炭素原子、酸素
原子、窒素原子の少なくとも1つを含有するアモルファ
スシリコン(以下「a−SiCON:H,X」と表記す
る)等の材料が好適に用いられる。
【0084】本発明において、その目的を効果的に達成
するために、表面層104は真空堆積膜形成方法によっ
て、所望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの
数値条件が設定されて作成される。具体的には、例えば
グロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法または
マイクロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直
流放電CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、
イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法など
の数々の薄膜堆積法によって形成することができる。こ
れらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷
程度、製造規模、作成される感光体に所望される特性等
の要因によって適宜選択されて採用されるが、感光体の
生産性から光導電層と同等の堆積法によることが好まし
い。
【0085】例えば、グロー放電法によってa−Si
C:H,Xよりなる表面層104を形成するには、基本
的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の
原料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原
料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料
ガスまたは/およびハロゲン原子(X)を供給し得るX
供給用の原料ガスを、内部を減圧にし得る反応容器内に
所望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電
を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置された光導電
層103を形成した支持体101上にa−SiC:H,
Xからなる層を形成すればよい。
【0086】本発明において用いる表面層の材質として
はシリコンを含有するアモルファス材料ならば何れでも
良いが、炭素、窒素、酸素より選ばれた元素を少なくと
も1つ含むシリコン原子との化合物が好ましく、特にa
−SiCを主成分としたものが好ましい。
【0087】表面層をa−SiCを主成分として構成す
る場合の炭素量は、シリコン原子と炭素原子の和に対し
て30%から90%の範囲が好ましい。
【0088】また、本発明において表面層104中に水
素原子または/およびハロゲン原子が含有されるが、こ
れはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、
特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させるため
である。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の
場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最
適には40〜60原子%とするのが望ましい。また、弗
素原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原
子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.6〜
4原子%とされるのが望ましい。
【0089】これらの水素および/または弗素含有量の
範囲内で形成される感光体は、実際面において従来にな
い格段に優れたものとして充分適用させ得るものであ
る。すなわち、表面層内に存在する欠陥(主にシリコン
原子や炭素原子のダングリングボンド)は電子写真感光
体としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。
例えば自由表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、
使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構造が変化する
ことによる帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射
時に光導電層より表面層に電荷が注入され、前記表面層
内の欠陥に電荷がトラップされることにより繰り返し使
用時の残像現象の発生等がこの悪影響として挙げられ
る。
【0090】しかしながら表面層内の水素含有量を30
原子%以上に制御することで表面層内の欠陥が大幅に減
少し、その結果、従来に比べて電気的特性面および高速
連続使用性において飛躍的な向上を図ることができる。
【0091】一方、前記表面層中の水素含有量が70原
子%を超えると表面層の硬度が低下するために、繰り返
し使用に耐えられなくなる。従って、表面層中の水素含
有量を前記の範囲内に制御することが格段に優れた所望
の電子写真特性を得る上で非常に重要な因子の1つであ
る。表面層中の水素含有量は、原料ガスの流量(比)、
支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得
る。
【0092】また、表面層中の弗素含有量を0.01原
子%以上の範囲に制御することで表面層内のシリコン原
子と炭素原子の結合の発生をより効果的に達成すること
が可能となる。さらに、表面層中の弗素原子の働きとし
て、コロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子
の結合の切断を効果的に防止することができる。
【0093】一方、表面層中の弗素含有量が15原子%
を超えると表面層内のシリコン原子と炭素原子の結合の
発生の効果およびコロナ等のダメージによるシリコン原
子と炭素原子の結合の切断を防止する効果がほとんど認
められなくなる。さらに、過剰の弗素原子が表面層中の
キャリアの走行性を阻害するため、残留電位や画像メモ
リーが顕著に認められてくる。従って、表面層中の弗素
含有量を前記範囲内に制御することが所望の電子写真特
性を得る上で重要な因子の1つである。表面層中の弗素
含有量は、水素含有量と同様に原料ガスの流量(比)、
支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得
る。
【0094】本発明の表面層の形成において使用される
シリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、
SiH4 、Si2 6 、Si3 8 、Si4 10等のガ
ス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)
が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時
の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSi
4 、Si2 6 が好ましいものとして挙げられる。ま
た、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じて
2 、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用し
てもよい。
【0095】炭素供給用ガスとなり得る物質としては、
CH4 、C2 2 、C2 6 、C38 、C4 10等の
ガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用
されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易
さ、Si供給効率の良さ等の点でCH4 、C2 2 、C
2 6 が好ましいものとして挙げられる。また、これら
のC供給用の原料ガスを必要に応じてH2 、He、A
r、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0096】窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質
としては、NH3 、NO、N2 O、NO2 、O2 、C
O、CO2 、N2 等のガス状態の、またはガス化し得る
化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。ま
た、これらの窒素、酸素供給用の原料ガスを必要に応じ
てH2 、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用
してもよい。
【0097】また、形成される表面層104中に導入さ
れる水素原子の導入割合の制御をいっそう容易になるよ
うに図るために、これらのガスに更に水素ガスまたは水
素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成
することが好ましい。また、各ガスは単独種のみでなく
所定の混合比で複数種混合しても差し支えないものであ
る。
【0098】ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効
なのは、例えばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲン
を含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン
誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲン化合物
が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原子と
ハロゲン原子とを構成要素とするガス状のまたはガス化
し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有効な
ものとして挙げることができる。本発明において好適に
使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガ
ス(F2 )、BrF、ClF、ClF3 、BrF3 、B
rF5 、IF3、IF7 等のハロゲン間化合物を挙げる
ことができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆ
るハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具
体的には、例えばSiF4 、Si2 6 等の弗化珪素が
好ましいものとして挙げることができる。
【0099】表面層104中に含有される水素原子また
は/およびハロゲン原子の量を制御するには、例えば支
持体101の温度、水素原子または/およびハロゲン原
子を含有させるために使用される原料物質の反応容器内
へ導入する量、放電電力等を制御すればよい。
【0100】炭素原子および/または酸素原子および/
または窒素原子は、表面層中に万遍なく均一に含有され
ても良いし、表面層の層厚方向に含有量が変化するよう
な不均一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0101】本発明における表面層104の層厚として
は、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μ
m、最適には0.1〜1μmとされるのが望ましいもの
である。層厚が0.01μmよりも薄いと感光体を使用
中に摩耗等の理由により表面層が失われてしまい、3μ
mを超えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下が
みられる。
【0102】本発明による表面層104は、その要求さ
れる特性が所望通りに与えられるように注意深く形成さ
れる。即ち、Si、Cおよび/またはNおよび/または
O、Hおよび/またはXを構成要素とする物質はその形
成条件によって構造的には結晶からアモルファスまでの
形態を取り、電気物性的には導電性から半導体性、絶縁
性までの間の性質を、また、光導電的性質から非光導電
的性質までの間の性質を各々示すので、本発明において
は、目的に応じた所望の特性を有する化合物が形成され
る様に、所望に従ってその形成条件の選択が厳密になさ
れる。
【0103】例えば、表面層104を耐圧性の向上を主
な目的として設けるには、使用環境において電気絶縁性
的挙動の顕著な非単結晶材料として作成される。
【0104】また、連続繰り返し使用特性や使用環境特
性の向上を主たる目的として表面層104が設けられる
場合には、上記の電気絶縁性の度合はある程度緩和さ
れ、照射される光に対してある程度の感度を有する非単
結晶材料として形成される。
【0105】本発明の目的を達成し得る特性を有する表
面層104を形成するには、支持体101の温度、反応
容器内のガス圧を所望にしたがって、適宜設定する。
【0106】支持体101の温度(Ts)は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜
330℃、最適には250〜300℃とするのが望まし
い。
【0107】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ま
しくは1×10-2〜1×103 Pa、より好ましくは5
×10-1〜5×102 Pa、最適には1×10-1〜1×
102 Paとするのが好ましい。
【0108】本発明においては、表面層を形成するため
の支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記し
た範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決
められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形
成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決
めるのが望ましい。
【0109】また表面層104と光導電層103との間
に炭素原子および/または酸素原子および/または窒素
原子の含有量が光導電層103に向かって減少するよう
に変化する領域を設けても良い。これにより表面層と光
導電層の密着性を向上させ、光キャリアの表面への移動
がスムーズになるとともに光導電層と表面層の界面での
光の反射による干渉の影響をより少なくすることができ
る。 〈電荷注入阻止層〉本発明の感光体においては、導電性
支持体と光導電層との間に、導電性支持体側からの電荷
の注入を阻止する働きのある電荷注入阻止層を設けるの
がいっそう効果的である。すなわち、電荷注入阻止層は
光受容層が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた
際、支持体側より光導電層側に電荷が注入されるのを阻
止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際には
そのような機能は発揮されない、いわゆる極性依存性を
有している。そのような機能を付与するために、電荷注
入阻止層には伝導性を制御する原子を多く含有させる。
【0110】電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御
する原子は、該層中に万遍なく均一に分布されても良い
し、あるいは層厚方向には万遍なく含有されてはいる
が、不均一に分布する状態で含有している部分があって
もよい。分布濃度が不均一な場合には、支持体側に多く
分布するように含有させるのが好適である。
【0111】しかしながら、いずれの場合にも支持体の
表面と平行面内方向においては、均一な分布で万遍なく
含有されることが面内方向における特性の均一化を図る
点からも望ましい。
【0112】電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御
する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純
物を挙げることができ、本発明の負帯電用感光体におい
ては、n型伝導特性を与える周期律表第Vb族に属する
原子(以後「第Vb族原子」と略記する)を用いること
ができる。
【0113】第Vb族原子としては、具体的にはP(リ
ン)、As(砒素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビス
マス)等があり、特にP、Asが好適である。
【0114】本発明において電荷注入阻止層中に含有さ
れる伝導性を制御する原子の含有量としては、本発明の
目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜
決定されるが、好ましくは10〜1×104 原子pp
m、より好適には50〜5×103 原子ppm、最適に
は1×102 〜3×103 原子ppmとされるのが望ま
しい。
【0115】さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子、
窒素原子および酸素原子の少なくとも1種を含有させる
ことによって、該電荷注入阻止層に直接接触して設けら
れる他の層との間の密着性の向上をより一層図ることが
できる。
【0116】電荷注入阻止層に含有される炭素原子また
は窒素原子または酸素原子は該層中に万遍なく均一に分
布されても良いし、あるいは層厚方向には万遍なく含有
されてはいるが、不均一に分布する状態で含有している
部分があってもよい。しかしながら、いずれの場合にも
支持体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で
万遍なく含有されることが面内方向における特性の均一
化を図る点からも望ましい。
【0117】本発明における電荷注入阻止層の全層領域
に含有される炭素原子および/または窒素原子および/
または酸素原子の含有量は、本発明の目的が効果的に達
成されるように適宜決定されるが、1種の場合はその量
として、2種以上の場合はその総和として、好ましくは
1×10-3〜30原子%、より好適には5×10-3〜2
0原子%、最適には1×10-2〜10原子%とされるの
が望ましい。
【0118】また、本発明における電荷注入阻止層に含
有される水素原子および/またはハロゲン原子は層内に
存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。
電荷注入阻止層中の水素原子またはハロゲン原子あるい
は水素原子とハロゲン原子の和の含有量は、好適には1
〜50原子%、より好適には5〜40原子%、最適には
10〜30原子%とするのが望ましい。
【0119】本発明において、電荷注入阻止層の層厚は
所望の電子写真特性が得られること、および経済的効果
等の点から好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは
0.3〜4μm、最適には0.5〜3μmとされるのが
望ましい。層厚が0.1μmより薄くなると、支持体か
らの電荷の注入阻止能が不充分になって充分な帯電能が
得られなくなり、5μmより厚くしても電子写真特性の
向上は期待できず、作製時間の延長による製造コストの
増加を招くだけである。
【0120】本発明において電荷注入阻止層を形成する
には、前述の光導電層を形成する方法と同様の真空堆積
法が採用される。
【0121】本発明の目的を達成し得る特性を有する電
荷注入阻止層105を形成するには、光導電層103と
同様に、Si供給用のガスと希釈ガスとの混合比、反応
容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体101の温度
を適宜設定する。
【0122】希釈ガスであるH2 および/またはHeの
流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択される
が、Si供給用ガスに対しH2 および/またはHeを、
通常の場合0.3〜20倍、好ましくは0.5〜15
倍、最適には1〜10倍の範囲に制御することが望まし
い。
【0123】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-2〜1×103 Pa、好ましくは5×10-1〜5×1
2Pa、最適には1×10-1〜1×102 Paとする
のが好ましい。
【0124】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量
に対する放電電力の比を、通常の場合0.5〜8、好ま
しくは0.8〜7、最適には1〜6の範囲に設定するこ
とが望ましい。
【0125】さらに、支持体101の温度は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜
330℃、最適には250〜300℃とするのが望まし
い。
【0126】本発明においては、電荷注入阻止層を形成
するための希釈ガスの混合比、ガス圧、放電電力、支持
体温度の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げら
れるが、これらの層作成ファクターは通常は独立的に別
々に決められるものではなく、所望の特性を有する表面
層を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて各層
作成ファクターの最適値を決めるのが望ましい。
【0127】このほかに、本発明の感光体においては、
光受容層102の前記支持体101側に、少なくともア
ルミニウム原子、シリコン原子、水素原子または/およ
びハロゲン原子が層厚方向に不均一な分布状態で含有す
る層領域を有することが望ましい。
【0128】また、本発明の感光体においては、支持体
101と光導電層103あるいは電荷注入阻止層105
との間の密着性の一層の向上を図る目的で、例えば、S
34 、SiO2 、SiO、あるいはシリコン原子を
母体とし、水素原子および/またはハロゲン原子と、炭
素原子および/または酸素原子および/または窒素原子
とを含む非晶質材料等で構成される密着層を設けても良
い。
【0129】次に、光受容層を形成するための装置およ
び膜形成方法について詳述する。
【0130】図4はRF高周波プラズマCVD法(以後
「RF−PCVD」と略記する)による感光体の製造装
置の一例を示す模式的な構成図である。図4に示す製造
装置の構成は以下の通りである。
【0131】この装置は大別すると、堆積装置410
0、原料ガスの供給装置4200、反応容器4111内
を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成され
ている。堆積装置4100中の反応容器4111内には
円筒状支持体4112、支持体加熱用ヒーター411
3、原料ガス導入管4114が設置され、更に高周波マ
ッチングボックス4115が接続されている。
【0132】原料ガス供給装置4200は、SiH4
He、H2 、CH4 、B2 6 、PH3 等の原料ガスの
ボンベ4221〜4226とバルブ4231〜423
6,4241〜4246,4251〜4256およびマ
スフローコントローラー4211〜4216から構成さ
れ、各原料ガスのボンベはバルブ4260を介して反応
容器4111内のガス導入管4114に接続されてい
る。
【0133】この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば
以下のように行うことができる。
【0134】まず、反応容器4111内に円筒状支持体
4112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポン
プ)により反応容器4111内を排気する。続いて、支
持体加熱用ヒーター4113により円筒状支持体411
2の温度を200℃乃至350℃の所定の温度に制御す
る。
【0135】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器411
1に流入させるには、ガスボンベのバルブ4231〜4
236、反応容器のリークバルブ4117が閉じられて
いることを確認し、また、流入バルブ4241〜424
6、流出バルブ4251〜4256、補助バルブ426
0が開かれていることを確認して、まずメインバルブ4
118を開いて反応容器4111およびガス配管内41
16を排気する。
【0136】次に真空計4119の読みが約5×10-4
Paになった時点で補助バルブ4260、流出バルブ4
251〜4256を閉じる。
【0137】その後、ガスボンベ4221〜4226よ
り各ガスをバルブ4231〜4236を開いて導入し、
圧力調整器4261〜4266により各ガス圧を調整す
る。次に、流入バルブ4241〜4246を徐々に開け
て、各ガスをマスフローコントローラー4211〜42
16内に導入する。
【0138】以上のようにして成膜の準備が完了した
後、以下の手順で各層の形成を行う。
【0139】円筒状支持体4112が所定の温度になっ
たところで流出バルブ4251〜4256のうちの必要
なものおよび補助バルブ4260を徐々に開き、ガスボ
ンベ4221〜4226から所定のガスをガス導入管4
114を介して反応容器4111内に導入する。次にマ
スフローコントローラー4211〜4216によって各
原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、
反応容器4111内の圧力が100Pa以下の所定の圧
力になるように真空計4119を見ながらメインバルブ
4118の開口を調整する。内圧が安定したところで、
周波数13.56MHzのRF電源(不図示)を所望の
電力に設定して、高周波マッチングボックス4115を
通じて反応容器4111内にRF電力を導入し、グロー
放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容
器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状支持体4
112上に所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形成
されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、
電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガ
スの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0140】同様の操作を複数回繰り返すことによっ
て、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0141】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うま
でもなく、また、それぞれのガスが反応容器4111
内、流出バルブ4251〜4256から反応容器411
1に至る配管内に残留することを避けるために、流出バ
ルブ4251〜4256を閉じ、補助バルブ4260を
開き、さらにメインバルブ4118を全開にして系内を
一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
【0142】また、膜形成の均一化を図るために、層形
成を行っている間は、支持体4112を駆動装置(不図
示)によって所定の速度で回転させることも有効であ
る。
【0143】さらに、上述のガス種およびバルブ操作は
各々の層の作成条件にしたがって変更が加えられること
は言うまでもない。
【0144】堆積膜形成時の支持体温度は、特に200
℃以上350℃以下、好ましくは230℃以上330℃
以下、より好ましくは250℃以下310℃以下が望ま
しい。
【0145】支持体の加熱方法は、真空仕様である発熱
体であればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻
き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター等
の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の
熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手
段による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質
は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属
類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂等を使用すること
ができる。
【0146】それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の
容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で支持体
を搬送する方法が用いられる。 〔実験例〕以下、実験例により本発明の効果を具体的に
説明する。 《実験例1》図4に示すRF−PCVD法による感光体
の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したア
ルミニウムシリンダー(支持体)上に、表1に示す条件
で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる感光体を
作製した。
【0147】
【表1】 一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンプル基板
を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホル
ダーを用い、ガラス基板(コーニング社 7059)な
らびにSiウエハー上に、上記光導電層の作成条件で膜
厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス基板上の堆
積膜は、光学的バンドギャップ(Eg)を測定した後、
Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特
性エネルギー(Eu)を測定し、Siウエハー上の堆積
膜はFTIR(Fourier Transform InfraRed spectrosc
opy;フーリエ変換赤外吸収分光法)により水素含有量
(Ch)を測定した。
【0148】表1の例では光導電層の第3の層領域のE
g、Euは、それぞれ1.69eV、54meVであ
り、第4の層領域のEg、Euは、それぞれ35原子
%、1.84eV、55meVであった。
【0149】次いで第3の層領域においてSiH4 ガス
とH2 ガスおよび/またはHeガスとの混合比、SiH
4 ガスと放電電力との比率ならびに反応容器内の圧力を
種々変えることによって、第3の層領域のEg、Euの
異なる種々の感光体を作製した。
【0150】その際、第3の層領域および第4の層領域
の膜厚はそれぞれ5μmおよび0.5μmとした。
【0151】作製した感光体を電子写真装置(キヤノン
製NP−6550を実験用に改造)にセットして、負帯
電時の電位特性の評価を行った。
【0152】この際、プロセススピード380mm/s
ec、前露光(波長660nmのLED)7lux・s
ec、帯電器の電流値1000μAの条件にて、電子写
真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TREK
社 Model 344)の電位センサーにより感光体
の表面電位を測定し、それを帯電能とした。また、メモ
リー電位は、像露光光源に波長650nmのLEDを用
い、上述の条件下において同様の電位センサーにより非
露光状態での表面電位と一旦露光した後に再度帯電した
時との電位差をメモリー電位とした。
【0153】本例のEg、Euと帯電能、メモリーとの
関係をそれぞれ図6、図7に示す。それぞれの特性に関
して、光導電層(総膜厚約30μm)を第1の層領域と
第4の層領域で構成した場合に対する相対値で示した。
図6ならびに図7から明らかなように、第3の層領域に
おいて、Egが1.55〜1.7eV、Euが50〜6
0meVの条件において、帯電能の向上とメモリーの低
減を両立することができることがわかった。 《実験例2》図4に示すRF−PCVD法による感光体
の製造装置を用い、実験例1と同様の条件で、直径80
mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持
体)上に、電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる
感光体を作製した。
【0154】次いで第4の層領域においてSiH4 ガス
とH2 ガスとの混合比、SiH4 ガスと放電電力との比
率ならびに支持体温度を種々変えることによって、第4
の層領域のEg、Euの異なる種々の感光体を作製し
た。
【0155】その際、第3の層領域および第4の層領域
の膜厚はそれぞれ5μmおよび0.5μmに固定した。
【0156】作製した個々の感光体について実験例1と
同様の電位特性評価を行った。
【0157】本例のEuならびにEgと帯電能ならびに
感度との関係をそれぞれ図8、図9に示す。それぞれの
特性に関して、光導電層(総膜厚約30μm)を第1の
層領域と第3の層領域のみで構成した場合に対する相対
値で示した。図8ならびに図9から明らかなように、第
4の層領域において、Egが1.8〜1.9eV、Eu
が50〜60meVの条件において、帯電能の向上と感
度の向上を両立することができることがわかった。 《実験例3》図4に示すRF−PCVD法による感光体
の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したア
ルミニウムシリンダー(支持体)上に、表2に示す条件
で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる感光体を
作製した。
【0158】
【表2】 ここで、第4の層領域に含有する周期律表第IIIb族に
属する元素であるホウ素原子の含有パターンが図2
(a)となるようにし、SiH4 に対するB2 6量を
変えることによって含有される周期律表第IIIb族に属
する元素であるホウ素原子含有量を変えて種々の感光体
を作製した。また、第4の層領域の表面層側のホウ素原
子の含有されない領域の厚さを変えて種々の感光体を作
製した。
【0159】作製した個々の感光体について実験例1と
同様の電位特性評価ならびに画像特性(画像流れ)評価
を行った。
【0160】画像流れの評価は、図5に示した黒色部と
白色部が一定の幅aで並んだテストチャートを用意し、
線幅aを狭めていった時に複写画像上において再現し、
解像しうる最小の線幅aにより行った。即ち、線幅aを
狭めていった時に、ある線幅以下になると画像上の隣り
合う黒色部の輪郭が画像流れにより重なり合い、事実上
解像不可となる時の線幅aを画像流れの程度を表す指標
とした。したがって、線幅aの値が小さいほど画像流れ
のレベルは良好である。
【0161】本例の第4の層領域のホウ素含有量、なら
びに第4の層領域の表面側のホウ素を含有しない領域の
厚さと帯電能、感度ならびに画像流れとの関係をそれぞ
れ図10、図11および図12に示す。
【0162】それぞれの特性に関して、光導電層の第4
の層領域全体にホウ素原子を含有し、その含有量を10
0ppmにした場合に対する相対値で示した。図10、
図11および図12から明らかなように、光導電層の第
4の層領域において周期律表第IIIb族に属する元素の
含有量を10〜1000ppmとし、第4の層領域にお
いて表面側から0.05μmの領域において周期律表第
IIIb族に属する元素が実質的に含有されないようにす
ることによって、帯電能、感度および画像流れのいずれ
も良好な特性を得られることがわかった。
【0163】図13に本発明の電子写真感光体を有する
プロセスカートリッジを用いた電子写真装置の概略構成
を示す。
【0164】図において、1はドラム状の本発明の電子
写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速
度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、
一次帯電手段3によりその周面に正又は負の所定電位の
均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービー
ム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される目的
の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強
調変調された露光光4を受ける。こうして感光体1の周
面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形
成されていく。
【0165】形成された静電潜像は、次いで現像手段5
によりトナー現像され、不図示の給紙部から感光体1と
転写手段6との間に感光体1の回転と同期して取り出さ
れて給紙された転写材7に、感光体1の表面に形成担持
されているトナー画像が転写手段6により順次転写され
ていく。
【0166】トナー画像の転写を受けた転写材7は、感
光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着
を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)と
して装置外へプリントアウトされる。
【0167】像転写後の感光体1の表面は、クリーニン
グ手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面
化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10
により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用され
る。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接
触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではな
い。
【0168】本発明においては、上述の電子写真感光体
1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段
9等の構成要素のうち、複数のものを容器11に納めて
プロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、こ
のプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリ
ンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成し
てもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びク
リーニング手段9の少なくとも一つを感光体1と共に一
体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール等
の案内手段12を用いて装置本体に着脱自在なプロセス
カートリッジとすることができる。
【0169】また、露光光4は、電子写真装置が複写機
やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過
光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、こ
の信号に従って行われるレーザービームの走査、LED
アレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により
照射される光である。
【0170】本発明の電子写真感光体は、電子写真複写
機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、
CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プ
リンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広
く用いることができる。
【0171】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。 《実施例1》図4に示すRF−PCVD法による感光体
の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したア
ルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止
層、光導電層、表面層からなる感光体を作製した。
【0172】表3にこのときの感光体の作製条件を示し
た。
【0173】
【表3】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(b)と
なるようにした。第4の層領域におけるホウ素原子を含
有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0174】本例では、光導電層の第3の層領域のE
g、Euは、それぞれ1.65eV、53meV、第4
の層領域のEg、Euは、それぞれ1.83eV、52
meVという結果が得られた。作製した感光体を前露光
と像露光をそれぞれ660nmおよび650nmのLE
Dとした電子写真装置(キヤノン製NP−6550を実
験用に改造)にセットして負帯電により電位特性の評価
を行ったところ、帯電能、感度、メモリーとも良好な特
性が得られた。
【0175】また、作製した感光体の画像評価をしたと
ころ、画像上でも光メモリーは観測されずその他の画像
特性(ポチ、画像流れ)についても良好であった。 《実施例2》本例では、実施例1の表面層に代えて、表
面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向
に不均一な分布状態とした表面層を設けた。
【0176】表4に、このときの感光体の作製条件を示
した。
【0177】
【表4】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(c)と
なるようにした。その際、第4の層領域におけるホウ素
原子を含有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0178】作製した感光体を前露光と像露光をそれぞ
れ660nmのLEDおよび655nmのレーザーとし
た電子写真装置(キヤノン製NP−6550を実験用に
改造)にセットして、実施例1と同様の評価をしたとこ
ろ、同様に良好な電子写真特性が得られた。 《実施例3》本例では、全ての層にフッ素原子、リン原
子、ホウ素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子を含有
させるとともに、表面層のシリコン原子および炭素原子
の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を
設けた。
【0179】表5に、このときの感光体の作製条件を示
した。
【0180】
【表5】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(d)と
なるようにした。その際、第4の層領域におけるホウ素
原子を含有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0181】作製した感光体を前露光と像露光をそれぞ
れ700nmおよび680nmのLEDとした電子写真
装置(キヤノン製NP−6550を実験用に改造)にセ
ットして、実施例1と同様の評価をしたところ、同様に
良好な電子写真特性が得られた。 《実施例4》本例では、第1の層領域において希釈ガス
としてH2 とHeの混合ガスを用い、シリコン原子およ
び炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とし
た表面層を設けた。
【0182】表6に、このときの感光体の作製条件を示
した。
【0183】
【表6】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(e)と
なるようにした。その際、第4の層領域におけるホウ素
原子を含有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0184】作製した感光体を前露光と像露光をそれぞ
れ660nmおよび680nmのLEDとした電子写真
装置(キヤノン製NP−6550を実験用に改造)にセ
ットして、実施例1と同様の評価をしたところ、同様に
良好な電子写真特性が得られた。 《実施例5》本例では、表面層を構成する原子として炭
素原子の代わりに窒素原子を含有させた表面層を設け
た。
【0185】表7にこのときの感光体の作製条件を示し
た。
【0186】
【表7】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(f)と
なるようにした。その際、第4の層領域におけるホウ素
原子を含有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0187】作製した感光体を前露光と像露光をそれぞ
れ660nmおよび660nmのLEDとした電子写真
装置(キヤノン製NP−6550を実験用に改造)にセ
ットして、実施例1と同様の評価をしたところ、同様に
良好な電子写真特性が得られた。 《実施例6》本例では、窒素原子および酸素原子を含有
させて、シリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方
向に不均一な分布状態とした表面層を設けた。
【0188】表8にこのときの感光体の作製条件を示し
た。
【0189】
【表8】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(g)と
なるようにした。その際、第4の層領域におけるホウ素
原子を含有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0190】作製した感光体を前露光と像露光をそれぞ
れ660nmのLEDおよび655nmのレーザーとし
た電子写真装置(キヤノン製NP−6550を実験用に
改造)にセットして、実施例1と同様の評価をしたとこ
ろ、同様に良好な電子写真特性が得られた。 《実施例7》本例では、光導電層の全ての層領域にフッ
素原子を含有させ、シリコン原子および炭素原子の含有
量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を設け
た。
【0191】表9に、このときの感光体の作製条件を示
した。
【0192】
【表9】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(h)と
なるようにした。その際、第4の層領域におけるホウ素
原子を含有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0193】作製した感光体を前露光と像露光をそれぞ
れ700nmのLEDおよび680nmのレーザーとし
た電子写真装置(キヤノン製NP−6550を実験用に
改造)にセットして、実施例1と同様の評価をしたとこ
ろ、同様に良好な電子写真特性が得られた。 《実施例8》本例では、電荷注入阻止層に炭素原子を含
有させ、シリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方
向に不均一な分布状態とした表面層を設けた。
【0194】表10に、このときの感光体の作製条件を
示した。
【0195】
【表10】 また、光導電層に含有される周期律表第IIIb族に属す
る元素であるホウ素原子の含有パターンを図2(h)と
なるようにした。その際、第4の層領域におけるホウ素
原子を含有しない領域の厚さは0.05μmとした。
【0196】作製した感光体を前露光と像露光をそれぞ
れ660nmおよび660nmのLEDとした電子写真
装置(キヤノン製NP−6550を実験用に改造)にセ
ットして、実施例1と同様の評価をしたところ、同様に
良好な電子写真特性が得られた。
【0197】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、光導電層を実質的にキャリアを輸送する第1の層
領域とキャリアを生成する第2の層領域とに分割すると
ともに、第2の層領域を光学的バンドギャップの異なる
層領域に分割し、さらに周期律表第IIIb族に属する元
素の含有状態を不均一な分布状態で含有することによっ
て、負帯電時の帯電能および感度が高く、光メモリーを
低減して画像流れがなく、極めて優れた電位特性、画像
特性を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0198】したがって、本発明の電子写真感光体を前
述のごとき特定の構成としたことにより、a−Siで構
成された従来の電子写真感光体における諸問題をすべて
解決することができ、特にきわめて優れた電気的特性、
光学的特性、光導電特性、画像特性、耐久性および使用
環境特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感光体の好適な実施態様例の層構成を
説明するための模式的層構成図である。
【図2】本発明の感光体の好適な実施態様例の第4の層
領域における周期律表第IIIb族に属する元素の分布状
態を説明するための模式図である。
【図3】本発明における指数関数裾の特性エネルギーを
説明するためのa−Siのサブギャップ光吸収スペクト
ルの一例の模式図である。
【図4】本発明の感光体の光受容層を形成するための装
置の一例で、RFグロー放電法による感光体の製造装置
の模式的説明図である。
【図5】本発明における画像流れの評価に用いるテスト
チャートの一例を説明するための模式図である。
【図6】本発明の感光体における光導電層の第3の層領
域の光学的バンドギャップ(Eg)ならびにアーバック
テイルの特性エネルギー(Eu)と帯電能との関係を示
す図である。
【図7】本発明の感光体における光導電層の第3の層領
域の光学的バンドギャップ(Eg)ならびにアーバック
テイルの特性エネルギー(Eu)とメモリーとの関係を
示す図である。
【図8】本発明の感光体における光導電層の第4の層領
域の光学的バンドギャップ(Eg)ならびにアーバック
テイルの特性エネルギー(Eu)と帯電能との関係を示
す図である。
【図9】本発明の感光体における光導電層の第4の層領
域の光学的バンドギャップ(Eg)ならびにアーバック
テイルの特性エネルギー(Eu)と感度との関係を示す
図である。
【図10】本発明の感光体における光導電層の第4の層
領域における周期律表第IIIb族に属する元素の含有量
および表面層側の周期律表第IIIb族に属する元素を含
有しない領域の膜厚と帯電能との関係を示す図である。
【図11】本発明の感光体における光導電層の第4の層
領域における周期律表第IIIb族に属する元素の含有量
および表面層側の周期律表第IIIb族に属する元素を含
有しない領域の膜厚と感度との関係を示す図である。
【図12】本発明の感光体における光導電層の第4の層
領域における周期律表第IIIb族に属する元素の含有量
および表面層側の周期律表第IIIb族に属する元素を含
有しない領域の膜厚と画像流れとの関係を示す図であ
る。
【図13】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカ
ートリッジを用いた電子写真装置の概略構成を示す図で
ある。
【符号の説明】
100 感光体 101 導電性支持体 102 光受容層 103 光導電層 104 表面層 105 電荷注入阻止層 111 第1の層領域 112 第2の層領域 113 第3の層領域 114 第4の層領域 110 自由表面 4100 堆積装置 4111 反応容器 4112 円筒状支持体 4113 支持体加熱用ヒーター 4114 原料ガス導入管 4115 マッチングボックス 4116 原料ガス配管 4117 反応容器リークバルブ 4118 メイン排気バルブ 4119 真空計 4200 原料ガス供給装置 4211〜4216 マスフローコントローラー 4221〜4226 原料ガスボンベ 4231〜4236 原料ガスボンベバルブ 4241〜4246 ガス流入バルブ 4251〜4256 ガス流出バルブ 4261〜4266 圧力調整器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古島 聡 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 土田 伸史 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H068 DA03 DA24 DA28 DA34 DA35 DA37 DA43 DA44 FA16 FA27 FC05

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも支持体と、該支持体上に、水
    素原子および/またはハロゲン原子を含有し、シリコン
    原子を母体とするアモルファス材料からなる光導電層お
    よび表面層を備えた電子写真感光体において、 前記光導電層は、前記支持体側から自由表面側に向け
    て、実質的に電荷を輸送する第1の層領域と、実質的に
    光を吸収して電荷を生成する第2の層領域とを有し、該
    第2の層領域は、光学的バンドギャップが異なる二つの
    層領域からなり、該二つの層領域のうちの表面層側に位
    置する層領域には膜厚方向に不均一な分布状態で周期律
    表第IIIb族に属する元素を含有することを特徴とする
    電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記光導電層の第2の層領域は、該第2
    の層領域中の前記第1の層領域側に位置し且つ光学的バ
    ンドギャップが1.55〜1.75eVである第3の層
    領域と、表面層側に位置し且つ光学的バンドギャップが
    1.8〜1.9eVである第4の層領域と、からなるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記第4の層領域は、周期律表第IIIb
    族に属する元素を10ppm以上1000ppm以下含
    有し、該第4の層領域中で含有量の極大値をもつととも
    に表面層との界面から0.05μmの間においては周期
    律表第IIIb族に属する元素を実質的に含有しないこと
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子写真
    感光体。
  4. 【請求項4】 前記第4の層領域は、厚さが0.1〜5
    μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの
    請求項に記載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】 前記第2の層領域は、厚さが0.3〜1
    0μmであって、露光波長の80%以上を吸収すること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の
    電子写真感光体。
  6. 【請求項6】 前記光導電層の第2の層領域は、光子エ
    ネルギー(hν)を独立変数とし、光吸収スペクトルの
    吸収係数(α)を従属変数とする式(A) lnα=(1/Eu)・hν+α1 (A) で表される関数の直線関係部分(指数関数裾)から得ら
    れる特性エネルギー(Eu)が50〜60meVである
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項に記
    載の電子写真感光体。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写
    真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、静
    電潜像の形成された電子写真感光体をトナーで現像する
    現像手段、及び転写工程後の電子写真感光体上に残余す
    るトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選
    ばれた少なくとも一つの手段と共に一体に支持し、電子
    写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセ
    スカートリッジ。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写
    真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯
    電した電子写真感光体に対し露光を行い静電潜像を形成
    する露光手段、静電潜像の形成された電子写真感光体に
    トナーで現像する現像手段、及び電子写真感光体上のト
    ナー像を転写材上に転写する転写手段を有することを特
    徴とする電子写真装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008153105A1 (ja) * 2007-06-12 2008-12-18 Mitsubishi Chemical Corporation 画像形成装置及びカートリッジ

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